出来形ヒートマップを作成するときは、設計データとの比較処理だけでなく、その前段階でどの計測データを出来形評価に使うか整理することが重要です。特に注意したいのが、同じ場所を複数回計測したことで生じる重複点群です。施工範囲を往復して計測した場合、別日に追加計測した場合、複数の計測データを統合した場合などには、同じ施工面を表す点が重なることがあります。
重複点群が存在すること自体が直ちに問題になるわけではありません。十分な計測範囲や点密度を確保するため、複数方向や複数回の計測結果を扱うこともあります。しかし、取得時刻、計測条件、測位状態、対象面の状態などが異なるデータを無条件に混在させると、同じ場所に異なる高さや位置の点が残り、出来形評価用データとしてどの点を扱うか判断しにくくなることがあります。
「出来形 ヒートマップ 作り方」を調べている実務担当者にとって重要なのは、単に色を付ける操作ではなく、適用する出来形管理方法に沿って、どの計測点を評価対象にし、設計面との離れ、いわゆる差分をどのように算出するかを整理することです。本記事では、重複点群を含む計測データから出来形ヒートマップを作る際に押さえておきたい考え方を、5つの手順に分けて解説します。
なお、公共工事などで正式な出来形管理資料を作成する場合は、任意の処理ルールだけで判断せず、その工種と計測方法に適用される最新の管理要領、施工管理基準、設計図書などを優先する必要があります。国土交通省は2026年3月改定の「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」を案内しており、出来形管理の監督・検査要領も工種別に公開しています。国土交通省
出来形ヒートマップは設計面と出来形評価用データの差分を見える化する
出来形ヒートマップは、設計上求められる形状と実際の計測結果との離れを、位置ごとの色分けなどによって把握しやすくする表現です。道路、造成地、盛土、掘削面など広い範囲を面的に管理する場合、数値だけを順番に確認するより、差分の分布を面的に確認した方が施工状態の傾向を把握しやすくなります。
ここで重要なのは、公共工事の面管理で使われる出来形ヒートマップを、必ずしも「計測点群から平均面を作り、その面と設計面を比較するもの」と考えないことです。国土交通省関東地方整備局の手引きでは、出来形評価用データは、計測点群データから不要な点を削除し、出来形管理基準を満たす点密度に調整したポイントデータと整理されています。また、出来形管理資料は3次元設計データと出来形評価用データを用い、設計面と出来形評価用データの各ポイントの離れを整理するものとされています。国土交通省 九州地方整備局+1
そのため、「差分の作り方」を考えるときは、まず計測点群と出来形評価用データを区別します。計測点群は計測で取得した多数の3次元座標点であり、そのまま全点を正式な評価対象にするとは限りません。不要点の整理や必要な点密度への調整を行い、適用する要領に沿った出来形評価用データを作成したうえで、各評価点と設計面との離れを算出する考え方が基本になります。国土交通省 九州地方整備局
例えば、同じ施工面を複数回計測し、重複範囲にわずかな位置差や高さ差が見られる場合、両方を無条件に混在させると、評価対象点の分布や結果の見え方に影響する可能性があります。ただし、ここで平均値、中央値、設計値に近い点などを任意に選べばよいという意味ではありません。正式な出来形管理では、採用する計測データ、不要点の扱い、点密度、評価方法について、適用する要領やソフトウェアの仕様を確認する必要があります。
特に「設計値に最も近い点を残す」という処理は、実際の施工状態ではなく設計への近さを基準に点を選ぶことになるため、出来形評価の前処理として安易に採用すべきではありません。重複点群の整理では、望ましい結果になる点を選ぶのではなく、どの計測回が今回の出来形状態を表しているか、どの点が施工対象外や明らかな不要点に当たるかという観点で整理することが大切です。
つまり、出来形ヒートマップの作り方で最初に考えるべきなのは「色の設定」ではなく、「今回の出来形を表す計測データをどのように確定し、適用ルールに沿って出来形評価用データへ整理するか」です。重複点群の確認は、そのための重要な前処理になります。
重複点群が出来形ヒートマップを読みにくくする理由
重複点群とは、同じ場所やほぼ同じ場所について複数回取得された点群が重なって存在する状態を指す実務上の呼び方です。完全に同一の座標を持つ点だけでなく、同じ施工面を別の経路や別の位置から取得した結果、平面位置が近く高さが少し異なる多数の点が重なる場合も、確認対象になります。
重複が発生しやすい場面の一つが往復計測です。施工範囲を一方向に移動して計測した後、反対方向から再度計測すると、中央部分などに二つの計測帯が重なることがあります。測位状態、姿勢推定、対象面までの距離、遮蔽状況などが異なれば、それぞれの点群が完全には一致しない場合があります。
別日に追加計測したデータを統合するときも注意が必要です。前回不足していた範囲だけを補ったつもりでも、既存点群との境界には重複区域ができます。また、施工が進んで表面状態そのものが変化していれば、それは単なる重複ではなく、異なる施工時点の形状を同じデータに混在させることになります。
こうした点群を無条件にまとめると、局所的に点密度が高くなることがあります。ただし、点数が多いだけでヒートマップが必ず不正確になるわけではありません。問題になりやすいのは、同じ施工状態を表すはずの重複データ同士に位置や高さの差がある場合や、施工時点の異なるデータを一つの出来形として扱ってしまう場合です。
例えば、一方の計測帯では設計面に近い高さ、もう一方ではそれより高い位置に点が分布している場合、その重複部分には二つの傾向が存在します。この状態をそのまま評価用データへ入れると、点群の分布や評価結果に帯状の違いが出ることがあります。
ここで注意したいのは、重複点を単純に平均して一つの高さへ置き換えることが、一般的な出来形管理の標準処理とは限らないことです。重複部分の扱いは、計測方法、点群処理方法、工種、適用要領などによって異なります。正式な成果を作る場合は、任意の平均化や代表値化ではなく、適用ルールを確認したうえで処理します。
重複点群整理の目的は、単純にデータ容量を減らすことではありません。今回の出来形状態を表す計測データを明確にし、どのデータから評価結果を作ったのか説明できる状態にすることが目的です。
手順1 使用する点群の範囲と計測単位を整理する
最初の手順は、手元にある点群をすぐに一つへ結合するのではなく、どのデータがどの範囲を、いつ、どのように計測したものか整理することです。
施工現場の点群は、一つのファイルだけで完結しているとは限りません。施工区間ごと、計測日ごと、走行経路ごと、計測回ごとに複数のデータへ分かれていることがあります。最初から全データを結合すると、後から問題のある区域を見つけても、どの計測データに由来する点なのか追跡しにくくなります。
そこで、まず計測データをそれぞれ独立した状態で確認します。同じ施工面を複数回取得している場合は、その重なり方を平面表示や3次元表示で確認します。どこからどこまでが一回目の計測で、どこが二回目と重なるのかを把握するだけでも、後工程での判断がしやすくなります。
この段階では、座標系、高さの基準、単位、データ変換の有無などについても確認しておくことが重要です。見た目では同じ位置に近くても、異なる位置基準や高さ基準のデータを混在させると、点群全体に系統的なずれが生じる可能性があります。
特に高さについては、設計データと計測データが同じ高さ基準で扱われているかを確認します。出来形ヒートマップでは設計面との離れを評価するため、基準がそろっていなければ施工状態とは別の差が結果へ含まれる可能性があります。
また、計測時点の違いも記録しておきます。施工前、施工途中、施工後の点群が同じ保存場所にある場合、それらを誤って一つにまとめると、同じ平面位置に複数時点の地形が存在することになります。これは単なる重複ではなく、時系列の異なる面が混在した状態です。
まず「今回の出来形ヒートマップで表現する施工時点はいつか」を明確にし、その時点に対応した計測データを選ぶことが大切です。不足範囲を追加計測したデータがある場合も、既存範囲と同じ出来形状態を表すものとして扱えるかを確認したうえで統合します。
ファイル名だけでは判断しにくい場合は、計測日時、計測範囲、計測回、追加計測の理由などを追跡できる状態にしておきます。出来形ヒートマップ作成の最初の一歩は、点群を増やすことではなく、今回使う計測データを明確にすることです。
手順2 重複部分を見つけて採用する点群のルールを決める
使用するデータを整理したら、次に重複区域を確認します。重複点群を処理するときに避けたいのは、「重なっている点を一定割合で削除する」「設計に近い方だけ残す」といった、根拠のない機械的な処理です。どのデータを今回の出来形として採用するかは、重複が発生した理由と計測状態を確認して判断します。
まず平面方向から点群の分布を確認します。計測回ごとに表示を切り替えられる環境であれば、一つずつ表示して重なる区域を確認します。左右から取得した点群が帯状に重なっているのか、一部だけ追加計測されているのか、同じ範囲を全面的に再計測しているのかを把握します。
次に、高さ方向の一致状態を確認します。同じ施工状態を計測したデータであれば、重複区域で大きな不整合がないかを確認します。一方、一方だけが全体的に高い、場所によって差が広がる、帯の端部で差が大きいといった状態なら、無条件に二つを混ぜる前に原因を確認した方が安全です。
どちらのデータを採用するかを決める際は、計測時点、計測範囲、測位や標定の状態、対象面の欠測、施工状態の変化、明らかな不要点の有無などを確認します。新しいデータだから常に正しい、点数が多いから常に優れている、と決めつけるのは避けます。
例えば、一回目の計測では大部分を取得できているものの端部に欠測があり、二回目はその不足範囲を補うための追加計測だったとします。この場合、施工状態が同じであることを確認したうえで、一回目を基本とし、不足範囲を二回目で補う運用が考えられます。
反対に、二回目が同じ完成状態を対象とした再計測であり、一回目に明確な計測上の問題が確認されているのであれば、二回目を主体として扱う判断もあり得ます。重要なのは、どの計測データを採用したか、なぜそう判断したかを後から説明できることです。
重複部分を統合する際に、ソフトウェア側で格子化、間引き、代表点選択などの処理が行われることもあります。しかし、その処理が正式な出来形評価用データの作成ルールとして適切かどうかは、使用する環境と適用要領を確認しなければ判断できません。平均値、中央値、最近傍点などを一般的な正解として扱うのではなく、何のための処理なのかを確認することが重要です。
重複点群整理では、点を減らすことより「今回の出来形として採用するデータの範囲と根拠を決める」ことが重要です。後からヒートマップに不自然な色が出たときにも、採用ルールが明確なら原因を追いやすくなります。
手順3 ノイズや施工対象外の点を除いて出来形評価用データを整える
重複する計測データの扱いを整理した後は、出来形評価に使用しない点を確認します。国土交通省関東地方整備局の手引きでは、出来形評価用データについて、計測点群データから不要な点を削除し、さらに出来形管理基準を満たす点密度に調整したポイントデータと整理しています。国土交通省 九州地方整備局+1
現場の点群には施工対象面だけが含まれているとは限りません。作業員、重機、車両、資材、仮設物、植生などが計測範囲に入れば、それらが点群に含まれることがあります。施工対象面の出来形を評価するのに不要な点が残っていれば、設計面との離れが大きい点として現れる場合があります。
こうした施工対象外の点は、適用する処理ルールに従って整理します。ただし、自動的なノイズ除去だけに頼りすぎると、法肩、法尻、縁部、段差、構造物との境界など、本来必要な形状を表す点まで除去する可能性があります。
特に形状が急激に変わる部分では、周囲から離れた点だからといって必ずしもノイズとは限りません。設計上必要な変化点や施工面の端部であることもあるため、設計データや現地状況と照合して判断します。
また、点群を一定密度へ調整する場合も目的を明確にします。点密度の調整は、出来形評価用データを適切な密度へ整える工程の一つになり得ますが、重複した計測回のどちらを採用するかという判断とは同じではありません。
例えば、二つの計測帯に系統的な高さ差がある状態で、全点群を一括して間引いたとしても、高い帯と低い帯の両方が残る可能性があります。点数は減っても、異なる傾向のデータが混在している理由までは解消されません。
そのため、「どの計測データを今回の出来形として使うかを整理する」「施工対象外や不要な点を確認する」「適用基準を満たすよう点密度を調整する」という工程を分けて考えると整理しやすくなります。
なお、点群からTINを作って出来形地形の面を構築する処理もありますが、少なくとも国土交通省関東地方整備局の手引きでは、出来形評価用データはポイントデータ、出来形計測データのTINは数量算出に利用するデータとして区別されています。出来形ヒートマップの差分評価と、数量算出用の面生成を混同しないことが重要です。国土交通省 九州地方整備局+1
点群を整えた後は、上面表示だけでなく斜め方向や断面でも確認します。平面表示では一枚の面に見えていても、横から見ると上下に複数の帯として分かれていることがあります。差分計算前にこうした状態を確認しておけば、ヒートマップ作成後の手戻りを減らしやすくなります。
手順4 設計面と出来形評価用データの基準をそろえて差分を計算する
出来形評価用データを整理できたら、3次元設計データとの比較へ進みます。出来形ヒートマップの差分を適切に読み取るためには、設計データと計測データが同じ位置基準、高さ基準、単位などで扱われていることが前提です。
まず確認したいのが座標位置です。3次元設計データと点群を重ね、施工境界、構造物、法肩や法尻など確認しやすい位置の関係を見ます。全体が一定方向へずれているように見える場合は、施工差だけでなく、座標系、標定、データ変換、基準点との整合などを確認します。
高さについても同様です。施工範囲全体がほぼ同じ傾向で高い、または低い結果になった場合、実際の施工状態だけでなく、高さ基準やデータ変換が一致しているかを確認する価値があります。
基準を確認したら、適用する出来形管理方法に従って設計面と出来形評価用データの各ポイントとの離れを算出します。国土交通省の手引きでは、3次元設計データと出来形評価用データの各ポイントの離れを用いて出来形管理資料を作成する考え方が示されています。国土交通省 九州地方整備局
ここでいう「差分」は、工種や管理方法によって標高較差または水平較差などとして扱われます。単純にすべての施工面で同じ方向の距離を計算すればよいとは限りません。特に法面や勾配変化部では、適用する管理項目と評価方向を確認する必要があります。国土交通省の監督・検査要領でも、実地検査の確認内容として3次元設計データの設計面と実測値との標高較差または水平較差が示されています。国土交通省
したがって、一般的な3次元ソフトウェアにある「鉛直距離」「最近傍距離」「面法線方向距離」などを、確認せず同じ意味の差分として扱うのは避けた方が安全です。出来形管理で求められている差分の定義と、ソフトウェアで選択している計算方法が一致しているかを確認します。
また、正式な出来形管理では、ヒートマップの色区分も任意に決めればよいとは限りません。国土交通省の監督・検査要領では、離れの計算結果を規格値に対する割合で示し、-100%から+100%の範囲をポイントごとに色分けし、±50%付近、±80%付近、規格値外を区別できるようにする考え方が示されています。国土交通省+1
そのため、正式な出来形管理資料として作成する場合は、見やすさだけを理由に独自の色閾値へ変更せず、適用する要領や規格値に従います。一方、施工中の社内確認など、正式な出来形管理資料とは別目的の参考表示であれば、目的に合わせた色区分を使うことも考えられます。その場合も、正式な判定用ヒートマップと混同しないよう表示条件を明確にしておくと安全です。
重複点群との関係では、差分計算の直前に、今回の出来形状態を表す評価用データが確定していることが重要です。異なる施工時点や計測条件の点が混在したままでは、ヒートマップに現れた色の差が施工差なのか計測データの混在なのか判断しにくくなります。
手順5 ヒートマップを確認して重複点群の影響を再点検する
ヒートマップを作成したら完成ではありません。最後の手順として、表示結果から点群整理が適切だったかを逆に確認します。
注目したいのは、施工形状では説明しにくい色の境界です。例えば、計測経路に沿った帯状の色変化が現れている場合、複数の計測帯の間に位置や高さの差が残っている可能性があります。
走行方向に沿って細長い色の帯が続く場合も同様です。実際の施工状態としてそのような形状が存在する可能性もあるため、色だけで原因を決めつけず、計測帯の境界と一致しているか、元点群に同様の段差があるかを確認します。
また、特定の区域だけ細かな色が斑点状に切り替わる場合は、不要点、局所的な点密度差、表面状態、計測条件など複数の原因が考えられます。ヒートマップだけで原因を決めず、元の計測点群へ戻って確認します。
ここで有効なのが、ヒートマップ上で気になった位置を点群表示と対応させることです。色が急変する地点の周辺を断面方向から見て、点群が一つの帯として分布しているのか、上下に複数層があるのかを確認します。
重複区域の境界だけで結果が変化している場合は、手順2へ戻り、どの計測回を今回の出来形として扱うかを再確認します。ただし、正式な出来形評価で一度作成したデータから任意に点を除外して結果を整えるのではなく、除外根拠が施工対象外、明らかな不要点、別施工時点のデータなどとして説明できるかを確認します。
ここで大切なのは、望ましい色になるよう点を消すのではなく、計測事実と適用ルールに基づいて判断することです。ヒートマップの色を均一にすることが目的ではありません。今回の出来形を表す評価データを適切に確定し、その結果として設計面との差がどのように分布しているか確認することが目的です。
出来形に関係するデータであれば、処理前の点群を保存し、どのデータを採用し、どの点を不要点として扱ったのか追跡できる状態にしておくと、再確認や説明がしやすくなります。修正済みデータだけを残してしまうと、後から処理内容を確認しにくくなります。
ヒートマップ作成は一方向の作業ではありません。「計測データ整理、出来形評価用データ作成、差分計算、結果確認、必要なら元データへ戻って原因確認」という流れを持つことで、説明しやすい結果へ近づけられます。
点密度を減らすことと重複点群を整理することは同じではない
重複点群を扱う際に混同しやすいのが、点密度の調整です。高密度な点群を評価に必要な密度へ調整したり、処理負荷を抑えるために点数を減らしたりすることがあります。しかし、点密度を減らすことと、異なる計測回の重複を整理することは同じではありません。
一つの施工面を表す大量の点が存在している場合は、適用する基準に沿って点密度を調整することで、出来形評価用データを作成できます。国土交通省関東地方整備局の手引きでも、出来形評価用データを、不要な点を削除したうえで出来形管理基準を満たす点密度に調整したポイントデータと定義しています。国土交通省 九州地方整備局+1
一方、同じ場所に異なる高さ傾向を持つ二つの計測回が重なっている場合、全体を一律に間引いても両方の傾向が残る可能性があります。点数は減っても、異なる計測回を混在させた理由は解消されません。
つまり確認すべきなのは点の数だけではなく、点がどの計測回、どの施工時点、どの施工対象を表しているかです。
重複点群を整理するときは、まず計測単位ごとの位置関係と施工時点を見ます。その後、今回の出来形に使うデータを確定し、不要点を整理し、必要に応じて適用基準を満たす点密度へ調整します。
また、過度に点を減らせば、法肩、法尻、構造物際、細かな段差など形状変化の大きい場所を表現しにくくなる場合があります。点密度の調整は、単にデータを軽くするためだけでなく、適用する出来形管理基準と計測対象の形状を踏まえて行うことが重要です。
点群処理では「多いほど良い」「少ないほど扱いやすい」という単純な判断ではなく、正式な評価に必要な計測情報を残す考え方が必要です。
高さ方向の重複は断面表示でも確認する
出来形ヒートマップを平面表示だけで作業していると、高さ方向の重複を見落とすことがあります。同じ平面位置付近に複数の点が重なっていても、真上から見れば一つの面のように見えるためです。
そこで、重複区域やヒートマップ上で色が不自然に変化する区域では、点群の断面を確認します。施工面を横切るように断面を設定すると、点群が一つの帯として分布しているのか、上下に二つ以上の帯へ分かれているのか判断しやすくなります。
もし二つの層が確認できた場合は、それぞれがどの計測データに由来するかを確認します。片方が追加計測、片方が初回計測であれば、施工時点や計測状態を確認し、今回の出来形としてどのデータを扱うべきか検討します。
重複点群以外にも、施工面の上側や周辺に別の物体の点が残っている場合があります。例えば対象面の近くに構造物、資材、植生などがあると、断面上では複数層の点に見えることがあります。そのため、二層になっているから直ちに計測誤差と判断せず、現場状況とデータ属性を合わせて確認します。
断面確認は、設計面との位置関係を見るときにも有効です。計測点群だけを見るのではなく、設計面も同じ断面へ表示すれば、どの位置から差が広がっているのか確認しやすくなります。
特に傾斜面では、平面ヒートマップだけで差分の原因を判断しにくい場合があります。断面を併用し、設計面と計測点の位置関係を確認することで、単純な高さ差なのか、平面方向の位置関係も影響しているのかを切り分けやすくなります。
複数日の点群を統合するときに注意したいこと
出来形計測では、一日ですべての範囲を取得できないことがあります。施工区間が広い場合や、施工進捗に合わせて順番に計測する場合、複数日に分けた点群を一つの出来形データとして扱うこともあります。
このとき重要なのは、同じ場所を異なる施工状態で計測していないか確認することです。
例えば一日目に施工途中の面を計測し、二日目に仕上げ後の同じ場所を再計測した場合、二つのデータは同じ対象を重複取得しただけではありません。異なる施工状態を記録したデータです。両方をそのまま統合すると、一つの場所に施工途中と完成後の二つの形状が混在します。
追加計測の場合も同様です。欠測部分を補うことが目的であれば、既存点群と追加点群の境界を確認し、同じ施工状態として扱えるか、重複区域に系統的なずれがないかを確認します。
複数日にまたがる場合は、降雨、乾燥、施工車両の通行、追加施工などによって対象面の状態が変化することがあります。したがって、「同じ座標範囲だから結合できる」と考えるのではなく、「同じ出来形状態を表しているか」という視点で判断します。
統合が必要な場合は、重複区域で両データの位置関係を確認します。境界部で連続性が確認できれば統合しやすい一方、一定方向の段差や帯状のずれがある場合は、その原因を確認してから扱いを決めます。
複数回計測する運用では、計測日、施工状態、計測範囲、追加計測の理由、採用データなどを記録しておくと、後の点群整理や再確認がしやすくなります。
出来形ヒートマップ作成前後の確認記録を残す
出来形ヒートマップは最終成果だけを見ると一枚の色分け図ですが、その背景には計測データの選択、不要点の整理、座標確認、点密度調整、差分計算、規格値の適用など複数の工程があります。
そのため、完成したヒートマップだけでなく、どの計測データから作成したか追跡できるようにしておくことが重要です。
まず、元の計測データと処理後データを区別して保存します。元データを直接上書きしてしまうと、ヒートマップに疑問が出たときに元の状態へ戻りにくくなります。
また、複数の点群から一部を採用した場合は、その判断が後で分かるようにしておきます。特に重複区域で一方の計測回を使用しなかった場合は、どの計測回を採用したのか、どの範囲を補完したのかが分かるようにします。
出来形ヒートマップを再作成するときには、差分計算時の設定も重要です。使用した3次元設計データ、出来形評価用データ、評価方向、適用した規格値、色分け条件などが変われば、表示結果も変わり得ます。
作成者だけが設定を覚えている状態では、別の担当者が確認したときに同じ結果を追跡しにくくなります。ヒートマップを施工管理や関係者間の確認に利用するのであれば、作成条件を確認できる状態にしておくことが望まれます。
また、現場でヒートマップを確認して再計測した場合は、その区域を新しいデータへ置き換えたのか、既存データの不足部分として追加したのかを明確にします。追加計測を繰り返してすべての点を積み重ねるだけでは、施工時点や計測条件の異なる重複データが増える可能性があります。
「計測する」「追加する」「統合する」だけでなく、「今回の出来形を表す計測データを確定する」という工程を設けることが重要です。
まとめ 重複点群を整理して読みやすい出来形ヒートマップを作る
出来形ヒートマップの作り方で重要なのは、設計面との差分計算を始める前に、今回の出来形を表す計測データを整理し、適用する出来形管理方法に沿った出来形評価用データを準備することです。
特に同じ区域を複数回計測した現場では、点が多いからそのまま評価に有利になるわけではありません。異なる取得時点や計測条件の点群が重なっていれば、同じ場所に異なる傾向の点が混在し、ヒートマップの結果を解釈しにくくなることがあります。
まず使用する計測データと施工時点を整理し、次に重複区域を確認します。そのうえで、今回採用する計測データの根拠を明確にし、施工対象外や不要な点を整理します。そして、適用基準を満たす点密度の出来形評価用データを準備し、3次元設計データと位置基準、高さ基準、単位などをそろえて差分を算出します。
正式な面管理では、任意に平均面や中央値面を作って設計面と比較するのが共通ルールではありません。国土交通省の手引きでは、出来形評価用データの各ポイントと3次元設計データの設計面との離れを用いて出来形管理資料を作る考え方が示されています。国土交通省 九州地方整備局+1
ヒートマップに不自然な色が出たときは、色設定だけを変更して解決しようとせず、元の点群まで戻って確認することが大切です。計測帯の境界と色の境界が一致していないか、断面で点群が複数層になっていないか、追加計測データが異なる施工時点の点と混在していないかを確認することで、原因を切り分けやすくなります。
また、重複点群整理と点密度調整は別の工程として考える必要があります。点数を減らしただけでは、異なる計測回や施工時点が混在している問題まで解消されるとは限りません。最初に今回使う計測データを明確にし、その後で不要点の整理や点密度の調整を行うことが重要です。
出来形ヒートマップは、単に点群へ色を付ける作業ではありません。どの計測データを評価に用い、適用するルールに基づいて設計面との「差分」をどのように作ったのか説明できる状態にすることが重要です。
現場での計測から点群確認、出来形データ作成までをできるだけ一連の流れとして扱いたい場合は、計測データを後工程でどのように利用するかまで見据えて機器や運用方法を選ぶと整理しやすくなります。現場で位置情報を利用した計測やデータ活用を進める方法を検討している場合は、LRTK Phoneを活用した現場計測の仕組みもあわせて確認してみてください。