3Dプリントで材料量を体積計算する前に知っておきたいこと
3Dプリントを行うときは、造形を始める前に必要な材料量を確認しておくことが重要です。材料量を把握しないまま長時間の造形を開始すると、途中で材料が不足し、完成直前で造形が止まる可能性があります。大型部品や複数部品をまとめて造形する場合は、一度の失敗による時間と材料の損失も大きくなるため、体積計算による事前確認が役立ちます。
本記事で扱う計算は、主に熱可塑性の線状材料をノズルから押し出して積層する材料押出方式を想定しています。液状樹脂を光で硬化させる方式、粉末材料を用いる方式、液滴を吐出する方式などでは、材料の供給方法や余剰材の扱いが異なるため、同じ計算式をそのまま適用できません。それらの方式では、装置や造形経路生成ソフトウェアが示す推定量、回収可能な材料と廃棄分、後処理に必要な量を別に確認します。
材料押出方式で使用する材料量は、造形モデル全体の体積に充填率を掛けるだけでは適切に見積もれません。一般的な設定では、造形物の外側に外周壁が形成され、上面と下面には内部を覆うための比較的密な層が作られます。設定した充填率が主に適用されるのは、外周壁と上下層に囲まれた内部です。
たとえば、モデル全体の体積が100立方センチメートルで、設定する充填率が20%でも、必要な材料体積が20立方センチメートルになるとは限りません。外周壁と上下層に35立方センチメートル相当の材料が必要で、残りの内部空間65立方センチメートルに20%を掛ける概算であれば、内部充填は13立方センチメートルです。モデル本体の理論上の材料体積は、35と13を合計した48立方センチメートルになります。
ただし、内部体積に充填率を掛ける式は、構成を理解するための理論的な概算です。実際の造形経路では、充填形状、線幅、外周壁との重なり、狭い隙間を埋める経路、上面を支えるための追加経路などが反映されます。最終的な材料準備量は、造形経路を生成した後に表示される推定重量や推定長さを優先し、手計算の結果と照合する方法が安全です。
さらに、実際の造形では、張り出した形状を支えるサポート材、造形台への付着を助ける部分、造形開始時の試し出し、材料切替時の排出などにも材料を使用します。単一材料で概算する場合の考え方は次のとおりです。
概算必要材料体積=外周壁と上下層の概算体積+内部体積×設定充填率+補助造形物と排出分の体積
材料を重量で管理する場合は、求めた材料体積に密度を掛けます。
概算必要材料重量=概算必要材料体積×材料密度
線状材料を使用する場合は、材料体積を線材の断面積で割ると、必要なおおよその長さを求められます。
概算線材長さ=概算必要材料体積÷線材断面積
これらの式を使うには、体積、密度、長さの単位をそろえる必要があります。立方ミリメートルと立方センチメートルを混在させたり、グラムとキログラムを取り違えたりすると、計算結果が大きくずれます。
手順1 造形モデルの体積と単位を確認する
最初の手順は、造形する3Dモデル全体の幾何学的な体積を確認することです。ここで確認するのは、モデルを囲む直方体の体積ではなく、穴、凹部、切り欠き、曲面、段差などを反映した立体そのものの体積です。
単純な直方体であれば、縦、横、高さを掛けることで体積を求められます。
直方体の体積=縦×横×高さ
円柱の場合は、底面積に高さを掛けます。
円柱の体積=円周率×半径×半径×高さ
実際に造形する部品は、複数の立体が組み合わされていたり、貫通穴や肉抜き部が設けられていたりすることが多いため、手計算だけで体積を求めるのは困難です。通常は、3Dモデルを作成または確認する設計環境の体積確認機能を利用します。
体積を確認する前には、モデルが体積を定義できる閉じた立体になっているかを確かめます。面だけで構成されたデータや、一部に隙間があるデータは、内部と外部を正しく判別できず、体積を計算できないことがあります。
画面上で形状が正常に見えても、面の欠落、重複、向きの不整合、自己交差などが残っている場合があります。体積がゼロになる、予想より極端に大きい、対称形状なのに数値が不自然といった場合は、モデルの構造を確認します。
設計上の空洞にも注意します。外側の面だけで閉じたモデルは、外形の内部全体を一つの立体として扱うことがあります。密閉された空洞を材料のない部分として体積から除外するには、空洞側の境界も適切にモデル化されている必要があります。使用する設計環境が、材料部分の体積をどのように算定しているかを確認します。
複数部品で構成された組立モデルを造形する場合は、それぞれの体積を確認して合計します。同じ部品を複数個造形する場合は、一個当たりの体積に個数を掛けることで、幾何学的な総体積を求められます。
たとえば、一個当たりの体積が45立方センチメートルの部品を8個造形する場合、合計体積は360立方センチメートルです。ただし、この値は各部品を中実として扱った幾何学的な体積であり、設定後の材料体積ではありません。ここから外周壁、上下層、内部充填を分けて概算します。
体積の単位も必ず確認します。3Dモデルの寸法がミリメートルで管理されている場合、体積は立方ミリメートルで表示されることがあります。材料密度が一立方センチメートル当たりのグラム数で示されている場合は、体積を立方センチメートルへ換算します。
1立方センチメートルは1000立方ミリメートルです。
立方センチメートル=立方ミリメートル÷1000
モデル体積が250000立方ミリメートルであれば、250立方センチメートルです。
250000÷1000=250
モデルの読み込み時に単位情報が引き継がれない形式では、寸法が想定より大きくなったり小さくなったりすることがあります。造形経路を生成する前に既知の寸法を一か所以上確認し、モデルの縮尺が正しいことを確かめます。
寸法が各方向に10倍になると、体積は1000倍になります。縦、横、高さのすべてが10倍になるためです。縮尺の間違いは材料量に大きな影響を与えるので、体積の数値だけでなく代表寸法も確認することが重要です。
この手順では、まだ充填率を掛けません。最初にモデル体積、空洞の扱い、単位、縮尺を確定させることで、その後の計算の基準を整えます。
手順2 外周壁と上下層の材料体積を求める
次の手順では、モデル全体のうち、設定充填率にかかわらず比較的密に造形される部分を概算します。主な対象は外周壁、上面、下面です。
材料押出方式では、モデルの輪郭に沿って外周壁が複数周形成されます。充填率を10%や20%に設定しても、外周壁まで同じ割合で間引かれるわけではありません。外周壁は形状を保持し、外観や強度を確保するため、連続した経路として造形されます。
外周壁の見掛けの厚さは、線幅と周回数から大まかに見積もれます。
外周壁の概算厚さ=一周当たりの線幅×外周壁の周回数
一周当たりの線幅が0.45ミリメートルで、外周壁を3周形成する場合、単純計算では1.35ミリメートルです。
0.45×3=1.35
ただし、隣り合う造形線は接着と隙間防止のために重なりを持つことがあり、線の断面も完全な長方形ではありません。狭い部分では線幅や経路数が自動調整される場合もあります。そのため、線幅と周回数の掛け算は初期概算に限り、正確な壁厚や材料体積として断定しないことが大切です。
上面と下面は、モデル内部を覆うために複数の密な層として形成されます。一定の層厚を使用する場合、上下層の厚さは次のように概算できます。
上面の概算厚さ=一層の厚さ×上面の層数
下面の概算厚さ=一層の厚さ×下面の層数
一層の厚さが0.2ミリメートルで、上面と下面をそれぞれ5層とする場合、単純計算上の厚さはそれぞれ1ミリメートルです。
0.2×5=1
可変層厚を使用する場合や、最小厚さの指定が層数より優先される場合は、単純な層数との掛け算だけでは決まりません。実際の上下層厚さは、造形経路生成後のプレビューで確認します。
モデルが単純な直方体で、外周壁と上下層を一定厚さの殻として扱える場合は、外形体積から内部空間の体積を引くことで概算できます。
外形の縦をA、横をB、高さをH、外周壁の仮定厚さをT、下面の仮定厚さをD、上面の仮定厚さをUとすると、内部寸法は次のように考えられます。
内部の縦=A-2T
内部の横=B-2T
内部の高さ=H-D-U
内部体積=内部の縦×内部の横×内部の高さ
外周壁と上下層の概算体積=モデル全体の体積-内部体積
たとえば、縦100ミリメートル、横60ミリメートル、高さ30ミリメートルの直方体を考えます。外周壁の仮定厚さを1.2ミリメートル、上面と下面の仮定厚さをそれぞれ1ミリメートルとします。
内部の縦は97.6ミリメートルです。
100-2×1.2=97.6
内部の横は57.6ミリメートルです。
60-2×1.2=57.6
内部の高さは28ミリメートルです。
30-1-1=28
内部体積は157409.28立方ミリメートルです。
97.6×57.6×28=157409.28
外形体積は180000立方ミリメートルです。
100×60×30=180000
外周壁と上下層を一体の殻として扱った概算体積は22590.72立方ミリメートルです。
180000-157409.28=22590.72
立方センチメートルへ換算すると、約22.6立方センチメートルです。
この方法は、外形と内部が単純な直方体に近い場合の理解用です。突起、リブ、段差、テーパー、複数の穴、複雑な曲面があるモデルでは、一定の壁厚を外形から差し引くだけでは適切に求められません。細い部分では外周壁同士が重なり、内部充填が存在しないことがあります。高さの低い部分では上面と下面の層が重なり、内部の多くが密に造形される場合もあります。
複雑なモデルでは、サポート、造形台付着用部分、試し出し、材料切替時の排出を無効または別集計にしたうえで、内部充填を0%にして造形経路を生成し、その推定量を外周壁と上下層を中心とする基準値として利用する方法があります。ただし、0%でも狭い隙間を埋める経路や上面を支えるための追加経路が生成されることがあり、純粋な外周壁と上下層だけの量とは限りません。
実務では、同じモデルと同じ設定で充填率だけを変え、造形経路生成後の推定値を比較する方が確実です。手計算は材料量の構成を理解するために使い、最終準備量は造形経路に基づく推定値を基準にします。
手順3 内部体積に充填率を掛ける
外周壁と上下層の概算体積を求めたら、モデル全体の体積から差し引き、充填対象となる内部体積を計算します。
内部体積=モデル全体の体積-外周壁と上下層の概算体積
次に、設定する充填率を小数へ変換して内部体積に掛けます。
内部充填の理論体積=内部体積×設定充填率
充填率10%は0.10、20%は0.20、30%は0.30として計算します。
たとえば、モデル全体の体積が150立方センチメートルで、外周壁と上下層の概算体積が45立方センチメートルの場合、内部体積は105立方センチメートルです。
150-45=105
充填率を20%とすると、内部充填の理論体積は21立方センチメートルです。
105×0.20=21
モデル本体の理論材料体積は、45立方センチメートルに21立方センチメートルを加えた66立方センチメートルです。
45+21=66
モデル全体の体積150立方センチメートルに20%を掛けた場合は30立方センチメートルとなり、外周壁と上下層を考慮した66立方センチメートルとは大きな差が生じます。この違いが、外周壁と上下層を分けて考える理由です。
ただし、設定上の充填率と、内部に配置される材料の実体積率が完全に一致するとは限りません。内部充填には、線を交互方向に並べる形状、格子状に交差させる形状、連続した曲面を作る形状、立体的なセルを形成する形状などがあります。
充填線が同一層で交差する形状では、交差部に材料が重なることがあります。外周壁と内部充填の接続部分にも、隙間を防ぐための重なりが設けられる場合があります。反対に、線を交差させない経路や、内部の場所によって密度を変える経路もあります。したがって、同じ設定充填率でも、形状によって推定材料量と造形時間が変わることがあります。
モデルの大きさも影響します。大型モデルでは、内部空間に対して外周壁との接続部分が占める割合が比較的小さくなる傾向があります。一方、小型モデルや細いモデルでは、内部充填の多くが外周壁や狭い隙間の処理に影響されるため、単純計算との差が大きくなることがあります。
充填率0%でも、材料使用量はゼロにはなりません。外周壁、下面、設定されている上面は造形されます。また、広い上面を支える内部構造が少ないと、最初の上面層が垂れたり穴が生じたりする可能性があります。モデル形状や上面層数によっては、充填率0%が適さないことがあります。
充填率100%も、完成品の密度が素材の公称密度と完全に一致することを保証する設定ではありません。造形線の断面、押出量、経路の重なり、微小な空隙などの影響が残る可能性があります。体積計算では中実に近い条件として扱えますが、質量や機械特性が素材のバルク材と同じになるとは限りません。
充填率を決める際は、材料量だけでなく造形物の用途も確認します。外観や寸法確認を目的とする試作品では低い充填率で足りる場合がありますが、荷重を受ける治具、締結部を持つ部品、変形を抑えたい部品では、外周壁、局所的な肉厚、造形方向、材料特性も重要です。
材料量を比較する場合は、モデル、造形方向、外周壁、上下層、充填形状、線幅、層厚、サポート条件をそろえ、充填率だけを変更します。複数条件を同時に変えると、どの変更が材料量へ影響したのか判断しにくくなります。
手順4 サポート材などの追加材料量を加える
モデル本体の理論材料体積を求めた後は、造形を成立させるために必要となる追加材料量を加えます。代表的なものは、サポート材、造形台への付着を助ける部分、造形開始時の試し出し、材料切替時の排出です。
サポート材は、下から十分に支えられていない張り出し部分や、空中から始まる形状を造形する際に使用されます。完成後には除去されるため製品の体積には含まれませんが、材料在庫からは消費されます。
サポート材の量は、モデルの造形方向によって大きく変わります。同じモデルでも、上下を反転したり、側面を下にしたりすることで、必要なサポート材の範囲が変化します。材料量を減らすために充填率を下げる前に、サポート材が少なくなる向きを検討した方が効果的な場合があります。
ただし、サポート材の削減だけで造形方向を決めると、積層方向の強度、表面品質、造形台との接触面積、寸法精度、造形時間に問題が生じる可能性があります。完成品に求める条件を考慮して向きを決めます。
サポート材にも密度や接触面の設定があります。モデルに近い界面だけを比較的密にし、それ以外を低密度にすることがあるため、サポートの外形体積へ一定割合を掛ける手計算では正確な量を求めにくいのが実情です。造形方向と条件が決まった段階で、造形経路生成後の推定量を確認します。
造形台への付着を安定させるため、モデルの周囲や下部に補助部分を作ることもあります。モデルの外側に複数周の線を配置する場合は比較的少量ですが、モデル底面から外側へ広い薄板状の部分を追加する場合や、モデルの下に厚みのある土台を作る場合は材料使用量が増えます。
造形開始時には、材料が安定して押し出されることを確認するため、造形物の外側で試し出しを行う場合があります。一回当たりの量は少なくても、同じ部品を繰り返し造形すると累積します。
異なる色や種類の材料を切り替える造形では、切替時にノズルや供給経路内の材料を置き換えるための排出が発生します。切替回数や排出設定によっては、製品本体以外の消費が大きくなることがあります。
サポート本体、サポート界面、モデル本体、排出塔などに異なる材料を使用する場合は、すべてを一つの体積として合算せず、材料ごとに分けて在庫を確認します。ある材料の余剰が、別の材料の不足を補えるとは限らないためです。
単一材料で造形する場合の概算式は次のとおりです。
造形時の概算必要材料体積=モデル本体の理論材料体積+サポート材体積+付着用部分の体積+試し出しと排出の体積
たとえば、モデル本体の理論材料体積が80立方センチメートル、サポート材が12立方センチメートル、付着用部分が3立方センチメートル、試し出しなどの排出分が2立方センチメートルであれば、合計は97立方センチメートルです。
80+12+3+2=97
実際には、これらの追加量も造形経路生成ソフトウェアが計算した推定値を使用する方が確実です。材料を準備するときは、推定体積を重量または長さへ換算し、在庫測定誤差や使用不能な端部を考慮した余裕を加えます。
手順5 材料体積を重量と長さに換算する
必要な材料体積を求めたら、材料在庫を確認できる単位へ換算します。一般的には、重量または線材の長さへ換算します。
材料体積を重量へ換算するときは、実際に使用する材料の密度を使用します。
材料重量=材料体積×材料密度
体積を立方センチメートル、密度を一立方センチメートル当たりのグラム数で入力すると、重量はグラムで求められます。
必要材料体積が97立方センチメートルで、材料密度を一立方センチメートル当たり1.20グラムと仮定すると、必要重量は116.4グラムです。
97×1.20=116.4
材料の密度は種類によって異なります。同じ材料名で流通していても、着色材、添加材、強化材などの配合によって密度が変わる場合があります。正確な重量を求めるには、実際に使用する材料の仕様で確認した値を使います。
線状材料の長さへ換算する場合は、材料体積を線材の断面積で割ります。線材を円柱とみなすと、断面積は次の式で求められます。
線材断面積=円周率×直径×直径÷4
必要な線材長さ=材料体積÷線材断面積
体積と断面積の単位はそろえる必要があります。線材の直径をミリメートルで計算する場合、断面積は平方ミリメートルになるため、材料体積も立方ミリメートルへ換算します。
97立方センチメートルは97000立方ミリメートルです。
97×1000=97000
線材の直径を1.75ミリメートルとすると、断面積は約2.405平方ミリメートルです。
3.1416×1.75×1.75÷4=約2.405
必要な長さは約40300ミリメートルです。
97000÷2.405=約40300
メートルへ換算すると、約40.3メートルです。
線材の公称直径と実際の直径には差がある場合があります。直径が変わると断面積は直径の二乗に比例して変わるため、同じ長さから得られる体積も変化します。精度を高めたい場合は、使用材料の仕様値を確認し、必要に応じて複数箇所の直径を測定します。
在庫を重量で管理する場合は、巻き芯や容器の重量を差し引きます。
材料残量=材料を含む総重量-空の巻き芯重量
総重量が650グラムで、空の巻き芯が220グラムであれば、材料残量は430グラムです。
650-220=430
空の巻き芯重量が分からないと、材料残量を実際より多く見積もる可能性があります。同じ仕様の空容器を測定して記録するか、材料を使い切った時点で巻き芯重量を記録します。ただし、同じ外観の巻き芯でも個体差や仕様変更があるため、重要な造形では容器ごとの実測値を使う方が安全です。
計算上の必要重量が116.4グラムで、残量が120グラムだった場合、理論上は足りるように見えます。しかし、試し出し、装置内の残留、使用できない終端部、在庫測定誤差、造形経路の推定誤差を考えると、途中で不足する可能性があります。
そのため、実際の準備量には余裕を加えます。
準備重量=推定必要重量×余裕係数
余裕率を10%とする場合、余裕係数は1.10です。
116.4×1.10=128.04
この例では約128グラム以上を準備する考え方になります。ただし、10%は一律の推奨値ではありません。適切な余裕は、過去の推定差、造形時間、材料交換の可否、在庫測定精度、失敗時の影響に基づいて決めます。
充填率別に材料量を比較する計算例
ここでは、同じモデルを異なる充填率で造形したときに、理論上の材料量がどの程度変わるかを計算します。
モデル全体の体積を200立方センチメートル、外周壁と上下層の概算体積を70立方センチメートルとします。充填対象となる内部体積は130立方センチメートルです。
200-70=130
充填率10%の場合、内部充填の理論体積は13立方センチメートルです。
130×0.10=13
モデル本体の理論材料体積は83立方センチメートルです。
70+13=83
充填率20%の場合、内部充填の理論体積は26立方センチメートルです。
130×0.20=26
モデル本体の理論材料体積は96立方センチメートルです。
70+26=96
充填率30%の場合、内部充填の理論体積は39立方センチメートルです。
130×0.30=39
モデル本体の理論材料体積は109立方センチメートルです。
70+39=109
充填率50%の場合、内部充填の理論体積は65立方センチメートルです。
130×0.50=65
モデル本体の理論材料体積は135立方センチメートルです。
70+65=135
この結果から、充填率を10%から20%へ倍にしても、モデル本体の理論材料体積は83立方センチメートルから96立方センチメートルとなり、2倍にはなりません。外周壁と上下層の70立方センチメートルは、充填率を変えても同じという仮定を置いているためです。
充填率を1ポイント変更したときの理論上の材料体積差は、内部体積の1%です。
充填率1ポイント当たりの理論材料体積差=内部体積×0.01
内部体積が130立方センチメートルであれば、1ポイント当たり1.3立方センチメートルです。
130×0.01=1.3
充填率を5ポイント下げれば、理論上は6.5立方センチメートル削減できます。
1.3×5=6.5
ここで「10%から15%へ変更する」ことを、5%増ではなく5ポイント増と表すと誤解を防げます。10%に対する相対的な5%増は10.5%であり、15%とは異なるためです。
実際には充填経路の本数が段階的に変化し、交差、外周壁との接続、隙間処理なども加わるため、設定を1ポイント変更しても推定材料量が完全に比例しない場合があります。最終的な比較は、各充填率で造形経路を生成し、同じ材料と装置設定で表示される推定重量または長さを確認します。
体積計算と実際の材料使用量が一致しない理由
体積計算で求めた材料量は、造形前の見積もりとして有効ですが、実際の消費量と完全には一致しないことがあります。差が生じる原因を理解しておくと、計算値に適切な補正を加えられます。
主な原因の一つは、押出量の設定です。造形装置は、計算された経路、線幅、層厚に合わせて材料を送り出しますが、押出量の補正値が大きければ、同じ経路でも材料消費が増えます。押出量が不足すれば消費量は減りますが、壁の隙間や層同士の接着不足につながる可能性があります。
線幅の違いも影響します。設定した線幅と実際に造形される線幅が一致しなければ、同じ経路長でも材料体積が変わります。材料温度、造形速度、ノズルの状態、材料の供給抵抗なども、安定した押出に影響します。
充填線の交差部分では、複数の線が重なることがあります。外周壁と内部充填の接続部にも重なりが設けられます。狭い隙間を埋める追加経路、傾斜面の殻を支える内部経路、上面直下の密度変化なども、単純な内部体積と充填率の掛け算では表しにくい要素です。
3Dモデルの自動修正も差の原因です。データに面の欠落や重複がある場合、造形経路を作る際に形状が修正されることがあります。修正後の形状が元の設計データと異なれば、設計時に確認した体積と造形時の材料量は一致しません。
サポート材の生成範囲も一定ではありません。張り出し角度の判定、モデルとの距離、接触面の密度、サポートを設置する範囲などによって、材料量が変化します。同じモデルでも造形方向を少し変えるだけで、サポート材が大きく増減することがあります。
材料切替を伴う造形では、供給経路内の材料を置き換えるための排出量が加わります。切替回数が多い場合は、モデルの体積や充填率よりも、排出量の設定が総消費量を左右することがあります。
造形の中断や失敗も考慮しなければなりません。造形台から剥がれる、層がずれる、材料が詰まる、押出が途切れるなどの問題が起これば、途中までに使用した材料は完成品として利用できません。再造形を行えば、案件全体の材料使用量は当初の計算を超えます。
材料の吸湿、汚れ、劣化などによって造形品質が不安定になることもあります。計算上の在庫量が十分でも、品質上使用できない材料が含まれていれば、実際に使える量は少なくなります。
在庫測定の誤差も見逃せません。巻き芯重量が不明確な場合や、はかりの分解能が粗い場合、材料残量を多く見積もる可能性があります。材料の終端部を装置へ供給できない場合も、重量上の残量と使用可能量が一致しません。
計算値と実績値の差を把握するには、造形前後で材料重量を測定します。
実測使用量=造形前の材料重量-造形後の材料重量
推定値との差は、次の式で確認できます。
差異率=(実測使用量-推定使用量)÷推定使用量×100
推定使用量が100グラムで、実測使用量が106グラムであれば、差異率は6%です。
(106-100)÷100×100=6
同じ装置、同じ材料、同じ造形条件で複数回測定し、差異率が継続して同じ傾向を示す場合は、補正係数として利用できます。
補正後の必要量=造形経路の推定量×実績補正係数
推定量より平均して6%多く消費する場合は、実績補正係数を1.06とする考え方があります。ただし、材料、色、線径、装置、ノズル、設定を変更した場合は、同じ係数が適用できるか再確認します。
材料不足を防ぐための余裕率の決め方
材料量を計算するときは、理論上または造形経路上の推定量だけではなく、一定の余裕を加えます。余裕は、推定誤差、在庫測定誤差、装置内の残留、使用できない終端部などを吸収し、造形途中の材料切れを防ぐために確保します。
余裕を加えた準備量は、次の式で求めます。
準備量=推定必要量×余裕係数
余裕率5%の場合は1.05、10%の場合は1.10を掛けます。
推定必要重量が250グラムで、余裕率を8%とする場合、準備量は270グラムです。
250×1.08=270
ただし、5%、8%、10%といった数値は例であり、すべての造形に共通する基準ではありません。適切な余裕率は、過去の推定差と実測差、造形時間、途中交換の可否、在庫測定精度、材料切替回数、失敗時の影響に基づいて決めます。
短時間で終了する小型の試作品で、材料交換も容易な場合は、比較的小さな余裕で対応できることがあります。一方、大型造形、無人時間を含む長時間造形、納期が厳しい部品、失敗すると大きな損失が出る部品では、より大きな余裕を確保する判断があります。
材料切替が多い造形では、モデル本体に対する一定割合だけで余裕を決めない方が安全です。切替回数と一回当たりの排出量が分かる場合は、排出分を先に個別加算し、そのうえで残る不確かさに余裕を設けます。
在庫量の測定精度も余裕率に影響します。巻き芯重量が正確に分からない場合や、はかりの誤差が大きい場合は、その不確かさを吸収できる余裕が必要です。
過去の造形実績がある場合は、推定量と実測量の差を基準にします。たとえば、同一条件に近い過去10回で、実測使用量が推定値より平均4%多く、最大で7%多かった場合は、最大差に測定誤差や終端部の使用不能量を加味して余裕を決めます。単純に平均だけを採用すると、ばらつきの大きい造形で不足する可能性があります。
余裕率を増やしても、設定上の材料消費が自動的に増えるわけではありません。余裕率は、造形前に使用可能な在庫として確保しておく量の基準です。造形後に残った材料は、保管状態と品質に問題がなければ次の造形に使用できます。
充填率だけで材料量を調整しない方がよい理由
材料使用量を減らしたいとき、最初に充填率を下げる方法を考えがちです。しかし、材料押出方式の材料量と造形品質は、充填率だけで決まりません。
外周壁の厚さは、材料量と強度の両方に大きく影響します。荷重が表面付近に集中する形状では、内部充填を増やすより、外周壁を適切に増やした方が強度向上につながる場合があります。ただし、効果は形状、荷重方向、材料、造形方向によって変わるため、用途に応じた試験が必要です。
変形を抑える必要がある大型の薄い部品では、内部充填が形状保持に役立つことがあります。充填率を下げすぎると、外周壁が十分でも面がたわみやすくなる可能性があります。
上面の品質にも充填率が影響します。内部充填は上面を下から支える役割を持つため、充填率が低いと支点の間隔が広がり、最初の上面層が垂れたり、穴が残ったりすることがあります。
この問題を補うために上面の層数を増やすと、充填率を下げて削減した材料の一部が相殺されます。充填率だけを見て材料削減効果を判断せず、上下層を含む最終推定量で比較します。
造形方向を変更することで、サポート材を減らせる場合もあります。ただし、造形方向を変えると積層方向、表面状態、寸法精度、造形台への付着性も変化します。材料量だけで決定するのではなく、完成品に必要な性能を優先します。
設計そのものを見直す方法もあります。不要な厚肉部分を減らし、必要な場所へリブや局所的な肉厚を配置すれば、全体の充填率を上げるより効率よく剛性を確保できる場合があります。
荷重を受けない外観確認用の試作品であれば、内部を大きく空洞化し、必要な外周壁だけを残す方法も考えられます。一方、ねじを締める部分、軸を差し込む部分、衝撃を受ける部分などは、局所的に材料を増やす必要があります。
材料量を調整するときは、充填率、外周壁、上下層、造形方向、サポート材、設計形状を組み合わせて検討します。変更後は試験片、小型モデル、または一部分の試験造形を行い、強度、寸法、表面品質を確認してから本造形へ進むことが安全です。
複数部品と大型造形の材料量を見積もる方法
同じ部品を複数個造形する場合、モデル本体については一個当たりの推定材料量に個数を掛けることで初期見積もりを作れます。
複数個のモデル本体材料量=一個当たりのモデル本体材料量×個数
一個当たり45グラムの部品を12個造形する場合、モデル本体には540グラム必要です。
45×12=540
ただし、サポート材、付着用部分、試し出し、材料切替時の排出は、個数と完全には比例しないことがあります。複数部品を同時に配置すると、付着用部分が一体化される場合があります。反対に、部品ごとに独立した補助部分が作られれば、個数に近い割合で増えます。
同時造形では、一回の試し出しで複数部品を製作できるため、個別造形より補助消費を抑えられる場合があります。一方、一つの部品が剥がれてほかの部品に接触すると、造形全体が失敗する可能性があります。材料量だけでなく、失敗時の損失も考えて一度に造形する個数を決めます。
大型造形では、モデルを分割する方法もあります。分割すれば一回当たりの必要材料量を減らせるほか、各部品をサポート材が少ない向きで造形できる場合があります。
しかし、分割面には接合構造が必要です。差し込み部、位置決め部、接着面などを追加すると、元の一体形状より体積が増える可能性があります。接合後の強度や寸法精度も確認しなければなりません。
大型モデルは、形状によっては外周壁の割合が相対的に小さく、内部体積の割合が大きくなります。その場合、充填率の変更が材料量へ与える影響も大きくなります。
たとえば、外周壁と上下層の概算体積が100立方センチメートル、内部体積が900立方センチメートルのモデルでは、充填率を20%から15%へ5ポイント下げると、理論上45立方センチメートルの材料を削減できます。
900×(0.20-0.15)=45
同じ5ポイントの変更でも、内部体積が100立方センチメートルのモデルでは、理論削減量は5立方センチメートルです。
100×(0.20-0.15)=5
大型造形では、充填率のわずかな変更が材料量と造形時間に大きく影響する場合があります。ただし、変形や上面不良が起きる範囲も広くなり得るため、試験造形や構造確認が重要です。
造形期間が長い場合は、材料残量だけでなく、装置の安定性、電源、材料の供給抵抗、周囲温度、材料の保管状態なども確認します。体積計算で材料が十分でも、途中で供給が止まれば造形は完了しません。
体積計算の結果を材料管理に活用する方法
体積計算は、一回の造形に必要な材料量を求めるだけでなく、材料在庫や製作計画の管理にも活用できます。
造形前に、モデル名、版番号、モデル体積、材料、充填率、充填形状、外周壁、上下層、造形方向、サポート条件、推定重量を記録します。設計変更が行われた場合は、古い版の材料量と混同しないように管理します。
造形後には、実測使用量、造形時間、完成個数、失敗の有無を記録します。推定量と実測量の差を蓄積することで、次回以降の見積もり精度を高められます。
同じ形状を定期的に造形する場合は、条件が同じであることを確認したうえで実績値を基準にできます。ただし、充填率、充填形状、外周壁、材料、造形方向、装置設定などを変更した場合は、過去の実績をそのまま使わず再計算します。
材料在庫は、種類、色、密度、線径、残量、開封日、保管状態を記録します。材料を案件へ割り当てる際は、余裕を含む必要量を在庫から引き当てます。
たとえば、使用可能な残量が800グラムあり、案件Aで余裕を含め500グラム、案件Bで400グラム必要な場合、合計900グラムとなるため不足します。案件Aを開始した後に案件Bの不足へ気付くのではなく、事前の引き当てで確認します。
材料を重量で管理するときは、巻き芯重量の違いに注意します。同じ外観でも巻き芯重量が異なる場合があるため、可能であれば容器単位で空重量を登録します。
開封後の材料は、保管状態によって使用可能性が変わります。残量が多くても、吸湿や汚れによって安定した造形ができなければ、在庫としてそのまま評価できません。重量だけでなく、乾燥履歴や保管状態も記録します。
体積計算の結果は、造形条件の比較にも使えます。充填率を変えた場合、造形方向を変えた場合、サポート条件を変えた場合の推定材料量を記録し、強度、寸法、表面品質、失敗率と合わせて評価します。
材料量が最も少ない条件が、必ずしも最適とは限りません。材料を少し増やすことで造形失敗が減るのであれば、案件全体では材料と時間の損失を抑えられることがあります。
3D計測データから造形モデルを作るときの注意点
既存の部品や現場にある対象物を3Dプリントで再現する場合は、対象物の形状を測定し、造形可能な3Dモデルへ変換します。このときも、体積計算の基準となるデータの品質が重要です。
小型で単純な部品であれば、長さ、幅、厚さ、穴径などを測り、設計環境でモデルを作成できます。大型部品、曲面の多い対象物、現場に固定された設備などでは、3D計測を利用することで形状を把握しやすくなる場合があります。
ただし、計測で得た点の集まりを、そのまま3Dプリントできるとは限りません。不要な点の除去、欠損部の補完、表面の生成、厚さの設定、穴や隙間の修正などが必要です。
体積を計算するには、表面が閉じた立体になっていなければなりません。計測できなかった裏面や接地面が開いたままでは、正しい体積を求められない場合があります。
計測対象の表面形状と、実際に造形するモデル形状を区別することも重要です。既存部品の表面を計測しても、内部構造や見えない裏側の形状までは分からない場合があります。見えない部分は、図面、追加実測、用途に基づいて補います。
縮尺模型を作る場合は、長さの縮尺と体積の縮尺が異なる点に注意します。長さを2分の1にすると、体積は8分の1になります。
体積の縮尺=長さの縮尺×長さの縮尺×長さの縮尺
長さを10分の1にした模型では、体積は1000分の1です。
0.1×0.1×0.1=0.001
ただし、外周壁の厚さ、ノズル径、線幅、最小造形寸法を同じ割合で縮小できるとは限りません。縮尺模型では、元形状の体積を単純に縮尺換算した値と、実際の造形材料量が一致しないことがあります。
細い柱や薄い板を縮尺どおりにすると、安定して造形できる寸法を下回る可能性があります。その場合は、形状を太くしたり、複数部分を一体化したりする調整が必要です。調整後の最終3Dモデルで体積と造形経路を再計算します。
屋外の構造物や広い現場の対象物を3Dデータ化する場合は、形状だけでなく位置情報も整理しておくと、再計測や設計変更に利用しやすくなります。計測日時、対象位置、基準方向、座標系、使用単位などを記録します。
取得した3Dデータを体積計算や造形へ展開するには、計測から設計までの単位と縮尺を統一することが重要です。ミリメートルで扱う造形モデルへ、メートル単位の計測データを単位変換せず読み込むと、各方向の寸法が1000倍となり、体積は想定から大きく外れます。
現場にある対象物の位置と形状を取得し、3Dデータとして整理する業務では、LRTK Phoneを活用した計測方法も選択肢になります。ただし、取得した点群や3Dデータが自動的に造形可能な閉じた立体になるわけではありません。不要部分の除去、欠損部の補完、表面化、設計上必要な厚さの付与、単位と縮尺の確認を行い、最終モデルの体積と造形経路を確認します。
まとめ
3Dプリントで充填率から材料量を求めるときは、まず計算の適用範囲を確認します。本記事の方法は、線状材料をノズルから押し出して積層する材料押出方式を主な対象としています。液状樹脂や粉末を使う方式では、材料の供給と回収の考え方が異なるため、装置や造形経路生成ソフトウェアの推定方法に従います。
材料押出方式では、モデル全体の体積に充填率をそのまま掛けるのではなく、外周壁と上下層を分け、残る内部体積へ設定充填率を掛けると、材料構成を理解しやすくなります。
内部充填の理論体積=内部体積×設定充填率
ただし、この式は概算です。実際の材料量には、造形線の重なり、充填形状、狭い隙間を埋める経路、傾斜面や上面を支える追加経路などが影響します。最終的な材料量は、造形経路生成後に表示される推定重量や推定長さを優先します。
サポート材、造形台への付着用部分、試し出し、材料切替時の排出も在庫から消費されます。異なる材料を使う場合は、材料ごとに分けて必要量を確認します。
材料体積を重量へ換算するときは、実際に使用する材料の密度を掛けます。
必要材料重量=必要材料体積×材料密度
線材の長さへ換算するときは、線材の断面積で割ります。
必要な線材長さ=必要材料体積÷線材断面積
推定量には、装置内の残留、使用できない終端部、在庫測定誤差、過去の推定差を考慮した余裕を加えます。余裕率は一律に決めず、同じ装置、材料、設定で蓄積した実績をもとに調整します。
また、材料使用量は充填率だけで決まりません。外周壁、上下層、充填形状、造形方向、サポート材、設計形状を合わせて比較します。充填率を下げたことで造形失敗が増えれば、再製作によって結果的に材料使用量が増える可能性があります。
既存物の形状をもとに造形モデルを作成する場合は、元になる3Dデータの精度、単位、縮尺、欠損、閉じた立体としての成立を確認します。LRTK Phoneなどで取得した3Dデータを活用する場合も、計測データをそのまま材料量へ変換せず、造形可能な最終モデルへ整えてから体積と造形経路を確認することが大切です。