地盤改良工事で埋設管との干渉確認が重要な理由
地盤改良工事では、計画された改良範囲と既設の埋設管が接近したり、施工機械の作業範囲に埋設管が入ったりする可能性があります。地盤改良というと、建物や構造物の支持力確保、沈下対策、液状化対策など地盤そのものに注目しがちですが、実際の現場では地中に給排水管、電力系統、通信系統、ガス系統、仮設配管などが存在する場合があります。
特に注意したいのは、図面上で改良体と埋設管が直接重なっていなければ問題ないとは限らない点です。施工では、削孔、攪拌、圧入、注入、掘削、機械据付、資材搬入など、計画された改良体そのものより広い範囲に作業が及ぶ場合があります。施工方法によっては地盤変位や振動などを考慮する必要があり、埋設管との関係は単純な平面上の交差だけでは判断できません。
そこで役立つのが、埋設管の位置情報を現地の景色に重ねて確認する埋設管AR表示です。平面図だけでは把握しにくい改良範囲と既設管の位置関係を現場で視覚的に確認できれば、事前確認や関係者間の認識合わせを進めやすくなります。
ただし、ARに表示される位置は、元となる埋設管データや座標系、高さ基準、測位状態などの影響を受けます。画面上で管が改良範囲から外れて見えていることだけを根拠に、「干渉しない」と判断する使い方は適切ではありません。
埋設管AR表示は、埋設管がどの方向を通っている可能性があるのか、どこで改良範囲と接近するのか、追加確認をどこで行うべきかを検討するための補助手段として使うことが重要です。図面、施工計画、現地設備、探査結果、必要に応じた試掘などを組み合わせることで、地盤改良前の確認をより確実に進められます。
埋設管AR表示を使う前に整理したい前提条件
地盤改良範囲と埋設管の干渉をARで確認する前に、まず何を基準として比較するのかを整理する必要があります。AR表示を開始してから現場で考えるのではなく、事務所で扱うデータと現地で確認する情報をあらかじめ対応させておくことが重要です。
最初に確認したいのは、地盤改良計画の対象範囲です。改良体の中心位置、径や幅、深さ、配置、改良底、施工順序などを確認します。面的な改良の場合と柱状の改良体を多数配置する場合では、埋設管との見方も異なります。計画図に描かれた線だけでなく、実際に施工機械が地盤へ作用する範囲まで理解しておく必要があります。
次に、埋設管データの基準を確認します。平面位置だけが記録されているのか、高さ情報も含まれているのか、管中心なのか管頂なのか、あるいは地表面からの土被りとして管理されているのかによって、AR表示の解釈が変わります。
高さの扱いは特に注意が必要です。地盤改良前に造成や掘削、盛土が行われる場合、現在の地盤面と設計上の地盤面が一致していないことがあります。埋設管の深さが「地表から何メートル」という形だけで管理されている場合には、その地表がいつの状態を示しているのかを確認しなければなりません。
座標系や高さ基準が異なるデータをそのまま重ねれば、AR上ではもっともらしく見えても実際にはずれている可能性があります。地盤改良データと埋設管データを同じ基準で扱える状態にしてから現地確認へ進むことが基本です。
さらに、改良工事だけでなく、その前後の工程も確認します。表土撤去、掘削、路盤撤去、仮設工、機械据付、残土搬出などが埋設管へ接近するケースがあります。AR表示で確認する対象を「改良体だけ」に限定せず、工事全体の中で埋設管に近づく作業を整理しておくことが大切です。
判断1 埋設管データの根拠と更新状況を確認する
埋設管AR表示で最初に判断すべきなのは、画面に表示している埋設管データをどこまで信頼できるかです。高精度なAR表示ができたとしても、元の埋設管位置が不正確であれば、表示結果もその不確かさを引き継ぎます。
まず、埋設管データが何を根拠に作成されたものかを確認します。竣工時の測量結果を座標化したものなのか、既存図面から位置を読み取ったものなのか、過去の試掘結果なのか、現地探査から推定したものなのかによって、位置情報の意味が異なります。
同じ一本の線としてAR表示されていても、実測による座標と古い図面から推定された線では信頼性が同じとは限りません。そのため、AR上の表示方法だけでなく、データの出所を施工前に把握しておく必要があります。
更新状況も重要です。既設管は、建物改修、外構改修、道路工事、設備更新などによってルートが変更されている場合があります。過去の図面が残っていても、その後に施工された切り回しや撤去、新設管が反映されていなければ、現在の埋設状況と一致しません。
また、図面に残っている管が現在も供用中とは限らず、逆に図面にない管が残置されている可能性もあります。現場によって管理状況は異なるため、AR表示に一本の線が出たことを「現地の全埋設物が表示された」と解釈しないことが重要です。
地盤改良範囲へ近い埋設管ほど、データの信頼性を重点的に確認します。改良範囲から十分離れた管と、改良体端部付近を通る管では、必要となる確認の程度が同じとは限りません。
たとえば、改良体と埋設管の距離が小さく、わずかな位置差によって施工可否の判断が変わる区間では、図面上の線だけを根拠に進めず、現地設備との照合や追加探査、必要に応じた試掘を検討します。
ARの役割は、データの精度を自動的に高めることではありません。データが示している位置を現地で理解しやすくし、「ここは改良範囲と近いので詳しく確認する必要がある」と判断するために活用することが有効です。
判断2 地盤改良の施工範囲と作業影響範囲を分けて確認する
地盤改良工事で埋設管干渉を判断するときは、図面上の改良範囲だけではなく、施工時の作業影響範囲まで考える必要があります。
設計図には、改良体の中心、外周、深度などが示されています。しかし、施工機械はその線上だけで作業するわけではありません。機械本体を据え付ける場所、施工ロッドなどが動く位置、資材を配置する場所、作業員が確認する範囲、施工前の掘削範囲などが周囲へ広がります。
そのため、ARで埋設管を表示するときは、「改良体の中に入っているか」という二者択一だけで判断しないことが重要です。改良体の外側に管が表示されていても、施工準備や機械移動によって影響を受ける位置であれば、事前確認の対象になります。
また、地盤改良機を現場へ進入させる経路にも埋設管がある場合があります。施工位置そのものから離れていても、重量のある機械が繰り返し通行する場所や、アウトリガーなどで荷重が集中する場所に浅い埋設管が存在すれば、別の観点から確認が必要になることがあります。
AR表示を活用する場合には、計画改良範囲だけを見るのではなく、施工ヤード全体を歩いて埋設管の通過位置を確認すると効果的です。施工位置から少し離れた場所にあるマンホール、弁、桝などの地上設備から管路が改良エリアへ向かっていないかも確認できます。
さらに、地盤改良工事では現場条件によって施工位置を微調整するケースがあります。障害物の発見、機械据付条件、既設構造物との関係などにより、計画位置から変更する場合は、当初の干渉確認だけでは足りません。
改良位置を変更した場合には、新しい位置を基準として再度埋設管との関係を確認します。「数十センチ程度の移動だから問題ない」と感覚的に判断するのではなく、その変更によって埋設管へ近づいていないかを確認することが大切です。
AR表示は、このような施工範囲と周辺設備との関係を現地で共有する用途に向いています。図面では別々に管理されている改良計画と埋設管情報を現場空間の中で比較することで、見落としやすい接近区間を抽出しやすくなります。
判断3 埋設管の平面位置と深さを立体的に確認する
地盤改良範囲と埋設管との干渉は、平面位置だけで判断できません。同じ場所を通っているように見えても、高さ方向で十分離れている場合があります。一方、平面上では少し離れていても、斜めに施工する設備や掘削範囲などを考慮すると注意が必要になることがあります。
そのため、埋設管AR表示では平面方向と高さ方向の両方を見ることが重要です。
まず、埋設管データに高さ情報が含まれているかを確認します。高さが登録されていないデータを、画面上で立体的な管として表示できたとしても、その高さが実測値であるとは限りません。表示上の立体感とデータそのものの精度を混同しないようにします。
高さ情報がある場合でも、その値が管中心、管頂、管底などのどこを示しているのかを確認します。太い管では、中心と管外面との距離を無視できない場合があります。地盤改良との最小離隔を考えるのであれば、一本の中心線同士だけでなく、実際の管径や改良体外周を考慮する必要があります。
また、埋設深さと標高は区別して扱う必要があります。「地盤面から1メートル下」という情報は、地盤面が変化すると同じ位置を意味しません。造成前後で地盤高が変わる現場では、現在地盤からの深さだけで比較すると誤解が生じる可能性があります。
可能であれば、地盤改良計画と埋設管の双方を共通の高さ基準で確認し、現在の現地条件との関係も照合します。既知の高さを持つ基準点や構造物などが利用できる場合には、それらとの整合も確認材料になります。
ARで立体表示すると、改良体と配管が上下にどのような関係になっているかを直感的に把握しやすくなります。特に複数の埋設管が交差している場所では、平面図だけよりも関係を理解しやすくなる可能性があります。
ただし、画面上で数センチ離れて見えることを、そのまま現地で確保された離隔とみなすことは避けます。AR表示には測位状態や姿勢推定、元データなどに起因するずれがあり得るため、接近した場所ほど他の確認方法を併用することが重要です。
地盤改良との干渉を判断するときは、「線が重なっているか」ではなく、「埋設管が存在する可能性のある範囲と施工が影響する範囲が接近していないか」という考え方で確認すると安全側の判断につなげやすくなります。
判断4 地盤改良工法ごとの影響を考慮して離隔を判断する
地盤改良と埋設管との適切な距離は、単純に一つの数値だけで決められるものではありません。施工方法、地盤条件、管種、管径、埋設深さ、周辺構造物などによって確認すべき事項が変わります。
地盤改良には、地盤を攪拌する方法、固化材などを用いる方法、材料を圧入する方法などさまざまな施工方法があります。使用する機械や施工手順も異なるため、埋設管への影響を検討するときは、実際に採用する工法を前提に判断する必要があります。
たとえば、改良体そのものが埋設管へ接触しなくても、施工時の掘削や先行作業が埋設管に近づく場合があります。施工に伴う地盤の変位、振動、周辺への影響について検討が必要となる工法もあります。
したがって、「AR画面で改良体と管が離れているから施工できる」という判断では不十分です。施工計画と照らし合わせて、何がどの範囲まで作用するのかを確認する必要があります。
既設管の種類や状態も判断材料です。同じ距離にある埋設物でも、材質、継手、経年状況、用途などによって注意すべき条件は異なります。重要設備につながる管や停止が難しい管が近接している場合には、より慎重な確認が必要になることがあります。
現場で離隔を判断するときは、施工会社、設計者、施設管理者、埋設物管理者など、必要な関係者と確認基準を共有することが重要です。AR表示を見た担当者一人が独自に安全距離を決定するような運用は避けるべきです。
埋設管AR表示は、こうした検討の入口として活用できます。改良位置を現場で確認しながら、「この管とこの改良体が近い」「この区間は機械の施工範囲と重なりそうだ」といった箇所を抽出すれば、その後の技術的な検討対象を絞り込みやすくなります。
地盤改良工事では、平面上の距離だけでなく、深度、施工方法、施工順序、機械条件などを含めて判断します。ARはその複雑な位置関係を理解しやすくする手段として使い、最終的な施工可否については現場条件と施工計画に基づいて判断することが大切です。
判断5 AR表示を地上設備や探査結果と照合する
AR表示が現地と合っているかを確認するためには、地上から確認できる設備との照合が有効です。
埋設管に関連するマンホール、桝、弁、引込位置、建物への取り合い部などが確認できる場合、それらとAR上の管路が自然につながっているかを見ます。地上設備そのものの位置が測量された基準点とは限りませんが、明らかな食い違いを発見する手掛かりにはなります。
たとえば、ARでは管がマンホールから大きく離れた位置を通っているように表示されている場合、元データ、座標変換、測位状態などの確認が必要です。反対に一地点で一致して見えたとしても、それだけで管路全体が正しいとは判断できません。
なるべく複数地点で確認することが重要です。施工エリアの一方では合っていても、反対側ではずれている場合、座標の扱いや元データの形状などに問題がないか確認します。
地中探査を実施している現場では、その結果との照合も有効です。AR上の位置と探査結果が近ければ、確認材料の一つになります。反対に差が大きい場合には、どちらか一方を直ちに正しいと決めず、それぞれのデータ取得条件を確認することが大切です。
探査結果にも対象物や地盤条件などによる不確実性があるため、ARとの一致だけで埋設管位置を確定するものではありません。複数の情報を比較して、不確実性が大きい場所を見つけることが目的です。
特に地盤改良範囲の端部、改良体どうしの間、埋設管の曲がり部、分岐部、既設構造物との取り合い部などでは、重点的に照合すると効果的です。直線区間では問題なく見えても、分岐や曲がりの位置が図面と実際で異なっていることがあります。
また、測位状態が不安定な場所では、AR表示そのものがずれる可能性があります。建物際、構造物付近、上空が遮られる場所などでは、表示位置をそのまま信頼せず、測位状態を確認しながら使用します。
埋設管AR表示は「見るための技術」だけではなく、「違和感を発見するための技術」として使うと効果的です。現地設備や探査結果と比較し、「なぜここで位置が合わないのか」と考えることで、施工前に追加確認が必要な場所を抽出できます。
判断6 不確実な区間は試掘や計画変更を含めて判断する
地盤改良範囲と埋設管が近接し、データだけでは位置を十分に確定できない場合には、不確実なまま施工へ進まないことが重要です。
AR表示、図面、地上設備、探査などを確認しても、実際の管位置を判断できないことがあります。このような区間では、必要に応じて試掘などによる直接確認を検討します。どの方法を採用するかは現場条件や管理者の手順に従って決定します。
試掘を行う場合も、AR表示を使って候補位置を絞り込むことができます。埋設管が改良範囲へ最も接近すると考えられる位置や、分岐部、曲がり部などを事前に把握しておけば、確認計画を立てやすくなります。
ただし、ARで示された一点だけを掘れば十分とは限りません。管路がどの方向に続いているか、改良範囲との最小距離がどこになるかを確認する必要があるため、施工条件によっては複数地点で確認することも検討します。
実際の配管位置が計画と異なっていた場合には、地盤改良位置を変更できるか、改良方法を変更する必要があるか、配管側の対応が必要かなどを関係者で検討します。現場担当者だけで位置を少しずらして施工するのではなく、変更による構造上・施工上の影響を確認することが重要です。
さらに、「これ以上位置が不明なら施工を止める」という判断基準を事前に決めておくことも有効です。施工当日に不確実な埋設管が発見された場合、工程を優先して作業を続けてしまうと、リスクが高まります。
事前に中止条件や確認手順を共有しておけば、担当者が迷いにくくなります。AR表示のずれが大きい、図面と現地設備が一致しない、想定していない埋設物が見つかったなどの状況では、施工を進める前に再確認する運用が必要です。
ARは施工を続行するための根拠として使うよりも、「追加確認が必要な場所を早く見つける」用途に使う方が安全な運用につながります。
改良体の端部や重複部では埋設管を重点的に確認する
地盤改良範囲の中でも、特に確認しておきたいのが改良体の端部です。改良範囲中央に埋設管が入っている場合は図面上でも気づきやすい一方、外周ぎりぎりを通る配管は見落とされる可能性があります。
AR表示を使う場合には、改良範囲の境界に沿って現地を確認し、埋設管が接近している区間を探します。管路と改良範囲が斜めに交差する場合は、短い区間だけ接近していることもあるため、全体を連続して確認することが重要です。
複数の改良体が近接する場所も注意が必要です。一つの改良体からは離れていても、隣接する改良体との関係や施工順序を考えると確認が必要になることがあります。
また、改良体の配置変更によって端部位置が変わった場合には、変更後のデータで再確認します。古い施工計画をAR表示したまま、新しい位置で施工することがないよう、データの版管理も重要です。
現場では改良体番号などを使って管理し、どの改良体とどの埋設管が接近しているのかを記録しておくと、施工時の確認につなげやすくなります。単に「北側に管あり」とするより、具体的な施工位置と対応づけて共有する方が認識のずれを減らせます。
地盤改良機の進入経路や据付位置にも注意する
地盤改良工事で見落としやすいのが、改良位置まで機械を移動させる経路です。埋設管との干渉確認というと地中へ施工する位置ばかりに注意が向きますが、施工機械や資材運搬車両が通行する場所も確認対象です。
既設管が浅い場所では、地表からの荷重について検討が必要になるケースがあります。特に地盤条件が変わっている場所や、過去に掘り返された埋戻し部分などでは、現地条件を確認して施工計画へ反映することが大切です。
機械を据え付ける位置についても同様です。施工機械の支持位置と埋設管が近い場合には、改良体とは干渉していなくても別途確認が必要になる可能性があります。
ARで埋設管を表示しながら施工ヤードを歩けば、施工位置だけでなく、進入経路、旋回する場所、資材置場などとの位置関係も確認できます。平面図を見るだけでは見落としやすい「施工前後の動線と埋設管との接近」を現地で把握しやすくなる点は、AR活用の大きな利点です。
ただし、AR上で管を避けているように見えることだけで機械通行の安全性を判断するものではありません。埋設深さや管の状態、地盤条件、車両荷重などについて必要な検討を行い、現場の施工計画に基づいて判断します。
施工中に計画変更が生じた場合はAR表示も再確認する
地盤改良工事では、施工開始後に想定外の地中障害物や施工条件の違いが判明し、改良位置や施工順序を変更することがあります。そのときに注意したいのが、施工計画だけを変更して、埋設管との干渉確認を更新しないことです。
当初計画では十分に離れていた埋設管でも、改良体を移動した結果、接近する場合があります。逆に、障害物回避のために機械の据付位置を変更したことで、別の埋設管の上へ機械が近づくことも考えられます。
位置を変更した場合には、変更後の改良位置をデータへ反映し、ARでもう一度確認することが理想的です。変更量の大小だけで再確認の要否を判断するのではなく、埋設管との関係が変わったかを見ることが重要です。
また、施工途中で新たな配管が発見された場合には、その情報も記録して後続作業へ共有します。発見した場所を一人の担当者だけが覚えている状態では、次の施工班へ情報が引き継がれない可能性があります。
現場で確認した位置を座標や写真などと組み合わせて残せれば、後から施工計画と比較しやすくなります。施工前のAR確認と施工中の記録をつなげることで、その場限りの確認ではなく、工程全体の情報管理へ発展させることができます。
埋設管AR表示で確認した内容を記録して共有する
埋設管AR表示は、その場で位置を見るだけで終わらせず、確認した内容を記録することで実務上の価値が高まります。
地盤改良前に確認した場所について、どの埋設管を確認したのか、どの改良体と接近しているのか、追加確認が必要なのか、探査や試掘を実施したのかなどを整理します。
特に、現地確認によって図面との差が見つかった場合には、どの程度の差があったのかを記録します。単に図面へ手書きで修正するだけでは、その情報がいつ、どのような方法で確認されたのか分からなくなる場合があります。
位置情報と写真を組み合わせて残せれば、後から施工担当者や管理者が現場状況を確認しやすくなります。写真を撮影する際には、対象となる改良体や周辺設備との関係が分かるようにすると、記録の利用価値が高まります。
また、AR確認時のデータ版を明確にしておくことも重要です。改良計画や埋設管データが更新された場合、過去にどのデータを見て判断したのか分からなくなると、確認のやり直しが必要になる可能性があります。
施工前確認、探査、試掘、施工位置変更などの情報を一連の履歴として扱えば、後続工程で同じ確認を繰り返す負担を減らしやすくなります。
地盤改良後に配管工事や外構工事が続く場合にも、ここで整理した情報を活用できます。地盤改良工事だけのために埋設管位置を確認するのではなく、現場全体で利用できる位置情報として蓄積する視点が重要です。
埋設管AR表示だけで干渉の有無を確定しない
埋設管AR表示は、地盤改良工事の施工前確認を効率化する有力な手段ですが、AR表示だけで埋設管との干渉有無を確定することは避ける必要があります。
ARで表示される管の位置には、元データの精度、測位状態、座標系、高さ基準、端末の状態など複数の要素が関係します。そのため、画面上で改良範囲と管が離れて見えていても、その距離をそのまま実際の離隔として扱うことはできません。
逆に、AR上で重なって見えた場合にも、直ちに現地で接触していると決めるのではなく、データや測位状態を確認します。ARはあくまで現地確認を助ける表示方法であり、地中を直接見ているわけではありません。
安全な運用のためには、図面、埋設物管理情報、現地設備、測量結果、探査結果、試掘など、複数の情報を組み合わせます。特に地盤改良範囲へ近接する管については、施工方法や管の重要度も踏まえ、必要な確認手順を決定します。
施工開始前には、関係者間で「どこまで確認できているか」を共有することも重要です。「ARで確認済み」という表現だけでは、位置を見ただけなのか、探査まで実施したのか、試掘して実物を確認したのか分かりません。
確認方法と確認結果をセットで共有することで、施工担当者が情報の確度を理解しやすくなります。
埋設管AR表示は、確定情報と推定情報の違いを意識しながら使うことで、より安全な現場判断へつなげられます。
LRTK Phoneで地盤改良前の現地確認を効率化する
地盤改良前の埋設管確認では、事務所で図面を見ただけでは分かりにくい位置関係を現地で確認する作業が多く発生します。改良体の配置と既設管の位置を別々の図面で確認していると、現場でどこが最も接近しているのかを直感的に把握しにくい場合があります。
こうした場面では、位置情報を現地空間に重ねて確認できるLRTK Phoneを活用する方法があります。
埋設管や地盤改良計画を位置情報として扱い、現地でAR表示できれば、改良体と既設管が近づく場所を実際の施工場所を見ながら確認できます。図面上では分かりにくかった曲がり部、改良範囲の端部、建物際なども、現場の景色と重ねることで確認しやすくなります。
また、事前確認の段階で施工エリアを歩き、埋設管と改良位置の関係を確認しておけば、探査や試掘を重点的に行う場所の検討にもつなげられます。全範囲を同じ密度で確認するのではなく、ARを使って接近箇所や不整合箇所を抽出し、そこへ追加確認を集中させるという使い方です。
施工中に計画位置が変わった場合にも、変更後のデータを反映して再確認する運用ができれば、紙図面だけで変更内容を追う場合より位置関係を共有しやすくなります。
さらに、現地で確認した位置や状況を記録しておけば、施工担当者だけでなく、管理者や後続工程の担当者とも情報を共有しやすくなります。埋設管AR表示を単なる視覚化で終わらせず、施工前確認、現地記録、情報共有を一連の流れとして運用することがポイントです。
もちろん、LRTK PhoneによるAR表示も埋設管位置を直接検出するものではありません。元となる位置情報の確度を確認し、必要に応じて現地探査や試掘などと組み合わせることが前提です。
そのうえで、地盤改良範囲と既設管の関係を現地で分かりやすく把握したい場合には、LRTK Phoneを使ったAR確認を施工前確認の一つとして取り入れることで、図面と現場を往復する負担を減らしながら、注意すべき場所を共有しやすくなります。
まとめ
地盤改良工事で埋設管との干渉を防ぐためには、改良体と配管の平面上の重なりだけを見るのではなく、埋設管データの信頼性、施工時の作業範囲、高さ関係、施工方法、現地照合、不確実な場所への対応まで含めて判断することが重要です。
最初の判断は、埋設管データの根拠と更新状況を確認することです。AR表示が正確に動いていても、元データが現在の埋設状況を反映していなければ適切な判断にはつながりません。
次に、地盤改良の設計範囲と施工時の作業影響範囲を分けて確認します。埋設管が改良体そのものから外れていても、機械据付、進入、施工準備などの範囲へ入る可能性があります。
三つ目は、平面だけでなく高さ方向を含めた立体的な確認です。管中心、管頂、管底など高さ情報の意味を確認し、現在地盤と設計地盤の違いにも注意する必要があります。
四つ目は、採用する地盤改良工法や埋設管の条件を踏まえて離隔を検討することです。すべての現場で共通する単純な距離だけで判断するのではなく、施工方法や地盤、管の状態などに応じた検討が必要です。
五つ目は、AR表示を地上設備や探査結果などと照合することです。一地点だけでなく複数地点を確認し、表示と現地に違和感がある場所を重点的に調べます。
六つ目は、不確実なまま施工へ進まないことです。必要に応じて探査や試掘を実施し、実際の位置が計画と異なる場合には、施工位置や方法の変更を含めて関係者で判断します。
埋設管AR表示の最大の利点は、画面を見ただけで安全かどうかを決められることではありません。図面では気づきにくい接近箇所を現地で把握し、「ここは追加確認が必要だ」と早い段階で気づけることにあります。
地盤改良工事では、一度の確認で終わらせず、施工計画の変更や新たな埋設物の発見があれば再確認し、結果を記録して次の工程へ共有することが重要です。
図面と現場の位置関係をより分かりやすく確認し、地盤改良前の埋設管確認を効率的に進めたい場合には、LRTK Phoneによる埋設管AR表示を、測量、探査、試掘などの確認方法と組み合わせながら活用するとよいでしょう。