トンネルずりの土量を現場で把握する重要性
トンネル工事では、切羽から発生する掘削物をトンネルずりとして坑外へ搬出します。トンネルずりの発生量は、掘進速度、積み込み作業、ダンプの配車、仮置き場の容量、処分先の受け入れ計画、再利用先との調整などに直接関係します。発生量の見込みが実態から大きく外れると、仮置き場が予定より早く埋まったり、運搬車両が不足したりして、掘削工程そのものへ影響する可能性があります。
そこで重要になるのが、現場で即土量を確認できる管理方法です。設計図から計算した数量だけでなく、実際に発生しているずりの体積を継続的に測定し、計画値との差を確認します。土量の変化を早い段階で把握できれば、運搬車両の追加、搬出時間の調整、仮置き区画の変更、処分先との受け入れ量調整などを先回りして進められます。
ただし、トンネルずりの数量管理には特有の難しさがあります。掘削前には地山の中に締まった状態で存在していた岩盤や土砂が、発破や機械掘削によって分離すると、岩塊や土粒子の間に空隙が生まれます。そのため、掘削後の見かけ体積は、掘削前の地山体積よりも大きくなるのが一般的です。
この体積変化を扱うために使用するのが膨張係数です。しかし、膨張係数は、岩種だけで一律に決められるものではありません。同じ地質区分でも、亀裂の状態、掘削方式、発破条件、破砕後の粒度、含水状態、運搬中の振動、仮置き方法などによって見かけ体積が変わります。
したがって、現場で即土量を求めるには、設計上の地山土量へ単純に一つの係数を掛けるだけでは不十分です。地山と実掘削断面、破砕と積載の状態、含水と仮置き後の沈下という三つの観点から、膨張係数を補正する必要があります。
トンネルずりの土量が設計値と一致しない理由
トンネルの設計掘削量は、基本的に掘削断面積と掘進長から求めます。たとえば、平均掘削断面積が60平方メートルで、掘進長が10メートルであれば、設計上の地山土量は600立方メートルです。しかし、実際に坑外へ搬出されるずりの見かけ体積が600立方メートルになるとは限りません。
第一の理由は、掘削によって材料がほぐれるためです。地山中では岩盤や土砂が密な状態で存在していますが、掘削後は岩塊同士の間に空隙ができます。その結果、同じ材料でも見かけ体積が増加します。
第二の理由は、設計断面と実掘削断面に差が生じるためです。発破による余掘り、亀裂に沿った岩盤の剥離、弱層の崩落、施工上必要となった追加掘削などがあれば、実際に取り除かれる地山量は設計数量より増えます。設計数量と搬出数量の差をすべて膨張と考えると、膨張係数を過大に見積もることになります。
第三の理由は、掘削後もずりの状態が変化するためです。積み込み直後のずりは空隙を多く含んでいても、ダンプの走行振動で沈み込むことがあります。仮置き後には自重や重機走行によって締まり、降雨や排水によって細粒分が移動する場合もあります。
第四の理由は、測定方法によって対象となる体積が異なるためです。設計断面から求める数量、ダンプ荷台の容量から集計する数量、仮置き場の地形測定から求める数量は、それぞれ基準となる状態が違います。同じ期間を対象としていても、積み込み時と仮置き後では見かけ体積が変わるため、完全には一致しません。
土量差の原因を整理せず、単に「設計より多い」「運搬台数が合わない」と判断すると、適切な補正ができません。設計値、実掘削量、運搬量、仮置き量を別々に記録し、どの段階で差が生じたのかを確認することが重要です。
計算前に区別する地山土量・ほぐし土量・締固め土量
トンネルずりの土量を計算するときは、地山土量、ほぐし土量、締固め土量の三つを区別します。これらを混同すると、運搬計画や再利用計画に大きなずれが生じます。
地山土量とは、掘削前の地山に存在する状態の体積です。設計上の掘削断面積に掘進長を掛けた数量が基本になります。ただし、実際の地山土量を求める場合は、余掘りや崩落などを含む実掘削断面を反映する必要があります。
ほぐし土量とは、掘削によって岩盤や土砂が分離し、空隙を含んだ状態の見かけ体積です。切羽から搬出された直後、ダンプへ積載した状態、仮置き場へ荷下ろしした状態などが該当します。ダンプ台数や仮置き場容量を検討する場合は、主にほぐし土量を使用します。
締固め土量とは、ほぐした材料を敷きならし、転圧や自重によって空隙を減らした後の体積です。トンネルずりを盛土材などとして再利用する場合は、完成後に必要となる締固め土量を把握しなければなりません。
たとえば、地山状態で1,000立方メートルの材料が、掘削後に1,250立方メートルへ膨張したとします。その1,250立方メートルを盛土に使用しても、締固め後の体積が1,250立方メートルになるわけではありません。締固めによって空隙が減るため、完成後の体積は小さくなります。
このため、土量を記録するときは、数値だけでなく状態も記載します。「地山換算」「積み込み時のほぐし状態」「仮置き直後」「仮置き後三日」「締固め後」など、数量がどの状態を示しているのかを明確にします。
同じ「ずり量」という名称で異なる状態の数量を扱うと、担当者間で認識がずれます。運搬計画ではほぐし土量、掘削出来高では地山土量、再利用計画では締固め後の必要量というように、目的に応じた数量を使い分けることが重要です。
膨張係数の基本式と計算方法
膨張係数は、地山状態の体積に対して、掘削後のほぐし体積が何倍になったかを示す係数です。基本式は次のように表せます。
膨張係数 = ほぐし土量 ÷ 地山土量
地山土量からほぐし土量を推定する場合は、次の式を使用します。
ほぐし土量 = 地山土量 × 膨張係数
たとえば、実掘削による地山土量が800立方メートルで、膨張係数を1.25とした場合、ほぐし土量は1,000立方メートルです。この数量を基に、仮置き場の使用量やダンプの必要運搬回数を検討します。
反対に、仮置き場で測定したほぐし土量が1,000立方メートルで、対応する地山土量が800立方メートルであれば、実績上の膨張係数は1.25です。ただし、この計算が成立するのは、両方の数量が同じ掘進区間を対象としている場合に限られます。
膨張係数と体積増加率は区別する必要があります。膨張係数が1.25であれば、ほぐし体積は地山体積の1.25倍です。増加した割合としては25パーセントになります。係数と増加率を混同すると、計算結果が大きく変わるため、資料には使用した定義を明記します。
また、膨張係数は材料だけで決まる固定値ではありません。大きな岩塊が多く、岩塊同士の空隙が大きい状態では、見かけ体積が増えやすくなります。細かい粒子が岩塊間の空隙を埋める状態では、見かけ体積が相対的に小さくなることがあります。
そのため、施工開始時に設定した係数は、計画のための暫定値として扱うことが適切です。施工が進み、実掘削量と仮置き量の実績が得られたら、現場条件に合わせて更新します。
補正1 地山条件と実掘削断面を反映する
一つ目の補正は、地山条件と実掘削断面の補正です。膨張係数を正しく求めるには、分母となる地山土量が実態に近いことが前提です。設計断面だけを使用すると、余掘りや崩落による増加分を膨張として誤って評価する可能性があります。
トンネル掘削では、地山が設計断面どおりに切り取られるとは限りません。発破掘削の場合、装薬量、孔配置、起爆順序、自由面の状態、地山の亀裂方向などによって余掘りが生じます。機械掘削でも、岩盤の剥離や弱層の崩落によって、設計断面より広い範囲が取り除かれることがあります。
たとえば、設計上の地山土量が1,000立方メートルで、仮置き場のほぐし土量が1,300立方メートルだった場合、設計値だけを基準にすると膨張係数は1.30です。しかし、実掘削断面を確認した結果、余掘りを含む地山土量が1,080立方メートルだった場合、実態に近い膨張係数は約1.20となります。
この差は、運搬計画を長期的に立てるうえで無視できません。膨張係数を1.30として今後の全区間へ適用すると、ダンプ台数や仮置き容量を過大に見積もる可能性があります。反対に、余掘りが増えているのに係数だけを下げると、実際の発生量を過小評価するおそれがあります。
地山条件を補正するときは、岩種名だけで判断しません。風化の程度、亀裂の間隔や方向、破砕帯の有無、粘土化した部分、湧水、切羽の自立性などを確認します。同じ岩種でも、健全部と強風化部では掘削後の粒度や空隙量が変わります。
実務では、一定の掘進長ごと、地質区分が変わった位置ごと、支保パターンが変わった位置ごとに管理単位を分けます。それぞれの区間について、設計断面、実測断面、掘進長、余掘り状況、崩落の有無、発生ずり量を記録します。
実掘削断面を毎回詳細に取得できない場合は、代表断面や出来形測定結果を用いて平均的な余掘り量を推定します。ただし、推定値を使用したことは記録に残し、実測値と同じ確定度で扱わないようにします。
地山条件と実掘削断面を先に整理すれば、発生量の増加が余掘りによるものか、ほぐしによるものかを切り分けやすくなります。これが膨張係数の一つ目の補正です。
補正2 破砕状態と積載状態を反映する
二つ目の補正は、破砕状態と積載状態の補正です。掘削後のずりがどのような大きさや形に分かれているかによって、岩塊同士の空隙量が変わり、見かけ体積にも差が生じます。
発破掘削では、発破条件によって粒度分布が変化します。大きな岩塊が多い場合、岩塊同士がかみ合わず、大きな空隙を含んだ状態で積み上がることがあります。この状態では、同じ質量でも見かけ体積が大きくなりやすい傾向があります。
一方、細かく破砕され、大小の粒子が適度に混在している場合は、細粒分が大きな岩塊の間を埋めます。その結果、かさ密度が高くなり、見かけ体積が小さくなることがあります。ただし、細粒分に水分が加わり、団粒や塊を形成すると、再び空隙が増える場合もあります。
機械掘削でも、切削方法、地山強度、掘削速度、刃先の状態などによって発生ずりの形状が変わります。板状に割れた材料、角張った大塊、細粒分を多く含む材料では、積載したときの空隙構造が異なります。
破砕状態の補正では、現場で継続できる分類方法を決めることが重要です。厳密な粒度試験を毎日行うのが難しい場合は、大塊が多い状態、大小が混在する状態、細粒分が多い状態など、写真と代表寸法による区分を設定します。担当者が変わっても同じ判断ができるように、基準となる写真を残します。
積載状態にも注意が必要です。ダンプ荷台へ積み込んだ直後は空隙が多くても、走行中の振動でずりが沈み、荷下ろし時には高さが低くなる場合があります。荷下ろし後に重機で押し広げれば、さらに締まり方が変化します。
したがって、膨張係数を求める際は、積み込み直後、運搬後、仮置き直後、整形後のどの状態を測ったのかを統一します。異なる状態の体積を混在させると、破砕状態による変化と締まりによる変化を区別できません。
発破条件や掘削方法を変更した区間では、変更前後の土量を分けて確認します。発破を細粒化する方向へ調整した場合、ダンプ一台当たりに積載できる見かけ体積や質量が変わる可能性があります。二次破砕を行う頻度が増えた場合も、仮置き時の空隙量が変化します。
同じ地質区分だから同じ膨張係数を使えるとは限りません。破砕状態と積載状態を確認し、施工条件の変更ごとに係数を見直すことが二つ目の補正になります。
補正3 含水状態と仮置き後の沈下を反映する
三つ目の補正は、含水状態と仮置き後の沈下に対する補正です。トンネルずりは、掘削後に同じ体積を保ち続けるわけではありません。湧水、降雨、排水、運搬振動、自重、重機走行などの影響を受け、見かけ体積が変化します。
湧水の多い切羽から発生したずりは、水分を多く含む場合があります。大きな岩塊が中心であれば、水分による体積変化は限定的なこともありますが、細粒分が多い材料では状態が変わりやすくなります。水分によって細粒分が岩塊へ付着したり、空隙へ流れ込んだりするためです。
仮置き場へ荷下ろしした直後のずりは、岩塊同士の間に空隙を多く含んでいます。その後、自重による沈下が進むと、山の高さが低くなります。さらに、上部を重機が走行した場合は局部的な締固めが発生し、表面形状が変化します。
降雨時には、細粒分が斜面下部へ移動したり、法尻が広がったりすることがあります。水たまりが生じると、水面下の形状が測れず、土量を正確に求めにくくなります。排水後には表面が沈下することもあるため、降雨前後の測定値を単純に比較するのは適切ではありません。
この補正を行うには、測定時点を決めます。たとえば、毎日の搬入終了後に測定する、重機による整形後に測定する、荷下ろしから一定時間経過後に測定するなど、現場内で条件を統一します。
完全に同じ含水状態を再現することは困難ですが、測定日時、天候、前日までの降雨、排水状況、重機走行の有無を記録することで、数値変化の原因を判断しやすくなります。降雨直後の測定値は通常時と区別し、係数更新の代表値から外す方法も考えられます。
仮置き場の地盤沈下にも注意が必要です。軟弱な地盤へ大量のずりを積み上げた場合、ずり山自体が締まるだけでなく、下部地盤も沈下する可能性があります。使用開始前の地盤面を固定したまま体積を計算すると、地盤沈下分が土量計算へ影響します。
長期間使用する仮置き場では、周囲の基準点や変位しにくい位置を定期的に確認します。地盤面の沈下が疑われる場合は、基準面の扱いを見直し、いつ更新したかを記録します。
含水状態、自重沈下、重機による締固め、地盤沈下を区別して記録することで、仮置き量の変化を適切に評価できます。これが三つ目の補正です。
現場で即土量を求めるための基本手順
トンネルずりの土量を現場で求めるときは、測定作業だけに注目せず、対象区間と仮置き範囲を対応させることが重要です。どの切羽、どの掘進区間から発生したずりか分からなければ、膨張係数を正しく求められません。
最初に管理単位を決めます。日ごと、掘進長ごと、発破回ごと、地質区分ごとなど、現場の運用に合った単位を設定します。短い単位で管理すれば変化を把握しやすくなりますが、測定や記録の負担は増えます。日々の発生量と仮置き場の余裕を考慮して決定します。
次に、仮置き前の基準面を測定します。土量計算では、現在のずり山表面と、ずりを置く前の地盤面との差を使用します。基準面が正しく取得されていなければ、ずり山を詳細に測っても正しい体積を得られません。
すでにずりが置かれていて元地盤を測れない場合は、施工前の測量結果、設計地盤面、周囲の地形などから基準面を推定します。ただし、推定した基準面には不確かさがあるため、速報値として扱い、確定数量とは区別します。
基準面を準備したら、ずり山の現況形状を測定します。山の頂部だけではなく、法尻、斜面の変化点、くぼみ、段差、重機走行跡などを含めて取得します。法尻の位置は底面積に影響するため、特に丁寧に確認します。
現況面と基準面を同じ範囲で比較し、その差から体積を算出します。境界を設定するときは、隣接するずり山、資材、重機通路、水たまりなどが計算範囲へ混入しないようにします。
算出後は、対象期間の掘進記録と照合します。掘進長、設計断面積、実掘削断面、地質区分、支保パターン、発破条件、ダンプ台数、搬出量などを確認します。
最後に、地山土量と実測したほぐし土量から膨張係数を求めます。単一の測定結果だけで確定せず、複数回の実績を蓄積して傾向を確認します。異常に大きい値や小さい値が出た場合は、測定範囲、基準面、余掘り、別区間のずり混入、降雨などを再確認します。
仮置きしたトンネルずりを測定するポイント
仮置きずり山は、不規則な形状を持ち、搬入のたびに変化します。現場で即土量を安定して求めるためには、測定しやすい仮置き方法を計画段階から考えておく必要があります。
複数の切羽や異なる地質区間から発生したずりを同じ場所へ連続して投入すると、区間ごとの数量を分けられなくなります。可能であれば、搬入日、切羽、地質区分、再利用の可否などに応じて仮置き区画を分けます。
ヤードが狭く、区画を分けられない場合は、一定時刻で測定を行い、前回との差分として増加量を管理します。この場合も、測定後に搬入した数量と翌回測定までの期間を明確にしておきます。
ずり山の形状は、極端に低く広げすぎないことが重要です。法尻が広がると境界が分かりにくくなり、隣接する地盤との区別も難しくなります。一方、高く急に積み上げると斜面の死角が増え、測定と安全管理が難しくなります。
一定の積み上げ方向と整形方法を決めておけば、測定条件をそろえやすくなります。ただし、重機で過度に押し固めると、ほぐし状態から締まった状態へ変化します。運搬用のほぐし土量を確認したい場合は、整形条件を毎回そろえます。
大きな岩塊が山の表面に突出している場合、その一部だけを拾う測定では形状を正しく再現できないことがあります。複数方向から測定し、岩塊の陰になる部分を減らします。表面の細かな凹凸をどこまで反映するかも、測定ごとに変えないようにします。
水たまりがある場合は、水面下の形状を取得できないことがあります。可能であれば排水後に測定し、排水できない場合は測定不能範囲を記録します。推定面を用いる場合は、実測値と区別します。
安全面では、測定のために不安定なずり山へ登らないことが基本です。岩塊の転落、斜面崩壊、重機との接触などの危険があります。ダンプや重機の稼働を一時的に調整し、安全な位置から測定できる時間帯を確保します。
ダンプ運搬記録から土量を確認する方法
現場で即土量を把握する方法として、ダンプの運搬台数から数量を集計する方法があります。記録しやすく、日々の速報値を得る方法として有効ですが、荷台の公称容量に台数を掛けるだけでは、実際の土量と差が生じる可能性があります。
荷台への積載量は、ずりの粒度や積み込み方法によって変わります。大きな岩塊が多い場合は、荷台の隅や岩塊同士の間に空隙が残ります。外見上は満載でも、細粒分が多い材料とはかさ密度が異なります。
また、積み込み担当者や積み込み機械が変わると、荷姿が変化します。荷台上端まで平らに積む場合と、中央を山形に積む場合では、見かけ体積が異なります。安全上の理由で積載高さを抑える場合もあります。
ダンプ台数から土量を求める場合は、代表的な積載状態を測り、一台当たりの平均見かけ体積を設定します。積載状態に差が大きい場合は、標準積載、少量積載などの区分を設けて記録します。
走行中の振動による沈下にも注意します。積み込み直後に測った体積と、荷下ろし直前の体積は一致しない可能性があります。ダンプ積載量を仮置き土量と比較する場合は、どの時点の数量を使っているかを明確にします。
重量データを取得できる場合は、体積と質量を照合できます。ただし、体積へ換算するためのかさ密度は、粒度や含水状態によって変わります。一度設定した密度を固定して使い続けるのではなく、材料状態が変わったときに見直します。
ダンプ記録は日々の発生量を迅速に把握する方法として活用し、仮置き場の形状測定を定期的な確認に使用すると効果的です。台数集計と実測土量の差を確認することで、一台当たりの積載量や膨張係数を修正できます。
膨張係数を現場実績から更新する方法
施工前に設定した膨張係数は、計画を立てるための初期値です。施工開始後は、現場で得た実績を基に更新します。現場固有の係数を蓄積すれば、掘進に伴う発生量を予測しやすくなります。
更新の基本は、同じ対象区間の地山土量とほぐし土量を対応させることです。地山土量には、可能な範囲で実掘削断面を反映します。ほぐし土量には、同じ区間から発生し、同じ測定条件で確認した仮置き量を使用します。
複数区間のずりが混在している場合は、正確な係数を求めにくくなります。測定対象の開始時刻と終了時刻、対応する発破回、ダンプの搬出先を記録し、対象をそろえます。
得られた係数は、地質区分、掘削方式、破砕状態、含水状態ごとに整理します。一つの平均値にまとめると、条件変化を見落とす可能性があります。たとえば、健全な岩盤区間、破砕帯、湧水区間などで分けておけば、今後同じような地質へ進入したときの参考になります。
係数の更新では、一回の結果だけを採用しません。測定誤差や一時的な余掘り、降雨、別材料の混入などにより、極端な値が出ることがあるためです。複数回の実績を確認し、条件が同じ区間の傾向から代表値を設定します。
係数が急に変化した場合は、単に新しい値へ置き換えるのではなく、原因を確認します。実掘削断面の増加、発破条件の変更、地質の変化、粒度の粗大化、積み込み方法の変更、仮置き後の締固め、測定境界の誤りなどが考えられます。
原因が明確であれば、その条件に対応する係数として記録します。原因が分からない場合は、測定をやり直したり、ダンプ記録と照合したりして、誤差の可能性を確認します。
土量の測定誤差を抑える管理ルール
土量測定の精度は、使用する測定方法だけでなく、日々の運用によって左右されます。測定担当者ごとに範囲や条件が変わると、同じずり山でも異なる結果が出ます。
まず、仮置き場ごとに基準面を固定します。基準面の名称、取得日、座標系、対象範囲を記録し、全担当者が同じデータを使用します。基準面を更新した場合は、更新理由と適用開始日を残します。
次に、体積を計算する境界を保存します。毎回目視だけで境界を設定すると、法尻付近の範囲が変わり、差分土量へ影響します。区画線や固定物を目安として使用し、同じ範囲を再現できるようにします。
測定時刻もできる限り統一します。搬入途中に測る場合と、一日の搬入終了後に測る場合では条件が違います。たとえば、作業終了後、重機整形前など、現場で実行可能なタイミングを決めます。
測定記録には、体積だけでなく、天候、降雨、測定者、対象区間、搬入状況、重機走行、排水状況、ずりの分類などを含めます。数値に異常があったとき、周辺情報がなければ原因を判断できません。
ファイル名や記録名も統一します。測定日、仮置き場名、切羽名、対象区間、測定状態が分かる名称にすると、後から比較しやすくなります。
定期的に別の管理値と照合することも有効です。設計掘削量、実掘削断面、ダンプ台数、重量記録、仮置き場の測定量を比較します。完全な一致を求めるのではなく、差の大きさと変化傾向を確認します。
土量差が一定範囲を超えた場合に再確認する基準を決めておくと、異常を放置しにくくなります。再測定、基準面の確認、ダンプ記録の確認、余掘り状況の確認など、差が出たときの手順を決めておきます。
算出した土量を工程と運搬計画に活用する
現場で即土量を求める目的は、測定結果を記録することだけではありません。算出した数量を、掘進工程、ダンプ配車、仮置き場、処分、再利用の判断へつなげることが重要です。
工程管理では、掘進長当たりの発生ずり量を整理します。たとえば、地質区分ごとに一メートル掘進したときの地山土量、ほぐし土量、必要運搬回数を求めます。今後の掘進予定へ当てはめれば、日ごとの発生量を予測できます。
運搬計画では、一日当たりのほぐし土量を、一台当たりの平均積載量で割って必要運搬回数を求めます。ただし、必要な車両台数は運搬回数だけでは決まりません。切羽から積み込み場所までの移動、積み込み、坑内走行、坑外走行、荷下ろし、帰路、待機を含む一巡時間を確認します。
一台が一日に何往復できるかを求め、必要運搬回数を処理できる台数を検討します。坑内交通規制や交互通行、換気、他作業との干渉がある場合は、余裕を持った計画が必要です。
仮置き場では、現在の土量と使用可能容量を比較し、満杯になるまでの日数を予測します。使用可能容量を求める際は、敷地全体の体積ではなく、重機通路、排水設備、安全な法面、搬出動線などを除いた実質容量を使用します。
毎日の発生量が搬出量を上回っている場合、仮置き量は増加します。その差を継続して集計すれば、仮置き場が限界へ達する時期を予測できます。早めに把握できれば、搬出先の追加、稼働時間の変更、仮置き区画の拡張などを検討できます。
処分先や再利用先へ搬出する場合は、受け入れ可能な日量と発生量を比較します。発生量が受け入れ量を上回る状態が続くと、坑内掘削が順調でも、ずり処理が原因で工程が停滞する可能性があります。
再利用するずりは、体積だけでなく材料状態も管理します。地質、粒度、含水状態、異物の有無などを仮置き位置と対応させます。再利用可能な材料と処分対象の材料が混在すると、後から選別する負担が増えます。
LRTK Phoneでトンネルずりの土量を確認する
トンネルずりの仮置き量は日々変化するため、必要なときに現場で測定できる仕組みが役立ちます。測量担当者の手配を待たなければ測れない運用では、配車や仮置き場の判断に必要な情報を得るまでに時間がかかることがあります。
LRTK Phoneを活用すると、現場で取得した位置情報や形状データを基に、ずり山の体積確認へつなげられます。仮置き前の地盤形状を基準面として保存し、その後に取得したずり山の現況面との差を比較することで、仮置きされた見かけ体積を確認できます。
活用の前提として、最初に基準面を適切に取得する必要があります。仮置き場の使用開始後に元地盤が見えなくなると、正確な基準面を取得できません。使用前の測定を施工準備へ組み込み、座標系、範囲、取得日を記録します。
日常測定では、前回と同じ境界、同じ基準面、できる限り同じ測定時点を使用します。法尻、頂部、斜面の変化点、重機走行によるくぼみなどを捉え、ずり山の形状を確認します。
測定対象へ近づくと危険な場合は、無理に斜面へ立ち入りません。大きな岩塊の転落や重機との接触を避け、安全な位置と時間帯を確保します。死角がある場合は複数方向から測定し、取得できない範囲が残った場合は記録します。
測定結果には、対象となる掘進区間、地質、発破条件、測定日時、仮置き後の経過時間、天候などを関連付けます。これにより、単に土量を確認するだけでなく、条件ごとの膨張係数を算出しやすくなります。
継続して測定すれば、地山土量とほぐし土量の関係を現場実績として蓄積できます。地質が変化したとき、発破条件を変更したとき、含水状態が変わったときの数量差を確認し、今後の発生量予測へ反映できます。
ただし、測定結果を契約数量や正式な出来高確認に使用する場合は、発注者との取り決め、適用する測定方法、要求精度、検査方法、データの提出形式などを事前に確認する必要があります。日常の工程管理に用いる速報値と、正式な数量として扱う値を区別することが大切です。
まとめ
トンネルずりの土量は、設計断面積と掘進長から求めた地山土量だけでは管理できません。掘削によって岩盤や土砂がほぐれ、空隙が生じるため、運搬時や仮置き時の見かけ体積は地山体積より大きくなるのが一般的です。
この変化を扱う膨張係数は、一つの固定値として扱わず、現場条件に応じて補正する必要があります。一つ目は、地山条件と実掘削断面の補正です。余掘りや崩落による増加分を把握し、膨張による増加と分けて評価します。
二つ目は、破砕状態と積載状態の補正です。大塊、細粒分、粒度のばらつき、発破条件、二次破砕、運搬振動などによって見かけ体積が変わります。積み込み直後、運搬後、仮置き後のどの状態を測るかも統一します。
三つ目は、含水状態と仮置き後の沈下の補正です。湧水、降雨、自重沈下、重機走行、排水、地盤沈下などを記録し、測定条件の違いによる体積変化を考慮します。
現場で即土量を求めるためには、仮置き前の基準面を取得し、測定範囲と時点を統一することが重要です。得られた土量は、実掘削断面、掘進長、ダンプ台数、重量記録などと照合し、複数の管理値から妥当性を確認します。
膨張係数は、施工前の想定値を使い続けるのではなく、地質や施工条件ごとの実測結果から更新します。現場固有の実績が蓄積されれば、今後の発生ずり量、必要なダンプ台数、仮置き場の残容量、搬出先の受け入れ量を予測しやすくなります。
トンネルずりの管理を概算や経験だけに頼らず、日々の形状データと施工記録に基づく運用へ移行することで、仮置き場の容量不足や運搬待ちによる工程停滞を防ぎやすくなります。変化するずり山を現場で継続的に確認し、膨張係数の三つの補正を実績へ反映する手段として、LRTK Phoneの活用が有効です。