地盤沈下が点群による土量計算に与える影響
点群を使った土量計算では、施工前後や計測時期の異なる地表面を比較し、その標高差から切土量、盛土量、残土量、堆積量などを算出します。面的な地形を細かく捉えられるため、従来の限られた測点だけで計算する方法と比べ、複雑な地形や不規則な土砂形状も把握しやすいことが特徴です。
一方で、比較期間中に地盤沈下が発生していると、算出された標高差のすべてを掘削や盛土による変化として扱うことはできません。たとえば施工による掘削を行っていない範囲でも、軟弱地盤の圧密、地下水位の変動、盛土荷重、重機の走行、仮設物の荷重などによって地盤面が低下することがあります。この低下を考慮せずに点群同士を比較すると、実際には沈下しただけの範囲が切土として計上され、掘削量が過大に見える可能性があります。
反対に、盛土施工後に盛土地盤が沈下した場合は、投入した土量に対して完成時の地表面が低くなるため、点群から算出した盛土量が搬入量より少なく見えることがあります。この差は、計測誤差だけでなく、締固め、圧密、材料のなじみ、下層地盤の変形などが複合して発生します。そのため、搬入記録と点群による体積計算が一致しないからといって、どちらかが直ちに誤っているとは限りません。
地盤沈下の影響を補正する際に重要なのは、単純に点群全体を一定量だけ持ち上げることではありません。沈下が現場全体で均一に進むとは限らず、地盤条件、盛土厚、排水状況、荷重分布などによって場所ごとに沈下量が異なるためです。沈下していない場所、沈下している場所、施工によって形状が変化した場所を整理し、どの範囲にどの補正を適用するかを判断する必要があります。
また、標高差が見つかった場合、それが必ず地盤沈下を示すわけでもありません。座標系の不一致、標高基準の違い、基準点の移動、点群の位置合わせ誤差、ノイズ除去条件の違い、植生や水たまりの影響などでも、地盤面が上下したように見えることがあります。地盤沈下を補正する前に、まず計測と処理の条件が正しく統一されているかを確認することが欠かせません。
点群土量計算における地盤沈下補正は、計測値を都合よく調整する作業ではなく、異なる時期の地形を同じ基準で比較するための品質管理です。補正の根拠を明確にし、元の点群、補正方法、補正量、適用範囲、計算結果を記録することで、社内確認や発注者説明にも耐えられる土量成果を作成しやすくなります。
チェック1 比較する点群の座標系と標高基準をそろえる
地盤沈下の影響を検討する前に、最初に確認したいのが座標系と標高基準です。施工前点群と施工後点群が異なる座標系、異なる標高基準、異なる原点で管理されている場合、地盤が実際には沈下していなくても、点群全体に一定の高低差が生じることがあります。
水平位置については、同じ平面座標系を使用しているか、座標軸の向きや単位が一致しているかを確認します。ローカル座標と公共座標を混在させた場合や、座標変換時の設定が異なる場合には、水平位置のずれだけでなく、傾きや回転を含む変形が生じる可能性があります。水平位置がずれた状態で地形差分を計算すると、法面や段差の位置が一致せず、実際には変化していない場所にも大きな切土・盛土差が発生します。
高さについては、楕円体高、標高、現場独自の仮標高など、何を基準に保存した値なのかを明確にします。異なる高さ基準の点群を、そのまま同一画面上で重ねられたとしても、土量比較に使用できるとは限りません。点群ファイルに座標値が記録されていても、その座標値がどの基準に基づくかが不明な場合には、既知点との照合が必要です。
計測時に使用した基準点の標高も確認します。同じ名称の基準点を使用していても、入力値が更新されていたり、仮設基準点が再設置されていたりすると、計測時期ごとに高さの基準が変わっていることがあります。現場で使用した基準点一覧、座標値、標高値、設置日、確認日を記録し、比較対象となるすべての点群が同じ基準に接続されているかを確かめます。
座標系や標高基準の違いによって点群全体が一定量ずれている場合は、地盤沈下補正ではなく、座標補正や標高基準の統一として処理する必要があります。この二つを混同すると、本来は計測基準の誤差であるものを地盤沈下として扱ってしまい、補正後の点群が実際の地形から離れるおそれがあります。
確認方法としては、施工や沈下の影響を受けていない既知点を複数選び、各時期の点群における座標差と標高差を比較します。複数の既知点でほぼ同じ上下差が確認される場合は、点群全体の標高基準がずれている可能性があります。一方、地点によって差が異なる場合は、局所的な沈下、点群の傾き、位置合わせ誤差などを追加で検討します。
点群全体を見た印象だけで判断せず、数値によって水平差と標高差を確認することが大切です。特に、広い造成地や長期間にわたる工事では、計測担当者や使用機器、処理手順が途中で変わることがあります。計測日ごとの管理表を作り、座標系、標高基準、使用基準点、計測方法、処理方法を残しておくと、後から差異の原因を追跡しやすくなります。
チェック2 沈下していない安定点を基準として確保する
地盤沈下量を判断するには、沈下の影響を受けていない基準が必要です。比較対象となる現場全体が沈下する可能性のある地盤上にある場合、点群同士を重ねるだけでは、どの程度沈下したのかを正確に判断できません。点群の位置合わせに使用した場所自体が沈下していれば、沈下が打ち消されて見えたり、別の範囲に変形が移ったように見えたりするためです。
安定点として利用できる候補には、十分に安定した構造物、現場外の既知点、沈下の影響が小さいと判断できる地盤上の基準点などがあります。ただし、コンクリート構造物や舗装面であっても必ず安定しているとは限りません。構造物自体の沈下、傾斜、継ぎ目の変位、車両荷重による変形が生じることもあるため、設置状況や周辺条件を確認する必要があります。
安定点は一つだけでなく、現場の周囲に複数配置することが望ましい考え方です。一点だけを基準にすると、その一点の移動や計測誤差を検出できません。複数点の標高差を比較することで、点群全体の上下移動だけでなく、傾きやねじれの有無も把握しやすくなります。
たとえば、現場の北側と南側にある安定点では標高差がほぼゼロなのに、中央部だけが低下している場合は、局所的な沈下の可能性があります。反対に、すべての安定点で同程度の低下が確認された場合は、点群全体の標高基準がずれていることも疑う必要があります。また、片側の安定点では差が小さく、反対側に向かうほど差が大きくなる場合は、位置合わせの傾きや地盤の不均一な変形が考えられます。
基準点を設置する場合は、工事車両の走行範囲、掘削予定範囲、盛土予定範囲、資材置場、排水経路などを避け、できるだけ長期間維持できる位置を選びます。点の名称だけでなく、現地写真、周囲の状況、設置方法、測定値を記録しておくと、後日の再確認に役立ちます。現場の進行によって基準点を撤去する可能性がある場合は、別の点へ引き継ぐための重複観測期間を設けることも重要です。
点群から安定点を読み取る際は、単独の一点ではなく、その周囲にある一定範囲の面を使って比較する方法も有効です。点群の一点には計測ノイズが含まれるため、狭い範囲の平均高さや代表高さを使うことで、偶然のばらつきの影響を抑えやすくなります。ただし、範囲内に段差、植生、資材、堆積物が含まれると代表値が変わるため、平坦で状態が変化しにくい面を選びます。
現場全体に安定点を確保できない場合は、点群だけで地盤沈下量を確定しようとせず、水準測量、沈下計測、既設構造物の測定記録など、別の情報と組み合わせて判断します。点群は面的な変化の把握に適していますが、絶対的な沈下量を評価するには、安定した外部基準との接続が不可欠です。
チェック3 地盤沈下と掘削・盛土による変化を分離する
地盤沈下補正で最も難しいのは、標高の低下が沈下によるものなのか、掘削によるものなのかを分離することです。点群差分では、どちらも地表面の低下として表れるため、標高差の数値だけでは原因を区別できません。
施工記録との照合は、この分離に欠かせません。計測期間中にどの範囲で掘削、盛土、整地、転圧、重機走行、仮設物設置が行われたかを整理し、点群差分図と重ねて確認します。施工範囲と標高変化範囲が一致している場合は、施工による変化の可能性が高くなります。一方、施工していない周辺部まで連続して低下している場合は、地盤沈下や計測基準のずれを検討する必要があります。
盛土を行った範囲では、投入直後の高さと時間経過後の高さを区別することが重要です。盛土直後は材料が緩い状態にあり、その後の転圧や自重によって体積が減少する場合があります。さらに下層地盤が圧密すると、盛土表面全体が低下します。このとき、表面高さの低下をすべて盛土材の圧縮として扱うと、下層地盤の沈下を見落とします。
掘削範囲でも、掘削底の地盤が軟弱な場合は、重機走行や排水状況によって表面が沈み込むことがあります。点群上では掘削量が増えたように見えますが、設計上の掘削と地盤の変形を分けて考える必要があります。特に泥濘化した地盤や水分量が多い地盤では、表面の凹凸が大きくなり、代表地盤面の設定方法によって土量結果が変わります。
分離のためには、変化量だけでなく変化の形状を見ることが有効です。掘削による変化は、施工境界、法面、掘削底などに比較的明確な形状が現れます。地盤沈下は、施工境界と一致せず、なだらかに広がる場合があります。ただし、沈下が局所的に発生することもあるため、形状だけで断定するのではなく、地盤条件や施工履歴と合わせて評価します。
時間間隔を短くして計測することも有効です。施工前と完成後の二時点だけを比較すると、途中で起きた掘削、盛土、沈下を分離しにくくなります。施工開始前、施工途中、施工直後、一定期間経過後など、複数時点の点群を残すことで、変化の発生時期を絞り込めます。
たとえば、盛土施工直後の点群では設計高に近いものの、数週間後に周辺を含めて低下している場合は、施工後の沈下が疑われます。反対に、盛土施工中から高さが不足している場合は、投入量、締固め、施工管理、計測条件などを確認する必要があります。時系列点群を利用すると、単純な前後比較では見えない変化の過程を把握できます。
点群土量計算の対象範囲を分けることも重要です。施工変化が明確な範囲、沈下が疑われる範囲、安定している範囲を別々に管理し、同じ補正方法を一括適用しないようにします。原因が異なる範囲をまとめて計算すると、補正量の妥当性を説明しにくくなります。
チェック4 沈下量を一律補正せず面的な分布を確認する
地盤沈下が確認された場合でも、現場全体に同じ沈下量を適用するとは限りません。地盤は均質ではなく、軟弱層の厚さ、含水状態、盛土荷重、構造物荷重、地下水、排水条件などによって変形量が異なります。そのため、一地点で測定した沈下量を現場全体へ一律に適用すると、補正しすぎる場所と補正が不足する場所が生じる可能性があります。
面的な沈下分布を確認するには、施工や堆積の影響を受けていない比較可能な地表面を複数地点で抽出します。各地点の標高差を求め、沈下量がどのように変化しているかを確認します。点の数が少ない場合には、無理に細かな補正面を作るのではなく、沈下量を確認できる範囲と確認できない範囲を明確に区分することが大切です。
沈下がほぼ均一であることを複数の安定点や測定記録から確認できる場合は、一定量の標高補正を適用できる可能性があります。ただし、その場合でも、適用範囲、使用した基準点、代表沈下量の算出方法を記録します。単に点群を数値的に上下させただけでは、後から補正の妥当性を検証できません。
沈下量が場所によって異なる場合は、複数地点の沈下量から補正面を作成し、元の点群または比較基準面に反映する方法があります。補正面とは、各地点の沈下量を空間的につないだ面です。点群全体を同じ量だけ移動するのではなく、場所ごとに異なる補正量を与えます。
ただし、補正面の作り方によって結果が変わる点に注意が必要です。確認点の間隔が広いのに複雑な補正面を作ると、実測していない場所の沈下量を過度に推定することになります。地盤条件が急変する場所、構造物周辺、盛土端部、法面付近では、単純な補間が現実の沈下分布を表さない場合があります。
補正面は、測定点の密度と地盤条件に見合った単純さに保つことが重要です。十分な根拠がない細かな凹凸を作るより、現場をいくつかの区域に分け、それぞれに代表的な補正量を設定する方が説明しやすい場合もあります。地盤調査結果や施工履歴から異なる挙動が想定される区域は、あらかじめ分けて評価します。
点群差分を色分けして表示すると、沈下分布の確認に役立ちます。ただし、色分け表示は設定した範囲によって見え方が変わります。小さな差を強調しすぎると計測ノイズまで大きな変化に見え、範囲を広くしすぎると局所的な沈下が見えにくくなります。数値断面、代表地点の標高差、面積ごとの統計値なども併用し、画像上の色だけで判断しないようにします。
また、平均沈下量だけでなく、最大値やばらつきも確認します。平均値が小さくても、一部に大きな局所沈下があれば、土量計算や施工品質に影響します。逆に、局所的な異常値が点群ノイズや一時的な障害物によるものであれば、沈下補正に使用すべきではありません。代表値を計算する前に、地表面以外の点や明らかな異常点を除外する必要があります。
チェック5 点群の取得条件と処理条件を統一する
異なる時期の点群を比較する場合、取得条件と処理条件の違いが地盤沈下のような標高差を生むことがあります。地盤沈下補正を行う前に、計測方法、計測密度、視線方向、計測範囲、地表面抽出、ノイズ除去、メッシュ化などの条件を確認します。
地表面が乾燥している時期と、降雨後で水たまりや泥濘がある時期では、同じ場所を計測しても表面状態が異なります。水面から得られた点、泥の表面、轍の底、植生の上面などを地盤面として採用すると、実際の地盤変形とは異なる標高差が発生します。特に水分を含んだ柔らかい地盤では、作業員や重機の通過によって計測時点の表面が変形することもあります。
草や雑草がある場所では、計測時期による植生量の違いが高さ差として表れます。施工前点群には植生があり、施工後点群では除草されている場合、地盤沈下がなくても施工後の地表面が低く見えます。点群を地盤面として分類する処理を行う場合でも、植生が密集していると地表面の点が十分に取得できないことがあります。
点群密度も土量計算に影響します。一方の点群が高密度で細かな凹凸を保持し、もう一方が低密度で平滑化されている場合、作成される地表面の形状が異なります。特に小さな轍、排水溝、土砂の塊などは、点群密度やメッシュ間隔によって表現されたり消えたりします。比較用の地表面を作成する際は、可能な範囲で同じ解像度や同じ格子間隔を使用します。
ノイズ除去の強さにも注意が必要です。強い平滑化を行うと、局所的な沈下や凹凸が消える可能性があります。反対に、ノイズを残しすぎると、地盤面の上下差がばらつき、土量が過大に算出されることがあります。施工前後で同じ処理設定を使うだけでなく、処理後の地表面が実際の地形を適切に表しているかを断面や現地記録で確認します。
計測方向や死角の違いも比較結果に影響します。施工前点群では法面下部が取得できているものの、施工後点群では資材や重機によって隠れている場合、欠損部を補間した面が実際とは異なる形状になることがあります。点群が存在しない範囲を自動的に面で埋めると、見た目には連続した地表面になりますが、その形状は実測値ではありません。
計測範囲の境界付近では、補間面が不安定になりやすいため、土量計算範囲を点群が十分に重なっている部分に限定します。施工前点群にしか存在しない範囲や、施工後点群にしか存在しない範囲を比較対象に含めると、境界部に大きな土量差が生じる場合があります。
取得時刻や現場稼働状況もそろえることが望まれます。土砂の搬入、搬出、重機作業が続いている時間帯に点群を取得すると、計測中に対象形状が変化する可能性があります。広い現場を移動しながら計測する場合、計測開始地点と終了地点で地形の時点が異なることも考えられます。土量計算の基準時刻を明確にし、可能であれば作業を一時停止できる時間帯に取得します。
LRTK Phoneのように現場で点群と位置情報を取得できる仕組みを利用する場合も、計測ごとの条件を記録することが重要です。端末を使用すれば自動的に同一条件になるわけではありません。計測経路、計測距離、対象までの距離、周囲の遮蔽、基準点の確認状況などをそろえることで、時系列比較に利用しやすい点群を作成できます。
チェック6 補正前後の土量と根拠を記録する
地盤沈下補正を行った土量成果では、最終的な体積だけでなく、どのような理由でどの補正を行ったのかを残すことが重要です。補正済みの数値だけを保存すると、後から元の状態を確認できず、土量差が生じた原因を説明できなくなります。
最初に、補正を行っていない点群同士による土量を保存します。これを補正前土量として管理し、その後に座標補正、標高補正、沈下補正などを段階的に適用します。各段階の結果を残すことで、どの処理が土量にどの程度影響したかを確認できます。
元の点群データは上書きせず、取得時の状態で保管します。補正後の点群や地表面には、計測日、補正内容、版番号などを含めた名称を付けます。施工前、施工途中、施工後、沈下補正後などの区分が曖昧だと、誤った組み合わせで再計算する危険があります。
記録には、補正対象範囲、使用した基準点、各基準点の標高差、代表沈下量、補正面の作成方法、補正を行った理由を含めます。沈下量を別の計測結果から取得した場合は、その計測日と点群計測日の関係も整理します。計測日が大きく異なる場合、その間にも沈下が進行している可能性があるためです。
土量計算の境界線と基準面も保存します。同じ点群を使用しても、計算範囲や基準面が異なれば結果は変わります。地盤沈下補正だけを記録しても、土量計算条件が残っていなければ再現性は確保できません。使用した地表面の種類、格子間隔、欠損部の扱い、切土と盛土の判定方法なども整理します。
補正前後の差が大きい場合は、数値だけでなく断面や代表地点の標高差を確認します。補正によって施工していない安定範囲の差が小さくなっているか、施工範囲の形状が不自然に変形していないかを確認します。補正後の結果が期待した数値に近づいたとしても、地形として不自然であれば補正方法を見直す必要があります。
また、補正による影響量を明示すると、関係者が結果を理解しやすくなります。たとえば、未補正の土量、沈下補正による増減量、最終採用土量を分けて示すことで、沈下を考慮した場合と考慮しない場合の差を説明できます。ただし、数値の差だけで補正の正当性が決まるわけではなく、使用した根拠と適用範囲が重要です。
発注者や工事関係者との協議が必要な案件では、補正を行う前に計算方針を共有することが望まれます。完成後に初めて補正方法を説明すると、都合のよい数値調整と受け取られる可能性があります。どの計測値を基準とし、どの範囲を沈下として扱い、どの方法で土量へ反映するかを事前に整理しておくと、成果の透明性を高められます。
地盤沈下を考慮した点群土量計算の実務手順
実務では、最初から沈下量を決めて点群へ補正を加えるのではなく、原因を段階的に切り分けることが重要です。まず、比較する点群の計測日、座標系、標高基準、使用基準点、計測方法を整理します。ここで条件の違いが見つかった場合は、地盤沈下の検討より先に基準を統一します。
次に、施工範囲外や現場周辺から、比較可能な安定点を複数選定します。各点について施工前後の水平差と標高差を確認し、点群全体の移動、回転、傾きの有無を調べます。安定点の差が一定であれば基準のずれを、場所によって異なる場合は不均一な変形や位置合わせ誤差を疑います。
その後、点群差分を作成し、標高変化の分布を確認します。施工記録、現場写真、日報、搬入出記録、地盤計測記録などと照合し、施工による変化と沈下が疑われる変化を区分します。施工範囲外に現れた連続的な低下は重要な確認対象ですが、それだけで沈下と断定せず、植生や表面状態の違いも確認します。
沈下補正が必要と判断した場合は、使用できる実測値の数と配置に応じて方法を選びます。複数地点でほぼ同じ沈下量が確認される場合は、一定量の補正を検討できます。場所ごとに異なる場合は、区域別補正または面的な補正を検討します。実測点が不足している範囲は、推定値であることを明確にします。
補正後は、安定範囲の差が適切に小さくなっているかを確認します。さらに、施工範囲の断面形状、法面位置、掘削底、盛土天端などが現場状況と整合しているかを確認します。補正によって土量の数値だけが改善しても、地表面に不自然な折れや傾斜が生じていれば採用できません。
最後に、補正前後の土量を計算し、補正による影響量を比較します。計算範囲、基準面、格子間隔、欠損部処理などは同じ条件に固定します。条件を途中で変えると、沈下補正による差と計算設定による差を区別できなくなります。
この一連の手順を標準化すると、担当者が変わっても同じ考え方で点群を処理しやすくなります。計測時のチェックシート、基準点一覧、処理条件表、補正記録、土量計算結果を一つの案件単位で管理することが有効です。
地盤沈下補正で避けたい代表的な誤り
代表的な誤りは、点群全体に見つかった標高差を、そのまま地盤沈下量と判断することです。標高差は、座標基準の違い、位置合わせ誤差、地表面抽出条件の違いでも発生します。沈下補正を行う前に、安定点を使って計測基準を確認する必要があります。
一地点の沈下量を現場全体へ適用することにも注意が必要です。地盤条件や荷重条件が異なれば、沈下量も変わります。特に広い造成地、盛土厚が変化する現場、構造物と土工部が混在する現場では、一律補正が適さない場合があります。
施工範囲を基準に点群を位置合わせする方法も、状況によっては問題になります。施工によって形状が変わった場所を基準にすると、本来の変化が小さくなるように点群が変形され、別の場所へ差が移る可能性があります。位置合わせには、施工や沈下の影響が小さい安定範囲を使用します。
補正後の点群だけを残し、元データを削除することも避ける必要があります。補正方法に疑問が生じた際、元の点群がなければ再検証できません。元データ、処理済みデータ、補正済みデータを区別して保管します。
土量が搬入記録や設計数量に近づくように補正量を決めることも適切ではありません。補正量は、安定点、沈下計測、時系列変化などの根拠から決める必要があります。期待値に合わせることを目的にすると、実際の地形変化を反映しない成果になるおそれがあります。
また、点群の表示画像だけで沈下を判断することも危険です。視点、色分け範囲、陰影、拡大率によって印象が変わるため、代表地点の標高差、断面、面積別の統計などを確認します。見た目と数値の両方で検証することが重要です。
点群計測を継続的な地盤管理に活用する
地盤沈下の補正精度を高めるには、完成時に一度だけ計測するのではなく、施工の節目ごとに点群を取得することが有効です。計測回数を増やすと、沈下の発生時期と施工工程の関係を確認しやすくなります。
施工前点群は、土量計算の基準になるだけでなく、着工前の地盤状態を保存する記録でもあります。工事開始後に地盤変形が見つかった場合、施工前点群がなければ、元の地形を推定する必要があります。対象範囲だけでなく、周辺の安定点や構造物も含めて取得しておくと、後の位置合わせや沈下判断に利用できます。
盛土施工では、各層の施工後や主要な施工段階で計測すると、完成後の表面だけでは分からない変化を追跡できます。施工途中の点群を残すことで、どの時点から沈下が進んだか、盛土範囲と周辺地盤で変化が異なるかを確認しやすくなります。
計測間隔は、地盤条件、施工速度、必要な管理精度に応じて決めます。毎回異なる範囲や異なる手順で計測すると比較が難しくなるため、計測経路、基準点確認、データ処理、保存名称などを標準化します。同じ位置から現場写真も残すと、植生、水たまり、資材、重機など、点群差分の原因を確認しやすくなります。
時系列点群を蓄積すると、土量計算だけでなく、法面の変形、盛土天端の沈下、排水による侵食、仮設道路の轍、資材置場の変化なども把握できます。ただし、すべての変化を自動的に異常と判断するのではなく、施工工程や現場利用状況と照合することが必要です。
現場で継続的に点群を取得する場合は、操作の簡便さだけでなく、同じ基準で繰り返し計測できることが重要です。LRTK Phoneを活用して計測日ごとの点群と位置情報を記録し、基準点確認や計測範囲の管理を習慣化することで、地盤沈下を含む時系列変化を追跡しやすくなります。
まとめ
点群による土量計算で地盤沈下の影響を補正するには、標高差を見つけて一律に数値を調整するのではなく、その差が発生した原因を順番に確認する必要があります。
最初に座標系と標高基準をそろえ、沈下の影響を受けていない安定点を複数確保します。次に、施工記録や時系列点群を使って、掘削・盛土による変化と地盤沈下を分離します。沈下量が場所によって異なる場合は、現場全体への一律補正を避け、実測値に基づいて区域別または面的に補正します。
計測密度、地表面抽出、ノイズ除去、欠損部処理などの条件も統一しなければなりません。条件の違いによる標高差を地盤沈下として扱うと、補正によってかえって土量精度が低下します。補正後は、安定範囲の標高差、施工範囲の断面形状、補正前後の土量を確認し、結果が現場状況と整合しているかを検証します。
さらに、元の点群、補正後の点群、使用した基準点、補正量、適用範囲、土量計算条件を残すことで、成果の再現性と説明性を確保できます。地盤沈下補正は数値を合わせるための処理ではなく、異なる時期の地形を同じ基準で比較するための管理作業です。
施工前から同じ方法で点群を継続取得しておけば、完成後に沈下量を推定するだけの場合よりも、変化の発生時期と範囲を判断しやすくなります。点群計測と土量計算を日常的な施工管理へ取り入れる際は、現場での取得から時系列比較までを一貫して行えるLRTK Phoneの活用も検討するとよいでしょう。