鋼矢板引抜き後に現場で即土量を求める目的
仮設土留めに使用した鋼矢板を引き抜くと、鋼矢板が占めていた部分に加え、引抜き時に鋼矢板へ付着した土砂が持ち上げられることで、地中に空隙が生じることがあります。さらに、引抜き時の振動や周辺地盤の移動が重なると、地表面の沈下や近接する構造物、舗装、埋設物の変状につながる可能性があります。
国土交通省の「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説」では、杭や鋼矢板の引抜き跡には部材断面と付着土砂の引上げによって空隙が生じ、地盤沈下等を招くおそれがあるため、良質な砂の水締めや必要な沈下防止措置を講じる考え方が示されています。
そのため、鋼矢板の引抜きでは、設計図書、施工計画、地盤条件、近接構造物の有無に応じて、引抜き跡を砂質材などで充填する方法や、引抜きと充填を連続して行う方法が選択されます。どの材料と工法を採用するかは一律ではなく、発注者との協議内容や現場の管理基準に従って決める必要があります。
ただし、現場で確認したい土量は一つではありません。施工前後の地表面差分、鋼矢板に付着して地上へ持ち出された土量、引抜き跡へ投入した充填材の量、地表に残った余盛り、時間経過後の沈下量は、それぞれ意味が異なります。
現場で即土量を求めるときは、最初に数量の目的を明確にします。充填材の追加手配に使う速報値なのか、地表面の沈下を確認するための変化量なのか、施工前後の地形記録なのか、契約数量や支払数量の検討資料なのかによって、計測範囲と補正方法が変わるためです。
鋼矢板引抜き後の土量計算では、地表面のくぼみだけを測って地中の空隙体積とみなすことはできません。地中の状態を直接確認しにくいため、鋼矢板の施工記録、引抜き状況、付着土の記録、充填材の投入記録、施工前後の測量、周辺地盤の観測結果を組み合わせて判断します。
この記事では、鋼矢板引抜き後に現場で即土量を求めるための補正項目を五つに整理します。測量値と施工数量を無理に一致させるのではなく、共上がり、孔壁の変化、充填材のロス、計測時期の違いを区別し、説明可能な数量として管理することが目的です。
引抜き後の土量が単純な地表差分では求まらない理由
鋼矢板を地中から引き抜いた直後の空隙は、鋼矢板の製品断面をそのまま転写した一定形状になるとは限りません。引抜き時には、鋼矢板と地盤との摩擦、継手部の抵抗、地層ごとの粘着性、地下水、引抜き速度、振動などの影響を受けます。
粘着性のある土が鋼矢板表面や凹部に付着すると、鋼矢板と一緒に地上へ持ち上げられることがあります。反対に、砂質地盤や地下水の影響を受ける場所では、引抜き後の空隙へ周辺土が移動し、地表から見える開口が短時間で小さくなることがあります。
周辺土が空隙へ移動すれば、地表で確認できる孔の幅や深さは小さくなります。しかし、その移動に伴って鋼矢板列の周辺に沈下や緩みが生じる可能性があるため、開口部だけの計測では地表変化の全体を捉えられない場合があります。
また、充填材を上部から投入しても、孔底まで均一かつ連続して充填されたことを投入量だけで確認できるとは限りません。孔壁の変形、地下水、材料の分離、地中への逸散、配管内残量、地表へのあふれなどがあれば、準備量と地中へ入った量に差が生じます。
したがって、現場で即土量を算出するときは、施工前後の地表面差分を地表変化量の基本資料とし、地中の空隙量や充填完了を直接示す値とは区別します。地表面差分と充填材投入量を別々に整理し、差の原因を施工記録から確認することが重要です。
補正項目1|鋼矢板の引抜き延長と施工範囲
最初に確認する補正項目は、鋼矢板を実際に引き抜いた範囲です。設計図に記載された施工延長と、現場で引き抜いた延長が一致しているとは限りません。
施工途中で鋼矢板の型式が変わった場合、根入れ長が区間によって異なる場合、残置した鋼矢板や引抜き不能箇所がある場合は、区間を分けて整理します。全区間を同一条件として扱うと、想定充填量と実投入量の比較を誤るおそれがあります。
施工日報や打設記録から、鋼矢板の番号、枚数、型式、打設長、地盤面からの突出長、想定根入れ長を確認します。引抜き後には、引き抜いた本数と長さを照合し、残置、切断、変形などの有無を記録します。
ここで注意したいのは、鋼材そのものの断面積に引抜き長を掛けた値を、そのまま最終的な充填量とみなさないことです。鋼材体積は空隙発生の基礎的な目安になりますが、実際には付着土の共上がり、周辺地盤の移動、充填材の締まり方や逸散が加わります。
そのため、設計上の鋼材体積は、施工区間ごとの比較や事前予測の参考値として扱います。実際の充填量を予測するときは、同一または類似した地層、施工方法、引抜き条件で実施した試験区間や先行区間の実績を併用します。
施工延長を平面上で整理するときは、鋼矢板列の中心線、継手位置、折れ点、隅角部、重ね合わせ部を記録します。直線区間だけでなく、コーナー部や閉合部では二重計上や計上漏れが起こりやすいためです。
現場で即土量を求めるためには、施工範囲を一つの大きな区間として扱わず、地層、引抜き長、充填方法、施工日、周辺条件ごとに分ける方法が有効です。地表付近と深部で土質が異なる場合は、共上がりや空隙閉塞の傾向も変わる可能性があります。
平面位置と引抜き長を整理しておけば、充填材の投入量が急増した区間や、地表沈下が大きくなった区間を追跡しやすくなります。異常が見つかった場合にも、対象となる鋼矢板番号、施工日時、材料ロットまで遡って確認できます。
補正項目2|鋼矢板に付着して共上がりした土量
二つ目の補正項目は、鋼矢板の引抜きに伴って地上へ持ち上げられた土量です。粘着性のある地層では、鋼矢板表面や凹部に土が付着し、鋼矢板とともに地上へ上がることがあります。
鋼矢板から除去した付着土を施工範囲外へ搬出した場合、その量は引抜きに伴う地盤欠損の要因を検討する資料になります。ただし、地表面差分に付着土量を自動的に加算すると、同じ地盤変化を二重に評価する可能性があるため、計測範囲と数量の定義を確認してから扱います。
共上がり土量を把握する方法として、鋼矢板から落とした土を一時的に集積し、その体積を測る方法があります。外周と高さを計測して簡易な盛土形状として求めるほか、不整形であれば複数断面に分ける方法や3次元計測を利用できます。
ただし、集積した土は、地中にあったときよりもほぐれた状態になっています。地山状態の体積と、掘り出されて空隙を含む状態の体積は一致しません。補正に使用する場合は、地山量、ほぐし量、締固め後の量のどれを扱っているかを明記します。
たとえば、共上がり土を地上で一・二立方メートルと計測しても、その値をそのまま地中の欠損体積に置き換えることはできません。土質、粒度、含水状態、集積方法によって体積変化が異なるためです。換算条件は、設計条件、試験結果、発注者との協議、適用する数量算出条件などに基づいて設定します。
共上がり土を孔へ戻す場合も、投入した見かけ体積だけで充填完了とは判断できません。土塊の大きさや含水状態によっては空隙が残るため、施工計画に定めた材料、投入方法、締固め方法、確認方法に従います。
鋼矢板の洗浄水に細粒分が混ざって施工範囲外へ排出された場合は、量と処理方法を記録します。沈殿物などの量が無視できないと判断されるときは、付着土とは別の搬出分として把握することを検討します。
現場で即土量を求める際、必ずしも鋼矢板一本ごとに付着土を計量するとは限りません。管理基準で認められる場合は、代表区間で複数本を計測し、一本当たりまたは延長当たりの参考値を求める方法があります。ただし、地層や引抜き条件が変わる区間に同じ値を一律適用しないことが重要です。
共上がりが急に増えた場合は、単なる土量増加として処理するだけでなく、周辺地盤への影響も確認します。近接構造物、舗装、埋設物、既設基礎がある現場では、目視確認と標高・変位の観測を並行して行います。
補正項目3|孔壁崩壊と周辺地盤から流入した土量
三つ目の補正項目は、引抜き後の空隙へ周辺地盤から移動した土量です。鋼矢板を引き抜いた直後に空隙が生じても、時間の経過や振動、地下水の影響によって周囲の土が内部へ移動する場合があります。
周辺土が空隙へ移動すると、孔の見かけの体積は小さくなります。そのため、地表から確認できる開口幅と深さだけを使って充填量を計算すると、周辺地盤の変化を過小評価する可能性があります。
たとえば、引抜き直後には一定量の充填材が必要と見込まれた区間でも、充填開始までに周辺土が空隙へ移動すれば、実際の投入量は少なくなることがあります。しかし、投入量が少ないからといって地盤への影響も小さいとは限りません。移動した土の分だけ、周辺地盤に緩みや沈下が生じている可能性があるためです。
影響を確認するには、鋼矢板列の直上だけでなく、その両側を含む範囲で施工前後の標高差を計測します。計測幅を狭く設定すると、鋼矢板列から少し離れた位置に現れた沈下を見逃すおそれがあります。
計測範囲は、鋼矢板列から一律の距離で決めるのではなく、掘削深さ、地層、地下水、近接構造物、引抜き方法、過去の変状実績などを考慮して設定します。変状が計測範囲の端部まで続く場合は、範囲を広げて追加計測します。
施工前面と施工後面を比較し、鋼矢板列に沿って沈下帯が形成されていないかを確認します。線状に変化が続く場合は、鋼矢板列の縦断方向と、それに直交する横断方向の両方で断面を作成すると、深さと影響幅を把握しやすくなります。
地表面の沈下量を体積へ換算するときは、沈下範囲の断面積と区間長を用います。ただし、その値は地表面の減少体積であり、地中空隙の全体積を直接示すものではありません。
沈下範囲に重機のわだち、資材の仮置き、別工種の掘削、排水による洗掘などが含まれる場合は、鋼矢板引抜き以外の変化を除外します。施工前後の写真、作業日報、重機動線を参照し、原因を区別します。
地下水が高い現場では、土砂の移動だけでなく、水の流れによる細粒分の流出にも注意します。濁水、吸い込み、局部的な陥没、近接構造物の変状が確認された場合は、数量計算だけで処理せず、立入管理、作業中止、関係者への報告など、施工計画と管理基準に基づく対応を優先します。
補正項目4|充填材の実投入量と材料状態
四つ目の補正項目は、充填孔へ実際に投入された充填材の量です。材料を現場へ搬入または準備した数量と、地中へ充填された数量は同じとは限りません。
袋入り材料を使用した場合は使用袋数、現場で混合した場合は一回当たりの配合量と練混ぜ回数、車両で搬入した場合は受入量を記録します。そのうえで、未使用分、返却分、配管やホッパー内の残量、洗浄で排出した分、地表へあふれた分を区別します。
実充填量は、同じ単位と材料状態にそろえたうえで、概念的には「準備量から孔内に入らなかった量を差し引いた数量」として整理できます。準備量、残量、返却量、配管残量、地表流出量の体積基準が異なる場合は、配合、密度、含水状態などを用いて換算条件を統一します。
材料が計測区間外へ逸散した可能性がある場合、その量を正確に求めることは難しくなります。投入量が想定より大幅に多いときは、孔の体積が大きいと直ちに断定せず、周辺の空洞、既設埋戻し部、透水性の高い層、埋設管周辺などへの流入可能性を確認します。
充填材の状態も統一する必要があります。乾燥材料の質量、練混ぜ後の体積、孔内へ投入した直後の体積、固化または沈降後の体積は一致しません。土量と比較するときは、どの時点と状態の数量を採用したかを記録します。
砂質材を使用する場合は、含水状態や締まり方によって見かけ体積が変わります。流動性のある材料では、配合や水量によって単位体積当たりの材料量が変わります。投入量だけでなく、配合記録、材料ロット、練混ぜ時刻、施工区間を関連付けて残します。
充填材の実投入量は、地表面差分を検証する重要な資料になります。地表面の減少体積が小さいのに多量の充填材が入った場合は、地中空隙、逸散経路、計測範囲外への流入、材料量の換算誤りなどを検討します。
反対に、地表面の減少体積が大きいのに充填量が少ない場合は、周辺土が空隙へ移動した可能性、地表整形の影響、充填不足、記録漏れなどを確認します。地表差分と実充填量は一致することを前提にせず、差の理由を追跡するために並べて管理します。
引抜きと同時または連続して充填する施工では、引抜き長と材料投入量を時系列で照合すると異常区間を把握しやすくなります。一定の引抜き長または鋼矢板本数ごとに投入量を記録すれば、特定区間で材料量が急増または急減した状況を確認できます。
補正項目5|引抜き後の沈下と計測時期
五つ目の補正項目は、計測時期です。鋼矢板引抜き後の地表面は、施工直後から一定とは限りません。充填材の沈降、水分移動、孔壁の変形、周辺地盤の再配列、降雨、重機走行などによって、時間の経過とともに標高が変化する可能性があります。
引抜き直後の計測だけでは、後から発生する沈下を捉えられません。一方、施工から時間が経過しすぎると、別作業による地表面変化が混ざり、鋼矢板引抜きの影響を区別しにくくなります。
現場で即土量を求める場合は、計測時点を明確にします。施工前、引抜き直後、充填完了後、表面整形前、表面整形後、一定期間経過後など、工程の節目ごとにデータ名と取得時刻を分けます。
すべての時点で広範囲を詳細に測ることが難しい場合は、施工前と充填完了後に面的計測を行い、その間は代表点の標高を確認する方法があります。沈下が懸念される区間では、施工影響を受けにくい位置に観測点を設け、同じ位置を繰り返し計測します。
計測時期を比較するときは、基準点を変えないことが重要です。施工中に基準点が移動したり、重機接触で標高が変わったりすると、範囲全体が沈下または隆起したように見える場合があります。
使用する座標系、標高基準、基準点名、計測日、計測者、使用機器を記録し、施工前後で同じ条件を再現します。現場内の仮基準点を使用するときは、別の既知点や安定点から定期的に確認します。
降雨後の計測にも注意が必要です。水たまり、ぬかるみ、表面流出、土の膨潤や軟弱化により、通常時と異なる表面が取得されることがあります。施工前が乾燥状態で施工後が降雨直後であれば、差分に水面や表面状態の違いが含まれる可能性があります。
沈下量を施工管理に使用する場合は、単一時点の値だけで判断せず、時間ごとの変化傾向を確認します。沈下が継続している場合は、現場で速報値を算出できても、その値を最終数量として確定できるとは限りません。設計図書、施工計画、発注者との協議内容に基づいて扱います。
現場で即土量を算出する実務手順
鋼矢板引抜き後の土量計算は、施工前の準備で精度が大きく変わります。引抜き完了後に施工前地形を復元しようとしても、十分な測量データや写真がなければ同じ条件で比較できません。
最初に、鋼矢板列とその周辺を含む計測範囲を決めます。鋼矢板の中心線だけでなく、沈下が想定される両側、重機走行路、充填作業場所、近接構造物、埋設物の位置を記録します。
次に、施工前の地表面を計測します。起伏が小さく対象範囲が狭い場合は、一定間隔の測点や横断測量でも対応できます。地表面が不整形であったり、局部的な変化を確認したりする場合は、3次元計測で面的な記録を残す方法が有効です。
施工前計測では、比較対象となる地表面を取得します。鋼材、敷鉄板、資材、雑草、ホース、土のうなどが含まれると差分計算の誤差になります。除去できない物体は位置と範囲を記録し、施工前後で同じ処理を行うか計算対象から除外します。
引抜き作業中は、鋼矢板番号、引抜き時刻、引抜き長、付着土の状況、充填開始時刻、材料投入量、異常の有無を記録します。詳細記録が難しい場合でも、施工区間を一定長さまたは一定本数ごとに分け、区間単位の実績を残します。
引抜き後は、まず周辺の安全を確認します。地表面の亀裂、陥没、湧水、吸い込み、舗装の変状、近接構造物の異常がある場合は、計測作業よりも立入管理、作業中止、関係者への報告を優先します。
充填完了後には、施工前と同じ範囲を再計測します。地表面を整形する場合は、整形前と整形後を区別します。整形によって周辺土を寄せると、見かけ上は沈下が解消しても、別の場所から土が移動しただけの場合があります。
施工前後の面を同じ座標上で重ね、標高差を算出します。施工後面が低い部分は地表面の減少、高い部分は余盛り、仮置土、盛上がりなどとして表示されます。
差分計算後は、重機のわだち、仮置土、水たまり、別工種の掘削など、鋼矢板引抜きと関係のない変化を除外します。そのうえで、共上がり土、実充填量、周辺土の移動、計測時期の影響を区間ごとに整理します。
最終記録では、計測による地表面減少量、地表面増加量、差引量、共上がり土の計測値、換算値、実充填量、補正や除外の内容を分けて記載します。一つの数字だけを残すより、後から検証しやすくなります。
平均断面法で概算する場合の計算方法
3次元計測を行わない場合でも、鋼矢板列に沿って横断面を作成すれば、平均断面法で概算できます。国土交通省の数量算出資料では、体積の計算方法として、両断面積の平均値に断面間距離を乗じる平均断面法が示されています。
計算式は、V=(A1+A2)÷2×Lです。Vは二断面間の体積、A1とA2は各断面の対象面積、Lは断面間距離です。
たとえば、ある横断面の沈下面積が〇・一二平方メートル、次の横断面が〇・一八平方メートル、断面間距離が五メートルの場合、体積は(〇・一二+〇・一八)÷二×五となり、〇・七五立方メートルです。
複数区間がある場合は、各区間の体積を合計します。沈下幅や深さが急に変化する位置では断面間隔を狭くします。断面間隔が広すぎると、その間にある局部的な陥没や盛上がりを平均化してしまいます。
鋼矢板列が折れている場合や曲線状の場合は、平面上の実延長に沿って断面間距離を設定します。始点と終点の直線距離だけで計算すると、折れ点や曲線部の延長を短く評価するおそれがあります。
横断面には、鋼矢板列の中心だけでなく、影響範囲の両端まで含めます。沈下部分と隆起部分が同じ断面内にある場合は、最初から相殺せず、それぞれの面積を分けて確認します。
平均断面法は現場で概算しやすい一方、断面間にある複雑な地形変化を完全には表現できません。局部的な沈下が多い現場や、起伏が不規則な現場では、断面間隔を細かくするか、3次元計測との併用を検討します。
3次元計測で充填孔周辺の土量を求める方法
鋼矢板引抜き後の地表面は、細長い沈下、局部的な陥没、充填材の余盛り、重機のわだちなどが混在しやすい形状です。このような範囲では、点群などから施工前後の地表面モデルを作成し、面同士の標高差から体積を求める方法が適しています。
国土交通省の数量算出資料では、土構造の数量算出に地表面や施工面などを重ねた3次元モデルを用い、標高差による点高法などで算出する考え方が示されています。ソフトウェアによる数量は、計算条件と結果を確認したうえで使用する必要があります。
3次元計測では、施工前後で同じ範囲を取得します。対象範囲の端部が異なると、計算面積の違いがそのまま体積差になります。鋼矢板列の両端や計算境界に、座標で再現できる目印を設けておくと管理しやすくなります。
点群を作成した後は、不要な点を除去します。重機、作業員、資材、ホース、仮設材、植生などを残したまま面を作ると、実際の地表面ではない盛上がりが数量へ混入します。
水面にも注意が必要です。計測方式によっては水面や水中の地表面を安定して取得できません。水たまりがある場所は、排水後に再計測するか、範囲を明示して計算対象外とします。
点群密度やメッシュ寸法は、確認したい地形変化の大きさに合わせます。局部的な沈下に対して間隔が粗いと、面生成の過程で平滑化される可能性があります。一方、点を増やすだけで精度が保証されるわけではありません。
施工前後のデータに位置ずれがないか、変化していない構造物、標定点、基準点などを使って確認します。水平または鉛直方向にずれがあると、実際には変化していない範囲にも差分が発生します。
体積を算出するときは、施工前面を基準面、施工後面を比較面として設定します。施工後面が低い部分を減少量、高い部分を増加量として分けて求めます。
減少量と増加量を最初から相殺すると、充填不足と余盛りが同時に発生している場所を見逃す可能性があります。減少量、増加量、差引量をそれぞれ確認し、平面図、ヒートマップ、縦横断面などで変化位置を確認します。
鋼矢板引抜き後の土量計算例
鋼矢板列の延長が三十メートルあり、施工前後の3次元計測から、対象範囲内の地表面減少量が三・八立方メートル、地表面増加量が〇・九立方メートルと算出されたとします。
単純な差引量は、三・八立方メートルから〇・九立方メートルを差し引いた二・九立方メートルです。ただし、増加部分の原因を確認せず、この値を引抜きによる不足土量と判断することはできません。
増加量〇・九立方メートルのうち、〇・五立方メートルが充填材の余盛り、〇・四立方メートルが作業中の仮置土だったとします。仮置土は鋼矢板引抜きによる地形変化ではないため、計算対象から除外します。この整理では、対象となる地表面の差引減少量は三・八立方メートルから余盛り〇・五立方メートルを差し引いた三・三立方メートルです。
次に、鋼矢板へ付着して地上に持ち上げられた土を計測したところ、ほぐれた状態で一・四立方メートルだったとします。現場で承認された換算条件により、地山相当を一・一立方メートルと評価したとします。
実充填量は、同一の体積基準に換算した準備量が六・五立方メートル、配管内残量と地表流出量が合計〇・四立方メートルであったため、六・一立方メートルです。
この現場では、地表面の差引減少量三・三立方メートル、地山換算した共上がり土一・一立方メートル、実充填量六・一立方メートルを別々の指標として並べます。共上がり土が地表面差分に含まれている可能性があるため、三・三立方メートルと一・一立方メートルを機械的に加算しません。
実充填量が地表面変化より多い場合は、地中空隙、計測範囲外への逸散、過去の埋戻し部への流入、材料量の換算条件などを確認します。差を自動的に不足土量へ加算するのではなく、施工区間ごとの投入記録と地表変化を照合します。
たとえば、三十メートルのうち二十メートル付近だけで充填量が急増していれば、その周辺の地層、既設埋戻し、埋設物、引抜き状況を確認します。全区間で均等に多い場合は、当初想定した空隙係数や材料体積の記録方法を見直します。
このように、現場で即土量を求める目的は、数字を一つにまとめることだけではありません。計測数量と施工数量の関係から、異常区間や追加確認が必要な場所を早期に見つけることにもあります。
土量計算で起こりやすい誤差と対策
鋼矢板引抜き後の土量計算では、施工前後の計測範囲の違いが大きな誤差になります。施工前は鋼矢板列から左右三メートルを測り、施工後は左右二メートルしか測っていなければ、同じ範囲の比較になりません。
施工前後の座標ずれにも注意が必要です。数センチメートルの水平ずれでも、法肩や段差がある場所では大きな体積差になる可能性があります。鉛直方向のずれは、対象面積全体に影響します。
たとえば、千平方メートルの範囲で標高が一センチメートルずれれば、計算上の体積差は十立方メートルです。対象面積が広いほど、わずかな鉛直ずれが数量へ大きく影響します。
地表面に残った充填材の余盛りを区別しないことも誤差の原因です。孔内へ入った材料と地表に残った材料を分けずに投入量を記録すると、実際の充填量を過大に評価します。
反対に、初回充填後の沈降に対して追加充填した場合は、初回分と追加分を時刻別に記録して合計します。追加充填の記録がなければ、施工後の沈下と材料投入量の関係を説明できません。
共上がり土の集積場所を施工後の差分範囲に含めると、沈下量と盛土量が相殺されます。付着土は鋼矢板列から離れた管理区域へ集積し、その範囲を別に計測するか、差分計算から除外します。
地表面を整地した後だけ計測する場合も注意が必要です。整地によって沈下部へ周囲の土を寄せれば、局部的な減少が見えにくくなります。可能であれば、整地前と整地後のデータを分けて保存します。
同じ数量を異なる単位や状態で比較する誤りもあります。充填材の質量と地表面差分の体積は直接比較できません。質量から体積へ換算する場合は、採用した密度、配合、含水状態、測定時点を記録します。
土の地山量、ほぐし量、締固め後の量も区別します。共上がり土をほぐし状態で計測し、地山相当量へ換算する場合は、適用根拠と換算条件を残します。
現場で即土量を計算した結果が想定値と大きく異なる場合は、都合のよい係数を後から設定して一致させるのではなく、計測範囲、座標、不要点、材料記録、共上がり、逸散、周辺土の移動、計測時期の順に原因を確認します。
計測結果を施工記録として残すポイント
鋼矢板引抜き後の土量は、施工完了後に直接確認しにくい数量です。充填が終わり、地表面を整形すると、孔の位置や充填状況は見えなくなります。そのため、計算結果だけでなく、計算に使用した根拠を残します。
記録には、工事名、施工場所、鋼矢板の区間番号、計測日、引抜き日、充填日、座標系、標高基準、基準点、計測範囲、計測方法、使用機器を含めます。
施工前後のデータは同じ名称で上書きせず、取得日時と工程が分かる名称で分けて保存します。補正前数量、除外数量、補正後数量も別に残し、どの範囲と条件を変更したかを記載します。
共上がり土量を評価した場合は、集積状況の写真、計測範囲、計測値、地山換算条件を保存します。充填材については、準備量、使用量、未使用量、返却量、配管残量、地表流出量、追加投入量を区別します。
施工写真は、鋼矢板を引き抜いている状況だけでなく、付着土、開口状況、充填状況、地表面の変状、計測範囲、基準点が分かるように撮影します。
写真に位置情報、撮影方向、鋼矢板番号、区間名を関連付けると、後から施工場所を特定しやすくなります。表示板を撮影する場合は、対象区間と撮影時刻が読み取れる状態にします。
3次元データを使用した場合は、元点群、不要点処理後の点群、作成した面、計算境界、メッシュ条件、差分結果を保存します。完成した体積値だけでは、計算範囲や不要点処理の妥当性を再確認できません。
現場で算出した数量を契約数量、支払数量、出来形数量として使用できるかどうかは、設計図書、数量算出条件、発注者との協議内容によって異なります。現場で即土量を求められても、そのまま正式数量になるとは限りません。
施工管理に利用する速報値と、承認を経た正式数量を分けて扱うことが安全です。速報値は、充填材の追加手配、施工範囲の確認、異常区間の発見などに利用し、正式数量は必要な確認と承認を経て確定します。
まとめ
鋼矢板引抜き後に現場で即土量を求めるには、地表面のくぼみだけでなく、引抜き範囲、付着土、周辺地盤の移動、充填材、計測時期を分けて確認する必要があります。
主な補正項目は、鋼矢板の引抜き延長と施工範囲、鋼矢板に付着して共上がりした土量、空隙へ周辺地盤から移動した土量、充填材の実投入量と材料状態、引抜き後の沈下と計測時期の五つです。
施工前後の地表面を同じ座標と範囲で計測し、減少量と増加量を分けて求めることが基本です。ただし、その地表差分は地中の空隙体積そのものではありません。共上がり土と実充填量を別指標として整理し、二重計上を避けながら差の原因を追跡します。
充填材の投入量と地表面差分は、必ずしも一致しません。投入量が多い場合は地中空隙、逸散、換算条件を、少ない場合は周辺土の移動、充填不足、記録漏れを確認します。数量を無理に一致させるのではなく、施工区間ごとに説明できる状態へ整理することが重要です。
現場で即土量を把握できれば、追加充填の判断、沈下箇所の早期発見、材料手配、協力会社との数量確認、施工記録の作成を進めやすくなります。ただし、近接構造物の変状、継続的な沈下、濁水や吸い込みなどが確認された場合は、数量計算より安全確保と関係者への報告を優先します。
施工前後の位置、標高、写真、点群、投入量を現場で関連付けて管理することで、後から確認可能な記録を残せます。鋼矢板引抜き後の複雑な地表面を効率よく計測し、現場で即土量を確認する仕組みを整える際は、LRTK Phoneの測位、写真記録、点群計測など、現場条件に適合する機能の活用を検討できます。