建物引込部でAR位置合わせが難しい理由
建物引込部は、道路や敷地内を通る地下埋設物が建物へ接続する重要な区間です。給排水管、ガス管、電力管路、通信管路などが集まりやすく、敷地境界、外構、基礎、擁壁、側溝、植栽、舗装といった構造物との干渉も起こりやすい場所です。そのため、地下埋設物をARで確認する場合でも、単に画面上へ管路を表示するだけでは十分ではありません。 建物引込部では、道路側の本管から分岐した管が、敷地内で方向や勾配を変えながら建物へ近づきます。図面上では直線に見えても、実際には障害物を避けて曲がっていることがあります。建物周辺では衛星からの信号が遮られたり、壁面からの反射が生じたりするため、屋外の開けた場所よりも測位状態が不安定になる可能性もあります。 さらに、設計図、竣工図、管理台帳、現地のマーキングで基準が異なっている場合があります。図面が公共座標を使用している一方で、建築図面が建物独自の通り芯やローカル座標で作成されていることも珍しくありません。高さについても、標高、設計地盤高、仕上げ地盤高、管中心高、管底高など、複数の基準が混在します。 このような条件でAR表示を利用するには、位置合わせの基準を明確にし、表示された地下埋設物がどの資料と座標に基づくものかを確認する必要があります。ARは地下の状態を直接透視する技術ではなく、登録された位置情報を現実空間へ重ねて確認するための支援手段です。表示内容だけで掘削位置を決定せず、管理者への照会、現地調査、探査、試掘などを組み合わせることが重要です。 建物引込部における地下埋設物のAR施工では、道路側と建物側の双方に基準を持ち、平面位置だけでなく高さ、角度、奥行きまで確認する必要があります。ここからは、位置ずれや誤認を減らすために押さえておきたい6つの位置合わせを解説します。
位置合わせ1:基準点と座標系をそろえる
最初に行うべき位置合わせは、ARへ読み込む地下埋設物データと現場で使用する座標系をそろえることです。座標系が一致していなければ、管路形状が正しくても、表示全体が一定方向へずれたり、回転したりするおそれがあります。 地下埋設物のデータには、測量成果に基づく座標、施設管理用の座標、建築図面のローカル座標などが使われます。建物図面では、敷地境界や測量基準点ではなく、柱芯や壁芯を基準として寸法が設定されている場合があります。このデータを変換せずに現場へ重ねると、道路側では合っているように見えても、建物付近でずれが目立つことがあります。 位置合わせを始める前に、使用するデータの座標系、原点、方位、単位を確認します。座標値が記載されていても、その座標がどの基準で作られたものか不明な場合は、現地で確認できる基準点との関係を整理しなければなりません。座標値の桁や単位が異なるデータを混在させると、大きな位置ずれにつながります。 現場では、測量基準点や境界標など、位置が明確な点を起点にする方法が基本です。ただし、境界標が移動している可能性や、外構工事で見えなくなっている可能性もあるため、利用前に状態を確認します。仮設の目印だけを基準にすると、撤去や移動によって同じ位置合わせを再現できなくなることがあります。 道路側の基準点と建物側の基準点を複数使用すると、平行移動だけでなく、方位や縮尺の違いにも気づきやすくなります。一点だけを合わせた場合、その地点では一致していても、離れた場所でずれが拡大することがあります。少なくとも方向を確認できるように、一定の距離を確保した複数点で照合することが望まれます。 AR表示を開始した後も、基準点付近で表示が一致しているかを確認します。端末の位置や向きを変えたときに、表示が不自然に移動する場合は、測位状態や姿勢推定が安定していない可能性があります。その状態で建物引込部だけを確認すると、管路データの誤差と表示上の揺れを区別できません。 基準点と座標系をそろえる工程は、AR確認全体の土台です。最初の設定に誤りがあると、その後に行う高さや角度の確認も正しく評価できません。使用データの基準を明記し、現地で再現可能な方法によって位置合わせを行うことが大切です。
位置合わせ2:建物側の固定点で水平方向を確認する
道路側の基準点で位置合わせができた後は、建物側の固定点を使って水平方向の位置を確認します。建物引込部では、道路側から建物までの短い区間に複数の障害物が存在するため、道路側だけで合わせても、建物への接続位置が正しく表示されるとは限りません。 建物側で利用しやすい固定点には、外壁の角、柱芯に対応する位置、基礎の端部、貫通口の中心、設備桝の中心などがあります。ただし、完成後に仕上げ材が施工されると、構造体の位置と外観上の位置が異なる場合があります。外壁表面を基準にする場合は、図面寸法が構造芯、仕上げ面、躯体面のどれを示しているかを確認する必要があります。 引込管が建物へ入る位置は、平面上の一点ではなく、壁面や基礎に設けられた貫通部との関係で判断します。AR画面上で管路が壁面へ到達していても、実際の貫通口中心と左右にずれている場合は、データ、座標変換、施工位置のいずれかを再確認しなければなりません。 建物側の固定点を利用する際は、近距離だけで判断しないことも重要です。端末を壁面へ近づけすぎると、周囲の特徴を十分に認識できず、表示が不安定になる可能性があります。建物全体と周辺地物が見える位置から確認し、その後に引込部へ近づいて細部を見る方法が適しています。 壁面に対して正面から確認するだけでは、奥行き方向のずれが分かりにくいことがあります。建物に対して斜め方向から見ることで、管路の延長線と貫通部の関係を確認しやすくなります。正面、左右の斜め方向、道路側など、複数の視点から見たときに同じ位置関係が保たれているかを確認します。 建築工事の進行中には、基礎、躯体、外壁仕上げの各段階で見える基準が変化します。基礎施工時に設定した固定点が、外壁完成後には確認できなくなることもあります。そのため、施工段階ごとに利用する固定点を決め、位置合わせの記録を残しておくと再確認しやすくなります。 既設建物では、竣工後の改修によって外壁や設備位置が変わっている場合もあります。図面上の建物形状と現在の建物形状が一致しているかを確認し、増築部や外構変更がある場合は、その影響を考慮します。建物側の固定点は、現況と資料の双方で同じ位置を示すものを選ぶことが重要です。
位置合わせ3:地盤高と管底高の基準を統一する
建物引込部の地下埋設物をARで確認する際は、平面位置と同じくらい高さの位置合わせが重要です。管路の深さを誤認すると、掘削深さ、基礎との離隔、他の埋設物との上下関係を正しく判断できなくなります。 高さの確認で最初に整理すべきなのは、データに登録されている高さが何を表しているかです。管中心高、管上端高、管底高では、同じ管路でも表示位置が異なります。口径や外径を考慮せず、管底高の線を管中心として表示すると、実際の占有範囲との間に差が生じます。 地盤面についても、測量時の現況地盤、設計地盤、舗装完成高、建物周辺の仕上げ地盤など、複数の高さがあります。外構工事によって盛土や切土が行われる現場では、測量時とAR確認時の地盤高が変わっている可能性があります。画面上で地下埋設物が浅く見える場合でも、データの誤りではなく、地表面の高さが変わったことが原因かもしれません。 高さを合わせるためには、現場で確認できる水準点や既知点を利用します。マンホール蓋、設備桝、建物基礎天端などを利用する場合は、それらの標高や設計高さが明確であることが必要です。蓋や仕上げ材は交換されることがあるため、管理資料と現況が一致しているかも確認します。 建物引込部では、道路から建物へ向かって地盤が上がったり下がったりする場合があります。管路が一定の勾配を持っていても、地表面から見た深さは場所によって変化します。AR表示では、管路の高さと地形や地盤面の高さを別々に扱い、単純な埋設深さだけで判断しないことが重要です。 排水管のように勾配管理が必要な管路では、接続点の高さだけでなく、途中区間の勾配も確認します。道路側と建物側の二点が合っていても、中間点の高さデータが不足していると、実際の曲がりや段差を表現できません。必要に応じて中間点を追加し、管路形状を立体的に登録します。 高さ方向の表示は、端末の測位、姿勢、地面認識の状態によって見え方が変わることがあります。そのため、AR画面に表示された深さをそのまま実測値として扱わず、基準点との照合結果や測量値と組み合わせて判断します。 現場で高さを確認した際は、基準にした点、使用した高さ、管路の基準位置を記録します。「地盤から何メートル」という表現だけでは、地盤が変化したときに再現できません。標高や工事基準面との関係を残すことで、後工程でも同じ基準による確認が可能になります。
位置合わせ4:引込角度と貫通位置を立体的に確認する
建物引込部では、地下埋設物が道路側から建物へ一直線に延びているとは限りません。敷地境界付近で曲がる場合や、外構構造物を避けて斜めに進入する場合、建物の手前で方向を変えて貫通口へ接続する場合があります。このため、平面図だけでなく、引込角度と貫通位置を立体的に確認する必要があります。 平面上で管路が貫通口へ接続しているように見えても、高さ方向では基礎底盤や地中梁と干渉している可能性があります。反対に、断面図では高さが合っていても、平面方向にずれて壁面の別の位置へ到達していることがあります。AR表示を利用すると、平面と断面を分けずに現場空間上で確認できますが、元データに正しい三次元情報が登録されていることが前提です。 まず、道路側の分岐点、敷地境界付近の変曲点、建物貫通部を連続した点として確認します。始点と終点だけを直線で結ぶと、実際の経路にある曲がりを省略してしまいます。現地調査や施工記録で曲管、継手、桝などの位置が分かっている場合は、それらを変曲点として反映します。 建物の貫通位置では、貫通口の中心だけでなく、開口寸法やスリーブの外形も意識します。管中心が合っていても、管径、保護管、止水材、施工余裕を含めた占有範囲が構造物と干渉することがあります。AR表示では中心線だけを確認するのではなく、可能であれば管路の外形や必要な施工範囲が分かる形で確認します。 引込角度を確認するときは、建物壁面に対する進入角度にも注意します。斜めに貫通する場合は、壁厚の中で管路が通る範囲が広くなります。外側の入口位置が合っていても、内側の出口位置が設備スペースから外れる可能性があります。壁面の外側だけでなく、建物内部側の接続位置との関係も確認することが大切です。 基礎や地中梁がある場合は、構造図と設備図の基準が一致しているかを確認します。設備図では建物外形が簡略化され、構造図では仕上げ厚が省略されていることがあります。同じ壁面を示しているように見えても、基準線が異なる場合があります。 ARで立体的に確認する際は、管路に沿って移動しながら表示を見る方法が有効です。一地点から眺めるだけでは、角度や奥行きの誤差を把握しにくいためです。ただし、歩行しながら画面だけを注視すると周囲への注意が低下します。確認者と安全管理者の役割を分けるなど、現場の安全ルールに従って使用します。 引込角度と貫通位置が正しく見えても、それだけで施工可能と判断するのではなく、掘削幅、作業空間、接続方法、曲げ条件なども確認します。ARは干渉の可能性を早期に見つけるために役立ちますが、施工可否は設計条件や現場条件を含めて総合的に判断する必要があります。
位置合わせ5:既設図面と現地調査結果を重ねて補正する
既設の地下埋設物をARで表示する場合、図面情報と実際の埋設位置が完全に一致しているとは限りません。竣工図が施工時の変更を反映していなかったり、古い図面が概略位置だけを示していたりする場合があります。そのため、AR表示へ使用する前に、図面の確からしさを確認する工程が欠かせません。 建物引込部では、過去の補修や設備更新によって管路が変更されていることがあります。旧管が残置され、新しい管が別ルートで引き込まれている場合もあります。図面上に一本しか表示されていなくても、現地には複数の管が存在する可能性があります。 まず、利用可能な設計図、竣工図、施工写真、管理台帳、改修記録を確認し、作成年月と更新履歴を整理します。複数の資料で位置が異なる場合は、新しい資料を無条件に正しいと判断せず、現地状況との整合性を確認します。改修対象だけが更新され、周辺の既設情報は古いまま残っていることもあるためです。 現地では、マンホール、桝、バルブ、引込表示、壁面貫通部など、地上から確認できる設備を照合します。図面上の位置と現地設備の位置に差がある場合は、差の方向と大きさを記録します。全体が一定方向へずれているのか、一部区間だけが異なるのかによって、補正方法が変わります。 必要に応じて地下探査や試掘を行い、実際の埋設位置を確認します。探査結果にも現場条件による不確かさがあるため、得られた反応位置を管路中心と断定せず、探査方法や対象物の材質、周辺環境を踏まえて扱います。試掘で管路を確認できた場合は、中心位置、管上端、管底、口径、方向などを記録し、ARデータの更新に利用します。 補正を行う場合は、一点だけを移動させて全体を合わせるのではなく、管路の区間ごとに整合性を確認します。道路側では図面と一致し、建物側だけがずれている場合、引込部の施工変更が原因である可能性があります。この状態でデータ全体を平行移動すると、正しかった道路側までずれてしまいます。 図面位置と確認済み位置を同じ扱いにしないことも重要です。確認方法や確度を属性として記録し、実測済みの点、探査による推定点、図面から取得した点を区別できるようにします。AR画面上で表示方法を変える場合も、現場担当者が違いを理解できる運用ルールが必要です。 補正前のデータを残しておけば、変更理由や更新過程を追跡できます。位置を修正した日時、担当者、使用した資料、現地確認方法を記録し、元の情報を上書きして失わないようにします。将来の改修工事や維持管理で利用するとき、補正根拠が分からなければ、同じ確認を繰り返すことになります。 ARへ表示するデータは、きれいに見せることよりも、情報の確度を正しく伝えることが重要です。位置が未確認の区間は、確認済みの区間と区別し、必要な安全余裕を確保したうえで施工計画を立てます。
位置合わせ6:複数方向から再確認し許容範囲を管理する
位置合わせが完了したように見えても、一つの方向や一度の確認だけで判断することは避けるべきです。AR表示は、端末の位置、向き、測位状態、周辺環境などの影響を受けます。建物引込部では壁面や庇、樹木、仮設物などが近くにあるため、確認位置によって表示の安定性が変わる可能性があります。 再確認では、道路側から建物方向、建物側から道路方向、管路に対する左右の斜め方向など、複数の視点を使用します。どの方向から見ても管路と固定点の関係が大きく変わらないかを確認します。ある方向からだけ一致して見える場合は、奥行き方向のずれや方位の誤差が隠れていることがあります。 確認する時刻や作業段階を変える方法も有効です。周囲の作業車両や仮設材が移動すると、視認できる基準点や端末の利用条件が変わります。掘削前、試掘後、配管施工前、埋戻し前など、工程の節目で再確認すると、設計データと施工結果の差を早期に把握できます。 位置合わせでは、完全一致だけを求めるのではなく、用途に応じた許容範囲を設定します。概略ルートを確認する用途と、構造物との離隔を判断する用途では、必要な精度が異なります。使用するデータ、測位方法、現地確認方法が目的に適しているかを事前に決める必要があります。 許容範囲は、AR表示の見た目だけで決めるものではありません。元図面の精度、測量方法、測位状態、施工記録の有無、管路の重要度、掘削方法などを考慮します。情報の確度が低い場合は、想定位置の周囲に安全上の確認範囲を設け、探査や試掘を行う必要があります。 位置合わせの結果は、合格か不合格かだけでなく、どの方向にどの程度の差が見られたかを残します。水平方向と高さ方向を分けて記録すると、原因を分析しやすくなります。全体が一定方向へずれている場合は基準点や座標変換を、局所的にずれている場合は施工変更や図面誤差を疑うことができます。 複数の担当者が確認する場合は、同じ手順と基準を使用します。担当者ごとに異なる固定点を選んだり、表示が安定する前に判断したりすると、確認結果を比較できません。位置合わせの開始条件、確認点、確認方向、記録項目を標準化することが重要です。 再確認で差が見つかった場合は、その場で表示を手動調整して終わらせないようにします。一時的な調整は、その端末や作業中だけ有効で、正式なデータへ反映されない可能性があります。差の原因を確認し、必要な承認を経て元データを更新することで、次回も同じ位置関係を再現できます。
AR確認を施工手順に組み込む方法
地下埋設物のAR確認を効果的に活用するには、現場で思いついたときだけ使用するのではなく、施工手順の中へ組み込むことが重要です。確認の時期、担当者、使用データ、判断基準をあらかじめ決めておくことで、見落としや確認方法のばらつきを減らせます。 施工前には、関係資料を収集し、道路側から建物側までの地下埋設物データを整理します。データの座標系、高さ基準、更新日、情報の確度を確認し、AR表示に必要な形式へ整えます。建築図面と設備図面で基準が異なる場合は、変換方法を明確にします。 現地確認では、最初に安全な開けた場所で測位状態を確認し、基準点による位置合わせを行います。その後、建物引込部へ移動し、建物側の固定点、地盤高、貫通位置、引込角度を確認します。建物周辺で表示が不安定になった場合は、無理にその場で判断せず、確認位置や方法を見直します。 掘削前には、AR表示による想定位置を現地マーキングや探査結果と照合します。位置が一致しない場合は、どの情報を優先するかをその場の判断だけで決めず、管理者や設計担当者と確認します。必要な手続きや立会い条件がある場合は、それに従います。 試掘後は、実際に確認できた管路位置を測定し、AR表示との差を記録します。この結果は、施工中の安全確認だけでなく、データ品質の改善にも役立ちます。差が見つかった場合は、同じ系統の別区間にも同様のずれがないかを確認します。 新設管の施工時には、埋戻し前に位置と高さを記録します。完成後に見えなくなる継手、曲がり、交差部、貫通部などを重点的に測定し、施工写真と関連付けます。設計位置から変更した場合は、変更理由と承認経緯も残します。 施工後には、記録した位置情報を管理データへ反映し、次回の維持管理で利用できる状態にします。AR確認を施工前だけの確認手段にせず、施工結果を記録する仕組みとしても活用することで、将来の掘削や改修時の安全性を高められます。
建物引込部で起こりやすい誤認と対策
建物引込部のAR確認では、画面上の表示が現地に自然になじんで見えるため、正しい位置にあると思い込みやすい点に注意が必要です。表示が安定していることと、元データが正しいことは別の問題です。 よくある誤認の一つは、管路の中心線を実際の外形と取り違えることです。中心線だけを表示している場合、管径や保護管の厚さ、継手の張り出しは含まれていません。掘削や構造物との離隔を考える際は、管路が占有する範囲を考慮する必要があります。 次に、画面上で地面の下に表示されているため、深さも正しいと思い込むケースがあります。高さ基準が異なっていたり、現況地盤が変更されていたりすると、表示上の深さと実際の深さが一致しません。高さが重要な判断では、既知点や測量結果との照合が必要です。 建物外壁を基準にしたとき、仕上げ面と躯体面の違いを見落とすこともあります。図面が躯体寸法を示しているのに、現場では仕上げ面へ合わせると、壁厚や仕上げ厚の分だけずれる可能性があります。使用する図面の寸法基準を確認し、固定点の選び方を統一します。 道路側と建物側で別々に位置合わせを行い、その間の管路を無理に一致させることも避けるべきです。二つの基準が整合しない場合は、データの変換、図面精度、施工変更などに原因がある可能性があります。どちらか一方へ表示を合わせて問題を隠すのではなく、差が発生した理由を調べます。 端末を大きく動かした直後や測位状態が変化した直後に判断すると、一時的な表示変動を位置ずれと誤認することがあります。表示が安定していることを確認し、同じ地点を再度見たときに位置関係が再現されるかを確かめます。 AR表示を確認したことで、試掘や管理者への照会が不要になったと考えることも危険です。ARは登録データを見やすくする手段であり、未知の地下埋設物を自動的に発見するものではありません。資料に記載されていない管路、廃止管、仮設管などが存在する可能性を考慮します。 施工現場では、AR表示を安全管理の補助情報として位置付け、既存の確認手順と組み合わせます。表示に疑問がある場合は、作業を進めるために都合のよい解釈をせず、確認が完了するまで掘削範囲や方法を見直すことが重要です。
記録・共有で位置合わせの再現性を高める
位置合わせの精度だけでなく、同じ確認を別の担当者が再現できることも重要です。担当者の経験や記憶だけに依存すると、日付や端末が変わった際に同じ位置へ表示できなくなる可能性があります。 記録には、使用したデータの名称や版、座標系、高さ基準、位置合わせに使用した基準点、確認日時、担当者、測位状態などを含めます。建物側の固定点については、どの角や面を基準にしたのかが分かるように、写真や説明と関連付けます。 確認結果は、道路側分岐点、敷地境界、変曲点、建物貫通部などの主要地点ごとに残します。各地点で水平方向と高さ方向の差を記録し、図面値、探査値、実測値を区別します。単に「確認済み」と記載するだけでは、どの方法で確認したのか判断できません。 施工中に位置が変更された場合は、変更前と変更後を残します。上書きだけを行うと、過去の資料や施工写真との関係が分からなくなります。変更日時、変更理由、承認者、影響範囲を記録し、現場で使用するデータが最新版かどうかを確認できる状態にします。 複数の会社や担当部署が関わる現場では、情報の更新責任を明確にします。現地で差を発見した担当者が記録し、管理担当者が確認し、承認後に正式データへ反映するなど、手順を決めます。誰でも自由に位置を変更できる状態では、表示データの信頼性を維持できません。 共有時には、確認済みの位置と未確認の位置を明確に区別します。推定位置を確定位置のように伝えると、後工程の担当者が安全余裕を取らずに作業する可能性があります。情報の確度や確認方法を含めて共有することが大切です。 埋戻し前の記録は、将来のAR活用に直結します。管路だけでなく、周辺の固定物や基準点も記録しておけば、改修工事で位置合わせを再現しやすくなります。工事完成後に撤去される仮設物ではなく、長期間残る構造物との位置関係を残すことが望まれます。 適切な記録と共有を行うことで、AR表示は一時的な確認画面ではなく、施工から維持管理まで継続利用できる情報になります。建物引込部のように改修や更新が発生しやすい場所では、位置情報の履歴管理が特に重要です。
LRTK Phoneを活用した現場確認
建物引込部で地下埋設物をAR確認するには、現場で位置情報を取得し、登録された三次元データを現実空間と照合できる環境が必要です。LRTK Phoneを活用すると、高精度測位に基づく現場確認、位置情報の記録、ARによる可視化を一連の作業として扱いやすくなります。 施工前には、地下埋設物の座標データを準備し、現場の基準点との整合を確認します。道路側だけでなく、建物外壁、基礎、設備桝、貫通口などの位置を確認することで、引込ルートを現地空間上で把握しやすくなります。 試掘や掘削によって実際の管路が確認できた場合は、その位置を現場で記録し、既存データとの差を整理できます。建物引込部の曲がり、継手、上下方向の変化、貫通位置など、完成後に見えなくなる箇所を埋戻し前に記録しておけば、将来の維持管理にも活用できます。 ただし、高精度測位やAR表示を使用していても、周辺環境や元データの品質によって確認結果は変わります。建物近くでは測位条件を確認し、基準点との照合や複数方向からの再確認を省略しないことが重要です。 また、LRTK Phoneによる表示結果は、地下埋設物の管理者が保有する資料や現地調査の代替ではありません。掘削前には、関係者への照会、探査、試掘、立会いなど、現場で定められた確認手順を実施します。ARは、それらの情報を現場で理解しやすくし、関係者間の認識をそろえるための補助として活用します。 建物引込部では、道路側の基準と建物側の基準を結び付けて確認する必要があります。位置情報の取得、AR表示、施工記録を同じ流れで扱うことで、確認から記録までの抜けを減らしやすくなります。
まとめ
建物引込部は、地下埋設物が道路側から敷地内へ入り、建物の設備へ接続する重要な区間です。基礎、外構、他の管路、設備桝などとの干渉が起こりやすいため、地下埋設物をARで表示する際も慎重な位置合わせが求められます。 最初に、地下埋設物データと現場の座標系をそろえ、複数の基準点で位置と方位を確認します。続いて、建物側の固定点を使って水平方向を照合し、地盤高、管底高、管中心高などの高さ基準を統一します。さらに、引込角度と貫通位置を立体的に確認し、既設図面と現地調査結果に差がある場合は、根拠を残しながらデータを補正します。 確認は一方向だけで終わらせず、道路側、建物側、左右の斜め方向などから繰り返します。元データの精度や確認方法に応じて許容範囲を設定し、不確かな区間では安全上の確認範囲を確保することが重要です。 ARは地下を直接透視するものではなく、登録された位置情報を現場空間へ重ねて理解しやすくする技術です。画面上の表示だけで掘削位置を決定せず、管理資料、現地マーキング、探査、試掘、立会いなどを組み合わせる必要があります。 施工中に確認した実際の管路位置を記録し、変更履歴や確認方法とともに管理すれば、将来の改修や維持管理でも活用できます。特に、曲がり、交差、貫通部など、埋戻し後に確認できなくなる場所は、施工段階で確実に位置情報を残すことが大切です。 建物引込部の位置合わせ、ARによる現地確認、施工結果の記録を一つの流れとして運用するためには、LRTK Phoneの活用を検討してみてください。