交差点停止線前の轍を出来形ヒートマップ差分で確認する意味
交差点の停止線前は、舗装面の状態を確認するときに注意したい場所の一つです。信号交差点の流入部では車両の制動や停止が繰り返され、わだち掘れとの関連が研究されてきました。ただし、舗装の状態は交通作用だけで決まるものではなく、気象条件、舗装材料、舗装構造、施工状態など複数の条件に影響されます。したがって、停止線前に低下域があるという理由だけで、その原因を車両の停止や発進に限定することはできません。 ([国土交通省CGR][1])
国土交通省の技術資料では、わだち掘れは舗装の流動化や摩耗などによって生じる横断方向の凹凸として扱われています。つまり、実務上のわだち掘れは単純に設計面より低い場所を指すものではなく、道路横断方向の路面形状として評価する必要があります。出来形ヒートマップは、そのような変形が疑われる位置を面的に探し、形状や連続性を読み取るための補助資料として使うのが適切です。 ([国土交通省CGR][1])
現場で目視するだけでは、どこからどこまで低下しているのか、左右の車輪走行位置にどのような谷があるのか、停止線付近だけが局所的に変化しているのかを面的に把握しにくい場合があります。設計面や過去の計測面と現在の路面を比較した差分ヒートマップを作成すると、単独の測点だけでは把握しにくい連続した高低分布を確認しやすくなります。
ただし、設計面との差分値をそのまま正式なわだち掘れ量と読み替えることは避ける必要があります。舗装点検では、わだち掘れ量はひび割れやIRIなどと並ぶ路面性状の評価項目として扱われています。設計面との差分ヒートマップで得られる値は、設計形状からの高さ偏差であり、適用する点検方法で求めるわだち掘れ量とは評価基準や算出方法が同一とは限りません。 ([国土交通省 総合政策局][2])
交差点周辺には横断勾配、縦断勾配、舗装継ぎ目、補修境界、マンホールや排水構造物などが存在します。また、点群の取得密度、欠測範囲、面生成や補間の条件によっても差分の見え方は変わります。そのため、ヒートマップに低い色が表示されたことだけを根拠に轍と断定するのではなく、差分がどの方向へ、どの幅で、どの程度連続しているかを読み、横断断面や現地状況と照合することが重要です。
「出来形 ヒートマップ 作り方」や「差分の作り方」を調べている実務担当者にとっても、この区別は大切です。ヒートマップは色付きの図を作ること自体が目的ではありません。設計や過去の状態との差を面的に把握し、追加確認が必要な場所を効率よく抽出するための資料です。交差点停止線前の轍を扱う場合も、ヒートマップを診断結果そのものではなく、形状を詳しく調べる入口として利用すると安全です。
出来形ヒートマップ差分の基本的な作り方
出来形ヒートマップ差分を作る基本は、比較したい二つの面を同じ座標・高さ基準上に配置し、対応する位置の高さ差を求めることです。交差点停止線前を確認する場合は、設計面と現況点群を比較する方法のほか、施工直後と供用後など異なる時点で取得した面同士を比較する方法があります。
設計面との差分を作る場合は、まず道路の計画形状を反映した基準面を用意します。道路には縦断勾配や横断勾配があるため、水平面を単純に基準とすると、本来の道路形状まで差分として表れてしまいます。路面の局所的な変化を確認したい場合は、対象範囲の設計形状を適切に表した面を基準にすることが重要です。
次に、現場で取得した点群や出来形データを基準面と重ねます。この段階では、平面座標だけでなく高さ基準も一致しているかを確認します。座標系、原点、高さの基準、座標変換方法などが異なっていると、道路全体に同じ方向の差分が発生したり、勾配部分で正負の差分が強調されたりする可能性があります。
基準をそろえた後、各位置で基準面と現況面の高さ差を求め、その値を色分けします。基準より高い範囲と低い範囲、基準付近の範囲が判別できるように表示すれば、面的な偏りを確認しやすくなります。
交差点停止線前の轍候補を見る場合は、道路全体の大きな高低差だけを見る設定ではなく、舗装面の局所変化を識別できる表示範囲を検討します。ただし、色階級を必要以上に細かくすると、点群のばらつきや路面表面の微細な凹凸まで強調されます。表示を細かくするほど評価が正確になるわけではありません。
点群から面を作成する過程では、グリッド化、三角網化、補間、平滑化などの処理が行われる場合があります。取得点がない場所を周囲のデータから補うと、実際には十分に計測できていない領域まで連続した面として表示されることがあります。このため、差分ヒートマップだけでなく、必要に応じて元点群の分布や欠測範囲も確認します。
差分を作成した後は、まず交差点や対象車線を広めに俯瞰し、その後に停止線前を拡大すると全体傾向と局所傾向を区別しやすくなります。いきなり最も濃い色だけを拡大すると、道路全体の高さずれや勾配変化を局所変形と誤認する可能性があります。
最終的には、平面ヒートマップ、横断断面、車輪走行方向の縦断断面、元点群、現地写真などを組み合わせます。この流れにすると、単に差分を作成するだけでなく、差分がわだち掘れ候補として解釈できるかを段階的に確認できます。
判断1 車両進行方向に続く帯状の低下域かを見る
交差点停止線前の轍を読む一つ目の判断は、低下域が車両進行方向に沿って帯状に続いているかを見ることです。
わだち掘れは横断方向の凹凸として評価される現象ですが、同じ車輪走行位置で横断方向の谷が連続すれば、平面ヒートマップ上では車線方向へ伸びる帯状の低下域として見えることがあります。したがって、停止線直前の一点だけではなく、停止線から手前側へ範囲を広げ、同じ位置に低下域が連続しているかを確認します。 ([国土交通省CGR][1])
停止線直前に低下色があっても、その範囲が孤立した小さな形であれば、轍以外の可能性も検討します。局所的な凹み、補修跡、舗装境界、点群の欠測、外れ値、構造物周辺の面生成などによっても局所差が生じるためです。
一方、想定される車輪走行位置に沿って低下域が一定の方向性を持って続き、複数の横断位置で同様の谷が確認できる場合は、わだち掘れ候補として詳しく調べる価値があります。ただし、帯の長さだけで原因を決めるのではなく、横断形状との組み合わせで判断します。
道路の縦断勾配そのものを轍と誤認しないことも重要です。設計面が道路形状を適切に表していれば縦断勾配は基準面側に含まれますが、設計面の範囲、位置合わせ、座標変換などに問題がある場合は、進行方向へ徐々に増減する差分が現れることがあります。
道路全体がほぼ同じ程度低い場合と、道路全体は基準付近なのに特定の走行帯だけが低い場合では意味が異なります。まず広い範囲で全体の偏りを確認し、その中で局所的な帯が存在するかを見ることが大切です。
また、最も濃い色だけを轍の範囲として扱わないようにします。差分ヒートマップは設定した階級ごとに色が変わるため、同じ連続した谷でも中心部と周辺部で別の色になることがあります。横断断面を併用し、谷の底だけでなく谷全体の幅や形状を確認する方が実態を把握しやすくなります。
判断2 左右の車輪位置に対応する二列の形状を確認する
二つ目の判断は、低下域が左右の車輪走行位置に対応するような二列の形状を示しているかを見ることです。
車輪が通過する位置に沿って路面変形が生じている場合、平面表示では二本の低下帯として認識できることがあります。ただし、二列に見えること自体を轍の判定条件にはできません。舗装継ぎ目、施工時の敷きならしや転圧の違い、補修境界、設計形状との不整合などでも進行方向へ線状の差が生じる可能性があるためです。
見るべきなのは、二列の位置が実際の走行位置として不自然ではないか、複数の横断断面で谷が再現されているか、周囲の設計形状と整合しているかです。単に道路中心から一定距離に二本あるという理由だけで判断しないことが重要です。
停止線前では、直進、右折、左折などの交通挙動によって車両の軌跡が変わります。車線変更や曲線的な進入が多い場所では、車輪走行位置が一定にならず、低下域が蛇行したり広がったりする場合も考えられます。そのため、二本の帯が完全に平行であることを前提にしない方が安全です。
左右の低下量が同じである必要もありません。路面の横断形状、交通条件、施工状態などによって左右差が生じることがあります。片側だけが明瞭な場合でも、直ちに轍ではないと判断するのではなく、横断断面や周辺状況を確認します。
さらに、低下域の外側に相対的な高まりが見える場合があります。わだち掘れは舗装の流動化や摩耗などによる横断方向の凹凸として現れるため、谷だけでなくその周辺を含む横断形状を読むことが重要です。 ([国土交通省CGR][1])
横断断面を複数位置で切ると、左右の走行位置付近に谷があるのか、その谷の幅や深さが進行方向にどう変化しているのかを確認できます。平面ヒートマップで二列に見えた形が、断面でも繰り返し確認できるかを見ることで、表示条件だけによる模様との切り分けがしやすくなります。
したがって、左右二列の低下帯は有力な確認材料にはなりますが、それだけで轍と断定するのではなく、横断形状、位置、連続性、周辺の高低分布を合わせて判断します。
判断3 停止線直前で差分が深くなるかを確認する
三つ目の判断は、車両進行方向に沿った低下域が、停止線へ近づく過程でどのように変化しているかを確認することです。
信号交差点の流入部では、車両の制動や停止の機会が多いこととわだち掘れとの関連を扱った研究があります。そのため、停止線前の低下傾向を確認することには意味があります。ただし、すべての交差点で停止線に近づくほど必ずわだち掘れが深くなるわけではありません。交通量、大型車の割合、停止位置、舗装材料、温度、施工状態、補修履歴などによって分布は変わります。 ([J-STAGE][3])
したがって、この判断で確認するのは「停止線直前なら深いはず」という前提ではなく、手前から停止線付近まで同じ条件で差分の推移を追うことです。停止線から離れた位置では差が小さく、停止線へ近づくにつれて車輪走行位置の谷が明瞭になる場合もあれば、停止線より手前に最大の低下がある場合や、広い区間でほぼ同程度の形状が続く場合もあります。
停止線の位置だけを境に急激な高低差が生じている場合は、轍とは別の要因も確認します。舗装補修範囲の端部、施工継ぎ目、既設舗装との接続、局所的な段差などでは、道路を横切る方向に差分境界が現れることがあります。
路面標示がある範囲については、使用した計測方式や面処理の特性を確認します。路面標示があるという理由だけで点群誤差が生じると一般化するのではなく、元点群に欠測や外れ値がないか、標示の物理的な厚みが評価対象に影響していないかなど、実データを確認して判断します。
進行方向の変化を把握するには、想定される車輪走行位置に沿って縦断断面を作成する方法が有効です。ヒートマップでは段階的な色変化として見えていたものを断面化すると、どこから高さの変化が始まり、どこで谷が大きくなるかを確認しやすくなります。
左右それぞれの走行位置で縦断断面を作れば、左右の変化傾向も比較できます。片側だけ局所的に深い場合は、その位置に補修境界や構造物など別の要因がないか確認します。両側に似た形が見られる場合でも、横断断面でわだち形状を確認してから解釈します。
ここでも差分値の絶対量だけを見ることは避けます。設計面との差分は設計形状からの偏差であり、正式なわだち掘れ量と同義ではありません。重要なのは、同一条件で取得・処理したデータの中で、走行位置の形状が進行方向にどう変化しているかを読むことです。 ([国土交通省 総合政策局][2])
判断4 横断勾配や局所段差による差分と切り分ける
四つ目の判断は、ヒートマップ上の低下域がわだち掘れ候補として解釈できるのか、それとも道路の横断勾配や局所段差など別の形状を表しているのかを切り分けることです。
道路面には排水などを考慮した横断勾配があります。設計面が適切に作成され、現況面との位置合わせが正しければ、その設計勾配そのものは大きな差分になりにくいですが、基準面の設定や平面位置がずれていると、道路片側が連続して高い、または低い表示になることがあります。
その状態で片側の車輪走行位置だけに注目すると、基準面との不整合を轍と誤認する可能性があります。最初に車線全幅の差分分布を確認し、横断方向全体に共通する偏りがないかを見ることが必要です。
局所段差との切り分けも重要です。交差点周辺には舗装補修の境界、施工継ぎ目、マンホール、排水構造物などが存在する場合があります。これらの周囲では短い距離で高さが変化するため、ヒートマップ上で強い正負の差分が現れることがあります。
わだち掘れを確認するときは、道路横断方向の断面形状を基本にしながら、その谷が進行方向へ連続しているかを見ます。一方、舗装境界の段差では、道路を横断する方向に線状の差が現れる場合があります。差分の向きは原因を絞る材料になりますが、方向だけで断定せず現地条件と合わせて確認します。
交差点の接続部では道路形状自体が複雑です。右左折車線の付加、幅員の変化、すり付け、縦横断勾配の変化などが重なる場合があります。設計面にこれらの形状が正しく反映されていなければ、ヒートマップに設計上の変化と現況の変化が混在して表示されます。
差分を見る前に、停止線、車線境界、舗装境界、構造物位置、勾配変化位置などを確認しておくと、「この色の境界は設計形状に対応するものか、それとも現況側の局所変化か」を判断しやすくなります。
また、低下域だけでなく周囲の高低分布も確認します。局所段差であれば境界を挟んで正負が切り替わることがあります。わだち掘れ候補では、横断断面上に谷状の凹凸が現れ、その谷が進行方向へ連続するかを確認します。
したがって、轍を判断するときに「低い色がある」という条件だけでは不十分です。差分の方向、幅、長さ、横断形状、周辺の正負分布、設計形状との位置関係を総合的に確認する必要があります。
判断5 平面ヒートマップだけで決めず断面と現地を照合する
五つ目の判断は、平面の出来形ヒートマップだけで結論を出さず、横断・縦断の断面と現地状況を照合することです。
ヒートマップは、広い範囲の中から高低差が集中する場所を抽出する用途に向いています。しかし、色だけでは断面形状を十分に把握できません。同じ色階級でも、幅広く緩やかな凹みと、狭く急な凹みでは路面形状が異なります。
わだち掘れは横断方向の凹凸として扱われるため、まず横断断面で車輪走行位置付近の谷を確認することが重要です。そのうえで、同じ位置の谷が車両進行方向へどの程度連続しているかを縦断方向から確認します。 ([国土交通省CGR][1])
断面を作成する位置も重要です。ヒートマップ上で最も差分が大きい場所だけではなく、その手前や奥でも横断断面を切ることで、同じ形状が連続しているのか、一断面だけの局所変化なのかを区別しやすくなります。
さらに、元点群や現地写真、必要に応じた再計測結果と照合します。差分上では谷に見えても、元点群を見ると欠測境界だったり、現地では舗装補修の境界だったりする場合があります。反対に、目視では分かりにくい緩やかな変形が、面的な差分によって確認しやすくなる場合もあります。
ヒートマップと現地確認は、どちらか一方を絶対的な正解とするものではありません。ヒートマップで候補を抽出し、断面で形状を確認し、元点群と現地で別要因を除外するという順番で使うと、誤読を減らしやすくなります。
舗装の点検や維持管理上の合否判定に利用する場合は、対象道路に適用される点検要領、管理基準、発注条件などを確認する必要があります。国土交通省の舗装点検でも、わだち掘れ量は独立した評価項目として扱われています。設計面との差分ヒートマップの色だけを、その評価値へ直接置き換えることは避けます。 ([国土交通省 総合政策局][2])
実務では、低下色を見つけたら終わりではなく、「追加確認すべき候補位置を抽出できた」と考える方が安全です。候補位置だけを詳細に断面化し、必要な箇所を現場で確認すれば、面的な情報を効率的な点検につなげられます。
設計面と出来形面の座標・高さ基準をそろえる
出来形ヒートマップ差分の信頼性を左右する重要な条件が、設計面と出来形面の位置合わせです。交差点停止線前のような局所的な路面変化を見たい場合、全体的な位置ずれが局所差より大きければ、ヒートマップの解釈が難しくなります。
まず確認したいのが平面位置です。設計面と現況点群が横方向にずれていると、本来同じ位置ではない場所同士を比較することになります。横断勾配がある道路では、わずかな横ずれでも対応する設計高さが変化し、それが高さ差として表れる可能性があります。
次に高さ基準を確認します。対象範囲の大部分がほぼ一様に高い色または低い色になっている場合は、局所的な轍を読む前に、高さ基準、座標変換、基準面そのものの設定を確認した方が安全です。
全体的なずれを確認する際は、対象範囲全体の偏りや、変化していないことを確認できる場所を参考にします。ただし、「轍が生じていないはず」という推定だけで基準点を決めるのではなく、既知点や設計上明確な位置、安定した構造物など、使用目的に適した基準を選びます。
時系列差分でも位置合わせは重要です。初回計測と再計測が平面方向にずれていると、既存の細かな凹凸の位置がずれ、実際には変化していない場所に正負一対の差分が現れることがあります。これは路面変化ではなく位置ずれによる見かけの差である可能性があります。
交差点には位置確認の参考になる構造物や道路形状がありますが、路面標示や補修範囲のように時期によって変化する対象もあります。時系列比較では、変化していない対象を用いて整合性を確認することが大切です。
出来形ヒートマップの作り方では色設定に目が向きやすいものの、比較する二つの面が正しく重なっていることが前提です。位置合わせに問題がある状態では、表示レンジを細かく設定しても轍候補を適切に読むことはできません。
グリッドサイズと補間条件による見え方の違いに注意する
点群から差分ヒートマップを作る場合、グリッドサイズや面生成方法によって局所形状の見え方が変化します。
グリッドを粗くすると、一つのセルに広い範囲の高さ情報が集約されるため、細い谷が平均化されて目立ちにくくなることがあります。反対に、取得点の間隔に対して過度に細かなグリッドを設定すると、見かけ上の表示解像度だけが上がり、点群のばらつきや補間結果が細かな模様として強調される場合があります。
重要なのは、確認したい形状の大きさと取得点群の密度に合った設定を選ぶことです。表示セルを細かくしただけで、元の計測情報が増えるわけではありません。
補間にも注意します。点群が存在しない場所を周囲の高さから埋めると、ヒートマップ上では連続した面になりますが、その範囲を直接計測できているとは限りません。
たとえば、計測時に通行車両などによって路面が隠れ、対象面の点群が不足していた場合、その範囲を大きく補間すると、周辺点から滑らかな面が生成されます。その結果を実測された路面形状と同じように扱うと誤解につながります。
ヒートマップで不自然に滑らかな低下帯や、点群の分布に対して細かすぎる模様が見つかった場合は、元点群を表示して対象領域に十分な測定点があるかを確認します。
平滑化やノイズ除去も同様です。処理を強くすると見た目は滑らかになりますが、実際に存在する小さな谷や段差まで弱くなる可能性があります。反対に処理をほとんど行わなければ、計測ばらつきや微細な表面凹凸が目立つ場合があります。
一つの設定だけを絶対視せず、妥当な範囲で条件を変えたときにも同じ位置に同じ傾向が現れるかを確認する方法が有効です。グリッドや表示条件を多少変えても、同じ車輪走行位置で横断方向の谷が再現されるのであれば、表示条件だけによる模様とは切り分けやすくなります。
轍を読みやすいヒートマップの表示条件を整える
交差点停止線前の轍候補を効率よく読むには、ヒートマップの表示条件を確認目的に合わせて整える必要があります。
まず重要なのが差分の表示範囲です。対象範囲に大きな高さ差が含まれ、広いレンジで表示していると、舗装面の局所的な差がほぼ同じ色にまとめられることがあります。轍候補を確認する場合は、対象車線や舗装面に範囲を絞り、確認したい高低差を識別できる表示幅を検討します。
一方で、表示幅を狭くしすぎると、計測ばらつきや微小な表面凹凸でも強い色になります。鮮やかな表示を作ることより、元データの精度や密度に対して意味のある差を読み取れる設定にすることが重要です。
比較するときは表示条件を固定します。複数車線を比較する際に、それぞれで自動的に最小値と最大値へ色を割り当てると、同じ色でも実際の差分値が異なる可能性があります。時系列比較でも、同じ色分け条件を使用することで変化を比較しやすくなります。
平面表示の向きも確認しやすさに影響します。対象車線の進行方向が画面上でそろうようにすると、帯状の連続性を追いやすい場合があります。ただし、表示方向によってデータそのものが変わるわけではないため、あくまで視認性を高める工夫として用います。
停止線、車線境界、舗装境界、構造物などの位置関係を確認できる状態にしておくことも有効です。低下域が停止線からどの程度離れた場所にあるか、車線内のどこに位置するかを把握しやすくなります。
ヒートマップは色が派手であるほど良いわけではありません。差分値、形状、位置、連続性を同一条件で比較できる表示を優先することが、実務で再現性のある読み取りにつながります。
時系列差分で轍の進行を確認する方法
交差点停止線前の変化を詳しく把握したい場合、設計面との差分だけでなく時系列差分も役立ちます。
設計面との差分は、現在の路面が設計形状に対してどのような高さ偏差を持つかを見るものです。一方、時系列差分は、過去に取得した路面と現在の路面を比較し、その期間中にどこが変化したかを見るために利用できます。
施工直後など基準にしたい時点の点群を保存し、後日同じ範囲を再計測すれば、車輪走行位置の高さがどのように変化したかを確認できます。ただし、二時点のデータが同じ座標基準で整合し、比較可能な品質を持っていることが前提です。
時系列比較では、可能な範囲で計測方法、対象範囲、点群密度、フィルタ条件、面生成条件、グリッド条件などをそろえます。条件が大きく異なると、実際の路面変化と処理条件による差を切り分けにくくなります。
一回の時系列差分だけで原因を断定することも避けます。低下が見つかった場合は、元点群、位置合わせ、欠測、現地状態を確認し、次回の計測でも同じ場所に継続的な変化が現れるかを見ると判断材料が増えます。計測回数について一律の最低回数を設けるのではなく、管理目的や必要な確度に応じて計画します。
時系列ヒートマップでは、低下量だけでなく範囲の変化にも注目できます。低下域の長さや幅が広がっているのか、特定の走行位置だけで変化しているのかを同じ表示条件で比較すると、変化の位置関係を把握しやすくなります。
ただし、時系列差分で確認しているのは二つの計測面の変化です。その結果だけから舗装内部の原因まで特定できるわけではありません。必要に応じて舗装構造、材料、交通条件、現地損傷など別の情報と合わせて評価します。舗装性能は交通だけでなく気温や降雨などの影響も受けるため、単一要因に結び付けないことが重要です。 ([国土交通省CGR][1])
正式な維持管理判断に利用する場合は、計測精度、評価方法、適用基準を整理したうえで運用します。時系列ヒートマップは変化箇所を探し、追加調査の優先順位を付けるための資料として活用すると扱いやすくなります。
交差点停止線前の出来形確認を効率化する考え方
交差点停止線前の舗装面を確認するとき、すべての場所について最初から多数の断面を作成すると作業量が増えます。出来形ヒートマップを利用する利点の一つは、面的に全体を確認し、詳しく調べるべき場所を絞り込めることです。
まず交差点周辺を広めに確認し、設計面または基準となる面との差分を作ります。最初の段階では個々の色の細かな数値だけに入り込まず、道路全体の偏り、車両進行方向に沿った低下帯、局所的な正負の変化などを確認します。
次に、停止線前で特徴的な低下域が見つかった車線を拡大します。車輪走行位置として整合するか、複数の横断位置で谷が確認できるか、停止線までの変化が連続しているか、道路横断方向の段差や補修境界とは異なるかを確認します。
その後、候補箇所で横断断面と縦断断面を作ります。この順番で進めれば、対象道路全体に大量の断面を作成するのではなく、ヒートマップで絞り込んだ箇所を詳しく確認できます。
現地確認も同様です。ヒートマップ上の候補位置を座標や周辺構造物との位置関係で整理しておけば、現場で確認対象を探しやすくなります。現地では舗装補修跡、構造物、排水状況、局所的な損傷など、点群だけでは判断しにくい情報を確認します。
施工直後の三次元データを保存しておけば、その後の計測結果との時系列比較にも利用できます。供用後だけを計測するより、初期状態が分かる方が「施工時から存在した形状なのか、その後に変化したのか」を検討する材料が増えます。
同じ場所を継続的に確認するのであれば、対象範囲、座標基準、表示レンジ、グリッド条件、断面位置などをできるだけ共通化すると比較しやすくなります。毎回異なる設定で見た目を調整するより、確認条件を記録して再利用する方が、担当者間でも結果を比較しやすくなります。
現場計測、点群確認、差分ヒートマップ、断面確認、現地照合までを一連の流れとして整理すれば、三次元データを単に保存するだけでなく、路面状態の確認を支援する情報として利用しやすくなります。
まとめ 轍は深さだけでなく形状と連続性で判断する
交差点停止線前の轍を出来形ヒートマップ差分で読むときは、最も低い差分値だけを探すのではなく、横断形状と進行方向の連続性を組み合わせて確認することが重要です。
第一に、車両進行方向へ低下域が続いているかを確認します。第二に、左右の車輪走行位置と整合する形状があるかを見ます。第三に、停止線までの区間で低下の程度がどのように変化しているかを追います。第四に、横断勾配、舗装境界、局所段差、構造物など別の要因を切り分けます。第五に、平面ヒートマップだけで結論を出さず、横断・縦断断面、元点群、現地状況と照合します。
この五つを組み合わせれば、単に低い色を探す見方から、道路横断方向の谷がどこにあり、その形が車両進行方向へどう続いているかを確認する見方へ進めます。国土交通省の資料でも、わだち掘れは横断方向の凹凸として扱われています。 ([国土交通省CGR][1])
一方、設計面との差分ヒートマップで得られる高さ偏差は、舗装点検で扱うわだち掘れ量そのものとは限りません。ヒートマップは候補位置を面的に抽出する補助資料として使用し、正式な評価が必要な場合は適用される点検方法や管理基準に沿って確認することが安全です。 ([国土交通省 総合政策局][2])
出来形ヒートマップの作り方でも、色付けそのものより、比較する面の座標・高さ基準をそろえ、点群密度に合った面生成条件を選び、同じ表示条件で形状を比較できる状態を作ることが重要です。そのうえで平面、横断、縦断を組み合わせることで、差分の意味を読み取りやすくなります。
施工直後や過去の三次元データを残しておけば、設計との差分に加えて時系列での変化も確認できます。ただし、時系列差分から原因まで自動的に決まるわけではありません。計測条件、交通条件、舗装状態などを合わせて確認することが必要です。
現場で取得した三次元情報から設計面との出来形ヒートマップを作成し、点群の断面も確認できる仕組みとして、LRTK Phoneを活用する方法もあります。LRTK Phoneの公式情報では、3D設計図と現況点群を比較した出来形ヒートマップの作成や、点群断面の出力機能が案内されています。交差点停止線前のような局所的な路面変化を確認するときも、現場で取得したデータを差分と断面の両方から読み返せる形にしておけば、確認対象の絞り込みや現地照合へつなげやすくなります。 ([Lefixea Irtk][4])