歩道乗入れ部ですり付け不良が見つけにくい理由
歩道の車両乗入れ部は、車道、縁石、歩道、民地側の出入口など、高さと勾配の異なる面を短い距離の中でつなぐ場所です。そのため、一見すると舗装が滑らかに仕上がっていても、実際には一部だけ急な勾配になっていたり、端部に小さな折れが生じていたり、設計面より高い帯や低い帯が残っていたりすることがあります。
こうしたすり付け不良は、単純な一点の高さ確認だけでは捉えにくいのが特徴です。例えば乗入れ部の中央で設計高さに近い値が得られていても、その左右で勾配変化が急になっていれば、車両が進入した際にタイヤや車体の一部が段差の影響を受ける可能性があります。逆に、端部の一点だけ設計との差が大きくても、周囲の面が滑らかにつながっていれば、点群のばらつきや局所的な対象物を拾っている可能性もあります。
そこで役立つのが、設計面と出来形面の差を面的に表す出来形ヒートマップです。差分値を色で表示すると、高い部分と低い部分がどの範囲に分布しているのかを一目で確認しやすくなります。特に歩道乗入れ部では、点ではなく帯や面として差分を見ることで、すり付けの途中に不自然な折れや偏りがないかを判断する材料になります。
ただし、ヒートマップの色だけを見て「赤いから施工不良」「青いから低すぎる」と判断することはできません。差分をどの方向で計算したのか、基準面は何か、点群にどのような処理をしたのかによって、同じ場所でも表示結果は変わります。出来形ヒートマップの作り方を理解するには、まず差分値が何を意味しているのかを明確にする必要があります。
歩道乗入れ部では数センチ程度の局所的な形状変化でも見え方が大きく変わるため、座標、高さ、点群密度、メッシュ条件、色分け条件、断面形状を一つずつ確認することが重要です。ヒートマップは異常を自動的に判定する道具ではなく、面的な変化を発見し、詳しく確認すべき場所を絞り込むための資料として使うと効果的です。
出来形ヒートマップの差分で何を比較するのか
出来形ヒートマップを作るときに最初に決めるべきことは、何と何を比較するのかです。歩道乗入れ部の完成形を確認する場合、一般的には設計上想定した面と、施工後に計測した出来形面を比較します。
考え方を単純化すると、各位置における出来形側の値から設計側の値を引き、その差を色で表します。例えば差分を「出来形-設計」と定義した場合、正の値は出来形が基準面より高い方向、負の値は低い方向を示します。ただし、使用する処理方法によって符号の定義や比較方向が異なる場合があるため、実務では凡例と計算方法を必ず確認する必要があります。
ここで重要なのは、単純に標高値だけを引けば常に適切な評価になるとは限らないことです。歩道乗入れ部は傾斜面であり、車道側から歩道側へ高さが連続的に変化します。そのため、水平位置がわずかにずれているだけでも、本来とは異なる位置同士の高さを比較してしまい、大きな差として表示されることがあります。
例えば、勾配が大きく変化する境界付近で点群と設計面の水平位置がずれていれば、施工自体はおおむね設計どおりでも、ヒートマップ上には高低差の帯が現れることがあります。このため、差分計算の前に平面位置を一致させ、同じ座標基準上で比較できていることを確認する必要があります。
また、舗装表面と縁石上面、側溝、植栽帯、マンホールなどが混在している範囲では、異なる構造物の高さを一つの面として処理すると不自然な差が生じます。歩道乗入れ部だけを確認したい場合には、評価対象となる舗装面を適切に抽出してから差分を作ることが重要です。
出来形ヒートマップの差分は、単なる色付き点群ではありません。設計と出来形の対応関係を整理し、それぞれの位置でどの程度の違いがあるかを面的に確認できるようにしたものです。この基本を押さえておくことで、すり付け不良の可能性がある場所と、データ処理によって差が出ているだけの場所を区別しやすくなります。
差分ヒートマップを作る前に座標と高さ基準をそろえる
歩道乗入れ部の差分を正しく読むためには、差分計算そのものより前の準備が重要です。特に確認したいのが、座標系、平面位置、高さ基準の整合です。
設計データと出来形点群が異なる座標基準で管理されていると、形状が似ていても位置が一致しません。数値上はわずかなずれでも、乗入れ部のように短い距離で高さが変化する場所では、差分表示に大きな影響が出ることがあります。
高さについても同様です。設計面と出来形点群が異なる高さ基準を使っていれば、対象範囲全体が一様に高い、あるいは低いように表示されます。この状態では、実際の施工形状よりも基準の違いがヒートマップを支配してしまいます。
差分ヒートマップを作成した際に、乗入れ部だけでなく周辺全体がほぼ同じ方向に高い、または低い場合は、施工状態だけでなく高さ基準の整合も確認したほうがよいでしょう。反対に、周辺の一般部では差が小さく、乗入れ部周辺だけ局所的な差が現れている場合には、施工形状や設計面とのすり付けを詳しく確認する価値があります。
既知の位置や周辺の安定した舗装面を使い、設計面と出来形面が平面・高さともに対応しているかを確認してから差分を計算すると、誤読を減らせます。
出来形ヒートマップの作り方というと色分け設定に目が向きやすいですが、差分の信頼性を大きく左右するのは、その前段階にある位置合わせです。特に歩道乗入れ部では、わずかな水平位置のずれが勾配差として現れることがあるため、座標条件の確認を省略しないことが大切です。
確認1|車道側から歩道側へ差分が連続して変化しているか
歩道乗入れ部のすり付け状態を見る最初の確認ポイントは、車道側から歩道側へ向かって差分値がどのように変化しているかです。
良好なすり付けでは、設計形状そのものに勾配変化があるとしても、出来形との差は極端に急変せず、一定の傾向で分布することが期待されます。一方、施工面の途中に折れや局所的な盛り上がり、沈み込みがあると、差分ヒートマップ上で異なる色の帯が短い間隔で切り替わる場合があります。
例えば、車道寄りでは設計面との差が小さいのに、乗入れ部中央で急に高い方向の差が増え、その先で再び差が小さくなる場合には、中央部に局所的な高まりがある可能性があります。反対に、中央だけ低い帯が横方向へ続いていれば、施工面がくぼむような形状になっていないかを断面で確認する必要があります。
ただし、色が変わっただけで異常と判断してはいけません。色の区分幅が細かすぎると、小さな測定ばらつきでも色が頻繁に変わります。差分値そのものを確認し、どの程度の変化なのかを見る必要があります。
注目したいのは、差分の大きさだけではなく連続性です。単独のセルだけが周囲と異なる場合より、複数のセルが連続して帯を形成している場合のほうが、実際の面形状を反映している可能性があります。
歩道乗入れ部では、車道から民地側へ向かう車両走行方向に沿って差分を追うと理解しやすくなります。ヒートマップで異常に見える場所を確認した後、その位置を通る縦断的な断面を作れば、面が滑らかにつながっているのか、途中に折れがあるのかを詳しく判断できます。
つまり、一つ目の確認では「何色か」よりも「色がどの方向へ、どのように連続しているか」を読むことが重要です。
確認2|乗入れ幅の中央と端部で勾配変化が偏っていないか
歩道乗入れ部は、車両が通過する中央部だけでなく、その左右端部でも形状が変化します。端部では通常の歩道面と乗入れ面をつなぐ必要があるため、中央とは異なる方向の勾配変化が生じやすくなります。
そのため、乗入れ部の中央だけを確認して「問題なし」と判断すると、左右端部に残っている不自然なすり付けを見逃すことがあります。
差分ヒートマップでは、乗入れ幅全体を見渡し、左右で高低差の分布が大きく異なっていないかを確認します。例えば中央では差が小さいのに、片側端部だけ高い方向の差が帯状に続いている場合には、その部分ですり付けが急になっていないかを確認します。
また、左右の条件が同じとは限りません。道路の縦断勾配や歩道の横断勾配、周辺構造物の位置によって、設計形状自体が左右非対称になっている場合があります。したがって、ヒートマップの左右が対称でないこと自体を施工不良と判断するのではなく、設計面と比較してどのような差が出ているかを見る必要があります。
端部の不整合は、車両だけでなく歩行者の動線とも関係します。乗入れ部分と一般歩道部分の境界に局所的な段差や急な勾配変化があると、利用時の違和感につながる可能性があります。
ヒートマップ上で端部に連続した差が見つかった場合は、その場所を通る横断方向と縦断方向の両方の断面を確認します。一方向の断面だけでは、どちらの方向に形状が変化しているのか分からない場合があるためです。
乗入れ幅全体を見るときには、中央、左端、右端を個別の点として扱うのではなく、面がどのようにつながっているかを見ることが大切です。これによって、局所的な高さ差だけでなく、片側だけ勾配が急になるような施工形状も見つけやすくなります。
確認3|縁石や側溝付近の局所差をすり付け不良と決めつけない
歩道乗入れ部の差分ヒートマップでは、縁石、側溝、集水設備などの周辺に大きな差が表示されることがあります。しかし、こうした差がすべて舗装面のすり付け不良を意味するわけではありません。
点群には、舗装面だけでなく周囲の構造物も含まれます。縁石の上面や側面を舗装面と同じ条件で比較すると、本来比較すべきでない位置の高さ差が計算されることがあります。
特に縁石の境界は形状が急に変化するため、点群を一定サイズのセルへまとめる処理を行った際に、一つのセル内へ異なる高さの点が混在することがあります。その結果、実際の舗装面より高い、あるいは低い値として代表値が作られ、ヒートマップに目立つ色が現れる場合があります。
また、側溝付近では水の流れる溝部と舗装面で高さが異なります。比較対象となる設計面側でも、この形状が適切に表現されていなければ、境界部分に大きな差が出やすくなります。
そのため、縁石沿いや構造物際に細い色の帯が現れた場合には、まずその位置が本当に舗装面なのかを確認します。点群を立体的に確認したり、断面を切ったりすることで、舗装面の差なのか、構造物境界を拾った結果なのかを区別できます。
歩道乗入れ部のすり付けを見る目的であれば、評価対象となる舗装面を抽出し、縁石側面や不要な対象物を除外してから差分を作成する方法も有効です。
ヒートマップでは目立つ色に注意が向きやすいですが、構造物境界ほどデータ処理による見かけの差が生じやすいという点を理解しておく必要があります。差の大きさだけでなく、その場所が何の表面なのかを確認することが三つ目のポイントです。
確認4|横断勾配と縦断勾配を分けて断面で確認する
ヒートマップは面的な異常を見つけることに向いていますが、すり付け不良の形状を詳しく理解するには断面確認が欠かせません。
歩道乗入れ部には複数方向の勾配が重なっています。車道から民地側へ向かう方向だけでなく、道路の進行方向にも勾配があるため、三次元的な面として形成されています。
この状態を平面上の色だけで見ていると、差分がどの方向の形状変化によって生じているのか分かりにくいことがあります。そこで、異常が疑われる場所を通る断面を複数方向に作成します。
車道から歩道側へ向かう断面では、乗入れ部のすり付けが途中で折れていないか、急激に勾配が変化していないかを確認できます。道路の進行方向に沿った断面では、乗入れ部の左右端や周辺の一般歩道とのつながりを見ることができます。
例えばヒートマップ上で楕円状に低い範囲が見つかった場合、車両進入方向の断面では大きな変化が見えなくても、道路方向の断面を見ると片側へくぼんでいる場合があります。反対に、道路方向では滑らかでも、車両進入方向で急な折れが現れる場合もあります。
このように、差分ヒートマップを入口として異常候補を絞り、その後に断面で形状を確認する流れが有効です。
さらに、断面では設計線と出来形線を重ねると、どの位置から差が始まり、どこで最大になり、どこで再び設計形状へ近づいているのかを整理できます。単なる最大差だけを見るより、すり付け区間全体の形状を理解しやすくなります。
出来形ヒートマップの作り方を実務で活用するなら、ヒートマップを最終成果と考えるのではなく、断面確認につなげるための検索図として扱うことが重要です。
確認5|水の流れと車両の通過経路を現地で照合する
差分ヒートマップですり付け不良が疑われる場所を見つけたら、最後に現地状況と照合します。
特に確認したいのが水の流れです。歩道乗入れ部は車道、歩道、側溝など複数の排水条件が接する場所であり、局所的なくぼみや逆勾配があると、水が滞留しやすくなる場合があります。
ヒートマップ上で低い帯が確認されたからといって、その場所に必ず水がたまるわけではありません。周囲の勾配や排水経路によって水は流れるためです。しかし、低い範囲が周囲より閉じた形状になっていたり、本来想定される排水方向を横切るように連続していたりする場合には、現地で水跡や堆積物の状況を確認する価値があります。
また、車両の通過経路も重要です。すり付け部の中央に異常がなくても、実際の車両は乗入れ口へ斜めに進入する場合があります。そのため、左右端部の勾配変化が車輪の通過位置と重なることも考えられます。
差分ヒートマップを現地へ持ち出す際には、異常候補の位置を特定できる状態にしておくと効率的です。現地で対象位置を確認し、目視だけでなく必要に応じて追加計測を行えば、ヒートマップ上の差が実際の形状によるものかを確認できます。
さらに、施工直後には目立たなかった低い部分でも、降雨後に水跡が確認できる場合があります。反対に、ヒートマップ上で差があっても排水上の問題が見られないケースもあります。
したがって、五つ目の確認では数値と現地状況を組み合わせて判断します。出来形ヒートマップは非常に有効な可視化手段ですが、最終的には現場の形状、排水、利用状況と照合することで、差分の意味をより適切に理解できます。
出来形ヒートマップの差分の作り方
ここまでの確認を実践するには、差分ヒートマップがどのような流れで作られるかを理解しておく必要があります。
まず設計面を用意します。歩道乗入れ部の計画形状を三次元の面として準備し、出来形計測と同じ座標系で扱える状態にします。設計面には、車道との接続部、乗入れ部、一般歩道との境界など、評価に必要な形状が適切に反映されていることを確認します。
次に施工後の表面を点群として取得します。乗入れ部は小さな勾配変化を見る必要があるため、対象範囲に十分な点が取得されていることが重要です。車両や資材、人、落ち葉などが計測時に含まれている場合には、必要に応じて評価対象外の点を除外します。
続いて、設計面と出来形点群の位置関係を確認します。周辺の安定した場所を見ながら、平面位置や高さに系統的なずれがないかを確認します。
その後、一定の方法で出来形側の代表値を求め、設計面との差を計算します。点群を直接設計面と比較する方法もあれば、一定サイズのグリッドへ整理して比較する方法もあります。どの方法を使う場合でも、比較方向と符号の意味を明確にしておきます。
差分値を計算したら、範囲ごとに色を割り当てます。設計に近い範囲を中立的な色とし、高い方向と低い方向を別の色相で示すと、分布を把握しやすくなります。
最後に、ヒートマップだけで完結させず、異常候補の断面や元点群を確認します。特に乗入れ部では勾配変化が複雑なため、一つの表示方法だけで判断しないことが重要です。
この一連の流れを標準化しておけば、担当者が変わっても同じ条件で比較しやすくなり、施工箇所ごとの評価結果も整理しやすくなります。
セルサイズと点群密度ですり付けの見え方が変わる
出来形ヒートマップでは、セルサイズや点群密度が結果の見え方に大きく影響します。
セルを大きくすると、一つのセル内に含まれる点が増え、局所的な凹凸は平均化されやすくなります。そのため、ヒートマップは滑らかに見える一方、小さなすり付け不良が見えにくくなる可能性があります。
反対にセルを小さくすると、細かな形状を表現しやすくなりますが、一つのセルに含まれる点数が少なくなり、点群のばらつきや欠測の影響を受けやすくなります。
歩道乗入れ部では、短い距離で勾配が変化するため、確認したい形状の大きさに対して過度に大きなセルを設定すると、端部の折れや小さなくぼみが平均化されてしまう可能性があります。
一方、必要以上に細かいセルで色分けすると、表面の微小な凹凸や測定値のばらつきまで強調され、施工上意味のある変化と区別しにくくなる場合があります。
重要なのは、細かければ細かいほど良いと考えないことです。対象とする乗入れ部の規模、点群密度、確認したい異常の大きさを考えながら設定します。
また、異なる施工箇所を比較するときには、できるだけ同じ条件でヒートマップを作ることが重要です。セルサイズが場所ごとに異なると、同程度の形状でも見え方が変わり、比較しにくくなります。
セルサイズは単なる表示設定ではなく、差分評価の解像度そのものに関わる条件として記録しておくと、後から結果を再確認しやすくなります。
色分けのしきい値を固定して比較しやすくする
出来形ヒートマップでは、同じ差分データでも色分けのしきい値によって印象が大きく変わります。
例えば非常に狭い差分範囲ごとに色を変えると、表面全体が色鮮やかになり、細かな変化が強調されます。反対に広い範囲を同じ色にまとめると、全体は均一に見えやすくなります。
そのため、色が派手だから異常が大きい、色が均一だから問題がない、という読み方は避ける必要があります。
歩道乗入れ部を複数箇所比較する場合には、同じ差分範囲、同じ色区分を使用すると比較しやすくなります。ある箇所では数値の小さな差まで細かく色分けし、別の箇所では広い範囲を同じ色で表示すると、公平な比較ができません。
また、ヒートマップには必ず差分値の凡例を付け、どの色がどの範囲を示しているか確認できるようにします。画像だけを保存し、凡例が残っていない状態になると、後から色の意味を判断できなくなるためです。
施工前後や複数工区を比較する場合には、色分け条件も含めて保存しておくと、同じ基準で再表示できます。
ヒートマップの役割は見た目を強調することではなく、差分値の空間的な分布を理解しやすくすることです。色そのものではなく、その背景にある数値を読む姿勢が必要です。
乗入れ部だけを切り出して確認すると異常を見つけやすい
広い道路や歩道全体を一つのヒートマップとして表示すると、歩道乗入れ部のような小さな範囲の変化が目立たなくなる場合があります。
そこで、全体を確認した後に乗入れ部周辺だけを切り出して詳しく見る方法が有効です。
切り出す範囲は、乗入れ部そのものだけでなく、その前後の一般歩道や車道との接続部分も含めます。周囲を少し残すことで、異常候補が乗入れ部だけに存在するのか、周辺から連続しているのかを判断できます。
例えば乗入れ部中央に低い範囲があっても、車道側から同じ傾向が続いているのであれば、乗入れ施工だけを原因と考えるのは早計です。逆に周辺の一般部では差が小さく、乗入れ部に入ったところから急に差が大きくなる場合には、施工境界やすり付け形状を重点的に確認できます。
切り出した範囲について、平面ヒートマップ、三次元点群、縦断、横断を行き来しながら確認すると、異常の位置と形状を理解しやすくなります。
広域表示は全体傾向の把握に向き、拡大表示は局所的な形状確認に向きます。目的に応じて表示範囲を変えることが、出来形ヒートマップを実務で使いこなすポイントです。
点群の外れ値と欠測部を差分として読まない
歩道乗入れ部では、現場条件によって点群に欠測や外れ値が生じることがあります。
例えば計測中に車両や人が通過していれば、本来の舗装面ではない点が混入する可能性があります。また、水たまりや反射条件、対象物の遮蔽などによって、部分的に十分な点が得られないこともあります。
こうした点をそのまま差分計算に使用すると、実際には存在しない高低差がヒートマップ上に現れる場合があります。
特に注意したいのが、周囲から孤立した極端な色です。施工不良による形状変化であれば、通常はある程度の面積や方向性を持って分布することが多いため、一つか二つのセルだけが大きく異なる場合には、元点群を確認したほうがよいでしょう。
欠測部を周辺の値から補間する処理を行う場合にも注意が必要です。実測点が存在しない場所に生成された面を、実際に計測された出来形と同じように解釈すると誤解につながります。
ヒートマップ上でデータがない部分と、設計との差がゼロの部分は意味がまったく異なります。欠測は欠測として認識できる表示にしておくことが重要です。
差分ヒートマップを確認するときには、必要に応じて点群密度や元点群も併せて確認し、「この色を作っている点は実際にどこから得られたのか」を確認できるようにしておくと、誤読を減らせます。
施工途中と完成後を比較すると原因を整理しやすい
歩道乗入れ部で完成後にすり付け不良が疑われた場合、施工途中の計測データが残っていれば、原因を整理しやすくなります。
完成面だけを見ると、最終的な高低差は分かっても、その差がどの工程で生じたのかまでは分かりません。下層の段階から同じ傾向が存在していたのか、表層施工後に初めて現れたのかによって、確認すべき工程が変わります。
例えば下層段階で既に低い帯があり、その上へ同程度の厚さで施工した結果、完成面にも低い帯が残っているのであれば、完成層だけの問題ではない可能性があります。
一方、下層では設計面との差が小さかったにもかかわらず、完成後に局所的な高低差が生じていれば、後工程の施工状態を詳しく確認する材料になります。
ただし施工途中の面と完成設計面を直接比較すると、施工厚分の差が当然生じます。工程ごとに適切な基準面を用意し、それぞれ対応する設計高さと比較する必要があります。
時系列でヒートマップを残しておけば、完成検査だけでなく施工管理にも活用できます。どの工程で形状が変化したのかを視覚的に追いやすくなり、手直しが必要になった場合の範囲確認にも役立ちます。
出来形ヒートマップだけで合否を決めない
出来形ヒートマップは、歩道乗入れ部のすり付け状態を面的に確認するうえで有効ですが、それだけで施工の合否を決めるものではありません。
実際の出来形管理では、対象工事に適用される設計図書、施工条件、発注者側の基準、管理項目などを確認する必要があります。ヒートマップは、それらの確認を補助する可視化手段として位置付けるのが適切です。
また、すり付け部では単純な高さ差だけではなく、連続性や勾配、排水、周辺構造物との関係も重要です。最大差が小さくても、短い距離で急激に高さが変わっていれば利用上の違和感につながる可能性があります。
反対に、一部の差分値が大きくても、それが構造物境界や点群処理によるものであれば、舗装面の施工状態とは別の問題です。
したがって、ヒートマップで異常候補を発見し、元点群、断面、現地状況、必要な管理値を順番に確認する流れが重要です。
出来形ヒートマップは「合否を色で自動判定する図」ではなく、「どこを詳しく確認するべきかを面的に示す図」と考えると、実務で使いやすくなります。
LRTK Phoneで現場計測から差分確認までつなげる
歩道乗入れ部のように限られた範囲を詳しく確認する場合、現場で必要な位置を計測し、そのデータを設計情報と照合できる流れを整えておくと作業を進めやすくなります。
LRTK Phoneを活用する場合も、まず重要なのは計測条件を確認することです。衛星測位を利用する計測では、上空の見通し、周辺構造物、補正情報の受信状態などによって測位結果が変化する可能性があります。そのため、測位状態を確認しながら計測し、必要に応じて既知の位置との照合や再計測を行うことが重要です。
乗入れ部では、全体を一度に計測して終わるのではなく、車道との境界、乗入れ中央、左右端、一般歩道との接続部など、後で差分を確認したい範囲が十分に含まれているかを意識します。
取得したデータを点群や位置情報として整理し、設計面と同じ座標基準にそろえることで、差分確認につなげられます。差分ヒートマップ上で気になる箇所が見つかったら、その位置を現地で再確認し、追加計測するという使い方も可能です。
特に重要なのは、計測から確認までを一方向の作業にしないことです。現地で計測し、差分を見る。差分から異常候補を見つけ、再び現地で確認する。この往復によって、単なる色の違いを施工不良と誤認するリスクを減らせます。
歩道乗入れ部のように小さな範囲で複雑な勾配を扱う場面では、施工後に問題が見つかってから位置を探し直すより、計測時から位置情報と出来形を対応させて記録しておくことが有効です。
現場計測と点群確認、設計との差分確認を一連の作業として整理したい場合には、LRTK Phoneを活用した出来形記録の運用を検討すると、ヒートマップで見つけた箇所を現地確認へつなげやすくなります。
まとめ
歩道乗入れ部のすり付け不良は、一点の高さだけでは判断しにくく、車道から歩道へ続く面全体の形状を確認する必要があります。出来形ヒートマップは、設計面と出来形面との差を面的に可視化できるため、局所的な高まり、低い帯、左右端部の偏り、不自然な勾配変化を探す際に役立ちます。
確認するときには、まず車道側から歩道側へ差分が連続しているかを見ます。次に乗入れ中央と左右端部の分布を比較し、片側だけ不自然な差が続いていないかを確認します。縁石や側溝付近では構造物境界による差を施工不良と決めつけず、元点群を確認します。さらに縦断方向と横断方向の断面を作り、どの方向に形状が変化しているのかを整理します。最後に現地で排水状況や車両の通過位置と照合することで、差分の意味を判断しやすくなります。
差分ヒートマップの作り方では、設計面と出来形面の座標系、高さ基準、比較方向をそろえることが基本です。そのうえで適切なセルサイズを設定し、外れ値や欠測部を整理し、色分けのしきい値を明示します。条件を統一しておけば、施工箇所や施工時期が異なるデータも比較しやすくなります。
また、ヒートマップは色だけで合否を決めるためのものではありません。異常候補を見つけるための入口として利用し、断面、元点群、現地状況、設計条件を組み合わせて確認することが重要です。
歩道乗入れ部の出来形を現場で計測し、設計との差を面的に確認しながら、気になる位置を再び現地で確認できる流れを整えたい場合には、LRTK Phoneを活用した計測と出来形確認の方法へつなげて検討するとよいでしょう。