掘削、積込み、破砕、砕石敷設、地盤改良などの作業中に点群を計測すると、空中を漂う粉じんが不要な点として記録されることがあります。特にLiDARなどの能動型センサーでは、粉じんによる散乱や反射が地表より手前の測距結果として記録される場合があります。浮遊粉じんノイズが混ざった点群をそのまま使って土量計算を行うと、本来存在しない突起が地表面に生成されたり、盛土や残土の外形が膨らんだりして、体積が実態より大きく算出されるおそれがあります。
一方で、粉じんに見える点を一律に削除すると、法肩、法尻、掘削底、砕石表面など、土量計算に必要な実測点まで失う可能性があります。特に点密度が低い範囲や、表面の凹凸が大きい範囲では、正常な地表点と浮遊粉じんノイズの分布が似て見えることがあります。
点群から粉じんだけを適切に除去するには、単独のフィルターに頼るのではなく、解析範囲、点密度、近傍点との距離、利用可能な属性情報、表面生成条件を段階的に設定することが重要です。なお、本記事は主にLiDARで粉じんが不要な測距点として記録されたケースを想定しています。写真測量から生成した点群では、画像のかすみ、コントラスト低下、対応点の誤りなど、別の要因も確認する必要があります。本記事では、「土量計算 点群」で情報を探している実務担当者に向けて、浮遊粉じんノイズが土量へ与える影響と、除去時に確認したい6つの設定を詳しく解説します。
浮遊粉じんノイズが点群土量計算に影響する理由
LiDARなどの能動型センサーでは、地面や構造物などの表面へ照射した信号の戻りを利用して、対象物までの距離や三次元座標を求めます。計測経路上に粉じんが浮遊していると、粉じんの粒子群による散乱や反射が発生し、対象面より手前の位置に不要な点が記録される場合があります。また、粉じんによる減衰によって地表からの有効な戻りが弱くなり、不要点だけでなく欠測が増えることもあります。
粉じんの発生量が少なければ、不要点は周囲から離れた孤立点として現れます。この状態であれば、近傍点との距離や周囲の点数を使った処理で比較的見つけやすくなります。しかし、重機が連続して稼働している場所や、乾燥した土砂を積み込んでいる場所では、粉じんが帯状または塊状に分布することがあります。粉じん同士が近接して記録されると、単純な孤立点除去だけでは残ってしまいます。
土量計算への影響は、使用する表面生成方法によっても変わります。点群から三角網を作成する場合、地表から離れた粉じん点が三角形の頂点に採用されると、表面に鋭い突起ができます。グリッド単位で代表標高を決める場合も、セル内の最高点を採用する設定では、空中の粉じん点が地表として扱われる可能性があります。
粉じんノイズが盛土や残土の上側に残れば、算出土量は増える方向へ偏りやすくなります。ただし、除去処理を強くかけすぎて本来の地表点まで消し、その欠測部分を低い面で補間した場合は、反対に土量が小さくなることもあります。そのため、粉じん除去では「不要点を多く消すこと」ではなく、「地表形状を維持しながら、土量に影響する不要点を減らすこと」が目的になります。
写真測量由来の点群では、粉じんが画像内の特徴を隠したり、コントラストを下げたりすることで、点群の欠測や不安定な再構成につながる場合があります。LiDAR用の反射強度や近傍密度だけでは原因を判断できないため、取得方式を確認したうえで処理方法を選ぶ必要があります。
粉じんノイズと正常な地表点を見分ける考え方
浮遊粉じんノイズは、正常な地表点と比べて空間的な連続性が低い傾向があります。一般的な地表面では、隣接する点同士が一定の密度で連続し、周囲の標高変化も地形に沿って推移します。これに対して粉じんは、地表から離れた位置に疎らな点として現れたり、短時間だけ存在する不規則な点群として現れたりします。
ただし、地表からの距離だけを基準に削除することはできません。盛土の天端、法面、掘削底、重機走行跡などは標高差が大きく、正常な点でも周囲から離れて見える場合があります。法肩や法尻では面の向きが急に変化するため、近傍点との距離が平坦部より大きくなることもあります。
粉じんノイズを判断するときは、高さ、局所点密度、近傍点までの距離、利用可能な反射情報や信頼度、周辺地形との連続性を組み合わせて確認します。例えば、地表から数十センチメートル上にある点でも、法面に連続する点であれば必要な地形点かもしれません。一方、地表からわずかに離れているだけでも、周囲に点がほとんどなく、局所的な表面を形成していない点は粉じんの可能性があります。
色付き点群を利用できる場合は、見た目による確認も役立ちます。ただし、粉じんと地面の色が似ている場合や、照明条件によって色が不安定な場合もあるため、色だけで自動判定するのは避けた方が安全です。断面表示、鳥瞰表示、側面表示を切り替え、粉じん点が地表面からどのように離れているかを確認することが重要です。
処理前には、正常な地表点、明らかな粉じん点、判断が難しい境界部分をそれぞれ小範囲で抽出し、フィルター設定を試します。現場全体へ一度に強い設定を適用すると、必要な点が削除されていても気づきにくくなります。代表区画で結果を比較してから全体処理へ進むことで、過剰除去を防ぎやすくなります。
設定1 解析範囲と高さ帯を限定する
最初に行いたい設定は、土量計算に必要な解析範囲を明確にすることです。現場全体の点群をそのままフィルターへ入力すると、計算対象外の重機、仮設物、周辺構造物、遠方の粉じんまで判定対象に含まれます。対象点が増えるほど処理負荷が大きくなるだけでなく、点密度の異なる範囲が混在し、適切なしきい値を設定しにくくなります。
平面方向では、土量を求める対象範囲に沿って境界を設定します。盛土であれば法尻を含む外周、掘削であれば掘削範囲と必要な比較面を含む外周を基準にします。境界付近は地表面の生成に必要な点が不足しやすいため、計算境界ぎりぎりで切り取るのではなく、確認用の余裕を持たせた範囲を残しておく方法が実務的です。
高さ方向についても、想定される地表の最低標高と最高標高を確認し、明らかに不要な高さ帯を除外します。例えば、残土山の上空に広がる粉じんや、掘削底より大幅に低い誤測点がある場合は、標高範囲を限定するだけでも多くの不要点を削減できます。
ただし、高さ帯を固定値だけで設定すると、傾斜地や段差のある現場で正常点を削除する可能性があります。地盤高が大きく変化する現場では、現場全体へ同じ上限標高と下限標高を設定するよりも、工区や標高帯ごとに範囲を分ける方が適しています。
法面を含む場合は、平面位置に応じて許容する高さが変わります。平面境界と単純な標高範囲だけでは粉じんを分離できない場合は、既存地表や設計面からの離隔距離を基準にした範囲設定も検討します。基準面から一定距離以上離れた点を候補として抽出し、その後に点密度や近傍距離で判定すると、必要な法面点を残しやすくなります。
解析範囲の限定は、後段のフィルターを安定させるための前処理です。この段階で粉じんを完全に取り除く必要はありません。明らかに計算対象外の点だけを除き、地表か粉じんか判断が難しい点は残しておく方が安全です。
設定2 ボクセルサイズとセル内最低点数を調整する
点群の密度が非常に高い場合は、一定の立方体または平面セルに点をまとめる処理が利用されます。三次元空間を小さな立方体に区切る方法は、一般にボクセル化またはボクセルダウンサンプリングと呼ばれます。ボクセル内にある複数の点を代表点へ置き換えることで、点数を減らし、後続処理の負荷を抑えられます。
ここで区別したいのは、ボクセルサイズとセル内最低点数が、すべてのソフトウェアで一体の設定として提供されるわけではないことです。一般的なボクセルダウンサンプリングでは、主な設定はボクセルサイズであり、占有点数の少ないボクセルを除外する機能は、別の密度フィルターや独自条件として実装される場合があります。使用するソフトウェアにセル内点数の条件がある場合に限り、その値を粉じん候補の抽出へ利用します。
粉じん点は地表点より疎らに分布することが多いため、点が一つしか入っていないボクセルや、周辺ボクセルとの連続性がないセルを候補として扱うことで、孤立した粉じんを減らせる可能性があります。ただし、点数が少ないことだけで自動削除せず、端部や遮蔽部の正常点が含まれていないかを確認します。
ボクセルサイズを大きくすると、粉じん点と地表点が同じセルに入りやすくなります。その結果、代表点の決め方によっては位置が地表から浮き、表面標高が不自然に高くなる場合があります。また、法肩や小さな凹凸が平均化され、土量計算に必要な形状が失われる可能性もあります。
反対にボクセルサイズを小さくしすぎると、粉じん点も独立した点として残りやすくなり、点数削減や後続処理の安定化という効果が小さくなります。設定値は、対象物の大きさだけでなく、平均点間隔と残したい最小形状を考慮して決める必要があります。
初期設定を検討するときは、平坦で粉じんの少ない範囲の平均点間隔を確認します。その点間隔に近い大きさから試し、法肩、法尻、掘削底の凹凸が維持されるかを比較します。土量計算では細かな一つ一つの土粒子形状を残す必要はありませんが、排水溝、段差、腹付け盛土の端部など、体積に影響する形状まで消してはいけません。
セル内最低点数を利用できる場合でも、値を高く設定しすぎると、斜面の端部や遮蔽物の周辺など、もともと点密度が低い場所が欠測になります。そのため、点数条件による除去は、現場全体へ同じ条件を適用するより、点密度が近い区画ごとに調整する方法が適しています。
ボクセル処理は、それだけで粉じんと地表を完全に分類する機能ではありません。点群を扱いやすい密度へ整える前処理として使用し、必要に応じて占有点数の条件を補助的に加え、その後に統計的外れ値除去や半径外れ値除去を組み合わせます。
設定3 統計的外れ値除去の近傍点数を設定する
統計的外れ値除去は、各点から複数の近傍点までの平均距離を計算し、点群全体または処理系が定める距離分布に対して大きく外れる点を外れ値として抽出する方法です。地表点は周囲の点と一定の間隔で連続しているのに対し、浮遊粉じん点は周辺との距離が大きくなることが多いため、有効な処理となる場合があります。
主に調整する設定は、距離計算に使う近傍点数と、外れ値として判定する範囲です。近傍点数が少なすぎると、複数の粉じん点が小さな塊として記録されている場合に、その塊の内部だけで近傍関係が成立します。その結果、粉じん点が正常な点群として残ることがあります。
近傍点数を増やすと、より広い範囲の点分布を参照できるため、粉じんの小さな塊を外れ値として捉えやすくなることがあります。ただし、近傍点数を過度に増やすと、法肩、法尻、急斜面、段差などの局所形状が周辺から離れた点として評価される場合があります。
外れ値判定の強さは、平均距離の分布からどの程度外れた点を削除するかで調整します。実装によっては標準偏差の倍率などを用います。判定範囲を狭くすると多くの点が削除され、広くすると明らかな孤立点だけが削除されやすくなります。
初回の処理では、正常な法面点が残る程度の緩やかな条件から始めることが重要です。一度に強い条件で除去するのではなく、明らかな孤立点を除く第一段階と、残った小規模な粉じん群を確認する第二段階に分けると、地形を保ちやすくなります。
点密度が均一でない現場では、点群全体の距離分布を基準にする実装だと判定が不安定になる場合があります。計測位置に近い範囲は高密度、遠い範囲は低密度になることがあり、同じ近傍点数でも実際に参照する空間範囲が変わるためです。この場合は、距離や工区で点群を分割するか、事前に点密度を整えてから統計処理を行います。
処理結果を確認するときは、削除後の点群だけでなく、削除対象として抽出された点群も保存します。削除点を別表示し、粉じんだけでなく法肩や掘削底の点が大量に含まれていないか確認することで、過剰除去を早い段階で発見できます。
設定4 半径外れ値除去の検索半径と最低近傍数を設定する
半径外れ値除去は、各点を中心とした一定半径の中に何点あるかを数え、近傍点が指定数より少ない点を除外する方法です。統計的外れ値除去が近傍点までの距離分布を見るのに対し、半径外れ値除去は指定した空間内の点数を直接確認します。
浮遊粉じんが孤立点または小さな集団として記録されている場合は、検索半径内の点数が少なくなりやすいため、粉じんノイズの除去に利用できます。設定する主な項目は検索半径と、その半径内に必要な最低近傍点数です。
検索半径が小さすぎると、正常な地表点でも周囲の点数が不足し、必要な点が削除されます。特に遠距離の計測範囲、急斜面、構造物際、重機や資材の陰になった場所では点密度が低くなるため注意が必要です。
検索半径が大きすぎると、地表から離れた粉じん点であっても、検索範囲内に地表点や別の粉じん点が入ります。その結果、近傍点数の条件を満たし、粉じんが残る可能性があります。除去したい点と正常な地表点の離隔だけで半径を決めず、点間隔、斜面方向、点密度の変化も合わせて検討する必要があります。
初期値を決める際は、処理前点群の平均点間隔を基準にします。検索半径を平均点間隔の数倍程度から試し、正常な平坦部、法面、端部で近傍点数がどの程度になるかを確認します。ただし、平均点間隔は現場全体で一つとは限りません。計測距離や入射角によって点密度が変化するため、複数箇所を確認する必要があります。
最低近傍点数を高くすると、粉じんの小さな集団を削除しやすくなりますが、点密度が低い地表面も消えやすくなります。反対に低くすると正常点は残りやすいものの、粉じんも残る可能性があります。最初は少ない近傍点数から試し、残存ノイズを見ながら段階的に増やします。
統計的外れ値除去と半径外れ値除去は、どちらか一方を強く設定するより、緩やかな条件で組み合わせる方が安定する場合があります。統計的処理で大きく離れた点を除き、半径処理で局所的に密度の低い点を除くことで、一つの判定基準へ過度に依存せずに済みます。
ただし、処理順序を変更すると結果も変わります。統計的処理で点数を減らした後に半径処理を行うと、正常点の近傍数も減少しています。後段の最低近傍数を処理前と同じ値にすると、除去が強くなりすぎる可能性があるため、各段階で点密度を確認しながら設定します。
設定5 反射強度や計測信頼度のしきい値を補助的に使う
点群データには、三次元座標のほかに、反射強度や計測信頼度に相当する情報が含まれる場合があります。粉じんから得られた点は、地表から得られた点と異なる値を示すことがあり、反射強度や信頼度のしきい値を使って粉じん候補を絞り込める可能性があります。
ただし、反射強度は対象物の材質、色、表面状態、計測距離、入射角、周囲の光、センサーの波長や内部処理などによって変化します。粉じん点が必ず低い値になるとは限らず、湿った土、黒色の土砂、斜めに計測した法面なども低い値になることがあります。
また、反射強度や信頼度の意味、尺度、出力有無は機器やファイル形式、処理ソフトウェアによって異なります。異なる機器や異なる計測条件の数値を、同じしきい値で直接比較できるとは限りません。写真測量由来の点群では、LiDARの反射強度に相当する属性が存在しない場合もあります。
そのため、反射強度だけを基準にした一括削除は避けるべきです。現場内で明らかに粉じんの少ない地表範囲と、粉じんが多い空間範囲を抽出し、それぞれの値の分布を比較します。両者に実務上利用できる差がある場合に限り、補助的なしきい値として利用します。
しきい値を設定するときは、正常な地表点の下限値または分布範囲を確認することが重要です。粉じんを多く除去できる値であっても、暗い地表や遠距離部分の点が同時に失われるなら、土量計算には適しません。
反射強度や信頼度による処理は、解析範囲の限定、統計的外れ値除去、半径外れ値除去の後に使うと確認しやすくなります。空間的に明らかなノイズを先に減らし、最後まで残った判断の難しい点に対して属性値を参照することで、正常点の誤削除を抑えられます。
反射情報を利用できない点群であっても、同一範囲を複数回計測している場合は、計測間の再現性を補助情報として使えることがあります。地表は位置合わせが適切で、施工状態が変わっていなければ複数回の点群で近い位置に現れますが、浮遊粉じんは時間とともに移動するため、同じ位置に繰り返し現れにくい傾向があります。
ただし、施工が進行している時間帯に取得した点群同士を単純に比較すると、実際の地形変化までノイズとして扱うおそれがあります。複数回計測による確認は、重機や土砂が動いていない短い時間内で行うか、変化していない基準範囲に限定して使用します。
設定6 三角網の最大辺長と穴埋め範囲を制限する
点群から粉じんノイズを除去しても、その後の表面生成条件が不適切であれば、土量計算に誤差が生じます。特に注意したいのが、三角網の最大辺長と欠測部分の穴埋め範囲です。これらの設定名や提供方法はソフトウェアによって異なるため、同等の長辺制限、外周制御、穴埋め上限があるかを確認します。
点群から三角網を作成するとき、離れた点同士を広範囲に結ぶ設定になっていると、粉じん除去によって生じた空白や、もともとの欠測部分を横断する大きな三角形が作られます。この三角形が実際には存在しない面を形成し、盛土の外側や掘削底の上を覆うと、体積が大きく変わります。
三角形の最大辺長を設定できる場合は、点密度と残したい地形の大きさに合わせて制限します。周囲の標準的な点間隔より大幅に長い辺を許可すると、粉じん点や離れた地表点を結びやすくなります。一方、最大辺長を短くしすぎると、点密度の低い正常範囲まで穴として残ります。
法肩や法尻では、面の方向が変化するだけでなく、計測角度によって点間隔が広がります。平坦部だけを見て最大辺長を決めると、法面との接続が切れる場合があります。平坦部、斜面、端部の点間隔を比較し、それぞれで不要な長辺を抑えながら面が連続する範囲を探します。
穴埋め処理についても、無制限に適用するべきではありません。小さな欠測で、周囲の地形が滑らかに連続している場合は補間が有効です。しかし、粉じん除去後に大きな空白が残った場所は、元の地表を推定する根拠が不足しています。
大きな欠測を自動的に埋めると、周辺の高い点同士または低い点同士が結ばれ、実際とは異なる面が生成されます。欠測が土量へ大きく影響する範囲にある場合は、強い補間で埋めるのではなく、追加計測を検討します。
三角網を作成した後は、鳥瞰表示だけでなく側面表示や断面表示で確認します。粉じん点が一つ残っているだけでも、長い三角辺によって広い突起面が形成されることがあります。点群表示では目立たなかったノイズが、面表示では大きな体積として現れるため、点群と表面の両方を確認する必要があります。
6つの設定を適用する実務的な処理手順
粉じんノイズの除去は、設定を個別に強くするのではなく、処理の順番を決めて段階的に進めることが重要です。最初に元点群を複製し、編集前データを保存します。後から設定を変更したり、削除点を確認したりできるよう、元データへ直接上書きしない運用が安全です。
次に、点群の取得方式、座標系、標高基準、計測時刻、対象工区を確認します。異なる条件で取得した点群を統合している場合、座標のずれや地形変化が粉じんノイズのように見えることがあります。粉じん除去を始める前に、点群同士の位置関係を確認しておく必要があります。
その後、土量計算に必要な平面範囲と高さ帯を設定し、重機、作業員、仮設物、周辺構造物などを対象外にします。この段階では、判断の難しい点を無理に削除せず、明らかに不要な範囲だけを除きます。
点数が多すぎる場合は、ボクセル処理で点密度を整えます。代表点の決め方によって標高が変わる可能性があるため、平均位置、最低点、最高点など、使用するソフトウェアの選択条件を確認します。土量計算用の地表を作る目的で最高点だけを採用すると、上空側の粉じんを拾いやすくなるため注意が必要です。セル内最低点数の機能がない場合は、半径外れ値除去など別の密度判定で代替します。
続いて、緩やかな統計的外れ値除去を行います。削除された点を別のレイヤーやファイルとして保存し、粉じん以外の地表点が含まれていないか確認します。次に半径外れ値除去を適用し、局所的に点密度の低いノイズを減らします。
反射強度や信頼度を利用できる場合は、この段階で残存点の判定に使います。値が低い点をすべて削除するのではなく、空間的な連続性が低く、地表から離れ、属性値も周辺地表と異なる点を優先して確認します。
フィルター処理後は、地表点の分類または表面生成を行います。三角網の最大辺長、穴埋め範囲、外周境界に相当する設定を確認し、不自然な突起や広い補間面がないか確認します。最後に体積を計算し、処理前後の結果を比較します。
土量差が大きい場合は、フィルターが効果的だったと即断しないことが大切です。粉じんが除去されたことで差が生じたのか、正常な地形まで失われたことで差が生じたのかを確認します。削除点、処理後点群、生成面、差分表示を並べて確認すると、原因を把握しやすくなります。
粉じんの多い現場で計測時に行いたい対策
後処理の設定だけでなく、計測時に粉じんの発生を抑えることも重要です。粉じんが濃い状態では、不要点が増えるだけでなく、地表からの有効な信号が得られず、欠測が発生する場合があります。欠測した地表は、後処理だけでは正確に復元できません。
可能であれば、掘削、積込み、破砕、散布など、粉じんが多く発生する作業を一時的に止めてから計測します。作業停止が難しい場合は、粉じんが流れ去るタイミングを待ち、計測対象と粉じんの発生源が重ならない位置から計測します。
風向きも確認します。計測者と対象物の間に粉じんが流れ込む位置では、地表までの経路上に多くの粒子が入りやすくなります。粉じんの流れを避けられる位置へ移動し、同じ面を異なる方向から補完すると、欠測やノイズを減らしやすくなります。
盛土や残土山の裏側、重機の陰、擁壁際などは、一方向からの計測だけでは地表点が不足します。粉じんがある状態で遮蔽も重なると、正常点よりノイズ点の割合が高くなる場合があります。対象物の周囲を移動し、法面、天端、法尻を複数方向から取得することが重要です。
計測中に粉じん量が急に変化した場合は、同じデータとして連続処理せず、区間を分けて保存する方法も有効です。粉じんの少ない区間と多い区間を比較できれば、どの範囲にノイズが集中しているか判断しやすくなります。
現場の安全ルールや立入範囲を優先し、無理に対象物へ接近してはいけません。点群の精度を高めるために危険区域へ入るのではなく、安全な位置から複数回取得し、不足範囲は作業状況が落ち着いた後に追加計測します。
フィルター処理後の土量を検証する方法
粉じんノイズを除去した後は、見た目がきれいになったかだけでなく、土量計算に必要な地形が維持されているかを検証します。最初に確認したいのは、基準面が変化していない範囲の標高です。
粉じんの影響が少ない平坦部や既知点の周辺で、処理前後の標高差を確認します。正常な地表まで削除されている場合は、点密度が低下し、表面が周辺から補間されて標高が変わることがあります。
次に、代表的な断面を複数設定します。盛土では天端、法面、法尻を通る断面、掘削では周辺地盤、掘削底、段差を通る断面が有効です。処理前点群、処理後点群、生成面を重ねて表示し、粉じんだけが除かれているかを確認します。
削除点の分布も確認します。削除点が空中に疎らに分布していれば、粉じん除去として妥当な可能性があります。一方、法面に沿って帯状に削除されている場合や、法肩と法尻に集中している場合は、地形の変化点が外れ値として誤判定されている可能性があります。
土量は、少なくともフィルター処理前、緩やかな処理後、最終処理後の複数条件で計算します。各段階の体積差を比較すると、どの設定が結果へ大きく影響したかを把握できます。
設定をわずかに変更しただけで土量が大きく変わる場合は、計算結果が不安定です。粉じん点がまだ表面へ採用されているか、正常点が不足して補間範囲が広がっている可能性があります。反対に設定を一定範囲で変更しても土量がほぼ安定している場合は、ノイズ除去後の表面が比較的安定していると判断しやすくなります。
可能であれば、粉じんの少ない時間帯に取得した点群や、別の計測方法による代表点と比較します。現場全体を別手法で再計測できなくても、天端高、法尻位置、掘削底高などの重要箇所を確認するだけで、過剰除去や補間の異常を見つけやすくなります。
検証結果と使用した設定値は、計算結果と一緒に保存します。後日、土量差について説明が必要になったとき、どの点をどの条件で除去したかが分からなければ、計算の再現が難しくなります。元点群、処理済み点群、削除点、境界、表面生成条件、土量結果を一式で管理することが重要です。
点群土量計算で起こりやすい設定ミス
よくある設定ミスの一つは、粉じんを完全に消そうとしてフィルターを強くしすぎることです。点群表示上では不要点がなくなっても、法肩や法尻まで滑らかになり、盛土の実際の外形が小さくなることがあります。
二つ目は、点密度の異なる範囲へ同じ設定を適用することです。計測位置に近い高密度範囲では適切な近傍点数でも、遠距離の低密度範囲では必要な地表点を削除する可能性があります。計測距離、斜面方向、遮蔽物の有無を確認し、必要に応じて工区を分けます。
三つ目は、反射強度のしきい値だけで粉じんを判定することです。反射値は地表の材質や角度、距離、機器の処理でも変化するため、粉じんと正常点を完全には分離できません。空間的な位置や点密度と組み合わせる必要があります。
四つ目は、除去後にできた穴を広い範囲で自動補間することです。粉じんが消えても、根拠のない面が作られれば正しい土量にはなりません。大きな穴は処理で隠すのではなく、追加計測が必要かを判断します。
五つ目は、処理後の点群だけを保存し、削除点や設定値を残さないことです。誤削除に気づいたときに元へ戻れず、同じ結果を再現できなくなります。編集前データを保存し、処理段階ごとにファイルを分ける運用が必要です。
六つ目は、土量計算の境界を粉じん除去の前後で変更してしまうことです。境界が変わると、体積差がフィルターによるものか、計算範囲によるものか分からなくなります。設定比較を行う場合は、基準面、外周境界、計算方法を固定し、変更する条件を一つずつ管理します。
まとめ
浮遊粉じんノイズを含む点群では、空中の不要点が地表面として採用され、土量が実態より大きく算出される可能性があります。一方、除去処理を強くしすぎると、法肩、法尻、掘削底などの必要な点まで失われ、土量を小さく算出する原因になります。
粉じん除去では、最初に解析範囲と高さ帯を限定し、ボクセルサイズで点密度を整えます。セル内最低点数を設定できるソフトウェアでは、その条件を補助的に使います。その後、統計的外れ値除去と半径外れ値除去を緩やかに組み合わせ、反射強度や計測信頼度を利用できる場合は補助情報として参照します。最後に三角網の最大辺長と穴埋め範囲に相当する条件を制限し、不要な突起面や根拠のない補間面が作られないようにします。
適切な設定値は、点群の取得方式、点密度、計測距離、地形、粉じん量、使用する処理方法によって異なります。固定値をすべての現場へ当てはめるのではなく、代表区画で試行し、削除点、断面形状、生成面、土量差を確認してから全体へ適用することが重要です。
また、後処理だけで対応しようとせず、粉じんが落ち着いた時間に計測する、複数方向から対象面を取得する、欠測範囲を追加計測するといった現場対応も組み合わせる必要があります。良好な元点群を取得できれば、強いフィルターや広範囲の補間へ依存せず、説明しやすい土量計算につながります。
現場での点群取得から計測結果の確認、面積や体積の把握までを効率化したい場合は、LRTK Phoneの活用をご検討ください。浮遊粉じんが発生する現場でも、計測条件を整え、元点群と処理条件を適切に管理することで、土量計算に利用しやすいデータを作成できます。