土留め内で即土量を把握する必要性
土留めを使用する掘削工事では、掘削の進捗確認、搬出車両の手配、残土処分先との調整、床付け完了時期の予測など、土量を基準にした判断が日々発生します。特に工期が限られる都市土木や地下構造物の施工では、前日の掘削量を翌日になって集計するのではなく、現場で即土量を確認し、その日のうちに次の工程を調整することが求められます。
ただし、土留め内は開けた造成地や単純な根切りとは条件が異なります。土留め壁の内側には、切梁、腹起し、火打ち、中間杭、構台支持柱、仮設梁などの支保工が配置されます。掘削面には段差や釜場があり、床付け面が一つの高さになっていないことも珍しくありません。さらに、覆工板や作業構台によって上空が遮られ、計測できる位置や方向が制限されます。
このような場所で長さ、幅、平均深さだけを掛け合わせると、現況と合わない土量になる可能性があります。平面形状が長方形に見えても、壁際には腹起しが張り出し、隅角部には火打ちが配置されています。掘削底には集水用の深掘りや排水溝があり、未掘削部分や仮置き土が残っていることもあります。
さらに注意したいのが、「支保工を控除した土量」という表現の意味です。支保工の体積を差し引く必要があるかどうかは、求めたい数量によって変わります。実際に掘削した地山の体積を求めるのか、支保工が設置された状態で利用可能な空間を求めるのか、構造物完成後の埋戻し量を求めるのかによって、控除対象は同じではありません。
現場で即土量を算出するためには、計測を急ぐ前に数量の定義をそろえる必要があります。算定目的、対象範囲、基準面、計測時点、支保工の扱いを先に決めることで、短時間でも再現性のある数量を得やすくなります。
支保工を控除する前に土量の目的を決める
支保工を控除する計算では、最初に土量の使用目的を明確にします。目的が曖昧なまま支保工の体積を総土量から差し引くと、施工実績と合わない数値になることがあります。
掘削出来高を確認する場合は、基本的に掘削前の地盤面と掘削後の地盤面との差から体積を求めます。切梁や腹起しは、多くの場合、所定の深さまで掘削して空間を確保した後に設置されます。そのため、切梁が現在その空間を占めていても、その位置にあった土はすでに掘削されています。実際に掘った地山土量を算出する目的で切梁の体積を差し引くと、掘削実績を過小に評価する可能性があります。
一方、支保工が残っている状態で、土留め内にどれだけの有効空間があるかを求める場合は、支保工の占有体積を控除します。充填材を投入できる空間、仮設的な貯留容量、資材を配置できる容積などを検討する場合は、切梁や腹起しによって使用できない部分を差し引く必要があります。
埋戻し量を算出する場合は、支保工の撤去計画が重要です。埋戻しの進行に合わせて切梁や腹起しを撤去するのであれば、撤去後の空間にも埋戻し材が入るため、最終的な埋戻し量からそれらの部材を控除する必要はありません。中間杭や仮設基礎を残置する計画であれば、残置部分は埋戻し材が入らないため控除対象になります。
搬出車両の手配に使用する土量では、支保工の控除とは別に、土の体積変化を考える必要があります。地山状態の土は、掘削によってほぐれると体積が増えることがあります。含水状態や土質、積み込み方法によっても車両上の体積は変化します。このため、地山土量と搬出土量を同じ数値として扱わないことが大切です。
計算を始める前には、「掘削前から現在までの地山掘削量」「支保工が残る状態での有効空間」「構造物完成後の埋戻し必要量」など、数量の名称を具体的に決めます。名称を明確にすれば、何を控除し、何を控除しないかを判断しやすくなります。
また、出来高や契約数量として使用する場合は、設計図書や工事ごとの数量算出条件を確認します。現場で求めた実体積と、契約上の算定数量が必ずしも一致するとは限りません。現場管理用の数量と、出来高確認に使用する数量を分けて記録することが重要です。
土量算出に必要な図面と現場情報
土留め内の土量を短時間で算出するには、現地で形状を計測するだけでなく、図面と施工情報を組み合わせる必要があります。現場で即土量を求めるときほど、事前資料の整理が計算時間と精度を左右します。
まず確認するのは土留め平面図です。土留め壁の配置、壁の内面、隅角部、出入口、張り出し部、施工区画などを把握します。土留め壁の中心線を境界にするのか、壁の内面を境界にするのか、設計上の掘削線を境界にするのかによって、平面積が変わります。
次に土留め断面図を確認します。現況地盤高、各段階の掘削高さ、計画床付け高、切梁の設置高さ、腹起しの位置、中間杭の根入れなどを読み取ります。複数の床付け高さがある場合や、排水勾配が設けられている場合は、単一の水平面として計算しないようにします。
支保工配置図からは、切梁、火打ち、中間杭、構台梁などの位置と本数を確認します。部材表がある場合は、部材の断面寸法、長さ、設置高さを整理します。ただし、図面上の配置が現況と一致しているとは限りません。施工中の変更、追加補強、部分撤去などがあるため、現場確認も必要です。
施工ステップ図も重要です。土留め工事では、掘削と支保工設置を段階的に繰り返します。どの深さまで掘削した時点で、どの支保工が設置されるのかを確認すれば、計測時点で存在する部材と、今後撤去される部材を区別できます。
現場では、未掘削部、掘り過ぎ部、仮置き土、泥土、水たまり、敷鉄板、砕石、資材などの有無を確認します。計測データ上では、地盤と仮置き土が連続した一つの面に見える場合があります。仮置き土を含めて差分計算すると、実際の掘削量の一部が相殺されることがあります。
座標系と高さ基準も統一します。設計座標、任意座標、現場基準点、仮の高さ基準が混在すると、複数時期の計測結果を正しく重ねられません。初回計測時に使用した基準を記録し、以後の計測でも同じ基準を使用します。
確認した情報は、現場担当者の記憶だけに頼らず記録します。算定目的、使用図面、図面の版、基準点、計測日時、施工段階、控除対象を残すことで、後日数量に疑問が生じた場合でも計算を追跡できます。
手順1 算定範囲と境界を固定する
最初の手順は、土量を求める範囲を固定することです。計測精度が高くても、前回と今回で境界が異なれば、正しい差分土量は得られません。
平面方向の境界としては、土留め壁の内面を使用する方法、計画掘削線を使用する方法、実際に掘削された外周を使用する方法があります。掘削出来高を求める場合は、実際の掘削範囲を反映する必要があります。ただし、毎回実掘削外周を作り直すと比較範囲が変わるため、日次管理では固定した管理区画を設定し、その区画内の変化を求める方法が扱いやすくなります。
土留め壁の内面を境界にする場合は、壁の施工誤差や変形も考慮します。設計図上では長方形でも、現場では壁面がわずかに傾いたり、腹起しの設置によって計測できる壁際が限られたりします。実測形状を用いるのか、設計形状を用いるのかを決めておきます。
隅角部では、火打ちの位置に合わせて境界を内側へ曲げるのではなく、まず土留め内全体の境界を設定します。支保工は後の手順で控除します。最初から支保工を避けた複雑な外周を作ると、支保工配置が変わるたびに算定範囲も変わり、時系列比較が難しくなります。
鉛直方向の境界も固定します。総掘削量を求める場合は掘削前地盤面と現在地盤面、残掘削量を求める場合は現在地盤面と計画床付け面、埋戻し量を求める場合は埋戻し開始時の空間と完成構造物の外形を使用します。
釜場、排水溝、基礎の深掘り、地中梁部分などは、主な床付け面とは別区画にします。小さな深掘りを全体の平均深さだけで表現すると、局所的な数量を正確に把握できません。平坦部、段差部、釜場などを区画別に算出し、最後に合計すると確認しやすくなります。
土留め内に搬入路や斜路が残っている場合も区画を分けます。斜路部分は掘削の進行とともに形状が変わり、最終段階でまとめて撤去されることがあります。主掘削部と斜路部を別管理にすれば、当日の掘削量と将来の残掘削量を整理できます。
設定した境界は座標データとして保存し、次回以降も同じものを使用します。境界点に番号を付け、図面や現場写真にも対応を示しておくと、担当者が変わっても範囲を再現しやすくなります。
手順2 基準面と計測時点を統一する
二つ目の手順は、土量計算に使用する基準面と計測時点を統一することです。土留め工事では日々地盤形状が変化するため、いつの状態を比較しているのかが不明確だと、計算結果を施工実績として使用できません。
掘削前の基準面には、着工前に計測した現況地盤面を使用するのが基本です。ただし、舗装撤去、表土除去、先行掘削、地盤改良などがすでに行われた後に初回計測した場合、その前に発生した土量は含まれません。どの工程後の面を基準にしたのかを明記します。
日次掘削量を求める場合は、前回計測面と今回計測面の差を計算します。両方の計測で同じ座標系、高さ基準、外周境界を使用する必要があります。基準点がずれていると、地盤面全体が上下に移動して見え、実際には掘削していない範囲にも体積差が発生します。
計測時刻もそろえます。前回は作業終了直後、今回は午前中というように時点が異なると、一日単位の掘削量として比較できません。定期管理では、作業終了後など一定の時点を計測基準にします。緊急に途中経過を測る場合は、時刻とその後の施工内容を記録します。
現在地盤面を作成するときは、地盤以外の物体を除外します。切梁、腹起し、重機、作業員、ホース、資材、敷鉄板などを地盤点として扱うと、実際より高い面が作られ、掘削量が小さく算出されます。
土留め内に水がたまっている場合、計測できるのは水面までとなることがあります。水面を地盤面として使用すると、水深分の掘削が反映されません。排水後の計測結果、測深結果、施工記録などを用いて水面下の形状を補います。推定した範囲は実測範囲と区別して記録します。
泥土が堆積している場合も注意が必要です。泥土表面を現在地盤面とするのか、泥土を除去した後の床付け面を管理するのかによって数量が変わります。泥土を掘削対象として扱う場合は、その厚さや含水状態を別に把握します。
床付け面が設計上水平でも、実際には排水勾配や施工上の凹凸があります。平均高さだけで判断すると、掘り過ぎと掘り残しが相殺される可能性があります。面同士を比較し、区画ごとの高低差を確認することが有効です。
手順3 支保工控除前の総土量を算出する
三つ目の手順では、支保工を差し引く前の総土量または総空間体積を算出します。支保工の計算と地盤形状の計算を最初から混ぜず、基準となる総体積を先に求めます。
形状が単純な場合は、平面積に平均深さを掛けて概算できます。土留め内の長さが二十メートル、幅が十メートル、平均掘削深さが五メートルであれば、総体積の概算は千立方メートルです。ただし、壁面の傾き、床付けの段差、斜路、釜場などがある場合は、区画別に計算します。
掘削深さが場所によって異なる場合は、平面を複数の区画に分けます。それぞれの区画について面積と平均深さを求め、各体積を合計します。区画境界は、床付け高さが変わる位置、斜路の始終点、深掘り部の外周などに設定します。
細長い土留めや断面形状が連続的に変化する現場では、複数の横断面を使う方法があります。隣り合う断面積の平均に断面間距離を掛け、区間ごとの体積を合計します。形状変化が大きい位置では断面間隔を細かくします。
地盤面が複雑な場合は、掘削前面と現在面を三次元の面として作成し、その間の体積を求めます。点群を利用すれば、床付け面の凹凸、法面、段差、釜場、部分的な掘り残しなどを反映しやすくなります。
残掘削量を求める場合は、現在面と計画床付け面の間の体積を計算します。このとき、計画面より現在面が低い部分、つまり掘り過ぎ部分をどのように扱うかを決めます。掘り過ぎ量と掘り残し量を単純に相殺すると、埋戻しや補修が必要な箇所を見落とすことがあります。掘り残しと掘り過ぎを別々に集計する方が施工判断に適しています。
総体積を算出したら、別の簡易計算と比較します。三次元計算の結果が千立方メートルであるのに、平面積と平均深さによる概算が六百立方メートルしかない場合は、境界や高さ基準に問題がある可能性があります。簡易計算は正式値の代わりではありませんが、入力ミスや桁違いを発見する照査になります。
土留め内に仮置き土がある場合は、掘削部と仮置き部を分けます。土留め全体を一つの範囲として前後比較すると、掘削による地盤低下と仮置きによる地盤上昇が相殺されます。実際の掘削量、場内移動量、場外搬出量を区別するためには、区画別の体積管理が必要です。
手順4 支保工の占有体積を部材別に整理する
四つ目の手順では、控除対象と決めた支保工について、部材別に占有体積を算出します。支保工には形状や方向の異なる部材が含まれるため、一つの方法でまとめて計算するのではなく、種類ごとに整理します。
切梁は、断面積に土留め内の有効長を掛けて体積を求めます。部材表に記載された全長には、接合部や壁側へののみ込みが含まれている場合があります。土留め内の有効空間を求める目的では、実際に内部空間を占有する長さを使用します。
腹起しは土留め壁に沿って配置されます。断面積と配置延長から体積を算出できますが、隅角部や継手部分で部材が重なることがあります。単純に全ての部材長を合計すると、重複部分を二重に計上する可能性があります。
火打ちは平面上で斜めに配置される部材です。平面図上の投影長だけでなく、上下方向に傾斜している場合は実際の部材長を使用します。両端の高さが異なる場合、平面的な距離だけでは実長になりません。
中間杭や構台支持柱は、断面積に対象区間の高さを掛けます。掘削土量に対して控除する場合は、掘削範囲内の部分だけを対象にします。床付け面より下の根入れ部分や、地上に突出した部分を含めないようにします。
構台では、主梁、受梁、支持柱、筋交い、覆工部材などが立体的に配置されます。各部材の体積を単純に合計すると、柱と梁の交差部などで重複が発生します。要求精度が高い場合は、部材を立体形状として配置し、重なりを除いた占有体積を求めます。
ここで重要なのが、部材の外形体積を使うのか、材料そのものの実体積を使うのかという点です。鋼製部材には開放された部分があり、外接する長方形の体積と鋼材そのものの体積は一致しません。
充填材が部材の開放部や隙間に入り込める場合は、材料実体積に近い考え方が適することがあります。一方、資材配置や作業空間として利用できない範囲を求める場合は、部材の外形で囲まれる占有空間を使う方が実態に合う場合があります。目的に応じた定義が必要です。
ブラケット、ジャッキ、接合板、ボルト頭などの小部材をどこまで含めるかも決めます。総体積が大きく、概算を目的とする場合は主要部材だけを対象にしても、全体への影響が小さいことがあります。狭い区画で多数の金具が集中している場合や、充填量を細かく管理する場合は、小部材も無視できません。
支保工の計算結果は、部材名、断面寸法、長さ、本数、対象高さ、体積が追跡できる形で残します。現場で部材が追加、移設、撤去された際も、該当部分だけを更新できます。
手順5 控除後の土量を照査して共有する
五つ目の手順では、支保工控除前の総体積から、控除対象として整理した支保工の占有体積を差し引きます。ただし、引き算をした時点で作業を終えず、結果の意味と妥当性を確認します。
総空間体積が千立方メートル、控除対象の支保工体積が二十立方メートルであれば、支保工を除いた有効空間は九百八十立方メートルです。この九百八十立方メートルは、支保工が残る状態で利用可能な空間を表します。
一方、実際の地山掘削量を求めている場合、切梁や腹起しを控除しないことがあります。その場合の掘削量は千立方メートルが基準です。同じ現場から千立方メートルと九百八十立方メートルの二つの数値が得られても、どちらかが誤りとは限りません。数量の目的が異なるためです。
計算後は、控除率を確認します。支保工の占有割合が小さい現場で、控除後の体積が総体積から大幅に減少している場合は、単位、本数、部材長、断面積を見直します。ミリメートルをメートルへ換算する際の誤りや、断面積と外形寸法の取り違えは大きな差につながります。
支保工同士の交差部分が二重計上されていないかも確認します。切梁と腹起し、中間杭と構台梁、火打ちと接合部などの重なりを個別に合計すると、同じ空間を複数回控除することがあります。
別の計算方法による照査も有効です。平面積と平均有効高さによる概算、複数断面から求めた体積、三次元面から求めた体積を比較します。各方法の結果が近ければ、範囲や高さ設定が妥当である可能性が高まります。
搬出記録との比較では、地山土量と運搬時の土量を直接一致させないようにします。車両台数から換算した土量は、積み方、含水状態、土質、車両ごとの積載状況などの影響を受けます。大きな差がある場合は、体積変化や場内仮置きの有無も確認します。
共有時には、数値だけでなく意味を添えます。「土量九百八十立方メートル」だけではなく、「計測日時点における支保工残置状態の有効空間」のように表現します。算定日時、対象範囲、基準面、控除対象、計算方法、推定部分も記載します。
現場で即土量を算出する目的は、早く数字を出すことだけではありません。関係者が同じ意味で利用できる数値を作ることが重要です。
支保工の種類によって異なる控除の考え方
支保工の控除要否は、部材名だけでは決まりません。設置時期、撤去予定、数量の目的、要求精度を組み合わせて判断します。
切梁は、土留め壁の変形を抑えるために内部を横断して設置されます。多くの場合、切梁位置まで地盤を掘削した後で設置するため、掘削出来高から切梁体積を控除すると、実際に掘った土量より小さくなります。支保工を残した状態の有効空間を求める場合は控除します。
腹起しも掘削後の空間に設置される部材です。体積への影響に加えて、壁面からの張り出しによって有効幅を減少させます。重機の作業範囲や型枠の配置を検討する場合は、体積だけでなく最小離隔も確認します。
火打ちは隅角部を斜めに横切ります。全体体積に占める割合が小さくても、局所的な作業空間への影響が大きい部材です。土量計算上の控除と、施工性の確認を分けて考えます。
中間杭は、掘削前に地中へ設置されることがあります。厳密な地山体積を考えれば、杭が存在する部分には土がないため控除する考え方があります。ただし、工事数量として控除するかどうかは、設計図書や数量算出条件によって異なります。出来高に使用するときは独自判断で控除しません。
構台支持柱や仮設基礎は、土留め内の空間を継続的に占有します。支保工残置中の有効空間や貯留容量を求める場合は控除対象です。撤去後の埋戻し量を求める場合は、撤去される部分を最終体積から控除しないことがあります。
仮設コンクリートや根固め部が残置される場合は、完成後も埋戻し材が入らないため控除対象になります。仮設部材と呼ばれていても、全て撤去されるとは限りません。施工計画で残置範囲を確認します。
支保工の控除を判断するときは、「現在そこにあるか」だけでなく、「求める数量の時点でも存在するか」を確認します。現在ある切梁でも、埋戻し完了時には撤去されている場合があります。反対に、見えない根入れ部や地中の残置物が最終的に残ることもあります。
点群計測で土留め内の形状を把握する方法
土留め内の形状が複雑な場合は、複数の測点を取得する方法に加え、点群によって地盤を面として記録する方法が有効です。床付け面の凹凸、段差、釜場、法面、掘り残しなどを三次元的に把握できれば、平均深さだけでは表現できない土量を算出しやすくなります。
計測前には、土留め上部と内部の計測位置を計画します。深い土留め、構台下、周囲を建物に囲まれた現場では、衛星測位に必要な上空視界が限られる場合があります。受信状態を確認し、安定した位置情報を取得できる場所で基準を確保します。
土留め内部では、床付け面だけでなく、壁際、法尻、段差の上下、釜場の周囲などを複数方向から計測します。切梁や中間杭の背後は死角になりやすいため、可能な範囲で位置を変えます。ただし、支保工の上へ登ったり、重機の作業範囲へ入ったりして死角を埋めることは避けます。
点群には、支保工、重機、作業員、資材、ホースなども記録されます。土量用の地盤面を作る際は、地盤以外の点を除外します。切梁を地盤として残すと、その高さまで地盤面が持ち上がり、掘削量が小さく算出されます。
土留め壁面も地盤面とは分けます。壁面の点を床付け点と一緒に面生成すると、外周部に急な立ち上がりや不自然な三角形が形成される場合があります。土量計算に使用する地盤点と、境界確認に使用する壁面点を区別します。
点群が取得できなかった範囲は、自動的に正しい面へ補われるとは限りません。広い欠損を無理に補間すると、実際には段差がある場所を平坦に結ぶ可能性があります。近傍の測点、図面、施工記録、過去の計測面を使い、補間方法を選びます。
複数時期の点群を比較する場合は、同じ基準点、座標系、高さ基準、外周境界を使用します。データ同士の位置がわずかにずれていると、土留め壁や支保工の周辺に大きな差分が生じます。地盤変化ではなく位置ずれによる体積が混入しないように確認します。
LRTK Phoneを活用する場合も、計測した点群をそのまま土量計算へ使用するのではなく、現場状況と照らし合わせて地盤点を整理することが重要です。計測範囲、欠損部、除外した対象、使用した基準面を記録しておけば、現場で得た数量の説明性を高められます。
誤差が生じやすい箇所と補正の考え方
土留め内の土量算出では、機器の測定誤差だけでなく、境界設定、面生成、現場状況の判断によって差が生じます。どこで誤差が発生しやすいかを知ることが重要です。
壁際は、腹起しや配管などによって地盤が隠れやすい場所です。欠損部が内側へ補間されると、壁際の土量が不足します。安全に計測できる別方向から追加取得するか、壁際の確認測点を使用します。
切梁の真下も死角になりやすい場所です。切梁の両側から地盤を取得できない場合、部材下の地盤形状が不明になります。近傍地盤が平坦であることを確認したうえで補間するか、別の計測方法で高さを確認します。
水たまりは、水面下の地盤を隠します。水面を地盤として扱うと、水深分の掘削量が不足します。排水前後の計測や測深結果を利用し、水面下の形状を補います。
泥土やスライムの堆積も誤差要因です。表面だけを計測すると、所定の床付け面まで到達していないことを把握できない場合があります。泥土除去前の面と除去後の面を分け、泥土量を別に管理します。
敷鉄板や砕石が床付け面を覆っている場合は、どの面を管理対象とするかを決めます。掘削出来高を求めるのであれば、敷鉄板の上面ではなく、その下の地盤面が必要です。確認できない部分を推定した場合は、推定値として扱います。
境界のずれも体積へ大きく影響します。深さが大きい土留めでは、外周が数センチメートルずれるだけでも、全周にわたって体積差が積み上がります。時系列比較では同じ境界を再利用します。
高さ基準のずれは、範囲全体に影響します。面全体が一センチメートル上下するだけでも、平面積が大きければ無視できない体積差になります。基準点の確認と、既知点での照査を行います。
支保工を点群処理と部材計算の両方で差し引くと、二重控除になることがあります。総空間を点群から求める際に支保工部分をどのように処理したかを確認し、その後の控除計算と重複させないようにします。
計算結果は一つの方法だけで判断せず、簡易計算や断面計算と比較します。結果が大きく異なる場合は、平均値で折り合いを付けるのではなく、差の原因を確認します。
掘削土量と搬出土量が一致しない理由
現場で求めた掘削土量と、車両台数から換算した搬出土量は、同じ値にならないことがあります。これは必ずしも計測ミスではなく、土の状態と管理範囲の違いによるものです。
掘削前の土は地山状態ですが、掘削すると粒子の配列が変わり、空隙が増えることがあります。そのため、同じ土でも掘削後の見掛け体積が大きくなる場合があります。
粘性土や含水量の多い土では、掘削後に大きな塊となったり、泥状になったりします。車両への積み込み方によって空隙量も変わるため、荷台の外形容量だけでは正確な土量を把握できません。
土留め内で掘削土を仮置きしている場合、掘削した全量がその日に搬出されるとは限りません。掘削量、場内仮置き量、当日搬出量を分けて管理します。
反対に、前日までに仮置きした土を当日搬出すると、当日の搬出量が当日の掘削量を上回ることがあります。車両台数と日次掘削量を比較するときは、仮置き残量の増減を確認します。
土以外のものが搬出量へ含まれる場合もあります。泥水、既設構造物の破片、砕石、舗装材などが同じ車両で運ばれると、地山掘削量とは一致しません。
搬出車両の手配では、現場で算出した地山土量に加えて、土質、含水状態、過去の積載実績、仮置き計画を考慮します。単純に地山土量を一台当たりの荷台容量で割るだけでは、必要台数を過小または過大に見積もる可能性があります。
現場で即土量を算出することは、搬出計画の重要な基礎になりますが、地山土量、ほぐれた土量、積載土量を区別して使う必要があります。
現場条件別の土量計算例
単純な土留め内で掘削出来高を求める例を考えます。土留め内の平面積が二百平方メートル、掘削前面と現在面の平均高低差が四メートルの場合、概算掘削量は八百立方メートルです。
現在、土留め内に十五立方メートル相当の切梁と腹起しが設置されていたとしても、それらが掘削後に設置されたのであれば、実際に掘った地山土量を求める目的では通常控除しません。この場合、掘削出来高の概算は八百立方メートルです。
同じ現場で、支保工を残した状態の有効空間を求める場合は、八百立方メートルから十五立方メートルを差し引き、七百八十五立方メートルとします。この数値は掘削出来高ではなく、支保工を除いた空間です。
次に、構造物完成後の埋戻し量を求めます。掘削空間が八百立方メートル、地下構造物の外形体積が五百立方メートル、基礎砕石や均し層が三十立方メートル、残置部材が五立方メートルの場合、理論上の埋戻し空間は二百六十五立方メートルです。
切梁や腹起しを埋戻しの進行に合わせて撤去する場合、それらの体積を最終埋戻し量から控除しません。残置される中間杭や仮設コンクリートだけを控除します。
残掘削量の例では、現在面と計画床付け面の差分が二百立方メートルと算出されたとします。現在の空間に設置されている切梁は、未掘削地盤の体積ではないため、残掘削量から通常は控除しません。
ただし、未掘削地盤を貫く中間杭があり、地山の実体積を厳密に求める場合は、対象深さにある杭体積を控除する考え方があります。契約数量として扱う場合は、工事の数量算出条件を優先します。
仮置き土がある例では、掘削区画の地盤が三百立方メートル減少し、同じ土留め内の仮置き区画に百立方メートルの土砂が増加したとします。土留め全体を一括比較すると、見掛け上の差分は二百立方メートルです。
しかし、実際に掘削した量は三百立方メートルであり、そのうち百立方メートルが場内に残っています。掘削量、仮置き量、搬出量を区画別に整理する必要があります。
床付け高さが複数ある例では、高い床付け区画と低い床付け区画を分けます。全体を一つの平均深さで計算すると、区画ごとの掘り残しや掘り過ぎを把握できません。各計画面との体積差を算出し、最後に合計します。
土量計測と安全管理を両立させる注意点
土留め内は、土量計測のための場所ではなく、掘削、揚重、支保工作業などが進行する施工区域です。計測精度を高めるために危険箇所へ近づかないことが最優先です。
計測前には、作業責任者と実施時間、進入範囲、重機の停止条件を確認します。掘削機やクレーンの作業半径へ無断で入らず、誘導員やオペレーターにも計測位置を共有します。
切梁や腹起しを足場として使用してはいけません。死角を減らす目的で部材へ登ったり、身を乗り出したりすると、転落や挟まれの危険があります。安全な通路や昇降設備から取得できる範囲を計測します。
壁際では、落下物、突出部材、湧水、地盤の緩みなどに注意します。床付け面が泥状の場合は、足元が沈み込む可能性があります。排水ホースや電気配線によるつまずきにも注意が必要です。
計測できない範囲がある場合は、無理に近づくのではなく、図面、確認測点、施工記録、過去の計測結果を利用して補います。実測部分と推定部分を区別すれば、数量の不確実性を関係者へ説明できます。
計測時刻も安全と施工の両面から決めます。重機作業中に短時間で測るより、作業の切れ目や終了後に計測した方が、安全性とデータ品質を確保しやすくなります。
計測後も施工が続く場合は、数値が何時時点のものかを明記します。現場で即土量を共有しても、計測後に掘削や仮置き土の移動が行われれば、現況とは異なる数値になります。
土量計測の目的は、施工を止めることではなく、次の判断に使える数量を安全に得ることです。取得できるデータの限界を理解し、必要な精度と安全な計測方法のバランスを取ります。
まとめ
土留め内で現場で即土量を算出するには、支保工の体積を機械的に差し引くのではなく、最初に数量の目的を決めることが重要です。掘削出来高、残掘削量、支保工残置状態の有効空間、搬出予定量、埋戻し量では、控除すべき対象が異なります。
基本となる五つの手順は、算定範囲と境界を固定し、基準面と計測時点を統一し、支保工控除前の総土量を求め、控除対象となる支保工の占有体積を整理し、控除後の結果を別計算や施工記録と照合する流れです。
切梁や腹起しは、一般に掘削後の空間へ設置されます。そのため、実際に掘削した地山土量を求める場合には、通常は控除しません。一方、支保工が残る状態の有効空間や充填可能量を求める場合は、占有体積を控除します。
中間杭や残置される仮設部材については、設置時期と最終的な残置範囲を確認します。出来高や契約数量として使用する場合は、工事ごとの設計図書や数量算出条件を優先します。
土留め内の形状が複雑な場合は、平均深さだけに頼らず、区画分け、断面計算、点群による三次元面の比較を活用します。壁際の欠損、水たまり、泥土、敷鉄板、仮置き土などを適切に処理することで、現況に近い土量を把握できます。
算出した数値には、計測日時、対象範囲、基準面、控除対象、土の状態、計算方法を添えます。数値の意味を明確に共有すれば、掘削進捗、車両手配、床付け確認、埋戻し計画などの判断へつなげやすくなります。
土留め内の測点や点群を現場で取得し、計画面や過去の計測面と比較しながら土量を確認したい場合は、LRTK Phoneを活用することで、現況記録から数量確認までの作業を効率化できます。