LRTKレフィクシア株式会社

埋設管AR表示を緊急漏水対応で使う初動確認フロー6つ

緊急漏水対応で埋設管AR表示を使う意味

道路や敷地内で急な漏水が発生したとき、現場では短時間のうちに多くの判断が求められます。漏水箇所のおおよその位置を把握し、周囲の交通や歩行者への影響を確認し、対象となる配管の系統を整理しながら、必要に応じて止水や掘削の準備へ進まなければなりません。さらに、対象となる管路の周囲には別系統の水道管、排水管、通信設備、電力設備などが存在する可能性があり、漏水していると思われる管だけを見て作業を進めるわけにはいきません。

こうした初動で活用できる方法の一つが、埋設管AR表示です。埋設管の位置情報を現地のカメラ映像に重ねることで、図面上でしか把握できなかった管路の方向や分岐、周囲との位置関係を現場空間の中で確認しやすくなります。道路上に立ちながら対象管がどの方向へ延びているのかを把握できれば、紙図面と現場を何度も見比べる作業を減らし、関係者間でも「どの管を確認しているのか」を共有しやすくなります。

ただし、緊急時だからこそ注意しなければならない点があります。AR画面に管路が表示されていることと、実際の埋設位置がその場所に確定していることは同じではありません。元データの精度、測量時期、改修履歴、座標系、高さ基準、端末の測位状態などによって、表示と実物の間には差が生じる可能性があります。漏水によって地盤が洗掘されている場合や、舗装面から水が離れた場所へ回り込んでいる場合には、地表で見える漏水地点と管の破損地点が一致しないこともあります。

そのため、緊急漏水対応で埋設管AR表示を使う目的は、ARだけで漏水箇所を断定することではありません。初動の情報整理を速くし、対象となる管路や確認すべき周辺範囲を絞り込み、その後の現地調査、探査、試掘、止水判断へつなげるための補助情報として使うことが重要です。

緊急時ほど、担当者ごとの経験だけに頼るのではなく、確認する順番をあらかじめ決めておくと対応しやすくなります。ここでは、埋設管AR表示を緊急漏水対応に使う際の初動を6つのフローに分けて解説します。

初動確認フロー1 現場の安全を確保して漏水範囲を把握する

埋設管AR表示を立ち上げる前に、最初に行うべきなのは現場の安全確保です。緊急対応では、漏水箇所を少しでも早く特定したいという意識が強くなりがちですが、端末画面を見ながら道路へ不用意に進入したり、水が噴き出している場所へ近づいたりすると二次災害につながるおそれがあります。

まず現場へ到着したら、漏水によって路面や周辺環境にどのような変化が生じているかを確認します。路面から水が湧き出しているのか、舗装の継ぎ目から広い範囲へ流れているのか、側溝へ流入しているのか、地盤の沈下や空洞化が疑われる状態があるのかを把握します。水の流れだけでなく、舗装面の膨らみ、ひび割れ、陥没、土砂の流出なども重要な観察対象です。

道路上で対応する場合は、通行車両や自転車、歩行者との位置関係も確認する必要があります。AR表示を確認する担当者は画面へ意識が集中しやすいため、車両動線上に立ち続けないようにします。重機や緊急車両が出入りする場合も、表示確認者が作業動線へ入り込まない立ち位置を設定してから確認を始めることが大切です。

漏水範囲については、地表で最も水量が多い一点だけに注目しないことも重要です。水は地中の空隙、砕石層、既設構造物の周囲などを通って移動する場合があります。実際の破損箇所から離れた位置で地表へ現れることもあるため、最初から「水が出ている位置の真下が破損地点」と決めつけないようにします。

この段階では、漏水の中心と思われる場所、道路勾配、水の流れる方向、周辺の弁やマンホール、既設構造物など、後の照合に使える情報を広く把握します。可能であれば、現場写真や位置情報を残し、到着時点の状況を記録しておくと、その後に水量や路面状態が変化した場合でも比較できます。

埋設管AR表示は、この安全確認ができてから使用します。緊急漏水対応では「端末を取り出してARを見ること」が初動ではなく、「安全に現場を確認できる状態を作ること」が最初のフローです。この順序を明確にしておくことで、ARを使う担当者自身の安全だけでなく、周囲の作業員や第三者へのリスクも抑えやすくなります。

初動確認フロー2 使用する埋設管データの版と信頼性を確認する

安全な確認場所を確保したら、次はAR表示に使用する埋設管データを確認します。緊急時には時間が限られるため、手元にあるデータをそのまま表示したくなりますが、ここで旧版や不明確なデータを使うと、その後の判断全体がずれる可能性があります。

まず確認したいのは、表示しようとしているデータがどの時点の情報なのかということです。竣工時の図面なのか、その後の改修内容まで反映した管理データなのか、設計段階のデータなのかによって信頼性は異なります。特に長期間使用されている道路や施設では、配管の更新、部分的な敷設替え、分岐追加、撤去、経路変更などが行われている可能性があります。

緊急漏水対応では、対象となる管の位置だけでなく、周囲の既設埋設物についても可能な範囲で確認します。対象管が更新済みなのに旧管のデータだけが残っている場合や、廃止管と供用中の管が同じデータ内に存在する場合もあります。画面上に線が表示されているという理由だけで、それを現在使用中の配管だと判断しないことが大切です。

データの作成方法も確認材料になります。施工時の実測座標を基に作成したデータなのか、従来図面を位置合わせして作成したものなのか、過去の台帳情報をデジタル化したものなのかによって、期待できる位置精度は変わります。すべての埋設管データが同じ精度を持つわけではありません。

可能であれば、データに取得方法、更新日、管理担当、座標基準、測位精度の目安などを持たせておくと、緊急時にも判断しやすくなります。詳細な情報を現場で毎回読み込む必要はありませんが、「実測されたデータなのか」「参考図から作成したデータなのか」という違いだけでも分かるようにしておくと、AR表示の受け止め方を変えられます。

また、同じ場所について複数のファイルが残っている場合は注意が必要です。端末に以前読み込んだファイルと、共有環境にある最新データが混在すると、担当者ごとに違う管路を見てしまうことがあります。緊急時に複数人が同時対応する現場では、誰がどの版を表示しているのかを短時間で確認できる管理方法が重要です。

理想的なのは、平常時から現場で使用するデータを一元管理し、更新履歴を残しておくことです。緊急時に現場でゼロからデータの正しさを調べるのではなく、通常業務の中で最新版を管理しておけば、初動で確認すべき項目を減らせます。

AR表示の信頼性は、端末の性能だけで決まりません。画面に重ねる元データがどこまで正しいかによって、現場判断の質は大きく変わります。緊急時には特に、「最新版か」「実測か参考情報か」「供用中か廃止か」といった最低限の情報を確認してから次のフローへ進みます。

初動確認フロー3 座標系と高さ基準を合わせてAR表示を立ち上げる

使用するデータを確認したら、現地で埋設管AR表示を立ち上げます。この段階で重要になるのが、現地測位と埋設管データの座標基準が適切に対応しているかという確認です。

埋設管の位置情報には、平面位置だけでなく高さ情報が含まれている場合があります。しかし、データ側と現地測位側で異なる基準が使われていれば、全体が一定方向へずれて表示される可能性があります。平面座標が合っていても高さの基準が違えば、画面上では管が実際より浅く見えたり深く見えたりすることがあります。

緊急漏水対応で問題になりやすいのは、担当者がAR画面を立ち上げた瞬間に表示位置を正しいものと受け取ってしまうことです。表示が現場風景に自然に重なっていると、数十センチ程度のずれがあっても気付きにくい場合があります。特に道路には似た形状の縁石や舗装境界が連続しているため、一見すると正しく位置合わせされているように見えることがあります。

そのため、表示開始直後は漏水箇所そのものを見る前に、位置合わせの状態を確認することが重要です。データ内に既知の構造物や測定済みの基準位置が含まれている場合は、それらを使って水平方向と高さ方向のずれを確認します。

測位状態についても確認が必要です。建物に囲まれた道路、橋の下、高架構造物の近く、樹木が密集する場所などでは、衛星測位の状態が開けた場所と異なることがあります。端末が位置を表示しているからといって、常に同じ精度が得られているとは限りません。

緊急時には一地点で長時間設定作業をすることは難しいため、操作手順を複雑にしすぎないことも重要です。平常時から対象区域の座標系を統一し、端末で表示するデータ形式や設定方法を決めておけば、現地では確認に集中できます。

高さ情報を見る場合は、管頂、管中心、管底など、データがどの位置を高さとして持っているかも確認します。例えば同じ深さ情報でも、管中心の標高と管頂の標高では意味が異なります。口径の大きな管では、この違いが掘削深さの判断へ影響する場合があります。

さらに、道路舗装面そのものも改修によって高さが変わる可能性があります。過去のデータに記録されている地盤高と現在の路面高が一致しているとは限りません。したがって、AR上で表示される深さをそのまま現在の土被りとして扱うのではなく、必要に応じて現況高との関係を確認します。

このフローの目的は、ARを表示させることではなく、「この表示をどの程度信頼して次の判断に使えるか」を確認することです。初動の数分で座標系、高さ基準、測位状態を意識するだけでも、表示の見た目だけで作業位置を決めるリスクを抑えられます。

初動確認フロー4 既知点で位置ズレを確認して対象管路を絞り込む

AR表示を立ち上げたら、すぐに漏水地点へ向けるのではなく、まず既知点との整合を確認します。ここでいう既知点とは、現場で実際の位置を確認しやすく、データにも対応する位置が登録されている対象です。

例えば、弁やマンホール、露出している配管接続部、過去に測量済みの管理点などは位置確認に利用できる場合があります。現地で確認できる対象とAR上の表示がどの程度一致しているかを見ることで、その周辺で発生している表示ずれの傾向を把握できます。

確認するときは、一地点だけを見て「合っている」と判断しないことが大切です。一つの既知点が合っていても、端末の向きやデータの回転、局所的な位置誤差によって、少し離れた場所ではずれが大きくなる場合があります。可能であれば、漏水地点を挟むように複数地点で照合すると、表示全体の状態を判断しやすくなります。

例えば、道路の片側にある弁位置で表示が一致していても、数十メートル離れた分岐位置では横方向へずれていることがあります。この場合、単純に画面上の管路線を追うだけでは掘削位置を誤る可能性があります。反対に、複数地点で似た方向、似た量のずれが見られる場合には、表示全体に一定のオフセットが生じている可能性を考えられます。

ただし、現場で独自に表示を動かして見た目だけを合わせ、その補正値を確定値として扱うことには注意が必要です。既知点自体の位置情報が不正確な場合や、地物が更新されている場合もあるためです。緊急時に行う確認は、あくまで「現在のAR表示がどの程度ずれている可能性があるか」を把握するためのものと考えます。

既知点との照合ができたら、漏水地点周辺へ視点を移し、どの管路が関係している可能性が高いかを絞り込みます。複数の配管が並行している道路では、漏水位置だけを見ても対象管を判断しにくいことがあります。AR上で管種、系統、口径、分岐方向などの情報を確認できれば、現場の状況と組み合わせて候補を整理できます。

このとき、地表に出ている水の位置だけではなく、上流側と下流側の管路方向も確認します。破損箇所から流出した水が地中を移動している場合、実際の損傷地点は地表で確認できる漏水位置よりも管路方向の別地点にある可能性があります。そのため、AR表示では一点を見るのではなく、管路を一定区間で追って確認することが重要です。

また、弁の位置を確認できれば、止水範囲を検討する際の情報整理にも役立ちます。ただし、AR上に表示された弁が必ず現地で操作可能な状態にあるとは限りません。埋没、改修、位置変更、管理状態などの影響も考えられるため、実物を確認したうえで判断します。

このフローによって、漠然とした漏水地点を「この周辺のこの系統を重点的に確認する」という段階まで絞り込めます。ARは破損位置を自動的に特定する仕組みではありませんが、埋設管の空間的な関係を短時間で理解するための補助として使うことで、その後の調査範囲を整理しやすくなります。

初動確認フロー5 漏水状況と周辺埋設物を重ねて掘削候補範囲を確認する

対象となる管路を絞り込んだら、次に漏水状況と周辺の埋設物を合わせて確認します。緊急漏水対応では、対象管だけが分かれば作業できるわけではありません。掘削予定範囲の近くに別の埋設物が存在する可能性があるためです。

AR表示では、対象となる水道管だけを強調して見る方法もありますが、掘削を検討する段階では周辺設備も表示させ、位置関係を確認することが重要です。並行する管、交差する管、分岐管、引込管、道路横断設備などがあれば、掘削範囲や重機の使い方を考える際の重要な情報になります。

特に注意したいのが、平面上では離れて見える埋設物です。ARでは立体的な位置関係を理解しやすい一方で、元データに高さ情報がない場合や、高さ精度が十分でない場合には、上下関係を正確に判断できないことがあります。画面上で上下に離れて表示されていても、実際の離隔を確定するためには別の確認が必要です。

また、漏水によって地盤が緩んでいる場合には、通常時と同じ掘削計画が適切とは限りません。水が回り込んだ範囲では、舗装下に空洞や緩みが生じている可能性も考慮します。AR上の管路線だけを見て最短位置へ近づくのではなく、路面状況や地盤の変化を合わせて安全な作業範囲を検討することが重要です。

掘削候補範囲を考える際には、漏水の中心と思われる位置から一方向だけを見るのではなく、管路方向の前後を確認します。継手、分岐、曲管など、構造が変化する位置がデータに記録されていれば、調査候補として確認できます。ただし、「継手があるからそこが破損箇所である」といった断定は避けます。ARで確認できるのはあくまで登録されている設備位置であり、漏水原因そのものではありません。

現場では、担当者間で掘削候補位置を共有することも重要です。紙図面だけの場合、「このマンホールから何メートル先」といった説明が必要になることがありますが、現地空間へ重ねて見られれば、関係者が同じ方向を見ながら候補範囲を確認できます。

この共有は、緊急時の判断速度を高めるだけでなく、認識違いを減らすことにも役立ちます。現場責任者、配管担当、重機担当などが異なる位置を想定したまま作業を始めると、手戻りや危険につながる可能性があります。AR画面を共通の参考情報として使いながら、現地マーキングや図面にも確認結果を反映すると、作業範囲を共有しやすくなります。

ただし、ARで見えた位置をそのまま路面へマーキングして掘削確定位置とするのは避けます。マーキングする場合も、「AR上の候補位置」「探査確認位置」「試掘確認位置」など、情報の確度を区別できる運用が望まれます。

この段階まで進むと、埋設管AR表示は単なる可視化ではなく、漏水地点、対象管路、周辺埋設物、作業範囲を一つの現地空間で整理するための情報基盤として活用できます。ただし、最終的な掘削判断は次のフローで別の確認手段と組み合わせて行います。

初動確認フロー6 AR表示だけで確定せず探査や試掘へつなげる

緊急漏水対応で最も重要なのが、AR表示を最終確定手段にしないことです。ARによって対象管の位置が分かりやすく表示されていても、その位置だけを根拠に重機掘削を開始するのは適切ではありません。

埋設管AR表示には、元データの位置精度、測位状態、端末の姿勢推定、座標変換、高さ情報など複数の誤差要因があります。また、埋設後の地盤変化や改修によって、登録情報と現在の状態が完全には一致しない可能性もあります。

そのため、ARで対象範囲を絞り込んだ後は、現場条件に応じて適切な確認方法へつなげます。既存の探査方法、現地の目視確認、弁やマンホールからの位置関係、必要に応じた試掘などを組み合わせ、実際の埋設位置を確認してから本格的な掘削へ進むことが基本です。

探査結果とAR表示に差がある場合は、その差を無視せず理由を確認します。例えば、ARが一定方向へずれているのであれば、測位や座標設定を再確認する必要があります。特定の一本だけ位置が合わないのであれば、その管路データが古い可能性や、過去の工事で変更されている可能性も考えられます。

試掘で実管を確認できた場合は、その結果をその場限りにしないことも重要です。確認した実管位置を測定し、管理データへ反映できれば、次回以降の保守や緊急対応に利用できます。緊急工事で得られた情報は、将来の埋設管AR表示の信頼性を高める貴重な現地情報です。

漏水箇所を掘削して補修した後も、復旧前に位置情報を記録しておくと有効です。露出した管路、継手、分岐、弁などを記録できれば、従来は埋め戻し後に見えなくなっていた情報を次の維持管理へ残せます。

また、緊急工事では当初の想定と異なる配管が見つかることがあります。図面にない管路、既設位置からずれている管、使用状況が不明な管などが確認された場合には、単に工事を完了するだけでなく、管理情報の更新対象として記録することが重要です。

つまり、AR表示の役割は「ここを掘ればよい」と答えを出すことではありません。「どこを重点的に調べるべきか」を短時間で整理し、実際の確認へつなげることです。この役割分担を明確にしておけば、緊急性と安全性を両立しやすくなります。

緊急漏水対応では時間短縮が求められますが、確認工程を省略することと効率化することは異なります。ARによって図面確認や位置関係の把握を速くし、その分を現地確認へ振り向けることが、実務での有効な使い方です。

緊急時に起こりやすい埋設管AR表示の判断ミス

緊急漏水の現場では、通常の点検や施工前確認と比べて時間的な余裕が少なくなります。そのため、埋設管AR表示を導入していても、使い方によっては判断ミスが発生する可能性があります。

代表的なのは、画面に表示された管路を実際の埋設位置そのものだと考えてしまうケースです。ARは現地風景とデータが視覚的に一体化するため、紙図面よりも位置が確定しているように感じやすい特徴があります。しかし、表示はあくまで位置情報を基にした可視化です。

漏水位置を一点で決めつけることも避けたい判断です。地上で最も激しく水が出ている場所の直下に必ず破損部があるとは限りません。管路方向、道路勾配、地盤条件、地下構造物などによって水の移動経路が変わる可能性があります。AR上で管路全体を見ることで、局所的な見た目だけに引っ張られないことが重要です。

古いデータを無意識に表示することも緊急時に起こりやすい問題です。以前の点検時に端末へ保存したデータをそのまま開いた場合、管理側で更新された情報が反映されていない可能性があります。普段から版管理を徹底し、現場で最新版かどうかを確認できる仕組みが必要です。

高さを過信することにも注意します。AR画面上では管が地中の一定深さに浮かんで見えるため、そのまま掘削深さとして理解してしまいがちです。しかし、高さ基準やデータ作成方法によっては、実際の土被りとの差が生じます。現在の路面高さとデータ取得時の地表面が異なる可能性もあります。

一地点で表示が合ったために、周辺全体も合っていると判断するケースもあります。既知点照合は有効ですが、できれば複数地点で整合を見ることが大切です。特に長い区間の管路を追う場合には、確認位置を変えながら表示状態を見ます。

緊急対応では現場関係者が増えるため、担当者ごとに異なる情報を見てしまうこともあります。一人は最新版、別の担当者は旧版を表示している状態では、同じ現場を見ながら違う位置を想定する可能性があります。画面を見せ合うだけでなく、データ名や更新状況も共有する運用が必要です。

ARを安全に利用するには、「表示を見る」「位置を確かめる」「別手段で確認する」という段階を分けることが重要です。急いでいるとこの段階が一つにまとめられがちですが、初動フローを標準化しておけば、経験の異なる担当者でも同じ考え方で確認できます。

平常時から準備しておきたい緊急漏水対応のデータ運用

緊急漏水対応で埋設管AR表示を役立てられるかどうかは、事故や漏水が発生した瞬間だけでは決まりません。むしろ、平常時にどれだけデータを整備し、使える状態にしているかが重要です。

緊急時になってから図面を探し、データ形式を変換し、座標系を調べ、どのファイルが最新版なのかを確認していると、ARを使うための準備そのものに時間がかかります。日常的な維持管理の段階から対象エリアの管路データを整理し、現場端末で確認できる状態にしておけば、現地到着後すぐに初動確認へ移れます。

特に重要なのが版管理です。管路を更新した場合、図面だけでなくAR表示用データも更新し、旧版と明確に区別できる状態にします。ファイル名に日付だけを付ける方法では、緊急時にどれが正式版なのか分かりにくくなることがあります。管理上の最新版が明確に分かり、更新履歴を確認できる仕組みが望まれます。

新設工事や更新工事を行う際には、埋め戻す前に位置情報を取得しておくことも有効です。管路が露出している施工段階で位置を記録できれば、後から図面上の推定位置だけに頼る必要を減らせます。曲がり、分岐、弁、接続部など、維持管理で重要になる箇所を記録しておくと、将来の漏水対応でも利用しやすくなります。

また、データには位置だけでなく、確認に必要な属性を整理しておくことも重要です。管種、口径、系統、供用状況、取得時期などが把握できれば、緊急時に対象設備を絞り込みやすくなります。ただし、現場で必要以上の情報を表示すると画面が複雑になるため、用途に応じて表示対象を切り替えられる運用が適しています。

現場教育も平常時に行う必要があります。緊急時に初めてAR表示を操作するのではなく、通常点検や施工確認などで日常的に使用しておくと、担当者が操作手順や誤差の特徴を理解できます。どのような場所で測位が安定しやすいか、既知点をどのように照合するかといった感覚も、実際の利用を通じて身につけやすくなります。

緊急漏水対応を想定した訓練を行う方法もあります。仮想的な漏水地点を設定し、安全確認、データ選択、AR表示、既知点照合、対象管路の特定、探査へつなげるところまで一連の流れを確認しておけば、実際の緊急時に迷いにくくなります。

さらに、緊急工事後の情報更新まで運用に含めることが重要です。漏水箇所を補修して終わりではなく、露出した管の位置や補修箇所を記録し、管理データへ戻すことで次回の対応品質を高められます。このサイクルを続けることで、埋設管AR表示は単なる閲覧ツールではなく、維持管理データを蓄積していく仕組みとして活用できます。

LRTK Phoneで緊急時の現地確認を効率化する

緊急漏水対応では、現地に到着した担当者が必要な位置情報へ短時間でアクセスし、その場所で埋設管の位置関係を確認できることが重要です。事務所で図面を確認してから現場へ戻る運用では、状況が刻々と変化する緊急対応で情報伝達に時間がかかることがあります。

LRTK Phoneを使って高精度な位置情報と現場データを組み合わせることで、埋設管AR表示を現地確認の一つの手段として活用できます。対象管路を現場空間へ重ねて確認できれば、道路のどちら側を通っているのか、どの方向へ延びているのか、周辺の管路とどのような位置関係にあるのかを把握しやすくなります。

また、位置情報付きの現場記録を残す運用と組み合わせれば、漏水発見時の状況、探査位置、試掘位置、実際に確認された管路位置、補修位置などを後から整理しやすくなります。緊急対応中は記録が後回しになりやすいため、現場で位置と写真を関連付けて残せる仕組みを用意しておくことには意味があります。

重要なのは、LRTK Phoneを使えばARだけで漏水箇所を確定できるということではありません。高精度な測位が利用できる場合でも、元となる埋設管データの精度や更新状況、現地条件を確認する必要があります。AR表示は、現場の意思決定を支援する一つの情報として位置付け、既知点照合や探査、試掘などと組み合わせて使用します。

一方で、施工時や補修時に実際の管路位置を測定し、そのデータを継続的に蓄積していけば、将来のAR表示に使用する情報そのものを改善できます。新設時の測定、維持管理、緊急漏水対応、補修後の記録を一連のデータ運用としてつなげることができれば、現場で参照する埋設管情報の信頼性を少しずつ高められます。

特に緊急対応では、操作が複雑な仕組みを突然導入しても十分に活用できません。平常時からLRTK Phoneを点検、測量、現場記録、AR確認などに利用し、担当者が操作に慣れておくことが重要です。緊急時専用の道具として保管するのではなく、普段の維持管理から同じデータと端末を利用することで、いざというときの初動につなげやすくなります。

埋設管AR表示の価値は、単に地中の管を画面に表示することではありません。現場で現在位置を把握し、必要なデータを参照し、確認した結果を記録し、その情報を次の維持管理へ戻すところまでつながることで、緊急漏水対応を含む継続的な設備管理に活用しやすくなります。

まとめ

埋設管AR表示は、緊急漏水対応で対象となる管路や周辺設備の位置関係を短時間で把握するために活用できる手段です。現場空間へ管路情報を重ねられることで、紙図面だけでは把握しにくい方向、分岐、周辺管路との関係を関係者同士で共有しやすくなります。

一方で、AR表示された位置をそのまま実際の埋設位置として確定することはできません。元データの作成方法や更新時期、座標系、高さ基準、現地の測位状態などによって表示にはずれが生じる可能性があります。さらに、漏水した水が地中を移動すれば、地表の漏水位置と実際の破損位置が一致しないことも考慮する必要があります。

緊急時の初動では、まず現場の安全を確保し、漏水範囲を広く把握します。次に使用する埋設管データの版と信頼性を確認し、座標系や高さ基準を合わせてAR表示を立ち上げます。その後、既知点との照合によって位置ずれの有無を確認し、対象となる管路を絞り込みます。さらに周辺埋設物と漏水状況を合わせて掘削候補範囲を整理し、最後は探査や試掘など実物を確認する工程へつなげます。

この6つのフローを決めておけば、緊急時に「AR画面が示す場所をそのまま掘る」という判断を避けながら、ARの分かりやすさを初動の効率化へ生かせます。

そして、実際の対応力を左右するのは平常時の準備です。最新版の管路データを管理し、施工や補修で確認した位置情報を蓄積し、普段から現場担当者が操作に慣れておくことで、緊急時にも迷わず利用できる環境を整えられます。

緊急漏水対応のためだけに特別な仕組みを作るのではなく、日常の測量、点検、施工記録、維持管理の中で位置情報を継続的に整備し、その延長として埋設管AR表示を使える状態にしておくことが重要です。現場での高精度な位置確認からARによる埋設管の可視化、確認結果の記録までを一つの流れにつなげたい場合は、LRTK Phoneを活用した現場運用を検討してみてください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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