現場で即土量からCO2排出量を算定する意味
建設現場で発生する掘削土や残土を場外へ搬出するときは、運搬車両の走行に伴ってCO2が排出されます。その排出量を把握するための出発点になるのが、現場で動かす土の量です。土量が分からなければ、必要な運搬回数、車両の総走行距離、燃料使用量を求めることができません。
設計段階では、現況地盤と計画地盤の差から掘削量や盛土量を計算します。ただし、実際の施工では、現況地形の細かな凹凸、掘削範囲の変更、法面形状の修正、地中障害物の撤去、軟弱土の追加掘削などによって、計画土量と実際の土量に差が生じることがあります。計画時の数量だけを使い続けると、CO2排出量の見込みも実態から離れてしまいます。
そこで重要になるのが、現場で即土量を把握し、施工の進行に合わせて数値を更新する考え方です。施工前には運搬計画を立てるための予定土量を求め、施工途中には掘削済み数量と残数量を確認し、施工完了後には最終的な実績土量を整理します。それぞれの段階で運搬回数と走行距離を再計算すれば、CO2排出量の見込みも更新できます。
CO2排出量の算定は、環境関連の報告書を作るためだけに行うものではありません。運搬距離が異なる複数の受入先を比較する、車両台数を適正化する、積載不足を減らす、場内流用できる土を選別する、待機時間を短縮するといった施工改善にも利用できます。
例えば、受入条件が同じ二つの搬出先があり、一方が片道20km、もう一方が片道50kmであれば、運搬距離の差は総走行距離とCO2排出量に直接影響します。処分費だけではなく、車両の拘束時間、燃料消費、周辺交通への影響なども含めて比較することで、より実務的な運搬計画を立てられます。
現場で即土量を確認し、距離別にCO2排出量を見える化することは、環境負荷、工程、原価、安全を一体的に管理するための基礎になります。
CO2排出量の算定前にそろえる条件
CO2排出量を計算する前には、土量、土の状態、密度、車両条件、運搬距離、算定方式、排出係数をそろえる必要があります。これらの条件が途中で変わると、計算結果を正しく比較できません。
最初に確認するのは、算定対象となる土量です。掘削範囲全体の土量なのか、そのうち場外へ搬出する土量だけなのかを区別します。掘削した土の一部を場内盛土に利用する場合、CO2排出量の算定対象になるのは、原則として車両で運搬する数量です。場内で短距離移動する土についても算定対象に含める場合は、場外搬出とは分けて管理した方が計算しやすくなります。
次に、土量がどの状態を表す数値かを確認します。掘削前の地山状態、掘削後のほぐれた状態、盛土後の締固め状態では、同じ土でも体積が異なります。現況地形と掘削後地形の差から求めた数量は、一般に地山状態を基準にした体積として扱われます。一方、運搬車両の荷台に積まれる土は、掘削によってほぐれた状態です。
土量から運搬回数を求めるには、体積を質量へ換算する方法と、荷台容量を基準に換算する方法があります。質量へ換算する場合は密度が必要です。荷台容量を基準にする場合は、土のほぐれによる体積変化を考慮しなければなりません。
車両条件としては、使用する車両の区分、最大積載量、実際の平均積載量、荷台容量を確認します。最大積載量まで毎回積めるとは限りません。土の含水状態、石の混入、荷台形状、積込み方法、安全上の余裕などにより、実際の積載量は変動します。
運搬距離は、現場から受入先までの直線距離ではなく、運搬車両が実際に走る経路で設定します。大型車の通行規制、一方通行、高さ制限、重量制限、時間帯規制がある場合、一般車両の経路とは異なることがあります。
算定方式についても統一が必要です。総走行距離に車両別の排出係数を掛ける方法、燃料使用量に燃料別の排出係数を掛ける方法、輸送トンキロに原単位を掛ける方法では、必要な入力値と計算結果の意味が異なります。
正式な報告に使用する場合は、発注者、元請会社、組織内の環境管理基準などで指定された算定方式と排出係数を確認します。この記事で示す計算は、距離別の違いを理解するための考え方です。実際の報告値は、採用する基準に合わせて算定する必要があります。
土量から運搬回数を求める基本手順
運搬由来のCO2排出量を求めるには、現場で計測した土量を運搬回数へ変換します。基本的な流れは、土量から運搬質量を求め、1回当たりの実積載量で割る方法です。
運搬対象質量は、運搬対象土量に土の密度を掛けて求めます。
運搬対象質量=運搬対象土量×土の密度
例えば、運搬対象土量を500立方メートル、計算に使用する密度を1立方メートル当たり1.8トンと仮定すると、運搬対象質量は900トンです。
500立方メートル×1.8トン毎立方メートル=900トン
ここで使用した密度は計算例のための仮定値です。実際の現場では、土質試験、設計資料、受入先の計量記録、過去の運搬実績などを確認し、対象土に適した値を使用します。
続いて、運搬対象質量を車両1回当たりの実積載量で割ります。
必要運搬回数=運搬対象質量÷1回当たりの実積載量
実積載量を1回当たり8トンと仮定すると、必要運搬回数は112.5回です。
900トン÷8トン毎回=112.5回
車両を0.5回だけ走らせることはできないため、実務上は端数を切り上げて113回とします。最後の運搬は満載にならない可能性がありますが、車両は受入先まで走行するため、走行回数としては1回を計上します。
同じ500立方メートルでも、密度が異なれば質量が変わります。また、1回当たりの実積載量が変われば運搬回数も変わります。そのため、土量の測定精度だけではなく、密度と積載量の設定がCO2排出量の算定精度を左右します。
体積基準で運搬回数を求める場合は、掘削後のほぐれ土量を1回当たりの実積載体積で割ります。ただし、土のほぐれ方は土質や掘削方法によって異なります。質量記録を取得できる現場では、体積から質量へ換算して計算し、施工開始後に計量実績で補正すると管理しやすくなります。
施工途中で現場の土量を測り直す場合は、当初土量から伝票数量を単純に引くだけでなく、現況地形から残量を確認する方法も有効です。掘削範囲の変更や場内流用があると、伝票だけでは現場に残る土の形状を把握しにくいからです。
運搬由来のCO2排出量を求める計算方法
土量から必要運搬回数を求めたら、次に車両の総走行距離を算出します。往路と復路が同じ経路である場合、総走行距離は次の考え方で求められます。
総走行距離=必要運搬回数×片道距離×2
必要運搬回数が113回、片道距離が20kmであれば、1回当たりの往復距離は40kmです。総走行距離は4,520kmになります。
113回×20km×2=4,520km
走行距離方式では、この総走行距離に車両区分別の排出係数を掛けます。
CO2排出量=総走行距離×車両区分別排出係数
排出係数をEキログラムCO2毎キロメートルと表すと、片道20kmのケースは4,520EキログラムCO2です。Eには、採用する基準で定められた車両区分、燃料種類、積載条件などに対応する係数を入力します。
燃料使用量方式を採用する場合は、想定燃費または実際の給油記録から燃料使用量を求めます。
燃料使用量=総走行距離÷実燃費
CO2排出量=燃料使用量×燃料別排出係数
施工前は想定燃費を使用して概算し、施工後は実際の給油量へ置き換える方法が考えられます。ただし、一台の車両が複数現場で使われる場合は、対象工事に対応する燃料使用量を区分する必要があります。
輸送トンキロ方式では、運搬質量に輸送距離を掛けて活動量を求めます。
輸送トンキロ=運搬質量×輸送距離
この方式では、積載状態の片道輸送を基準にする場合や、積載率を原単位へ反映する場合があります。空荷で戻る復路をどのように扱うかは、使用する算定基準によって異なります。
重要なのは、異なる方式で求めた数値を条件確認なしに比較しないことです。走行距離方式では往復距離を扱い、輸送トンキロ方式では積載状態の輸送量を扱うことがあります。計算方式、使用係数、単位、復路の扱いを明記しておく必要があります。
施工計画の初期段階で運搬先を比較する場合は、同じ車両区分、同じ積載量、同じ排出係数を使用し、運搬距離だけを変えると違いが分かりやすくなります。
運搬距離別4ケースの共通条件
ここからは、同じ土量を異なる距離へ運搬する4ケースを比較します。運搬距離による違いを明確にするため、土量、密度、車両の実積載量、運搬回数はすべて同じ条件とします。
運搬対象土量は500立方メートルとします。土の密度は1立方メートル当たり1.8トンと仮定し、運搬対象質量は900トンです。
車両1回当たりの実積載量は8トンと仮定します。900トンを8トンで割ると112.5回となるため、必要運搬回数は切り上げて113回です。
比較する運搬距離は、片道5km、片道20km、片道50km、片道100kmの4ケースです。往路と復路は同じ距離とし、復路は空荷で現場へ戻るものとします。
CO2排出量は走行距離方式で表し、車両区分別の排出係数をEキログラムCO2毎キロメートルとします。具体的な排出係数は、実際に使用する算定基準によって異なるため、ここではEとして表現します。
この条件では、運搬回数がすべて113回で固定されるため、総走行距離の違いがCO2排出量の違いになります。片道距離が2倍になれば、総走行距離と距離方式によるCO2排出量も基本的に2倍です。
ただし、実際の燃料消費量は、道路勾配、信号、渋滞、走行速度、待機時間、車両状態などの影響を受けます。4ケースは、運搬先を計画段階で比較するための基本モデルとして捉えることが大切です。
ケース1|片道5kmの近距離運搬
ケース1は、現場から受入先まで片道5kmの近距離運搬です。近隣の仮置場、同一事業内の別工区、周辺の盛土利用先などへの運搬が想定されます。
片道距離が5kmであるため、1回当たりの往復距離は10kmです。必要運搬回数は113回なので、総走行距離は1,130kmになります。
113回×5km×2=1,130km
排出係数をEキログラムCO2毎キロメートルとすると、CO2排出量は1,130EキログラムCO2です。
4ケースの中では、総走行距離とCO2排出量が最も小さくなります。片道距離だけを比較すれば、近距離の受入先を選ぶことはCO2削減に有効です。
ただし、近距離であっても、信号や交差点が多い市街地、狭い進入路、受入待ちが発生する場所では、走行距離に対する燃料消費量が大きくなる場合があります。短い距離を何度も往復する運搬では、発進、加速、減速、停止が繰り返されるためです。
近距離運搬では、1台の車両が1日に複数回往復しやすくなります。そのため、必要な車両台数を抑えながら、一定の日運搬量を確保できる可能性があります。一方で、車両の回転が速いと、積込み機械の能力が追いつかず、現場入口や待機場所に車両が集中することがあります。
積込みに必要な時間、往復所要時間、荷下ろし時間を確認し、車両が連続して戻ってきても滞留しない配車間隔を設定することが重要です。必要以上に車両を投入すると、総運搬回数は変わらなくても、待機中の燃料消費や周辺交通への影響が増える可能性があります。
近距離の受入先を検討するときは、受入可能な土質、1日当たりの受入量、搬入可能時間、進入車両の条件も確認します。距離が近くても受入能力が小さければ、予定数量を搬出できず、別の遠方施設を併用することになる場合があります。
ケース2|片道20kmの中距離運搬
ケース2は、片道20kmの受入先へ運搬する場合です。現場の近隣に適した受入先がない場合や、指定された搬出先を使用する場合に想定される距離です。
片道20kmでは、1回当たりの往復距離が40kmになります。必要運搬回数113回を掛けると、総走行距離は4,520kmです。
113回×20km×2=4,520km
排出係数をEキログラムCO2毎キロメートルとすると、CO2排出量は4,520EキログラムCO2です。
片道5kmのケースと比較すると、運搬距離は4倍です。土量、運搬回数、車両区分、排出係数が同じであるため、総走行距離とCO2排出量も4倍になります。
片道20kmになると、経路による違いを確認する必要性が高まります。距離が短い経路でも、市街地を通って渋滞しやすい場合があります。距離が少し長い経路でも、幹線道路を一定速度で走行できれば、所要時間や燃料消費量を抑えられる可能性があります。
事前算定では、地図上の最短距離をそのまま入力するのではなく、運搬車両が実際に使用する標準経路を設定します。大型車両の通行規制や時間帯規制がある場合は、往路と復路で異なる経路になることもあります。その場合は、往路距離と復路距離を別々に計算します。
中距離運搬では、1台当たりの1日往復回数が近距離より少なくなります。1日当たりの予定搬出量を確保するために車両を増やすと、積込み場所や受入先での待機が増える場合があります。
現場で即土量を把握し、当日終了時点の残数量を確認できれば、翌日に必要な車両数を調整できます。計画より残量が少なければ車両手配を減らし、計画より多ければ早めに追加手配を検討できます。土量の更新は、不要な車両待機を減らすうえでも役立ちます。
ケース3|片道50kmの広域運搬
ケース3は、片道50kmの受入先へ運搬する広域運搬です。受入可能な土質が限定されている場合、周辺施設の受入能力が不足している場合、遠方の工事で再利用する場合などに想定されます。
片道50kmでは、1回当たりの往復距離が100kmになります。必要運搬回数が113回であるため、総走行距離は11,300kmです。
113回×50km×2=11,300km
排出係数をEキログラムCO2毎キロメートルとすると、CO2排出量は11,300EキログラムCO2です。
片道5kmのケースと比べると、総走行距離とCO2排出量は10倍になります。同じ500立方メートルの土でも、受入先が遠くなるだけで運搬由来の排出量は大きく増加します。
広域運搬では、車両の運転時間が長くなるため、休憩時間、道路混雑、受入先の営業時間を含めた運行計画が必要です。1台が1日に往復できる回数が少なくなると、同じ工期内に搬出するための車両台数が増える可能性があります。
車両台数を増やしても、1回当たりの積載量と運搬回数が同じであれば、基本的な総走行距離は変わりません。しかし、車両が集中して積込み待ちや荷下ろし待ちが発生すると、走行距離方式では表れにくい燃料消費が増加します。
片道50kmの受入先を使用する場合は、近隣の受入先より処分条件が有利であっても、運搬費、所要時間、CO2排出量を合わせて比較する必要があります。処分に関する一つの条件だけで判断すると、物流全体の負担を見落とす可能性があります。
遠方搬出量を減らす方法として、場内で利用できる土を選別する、別工区の盛土材として使う、複数の受入先へ土質別に振り分けるといった検討があります。ただし、品質、含水状態、契約条件、関係法令、受入基準への適合を確認することが前提です。
ケース4|片道100kmの遠距離運搬
ケース4は、片道100kmの遠距離運搬です。特殊な土質の受入先が限られる場合、周辺施設の受入余力がない場合、大規模な災害対応や広域事業で土を移動する場合などに発生することがあります。
片道100kmでは、1回当たりの往復距離が200kmです。必要運搬回数113回を掛けると、総走行距離は22,600kmになります。
113回×100km×2=22,600km
排出係数をEキログラムCO2毎キロメートルとすると、CO2排出量は22,600EキログラムCO2です。
片道5kmのケースに対して、総走行距離とCO2排出量は20倍です。土量が数千立方メートル、数万立方メートルへ増えれば、距離差による影響もさらに大きくなります。
遠距離運搬では、当初設定した標準経路と実際の走行経路に差が生じやすくなります。交通規制、事故、渋滞、工事による通行止め、休憩場所への立ち寄りなどによって、実走行距離が計画値を上回ることがあります。
また、片道100kmでは、積込み、往路、荷下ろし、復路、休憩を含めると、車両1台が1日に運搬できる回数が大きく制限されます。短期間で多量の土を運ぼうとして車両を増やすと、積込み場所と受入先の処理能力を超え、長時間の待機が発生するおそれがあります。
遠距離運搬では、計画時の走行距離方式に加え、施工後に燃料使用量を確認することが有効です。給油記録や運行記録を取得できれば、渋滞、勾配、待機などを含む実際の燃料消費を反映できます。
遠距離の受入先しか利用できない場合でも、積載量の安定、空荷回送の削減、搬入予約の調整、混雑時間帯の回避などによって、運搬効率を改善できる可能性があります。帰路で別の資材を運ぶ計画がある場合は、CO2排出量をどの工事へ配分するかを算定ルールに沿って整理します。
運搬距離別4ケースを比較するときの要点
4ケースの総走行距離は、片道5kmで1,130km、片道20kmで4,520km、片道50kmで11,300km、片道100kmで22,600kmです。
片道5kmのケースを1とすると、距離方式によるCO2排出量の比率は、片道20kmが4、片道50kmが10、片道100kmが20となります。これは土量、運搬回数、車両、排出係数を同じ条件に固定した場合の比較です。
実務では、最も近い受入先を必ず選べるとは限りません。受入可能な土質、受入上限、搬入時間、道路条件、工期、周辺環境などを考慮する必要があります。近い受入先が一部しか受け入れられない場合は、搬出土を複数の受入先へ振り分けます。
複数の受入先を使用する場合は、全土量に平均距離を掛ける方法よりも、受入先別に土量、運搬回数、往復距離を計算した方が根拠を説明しやすくなります。
例えば、500立方メートルのうち300立方メートルを片道20km、残り200立方メートルを片道50kmへ運ぶ場合、それぞれの密度と運搬回数を求め、受入先ごとにCO2排出量を算定します。その後に合計することで、実際の配車計画に近い数値になります。
比較時には、距離以外の条件をそろえることも重要です。一方のケースでは最大積載量を使い、別のケースでは平均積載量を使うと、運搬距離以外の影響が混ざります。排出係数の基準年や車両区分が異なる場合も、単純比較はできません。
算定結果が増減したときは、土量、密度、実積載量、運搬距離、排出係数のどれが変わったかを確認します。条件ごとに分けて管理しておけば、CO2排出量が変化した理由を説明しやすくなります。
土量の状態をそろえないと算定がずれる理由
現場で即土量を求めても、その数値がどの状態の土を表しているかが不明確では、運搬回数を正しく計算できません。特に注意したいのが、地山土量、ほぐれ土量、締固め土量の違いです。
地山土量は、掘削前の自然な状態にある土の体積です。掘削すると土粒子の配列が崩れ、空隙が増えるため、一般に体積は大きくなります。この状態がほぐれ土量です。反対に、盛土として締め固めると、空隙が減少して体積が変化します。
現況地形と掘削計画面を比較して500立方メートルと算定した場合、その数量をそのまま荷台容量で割ると、必要運搬回数を少なく見積もる可能性があります。荷台に積まれる段階では土がほぐれ、体積が増えている場合があるからです。
質量を基準に計算する場合でも、密度の状態をそろえます。地山密度と、荷台に積まれたほぐれ土のかさ密度を混同すると、質量換算がずれます。使用する密度が湿潤密度なのか、乾燥密度なのかも確認が必要です。
雨天後の土は含水量が増え、同じ体積でも質量が増えることがあります。車両の積載上限が質量で決まる場合、乾いた土よりも少ない体積で上限へ達する可能性があります。その結果、必要運搬回数が増えることがあります。
掘削範囲にコンクリート片、岩塊、木片などが含まれる場合も注意が必要です。土と異なる密度の物が混在すると、一つの密度だけで全体を換算したときに誤差が大きくなります。分別して運搬する場合は、種類別に土量または質量を管理します。
土量計測時には、対象範囲、基準面、計測日、土の状態を記録します。同じ場所を再計測するときも、基準面や範囲をそろえることで、施工前後の差を正しく比較しやすくなります。
密度と実積載量を設定するときの注意点
土量から運搬回数へ換算する計算では、密度と実積載量が重要な入力値です。どちらかが実態と異なれば、現場で取得した土量が正確でもCO2排出量にずれが生じます。
密度は、土質、粒度、含水状態、締まり具合、異物の混入などによって変わります。一般的な参考値を使う場合は、計画段階の概算であることを明記します。土質試験結果や計量記録を利用できる場合は、対象土に近い実測値を優先します。
施工前に密度を確定できない場合は、複数の密度を設定して幅を確認する方法があります。密度が高いケースと低いケースで運搬回数を計算すれば、必要車両数やCO2排出量の変動範囲を把握できます。
実積載量についても、車両の最大積載量をそのまま使わない方がよい場合があります。荷台容量、土の盛り方、飛散防止、安全上の余裕、道路条件などによって、毎回の積載量は変動します。
施工開始後は、受入先の計量記録や運搬伝票から平均積載量を確認します。例えば、初期の20回分について積載質量を集計し、平均値を求めれば、残数量に必要な運搬回数を補正できます。
平均積載量だけではなく、ばらつきも確認します。多くの車両が8トン前後を運んでいる中で、5トン程度の便が繰り返し発生している場合は、積込み方法、土の状態、配車条件などに原因がないかを確認します。
過積載によって運搬回数を減らすことは認められません。法令、車両条件、安全管理を守りながら、許容範囲内で積載量を安定させることが重要です。
密度と実積載量の根拠を残しておけば、当初計画と実績の差を説明できます。運搬回数が予定より増えた場合も、土量の増加なのか、平均積載量の低下なのかを切り分けられます。
空荷の復路と待機時間をどう扱うか
運搬車両は、土を積んで受入先へ向かう往路だけでなく、荷下ろし後に現場へ戻る復路でも燃料を消費します。そのため、走行距離方式でCO2排出量を求める場合は、原則として復路も含めて計算します。
往路と復路が同じ経路であれば、片道距離を2倍して往復距離を求めます。道路規制や一方通行によって経路が異なる場合は、往路距離と復路距離を別々に設定します。
復路が空荷であれば、積載状態の往路より燃料消費が小さくなる可能性があります。この違いを反映する算定方式では、積載時と空荷時の係数を分けます。一つの車両別排出係数で往復を計算する方式では、その基準に従います。
別の工事や施設から帰り荷を積む場合は、復路の排出量をどの輸送へ配分するかが課題になります。独自の判断で除外せず、適用する算定基準や組織内ルールを確認します。
待機時間もCO2排出量へ影響します。現場での積込み待ち、受入先での荷下ろし待ち、受付待ち、交通規制による停止などが発生し、エンジンを稼働したままであれば燃料を消費します。
総走行距離に排出係数を掛ける方法では、待機中の燃料消費が十分に反映されないことがあります。待機時間が長い現場では、施工後に燃料使用量方式で確認するか、算定基準に待機時間の扱いが定められているかを確認します。
待機を減らすには、積込み能力、往復時間、受入能力に合った配車が必要です。車両を増やせば運搬が早く終わるとは限りません。積込みや荷下ろしの処理能力を超える台数を投入すると、車列が長くなり、燃料消費と安全管理の負担が増えます。
現場で即土量を把握し、残数量に合わせて配車を調整できれば、不要な待機車両を減らしやすくなります。
CO2排出量を減らす施工計画の考え方
CO2排出量の算定結果は、報告書へ記載するだけではなく、施工計画の見直しに活用することが重要です。
最初に検討しやすいのは、場外へ搬出する土量そのものを減らす方法です。掘削土の中に現場内の盛土、埋戻し、仮設道路などへ利用できる土があれば、品質と施工条件を確認したうえで場内流用を検討します。
場内流用量が増えれば、場外運搬回数と総走行距離が減ります。ただし、利用目的に適さない土を無理に使うことはできません。土質、粒度、含水状態、強度、施工仕様を確認する必要があります。
次に、複数の受入先を比較します。処分条件だけでなく、往復距離、道路勾配、渋滞、搬入時間、受入能力を含めて検討します。距離が近くても待機が長い受入先と、少し遠くても円滑に搬入できる受入先では、実際の燃料消費が異なる可能性があります。
積載量の安定も重要です。平均積載量が低いと、同じ土量を運ぶための回数が増えます。車両ごとの積載実績を確認し、積込み作業のばらつきを減らします。
配車台数は、積込み能力と受入能力に合わせます。1時間当たりの積込み量、1回の往復所要時間、1台当たりの積載量から、滞留しにくい台数を設定します。
運搬経路は、最短距離だけでなく、走行の安定性を含めて評価します。急勾配や渋滞区間が続く経路より、多少長くても一定速度で走行できる経路の方が、燃料消費と所要時間を抑えられる場合があります。
施工順序を見直す方法もあります。受入先が混雑する時間帯を避けて搬出する、土質別に掘削順序を分ける、仮置き場を活用して配車を平準化するといった対応です。
対策の効果を比較するときは、変更する条件を明確にします。受入先変更の効果を見るなら土量と積載量を固定し、距離だけを変更します。場内流用の効果を見るなら距離を固定し、搬出土量を変更します。
このように条件を分けて計算すれば、どの対策によってCO2排出量が減ったのかを説明しやすくなります。
現場で即土量を更新して計画値と実績値を管理する
施工前に算定したCO2排出量は、計画時点の条件に基づく予測値です。施工が始まると、掘削量、搬出先、実積載量、経路などが変わることがあります。そのため、現場で即土量を再確認し、数値を更新する運用が重要です。
施工前には、現況地形と計画地形の差から予定土量を求めます。この数量を基に運搬回数、車両台数、施工日数、CO2排出量を計画します。
掘削開始後は、一定期間または一定施工量ごとに再計測します。掘削済み数量、場内仮置き量、搬出済み数量、残数量を区分し、今後必要となる運搬回数を計算します。
例えば、当初の搬出予定が500立方メートルでも、施工途中の計測で最終的に550立方メートルになる見込みが確認される場合があります。増加分50立方メートルについて、密度と実積載量を用いて追加運搬回数を求めれば、追加の走行距離とCO2排出量を早期に予測できます。
反対に、場内流用が進み、搬出対象が450立方メートルへ減少した場合は、残りの車両手配を見直します。当初計画の台数を維持すると、不要な待機や手配が発生する可能性があります。
日々の管理では、現場で計測した土量と、運搬伝票や計量記録を照合します。両者に差がある場合は、密度、測定範囲、土の状態、積載量、場内移動の有無を確認します。
土量データは、施工前、途中、完了後の時点ごとに保存します。過去のデータを上書きせず、測定日と対象範囲を分けて残せば、土量がいつ、どの理由で変化したかを追跡できます。
施工完了後は、最終地形から確認した土量、実際の運搬回数、走行距離、燃料使用量を整理します。計画値と実績値の差を分析することで、次の工事に使用する密度、平均積載量、運搬所要時間の設定を改善できます。
算定根拠を残して関係者と共有する方法
CO2排出量を共有するときは、最終的な数値だけでなく、計算に使用した条件と根拠を残す必要があります。同じ排出量でも、土量の増加によるものか、運搬距離の延長によるものかで、必要な対策は異なります。
土量については、計測日、対象範囲、基準面、比較した地形、除外範囲を記録します。仮置き土を計測した場合は、地表面との境界をどのように設定したかも残します。
密度については、使用した数値と根拠を記載します。土質試験の実測値なのか、過去の搬出実績なのか、計画用の参考値なのかを区別します。未確認の数値を使う場合は、概算条件であることを明記します。
車両条件としては、車両区分、最大積載量、計算に使用した実積載量、運搬回数を記録します。施工途中で平均積載量を更新した場合は、更新前後の数値を残します。
運搬距離は、受入先名だけではなく、標準経路、片道距離、復路距離を記録します。経路変更があった場合は、変更日と理由を整理します。
排出係数については、係数の種類、単位、対象車両、対象燃料、基準年、算定方式を記録します。走行距離方式、燃料使用量方式、輸送トンキロ方式のどれを採用したかが分からないと、第三者が計算を再現できません。
計算結果は、計画時、変更時、実績時に分けて保存します。施工途中で土量や搬出先が変わった場合も、当初計画を残しておけば、変更による影響を比較できます。
現場担当者、施工管理者、環境管理担当者、運搬会社などが同じ条件を確認できるようにすると、数量や排出量の認識差を減らせます。
LRTK Phoneを土量把握に活用する流れ
運搬由来のCO2排出量を施工途中で更新するには、現場の土量を継続的に確認できることが重要です。計測に大掛かりな準備が必要になると、土量確認の頻度が下がり、計画と実態の差を把握しにくくなります。
LRTK Phoneを活用すると、現場で位置情報を持つ点群データを取得し、掘削箇所や仮置き土の形状を記録できます。施工前、施工途中、施工後のデータを取得しておけば、地形の変化を比較しやすくなります。
計測前には、土量を求める対象範囲を明確にします。仮置き土を測る場合は、土の裾と周囲の地表面が分かるように記録します。掘削箇所を測る場合は、掘削底面だけでなく、法肩、法面、周辺地盤を含めて取得します。
死角があると、点群上で地形を正しく再現できない場合があります。構造物、車両、建設機械、資材などに隠れた場所がないかを確認し、必要に応じて複数の位置から計測します。
取得した地形データから土量を求めた後は、その数量が地山状態、ほぐれ状態、仮置き状態のどれに対応するかを整理します。続いて、対象土の密度を設定し、運搬対象質量へ換算します。
運搬対象質量を車両1回当たりの実積載量で割れば、必要運搬回数を求められます。運搬先までの往復距離を掛けることで総走行距離を算出し、指定された排出係数を適用すればCO2排出量を概算できます。
施工途中に再計測した場合は、初回土量を単純に置き換えるのではなく、搬出済み数量と残数量を分けて管理します。残数量から今後の運搬回数を計算すれば、工事完了までに追加で発生するCO2排出量を見込めます。
計測日、対象範囲、土量、密度、積載量、搬出先、運搬距離を一緒に保存しておけば、算定根拠を関係者へ共有しやすくなります。設計数量、現場計測値、伝票数量の差を確認するときにも活用できます。
なお、正式なCO2排出量の報告では、発注者や組織が指定する算定方法、排出係数、数量確認方法に従う必要があります。LRTK Phoneで把握した土量を基礎データとして、車両記録、運搬伝票、給油記録などと組み合わせて管理することが重要です。
まとめ
現場で即土量を把握できれば、掘削土や残土の運搬回数を求め、運搬に伴うCO2排出量を施工前から試算できます。基本的な流れは、土量を質量へ換算し、実積載量から必要運搬回数を求め、往復距離を掛けて総走行距離を算出し、採用する排出係数を適用する方法です。
運搬対象土量を500立方メートル、運搬対象質量を900トン、必要運搬回数を113回とした計算例では、片道5kmの総走行距離は1,130kmです。片道20kmでは4,520km、片道50kmでは11,300km、片道100kmでは22,600kmになります。
土量、車両、積載量、排出係数が同じであれば、片道100kmのケースは片道5kmのケースに比べて、距離方式によるCO2排出量が20倍になります。受入先の距離は、運搬由来の環境負荷を大きく左右する条件です。
ただし、実際の排出量は距離だけで決まりません。土の状態、密度、平均積載量、道路勾配、渋滞、待機時間、車両区分、燃料使用量などによって変化します。計画段階では条件をそろえて複数ケースを比較し、施工開始後は実績値へ更新することが重要です。
CO2排出量を減らすには、近い受入先を探すだけでなく、場内流用、土質別の搬出先選定、積載量の安定、適正な配車、待機時間の削減、運搬経路の見直しを組み合わせます。
LRTK Phoneで施工前後や施工途中の地形を計測し、現場の土量を継続的に確認すれば、残りの運搬回数とCO2排出量を状況に応じて更新できます。原価、工程、運搬計画、環境負荷を同じ土量データから管理するためにも、まずはLRTK Phoneを使った現場での土量把握から始めることが有効です。