河道浚渫の計画や施工管理では、河床から取り除く土砂の体積計算が、工事数量、運搬計画、工程管理、出来形確認の基礎になります。しかし、河道の形状は一定ではありません。横断面を測量した地点では河床形状を把握できても、次の横断面までの間に深掘れ、砂州、湾曲、護岸の張り出しなどがあると、単純な計算では実際の浚渫量との差が大きくなることがあります。
河道全体を隙間なく測量できれば詳細な地形モデルを作成できますが、現場条件、測量時間、安全性、予算などの制約から、一定間隔の横断測量を基準に体積を求める場合も少なくありません。そのため実務では、横断面間の地形変化をどのように補い、計算結果の信頼性を高めるかが重要になります。
本記事では、横断面法を基本としながら、河道浚渫の体積計算で横断面間の変化を補う5つの方法を解説します。計算式だけでなく、測量位置の決め方、補助断面の追加、三次元データの利用、誤差の扱い、施工前後の比較方法まで、実務で確認したいポイントを整理します。
河道浚渫の体積計算で最初に整理する条件
河道浚渫の体積計算を始める前に、何を浚渫土量として扱うのかを明確にする必要があります。対象範囲が曖昧なまま計算すると、測量や計算が正しくても、発注数量、施工数量、運搬数量の間で差が生じます。
最初に整理したいのは、浚渫区域の上流端、下流端、左右岸側の境界、計画河床高、計画横断形状です。河道全体を掘削するのか、河道中央部だけを浚渫するのか、堆積が著しい範囲だけを対象とするのかによって、体積計算に使用する断面積が変わります。
一般的な浚渫土量は、現況河床と計画河床の高低差から求めます。各横断面上で、現況河床が計画河床より高い部分を掘削対象として面積計算し、その面積を隣接する横断面間で積分する考え方です。現況河床が計画河床より低い部分は、通常の浚渫数量には含めません。ただし、埋戻しや整形を伴う工事では、掘削量と盛土量を分けて計算する必要があります。
体積の状態区分にも注意が必要です。河床に堆積している状態の体積、浚渫後に船や車両へ積み込まれた状態の体積、仮置き後の体積では、含水状態や土砂の膨張によって数値が異なります。横断測量から求めるのは、原則として現地の地山または堆積状態における幾何学的な体積です。運搬台数や処分量へ換算するときは、土質や含水状態に応じた別の換算条件が必要になります。
水面下の河床高を扱う場合は、測深時の水位も重要です。測深値が水面から河床までの深さで記録されているなら、測定時水位を基準高へ換算しなければ河床標高を求められません。測量日によって水位が異なる場合、各日の水位を同じ標高基準へ整理しないと、実際には変化していない河床が上下したように見える可能性があります。
計算に使用する座標系、標高基準、測点番号、河道中心線、横断方向も統一します。横断面の位置を距離だけで管理すると、再測量時に同じ場所を再現できない場合があります。測点座標、中心線上の距離標、左右岸の方向、測量日時を一体で保存しておくと、施工前後の比較がしやすくなります。
横断面法による基本的な体積計算
横断面法は、河道に設定した複数の横断面から浚渫対象の断面積を求め、隣接する断面間の距離を掛けて体積を算出する方法です。河道の延長方向に沿って断面積が連続的に変化すると考え、測定した断面積から区間内の体積を推定します。
最も基本的な計算は平均断面法です。上流側の浚渫断面積をA1、下流側の浚渫断面積をA2、横断面間の距離をLとすると、区間体積Vは次のように表せます。
V=(A1+A2)÷2×L
例えば、上流側の浚渫断面積が40平方メートル、下流側が60平方メートル、横断面間距離が20メートルであれば、区間体積は1,000立方メートルです。この方法は計算が分かりやすく、断面形状が区間内で比較的なだらかに変化する場所に適しています。
ただし、平均断面法は、断面積が上流から下流へほぼ直線的に変化することを前提とした近似です。2つの横断面の間に大きな砂州や局所的な深掘れがあっても、両端の断面積だけではその変化を捉えられません。
中間断面を測定できる場合は、中央断面を使った計算も検討できます。上流断面積をA1、中央断面積をAm、下流断面積をA2、区間長をLとすると、区間体積は次のように求められます。
V=L÷6×(A1+4Am+A2)
この計算は、区間中央の断面を利用して断面積の曲線的な変化を反映する方法です。ただし、中央断面が区間全体の変化を代表していなければ、必ずしも精度が高くなるとは限りません。河床変化が中央以外に集中している場合は、変化点に合わせて測量位置を設定する必要があります。
また、横断面間距離には、単純な平面上の直線距離ではなく、体積計算上の基準となる河道中心線に沿った距離を使用するのが基本です。河道が湾曲している場所で、横断面の中央点を直線で結んだ距離だけを使用すると、河道内側と外側の形状差を十分に表せない場合があります。湾曲が大きい区間では、区間を短く分割するか、三次元地形データを併用することが有効です。
方法1 区間を細分化して平均断面法を適用する
横断面間の変化を補う最も基本的な方法は、計算区間を細かく分けることです。横断面の間隔を短くすると、各区間内での河床変化が小さくなり、平均断面法の前提に近づきます。
例えば、100メートル間隔で設定した横断面の間に砂州の発達や河道幅の変化がある場合、100メートル全体を1区間として計算するより、20メートルや25メートルごとに断面を追加した方が変化を捉えやすくなります。ただし、すべての区間を同じ間隔にする必要はありません。河床が安定している直線区間では間隔を広くし、湾曲部、合流部、構造物周辺、堆積部では間隔を狭くする方法が効率的です。
細分化では、単に測点数を増やすだけでなく、どこに断面を追加するかが重要です。横断面の候補位置は、事前の現地確認、過去の測量成果、航空写真、河岸形状、流路の変化などから判断します。水面に流れの変化や浅瀬が見える場所、河幅が急に変わる場所、護岸形状が切り替わる場所は、河床形状も変化している可能性があります。
区間ごとの体積を計算したら、対象範囲全体で合計します。横断面が不等間隔の場合でも、それぞれの区間長を個別に使用すれば計算できます。測点1から測点2までが15メートル、測点2から測点3までが30メートルであれば、それぞれ別の区間として体積を求めます。
区間細分化の利点は、計算根拠が分かりやすいことです。どの横断面とどの距離を使ったかを明示しやすく、施工数量の確認や再計算にも対応しやすくなります。一方で、断面測量の回数が増えるため、測量時間やデータ整理の負担も増えます。安全に測量できない場所では、無理に断面を追加するのではなく、後述する補間や三次元測量との併用を検討します。
また、横断面間隔を狭くしても、各断面内の測点が少なければ河床形状を正しく表現できません。断面内では、河岸、法尻、河床の勾配変化点、最深部、砂州の肩などに測点を配置します。等間隔に点を取るだけでは、重要な地形変化を取り逃すことがあります。
方法2 中間断面を補間して河床形状を推定する
現地で追加測量ができない場合や、既存の横断測量成果を使って概算数量を求める場合は、隣接する横断面から中間断面を補間する方法があります。補間とは、測定されていない位置の形状を、前後の測定値から推定する処理です。
単純な方法では、上流側と下流側の対応する位置を直線的につなぎ、中間位置の標高を求めます。区間の中央であれば、前後の標高の平均値を使用する考え方です。横断面間の4分の1地点であれば、上流側の影響を4分の3、下流側の影響を4分の1として計算します。
ただし、河道の横断面は、左右岸の位置や河床最深部が区間内で移動します。上流断面の左岸から5メートル地点と、下流断面の左岸から5メートル地点を機械的に対応させても、実際には異なる地形要素を結んでいる可能性があります。そのため、補間前に断面上の基準位置を整理する必要があります。
基準位置として利用できるのは、河道中心線、左右岸の法肩、法尻、低水路端、河床最深部などです。各断面で地形上の対応関係を決め、その間を補間すると、単純な座標順の補間よりも実際の河道形状に近づきます。
河床最深部が左右に移動している区間では、最深部の移動経路を平面上で確認します。最深部を前後断面の同じ横断位置に固定すると、実際には蛇行している深掘れ部を直線的な溝として表現してしまいます。平面位置を考慮しながら補間することで、浚渫対象の集中箇所を把握しやすくなります。
補間断面を作成した後は、各断面で現況河床と計画河床を比較し、浚渫断面積を計算します。元の横断面だけで体積を求めるのではなく、補間断面を含む短い区間ごとに平均断面法を適用します。
補間は実測ではなく推定であるため、成果資料では実測断面と補間断面を区別します。補間位置、補間方法、使用した基準点、適用した区間を記録しておくことが大切です。補間した断面を実測断面と同じ扱いで保存すると、後の担当者が測量結果と誤認するおそれがあります。
河床変化が小さく、河道幅や流路位置が安定している区間では、線形補間でも実用的な結果を得られる場合があります。一方、湾曲部、合流部、落差工周辺、局所洗掘部などでは、補間だけに依存せず、補助測量や三次元データで確認する必要があります。
方法3 地形変化点に補助横断面を追加する
横断面間の変化を効率よく補うには、地形が大きく変わる場所へ補助横断面を追加する方法が有効です。等間隔で横断面を増やすよりも、変化点を選んで測量する方が、少ない測量回数で計算精度を高められることがあります。
補助横断面を追加したい代表的な場所は、河道の湾曲が始まる地点と終わる地点、河幅が急に広がる地点、支川や水路の合流部、橋脚や床止めなどの構造物周辺、砂州の上流端と下流端、局所的な深掘れが確認された地点です。
河道湾曲部では、外岸側に深掘れが生じ、内岸側に土砂が堆積する形状になることがあります。このような区間を上流端と下流端の2断面だけで計算すると、区間途中の最大深度や堆積形状を平均化してしまいます。湾曲の中央付近に補助断面を追加し、外岸側と内岸側の河床変化を確認することで、浚渫断面積の変化を反映できます。
橋脚周辺では、橋脚の直上流、橋脚付近、直下流で河床形状が異なる可能性があります。橋脚位置をまたぐ長い区間として計算すると、局所洗掘部や堆積部を捉えにくくなります。構造物の影響範囲を確認し、必要に応じて前後へ補助断面を設けます。
砂州がある場合は、砂州の最も高い地点だけでなく、砂州が始まる地点と終わる地点を確認します。砂州中央の断面だけを追加しても、上流側からどのように盛り上がり、下流側でどのように低下するかが分からなければ、体積変化を適切に積分できません。
補助断面の方向も重要です。原則として、その地点の河道中心線に対して横断方向となるよう設定します。湾曲部で全断面を同じ方位にすると、河道を斜めに切る断面が生じ、断面間の対応関係が崩れる場合があります。各断面の方向が異なる場合は、平面上で断面線が交差したり、対象範囲に隙間が生じたりしないよう確認します。
補助横断面を追加すると、区間長も変わります。元の上流断面から補助断面まで、補助断面から下流断面までをそれぞれ独立した区間として計算します。補助断面の位置を河道中心線上の距離標で管理しておけば、区間距離を再現しやすくなります。
補助断面の追加は、施工中の数量確認にも利用できます。浚渫の進行に伴って局所的な形状変化が発生した場合、施工前に設定した横断面だけにこだわらず、変化が大きい地点へ測量を追加します。これにより、残土量や過掘りの可能性を早めに把握できます。
方法4 平面測量と三次元地形データを組み合わせる
横断面だけでは把握しにくい河床変化を補う方法として、平面測量や三次元地形データとの組み合わせがあります。河道全体または重要区間の地形を点群や格子状の標高データとして取得し、そのデータから任意の位置に横断面を作成します。
三次元地形データを使用すると、測量後に追加の横断面を切り出せる点が大きな利点です。現地作業後に砂州や深掘れの位置が判明した場合でも、取得範囲内に十分な測点があれば、該当位置の断面を作成して体積計算を見直せます。
水面上に露出した河岸、護岸、干出した砂州などは、地上測量や写真測量によって面的に記録できる場合があります。一方、水面下の河床は、外観写真だけでは標高を取得できません。水深測定や水中地形を取得できる測量方法を使用し、測定時水位を用いて河床標高へ変換する必要があります。
複数の測量方法を組み合わせる場合は、座標系と標高基準を統一します。河岸部の測量データと水中部の測深データが異なる基準にあると、接続部分に段差が発生します。共通の基準点や既知点を用いて位置と高さを確認し、重複する範囲で整合性を点検します。
三次元データから体積を直接求める場合は、現況地形面と計画地形面の差を計算します。平面上の小さな格子ごとに高低差を求め、その格子面積を掛けて合計する考え方です。格子間隔を細かくすると細かな地形変化を表現しやすくなりますが、元の測点密度以上の詳細さが得られるわけではありません。測点が少ない範囲を細かい格子へ変換しても、補間された値が増えるだけです。
横断面法と三次元計算を併用する場合は、両者の対象範囲を一致させます。横断面法では左右岸の境界まで計算しているのに、三次元計算では浚渫施工範囲だけを切り出していると、結果を比較できません。上流端、下流端、左右境界、計画面を共通化したうえで数量差を確認します。
両方式の計算結果に差がある場合は、どちらかを直ちに誤りと判断するのではなく、差が生じた場所を特定します。横断面間に局所的な堆積があれば、三次元計算の方が大きな体積になる可能性があります。逆に、三次元データの欠測範囲が広く、補間によって地形が平滑化されていれば、横断面法より小さな体積になることもあります。
三次元地形データは詳細な計算に適していますが、データ処理の設定によって結果が変わります。不要物の除去、欠測部の補間、地形面の作成方法、格子間隔、対象境界などを記録し、同じ条件で再計算できるようにします。
方法5 計算結果に誤差幅と補正条件を設定する
河道浚渫の体積計算では、結果を単一の確定値として扱うだけでなく、測量条件や補間範囲に応じた誤差幅を考慮することが重要です。河床は不規則であり、水中測量には水位変動、船体の動揺、測深位置のずれ、軟泥への反応など、複数の不確かさがあります。
誤差の主な要因は、標高測定誤差、平面位置誤差、横断面間の補間誤差、計画面の設定誤差、対象境界の設定誤差です。これらは体積に同じ影響を与えるわけではありません。広い面積で標高が一様にずれると体積への影響が大きくなり、局所的な位置ずれは境界部や急斜面で影響が大きくなります。
体積への影響を確認する簡単な方法は、現況地形または計画地形を一定量上下させて再計算することです。例えば、測量条件から想定される高さの変動幅を設定し、上側条件と下側条件で体積を求めます。対象面積が広い場合、数センチメートルの高さ差でも全体体積には無視できない差が生じることがあります。
横断面間の補間誤差は、断面間隔を変えた計算で確認できます。すべての断面を使った体積と、断面を一部間引いた体積を比較すると、断面間隔に対する計算結果の感度を把握できます。断面を1つ省いただけで体積が大きく変わる区間は、地形変化が大きく、補助断面が必要な可能性があります。
別の確認方法として、平均断面法による体積と、中間断面を利用した計算結果を比較する方法があります。両者の差が小さければ、区間内の断面積変化が比較的なだらかであると考えられます。差が大きい場合は、中間断面の代表性や局所地形を確認します。
補正係数を使用する場合は、根拠を明確にします。過去の現場で使用した係数を別の河川へそのまま適用すると、河道形状、土質、測量間隔の違いを反映できません。補正係数は、実測数量との比較、追加測量結果、過去の同一区間における検証など、対象現場に関係する根拠から設定します。
計算結果を報告するときは、体積値だけでなく、使用した断面間隔、実測断面数、補間断面数、測量方法、欠測範囲、補正条件も記載します。概算段階の数量と、施工精算に使用する数量では必要な精度が異なるため、計算の利用目的も明示します。
浚渫前後の体積を比較するときの測量手順
施工前と施工後の地形を比較して浚渫量を求める場合は、両時点の測量条件をできるだけそろえます。測量方法や横断面位置が異なると、地形変化と測量条件の差を区別しにくくなります。
最初に、施工前測量で使用した河道中心線、距離標、横断面位置、断面方向を保存します。施工後も同じ位置で測量できるよう、横断面の中心点と両端点を座標で管理します。現地の杭や目印だけに依存すると、増水や工事によって失われる可能性があります。
水位基準も統一します。施工前後で水位が異なる場合でも、測深値を共通の標高基準へ変換すれば河床高を比較できます。水面からの深さだけを比較すると、水位差を河床変化として扱ってしまいます。
断面内の測点配置は、地形変化点を捉えられるようにします。施工前に砂州があった位置と、施工後に浚渫された位置では、同じ横断距離で測点を取得できないこともあります。その場合でも、左右岸基準や中心線基準を用い、断面形状を共通の横断座標上へ整理します。
施工前後の断面を重ねると、掘削された部分と堆積した部分を確認できます。浚渫後に流れによって土砂が移動した場合、施工区域内で掘削と再堆積が同時に発生することがあります。単に施工前体積から施工後体積を引くだけでなく、断面ごとに掘削面積と堆積面積を分けて確認すると、河床変化の内容を説明しやすくなります。
浚渫中に複数回の測量を行う場合は、各測量時点の範囲を統一します。測量回ごとに対象境界が変わると、数量の増減が施工によるものか、計算範囲によるものか分からなくなります。やむを得ず範囲が変わる場合は、共通範囲と追加範囲を分けて集計します。
測量から体積計算までのデータ処理手順も統一します。施工前は平均断面法、施工後は三次元地形計算というように方式を変えると、計算方法の違いが数量差に含まれます。異なる方式を使用する場合は、同じ時点のデータを両方式で計算し、方式差を確認してから比較します。
河道浚渫の体積計算で起きやすい失敗
河道浚渫の体積計算で多い失敗の一つは、横断面間隔を一律に設定し、地形変化を考慮しないことです。直線区間と湾曲区間、平坦な河床と砂州周辺では、必要な測量密度が異なります。全区間を同じ間隔にすると、重要な変化点で測量が不足する一方、安定区間では不要に測点が増える場合があります。
次に、断面間距離の取り方を誤るケースがあります。横断面の端点間距離や、図面上で近い点同士を結んだ距離を使用すると、河道延長方向の正しい区間長にならないことがあります。体積計算に使用する距離は、あらかじめ設定した河道中心線や管理基準線に沿って求めます。
横断面の方向が河道に対して斜めになっている場合も注意が必要です。斜め断面は見かけ上の河幅が広くなり、断面積も大きくなる可能性があります。河道が急に曲がる場所では、断面方向を区間ごとに調整し、平面上で計算範囲が重複していないか確認します。
測量水位の違いを補正せずに河床高を比較することも大きな誤差要因です。特に、測深値を水深として保存している場合は、測量時水位と組み合わせなければ標高として利用できません。水位記録の時刻と測深時刻がずれている場合は、その間の水位変動も確認します。
計画河床面の設定ミスも数量へ直結します。計画高だけを一定に設定し、本来必要な横断勾配や法面形状を反映しなければ、浚渫断面積が正しくなりません。計画断面は、中心部の計画河床高、横断勾配、掘削幅、法面勾配、構造物周辺の除外範囲まで含めて作成します。
欠測範囲を自動補間したまま確認しないことも避ける必要があります。水面反射、植生、構造物、急斜面などにより測点が取得できなかった場所では、周辺点から大きく離れた補間面が作られる場合があります。欠測範囲が浚渫数量に与える影響を確認し、重要な場所であれば追加測量を行います。
最後に、計算後の体積だけを保存し、元データや条件を残さない失敗があります。横断面座標、計画断面、区間距離、計算式、補間方法が残っていなければ、数量差が生じたときに原因を追跡できません。体積計算は、再現可能な形で整理することが重要です。
計算根拠を説明できる成果資料のまとめ方
河道浚渫の体積計算結果は、合計体積だけでなく、その数量に至った過程を確認できる形で整理します。成果資料には、対象区間、測量日、測量方法、座標系、標高基準、使用した水位、河道中心線、横断面位置を記載します。
横断図には、現況河床、計画河床、浚渫対象範囲を重ねて表示します。施工前後の比較では、施工前河床と施工後河床を同じ縮尺で表示し、掘削部分と堆積部分を区別します。断面ごとの浚渫面積を記載しておけば、体積集計との照合が容易になります。
区間ごとの計算では、上流側断面積、下流側断面積、区間距離、計算体積を対応付けます。中間断面や補助断面を使用した場合は、その断面が実測か補間かを明示します。補間断面には、作成方法や参照した前後断面も記録します。
三次元地形データを使用した場合は、地形面の作成条件を残します。使用した点群範囲、除去した対象、欠測部の補間方法、格子間隔、計画面の作成条件、体積計算境界などが該当します。同じ点群を使用しても、地形面の作成条件が異なれば体積は変わる可能性があります。
数量の確認では、横断面法による体積と三次元計算による体積を比較する方法も有効です。差がある場合は、区間単位で比較し、砂州、深掘れ、欠測部、境界部などの影響を確認します。全体数量だけを比較するより、差の原因を特定しやすくなります。
現場条件による不確かさがある場合は、注意事項として明記します。増水直後で河床が不安定だったこと、水中の浮遊物により一部欠測があったこと、構造物周辺で測量範囲が制限されたことなど、結果の解釈に影響する条件を残します。
施工数量として使用する場合は、計算時点も重要です。施工直後の測量なのか、一定期間経過後の測量なのかによって、再堆積や洗掘の影響が異なります。測量日時と施工工程を関連付けて保存すると、数量変化を説明しやすくなります。
現場計測から体積計算までを効率化する考え方
河道浚渫の体積計算を効率化するには、計算作業だけでなく、現地測量からデータ整理までの流れを統一することが重要です。現場で取得した測点名や写真名が図面上の横断面番号と対応していなければ、後工程で確認作業が増えます。
測量前に、河道中心線、横断面位置、補助断面候補、左右岸方向を地図上で整理します。現地では、その計画に沿って測点番号を付け、測量日時、測定方法、水位、現場状況を記録します。地形変化を発見した場合は、補助断面や追加点を取得し、追加理由も残します。
水面上の河岸や護岸では、位置情報付きの写真を残しておくと、数値だけでは判断しにくい地形状況を確認できます。砂州の範囲、植生の有無、護岸の形状、構造物との位置関係などを写真と測点で関連付けることで、横断面間の補間方法を検討しやすくなります。
測量後は、座標系、標高基準、測点番号を確認してから横断面を作成します。いきなり体積計算へ進むのではなく、平面図上で測点の並びや異常点を確認し、横断図上で河床形状が連続しているかを点検します。
体積計算では、元の測量値、修正値、補間値を区別して管理します。異常点を修正した場合は、元の値を削除せず、修正理由と修正後の値を記録します。これにより、再計算や第三者確認に対応できます。
現場での位置確認や測量記録を効率化する手段として、LRTK Phoneのような測位端末を活用する方法があります。横断面の中心位置、河岸の変化点、施工区域の境界、補助測量地点などを座標付きで記録しておけば、現地と図面の対応を確認しやすくなります。
ただし、水面下の河床形状は、陸上の測位端末だけでは取得できません。水深測定に対応した機器や測量方法と組み合わせ、すべてのデータを共通の座標・標高基準へ統合する必要があります。LRTK Phoneは、河岸部や基準点、施工管理点、現況写真などの記録に利用し、水中測量データと位置関係をそろえる役割として活用できます。
現場で取得した情報をその日のうちに平面図へ反映し、横断面の不足や異常を確認できれば、作業終了後に追加測量が必要となるリスクを減らせます。体積計算の精度は、計算式の選択だけではなく、現地で必要な情報を漏れなく取得できる運用によって支えられます。
まとめ
河道浚渫の体積計算では、隣接する横断面の断面積を平均し、区間距離を掛ける横断面法が基本になります。しかし、河床は横断面間で一定に変化するとは限りません。砂州、深掘れ、河道湾曲、河幅変化、構造物の影響がある区間では、両端の断面だけから求めた体積と実際の浚渫量に差が生じる可能性があります。
横断面間の変化を補うには、区間を細分化して平均断面法を適用する方法、中間断面を補間する方法、地形変化点へ補助横断面を追加する方法、平面測量や三次元地形データを組み合わせる方法、誤差幅や補正条件を設定する方法があります。
どの方法を選ぶ場合でも、河道中心線、横断面方向、区間距離、測量水位、標高基準、計画河床面を統一することが重要です。また、実測値と補間値を区別し、計算条件を再現できる状態で保存する必要があります。
測量密度を一律に高めるのではなく、地形変化の大きい場所へ重点的に測点や補助断面を配置すると、作業量を抑えながら体積計算の信頼性を高められます。施工前後の比較では、同じ位置、同じ基準、同じ計算範囲を使用し、掘削量と再堆積量を分けて確認することが大切です。
河道浚渫の体積計算を安定して行うためには、現地測量、横断面作成、地形補間、体積集計、成果保存を一つの流れとして管理する必要があります。河岸部の測点、施工境界、補助断面位置、現況写真を座標情報とともに記録したい場合は、LRTK Phoneを活用した現場計測の導入を検討すると、測量成果と現場状況を結び付けやすくなります。