不規則な石材の体積計算に水置換法が向く理由
石材の体積計算では、直方体や円柱のように長さ、幅、高さを測るだけでは求められない場面があります。自然石、割栗石、景観用の石、試験用に採取した岩片などは、表面に凹凸があり、場所によって厚さも異なるためです。代表寸法を測って単純な立体として計算すると、実際の体積との差が大きくなる可能性があります。
このような不規則な形状の体積計算に用いられる方法の一つが水置換法です。石材を水中に沈めたときに増加した水の体積、または容器からあふれた水の量を測ることで、複雑な外形を数式で再現しなくても体積を求められます。小型から中型の試料であれば、特別に複雑な計算を行わずに測定できる点が利点です。
水置換法は、石材の密度を求めるときにも利用できます。石材の質量を測り、水置換法で求めた体積で割れば、単位体積当たりの質量を算出できます。ただし、ここで求められる体積が外形全体の体積なのか、吸水可能な空隙を除いた体積なのかは、石材の性質や測定方法によって変わります。
そのため、水置換法は石を水に入れて目盛りを読むだけの方法ではありません。吸水性、空隙、気泡、付着水、容器の精度、水温、測定時間などを管理しなければ、同じ石材を測っても結果がそろわないことがあります。特に実務で測定値を数量計算、材料管理、密度評価、試験記録などに使用する場合は、測定の目的と条件を事前に明確にする必要があります。
水置換法による体積計算の基本原理
水置換法では、水中に物体を完全に沈めると、その物体が水中で占めた分だけ水位が上昇するという原理を利用します。目盛り付きの容器を使用する場合は、石材を入れる前の水量と、石材を完全に沈めた後の水量との差が、石材によって置き換えられた水の体積です。
基本となる計算式は、石材の体積=沈めた後の水量-沈める前の水量です。
例えば、石材を入れる前の水量が1,500ミリリットルで、石材を沈めた後の読み取り値が1,820ミリリットルであれば、差は320ミリリットルです。1ミリリットルは1立方センチメートルに相当するため、このときの体積計算結果は320立方センチメートルとなります。
容器に明確な目盛りがない場合や、石材が大きくて目盛り付き容器に入らない場合は、満水にした容器からあふれた水を別の容器で受け取る方法があります。回収した水の体積を測るか、回収した水の質量を測って水の密度で割れば、置換された水の体積を求められます。
水の質量から体積を求める場合の基本式は、置換された水の体積=回収した水の質量÷測定時の水の密度です。
一般的な室温付近では、水1グラムをおおむね1ミリリットルとして簡易計算することがあります。しかし、水の密度は温度によって変化するため、高い精度が必要な測定では水温を記録し、その温度に対応する密度を使用する必要があります。日常的な概算と、試験成績として残す測定では、必要な精度が異なる点を意識することが大切です。
また、水置換法で測れるのは必ずしも石材の見かけ上の外形体積とは限りません。水が入り込む開いた空隙や亀裂があると、その部分は水によって満たされます。その結果、外形から想定される体積よりも小さな値が得られることがあります。体積計算を始める前に、どの種類の体積を求めたいのかを決めておかなければなりません。
注意点1 石材の吸水性と空隙を確認する
水置換法で不規則な石材を測定するとき、最初に確認したいのが吸水性です。石材には、ほとんど水を吸わない緻密なものもあれば、細かな空隙や亀裂を通じて水を吸収しやすいものもあります。吸水性の違いを無視すると、測定時間によって水位が変化し、正確な体積計算が難しくなります。
乾燥した多孔質の石材を水に入れると、表面や内部の開いた空隙に水が入り始めます。石材を沈めた直後に読み取った値と、数分後に読み取った値が異なる場合は、吸水が進行している可能性があります。水が内部へ移動するにつれて容器の水位が下がるため、測定を遅らせるほど見かけの置換量が小さくなることがあります。
さらに、開いた空隙の体積を含めるのか、含めないのかによっても測定方法が変わります。石材が占める外形全体の体積を知りたい場合と、内部へ水が入り込める空隙を除いた実質的な体積を知りたい場合では、同じ水置換法でも前処理を統一しなければ結果を比較できません。
吸水しやすい石材を測る場合は、乾燥状態で測る方法、一定時間だけ浸水させて測る方法、十分に吸水させた後に表面水を除去して測る方法などが考えられます。どの方法を採用するかは、測定目的によって決めます。重要なのは、石材ごとに都合のよい状態で測るのではなく、すべての試料に同じ前処理を適用することです。
吸水後の状態で測る場合は、浸水時間、水温、石材を取り出してから測定するまでの時間、表面水の除去方法をそろえます。布で拭き取る場合も、強く押さえるのか、表面を軽く触れるだけにするのかで、残る水の量が変わります。測定者による差を抑えるため、手順書には具体的な方法を記載しておくと安心です。
乾燥状態を基準にする場合も、外観が乾いているだけでは状態がそろっているとは限りません。石材内部に水分が残っていると、試料ごとに吸水量が変わります。比較試験を行うのであれば、乾燥方法や保管時間を統一する必要があります。
表面に目立つ亀裂がある石材では、亀裂内に空気が残ることもあります。空気が残れば体積を大きく見積もり、水が徐々に入れば測定値が時間とともに変化します。吸水と気泡が同時に起こる石材では、一度の測定だけで結果を判断せず、複数回の測定や別方式との照合を検討したほうがよいでしょう。
注意点2 気泡を残さず石材全体を沈める
水置換法による体積計算では、石材の表面やくぼみに付着した気泡が誤差の原因になります。石材に付着した気泡も水を押しのけるため、気泡を含んだまま水位を読むと、石材単体の体積より大きな値が得られます。
不規則な石材は平滑な試料よりも気泡が残りやすい傾向があります。下面のくぼみ、深い凹部、割れ目、層状の部分などに空気が閉じ込められやすいためです。石材を勢いよく水へ入れると、大きな気泡だけでなく細かな気泡も多数付着することがあります。
気泡を減らすには、石材を一気に沈めるのではなく、傾けながらゆっくり水中へ入れます。凹部の開口部を上向きにし、内部の空気が抜ける方向を考えて動かすことが重要です。完全に沈めた後は、表面を目視し、気泡が付いていないか確認します。
小さな気泡が残っている場合は、水中で石材を軽く揺らしたり、向きを変えたりして除去します。ただし、容器の底や壁にぶつけると、水がこぼれたり、石材が欠けたりする可能性があります。容器を傷つけないよう、ゆっくり操作してください。
石材を糸や細い支持具でつり下げる方法もあります。この場合、糸や支持具自体も水を置換するため、その体積を無視できるか確認しなければなりません。精度が必要な場合は、石材を付けずに支持具だけを同じ深さまで沈めたときの置換量を測り、測定結果から差し引きます。
石材が浮く場合は、押さえ具や重りが必要です。軽量で多孔質な材料や内部に大きな空洞がある試料では、水面に浮くことがあります。押さえ具を使用するときも、押さえ具が水中で占める体積を別に測り、補正しなければなりません。
また、石材の一部が水面から出ている状態では、体積計算は成立しません。石材全体が完全に水中へ入っていることを確認します。水面ぎりぎりに沈めると、わずかな振動や水面の揺れで一部が露出する可能性があるため、ある程度の深さまで沈めるほうが安定します。
ただし、容器の底に直接置く方法では、石材と底面の間に空気が残る場合があります。底に接触すると、その接触部周辺の気泡も確認しにくくなります。可能であれば、水中でつり下げるか、体積を把握した細い支持部材を使用すると測定しやすくなります。
注意点3 容器の容量と目盛りの読み取り誤差を抑える
水置換法の精度は、使用する容器の選び方に大きく左右されます。石材に対して容器が大きすぎると、水位の変化が小さくなり、目盛りを正確に読み取りにくくなります。反対に、容器が小さすぎると、石材を入れたときに水がこぼれたり、石材が容器の壁に接触したりします。
目盛り付き容器を使う場合は、予想される石材の体積に合った容量と目盛り間隔を選びます。例えば、数十立方センチメートル程度の石材を、数リットル単位の粗い目盛りしかない容器で測っても、十分な分解能は得られません。読み取りたい体積に対して、目盛りの最小単位が十分に細かいかを確認してください。
水面の読み取りでは、視線の高さも重要です。上から見下ろしたり、下から見上げたりすると、視差による読み間違いが起こります。容器を水平で安定した台に置き、目の高さを水面とそろえて読み取ります。
細い目盛り付き容器では、水面が平らにならず、中央部がわずかに低く見えることがあります。読み取る位置を毎回変えると測定値がそろわないため、水面のどの部分を基準にするかを決めます。一般には水面の湾曲した部分の下側を基準とすることが多いものの、使用する容器の説明や社内手順に従い、統一した読み方を採用することが大切です。
容器自体が傾いている場合も、水面と目盛りの関係が変わります。作業台の水平を確認し、必要に応じて水平器などで調整します。柔らかい台、振動する台、沈み込みのある台は避けます。
容器の目盛りをそのまま正しいと仮定せず、必要な精度に応じて確認することも重要です。一定量の水を質量で確認しながら入れ、容器の表示値との差を調べれば、目盛りの傾向を把握できます。簡易測定では市販容器の目盛りを利用できますが、試験結果や検査記録として扱う場合は、測定器としての適性を確認したほうが安全です。
石材が容器の壁や底へ接触しても、完全に水中へ入っていれば原理上の置換量が直ちに変わるとは限りません。しかし、接触部分に気泡が残りやすくなり、石材を動かしたときに水が飛び散る可能性があります。容器の内寸には余裕を持たせ、石材の周囲に水が流れる空間を確保します。
大型の石材を測る場合は、目盛り付き容器よりも、あふれた水を回収する容器のほうが扱いやすいことがあります。その際は、排水口の高さ、容器の水平、満水状態の再現性が精度を左右します。水面が安定してから石材を入れ、あふれ出す水が止まるまで待って回収してください。
注意点4 付着水やこぼれた水を適切に管理する
水置換法では、容器の外へ出た水と石材に付着した水の扱いが測定結果に影響します。特に、あふれた水を回収する方法では、置換された水を一滴残らず集められるかどうかが重要です。
石材を水へ入れるときに水が跳ねると、排水口以外から容器外へ出ることがあります。その水を回収できなければ、置換された水の量を少なく測ってしまいます。石材は低い位置からゆっくり沈め、飛散を抑える必要があります。
あふれた水を受ける容器は、排水口から流れる水が確実に入る位置へ置きます。排水口の先端や容器の外壁に水滴が残っていると、その分だけ回収量が減ります。水滴が流れ終わるまで待つ時間を決め、すべての測定で同じ条件を適用します。
石材を取り出すときにも注意が必要です。石材の表面には水が付着しているため、取り出した水が測定容器へ戻るか、外へ持ち出されるかによって、次の測定の初期水量が変わります。複数の石材を連続して測る場合は、毎回水量を初期状態へ戻してください。
目盛り付き容器で初期水量と最終水量の差を読む方法では、石材を沈める前後の間に水をこぼさないことが基本です。石材を保持する手や支持具から水滴が落ちる場合もあります。濡れた手袋や器具を容器内へ入れると、それらに付着していた水が追加され、最終水量が大きくなる可能性があります。
反対に、乾いた吸水性のある支持具を水中へ入れると、水を吸収して水位を下げることがあります。使用する糸、網、布、押さえ具などは吸水しにくい材質とし、測定前に同じ状態へ整えます。
付着水の影響は、石材の質量を同時に測る場合にも現れます。水置換法の後に濡れた石材をそのまま計量すると、表面に残った水の質量が加わります。密度を計算する場合、乾燥質量、表面乾燥状態の質量、湿潤質量を混同しないようにしてください。
石材の体積計算だけを目的とする場合でも、測定前後の石材状態を記録しておくと、異常値の原因を追いやすくなります。表面が乾いた状態、浸水後、表面水を除去した状態など、使用した条件を記録欄に残します。
あふれた水の質量を測る場合は、受け容器の質量を事前に測り、水を回収した後の総質量から差し引きます。受け容器の外側が濡れていると、その水滴も質量に含まれるため、外面を一定の方法で拭き取ります。回収した水を別容器へ移し替えると移送損失が生じやすいので、可能であれば回収した容器のまま計量すると誤差を抑えられます。
注意点5 水温や測定時間などの条件をそろえる
体積計算の精度を高めるには、水温や測定時間などの環境条件をそろえる必要があります。水は温度によって密度が変わるため、質量から体積へ換算する方法では水温の影響を受けます。
概算であれば、水1グラムを約1立方センチメートルとして扱っても、目的によっては十分な場合があります。しかし、複数の試料を比較する試験や、小さな差を評価する測定では、温度による密度差を無視できないことがあります。測定時の水温を記録し、必要に応じてその温度に対応する水の密度を用います。
目盛り付き容器で直接体積を読む場合も、容器と水の温度が大きく変われば、わずかな膨張や収縮が生じます。通常の現場測定では影響が小さいこともありますが、高い再現性を求めるなら、試料、水、容器を同じ室内に置き、温度をなじませてから測定します。
測定時間の統一は、吸水性のある石材で特に重要です。石材を水へ入れた直後に読むのか、気泡を除去してから30秒後に読むのか、一定時間浸水させてから読むのかによって結果が変わります。手順書には、石材を完全に沈めてから読み取るまでの時間を定めておくとよいでしょう。
水面が揺れている状態で目盛りを読むと、読み取り値が安定しません。石材を沈めた後は、水面の振動が収まるまで待ちます。ただし、吸水性の高い石材では、長く待つほど水位が変化する可能性があります。そのため、単に水面が止まるまで待つのではなく、標準的な待ち時間を設定します。
水中に石材を入れる速度もそろえます。急速に沈めると気泡が付きやすく、水が飛び散りやすくなります。ゆっくり入れすぎると、完全に沈める前から吸水が進む可能性があります。すべての試料で同程度の操作時間となるよう、担当者間で手順を共有してください。
使用する水の状態にも注意します。濁りが強い水では気泡や水面を確認しにくくなります。水中に細かな異物が多いと、石材表面へ付着したり、容器の目盛りを読みにくくしたりします。測定には清浄な水を使用し、複数試料の測定で水が汚れた場合は交換します。
試料に泥、砂、粉じんなどが付着している場合は、それらが水中へ落ちることで水量や回収水の質量へ影響する可能性があります。測定目的に応じて表面を清掃し、乾燥または吸水状態をそろえてから測定します。ただし、清掃中に石材の脆い部分を欠落させると体積そのものが変わるため、強くこすりすぎないようにします。
不規則な石材を測定する実務手順
実務で水置換法を行う場合は、測定前の準備から結果の記録までを一つの手順として管理します。担当者ごとに操作方法が変わると、体積計算の結果を比較しにくくなるためです。
最初に、測定目的を確認します。必要なのが概算体積なのか、密度計算に使用する体積なのか、外形全体の体積なのかによって、石材の前処理と必要な精度が変わります。結果を何に使用するかを明確にしてから測定方法を決めます。
次に、石材の状態を確認します。表面の泥や付着物、亀裂、空隙、崩れやすい部分、吸水性の有無を観察します。石材を識別できる試料番号を付け、測定前の状態を写真や記録票に残すと、後から結果を確認しやすくなります。
その後、前処理条件をそろえます。乾燥状態で測る場合は乾燥と保管の条件を統一し、吸水後に測る場合は浸水時間と表面水の処理方法を決めます。試料の質量も使用する場合は、どの状態の質量を測ったのかを明記します。
測定容器は、石材全体が完全に入り、周囲に十分な隙間を確保できるものを選びます。容器を水平で安定した場所へ置き、必要に応じて水温を測ります。目盛り付き容器を使用する場合は、初期水量を目の高さで読み取って記録します。
石材は、気泡が抜ける向きを考えながらゆっくり沈めます。表面やくぼみを観察し、気泡が残っていれば軽く向きを変えて除去します。石材が完全に水中へ入り、容器の水面が安定したら、定めた時間で最終水量を読み取ります。
初期水量と最終水量の差を計算し、石材の体積とします。支持具や押さえ具を使用した場合は、それらの置換量を差し引きます。計算結果には単位を必ず付け、ミリリットル、立方センチメートル、立方メートルなどを混同しないようにします。
あふれた水を回収する方式では、測定容器を規定の水位まで満たし、余分な水が流れ終わるまで待ちます。その後、空の受け容器を設置して石材を沈め、あふれた水を回収します。流出が止まったことを確認してから、回収水の体積または質量を測ります。
測定後は、同じ試料を再度測定します。1回目と2回目の差が大きい場合は、気泡、吸水、こぼれ、読み取り、支持具の位置などを確認します。原因が不明なまま平均値だけを採用すると、誤った結果を残す可能性があります。
水置換法による体積計算の具体例
ここでは、目盛り付き容器を使用した体積計算を考えます。石材を入れる前の水量が2,200ミリリットルで、石材を完全に沈めた後の水量が2,685ミリリットルだったとします。
石材の体積は、2,685ミリリットルから2,200ミリリットルを引いて求めます。計算結果は485ミリリットルです。1ミリリットルは1立方センチメートルであるため、石材の体積は485立方センチメートルとなります。
この石材の乾燥質量が1,260グラムであり、乾燥質量を体積で割って見かけの密度を求める場合は、1,260グラムを485立方センチメートルで割ります。計算結果は約2.60グラム毎立方センチメートルです。
ただし、この値を適切に評価するには、体積測定時の石材状態を確認する必要があります。乾燥状態の石材を水へ入れ、吸水が進む前に体積を読んだのか、十分に吸水させた後に測ったのかによって、体積の意味が変わるためです。
次に、あふれた水の質量から求める例を考えます。石材を沈めたことで回収された水の正味質量が742グラムだったとします。簡易的に水の密度を1グラム毎立方センチメートルとして計算すれば、置換水の体積は742立方センチメートルです。
高い精度が必要で、測定時の水の密度を0.997グラム毎立方センチメートルとして扱う場合は、742グラムを0.997グラム毎立方センチメートルで割ります。計算結果は約744立方センチメートルとなります。
簡易換算との差は小さく見えますが、多数の石材を合計する場合や、密度のわずかな違いを比較する場合には無視できない可能性があります。必要な精度に合わせて計算方法を選ぶことが重要です。
立方センチメートルから立方メートルへ換算するときは、100万で割ります。例えば485立方センチメートルは0.000485立方メートルです。センチメートルとメートルの換算を一方向の長さと同じ感覚で行うと、桁を誤りやすいため注意してください。
逆に、複数の石材の合計体積をリットルで管理する場合は、1,000立方センチメートルが1リットルに相当します。485立方センチメートルの石材が10個あり、すべて同じ体積と仮定すれば、合計は4,850立方センチメートル、すなわち4.85リットルです。
実際の不規則な石材では個体差があるため、代表的な1個だけを測って全数へ掛ける方法には注意が必要です。数量が多い場合は、複数個を抽出して測定し、体積のばらつきを確認します。大きさの異なる石材を一括して平均化すると、計算結果が実態と合わないことがあります。
測定結果の再現性を確認する方法
水置換法の結果を実務で使用するなら、一度測って終わりにせず、再現性を確認することが重要です。同じ石材を同じ条件で測定したときに、近い値が得られるかを確認します。
まず、同じ担当者が同じ試料を複数回測ります。測定ごとに石材を取り出して初期状態へ戻し、容器の水量も調整します。石材を水中へ入れる向き、気泡の除去、読み取り時間をそろえます。
複数回の結果が近ければ、測定方法が安定していると判断しやすくなります。差が大きい場合は、平均値を出す前に原因を調べます。吸水性の高い石材であれば、測定を繰り返すたびに内部の含水状態が変わり、結果が一方向へ変化することがあります。
例えば、1回目が510立方センチメートル、2回目が498立方センチメートル、3回目が489立方センチメートルと徐々に小さくなった場合、単純な読み取り誤差ではなく、吸水の進行が疑われます。この場合は、前処理条件や読み取り時間を見直す必要があります。
一方、測定値が大きくなったり小さくなったり不規則に変化する場合は、気泡、飛散、支持具の深さ、視差などが考えられます。測定中の状況を記録しておくと、異常値の原因を特定しやすくなります。
担当者による差を確認するため、同じ試料を複数の担当者が測る方法も有効です。測定結果に一定の偏りがある場合は、水面の読み方や気泡の除去方法が統一されていない可能性があります。文章だけでは伝わりにくい操作は、実物を使った教育でそろえる必要があります。
測定器や容器の確認も欠かせません。目盛り付き容器、質量計、水温計などが正常に使用できる状態かを定期的に確認します。容器の変形、排水口の詰まり、目盛りの汚れ、質量計の設置不良などは、継続的な偏りにつながります。
許容する測定差は、使用目的に合わせて決めます。概算数量を把握するだけの場合と、品質試験の判定に使用する場合では、必要な再現性が異なります。測定結果だけでなく、測定差が許容範囲内だったかも記録すると、データの信頼性を判断しやすくなります。
水置換法が適さない石材と代替方法
水置換法は便利ですが、すべての石材に適用できるわけではありません。水に触れることで状態が変わる石材、吸水性が非常に高い石材、崩れやすい石材、容器に入らない大型石材などでは、別の方法を検討する必要があります。
表面が水に溶けたり、泥状になったりする試料は、水置換法によって形状や質量が変化します。層状で剥離しやすい石材も、水中で一部が欠ければ正しい体積を測れません。測定後の試料を別の試験に使用する場合は、水に浸すことが後工程へ影響しないか確認します。
非常に多孔質な石材では、水が内部へ入り続けるため、読み取り値が安定しないことがあります。表面を薄い防水性の被膜で覆って測る方法も考えられますが、被膜自体の体積を補正しなければなりません。また、被膜が空隙をどの範囲までふさぐかによって、測定する体積の意味が変わります。
石材が容器へ入らない場合は、三次元形状を測定して体積計算を行う方法があります。複数方向から形状を取得し、石材表面を三次元データとして再現できれば、水を使わずに外形体積を求められます。
ただし、三次元測定でも、底面や陰になる部分を取得できなければ、体積計算に必要な閉じた形状を作れません。石材を回転させて複数回測定する、支持方法を工夫する、取得できない部分を補完するなどの作業が必要です。
大型の石材や現場に固定された岩塊では、周囲の地形と石材の境界をどこに設定するかも重要です。見えている部分だけを測るのか、地中に埋まっている部分を推定するのかによって体積は大きく変わります。水置換法と異なり、三次元測定では境界設定や欠損部分の処理が結果を左右します。
代表寸法から近似する方法もあります。石材を楕円体や直方体に近似し、長軸、短軸、高さなどから体積を計算する方法です。作業は簡単ですが、不規則性が大きいほど誤差も大きくなります。概算には利用できても、精密な数量管理には向かない場合があります。
別の方法を選ぶときは、水置換法より新しいか古いかではなく、対象物の大きさ、石材の性質、求める体積の定義、必要な精度、現場条件を基準に判断します。可能であれば、複数の方法で一部の試料を測り、結果の傾向を比較するとよいでしょう。
体積計算の記録を現場で活用するポイント
不規則な石材の体積計算では、最終的な数値だけを残すのではなく、測定条件と計算過程を一緒に記録することが重要です。条件が分からない数値は、後から再利用したり、別の担当者が検証したりすることが難しくなります。
記録には、試料番号、測定日、担当者、石材の状態、前処理方法、初期水量、最終水量、置換水の量、水温、使用した容器、支持具の有無、補正値、最終体積などを含めます。密度も計算する場合は、質量が乾燥状態なのか、湿潤状態なのか、表面乾燥状態なのかを明記します。
測定中に気泡が多かった、亀裂から気泡が出続けた、表面が崩れた、水が飛散したなどの状況も記録します。一見すると正常な数値でも、測定時の問題が分かれば、結果の採用可否を判断できます。
単位の統一も重要です。測定値をミリリットルで記録し、集計時に立方メートルへ換算する場合は、換算式を明確にします。担当者が個別に換算すると、桁の誤りが発生しやすくなります。記録様式に計算欄を設け、同じ式を使用すると安全です。
複数の石材を扱う場合は、測定値だけでなく外観写真も試料番号と関連付けます。同程度の質量でも形状や空隙の状態が異なることがあるため、数値と外観を照合できるようにしておくと、異常値を確認しやすくなります。
多数の石材の合計体積を推定する場合は、抽出方法も記録します。大きな石だけを選んだのか、無作為に選んだのか、大きさ別に分類して測ったのかで、平均体積の意味が変わります。代表値を全体へ展開するときは、対象数量とばらつきを確認してください。
水置換法の記録を継続して蓄積すれば、石材の種類や大きさごとの体積と質量の傾向を把握できます。将来の概算や搬出入計画、保管量の確認などにも活用できます。ただし、異なる測定条件で得た値を同じ基準として扱わないよう注意が必要です。
まとめ
不規則な石材の体積計算では、単純な長さや幅の測定だけで実際の形状を捉えることが難しいため、水置換法が有効な選択肢となります。石材を水中へ沈め、増加した水量やあふれた水の量を測れば、複雑な形状を数式へ置き換えずに体積を求められます。
ただし、測定を正確に行うには、石材の吸水性と空隙を確認すること、気泡を残さず完全に沈めること、適切な容器を選んで目盛りを正しく読むこと、付着水やこぼれた水を管理すること、水温や測定時間などの条件をそろえることが重要です。
特に多孔質な石材では、測定時の含水状態によって体積計算の結果が変わります。外形全体の体積を求めるのか、水が入る空隙を除いた体積を求めるのかを明確にし、目的に合った前処理を選ぶ必要があります。
同じ石材を複数回測定し、結果の再現性を確認することも欠かせません。値がそろわない場合は、単純に平均するのではなく、吸水、気泡、飛散、読み取り方法などの原因を確認します。測定条件と計算過程を記録しておけば、後から結果を検証しやすくなります。
一方、大型の石材、水に弱い石材、現場から移動できない岩塊などは、水置換法で測定できないことがあります。その場合は、三次元形状を取得して体積計算を行う方法も選択肢です。水を準備できない現場や、石材を容器へ入れられない条件では、LRTK Phoneを使って対象の形状を三次元データとして記録し、体積計算へつなげる方法を検討すると、測定対象の範囲を広げられます。