層ごとの出来形体積計測が盛土厚管理に役立つ理由
盛土工事では、完成時の高さや外形だけでなく、材料のまき出し、含水状態の調整、締固め、表面整正を層ごとに管理することが重要です。上の層を施工すると下の層は見えなくなるため、施工途中の地表面を記録しておくと、どの段階で高さの偏りが生じたのかを後から追跡しやすくなります。
三次元計測で施工前後の表面を取得し、同じ平面位置における高さの差を求めると、層厚の面的な分布を確認できます。さらに、高さの差を対象面積にわたって積算すれば、その区画で増加した地形体積を算出できます。点で行う高さ確認を面的な確認で補うことにより、測点間にある凹凸、局所的な薄い範囲、走行痕、端部のすり付けなどを把握しやすくなります。
ただし、ここで得られる層厚差分と体積は、計測した二つの表面の幾何学的な差です。これだけで盛土内部の密度、含水状態、締固め度、支持性能を直接判定することはできません。締固め品質は、適用する施工管理基準、試験施工で定めた施工仕様、必要な試験記録などと組み合わせて確認する必要があります。国土交通省のTS・GNSSを用いた盛土の締固め管理に関する要領でも、施工仕様を試験施工で定め、実施工ではまき出し厚や締固め回数を管理する考え方が示されています。
また、層間差分図を契約上の合否判定へそのまま使用できるかは、工事ごとの契約図書、施工計画、適用する出来形管理要領、使用する計測技術の精度確認によって異なります。一般の三次元出来形管理は、計測した出来形面と三次元設計データとの差を評価する仕組みが中心であり、施工途中の二つの実測面を差し引く層厚管理とは目的が同じではありません。公式の出来形管理として扱う場合は、採用する管理方法と規格値を事前に確認しなければなりません。
特に、施工機械に搭載したTSやGNSSの履歴から作成する締固め層厚分布図については、面的な施工状況を把握するための資料であり、表示された層厚だけで合否を判定しないとする要領があります。測位方式や計測精度が異なる別の三次元計測でも、誤差を無視してよいわけではありません。層厚差分を品質管理へ活用するときは、計測精度、層厚の大きさ、許容する不確かさの関係を確認し、必要に応じて代表点を別の方法で照合することが安全です。
体積の合計値だけを見ることにも注意が必要です。一部が厚く別の部分が薄いと、差が相殺されて総体積は計画値に近づくことがあります。反対に、平均厚が目標に近くても、施工前後で外周線が異なれば体積は変わります。そのため、層ごとの管理では、厚さ分布、対象範囲、欠測範囲、体積、施工記録を一体で確認します。
出来形体積と搬入土量も同じ値になるとは限りません。運搬中の土砂、まき出し直後の土砂、締固め後の盛土では、空隙や含水状態が異なります。出来形体積計測で求めるのは計測時点の地表面間の体積であり、車両台数や伝票から集計した搬入量と照合する際は、土砂の状態と集計範囲の違いを整理する必要があります。
層ごとの計測を有効にする鍵は、毎回同じ考え方で取得し、同じ条件で処理し、結果の用途を明確にすることです。施工支援のための傾向把握なのか、社内の工程確認なのか、契約上の出来形管理資料なのかによって、必要な精度、記録、承認手続きは変わります。
ステップ1 管理する層と計測時点を明確にする
最初のステップは、何を一つの施工層として扱い、どの時点の表面を比較するかを決めることです。層番号や計測時点が曖昧なままでは、差分結果がどの施工工程に対応するのか分からなくなります。
まず、管理対象をまき出し厚とするのか、締固め後の仕上がり厚とするのかを区別します。まき出し厚を把握する場合は、下層面と材料を敷きならした後の表面を比較します。締固め後の層厚を把握する場合は、下層面と所定の締固めおよび表面整正が完了した後の表面を比較します。二つを混在させると、層ごとの数値を同じ基準で比べられません。
計測時点は施工計画に組み込みます。締固め完了、表面確認、三次元計測、取得状況の確認、必要な是正、次層施工という順序を現場内で共有します。ただし、計測終了まで次工程へ進めないという運用を一律に設定するのではなく、工事の管理条件、施工区画、天候、工程、安全上の制約を踏まえて承認手順を定めます。
管理区画も事前に設定します。広い現場を一つの区画として集計すると、厚い範囲と薄い範囲が平均化され、原因を特定しにくくなります。施工日、測点区間、工区、施工班、材料区分、使用機械などと対応できる大きさに分け、施工記録から対象区画を追跡できるようにします。
外周線は施工前後で共通に使える基準線を準備します。盛土本体、仮設道路、待避所、材料仮置場、排水経路、構造物周辺の埋戻しなどが隣接する現場では、何を体積に含めるかを明確にします。設計範囲内の出来形体積を確認する線と、実際に材料が広がった範囲を確認する線は、目的に応じて分けて保存します。
層厚の確認条件も計測前に整理します。目標となる仕上がり厚、確認する区画単位、異常値を再確認する条件、再計測を行う条件、施工担当者へ連絡する条件を決めます。契約上の合否判定を行う場合は、独自の色分けや社内基準だけで判断せず、契約図書と適用基準に従います。
管理では平均値だけに依存しません。平均値に加えて、厚さ分布、連続して薄い範囲の面積、負の差分が生じた位置、端部や構造物際の状態を確認します。ただし、最小値や最大値は一つの異常点に左右されやすいため、元の点群と周辺の連続性を見たうえで評価します。
記録の識別方法も固定します。工区、区画、層番号、施工日、計測日時、計測時点、材料区分、担当者を共通の形式で記録します。第3層の締固め後面が第4層の施工前面を兼ねる場合でも、ファイル名と台帳に両方の役割を明記します。
単に「施工前」「施工後」と名付けるだけでは、層数が増えたときに取り違えが起こります。比較に使った二つの面、外周線、処理条件、結果ファイルを同じ識別番号で結び付け、後から計算過程をたどれる状態にします。
ステップ2 基準点と計測条件を全層で統一する
二つ目のステップは、施工前後の三次元データを同じ座標基準で比較できるようにすることです。層厚は二つの面の差で求めるため、上層面と下層面の間に系統的な高さずれがあると、そのずれが層厚へ直接含まれます。
高さ方向に一様なずれがあると、施工範囲全体が実際より厚く、または薄く表示されます。水平方向のずれは平坦部では目立ちにくい一方、法肩、法尻、段差、構造物際、傾斜面で大きな差分を発生させます。斜面では水平位置のずれが鉛直差として現れるため、重ね合わせを目視だけで済ませないことが重要です。
工事基準点は、施工開始前に位置と標高を確認し、重機の接触や地盤変位を受けにくい場所へ設置します。長期間使う場合や周辺で掘削、盛土、降雨後の沈下が生じた場合は、安定した別点との関係を再確認します。
基準点が変位したまま計測を続けると、各層のデータは同じ座標系に見えても実際には整合しません。複数層で全面が同じ方向へ偏る場合は、施工方法だけでなく、基準点、機器設定、高さ補正、座標変換の履歴を確認します。
計測方法を途中で変更する場合も、座標系、標高基準、単位、時刻や補正情報の扱いをそろえます。地上からのレーザー計測、写真計測、移動計測、単点測量などは、それぞれ死角や精度特性が異なります。同じ座標へ変換しただけで同等の品質になるとは限らないため、変化しない検証点で整合を確認します。
位置合わせに施工面そのものだけを使うと、実際の施工変化まで吸収してしまうおそれがあります。既設構造物の固定部、施工範囲外の安定面、確認用に設けた検証点など、施工前後で変化しない対象を使って水平・鉛直の整合を確認します。
単位の混在にも注意します。点群、設計面、外周線、断面、体積計算の設定でメートルとミリメートルが混在すると、位置や数量が大きく変わります。出力帳票には座標系、標高基準、距離単位、面積単位、体積単位を記載します。
点密度と地表面作成条件も、比較目的に合わせてそろえます。下層面だけ細かな凹凸を残し、上層面だけ強く平滑化すると、施工差と処理差が混ざります。両面を同じ格子間隔または同等の面作成条件へ整理し、代表値の選び方も統一します。
一方で、点数が多ければ自動的に層厚の信頼性が高まるわけではありません。細かな砕石、土塊、タイヤ痕などを過度に忠実に表現すると、管理したい施工層の厚さより表面粗さが目立つことがあります。想定する異常の広がり、施工材料の粒径、取得精度を踏まえて空間単位を決めます。
各層で統一する条件は現場用の確認票へまとめます。基準点、検証点、座標系、標高基準、計測範囲、必要な取得密度、重要箇所、面作成方法、欠測部の扱い、外周線、保存名を固定すると、担当者が変わっても再現性を保ちやすくなります。
ステップ3 施工前の下層面を正確に計測する
三つ目のステップでは、新しい材料を投入する前の下層面を取得します。下層面は層厚計算の基準であり、上の材料で覆われた後に欠測へ気づいても、同じ状態を再現することは困難です。
計測時点は、直前の層の締固めと必要な表面整正が完了し、次層の材料を投入する前とします。走行痕が残った面を基準とするのか、整正後の面を基準とするのかは施工計画に合わせて決めます。計測後に削取り、補充、整正、排水などで表面を変えた場合は、変更量が層厚計算へ反映されるよう再計測または変更記録を行います。
対象範囲には重機、車両、資材、ホース、標尺、工具などを残さないようにします。下層面に物体があると、その上面が地盤として扱われ、上層面との差分が局所的に薄く表示されます。移動できない構造物や仮設物は位置を記録し、計算対象から除外する範囲を事前に決めます。
水たまりにも注意が必要です。計測方式によっては水面を取得したり、水面下が欠測したりします。水面を下層面として扱うと、水深分を含む不適切な差分になる可能性があります。可能な範囲で排水し、地表面が確認できない場所は欠測または除外として明示します。
軟弱部やぬかるみでは、計測者の歩行や機器設置によって表面が変形することがあります。安全を優先し、安定した位置から取得するとともに、軟弱範囲を施工記録へ残します。表面の変形が施工品質に関係する場合は、計測だけで判断せず、現場の管理手順に従って確認します。
法肩、法尻、段差、構造物との接続部は形状が急変するため、欠測と補間誤差が生じやすい場所です。複数方向から取得し、形状の折れ目を表す点や線を確保します。折れ点が不足したまま面を作ると、実際とは異なる斜面が生成され、体積が過大または過小になります。
壁際や基礎周辺で点が取れない場合、周囲の点から自動補間された面を実測面と同じように扱わないことが重要です。欠測範囲を表示し、層厚評価に影響する大きさであれば追加計測、単点測量、断面測定などで補います。
取得データには、作業員、飛来物、粉じん、反射の乱れなどによる不要点が含まれる場合があります。不要点を除去しないと突起や穴ができますが、除去条件を強くし過ぎると法肩や実際の地形まで削除されます。平面表示だけでなく、縦断、横断、高さ分布で処理結果を確認します。
面を作成する範囲は実測点が存在する場所を基本とします。外周部の点が不足した状態で面を延長すると、実際には計測していない三角形や格子が生成されます。体積計算の外周線が実測範囲を越えていないかを確認します。
原データ、編集後点群、作成面、外周線、除外範囲は分けて保存します。原データを残しておけば、異常値が見つかった際に除去処理や面作成条件を再検証できます。現場を離れる前には、保存状態、取得範囲、基準点、重要箇所の欠測を簡易確認します。
ステップ4 締固め後の上層面を計測する
四つ目のステップでは、対象層の所定工程が完了した後に上層面を取得します。締固め後の仕上がり厚を管理する場合は、必要な転圧と表面整正が終わった時点を計測時点とします。転圧途中の面では、その後の沈下や整正が反映されません。
計測までの間に車両が通行した場合は、わだち、局所沈下、材料の押し出しがないか確認します。施工完了時の状態を記録したい場合は、できるだけ状態が変わる前に計測します。降雨後は、浸食、泥濘化、水たまり、材料流出などがないかを確認し、天候と計測時刻を記録します。
上層面の計測時にも、重機、資材、作業員などを範囲外へ移動します。点群処理で大きな物体を除去できても、履帯周辺の盛り上がり、排土板で押された材料、車両の沈下跡まで自動的に適否判断できるとは限りません。計測前に、何を出来形面として扱うかを現場で確認します。
下層面と上層面の共通範囲を確保します。上層面だけ狭いと端部の差分を求められず、上層面だけ広いと下層面のない範囲を補間することになります。原則として両面に実測データがある範囲を使い、欠測部分を体積へ含める場合は補間方法と影響を記録します。
盛土端部で材料が設計範囲外へ広がった場合は、設計範囲内の体積と範囲外の体積を分けます。日ごとの施工区画が隣接する場合は、境界線を共通化し、二重計上と未計上を防ぎます。
点密度、取得方向、面作成条件は下層面と同等になるよう計画します。上層面だけ粗いと狭い薄層が平均化され、上層面だけ過度に細かいと小石や土塊の影響が強く出ます。両面を同じ処理条件へそろえる前に、元データの取得品質が比較に十分かを確認します。
面作成後は下層面と重ね、固定した縦断と横断で確認します。平坦部で一様なずれがないか、法肩や法尻で面が交差していないか、構造物際に不自然な補間がないかを見ます。局所異常がある場合は、元点群、現場写真、施工記録を照合します。
追加材料を投入した場所、削った場所、重機が沈下した場所、排水処理をした場所は写真や位置記録を残します。上層面についても原データ、編集後点群、地表面、外周線、除外範囲を分け、下層面と同じ命名規則で保存します。
ステップ5 層間差分から盛土厚と体積を算出する
五つ目のステップでは、下層面と上層面を比較し、層厚分布と地形体積の増加量を算出します。計算機能を実行する前に、座標、共通範囲、欠測、外周線、面作成条件が一致しているかを確認します。
水平な範囲では、同じ平面位置における上層面の標高から下層面の標高を差し引いた値を、鉛直方向の層厚として扱えます。上層面が高ければ正、低ければ負になります。負の値が出た場合は、直ちにゼロへ置き換えず、施工面の削れ、走行痕、降雨浸食、位置ずれ、異常点、補間の影響を確認します。
点状に孤立する極端な値は計測ノイズの可能性があります。帯状に連続する値は走行痕や敷きならしの偏り、法肩や法尻に沿う値は水平位置のずれや面の作り方が原因となることがあります。値の大きさだけでなく、形状、連続性、面積、発生場所を確認します。
平均値、最小値、最大値、体積だけでなく、目標厚との差が一定範囲を超える面積や位置を確認します。ただし、独自に設定した色分け境界を契約上の規格値と混同しないことが重要です。層厚図を施工支援資料として使う場合と、正式な出来形管理資料として使う場合を区別します。
表示条件は全層で統一します。層ごとに色範囲を自動調整すると、同じ色が異なる厚さを示し、比較を誤ることがあります。計画厚と確認したい偏差を基準に凡例を固定し、欠測、除外、補間範囲は別表示にします。
格子間隔は結果に影響します。細かな格子は局所凹凸を捉えますが、表面粗さやノイズの影響も受けやすくなります。粗い格子は滑らかになりますが、狭い薄層を見落とす可能性があります。点密度、計測精度、施工材料、層厚、確認したい異常の広がりを踏まえて設定し、変更した場合は理由を残します。
体積は、格子または三角形ごとの高さ差と平面面積から求めた値を対象範囲で積算します。同じ点群でも、外周線、格子間隔、地表面の作り方、欠測補間、負値の扱いによって結果は変わります。計算条件を記録し、同じデータから同じ結果を再現できるようにします。
計画面積に計画厚を掛けた値は概算として使えますが、下層面に凹凸がある場合や端部ですり付ける場合、三次元差分による体積とは一致しません。理論値との差が出ても直ちに過剰施工や不足と判断せず、下層形状、外周線、施工範囲を確認します。
搬入数量との比較では、運搬状態と締固め後状態の違いを考慮します。搬入量と出来形体積が一致しないという理由だけで、計測または材料記録のどちらかを誤りと判断することはできません。
斜面では、鉛直方向の差と斜面に直角な方向の厚さが異なります。管理対象が鉛直厚なのか、法面に直角な厚さなのか、設計断面上の寸法なのかを確認します。必要に応じて断面上で評価し、鉛直差分図だけで法面の層厚を断定しません。
設計面との差と層間差分も区別します。上層面が設計高さに合っていても、下層面が高ければ当該層は薄いことがあります。反対に当該層の厚さが目標に近くても、下層までの累積差によって設計面とのずれが残る場合があります。
計算後は施工方向の縦断、直交方向の横断、異常箇所を通る断面を確認します。代表点で別の測定結果がある場合は照合し、全面的な偏りがないかを確認します。三次元出来形管理で計測面と設計面を比較する場合は、規定された面データ、計測密度、評価方法に従う必要があります。
ステップ6 判定結果を記録して次層へ反映する
六つ目のステップは、計測結果を目的に応じて評価し、施工へ反映することです。数値と色分け図を保存するだけでは、原因の確認や次層への改善につながりません。
まず、薄い範囲、厚い範囲、負の差分、急変部を施工区画や構造物と対応させます。異常が見つかった場合は、計測・処理の問題か、実際の施工状態かを切り分けます。欠測補間、外周線のずれ、基準点の変位、異常点が原因であれば、現場を手直しする前に再処理や再計測を検討します。
実際の施工不足が疑われる場合は、施工管理責任者の判断と工事の手順に従って対応します。単に材料を追加すればよいとは限らず、既に締め固めた面との一体性、追加部分の施工方法、再締固めの条件を確認する必要があります。対応後は、必要に応じて再計測と記録更新を行います。
厚い範囲についても、層厚図だけで締固め不良と断定しません。下層面の凹部を埋めた結果として鉛直差が大きい場合や、測位誤差が含まれる場合があります。一方、施工厚が試験施工で定めた条件から外れている可能性もあるため、まき出し記録、締固め回数、材料、含水状態、現場試験と合わせて確認します。
特に、締固め層厚分布を面的な施工状況の把握に用いる場合、表示値だけで合否を判定しないという公式要領の考え方に留意します。計測方法と精度が異なる場合でも、層厚図が締固め品質そのものを示すわけではないという点は共通です。
判定記録には、対象層、施工区画、施工日、計測日時、計測時点、使用した下層面と上層面、基準点、検証点、座標条件、外周線、点密度、格子間隔、面作成方法、除外範囲、補間範囲、層厚統計、体積、異常箇所、確認結果、対応内容を記載します。
処理を変更した場合は、初回結果を上書きせず、修正前後を残します。異常点除去、外周線変更、補間制限、座標修正、格子変更によって数量がどの程度変わったかを追跡できるようにします。
手直し部分を再計測する場合は、修正範囲より広い範囲を取得し、周囲の変化していない部分で既存データとの整合を確認します。狭い切り出しだけを差し替えると、境界に段差、重複、隙間が生じることがあります。
次層へ進む判断では、表面形状だけでなく、適用される品質管理項目が完了しているかを確認します。三次元計測は表面の位置と形状を把握する手段であり、材料品質や締固め状態を単独で証明するものではありません。
各層のデータを継続して保存すると、完成時に高さの偏りが見つかった際、どの層から傾向が始まったかを追跡できます。同じ場所が繰り返し薄くなる場合は、材料の荷下ろし位置、敷きならし方法、機械の走行、基準高さの伝達など、共通原因を検討できます。
層ごとの体積を合計して工区全体と照合する際は、途中の掘削、材料撤去、法面整形、区画境界の重複、計測不能範囲を考慮します。各層の単純合計と完成時の地形差分が一致しない場合でも、施工履歴と計算範囲の違いで説明できることがあります。
計測結果は、日報、施工写真、材料記録、締固め記録、試験結果、手直し記録と層番号で関連付けます。帳票から原データと処理結果へたどれる状態にすると、後日の説明と再検証が容易になります。
層ごとの出来形体積計測で注意したい誤差要因
代表的な失敗は、下層面を計測する前に次層の材料を投入することです。下層面が取得できなければ、設計面や周囲から推定することになりますが、施工前に存在した凹凸や走行痕を正確に復元できません。推定面を使用した結果は、実測面同士の差分と明確に区別します。
計測時点の不統一も大きな誤差要因です。ある層は締固め途中、別の層は整正完了後では、層厚の意味が異なります。「施工後」だけでなく、どの工程まで完了していたかを記録します。
基準点の変位や高さ設定の誤りは、範囲全体に同じ方向の差を発生させます。全面が一様に厚い、または薄い場合は、施工状態だけでなく、基準点、検証点、座標変換、機器設定を確認します。
施工前後で外周線が異なると、体積が変わります。毎回目視で囲むのではなく、共通の計画線を基本とし、実施工範囲を確認する線は別に管理します。隣接区画の重複と隙間も点検します。
欠測部の無条件な補間は避けます。画面上に面が表示されていても、実測したとは限りません。壁際、法尻、構造物周辺の大きな欠測は体積へ影響しやすいため、追加計測または除外を検討します。
仮設物や移動体の除去不足も厚さ分布を乱します。下層面の物体は薄い差分、上層面の物体は厚い差分を生じさせます。反対に除去し過ぎると、法肩、段差、実際の凹凸が消えます。処理条件を固定し、変更理由を残します。
格子間隔や代表値が層ごとに異なると、表面の再現性が変わります。平均値、中央値、最低点、最高点などの選択によって面の高さは変わるため、比較面では同じ考え方を使います。
最小値だけを重視すると、一つの異常点に影響されます。平均値だけを重視すると、薄い範囲と厚い範囲が相殺されます。厚さ分布、連続性、影響面積、断面、体積を組み合わせて確認します。
斜面を鉛直差だけで評価すること、締固め品質を表面差だけで断定すること、搬入量と出来形体積の一致を求め過ぎることも避けるべきです。結果が示している物理量と、管理したい項目を区別することが重要です。
計算結果の上書きも再現性を損ないます。原データ、初回処理、修正処理、最終結果を分け、誰が、いつ、何を変更したかを記録します。
盛土厚管理を継続しやすくする運用のポイント
層ごとの計測を継続するには、特定の計測担当者だけに依存しない仕組みが必要です。現場ごとに手順を定め、施工担当者、計測担当者、品質管理担当者の役割を共有します。
手順書には、計測対象、層の定義、区画、計測時点、基準点、取得範囲、重要箇所、現地確認、データ保存、解析、結果確認、次工程へ進む手続きを記載します。計測機器の操作だけでなく、現場で誰が表面状態を確認し、誰が結果を承認するかを明確にします。
工程表には計測時間と確認時間を含めます。広い工区では区画を分け、施工と計測を安全に並行できる順序を検討します。工程が遅れたときにも下層面の記録が省略されないよう、代替担当者と連絡方法を決めます。
計測直後には、現地で取得範囲、基準点、重要箇所、データ保存を確認します。詳細解析を後で行う場合でも、次層で覆われる前に再取得できる状態を残します。
固定した検証断面を設けると、複数層の傾向を比較しやすくなります。中央部が高い、片側が薄い、端部で補間が生じるなどの傾向を早期に把握できます。異常箇所だけでなく、変化しない検証点も毎回確認します。
施工担当者は、材料追加、削取り、重機沈下、排水、走行経路、施工中断などを計測担当者へ伝えます。計測担当者は数値一覧だけでなく、現場で位置を特定できる図、距離、区画名、断面を使って結果を返します。
処理条件はひな型として保存します。座標、単位、格子間隔、面作成条件、外周線、補間制限、色分け、出力項目を共通化します。現場条件で変更した場合は、変更前後と理由を台帳へ記録します。
層数が多い場合は管理台帳を作成します。層番号、施工日、計測日、区画、材料、下層面、上層面、処理状況、層厚結果、体積、確認結果、手直し、承認状況をまとめると、未計測や未確認を見つけやすくなります。
保存先とフォルダー構成も統一します。現場、工区、区画、層番号の順に整理し、原データ、編集データ、面データ、計算結果、帳票、写真、施工記録を分けます。ファイル名だけでなく、台帳から保存先へたどれるようにします。
代表箇所は別の測定方法でも定期的に確認します。平坦部だけでなく、法肩、法尻、構造物際、異常箇所を含めると、水平ずれや補間の影響を把握しやすくなります。
雨天後、長期休工後、基準点周辺で重機作業を行った後、計測方法を変更した後は、通常より慎重に基準点と検証点を確認します。工区完了後には、欠測が多かった場所、手直しが繰り返された場所、体積差が大きかった区画を振り返り、次工区の計測計画と施工方法へ反映します。
まとめ
層ごとの出来形体積計測で盛土厚を管理するには、二つの地表面を差し引くだけでなく、層の定義、計測時点、施工区画、基準点、座標条件、外周線、面作成条件を統一する必要があります。
ステップ1では、まき出し厚と締固め後の仕上がり厚を区別し、計測時点と用途を明確にします。ステップ2では、基準点、座標系、標高基準、単位、検証点、点密度、処理条件をそろえます。
ステップ3では、次層に覆われる前に下層面を計測し、残置物、水たまり、欠測、法肩、法尻、構造物際を確認します。ステップ4では、所定工程が完了した上層面を同じ範囲と条件で計測します。
ステップ5では、層厚分布と地形体積を算出し、平均値だけでなく、連続する薄い範囲、負の差分、端部、断面、欠測、補間の影響を確認します。斜面では鉛直差と法面直角方向の厚さを区別します。
ステップ6では、計測・処理の問題と実施工の状態を切り分け、必要な再処理、再計測、施工上の対応を行います。結果は施工記録、締固め記録、試験結果、写真と層番号で関連付けます。
最も重要なのは、層間差分図や体積値を、盛土品質を単独で証明する数値として扱わないことです。三次元計測は表面形状と施工履歴を面的に把握する有効な手段ですが、締固め品質や契約上の合否は、適用する基準、計測精度、試験施工、必要な品質管理資料と合わせて判断します。
この区別を守りながら各層のデータを蓄積すれば、完成時だけでは分からない施工途中の偏りを追跡し、手直しの早期化、数量の説明、次区画の施工改善へつなげられます。