点群土量計算で外れ値除去が法肩を削る原因
点群を使った土量計算では、計測データに含まれる不要な点を取り除く前処理が重要です。空中に浮いた点、機械や作業員に由来する点、反射条件の影響を受けた点、計測対象から大きく離れた点などが残っていると、地表面モデルに不自然な突起やくぼみが生じ、算出土量へ影響する可能性があります。
一方で、外れ値除去の設定を強くしすぎると、本来残すべき法肩や法尻の点まで削除されることがあります。法肩とは、法面と上部の平坦面が切り替わる境界付近です。この部分では地表面の傾きが急に変化するため、周囲の点と高さや法線方向が異なりやすくなります。外れ値除去の処理から見ると、正常な地形点であっても周辺から外れた点のように判定される場合があります。
特に注意したいのは、点密度が均一ではない点群です。計測者から近い場所や複数方向から計測できた場所には点が多くなり、斜面上部、法肩の裏側、障害物付近には点が少なくなりやすい傾向があります。点の少ない場所に対して、密な場所と同じ条件で近傍点を判定すると、法肩付近だけが孤立点として除去される可能性があります。
また、法肩は単なる一本の線ではありません。現地では植生、小石、施工跡、表面の凹凸、わずかな崩れ、転圧状態の違いなどがあり、点群上の境界も一定の幅を持っています。理想的な直線として処理しようとすると、実際の地形を過度に平滑化し、法面の上端が丸くなったり、内側へ後退したりすることがあります。
法肩が削られた地表面モデルで土量を求めると、切土側と盛土側のどちらに影響するかは、比較する基準面や計測時期によって異なります。そのため、単純に「法肩の点が減ると土量が小さくなる」とは限りません。法肩の位置、高さ、比較面との関係によっては、局所的な不足が周辺の三角形補間へ波及し、想定より大きな差になることもあります。
外れ値除去では、ノイズを多く消すこと自体を目的にしないことが重要です。土量計算に必要な地形形状を維持しながら、明らかに不要な点だけを除去することが目的です。そのためには、処理対象となる点群の密度、法面勾配、計測距離、表面状態、利用する地表面モデルの作成方法を踏まえて設定を決める必要があります。
ここからは、法肩を削りすぎずに外れ値を除去するための5つの設定を、実務で確認すべきポイントとともに解説します。
設定1 近傍点数と探索範囲を点密度に合わせる
外れ値除去では、ある点の周囲に存在する点数や、近傍点までの距離を使って正常点か外れ値かを判定する方法が一般的です。このとき重要になるのが、近傍点数と探索範囲です。
近傍点数を多くすると、広い範囲の点との関係から判定できます。しかし、法肩のように地形が急変する場所では、上部の平坦面と法面上の点が同じ近傍に含まれます。異なる方向を向く面が一つの集団として評価されるため、境界付近の点が平均的な分布から外れたと判定されやすくなります。
反対に、近傍点数を少なくしすぎると、局所的な点のばらつきに判定結果が左右されます。小さなノイズ集団が互いを近傍点として支え合い、除去されずに残る可能性があります。したがって、近傍点数は多ければよい、少なければよいというものではありません。
探索範囲についても同様です。探索半径が広すぎると、法肩を越えて平坦面側と法面側の点が一緒に評価されます。探索半径が狭すぎると、点密度の低い箇所で必要な近傍点を確保できず、正常な地形点が孤立しているように見えることがあります。
設定時には、まず点群全体の平均点間隔だけで判断せず、法肩付近の点間隔を確認します。全体として高密度な点群でも、法肩の一部では計測角度や遮蔽によって点間隔が広がっていることがあります。外れ値除去の条件は、最も密な場所ではなく、残したい地形のうち点密度が低い場所を基準に検討することが大切です。
法肩付近を拡大し、隣接点の間隔がどの程度変化しているかを確認します。上部平坦面、法肩、法面中央、法尻のそれぞれで点間隔を見れば、同じ探索範囲を全面に適用してよいか判断しやすくなります。場所によって密度差が大きい場合は、点群を範囲分けして異なる設定を適用する方法もあります。
計測時の歩行経路や観測方向も確認が必要です。法肩と平行に移動しただけの点群では、法肩の反対側に回り込んだ計測よりも形状が欠けやすくなります。点が存在しない範囲を外れ値除去の設定だけで補うことはできません。法肩の裏側や斜面上部に点が少ない場合は、処理条件を弱めるだけでなく、追加計測の必要性も検討します。
実務では、最初から強い条件を全面へ適用せず、狭い確認範囲を切り出して試験処理を行うと安全です。法肩、法面、平坦部、ノイズの多い場所を含む小範囲で処理し、どの点が消えるか確認します。点数の減少率だけでなく、消えた点の位置を見ることが重要です。
法肩に沿って帯状に点が消えている場合は、近傍点数が多すぎる、探索範囲が広すぎる、または点密度に対して必要近傍数が厳しすぎる可能性があります。空中に浮いた孤立点だけが除去され、地表面の点が連続して残っている状態を目標に調整します。
点密度が大きく異なる点群では、一つの数値を現場全体へ固定するより、計測区画や地形区分に応じて設定を分ける方が適切な場合があります。ただし、区画ごとに条件を変えると処理結果の再現性が低下しやすいため、変更理由と適用範囲を記録することが必要です。
設定2 外れ値の判定しきい値を段階的に調整する
外れ値除去では、周辺点からどの程度離れた点を削除するかを、距離、標準偏差、密度、局所的な面からのずれなどで設定します。この判定しきい値が厳しすぎると、法肩のような地形変化部まで外れ値として扱われます。
法肩は、平坦部から斜面へ傾きが変わる場所です。局所的な平均面を作成して点との距離を評価する場合、境界付近の点は平均面から離れやすくなります。平坦部だけを対象にすれば正常な点でも、平坦部と斜面を一緒に平均化すると、どちらの面にも完全には一致しない点が生じます。
この問題を避けるには、一回の処理で全てのノイズを除去しようとしないことが重要です。最初は明らかに離れた点だけを除去する弱い条件から始めます。その後、残った点を確認し、必要な範囲に限定して追加処理を行います。段階的に処理することで、法肩が削られ始める境界を把握しやすくなります。
最初の段階では、地表面から大きく離れた空中ノイズ、明らかな孤立点、計測対象外の点を中心に除去します。次の段階で、局所的な小さなノイズや地表面付近の不要点を確認します。この順序にすれば、強い条件を点群全体へ適用する必要が減ります。
判定しきい値を決める際には、標準的な設定値だけに依存しないことが大切です。適切な値は、点密度、計測距離、地表の粗さ、法面勾配、使用目的によって変わります。土砂の表面には小さな凹凸があり、舗装面のような滑らかな形状とは点のばらつき方が異なります。同じしきい値を適用すると、土砂表面の正常な凹凸まで消えることがあります。
また、地表面付近にある点をすべて残せばよいわけでもありません。草、落ち葉、木片、ネット、作業用資材などが地表面の近くに存在すると、単純な高さ差だけでは地盤点と区別しにくくなります。しきい値の調整だけで分類できない場合は、範囲選択、断面確認、色や反射の違い、周辺形状との連続性などを併用して判断します。
処理結果を比較する際は、削除点だけを非表示にするのではなく、削除対象となった点を別表示で確認すると効果的です。削除点が法肩に連続して並んでいれば、しきい値が強すぎる可能性があります。削除点が空中や地形から離れた場所へ散在していれば、意図した処理に近いと判断できます。
複数のしきい値で試験処理した場合は、法肩位置の変化も比較します。平面表示では法肩が残っているように見えても、断面上では上端が丸められていることがあります。地表面モデルを作成する前の点群だけでなく、処理後に生成した面の断面まで確認する必要があります。
土量計算では、局所的な形状変化が全体土量へどの程度影響するかも見ます。法肩付近の面積が小さければ体積差も小さいとは限りません。法肩が長く連続する造成地や道路法面では、断面上のわずかな後退が延長方向へ積み重なる可能性があります。
設定値を強くするほど品質が向上するという考え方は避けるべきです。ノイズの残存と地形の欠損は、どちらも土量計算へ影響します。処理の目的は点群を見た目よく整えることではなく、計算対象となる地表面を妥当な状態で再現することです。
設定3 法肩と法尻を保護範囲として分けて処理する
法肩を削らないために有効なのが、法肩や法尻の周辺を保護範囲として分ける方法です。点群全体へ一律に外れ値除去を適用するのではなく、地形変化部とその他の範囲で処理条件を変えます。
法肩と法尻は、地表面の勾配が切り替わるブレークラインに相当します。ここを正しく残すことで、地表面モデルの三角形が地形変化に沿って作成されやすくなります。反対に、境界付近の点が失われると、上部平坦面と法面が緩やかな曲面のようにつながったり、長い三角形が地形を横断したりすることがあります。
保護範囲を設定するときは、法肩を一本の細い線だけで指定するのではなく、一定の幅を持った帯として扱う方が安全です。実際の法肩には凹凸や施工による揺らぎがあり、点群上で完全な直線になるとは限りません。線だけを残すと、その周囲の地形点が消え、結果として境界形状が不安定になることがあります。
まず、未処理の点群を平面表示と断面表示で確認し、法肩のおおよその位置を把握します。必要に応じて複数断面を作成し、法肩が延長方向にどのように変化しているかを見ます。一つの断面だけで保護範囲を決めると、湾曲部や高さが変化する場所を外してしまう可能性があります。
保護範囲内では、外れ値除去を行わない方法だけでなく、条件を弱くする方法もあります。全ての点を無条件に残すと、法肩付近に存在する植生や資材の点まで地表面へ利用されることがあります。そのため、明らかな孤立点だけを除去し、局所的な形状差に基づく強い平滑化は避けるなど、処理内容を分けることが現実的です。
法肩周辺を保護した後、平坦部や法面中央部には通常の外れ値除去を適用します。法面中央部は比較的連続した傾斜面として評価しやすいため、法肩よりも強い条件を適用できる場合があります。ただし、法面に小段、排水溝、浸食跡、転石などがある場合は、それらをノイズと誤認しないように確認します。
法尻も同様に保護が必要です。法尻付近には排水施設、堆積土、植生、側溝などが存在し、点群形状が複雑になりやすい傾向があります。土量計算の対象境界が法尻と一致する場合、点が欠けると面の端部が不自然に補間される可能性があります。
保護範囲を設定した後は、境界部分で処理条件が急に変わることにも注意します。保護範囲内には多くの点が残り、その外側では点が大きく間引かれると、点密度の段差ができます。この状態で地表面モデルを作ると、境界に不自然な三角形が生じることがあります。
処理後は、保護範囲の内外で点密度が極端に変化していないか確認します。必要に応じて、外側の除去条件を弱めたり、保護範囲の幅を調整したりします。法肩を残すことだけに集中せず、周囲の地表面と連続しているかを見ることが重要です。
範囲分けは、作業者の判断に依存しやすい処理です。そのため、誰が処理しても同じ範囲を設定できるように、選択基準を決めておきます。例えば、法肩線の両側を一定幅で保護する、断面上で勾配が変化する区間を含める、構造物周辺を別区分にするなど、現場に合ったルールを文章で残します。
法肩を保護範囲として扱うことは、外れ値除去を弱めるためだけの方法ではありません。点群土量計算で重要な地形要素を先に特定し、重要度に応じて処理条件を変える考え方です。この考え方を法肩以外の小段、天端、掘削底、排水溝、構造物との取り合いへ応用すると、地表面モデルの品質を管理しやすくなります。
設定4 勾配と面の連続性を使って地形点を残す
外れ値を周囲との距離だけで判定すると、法肩のような急変部を誤って除去しやすくなります。そこで、点の密度や距離に加え、勾配と面の連続性を確認することが重要です。
法肩付近の点は、局所的には周囲と異なる方向を向いています。しかし、法肩に沿った方向には連続して分布しています。単独で孤立しているのではなく、地形の境界として帯状または線状につながっている点です。この連続性を確認すれば、空中に散在するノイズとの違いを判断しやすくなります。
例えば、ある点が周辺の平均面から離れていても、同じ高さ変化を示す点が法肩方向へ連続していれば、地形を構成する点である可能性があります。反対に、周囲の面から離れた点が少数だけ存在し、その前後にも連続した形状がなければ、外れ値の可能性が高まります。
勾配を利用する際は、急勾配の点を一律に除外しないことが大切です。法面自体が急勾配である現場では、大きな傾斜は異常ではありません。必要なのは、現場で想定される法面勾配や地形条件と比較して、不自然な変化かどうかを判断することです。
法肩では、上部平坦面から法面へ勾配が変化します。この変化が延長方向へ連続している場合は、正常なブレークラインとして扱います。局所的に一か所だけ鋭く突出している場合は、ノイズ、石、植生、計測対象外の物体などの可能性を検討します。
地表面モデルを作成した後、等高線や陰影だけで確認するのではなく、複数方向の断面を確認すると面の連続性を判断しやすくなります。法面に直交する断面では法肩の形状が分かり、法肩に沿った断面では境界の連続性が分かります。両方を確認することで、一部だけが欠けている状態を見つけやすくなります。
法肩の点が残っていても、周辺の点が少なければ、地表面モデルでは正しく表現されないことがあります。点群処理と面作成は別の工程ですが、土量計算では一体として確認する必要があります。点群上に法肩点が存在するかだけでなく、面の三角形が法肩をまたいで不自然に伸びていないかを見ます。
三角形の辺が上部平坦面から法面下部へ長く伸びている場合は、法肩周辺の点不足、境界条件の未設定、点群の欠損などが考えられます。外れ値除去で点を減らしすぎると、このような長い三角形が増えることがあります。
面の連続性を維持するには、点を残すだけでなく、法肩の位置をブレークラインとして面作成へ反映する方法も有効です。ただし、ブレークラインの位置自体が不正確であれば、誤った形状を固定することになります。未処理点群、現地記録、断面、写真などを照合し、妥当な位置を決めることが重要です。
土量計算で必要な地形の細かさは、計算目的によって異なります。概略的な搬出計画と、出来形や施工数量の確認では、求められる確認範囲や処理精度が同じとは限りません。必要以上に細かな凹凸を残すことが適切とは限りませんが、法肩のように土量境界へ影響する地形変化は優先的に保持する必要があります。
勾配と連続性を用いた判断では、自動処理の結果をそのまま採用せず、地形として説明できる形状かを確認します。外れ値除去は計算処理ですが、最終的には現場地形との整合性を評価する工程です。
設定5 除去前後の断面と土量差を必ず確認する
外れ値除去の設定が適切かどうかは、処理後の見た目だけでは判断できません。法肩を削っていないことを確認するには、除去前後の断面と土量差を比較する必要があります。
最初に、外れ値除去前の点群を保存します。処理後のデータだけを残すと、どの点が削除されたのか確認できなくなります。未処理点群、処理条件ごとの点群、採用した最終点群を分けて保存し、いつでも比較できる状態にします。
断面は、法面に直交する方向で複数作成します。法肩が直線的に続いている現場でも、点密度や計測条件は場所によって変わります。代表断面を一つだけ確認すると、別の場所で発生している欠損を見落とす可能性があります。
断面上では、法肩の水平位置、標高、上部平坦面との接続、法面との接続を確認します。除去前後の点を重ねて表示できる場合は、どの範囲の点が消えたかを確認します。法肩の位置が内側へ移動していないか、上端が丸くなっていないか、法面勾配が変わっていないかを見ることが重要です。
平面上でも法肩線を比較します。処理前後で法肩線が蛇行している、一部が途切れている、局所的に後退している場合は、外れ値除去の影響を疑います。断面と平面を組み合わせることで、三次元的な欠損を把握しやすくなります。
次に、処理前後で同じ計算範囲、同じ基準面、同じ地表面作成条件を使い、土量を比較します。条件を揃えなければ、差が外れ値除去によるものか、範囲や面作成条件によるものか分からなくなります。
処理前の点群にはノイズが含まれているため、その土量を正解として扱うことはできません。ただし、処理の強さを変えたときに土量がどの方向へどの程度変化するかを見る比較材料になります。弱い処理から強い処理へ変更するたびに土量が大きく変わる場合は、地表面の重要な点まで除去している可能性があります。
全体土量だけでなく、法肩周辺を小区画に分けて局所土量を比較すると、影響範囲を把握しやすくなります。現場全体の土量では差が小さく見えても、法肩周辺では形状が大きく変化していることがあります。逆に、局所的な差があっても、計算目的に対して許容可能な場合もあります。
許容できる差を一律の数値で決めるのではなく、計測目的、対象面積、要求される成果、計測方法、現場条件に基づいて判断します。契約や発注者の要件がある場合は、それに沿った確認方法を採用します。
土量差が生じたときは、数値だけでなく差分の位置を確認します。法肩に沿って連続的な差が出ていれば、境界点の除去が影響している可能性があります。空中ノイズの周辺だけに差が集中していれば、意図した除去の結果と考えられます。
処理後の点群から地表面モデルを作成するときは、計算範囲の外側にある点や、端部の三角形にも注意します。法肩の点が減ると、残った点同士が遠距離で結ばれ、実際には存在しない面が作られることがあります。土量差の原因が点の削除ではなく、その後の補間にある場合もあります。
確認結果は、処理条件と合わせて記録します。採用した近傍点数、探索範囲、判定しきい値、保護範囲、処理回数、確認断面の位置、処理前後の土量などを残せば、後から結果を説明しやすくなります。
法肩を守りながらノイズを除去する実務手順
法肩を残した外れ値除去を行うには、処理の順序を固定すると作業しやすくなります。最初に外れ値除去を実行するのではなく、計測範囲と地形の特徴を把握してから条件を設定します。
まず、取得した点群の座標、高さ、計測範囲を確認します。複数回の計測データを結合している場合は、重なり部分に段差や二重面がないかを見ます。位置合わせにずれがある状態で外れ値除去を行うと、一方の面が異常点として削除される可能性があります。
次に、明らかな計測対象外を範囲選択で除外します。重機、作業車両、人物、仮設材、遠方の構造物など、形状から判断できる対象は、自動的な外れ値除去だけに頼らず分離します。大きな物体は点が密集しているため、孤立点除去では消えないことがあります。
その後、未処理点群から法肩、法尻、小段、天端、掘削底、構造物との取り合いなど、土量計算に影響する地形を確認します。法肩付近の点密度が低い場所、欠損している場所、計測方向が偏っている場所を記録します。
法肩の位置を確認したら、一定の幅を持つ保護範囲を設定します。保護範囲の幅は、点間隔、地形の粗さ、法肩位置のばらつきに応じて決めます。法肩線が不明瞭な場所では、狭く限定しすぎず、形状を判断できる範囲を含めます。
次に、法肩以外の代表範囲で弱い条件の外れ値除去を試します。平坦部、法面中央、点密度の低い場所、ノイズの多い場所を含む範囲で、削除対象を確認します。空中に浮いた点が残り、地表面が削られていない場合は、少しずつ条件を調整します。
一度目の処理では、明らかな孤立点や遠方点だけを対象にします。処理後に残ったノイズを確認し、必要な範囲へ二度目の処理を行います。二度目の処理では、法肩保護範囲へ影響しないように適用範囲を限定します。
外れ値除去後は、削除点を別表示で確認します。法肩、法尻、小段、構造物端部に削除点が帯状に並んでいないかを見ます。地表面に沿って連続する点が大量に削除されている場合は、処理条件を見直します。
その後、地表面モデルを作成し、三角形の状態を確認します。法肩を横断する長い三角形、点群のない範囲をふさぐ面、端部から外側へ伸びる面がないかを確認します。必要に応じて境界線やブレークラインを設定し、面の作成範囲を制御します。
断面確認では、法面に直交する断面だけでなく、法肩に沿った断面も作成します。法肩に沿った断面を見ると、一部だけが低くなっている場所や、点密度の変化によって波打っている場所を見つけやすくなります。
最後に、計算範囲と基準面を固定して土量を算出します。処理条件を変えた複数の結果がある場合は、同じ条件で土量を比較します。差が大きい場所は断面へ戻り、どの点の除去が影響したかを確認します。
現地を再確認できる場合は、判断が難しい部分を追加計測します。点群処理だけで欠損を補おうとすると、実測ではなく推定に依存する範囲が増えます。法肩が重要な計算境界である場合は、複数方向から計測し、境界付近の点を確保することが有効です。
点群土量計算の再現性を高める管理方法
外れ値除去は、担当者の判断によって結果が変わりやすい工程です。同じ点群を使っても、近傍点数、探索範囲、しきい値、選択範囲、処理回数が異なれば、残る点と算出土量が変わる可能性があります。
再現性を高めるには、作業結果だけでなく処理条件を保存します。処理前の点群名、処理日、担当者、対象範囲、外れ値除去の方法、各設定値、保護範囲の作成基準、削除点数、確認した断面位置を記録します。
ファイル名だけで処理段階を管理すると、どのデータが最終版か分からなくなりやすいため、未処理、一次除去、範囲別処理、確認用、採用版などの区分を統一します。元データへ直接上書きせず、処理段階ごとに複製して管理することが大切です。
複数担当者が作業する場合は、法肩を残す判定基準を共有します。単に「法肩を削らない」と記載するだけでは、担当者ごとの解釈が分かれます。法肩周辺は帯状に保護する、複数断面で連続性を確認する、削除点を別表示する、処理前後の局所土量を比較するなど、具体的な確認項目を決めます。
計測条件も処理結果へ影響します。計測日時、天候、地表面の乾湿、積雪や水たまりの有無、施工機械の配置、計測経路、取得方向などを記録しておくと、点密度の偏りやノイズの原因を説明しやすくなります。
異なる時期の点群を比較して土量を求める場合は、それぞれに全く同じ数値を設定すればよいとは限りません。取得方法や点密度が異なるデータへ同じ設定を適用すると、除去される地形点の割合が変わることがあります。
重要なのは、設定値を同一にすることだけではなく、同じ品質基準で地表面を作ることです。両時期の点群について、法肩が残っているか、点密度の低い範囲が過度に削られていないか、同じ境界と面作成条件を使っているかを確認します。
一方の点群だけを強く処理すると、実際の土量変化ではなく処理方法の違いが差分として表れる可能性があります。比較対象となる点群は、処理前後の点数、地表面の粗さ、欠損範囲、法肩位置を並べて確認します。
成果を共有するときは、算出した土量だけでなく、計算範囲、基準面、使用した点群の時点、除外範囲、外れ値除去の概要を示します。土量の数値だけでは、後から同じ条件で再計算することが困難です。
外れ値除去に正解となる単一の設定があるわけではありません。計測対象、点密度、地形、使用目的によって適切な条件は変わります。そのため、設定値そのものより、設定を決めた理由と確認結果を残すことが重要です。
作業を定型化する場合は、現場共通の初期設定を作り、そのまま採用するのではなく、法肩を含む確認範囲で試験処理してから調整します。初期設定は作業開始点として利用し、最終条件は実際の点群状態に合わせて決めます。
また、外れ値除去に時間をかけても、元の計測に大きな欠損があれば、正しい地表面を作成することは難しくなります。処理工程の効率化だけでなく、計測時に法肩を複数方向から取得すること、計測漏れを現地で確認すること、重要箇所の点密度を確保することも再現性向上につながります。
まとめ
点群土量計算で外れ値除去を行う際は、ノイズを多く消すことより、計算に必要な地形を残すことが重要です。法肩は勾配が急に変化し、点密度も不均一になりやすいため、正常な地形点であっても外れ値と判定されることがあります。
法肩を削らないための一つ目の設定は、近傍点数と探索範囲を点密度に合わせることです。点群全体の平均密度ではなく、法肩付近や遮蔽部の点間隔を確認し、必要な地形点が孤立点として扱われない条件を設定します。
二つ目は、判定しきい値を段階的に調整することです。一度に強い処理を行わず、最初は明らかな孤立点や遠方点を除去し、残ったノイズだけを追加処理します。削除点の位置を確認し、法肩に沿って地形点が消えていないかを見ます。
三つ目は、法肩と法尻を保護範囲として分けることです。境界を一本の線だけで扱わず、一定の幅を持つ帯として保護します。保護範囲内でも全点を無条件に残すのではなく、明らかなノイズだけを除去する弱い条件を使う方法があります。
四つ目は、距離だけでなく勾配と面の連続性を使って判断することです。法肩の点は周辺の平均面から外れることがありますが、法肩方向へ連続しています。地形としてつながっている点と、空中に散在する点を区別することが重要です。
五つ目は、除去前後の断面と土量差を確認することです。法肩位置、標高、法面勾配、三角形の状態を比較し、同じ計算範囲と基準面で土量差を確認します。全体土量だけでなく、法肩周辺の局所的な差を見ることで、処理による形状変化を把握しやすくなります。
外れ値除去は、点群をきれいに見せるための作業ではありません。現地地形を妥当な形で地表面モデルへ反映し、土量計算の根拠を明確にするための工程です。処理条件、保護範囲、確認断面、土量差を記録しておけば、担当者が変わっても結果を説明しやすくなります。
法肩を正確に残すには、処理設定だけでなく計測段階の品質も重要です。重要な境界を複数方向から取得し、現地で点群の欠損を確認できれば、後処理で過度な補間や推定に頼る範囲を減らせます。
現場で点群を取得し、その場で法肩や法尻の計測漏れを確認したい場合は、LRTK Phoneを活用した計測方法も選択肢になります。取得した点群を確認しながら必要な範囲を追加計測することで、外れ値除去の設定だけでは補えない地形欠損を減らし、点群土量計算に利用しやすいデータを整備できます。