CloudCompareで点群土量計算を完了する8手順【無料】
目次
- 点群土量計算を始める前に理解したい基本
- 手順1 計算目的と基準面を決める
- 手順2 点群データを読み込み座標と単位を確認する
- 手順3 計算範囲を切り出して不要点を除く
- 手順4 ノイズを整理して計算用点群を作る
- 手順5 基準面と比較面の役割を設定する
- 手順6 2.5D土量計算の条件を入力する
- 手順7 計算結果を更新して妥当性を検証する
- 手順8 結果を保存して再計算できる状態にする
- 点群土量計算で起こりやすい失敗と対策
- 無料ソフトで土量計算する際の実務上の注意点
- まとめ
点群土量計算を始める前に理解したい基本
点群を使った土量計算は、現況地形や土砂の表面を多数の三次元座標で表し、基準となる面との差を小さな区画ごとに積み上げて体積を求める方法です。巻尺や限られた断面だけでは形状を細かく捉えにくい不整形な盛土、掘削面、仮置き土、採石材、造成地などでも、対象範囲を面的に確認しながら数量を算出できます。
CloudCompareは、点群や三角形メッシュの表示、編集、比較、分割、再サンプリングなどに対応するオープンソースの点群処理ソフトです。公式サイトではFree softwareとして公開され、Windows向け配布物のほか、macOSやLinuxで利用するための案内も示されています。ただし、配布形態や対応OSは版によって変わるため、導入時には公式ダウンロードページで確認してください。([CloudCompare][1])
CloudCompareで土量を求めるときは、Tools、Volume、Compute 2.5D volumeから開く2.5D体積計算機能を利用できます。この機能は、点群と一定高さの平面との間、または二つの点群の間を格子化し、セルごとの高さ差から体積を集計します。([CloudCompare][2])
ここで重要なのが、2.5Dという考え方です。一般的な地形の土量計算では、上から見た平面上の各格子に対して一つの高さを代表値として与えます。そのため、同じ平面位置に上面と下面が重なる洞窟、張り出し、橋の下面、配管の上下、急なオーバーハングなどは、一つの高さだけでは正しく表現できません。土砂の山や造成面のように、選択した投影方向から見て表面がおおむね一価となる対象に適した方法です。
2.5D体積計算では、各点群を正方形の格子へ投影し、基準側と比較側の両方に有効な高さがあるセルについて、セルの投影面積と高さ差から体積寄与を求めて合計します。したがって、単に点群を読み込んで計算ボタンを押すだけではなく、座標、単位、計算範囲、格子間隔、空セルの扱い、基準面の選び方をそろえる必要があります。
この記事では、土量計算 点群の実務担当者が、初回でも操作の意味を理解しながら結果を出せるように、準備から保存までを8手順で解説します。画面の名称や配置はバージョン、OS、表示言語によって異なる場合がありますが、計算条件を整理する基本的な考え方は共通です。
手順1 計算目的と基準面を決める
最初に決めるのは、何の数量を求めるかです。土量計算では、同じ点群を使っていても、基準面の設定によって結果が変わります。仮置き土の山の体積を求めたい場合、土砂が置かれる前の地盤点群があれば、その地盤を基準面にできます。施工前点群がなければ、周囲の地盤高から推定した面や、設計上の一定標高を基準にする方法があります。ただし、推定面を使った結果は、実測した地盤との差ではなく、設定した仮定との差です。
掘削量を求める場合は、施工前の地表を基準側、掘削後の地表を比較側として扱います。盛土量を求める場合も、施工前後の点群を同じ位置で比較します。切土と盛土が同じ範囲に混在する造成現場では、正負を相殺した差引量だけでなく、増加側と減少側を分けて確認することが重要です。差引量だけを見ると、掘削した量と盛り立てた量が大きくても、最終的な差が小さく見える場合があります。
基準面を決めるときは、計算対象の境界も同時に決めます。土砂の裾がどこまでか、法肩や法尻を含めるか、搬入路の轍を対象に含めるか、構造物周辺を除外するかを整理します。境界が曖昧なまま計算すると、操作担当者ごとに範囲が変わり、同じ点群でも数量が一致しません。
実務では、計算目的、対象範囲、基準面、比較面、投影方向、数量の符号の意味を作業前に一枚のメモへ残しておくと再現性が高まります。例えば、施工前をground、施工後をceil、Z方向を投影方向、正の値を増加、負の値を減少としておけば、結果を受け取る側も判断しやすくなります。
また、点群の取得時点にも注意します。施工途中の点群同士を比較する場合、重機、仮設材、敷鉄板、車両、作業員、水たまりなどが含まれると、本来の地表差ではない体積が加算または減算されます。計算前に、どの時点の状態を数量化するのかを決め、撮影や計測の記録と対応させてください。
手順2 点群データを読み込み座標と単位を確認する
次に、計算に使う点群ファイルを読み込みます。単一の土砂山を一定標高の平面と比較する場合は一つの点群、施工前後を比較する場合は二つの点群を読み込みます。読み込み直後に計算へ進まず、まず表示位置、向き、座標値、単位、点数、名称を確認します。
最も注意したいのは単位です。座標値がメートルで管理されている点群と、ミリメートルで管理されている点群を混在させると、見た目の縮尺も体積も大きくずれます。体積は長さの三乗に比例するため、メートルとミリメートルを取り違えると、体積値には極端な差が生じます。既知の距離を点間計測で確認し、現場の幅や構造物の寸法とおおむね一致するかを確かめます。
施工前後の二時期点群では、同じ座標系と標高基準に配置されているかを確認します。平面直角座標、現場独自座標、機器内部のローカル座標などが混在していると、二つの点群が離れて表示されたり、回転して重ならなかったりします。位置合わせ機能で座標を変換する場合も、単に画面上で重なって見えることだけを合格条件にせず、元データの座標系、基準点、標高基準、変換量を確認します。
大きな座標値を持つ点群では、読み込み時にGlobal Shift and Scaleの適用を提案される場合があります。これは、大きな座標値を内部処理に適したローカル座標へ移し、元の座標との変換情報をメタデータとして保持する仕組みです。複数の点群を同じ座標関係で扱うときは、共通のシフトとスケールを使えるか確認し、エンティティのプロパティに記録された値も保存します。CloudCompareは対応する出力形式で保存する際に元の座標系へ戻す仕組みを備えていますが、形式や処理内容によって情報の保持状況を確認する必要があります。([CloudCompare][3])
読み込んだ点群は、データツリー上で分かりやすい名称に変更します。「施工前」「施工後」「原本」「編集用」「土量範囲」など、役割が分かる名前を付けると、基準側と比較側の取り違えを防げます。原本は非表示にして残し、編集用の複製に対して切り出しやノイズ除去を行うと安全です。
二時期点群がほぼ重なっていても、局所的なずれがないとは限りません。変化していない舗装面、既設構造物、基準点付近などを複数箇所で確認し、高さ差や水平差が求める数量に対して許容できる範囲かを見ます。位置ずれが残ったまま体積計算を行うと、地形変化ではなく位置合わせ誤差を土量として集計してしまいます。
手順3 計算範囲を切り出して不要点を除く
点群全体をそのまま計算すると、対象外の地面、周辺構造物、植生、車両などまで格子化され、計算範囲が不必要に広がります。そこで、まず土量を求める範囲を切り出します。上面表示に切り替え、SegmentやCropなどの機能を使って、対象の外周を整理します。
土砂山では、裾の境界をどこに置くかが数量へ大きく影響します。土砂と地盤の色が似ている場合や、裾が薄く広がっている場合は、三次元表示だけでなく側面表示や高さの色分けも併用します。外周を一度で厳密に囲もうとせず、広めに切り出した後、複数方向から確認しながら不要部分を追加で除くと失敗が減ります。
施工前後の二点群を比較する場合は、両方の点群で同じ平面範囲を使う必要があります。一方だけが広いと、片側にしか高さがないセルが増え、有効な比較面積が減ります。境界をポリラインや別ファイルとして保存・再利用できる作業手順を採用している場合は、同じ境界を両方へ適用します。再利用できない場合も、座標値や変化していない構造物を基準に範囲を一致させます。
計算対象内に重機や資材がある場合は、それらを除外します。地表より高い物体は増加量として集計され、掘削内に置かれた物体は減少量を小さく見せる場合があります。対象物を囲って削除する際は、その下の地面が計測されているかも確認します。地面が隠れて点が存在しない場合、物体だけを消しても空白が残るため、周囲からの補間が妥当か、再計測が必要かを判断します。
植生が含まれる点群では、葉や枝を地盤点として扱わないようにします。ただし、自動分類や高さ条件だけで一律に除去すると、法肩、土砂の突起、小さな盛土まで消す可能性があります。除去後は断面を確認し、本来残すべき地形が欠落していないかを確かめます。
2.5D体積計算は点群を直接格子へ投影するため、体積計算そのものに三角形メッシュの作成は必須ではありません。ただし、計算範囲を広く取りすぎたり、空セルを不適切に補間したりすると、点のない領域まで面が続いているような結果になる場合があります。対象境界を必要最小限に整え、土量のない周辺まで大きく含めないことが重要です。
手順4 ノイズを整理して計算用点群を作る
範囲を切り出したら、孤立点、反射ノイズ、飛び点、重複点などを整理します。ノイズ除去の目的は、見た目を滑らかにすることではなく、実在しない点が格子の代表高さに採用されるのを防ぐことです。特に最大高さをセル代表値にする場合、上方の飛び点が一つあるだけで、そのセルの体積が過大になる可能性があります。
最初に側面表示で点群を確認し、地表から大きく離れた点を手動で除きます。その後、近傍点との距離や点密度を利用したSOR filterやNoise filterなどを必要に応じて使います。自動処理のしきい値を強くしすぎると、鋭い法肩、岩塊、土砂表面の凹凸までノイズと判定されるため、処理前後を切り替えて確認してください。
点数が非常に多く操作が重い場合は、計算目的に合わせて間引きを検討します。ここで大切なのは、無作為に点を減らすことではなく、一定の空間間隔を保つ方法を選ぶことです。元の点密度が場所によって大きく異なると、密な部分だけが過度に残り、疎な部分は空セルになりやすくなります。均一な空間間隔へ整理すると、格子間隔を決めやすくなります。
ただし、間引き間隔を大きくしすぎると、轍、法肩、小さな掘削、排水溝などの形状が失われます。最終的な格子間隔より極端に粗い点群へ変換しないようにします。細かな凹凸を数量へ反映したいのに、凹凸より大きな間隔で点を減らすと、後から細かな格子を指定しても元の形状は復元できません。
土砂表面を過度に平滑化する処理も避けます。土量計算では、凹凸をならすと局所的な増減が変わり、境界や法肩の位置も移動する可能性があります。測定ノイズと実際の地形変化を区別し、平滑化を行う場合は処理条件と処理前データを保存します。
施工前後の点群は、可能な限り同じ基準で整理します。一方だけを強く間引き、もう一方を高密度のまま使うと、格子内の代表高さの性質が異なります。完全に同じ点密度にする必要はありませんが、両者の空セル率や表面の再現性が大きく違わないように調整します。
手順5 基準面と比較面の役割を設定する
計算用点群を準備したら、対象の点群を一つまたは二つ選択し、Tools、Volume、Compute 2.5D volumeの順に進みます。計算画面では、基準側と比較側の役割を割り当てます。CloudCompare公式Wikiでは、基準側をgroundまたはbefore、比較側をceilまたはafterとして扱い、それぞれに選択した点群または一定高さを設定できると説明されています。([CloudCompare][2])
仮置き土の体積を求める場合、ground側に地盤点群または基準標高、ceil側に土砂表面の点群を設定します。施工前後を比較する場合、ground側に施工前、ceil側に施工後を設定すると、施工後が高いセルは正、施工後が低いセルは負として現れます。役割を入れ替えると符号が反転するため、どちらを増加、どちらを減少として読むかを作業記録へ残します。
一定標高を基準にする場合、その標高が対象範囲全体に適用できるかを確認します。傾斜地に水平な一定標高を置くと、土砂ではなく元地形の傾斜まで体積に含まれます。傾斜した地盤では、施工前点群、周囲地盤から作成した点群、設計面を点群化したデータなどをground側に用いる方が、目的に合う場合があります。
基準面が対象物の下に隠れて計測できない場合は、周囲の地盤から内側を補間することがあります。しかし、土砂の下にくぼみや盛り上がりがあっても、堆積後の点群だけからは分かりません。補間面は推定であることを明記し、可能であれば堆積前の点群や設計図面と照合します。
投影方向も確認します。一般的な地形の土量ではZ方向を選ぶことが多いものの、座標軸の割り当てが通常と異なるデータでは、画面上の上下と標高軸が一致しない場合があります。上面、正面、側面を切り替え、どの軸が鉛直方向かを座標値で確認します。誤った方向へ投影すると、斜面を横から格子化するなど、意図しない体積になります。
2.5D計算では、投影方向に沿って各格子の高さを一つにまとめます。同じ格子内に複数の層がある対象では、その全体を表現できません。土砂表面の上にシート、配管、足場などが重なる場合は先に除外し、対象表面がおおむね一価として扱える状態に整えます。
手順6 2.5D土量計算の条件を入力する
役割を設定したら、格子間隔、格子範囲、セル内の高さの決め方、空セルの扱いを入力します。ここが土量計算の結果を左右する中心部分です。公式Wikiでは、格子は正方形で、投影方向はX、Y、Zから選び、同じセルへ複数点が入る場合の高さは最小、平均、最大から選択すると説明されています。条件を変更した後はUpdateを押して再計算します。([CloudCompare][2])
格子間隔は、小さいほど細かな形状を表現しやすくなりますが、点密度に対して小さすぎると空セルが増えます。反対に大きすぎると、法肩、轍、小さなくぼみが平均化され、境界も粗くなります。適切な値は点群密度、求める数量の用途、地表の粗さ、対象面積によって異なるため、固定値を全現場へ適用するのではなく、複数条件で結果を比較します。
初回は、点群の代表的な点間隔より細かすぎず、対象形状を表現できる候補を設定します。次に、格子間隔を細かくした場合と粗くした場合の数量、matching cells、non-matching cells、投影面積を比較します。格子間隔を少し変えただけで数量が大きく変わる場合、点密度不足、境界の曖昧さ、ノイズ、空セル処理の影響が考えられます。
セル内に複数の点が入る場合、高さの代表値として最小、平均、最大を選びます。土砂の上面を表現するから常に最大が正しいとは限りません。飛び点や植生が残っていると最大値は過大になりやすく、地面下のノイズがあると最小値は過小になりやすくなります。平均値は外れ値の影響を和らげる場合がありますが、鋭い法肩や細い溝を平滑化することがあります。点群の性質を見て選び、代表値を変えた感度確認も有効です。
空セルは、格子内に点が存在しない場所です。CloudCompareのGUIでは、空のまま残す、点群の最小高、平均高、最大高、指定値で埋める、補間するなどの選択肢があります。補間は点群の凸包内にあるセルを対象とするため、複雑な境界や大きな欠損では、補間された範囲が現場の有効範囲と一致するとは限りません。([CloudCompare][2])
空セルをすべて機械的に埋めればよいわけではありません。計測漏れ、車両の遮蔽、反射しにくい水面、急斜面の死角などによる大きな穴を補間すると、実測していない地形を推定で作ることになります。点群内部の小さな欠損と、境界外や大きな遮蔽領域を区別します。小さな穴は補間候補になりますが、大きな穴は再計測、別方向データの追加、計算範囲からの除外を検討します。
格子範囲は、二つの点群が共通して存在する範囲へ合わせます。対象外の余白を広く含めると空セルが増え、補間の影響も広がります。Edit gridなどで範囲を設定できる場合は、事前に決めた境界へ合わせ、上面表示で外周を確認します。
手順7 計算結果を更新して妥当性を検証する
条件を入力したら、Updateを実行して格子と体積を更新します。CloudCompareは、各有効セルについて格子間隔の二乗にceilとgroundの高さ差を掛けた体積寄与を求め、それらを合計します。groundとceilの両方に有効な高さがあるセルだけが全体の体積計算に使われ、片側だけが空のセルは集計から除外されます。([CloudCompare][2])
結果画面では、Volume、Surface、Added volume、Removed volume、Matching cells、Non-matching cellsなどを確認します。ここでSurfaceは、起伏を追った実際の三次元表面積ではなく、両方の高さが有効なセルの投影面積を合計した基準面積です。体積を算出した範囲の広さを確認する指標として扱い、斜面の実表面積と取り違えないようにします。公式Wikiでも、体積は有効セルの投影面積と高さ差から求め、Surfaceは非空セルに基づくbase surfaceとして示されると説明されています。([CloudCompare][4])
総体積が予想に近くても、Matching cellsの割合やSurfaceが想定より小さければ、対象の一部しか比較できていない可能性があります。反対に、補間によって有効範囲が広がっていても、元の点が少ない範囲では推定の割合が高くなります。Matching cellsを機械的に100%へ近づけるのではなく、対象境界、点の被覆、補間範囲と合わせて判断します。
色分けされた差分格子も重要です。盛土した場所、掘削した場所、変化していない場所が現場の状況と一致しているかを見ます。全域が同じ方向へずれている場合は、施工変化ではなく、二時期点群の標高ずれが疑われます。境界付近だけ大きな差が出る場合は、切り出し範囲の不一致や補間の影響を確認します。
妥当性検証では、格子間隔を複数条件で変えて再計算します。細かい格子、中間の格子、粗い格子で結果を比較し、数量がどの程度安定するかを確認します。同時にMatching cells、Non-matching cells、Surfaceも記録します。数量が近くても、有効な投影範囲が変化している場合は、単純に同じ結果が得られたとは判断できません。
セルの代表高さも変更して確認します。平均値と最大値で結果が大きく異なる場合、上方ノイズ、植生、点密度の偏りなどが考えられます。最小値と平均値の差が大きい場合は、地表より下のノイズや複数層が混在していないかを断面で確認します。
既知寸法での概算も行います。おおむね直方体に近い土砂なら、幅、奥行き、平均高さから概算体積を求め、計算結果の桁が妥当かを見ます。複雑形状では概算と一致しませんが、単位誤り、範囲誤り、基準面の上下反転などの大きなミスを発見する助けになります。
さらに、変化していない平坦部を小範囲で比較し、体積差が過大になっていないかを確認します。本来変化がない場所で一定方向の差が出る場合、位置合わせ、標高基準、機器条件、表面処理がそろっていない可能性があります。その差を把握せずに大面積へ適用すると、わずかな標高差でも大きな体積差になります。
警告表示が出た場合は無視しません。公式Wikiでは、格子間隔が小さすぎる場合や空セルが多い場合、レポート付近に赤い警告が表示され、その警告を無視しないよう案内されています。格子を粗くする、点群を追加する、範囲を狭める、空セルの扱いを見直すなど、原因に応じて設定を戻します。([CloudCompare][2])
手順8 結果を保存して再計算できる状態にする
最後に、計算結果と条件を保存します。画面に表示された体積値だけを報告書へ転記すると、後から同じ結果を再現できません。少なくとも、使用した点群ファイル、計測日時、基準側と比較側、座標系、単位、Global Shift and Scale、投影方向、格子間隔、セル代表高さ、空セル処理、計算範囲、Surface、Added volume、Removed volume、Volumeを記録します。
計算画面のレポートは、Copy to clipboardボタンでクリップボードへ転送できます。転記後は、案件名、計算日、担当者、点群名称、使用したCloudCompareのバージョンを追記し、どの条件の結果か分かるようにします。([CloudCompare][2])
編集済み点群も保存します。ただし、原本と同じファイル名で上書きせず、原本、切り出し後、ノイズ除去後、最終計算用を区別します。データ容量を抑えるために最終点群だけを残したくなりますが、処理条件の検証が必要になったとき、原本がなければやり直せません。
計算範囲に使ったポリラインや境界情報を保存できる場合は、それも残します。施工前後で同じ範囲を使った根拠になり、翌月の出来形確認や別担当者による再計算にも利用できます。計算範囲を画面上の目視だけで再現しようとすると、裾や法尻の位置が少しずつ変わります。
結果のファイル名には、案件、対象、時点、格子間隔、基準条件を含めます。例えば、造成区画、施工前後、Z方向、格子条件が分かる名称にすると、複数案を比較しやすくなります。特定の条件だけを最終値として採用した場合も、比較した条件と採用理由を残します。
社内提出や発注者説明では、体積値だけでなく、計算範囲、差分分布、空セルの扱い、基準面の根拠を説明します。点群土量計算は、ソフトが自動で唯一の正解を保証する処理ではなく、現場条件に基づいて設定したモデルから数量を求める作業です。数値の小数桁を増やすより、条件、検証方法、適用限界を明示する方が実務上の信頼性を高めます。
点群土量計算で起こりやすい失敗と対策
よくある失敗の一つは、施工前後の点群がわずかにずれたまま計算することです。広い面積では、数センチ程度の一様な高さ差でも体積へ大きく影響します。変化していない場所で差分を確認し、必要に応じて座標や位置合わせを見直します。
二つ目は、格子間隔を細かくすれば精度が上がると考えることです。点密度より細かい格子を設定すると空セルが増え、比較に使われない範囲や補間範囲が増えます。格子の細かさだけでなく、点密度、Matching cells、Non-matching cells、Surface、数量の安定性を合わせて評価します。
三つ目は、土砂の下の地盤を一定標高で代用し、実測値と同じ意味で扱うことです。水平な床面なら一定標高が有効な場合もありますが、傾斜地や不陸のある地盤では基準面の仮定が体積に直接反映されます。推定面を使った場合は、その根拠と不確かさを明示します。
四つ目は、不要物を消した後の空白を無条件で補間することです。小さな欠損は周囲から推定できても、大型車両や資材の下は地形が分かりません。補間範囲が大きい場合は、別時点の点群、別方向の計測、現場記録を用いて補います。
五つ目は、切土と盛土を差引量だけで判断することです。掘削と盛土が同時に発生すると、正負が相殺されて小さなVolumeになります。Added volume、Removed volume、差引値を分け、工種や出来高の目的に合う値を採用します。
六つ目は、2.5Dで扱えない対象へ適用することです。張り出しや空洞のように同じ平面位置へ複数の面が存在する場合、一つの代表高さでは全体を表現できません。その場合は、閉じたメッシュを作成して体積を測る方法や、断面を用いた別の数量算定を検討します。
七つ目は、Surfaceを斜面の実表面積と解釈することです。2.5D体積計算画面のSurfaceは、有効セルの投影面積を合計した値であり、起伏を追った三次元表面積ではありません。報告書では「体積計算に使った投影面積」など、意味が分かる名称を付けます。
八つ目は、結果だけを保存して条件を残さないことです。同じ点群でも設定によって数量が変わるため、再計算できる情報を残さなければ、変更理由や差異を説明できません。計算結果は、処理条件と一体で管理します。
無料ソフトで土量計算する際の実務上の注意点
CloudCompareはオープンソースのFree softwareとして公開されており、ソフトウェア本体を無償で入手して点群の確認、切り出し、比較、土量計算を始められます。ただし、Free softwareは利用条件がないという意味ではありません。ライセンス条件を確認し、導入支援、教育、保守、計測機器、外部サービス、社内運用などに別途費用が発生する可能性も分けて考えます。([CloudCompare][1])
また、ソフトが操作できることと、算出値を測量成果や契約数量として採用できることは同じではありません。CloudCompareが現場固有の座標設定、点群品質、境界判断、成果品様式まで自動で保証するわけではないため、適用目的に応じた検証が必要です。
公共工事や発注者指定の業務では、適用する要領、必要な精度、検証方法、成果品形式を事前に確認します。点群から算出した数量を契約数量や出来高へ使う場合、計測方法、基準点、使用機器、処理条件、検証結果の説明を求められることがあります。ソフトが無償であるかどうかにかかわらず、数量の根拠を残すことが必要です。
点群ファイルには現場全体の形状や位置情報が含まれる場合があります。外部へ持ち出すパソコンへ保存するときは、社内の情報管理ルールに従い、不要なデータを残さないようにします。共有するときは、対象範囲だけに切り出したデータや、必要な結果だけを渡す方法も検討します。
点群処理は、データ量が大きいほど端末のメモリや描画性能へ負荷がかかります。元点群を壊さないよう複製し、計算範囲を切り出してから処理すると、操作性を改善しやすくなります。処理が重いからといって最初から極端に間引くと地形情報を失うため、原本を保持したうえで段階的に軽量化します。
現場で繰り返し土量を管理する場合は、毎回同じ手順書を使います。点群の名称、座標確認、切り出し境界、ノイズ処理、格子間隔、空セル条件、結果記録の順序を固定すると、担当者が変わっても差を抑えられます。月次や施工段階ごとの比較では、過去の設定を参照し、変更した項目だけを記録すると効率的です。
まとめ
CloudCompareで点群土量計算を完了する流れは、計算目的と基準面を決め、点群を読み込み、座標と単位を確認し、対象範囲を切り出し、ノイズを整理したうえで、groundとceilを設定し、2.5D体積計算の条件を入力し、結果を検証して保存するという8手順です。
特に重要なのは、格子間隔を細かくすることだけを精度向上と考えないことです。点密度に合った格子を選び、Matching cells、Non-matching cells、Surface、代表高さ、補間方法を確認し、複数条件で数量が安定するかを検証します。施工前後を比較する場合は、座標系、単位、範囲、投影方向を一致させ、変化していない場所で位置ずれを確認します。
また、土砂の下にある地盤を推定した場合や、大きな欠損を補間した場合は、計算結果に仮定が含まれます。体積値だけを提示せず、基準面の根拠と処理条件を残すことで、後から再計算しやすくなり、数量差が生じたときも原因を説明できます。
無料で入手できる点群処理ソフトを活用すれば、事務所で詳細な切り出しや条件比較を行えます。一方、計算品質は現場で取得した点群の範囲と状態に左右されます。計測漏れを減らし、施工前後を同じ条件で記録し、必要な位置情報を現場で確実に取得する運用まで整えることが大切です。
現場で点群を取得してその場で形状を確認し、土量計算へつなげる作業を効率化したい場合は、LRTK Phoneを用いた計測方法も確認してみてください。