LRTKレフィクシア株式会社

古い埋設図をAR施工に使わないための6つの版管理ルール

古い埋設図がAR施工に混入する原因

地下埋設物の位置や形状を現地の風景に重ねて確認できるARは、施工前の打ち合わせ、掘削範囲の確認、作業員への説明、既設構造物との位置関係の共有などに活用できます。平面図や縦断図だけでは理解しにくい埋設管の経路を、実際の道路や構造物と対応させて確認できることは、地下埋設物 AR 施工における大きな利点です。

一方で、AR表示が見やすいからこそ、表示されている情報を無条件に正しいと思い込む危険があります。元になった埋設図が古ければ、画面上の管路が鮮明に表示されていても、その位置や高さ、分岐、接続先などは現在の状況と一致していない可能性があります。

埋設図は、一度作成したら変わらない資料ではありません。施工中の設計変更、既設管との干渉回避、接続位置の変更、管径の変更、設備の増設、撤去、切り回し、補修などによって内容が更新されます。施工前の計画図、施工中の変更図、施工後の出来形図や竣工図が並行して存在することも珍しくありません。

このような環境で図面の版管理が不十分だと、担当者の端末に残っていた旧版、過去に送付された添付ファイル、別工区で使用したデータ、検討途中の図面などがARデータの作成に使われるおそれがあります。ファイル名が似ていたり、改訂番号が記載されていなかったりすると、内容を開いても新旧を判断できないことがあります。

特に注意したいのは、ARデータの作成日と元図面の作成日が異なることです。古い図面を今日AR用に変換すれば、データの保存日時は新しくなります。しかし、表示内容は古い図面のままです。ファイルの更新日時だけを見て最新版と判断すると、古い埋設情報を新しいデータだと誤認する可能性があります。

また、図面を三次元データへ変換すると、元図面の図枠、改訂欄、承認欄、注意書きなどが表示対象から外れる場合があります。現場のAR画面には管路の線や形状だけが表示され、どの図面を基に作成されたのか分からない状態になりやすいのです。

古い埋設図の混入を防ぐには、担当者が毎回注意するだけでは不十分です。正式版を識別する方法、原本を保管する場所、更新時の承認、AR変換後の照合、現場端末への配布、旧版の停止、作業前の確認までを一つの管理手順として定める必要があります。

地下埋設物AR施工で版管理が重要な理由

紙の図面や図面ファイルであれば、図枠に記載された図面番号、作成日、改訂番号、変更内容、承認者などを確認できます。旧版と新版を並べて比較すれば、変更された箇所を把握することもできます。

しかし、AR施工では必要な線、面、立体形状などを抽出して表示するため、図面の管理情報が画面上に出ないことがあります。管路だけが現地に重なって表示されると、利用者はその見た目から正式な最新データだと受け取りやすくなります。

AR表示の分かりやすさと、元情報の正確さは別の問題です。立体的で精密に見える表示であっても、元図面が概略図であれば、表示位置も概略情報に基づいています。設計時の計画位置を示した図面であれば、現地で実際に施工された位置とは異なる場合があります。

版違いによる影響は、平面位置だけではありません。管路の高さ、土被り、管底高、管中心高、管径、分岐方向、接続先、保護構造などが変更されている可能性もあります。平面上の経路が同じに見えても、高さが変われば既設管との交差関係や掘削深さの判断に影響します。

設計変更の反映時期にも注意が必要です。図面担当者が最新版へ更新しても、ARデータを作成する担当者へ変更が伝わらなければ、現場では旧版の表示が続きます。ARデータを更新しても、現場端末への配布が完了していなければ、作業者は古いデータを使い続けます。

つまり、地下埋設物AR施工の版管理では、図面だけを管理しても十分ではありません。元図面、変換後の三次元データ、座標設定、現場端末へ保存されたデータ、変更通知、承認記録を一連の情報として管理する必要があります。

版管理の目的は、すべてのデータを完全無欠にすることではありません。現在表示しているARデータが、どの資料を基に、いつ、誰によって作成され、どの範囲への使用が承認されているのかを追跡できる状態にすることです。その状態があれば、疑問や不一致が生じたときに、元情報まで戻って確認できます。

版管理ルール1 正式版を識別する情報を統一する

最初のルールは、正式版を誰でも同じ基準で識別できるようにすることです。図面を開いて細部まで確認しなければ新旧が分からない状態では、作業のたびに判断がぶれます。

図面とARデータには、工事名、工区名、対象区間、図面番号、改訂番号、承認日、適用開始日など、版を特定するための情報を付けます。どの項目を使用するかは現場の管理方法に合わせますが、関係者が共通の規則で確認できることが重要です。

ファイル名に「最新」「修正版」「確定版」「最終版」といった言葉だけを付ける管理は避けます。「最新」は、そのファイルを作成した時点での表現にすぎません。次の変更が発生すると、旧版にも「最新」という名称が残ります。

「最終版」「最終版2」「最終版確定」「最終版確定後修正」などのファイルが並ぶと、どれを使うべきか判断できません。客観的な順序を確認できる改訂番号と、現場利用の可否を示す承認状態を組み合わせます。

日付を入れる場合にも注意が必要です。同じ日に複数回変更される可能性があるほか、ファイルをコピーした日と内容を更新した日が異なる場合があります。日付だけで管理せず、図面番号や改訂番号と組み合わせます。

図面の改訂番号が4であれば、その図面から作成したARデータにも改訂番号4を引き継ぎます。AR用に独自のデータ番号を付ける場合は、元図面番号との対応を記録します。元図面との関係を追えないARデータは、問題が見つかったときに原因を確認できません。

版情報には、対象範囲も含めます。同じ工事でも、工区や施工区間によって適用する図面が異なる場合があります。図面番号と改訂番号が正しくても、別工区のデータを表示すれば施工対象とは一致しません。

高さ基準や座標系も識別情報として扱います。同じ形状のデータでも、座標系、原点、方位、標高基準、単位が異なれば、現地での表示位置が変わります。形状の版番号だけでなく、位置を決める設定情報も管理対象に含めます。

可能であれば、AR表示を開始する前に版情報を確認できるようにします。工事名、工区、改訂番号、適用日、データ作成日などが画面や詳細情報から確認できれば、現場担当者が作業開始前に照合できます。

版情報は管理担当者だけが理解できればよいものではありません。現場監督、測量担当者、協力会社、重機作業の関係者など、AR表示を利用する可能性がある人が同じ方法で新旧を判断できるようにします。

版管理ルール2 原本の保管場所と配布経路を一本化する

二つ目のルールは、正式な原本の保管場所と、現場へ配布する経路を一本化することです。

版管理が崩れる大きな原因は、同じ図面やデータが複数の場所に保存されることです。共用の保存場所、個人用の端末、過去の添付ファイル、外部記録媒体、作業用フォルダなどに同名のファイルが残っていると、どれが正式版なのか分からなくなります。

正式版を登録する場所を一つ決め、その場所で承認済みになった図面だけをARデータ作成の元資料として使用します。個人の端末に保存されていた図面や、過去に受け取った添付ファイルを直接使用する運用は避けます。

原本の保存場所だけでなく、配布の経路も統一します。正式な保存場所が決まっていても、担当者が個別にファイルをコピーして送付すると、配布後に原本が更新された際に旧版が残ります。現場端末や協力会社への配布方法を決め、誰が、いつ、どの版を配布したかを記録します。

原本の閲覧権限と更新権限も分けます。誰でも正式版を上書きできる状態では、承認前の変更や誤ったデータが入り込む可能性があります。原本を登録または差し替える担当者を定め、その他の利用者は承認済みデータを閲覧する運用にします。

検討途中の図面と承認済みの図面は、明確に分けて保管します。ルート案、変更案、協議中の図面、確認用の試作データなどが正式版と同じ場所にあると、誤って現場へ配布されるおそれがあります。

作業中、確認待ち、承認済み、廃止済みといった状態を区別し、現場で使用できる状態を限定します。承認されていないファイルを、名称だけ変えて正式な場所へ置かないことも重要です。

旧版は、履歴確認のために保管する場合があります。ただし、正式版と同じ一覧に残すと誤選択につながります。旧版を保管する場合は履歴用の場所へ移し、通常の現場作業では選択できない状態にします。

通信環境が不安定な現場では、端末内へデータを保存して使用することがあります。この場合でも、保存前に正式な保管場所から取得し、取得日と版番号を記録します。別の担当者から受け取ったファイルを、確認せずに正式版として登録してはいけません。

協力会社へデータを渡す場合も、配布窓口を一本化します。複数の担当者が別々にデータを送ると、受け取った時期によって版が異なる可能性があります。新版を配布するときの連絡先、旧版を停止する方法、受領確認の手順まで共有します。

原本の更新、新しいARデータの作成、現場への配布、旧版の停止を別々の作業として考えず、一つの更新処理として管理することが大切です。

版管理ルール3 変更履歴と承認記録を残す

三つ目のルールは、何が変更され、誰が確認し、いつから現場で使用できるのかを記録することです。

改訂番号だけでは、変更内容を把握できません。注記だけが修正されたのか、管路の平面位置が変わったのか、高さや管径が変わったのかによって、ARデータへの影響は大きく異なります。

変更履歴には、変更した区間、変更項目、変更理由、変更前後の概要、ARデータの再作成が必要かどうかを記録します。現場担当者が、どの部分に注意すべきか理解できる内容にします。

地下埋設物AR施工では、平面位置だけでなく高さ情報も重要です。管路の線形が変わっていなくても、土被り、管底高、管中心高、接続高さなどが変更されていれば、三次元データを更新する必要があります。

管径、条数、材質区分、設備種別などの属性情報が変わる場合もあります。表示形状に大きな変化がなくても、施工方法や確認事項に影響する変更は履歴へ残します。

承認記録も必要です。担当者が修正しただけの図面と、施工に使用できると確認された図面を区別します。協議中の変更案や、関係者の確認が終わっていないデータを正式版として配布してはいけません。

承認日、承認者、適用範囲、現場での適用開始日を記録します。新しい版が承認されても、ARデータの変換や端末への配布が完了していなければ、現場ではすぐに切り替えられないことがあります。そのため、図面の承認日と現場適用日を分けて管理する場合があります。

工事の進行状況によっては、施工済み区間と未施工区間で適用する版が異なることもあります。どの測点、工区、施工日、対象設備にどの版を適用するのかを明確にします。

ARデータについても、誰が作成し、誰が照合し、いつ現場へ配布したかを記録します。元図面の改訂履歴だけでは、AR表示が最新版へ更新されたかを確認できません。

座標設定や高さ補正を変更した場合も、履歴へ残します。管路形状を変更していなくても、基準点、原点、方位、標高オフセットなどを変更すれば、現場の表示位置は変わります。これらも版管理上の変更として扱います。

更新記録を残す際は、長い説明だけでなく、現場で確認すべき主要な変更点を明確にします。作業前の確認で、改訂番号、変更区間、主な変更内容、注意事項を短時間で確認できる状態が理想です。

版管理ルール4 元図面とARデータの対応を確認する

四つ目のルールは、正式な元図面を使用したことを確認し、変換後のARデータが元図面と一致しているかを照合することです。

正しい最新版を選んでも、データ変換の途中で線が欠落したり、高さを誤って入力したりすれば、現地では正しい表示になりません。版番号を合わせるだけで、ARデータの内容まで保証されるわけではありません。

変換前には、元図面の工事名、工区、図面番号、改訂番号、承認状態、適用区間を確認します。作成途中の図面や、確認待ちの図面を使用していないことを確かめます。

次に、AR表示へ変換する対象を明確にします。管路、マンホール、分岐、継手、弁類、保護構造、交差部など、施工確認に必要な情報が含まれているかを確認します。元図面に複数の設備が記載されている場合は、表示対象と対象外を区別します。

変換後は、平面位置を照合します。管路の始点と終点、曲がり位置、分岐方向、道路や構造物との位置関係、マンホールなどへの接続位置を確認します。長い区間では全体形状だけで判断せず、主要な変化点ごとに照合します。

高さ情報も確認します。AR上の管路が管中心、管頂、管底のどの位置を基準に作成されているかを明確にします。管底高を管中心高として扱うと、管径の半分に相当する高さの差が生じます。

土被りから高さを算出する場合は、基準となる地盤高が計画値なのか現況値なのかを確認します。道路の切削や盛土などで地盤高が変わる場合、古い地盤情報から算出した高さでは現地と一致しないことがあります。

管径や外形寸法も確認します。中心線が正しくても、直径や幅が誤っていれば、掘削範囲、離隔、他設備との干渉を正しく確認できません。複数の管を一本の線で代表表示している場合は、画面上の線が何を示すのかを利用者へ伝えます。

単位の違いにも注意が必要です。元図面と変換後のデータで長さの単位が一致していないと、形状や配置が大きく変わる可能性があります。図面上で正しく見えても、現地座標へ配置したときに誤差が表れることがあります。

座標系、原点、方位、標高基準も照合します。平面形状が正しくても、座標変換を誤るとデータ全体が移動または回転します。高さ基準を誤ると、平面位置は合っていても上下方向にずれます。

複数の測量成果や異なる時期の図面を組み合わせる場合は、基準が共通しているかを確認します。同じ工事名の資料でも、作成目的や測量条件によって基準が異なる可能性があります。

変換結果の確認は、可能な範囲で作成者以外の担当者も行います。作成者は自分の想定に沿ってデータを見るため、入力漏れや設定ミスに気付きにくいことがあります。元図面を理解している別の担当者が照合することで、見落としを減らせます。

現場へ配布する前には、既知の基準点や確認可能な構造物を使って試験表示を行います。図面上での比較だけでなく、現地で位置関係を確認することで、座標設定や高さ基準の問題を発見しやすくなります。

確認済みのARデータと、作成途中または試験用のデータは明確に分けます。確認後に内容や座標設定を変更した場合は、以前の確認結果をそのまま引き継がず、変更箇所を再度照合します。

版管理ルール5 現場端末から旧版を確実に除外する

五つ目のルールは、新版を配布するだけでなく、現場端末に残っている旧版を確実に使用対象から外すことです。

原本とARデータを更新しても、現場端末に旧版が残っていれば、作業者が誤って開く可能性があります。特にファイル名や表示名が似ている場合は、一覧画面から新旧を見分けることが困難です。

新版を配布する際には、旧版の利用停止を同時に行います。端末から削除する、作業用一覧から外す、廃止状態にするなど、使用する仕組みに応じた方法を定めます。

履歴確認のために旧版を残す必要がある場合でも、通常の作業用データと同じ場所へ置かないようにします。過去版を参照できる担当者を限定し、日常のAR表示では承認済みの現行版だけを選べる状態にします。

複数台の端末を使用する現場では、端末ごとの更新状況を確認します。1台だけ新版へ更新され、ほかの端末には旧版が残っていることがあります。端末の識別番号、使用者、登録した改訂番号、更新確認日を記録します。

協力会社が管理する端末についても同じ確認が必要です。ファイルを送付しただけでは、版の切り替えが完了したとは判断できません。新版の受領、登録、旧版の停止、画面表示の確認までを行います。

オフラインで使用していた端末には特に注意します。通信できない場所で長期間使用していた端末や、一時的に保管されていた予備端末は、最新版へ更新されていない可能性があります。現場へ再投入する前に保存データを確認します。

端末を交換した場合も、旧端末からすべてのデータをそのままコピーする運用は避けます。過去版、試験データ、作成途中のデータまで移行される可能性があるためです。正式な保管場所から、承認済みの最新版を登録し直します。

AR画面を開いたまま作業している場合、新しいデータが配布されても、表示中の内容が自動的に更新されないことがあります。再読込、再選択、再起動などが必要かを確認し、作業者へ共有します。

新版の配布通知を受け取ったことと、新版が実際に表示されていることは別です。更新後は現場で使用する画面を開き、工事名、工区、改訂番号、対象区間などが正式版と一致しているかを確認します。

更新が完了したら、旧版を停止した日時と対象端末を記録します。誰が切り替えを確認したかを残しておけば、後から旧版使用の可能性を調査する際にも役立ちます。

版管理ルール6 作業開始前に版情報と現地を照合する

六つ目のルールは、承認済みのARデータであっても、作業開始前に版情報と現地の状況を確認することです。

版管理を徹底すれば、古い埋設図を使う可能性は下げられます。しかし、最新版の図面が実際の埋設位置を完全に表しているとは限りません。過去工事の記録漏れ、未反映の補修、施工誤差、図面作成時の条件などによって、資料と現地に差がある可能性があります。

まず、作業当日に表示するデータの工事名、工区、図面番号、改訂番号、適用区間を確認します。前日に正しい版を確認していても、その後に変更が配布されている場合があります。

変更通知の有無も確認します。緊急の設計変更や施工順序の変更が発生したときは、正式なデータ更新より先に作業停止の連絡が行われることがあります。端末のデータが変わっていないから変更がないとは限りません。

次に、現地で確認できる構造物や管理情報と照合します。マンホール、弁室、露出部、標識、道路境界、既設構造物、過去の施工記録などを確認し、AR表示との関係に大きな不一致がないかを見ます。

接続先が一致しているかも重要です。マンホールの平面位置が合っていても、接続方向や接続高さが異なる場合があります。始点と終点だけではなく、途中の曲がり、分岐、交差部も確認します。

位置合わせに使用する基準点や構造物が移動していないことも確認します。仮設物、移動可能な設備、工事中に設置された目印などを基準にすると、後の工程で位置が変わる可能性があります。安定した既知点を用い、必要に応じて測量結果と照合します。

AR表示と現地に不一致がある場合は、画面上のデータを感覚的に動かし、見た目だけを合わせて作業を続けないようにします。不一致の原因が、測位状態、座標設定、基準点、元図面、データ版、現地施工のどこにあるかを確認します。

表示位置を補正する場合は、補正量、補正した方向、理由、対象範囲を記録します。一つの場所だけに合わせてデータ全体を動かすと、別の場所でずれが拡大する可能性があります。

作業前の打ち合わせでは、AR画面を見せるだけでなく、表示している改訂番号、対象区間、元資料の種類、位置精度に関する前提、追加確認が必要な場所を説明します。

管理者への照会、現地立会い、探査、試掘、測量などが必要な場合は、現場の手順や関係する基準に従って実施します。AR表示があることを理由に、必要な安全確認を省略してはいけません。

作業中に新たな埋設物や図面との差異が見つかった場合は、現場だけで情報を止めないことも大切です。発見内容を記録し、図面管理者とARデータ管理者へ伝え、必要に応じて正式な改訂へ反映します。

設計変更が発生したときの版切り替え手順

地下埋設物の施工では、現地条件によって設計変更が発生することがあります。既設管との干渉、想定外の地盤条件、接続先の状態、施工順序の変更などにより、計画ルートを見直す場合があります。

変更が発生したときは、まず影響する作業範囲を明確にし、旧版による施工を停止します。変更内容が確定していない段階で、関係者ごとに異なる理解で作業を進めることを避けます。

次に、変更対象の区間、平面位置、高さ、管径、接続先、施工方法などを整理します。図面上の線だけを変更するのではなく、AR表示に影響する属性や座標設定も確認します。

変更図が作成されたら、承認前の検討図と、施工に使用できる正式版を区別します。打ち合わせで提示された案を、そのまま現場用ARデータへ変換してはいけません。

正式な承認後、元図面の改訂番号を更新し、その版を基にARデータを作り直します。変更区間だけを差し替える場合でも、既存部分との接続位置や高さが連続しているかを確認します。

ARデータの照合が完了したら、現場端末へ配布します。同時に旧版を停止し、端末ごとの切り替え状況を確認します。新版と旧版が同時に使用できる状態を長く残さないことが重要です。

現場では、変更箇所だけでなく、変更によって影響を受ける周辺部分も確認します。ルートを移動したことで他の埋設物との離隔が変わったり、接続勾配が変化したりする可能性があります。

急な変更で正式データの準備に時間を要する場合は、暫定対応の手順をあらかじめ定めます。口頭指示だけで作業を続けるのではなく、対象区間、変更内容、承認者、適用時間、暫定情報であることを記録します。

正式版が準備できた後は、暫定データや説明用資料を停止し、通常の版管理へ戻します。暫定版が端末や共有場所に残ると、後の工程で誤って再利用される可能性があります。

複数工区と協力会社を含む現場の管理方法

複数の工区や協力会社が関わる現場では、版管理が複雑になります。同じ工事名でも工区ごとに図面の改訂時期が異なり、ある工区では新版、別の工区では従来版を使用する場合があります。

このような現場では、改訂番号だけでなく、適用工区と対象区間を明確にします。版番号が同じでも対象が異なるデータを、同一のものとして扱わないことが重要です。

工区の境界付近では、隣接するデータの接続を確認します。各工区の内部では正しく見えても、境界部分で管路位置、高さ、方向が一致しない場合があります。境界付近は共同で照合する手順を設けます。

配布窓口も整理します。元請、協力会社、測量担当者などがそれぞれ独自にデータを送ると、現場で複数の版が混在します。正式な配布担当者と受領担当者を決めます。

データを受け取った協力会社は、受領日時、改訂番号、対象工区、登録した端末を確認します。受領しただけで切り替え完了とせず、旧版の停止と表示確認まで行います。

協力会社へは、操作方法だけでなく、版情報の確認方法も説明します。表示に疑問がある場合の連絡先、旧版を見つけた場合の対応、更新通知を受け取った後の作業手順を共有します。

担当者の交代時にも版管理情報を引き継ぎます。端末の操作説明だけではなく、正式版の保管場所、現在の改訂番号、変更中の区間、未反映の事項、旧版の保管方法などを伝えます。

工区の切り替え、工程の節目、端末交換、担当者交代などの時期には、データの棚卸しを行います。廃止済みデータ、試験用データ、重複ファイル、対象外工区のデータが残っていないかを確認します。

同じ現場で複数のARデータを使用する場合は、表示対象の切り替えにも注意します。別の設備や別工区のデータが同時に表示されると、作業対象を取り違える可能性があります。作業前に必要なデータだけを選び、対象区間を確認します。

版管理と合わせて確認したいAR施工の注意点

正しい最新版を使用していても、AR表示の位置が常に現地と完全に一致するとは限りません。元図面の精度、測量成果、座標変換、測位環境、端末の姿勢、位置合わせ方法など、複数の条件が表示位置に影響します。

元図面が概略位置を示す資料であれば、AR表示も概略的な確認に使用します。図面に測量座標がないにもかかわらず、画面上で線が鮮明に表示されていることを理由に、高精度な位置情報だと判断してはいけません。

計画図と出来形図も区別する必要があります。計画図は施工予定位置を示すものであり、実際に施工された位置を示すとは限りません。既設埋設物を確認するときは、資料がどの段階の情報なのかを確認します。

高さ情報の根拠も重要です。実測した管中心高を使用しているのか、土被りの代表値から算出しているのかによって、利用できる範囲が異なります。AR画面の外観だけでは、その違いを判断できません。

周辺の建物、樹木、地形、重機、構造物などの影響により、測位が安定しない場合があります。表示が動く、再起動後に位置が変わる、既知点と合わないといった状態が見られたら、作業を止めて測位状態や設定を確認します。

端末の向きや保持状態が表示へ影響する場合もあります。作業者が端末を急に動かしたり、位置合わせ後に長距離を移動したりすると、表示状態が変化する可能性があります。現場で定めた確認手順に従い、必要に応じて基準点へ戻って照合します。

ARは地下埋設物の存在や位置関係を分かりやすく共有するための補助情報です。単独で埋設位置を確定するものではありません。必要な照会、測量、探査、試掘、立会いなどと組み合わせて使用します。

版管理を行うことで、少なくとも承認されていない古い情報を誤って使う可能性を下げられます。さらに、現在表示しているデータの根拠を追跡できるため、不一致が発生したときの確認も進めやすくなります。

まとめ

古い埋設図をAR施工に使わないためには、ファイル名に「最新」と付けるだけでは不十分です。正式版を識別する情報を統一し、原本の保管場所と配布経路を一本化する必要があります。

図面が変更された場合は、変更内容、承認者、適用範囲、適用開始日を記録します。元図面の更新だけで作業を終えず、ARデータの再作成、変換結果の照合、端末への配布、旧版の停止までを一連の処理として管理します。

新版を配布した後は、現場端末で実際に表示されている工事名、工区、改訂番号、対象区間を確認します。複数台の端末や協力会社の端末を使う場合は、端末ごとの切り替え状況を記録します。

作業開始前には、承認済みの最新版であっても現地の構造物や管理資料と照合します。AR表示に不一致がある場合は、見た目だけを合わせるのではなく、データ版、座標設定、測位状態、元図面、現地条件を確認することが重要です。

地下埋設物AR施工の安全性と実用性は、表示技術だけで決まるものではありません。正しい情報を選び、変更を確実に反映し、誰が見ても現在の版を確認できる運用があってこそ、ARの分かりやすさを施工管理に生かせます。

図面、座標、三次元データ、現場記録を関連付け、現地で版情報を確認しながらAR施工を進めたい場合は、LRTK Phoneを活用した確認方法を検討することができます。

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