地下掘削の点群土量計算で死角が生じやすい理由
点群を使った土量計算は、掘削前後の地盤面や設計面と実測面を三次元座標で比較し、設定した計算範囲内の体積差を求める方法です。計測条件と面生成条件が適切であれば、代表断面による計算では捉えにくい局所的な凹凸や複雑な床付け形状を面的に確認できます。地上レーザスキャナーによる点群は、地形や地物までの方向と距離を面的に観測し、時系列差分から土砂量を把握する用途にも利用されています。([GSI Japan][1])
ただし、地下掘削では、地上の開けた造成現場と比べて点群の死角が生じやすくなります。地下空間には山留め壁、切梁、腹起し、火打ち、構台、仮設階段、配管、重機、資材などが配置されるため、計測位置から見通せない地盤面が増えるからです。
レーザ式や写真式など、対象表面を機器から観測して点群を作る方式では、基本的に機器やカメラから見通せる表面が取得対象になります。切梁の裏側、重機の下、土砂山の反対側、山留め壁の直下などは、機器との間に障害物があると点が取得できません。点群上では、こうした未計測部分が穴や空白として現れます。実際の取得範囲や欠損の出方は、使用するセンサー、計測距離、入射角、照明、表面状態、移動推定方式などによって異なります。
点群の欠損がわずかであり、周囲の地盤が平坦で連続している場合は、周辺の点から形状を補間できることがあります。しかし、地下掘削では床付け面の段差、排水溝、釜場、局所的な深掘り、法面、壁際など、形状変化の大きい部分が少なくありません。こうした場所が欠けた状態で自動的に面を作ると、実際には存在しない斜面や平面が生成される可能性があります。
たとえば、深く掘り下げられた釜場の内部が計測できていない場合、周囲の床付け面をつなぐように補間されると、釜場が存在しない形状になります。反対に、壁際に残った仮設物や外れ点を地盤点として採用すると、実際より高い面が生成され、計算方法によっては掘削量が小さく算出されることがあります。
土量計算では、高さ方向の差が対象面積全体へ及ぶと体積差につながります。たとえば、平均高さの差を面積へ乗じた値は体積差の概算になるため、広い掘削底では数センチの系統的な高さずれも無視できない場合があります。そのため、点群の見た目が整っているかだけではなく、土量計算に使う面が実際の地盤形状を適切に表しているかを確認する必要があります。
また、多くの土量計算ソフトで用いられるグリッド面やTINは、平面位置ごとに一つの高さを持つ2.5次元の面として扱われます。この場合、鉛直に近い壁、張り出し、下面、同じ平面位置に複数の高さがある形状を、そのまま体積面として表現できないことがあります。山留め壁や切梁の下面まで含む閉じた三次元形状を計算したい場合は、使用ソフトが閉メッシュや複雑な立体の体積計算に対応しているかを別途確認します。
地下掘削の死角対策では、一度の計測ですべてを取得しようとしないことが重要です。複数方向、複数高さ、複数時点から計測し、それぞれの点群で互いの欠損を補う考え方が基本となります。解析時の補間に頼りすぎるのではなく、安全に取得できる実測点を増やすことが、信頼性の高い点群土量計算につながります。
計測前に土量計算の対象と基準を決める
死角を減らす計測計画を立てる前に、何のために土量を計算するのかを明確にします。掘削開始前と床付け完了後を比較して総掘削量を求めるのか、日々の掘削進捗を確認するのか、設計面との差を評価するのかによって、必要な計測範囲と計測時期が異なるためです。
施工前後の点群を比較する場合は、両方の点群を同じ座標系、単位、標高基準で管理します。どれほど詳細な点群を取得しても、施工前と施工後で位置がずれていれば、同じ場所どうしの差分を求められません。特に地下掘削では鉛直方向の差が土量に直接影響するため、高さ基準の統一が重要です。
設計面と実測点群を比較する場合は、設計データの座標系、単位、原点、軸方向、標高の定義を確認します。点群がメートル単位で、設計データが別の単位で管理されている場合、読み込み設定によって極端な縮尺差が発生することがあります。また、座標軸の定義や変換設定が異なると、回転、反転、平行移動などの不整合が生じる場合があります。
土量計算の方式も事前に決めます。施工前後の二つの面を比較するのか、設計面を基準にするのか、一定標高の平面を基準にするのかによって結果は変わります。グリッド法、TINによる面比較、平均断面法、閉メッシュによる体積など、ソフトウェアが採用する計算方式と、欠損や境界の扱いを確認します。同じ点群でも計算方式や格子間隔、外周、補間条件が異なれば結果が変わり得ます。
土量計算の外周も事前に決めます。山留め壁の内側全体を対象にするのか、一部の施工区画だけを対象にするのかによって結果は変わります。掘削範囲外の地盤や仮置き土を含めれば、対象外の体積が加算される可能性があります。反対に、境界を内側に取りすぎると、実際に掘削した部分が計算から除外されます。
地下掘削では、壁際、法肩、法尻、段差、釜場、排水溝などが土量計算の境界になりやすい場所です。これらを点群上で判別できるよう、計測時には形状の境目を重点的に取得します。境界が点群上で途切れていると、解析時に外周線をどこへ設定するか判断しにくくなります。
計測前には、施工図や仮設計画図を確認し、死角が生じそうな場所を洗い出します。切梁の直下、構台の裏側、仮設階段の下、重機の駐機位置、土砂の仮置き箇所などを確認し、それぞれをどの位置から計測するか考えます。
必要な精度と点密度は、利用目的、契約条件、適用する要領、使用機器の性能確認結果に応じて定めます。施工進捗を概略で確認する場合と、正式な出来形管理や数量確認に利用する場合では、計測条件や検証方法が異なります。国土交通省の出来形管理要領でも、用途別に測定精度や計測密度を確認し、基準点、標定点、検証点、精度確認試験を管理する考え方が示されています。([国土交通省][2])
点密度だけを高くしても、死角や座標ずれが残っていれば、土量計算の信頼性は高まりません。必要なのは、対象範囲を十分に覆い、比較する点群どうしが要求精度の範囲で重なり、計算条件が明確になっている状態です。
計測対象、基準面、計算方式、外周、計測時点を事前に決めておけば、現場で必要な点を優先的に取得できます。目的が曖昧なまま広い範囲を計測すると、データ量は増えても、土量計算に必要な境界や基準が不足することがあります。
計測方法1 掘削範囲を複数方向から計測する
地下掘削の死角を減らす最も基本的な方法は、一つの方向だけで計測を完了させないことです。ある位置から見えない場所でも、反対側や斜め方向からは見えることがあります。掘削範囲を囲むように複数の位置から計測することで、山留め材や仮設物の背後にある地盤面を補いやすくなります。
たとえば、掘削部の北側から南向きに計測した場合、切梁の南側や土砂山の向こう側は死角になります。南側から北向きにも計測すれば、最初の計測で欠けた部分を取得できる可能性があります。同様に、東西方向や斜め方向からの計測を加えることで、障害物による遮蔽を減らせます。
複数方向から計測する際は、単に計測位置を少し横へ移動するだけでは十分でない場合があります。死角を作っている障害物に対して視線の角度がほとんど変わらなければ、同じ場所が再び隠れるためです。切梁、柱、階段などの配置を見ながら、障害物の左右を回り込める安全な位置を選びます。
各点群には、使用する位置合わせ方式に必要な共通範囲、標識、基準点などを含めます。複数の点群を特徴形状で合成する場合は、共通して計測された範囲が必要です。重なりが極端に少ない場合や、共通範囲の形状に特徴が乏しい場合は、位置合わせが不安定になり、地盤面に段差や二重面が生じる可能性があります。
共通範囲として利用する場所は、計測中に位置や形状が変化していないと確認できる対象が適しています。管理された標識、基準点、構造物の角などが候補になります。掘削中の土砂面や重機を基準にすると、計測の間に位置や形状が変わっている可能性があります。
計測順序も重要です。複数方向から計測する間に重機が掘削を続けていると、同じ場所で異なる形状の点群が取得されます。それらを一つに統合すると、地盤面が二重に見えたり、時間差による段差が生じたりします。現場の安全管理と施工計画に従い、可能な範囲で対象区画の形状が変わらない時間帯に一連の計測を行います。
掘削範囲が広い場合は、区画を分けて複数方向から計測する方法もあります。ただし、区画の境界には位置合わせと点検に必要な共通範囲を設けます。境界付近の点が不足すると、別々に作成した地盤面がうまくつながらないことがあります。
計測後は、統合した点群だけを見るのではなく、各方向の点群を個別にも確認します。統合後は別方向の点が重なるため、どの計測位置で欠損していたか分かりにくくなるからです。個別点群を確認すれば、追加計測が必要な方向を判断しやすくなります。
計測方法2 上部と掘削底で計測高さを変える
計測方向に加えて、計測する高さを変えることも死角の低減に有効です。地下掘削を上部から見下ろす計測と、掘削底に近い位置から行う計測では、取得しやすい面が異なります。
上部からの計測は、掘削範囲全体を把握しやすい方法です。床付け面の中央部、土砂の配置、段階的な掘削形状などを広く確認できます。一方で、山留め壁の直下や構台の下、張り出した部材の下側は、見下ろす角度では隠れやすくなります。
掘削底に近い位置から計測すると、壁際、段差の立ち上がり、法尻、排水溝、釜場などを取得しやすくなります。しかし、地盤面に近い高さから見ると、わずかな土砂の盛り上がりや資材でも奥側が隠れます。そのため、低い位置からの計測だけで全体を取得するのも難しい場合があります。
上部と下部の点群を組み合わせることで、それぞれの弱点を補えます。上部から全体形状を記録し、下部から境界や細部を補足する運用が基本です。掘削深さが大きい現場では、中間の作業床や安全に使用できる通路から追加計測すると、上下両方から隠れる範囲を減らせます。
計測高さを変える際は、地盤面に対する視線の角度を意識します。浅い角度から地盤面を見ると、細かな凹凸によって奥側が遮られやすくなる場合があります。床付け面の形状を捉えるには、機器の仕様と安全条件の範囲で見下ろせる角度を確保します。一方、段差や壁際の境界は側方から見た方が判別しやすいため、目的に応じて高さを使い分けます。
仮設階段や作業床から計測すると、手すり、足場板、養生材などが点群に写り込みます。これらは後処理で除去できる場合がありますが、地盤面と重なる箇所では判別が難しくなります。計測位置を変え、仮設物の隙間から地盤面が見える角度を安全に確保することが大切です。
上部と下部で計測した点群は、できるだけ近い時間帯の同一施工状態を記録します。午前中に上部を計測し、掘削が進んだ後に下部を計測すると、両者は同じ施工状態を表していません。異なる状態を一つの面として統合すると、土量計算の基準時点が曖昧になります。
統合後は、平面表示だけでなく縦断面や横断面で確認します。平面では点が埋まっているように見えても、断面では上下方向に二重化していることがあります。特に掘削底と壁際の接続部を確認し、土量計算に採用する地盤面が連続しているかを判断します。
計測方法3 掘削工程に合わせて段階的に計測する
地下掘削では、施工が進むにつれて計測可能な範囲が変化します。掘削が深くなると切梁や構台が増え、それまで見えていた壁面や地盤面が隠れることがあります。最終掘削が完了してから一度だけ点群を取得しようとしても、すでに計測できない場所が生じている可能性があります。
そこで有効なのが、掘削工程に合わせた段階計測です。一次掘削完了時、支保工設置前、支保工設置後、二次掘削完了時、床付け完了時など、施工上の節目で点群を記録します。後工程で隠れる場所を事前に取得しておけば、最終点群に欠損があった場合の参考になります。
特に重要なのが、切梁や腹起しなどの仮設物を設置する前の計測です。設置後は部材の直下や背後が広い範囲で死角になることがあります。設置前に山留め壁と地盤面の境界を取得しておけば、後から欠けた範囲の位置や形状を確認できます。
段階計測は、工程ごとの掘削量を把握する用途にも適しています。掘削開始前の点群と各段階の点群を同一条件で比較すれば、累積の掘削量を求められます。また、連続する二時点の点群を比較すれば、その期間に生じた体積差を確認できます。
ただし、累積量と増分量を混同しないよう注意が必要です。掘削前と三次掘削後を比較した値は、施工開始からの累積量です。一方、二次掘削後と三次掘削後を比較した値は、その二時点間の増分です。報告書や管理資料では、どの点群を比較した結果なのかを明記します。
異なる時点の点群を一つの完成面として使う場合も慎重な判断が必要です。過去に取得した場所が、その後の施工で変化していないことを確認できなければなりません。以前の点群に地盤が残っていても、その後に追加掘削や整地が行われていれば、現在の形状としては使用できません。
段階点群は、施工時点ごとに分けて保存します。日付だけではなく、掘削段階、対象区画、仮設物の状態、使用した基準点、計測担当者などを記録しておくと、後から適切な点群を選びやすくなります。
ファイル名の付け方も統一します。似た名称の点群が増えると、異なる施工段階のデータを誤って比較するおそれがあります。計測日、区画、工程、処理状態などを含めた管理ルールを決め、元点群、編集済み点群、土量計算用点群を区別します。
工程上、毎回全面を計測する時間が取れない場合は、将来隠れる場所を優先します。支保工の設置予定位置、コンクリートで覆われる場所、埋め戻される場所などは、後から同じ状態を再計測できません。全面計測が難しくても、重要箇所を記録しておくことで死角による影響を抑えられます。
計測方法4 支保工や仮設物の設置前後を計測する
地下掘削では、支保工や仮設物が点群計測の大きな障害になります。切梁、腹起し、火打ち、構台、仮設階段、作業床、配管などは、施工の安全や作業性を確保するために必要ですが、その背後や直下に広い死角を作ります。
死角を減らすには、設置前と設置後を一つの計測計画として考えます。設置前には、将来見えなくなる地盤面や壁面を重点的に取得します。仮設計画図を確認し、部材の位置、幅、高さ、設置時期を把握したうえで、隠れる場所を予測します。
たとえば、大きな切梁が掘削範囲を横断する場合、その直下は上部からも側方からも計測しにくくなることがあります。設置前に床付け面や壁面を取得しておけば、設置後の点群で欠損した範囲を確認する資料になります。
設置後の計測では、仮設物を含む現場全体の状態を記録します。土量計算時には仮設物の点を除去しますが、どの部分が仮設物によって隠れていたかを把握するためには、仮設物を含む元点群も保存しておくことが重要です。
仮設物の点を削除すると、その背後に穴が現れます。穴を自動的に埋める処理を行うと、周囲の点をつないだ推定面が作られる場合があります。実際の地盤に段差や凹凸があれば、補間面との間に差が生じます。設置前点群があれば、隠れた部分の形状を確認しやすくなります。
ただし、設置前点群をそのまま設置後の面へ追加してよいとは限りません。仮設物の設置作業中に掘削、整地、掘り下げ、埋め戻しが行われることがあるためです。過去点群を使用する場合は、その場所の地盤が変化していないことを施工記録や現場状況から確認します。
仮設物の周辺では、細い部材や反射しやすい表面に由来するばらつきや外れ点が混在することがあります。発生傾向はセンサーや表面状態によって異なります。地盤点と部材点が近接している場合、一括削除すると必要な地盤点まで消してしまう可能性があるため、断面表示や範囲選択を使い、地盤面との位置関係を確認しながら除去します。
施工工程と点群計測を連携させるには、計測担当者が仮設物の設置予定を早めに把握する必要があります。設置後に初めて計測依頼を受けた場合、すでに取得できない場所が発生しているかもしれません。点群土量計算を利用することが決まった段階で、工程表に計測時期を組み込むことが望まれます。
計測方法5 壁際と隅角部を近距離から追加計測する
地下掘削で特に欠損しやすいのが、山留め壁の際、掘削底の隅角部、段差の立ち上がり、法肩、法尻、排水溝、釜場などです。これらは土量計算用の面や外周を作成するうえで重要な境界でもあります。
上部や掘削範囲の中央から計測すると、山留め壁や周囲の地盤が壁際を隠すことがあります。その結果、底面と壁面が交わる位置に点がなくなり、外周線をどこへ設定すべきか判断できなくなります。
壁際の欠損を減らすには、全体計測とは別に近距離から追加計測します。壁に沿った安全な通路から、床付け面と壁面の境界が連続して取得できているか確認します。単に点密度を増やすのではなく、土量計算に必要な境界形状を取得することが目的です。
隅角部は、可能な範囲で角を挟んだ複数方向から計測します。一方向だけでは、片側の壁や地盤がもう一方を遮る可能性があります。角の内側に土砂や資材がある場合は、それらが移動された安全な時期に計測するか、別の角度から内部が見える位置を探します。
段差部では、上面、下面、立ち上がりの境界を区別できるように取得します。上からの計測だけでは、立ち上がり面がほとんど取得されず、上面と下面を斜めにつなぐ面が作られることがあります。側方から追加計測し、段差の位置と高さを確認できる点を確保します。ただし、通常の2.5次元土量面では鉛直面そのものを体積面として扱わず、上下の面の境界位置を使って計算する場合があります。
釜場や局所的な深掘り部も、近距離計測が必要な場所です。周囲より低い部分は縁によって内部が隠れやすく、上部からは底面が見えない場合があります。安全な位置から複数方向で計測し、内部の底面と立ち上がりの境界を記録します。
水がたまっている部分では、使用するセンサーの波長、計測原理、入射角、水の濁りや波立ち、処理方法によって、水面、底面、または安定した点が取得できない場合があります。点群だけで水面下の形状を確定せず、別の測量記録、施工図、排水後の計測などを併用します。
近距離点群を全体点群へ統合する際は、周囲との共通範囲または標識を確保します。境界部分だけを小さく取得すると、全体点群との位置合わせが不安定になる場合があります。固定していると確認できる対象や既知点を含む範囲まで取得し、統合後に境界の連続性を確認します。
近距離計測では、計測者が山留め壁や掘削端へ近づく場面が増えます。死角を減らすことより安全確保を優先し、立ち入り禁止範囲、重機の作業範囲、吊り荷の下、不安定な地盤には入らないようにします。
計測方法6 基準点を使って複数の点群を統合する
死角を減らすために複数方向や複数高さから計測すると、複数の点群を共通の座標系へ統合する作業が必要になります。点群どうしの位置がずれていると、実際には一つの床付け面が複数の高さに分かれ、体積計算に差が生じます。
点群の統合では、現場の測量計画に基づく基準点、工事基準点、標定点、標識、共通形状などを、使用する機器とソフトウェアに適した方法で利用します。複数回の計測を共通座標へ配置できるよう、掘削、資材搬入、仮設物設置などで失われにくく、観測しやすい場所を選んで管理します。
基準となる点や標識の配置は、特定の一か所へ過度に偏らせないようにします。変換方法によって必要数や適切な配置は異なりますが、計測範囲の一部に偏ると、その周辺では合っていても、離れた場所で回転や傾きによるずれを見落とす可能性があります。
地下掘削では鉛直方向の変化が大きいため、平面位置だけでなく高さ方向の整合も確認します。標高が既知の点や、別途測量した検証箇所を利用できれば、掘削底の系統的な高さずれを見つけやすくなります。
点群の位置合わせに土砂面を使いすぎることには注意が必要です。土砂面は計測の間に重機の走行、掘削、崩落、整地などで変化します。変化した面を同じ形状として合わせようとすると、点群全体が誤った位置へ移動する可能性があります。
固定された山留め壁や構造物の角を使う場合も、計測間に変形や施工による変化がないか確認します。地下掘削では山留め壁に変位が生じる可能性もあるため、すべての壁面を無条件に不動点として扱うことは避けます。測量管理上の基準と現場形状の両方を確認することが大切です。
点群統合後は、位置合わせに使用した点の残差だけでなく、位置合わせに使用していない検証点や点検箇所でも整合を確認します。国土地理院の点群合成マニュアルでも、標定点による座標変換に加えて、検証点の較差、合成精度、別測量との較差を点検する考え方が示され、検証点を座標変換へ使用しないよう定めています。([GSI Japan][1])
山留め壁が二重に見えていないか、固定物の角が一致しているか、掘削底に不自然な段差がないかを平面と断面で確認します。数値上の残差が小さくても、計測範囲の端や基準配置から離れた場所でずれが大きくなっている場合があるため、計測範囲内の複数箇所で点検します。
地下空間では、衛星からの信号を必要とするGNSS測位を安定して直接利用することが一般に難しくなります。その場合は、地上の基準をトータルステーションや水準測量など適切な方法で地下へ移し、地下の基準点へ平面位置と標高を与える運用を検討します。採用する方法は現場の測量計画と要求精度に従います。
統合作業の記録も残します。使用した基準点、標定点、検証点、点群ごとの取得日時、位置合わせ方法、残差や較差、除外した場所などを保存しておけば、土量計算結果に疑問が生じた際に原因を追跡できます。
計測方法7 定点計測と移動計測を組み合わせる
地下掘削では、決めた位置から周囲を取得する定点計測と、現場内を移動しながら取得する移動計測を組み合わせることで、死角を減らしやすくなります。それぞれ取得しやすい範囲と誤差要因が異なるため、役割を分けて使うことが重要です。
定点計測は、機器を定めた位置に設置して周囲を取得する方法です。計測位置を記録しやすく、同じ場所から繰り返し計測しやすい利点があります。複数位置の点群を適切に標定・合成できれば、全体形状の把握や複数時点の比較に利用できます。
一方で、各定点から見えない場所はそのまま欠損します。切梁の裏側、構台の下、仮設階段の背後、土砂山の反対側などは、定点の数や配置を見直さなければ取得できません。
移動計測は、計測者や移動体が安全な経路を移動しながら周囲を連続的に取得する方法です。壁際、狭い通路、仮設物の間、段差の周囲など、定点計測で欠けた場所を補う用途に向いています。
ただし、移動計測では移動経路や速度、周辺形状、照明、センサーの向き、自己位置推定の状態などによって点群の品質が変わることがあります。同じ場所を一方向に一度通過しただけでは、反対側の面が欠ける可能性があります。機器の推奨手順と現場の安全ルールに従い、必要に応じて経路や観測方向を変えます。
定点計測と移動計測を組み合わせる方法として、定点計測を全体形状の基準とし、移動計測を局所的な補足に使う考え方があります。全体点群で掘削範囲や基準点の位置を押さえ、移動点群で壁際や隅角部を補います。
反対に、移動計測で現場全体を取得し、重要な基準点周辺や複雑な地形だけを定点から詳しく記録する方法も考えられます。どちらを中心にするかは、現場の広さ、掘削深さ、障害物の数、要求精度、計測可能な時間、安全な設置場所などによって判断します。
異なる方式の点群は、点密度、ばらつき、外れ点、位置精度の傾向が異なる場合があります。密度が高い点群だけを優先すればよいとは限りません。全体の位置を安定させる点群と、細部を補う点群の役割を分け、要求精度を確認したうえで地盤面に必要な点を選びます。
統合後は、同じ地盤面が二重になっていないか確認します。位置合わせにずれがあると、点群に厚みが生じます。そのまま面を作ると、どの高さの点を採用するかによって体積が変化します。複数の断面を作成し、点のばらつきを確認します。
LRTK Phoneなど、取得した点群を現場で確認できる機器やシステムを用いる場合は、全体を計測した直後に欠損箇所を探し、必要な範囲を追加計測する運用が考えられます。現場内で点群を異なる方向から表示し、壁際や仮設物の背後を確認することで、施工状態が変わった後の再計測を減らしやすくなります。利用できる確認機能、保存形式、座標出力、精度管理方法は、使用する機器や契約内容で確認します。
地下掘削で点群計測を行う際の安全管理
地下掘削の点群計測では、計測精度よりも現場の安全を優先します。死角を減らすためであっても、重機の作業範囲、不安定な地盤、開口部、掘削端、吊り荷の下などへ不用意に入ってはいけません。
計測前には、施工管理者と作業範囲を共有します。計測する区画、移動経路、使用する時間帯、重機作業との関係を確認し、現場の施工計画と安全ルールに基づいて、必要な立入規制、作業調整、誘導などを行います。
地下掘削では、搬出車両や重機が頻繁に移動します。計測者が点群画面に集中すると、周囲への注意が不足する可能性があります。計測機器の操作と周囲の安全確認を同時に行うことが難しい場合は、現場責任者の判断に従い、必要な誘導者や監視者を配置します。
足元の状況にも注意が必要です。地下では泥、水たまり、段差、配管、ケーブルなどがあり、転倒の危険があります。点群を確認しながら後退したり、上を向いたまま移動したりせず、計測位置を決めてから安全に操作します。
壁際や隅角部の追加計測では、山留め壁へ近づく場面があります。立ち入り可能な範囲を事前に確認し、安全設備や立入規制を越えて計測しないことが重要です。必要な場所が安全に取得できない場合は、別方向、別高さ、別時点からの計測を検討します。
照明が不足している地下空間では、足元や障害物が見えにくくなります。計測方式に必要な条件だけでなく、作業を安全に行うための照度を確保します。仮設照明が点群取得へ影響する場合でも、安全設備を外したり消したりしてはいけません。
計測中に地山や支保工の異常、湧水、落石、土砂の崩れなどを確認した場合は、現場の緊急手順に従って計測を中止し、安全な場所へ退避して現場管理者へ報告します。労働安全衛生規則では、明り掘削における地山の点検、危険防止措置、運行経路の周知、必要な誘導者の配置、照度の保持、土止め支保工の点検などが定められています。([Ministry of Health, Labour and Welfare][3])
点群計測を工程に組み込めば、重機が退避している時間や作業切り替えの時間に実施しやすくなります。計測を突発的な追加作業として扱うのではなく、施工計画の一部として調整することで、安全性と効率の両方を高めやすくなります。
点群から重機や仮設物を除去する方法
地下掘削の点群には、地盤面以外の多くの対象が含まれます。重機、作業員、切梁、階段、配管、資材、ケーブル、照明設備などをそのまま残すと、土量計算用の面に不要な凸部が作られる可能性があります。
不要物の除去では、最初に土量計算の対象範囲を切り出します。掘削範囲外の点群を除外してから、内部の構造物や移動物を整理すると作業しやすくなります。
高さによる抽出は、床付け面より明らかに高い重機や資材を除去する際に利用できます。ただし、土砂山、法面、段差など、本来残すべき地形も高い位置にあります。単純な高さ条件だけで一括削除せず、平面位置や形状を確認します。
断面表示を使うと、地盤面から浮いている点を確認しやすくなります。作業員や移動中の重機は、不連続な点の集まりとして現れる場合があります。ただし、点の見え方は計測方式や時間差によって異なるため、地盤面との位置関係を複数方向から確認して不要点を除去します。
仮設物の周囲では、構造物点と地盤点が近接します。範囲を広く選択して削除すると、壁際や底面の必要な点まで失う可能性があります。切梁や配管を除去する際は、複数の方向や断面から表示し、地盤点を残します。
重機の下や資材の背後は、不要物を削除すると大きな欠損になります。別方向や別高さから取得した点群がある場合は、補間する前にそれらを統合します。実測点で補える場所を、自動補間だけで処理しないことが重要です。
不要物を除去した後は、点群密度と境界の連続性を確認します。見た目がすっきりしていても、地盤点が過度に削除されている場合があります。特に外周、壁際、段差、法尻は、土量計算の面を作るために必要な点が残っているか確認します。
編集前の元点群は原則として保存します。不要点の削除後に問題が見つかった場合、元点群がなければ処理をやり直せません。元点群、統合済み点群、地盤抽出後点群、土量計算用点群を分け、処理履歴が分かるように管理します。
欠損部分を補完するときの注意点
複数方向や複数時点で計測しても、地下掘削では小さな欠損が残る場合があります。欠損を含む点群から地盤面を作る際は、どこまで補完してよいかを慎重に判断します。
周囲の地盤が平坦で連続しており、欠損が小さい場合は、周辺の点から補間できることがあります。床付け面の中央に生じた小さな穴で、周囲の高さがほぼ一定であると確認できれば、補間による体積への影響が限定的な場合があります。
一方、段差、壁際、法肩、法尻、釜場、排水溝など、形状が急に変わる場所では安易な補間を避けます。境界をまたいで周囲の点をつなぐと、本来は急な段差が緩い斜面へ変わる可能性があります。
欠損の面積だけでなく、想定される深さも確認します。平面上では小さな穴でも、深い釜場や溝であれば体積への影響は大きくなります。反対に、ある程度広い欠損でも、平坦な地盤であることを周囲の点や施工記録から確認できれば、推定条件を設定しやすい場合があります。
設計面を使って欠損を補う場合は、実測面と区別します。設計上は平坦でも、実際の床付け面には施工による凹凸があります。設計面で埋めた範囲を実測値として扱うと、出来形の状態を正しく表せません。
過去の段階点群を利用する場合も、補完に使った範囲がその後変化していないことを確認します。追加掘削や整地が行われた可能性がある場所へ古い点群を使用すると、現在の形状と一致しません。
補完方法による影響を確認するには、合理的な複数条件で体積を計算する方法があります。周辺の代表高さで補った場合、想定範囲の低い側で補った場合、高い側で補った場合などを比較し、算出結果の幅を確認します。差が大きい場合は、補完条件が土量へ強く影響していることを示します。
補完した範囲は、実測点と識別できるよう記録します。補完面だけを完成データへ混ぜると、後から確認した人がすべて実測されたものと誤解する可能性があります。補完範囲、補完理由、使用した資料、採用条件、体積への影響を残します。
欠損が重要箇所にあり、補完条件によって土量が大きく変わる場合は、可能であれば再計測を優先します。再計測できない場合は、単一の確定値だけでなく、推定を含むことや合理的に想定される範囲を関係者へ共有することが大切です。
点群土量計算の精度を確認する方法
点群から体積が計算できても、その数値が妥当であるとは限りません。地下掘削では、点群の位置ずれ、死角、不要物、欠損補完、外周設定、基準面、面生成条件などが結果へ影響します。
最初に確認するのは、比較する二つの点群の位置です。施工前後で変化していないと確認できる場所や独立した検証点を選び、点群が要求精度の範囲で重なっているか確認します。掘削していない範囲に広い高さ差が出ていれば、点群全体の座標、標高、姿勢、時点のいずれかが不整合になっている可能性があります。
次に、掘削前後の差分を平面と断面で確認します。掘削していない場所に大きな切土や盛土が表示されていないか、床付け面に不自然な盛り上がりがないか、仮設物の跡が残っていないかを見ます。
壁際に細い溝や盛り上がりが連続している場合は、点群の統合ずれ、境界設定、不要物の残存などを確認します。掘削底全体が一定方向へ不自然に傾いている場合は、高さ基準、座標変換、点群の姿勢を点検します。
土量計算の外周も点検します。対象範囲を広く取りすぎると、掘削外の地形や仮置き土が体積へ含まれます。狭く取りすぎれば、壁際や法面の施工量が除外されます。設計図や施工範囲と照合し、境界を確認します。
面を作成する条件を変え、結果の感度を見ることも有効です。点群の間引き量、格子間隔、三角形を作る最大辺長、欠損をつなぐ距離などを合理的な範囲で変えただけで体積が大きく変化する場合は、外れ点、欠損、境界、面生成条件が結果へ強く影響している可能性があります。
対象面積と代表的な掘削深さから概算体積を求め、点群による計算結果と大きな桁違いがないか確認します。詳細な形状を反映した値とは一致しなくても、極端な単位ミス、外周ミス、高さ基準ミスを見つける手掛かりになります。
搬出記録や従来の数量計算と比較する場合は、条件をそろえます。搬出量には地山、ほぐした土、締め固めた土といった体積状態の違い、含水状態、積載量のばらつき、対象期間などが影響します。点群土量は、設定した二つの面と外周から求める幾何学的な体積です。両者が一致しない場合は、単純にどちらかを誤りと判断せず、体積状態、対象範囲、計測時点、計算条件を確認します。
正式な出来形管理や契約数量に利用する場合は、適用する基準類、発注者との協議内容、機器の精度確認、点密度、検証点、計算ソフトの設定に従います。機器の公称精度や点数だけで成果全体の精度が保証されるわけではありません。
最終成果には、使用した点群、計測日時、比較対象、座標系、標高基準、基準面、外周、除去した対象、補完範囲、計算方式、主要な設定、検証結果を記録します。数値だけを保存するのではなく、同じ条件で再計算できる情報を残すことが重要です。
地下掘削の点群計測を効率化する手順
地下掘削の点群計測を効率よく行うには、現場計測と事務所での解析を別々に考えず、一連の作業として計画します。現場で不足した点は、解析だけでは実形状として確定できない場合があるためです。
まず、施工図、仮設計画図、工程表を確認します。掘削範囲、掘削深さ、支保工の位置、構台、階段、重機動線を把握し、死角になりそうな場所を事前に整理します。
次に、土量計算の比較条件を決めます。施工前後を比較するのか、前日との差を求めるのか、設計面との差を確認するのかを明確にします。対象範囲、基準面、計算方式、要求精度、点密度、検証方法も決め、必要な点群を判断します。
現場では、最初に掘削範囲全体を取得します。全体点群を確認した後、複数方向、高さ違い、壁際、隅角部、仮設物の背後を追加計測します。最初から細部だけを計測すると、全体との位置関係や共通範囲が不足する可能性があります。
計測終了前に、可能であればその場で点群を確認します。上からの表示だけでなく、横方向や断面方向からも見ます。平面では点が埋まって見えても、断面では壁際や段差が欠けていることがあります。
欠損を見つけた場合は、同じ施工状態のうちに追加計測します。掘削や支保工設置が進んだ後では、同じ形状を再現できないことがあります。現場内で取得状態を確認することが、手戻りを減らすうえで重要です。
事務所での処理では、最初に点群を標定・統合し、基準点、標定点、検証点、変化していない固定物などで位置を確認します。その後、対象範囲を切り出し、重機や仮設物を除去し、地盤点を抽出します。
地盤点の抽出後は、欠損範囲を確認します。別方向の点群で補える場所を先に統合し、実測点がない場所だけ補完方法を検討します。補完した範囲は記録し、実測範囲と区別します。
地盤面を作成した後は、断面と差分を確認し、外周を設定して土量を計算します。計算結果だけを見るのではなく、面の形状が現場状況と一致しているか、2.5次元面で表現できない部分を誤って含めていないかを確認します。
最後に、元点群、統合点群、地盤点群、土量計算用の面、計算結果、条件記録、検証結果をまとめて保存します。処理途中のデータを残しておけば、外周や補完方法を変更して再計算する際にも対応しやすくなります。
まとめ
地下掘削の点群土量計算では、山留め壁、切梁、腹起し、構台、重機、仮設階段、資材などによって死角が生じます。一つの位置から一度だけ計測しても、掘削底や壁際の形状を十分に取得できない場合があります。
死角を減らすためには、掘削範囲を複数方向から計測し、上部と下部で計測高さを変えることが基本です。さらに、掘削工程に合わせた段階計測、支保工の設置前後の計測、壁際や隅角部の近距離計測を行うことで、後から見えなくなる場所を記録できます。
複数の点群を利用する場合は、現場の測量計画に基づく基準点や標定点を使って共通座標へ配置し、位置合わせに使用していない検証点や点検箇所でも精度を確認します。定点計測と移動計測を組み合わせる場合も、必要な共通範囲を設け、統合後に断面で位置ずれや二重面を確認します。
計測後は、重機や仮設物などの不要点を除去し、欠損の位置と大きさを確認します。平坦で小さな欠損は周囲から補間できる場合がありますが、段差、壁際、釜場、排水溝などでは安易な補完を避けます。
土量計算に使うグリッド面やTINは、鉛直面や張り出しをそのまま表現できない場合があります。計算対象が床付け面の高低差なのか、閉じた立体形状なのかを明確にし、使用ソフトの計算方式に合うデータを作成することが重要です。
点群土量計算の信頼性を高めるには、取得した点の数だけでなく、座標と標高の整合、外周の設定、地盤点の抽出、欠損の扱い、面生成条件、検証結果を一つずつ確認することが大切です。算出された体積だけを確認するのではなく、どの範囲を実測し、どの範囲を補完したのかを記録します。
また、地下掘削では安全な計測位置が限られます。死角を減らすために危険区域へ入るのではなく、施工管理者と計測時間や作業区画を調整し、安全な通路から複数回取得する運用が必要です。
現場で点群の取得状態を確認できれば、壁際や仮設物の背後に残った欠損をその場で発見し、施工状態が変わる前に追加計測できます。地下掘削の点群計測から土量計算までを効率化したい場合は、現場で取得結果を確認できるLRTK Phoneの活用をご検討ください。利用時は、対象業務に必要な精度、座標基準、計算方式、現場の安全ルールへの適合を確認することが重要です。