出来形体積計測で平滑化を検討する理由
出来形体積計測では、施工前後の地表面、設計面と出来形面、異なる時期に取得した計測面などを比較し、切土量や盛土量を面的に算出します。点群や格子状の標高データを利用すると、限られた測点や横断面だけでは把握しにくい局所的な凹凸も確認できます。その一方で、取得データに含まれるすべての起伏が、施工数量へ反映すべき地形とは限りません。
計測データには、機器や処理に由来するばらつきのほか、小石、土塊、植生、重機の履帯跡、水たまり、人、車両、資材、反射条件の悪い部分などが混在することがあります。明らかな不要点を残したまま面を作ると、局所的な突起や穴が生じ、基準面との差分体積が不安定になる場合があります。また、同じ場所を繰り返し計測しても、測点の位置や密度が完全には一致しないため、施工に変化がない場所へ細かな正負の差が現れることがあります。
こうしたばらつきを抑える手段の一つが平滑化です。平滑化は、周辺点や周辺格子の情報を参照して、局所的な高さの変動を弱める処理です。ただし、出来形体積計測で平滑化が常に必要とは限りません。適用する要領、発注図書、使用する計測技術、点群処理ソフトウェア、成果の用途によっては、不要点削除や適切な面生成だけで足りる場合もあります。平滑化を行う場合も、計測面を見やすくするためではなく、数量に不要な微小変動を抑える目的に限定することが重要です。
平滑化を強くすれば精度が上がるわけではありません。盛土の法肩、法尻、狭い天端、小段、掘削上端、底面端部などは、短い距離で傾斜が変化する重要な形状です。周辺を一律に平均すると、この急変部までノイズとして扱われ、角が丸くなることがあります。
法肩が丸くなると、天端幅が実際より狭く見えたり、法面上部の位置がずれたりします。盛土では、角部が削られた形状となり、基準面との関係によって算出体積が小さくなる可能性があります。掘削では、対象範囲や比較面の位置によって、体積が増える場合と減る場合があります。そのため、平滑化による数量影響を一定方向と決めつけることはできません。
延長の長い盛土や広い造成地では、一断面あたりの変化が小さくても、それが連続することで無視できない体積差につながることがあります。全体表示では法肩の丸まりに気づきにくいため、断面、標高差分、区域別体積を組み合わせて確認する必要があります。
本稿で示す三つの設定基準は、すべての工事へ共通する公的な数値基準ではありません。平滑化条件を決めるときの実務的な検証軸です。最終的な採否は、適用する要領や発注条件を優先し、必要に応じて発注者や監督職員と処理方法を確認したうえで決めます。
平滑化で法肩が潰れる仕組み
法肩は、比較的平らな天端と傾斜した法面が接続する境界です。設計上は二つの面が交わる線として表現できますが、実際の施工面は土質、粒径、締固め、仕上げ方法などの影響を受け、完全な鋭角にはなりません。計測点も法肩線上へ一列に並ぶわけではなく、一定の幅とばらつきを持って分布します。
平滑化では、対象点の高さを周辺の点から推定または調整します。法肩上の点を処理するとき、参照範囲に天端側の点だけでなく、法面側の低い点が含まれると、法肩上の高さが下がる方向へ影響を受けます。反対に、法面上部の点は天端側の高い点に引かれ、上がる方向へ影響を受けることがあります。
その結果、天端から法面へ折れる形状が、幅を持った緩やかな曲線へ変わります。処理前には明確だった折れ点が処理後には判別しにくくなり、法肩線の平面位置も内側または外側へずれたように見える場合があります。
参照範囲が広いほど、異なる性質の面が同じ計算へ入りやすくなります。特に天端幅が狭い場合は、一方の法肩を処理するときに天端中央や反対側の斜面まで影響する可能性があります。小段でも同様に、小段の上側法面と下側法面が同時に参照されると、段差が緩やかな斜面へ置き換わることがあります。
処理回数を重ねることも変形の原因です。一回目でわずかに丸くなった形状へ再度平滑化を行うと、二回目はその丸みを基準にさらに平均化します。各回の変化が小さく見えても、累積すると元の法肩から大きく離れる場合があります。
近傍点数で条件を指定する処理では、点密度によって実際の参照距離が変わります。平坦部で点が密なら狭い範囲に必要点数が集まりますが、法面や遮蔽物の周辺で点が疎なら、同じ点数を集めるために広い範囲が使われます。このため、一つの近傍点数を全域へ適用しても、場所ごとの処理強度は同じになりません。
格子データでは、格子化の段階でも形状が単純化されます。格子間隔が大きいと、法肩の内側と外側にある複数点が少数の格子へまとめられます。その後に周辺格子を使った平滑化を行うと、格子化と平滑化の二つの工程で角部が丸められる可能性があります。
外れ値除去との混同にも注意が必要です。平坦な天端だけを基準にすると、法面へ移る直前の点が周辺傾向から外れた点に見えることがあります。しかし、その点が実際の法肩を示す重要点であれば、削除すると境界を復元する情報が失われます。不要点削除と形状平滑化は目的を分け、法肩周辺では局所地形を確認して判断する必要があります。
設定基準1 参照範囲を保存したい最小形状より小さくする
一つ目の設定基準は、平滑化の参照範囲を、保存したい最小形状より小さくすることです。ここでいう参照範囲は、半径、窓幅、格子数、近傍点数など、周辺情報をどこまで利用するかを表す条件です。処理方式によって設定項目は異なりますが、異なる面を同じ計算へ入れないという考え方は共通します。
最初に確認するのは、数量計算で残す必要がある形状です。盛土では天端幅、法肩の丸み、小段幅、法尻、排水施設の縁などが候補になります。掘削では掘削上端、底面端部、段切り、小段、構造物との接続部などを確認します。これらのうち最も小さい形状を把握せずに参照範囲を決めると、保存対象より大きな範囲で平均化してしまう可能性があります。
例えば、狭い天端に対して広い参照半径を設定すると、天端中央を処理するときにも両側の法面が影響することがあります。天端全体が低下したり、法肩が内側へ寄ったりすれば、天端幅や体積が変化します。小段幅より大きな窓を使用した場合も、上下の法面が混ざり、小段が消える可能性があります。
一方、参照範囲を小さくしすぎると、抑えたいばらつきが残ります。したがって、除去したい微小凹凸よりある程度大きく、保存したい最小形状より小さい範囲を初期候補とし、実際の断面で試す方法が安全です。この関係はあくまで検討の出発点であり、点密度、地表状態、処理方式によって結果は変わります。
重機の履帯跡や局所的な穴のように、微小ノイズより大きな形状を広域平滑化だけで消そうとすると、法肩や法面も同時に変形しやすくなります。明らかな不要物や一時的な資機材跡は、平滑化へ任せず、現場状況を確認したうえで対象を限定して除外または補間します。ただし、施工面として残すべき不陸を都合よく消さないよう、除外理由を記録する必要があります。
実務では、弱い設定から段階的に試します。まず小さな参照範囲で処理し、平坦部のばらつきがどの程度減るかを確認します。同時に、法肩の高さ、折れ点の位置、天端幅、法面勾配に変化がないかを確認します。目的を満たさない場合だけ参照範囲を少しずつ広げます。
設定を変更するときは、平滑化済みデータへ追加処理するのではなく、同じ前処理段階のデータからやり直します。重ね掛けでは累積効果が分かりにくくなり、どの設定が変形を生んだか説明できなくなるためです。
近傍点数を使う場合は、法肩周辺での実参照距離を確認します。同じ点数でも、点が密な天端と点が疎な法面では参照範囲が異なります。可能であれば、近傍点数だけでなく最大参照距離も制限し、法肩を越えた遠方点が混ざらないようにします。使用するソフトウェアにその機能がない場合は、領域分割や特徴線保護を検討します。
距離を基準にする場合は、範囲内の点数が極端に少なくないかを確認します。点密度不足を広い参照範囲で無理に補うと、実測していない形状を周辺から推定する割合が増えます。法肩付近に大きな欠測がある場合は、追加計測や別方向からの取得を優先します。
格子データでは、格子間隔と平滑化窓を一体で考えます。点群から粗い格子を作り、その格子へさらに広い窓を適用すると、重要形状が二重に単純化されます。法肩を表現できる格子間隔を選び、その後の平滑化は必要最小限に抑えます。
現場全体へ一つの条件を適用する必要はありません。広い平坦部と法肩周辺を分け、法肩周辺だけ参照範囲を狭める方法があります。ただし、領域ごとの処理結果を結合するときは、境界に段差、穴、重複、帯状の高低差が生じていないか確認します。
参照範囲の採用基準は、表面が最も滑らかに見えることではありません。保存すべき形状をまたがず、必要なばらつき低減が得られる最小限の範囲であることです。
設定基準2 高さ差と傾斜変化を使って境界を保護する
二つ目の設定基準は、距離だけでなく、高さ差や傾斜変化を使って異なる面を判別することです。天端と法面は空間的には近接していますが、面の向きが異なります。近い点をすべて同一面として扱うと、法肩を越えて情報が混ざります。
高さ差を条件にできる処理では、周辺点との標高差が大きい場合に、その点の影響を小さくしたり、参照対象から外したりします。ただし、標高差だけでは法肩と通常の法面を区別できません。法面上では、水平距離が離れるほど正常な地形でも標高差が大きくなるからです。
そのため、高さ差は水平距離や局所勾配と組み合わせて評価します。同じ標高差でも、短い水平距離で生じていれば急変であり、長い距離で生じていれば緩やかな傾斜です。法肩では天端の勾配から法面の勾配へ急に変わるため、局所的な面の向きや法線方向の変化を利用できる処理では、境界を保護しやすくなります。
傾斜変化のしきい値を厳しくしすぎると、土粒子や表面の細かな凹凸まで境界として残り、平滑化の効果が弱くなります。反対に緩くしすぎると、天端と法面が同一面と判断され、法肩が丸くなります。適切なしきい値は、法面勾配、点密度、計測精度、表面粗さによって変わるため、一律の角度や高さ差を示すことはできません。
設定検証では、代表的な複数断面を使います。法肩が明確な場所だけでなく、点密度が低い場所、表面が荒れている場所、法面勾配が変わる場所、天端幅が狭い場所も含めます。処理前後で法肩の高さ、折れ点、天端幅、法面上部の傾斜を比較します。
平面表示や陰影表示だけで採否を決めると、法肩の低下を見落とすことがあります。陰影では境界線が残っているように見えても、断面を拡大すると折れ点が横へ移動している場合があります。高さ差や傾斜条件を変更したときは、必ず法肩を横切る断面で確認します。
実測した法肩線や特徴点がある場合は、保護情報として利用できます。法肩線を境に天端側と法面側を分け、それぞれの領域内で平滑化すれば、異なる面の点が混ざりにくくなります。面生成時にブレークラインとして扱える場合も、法肩の連続性を保つうえで有効です。
ただし、設計上の法肩線を実測データへ強制的に当てはめてはいけません。出来形計測では、実際に施工された位置や高さを確認する必要があります。設計線は計測対象を探す参考にはなりますが、実測形状を設計形状へ置き換えるための線ではありません。
法肩周辺だけ平滑化対象から外す方法もあります。天端中央や法面中央へ処理を適用し、法肩から一定幅は元データを残すか弱い条件にします。急に処理条件を切り替えると境界に段差が生じる可能性があるため、法肩へ近づくほど影響を弱める方法や、結合後に差分確認を行う方法が適しています。
高さ差と傾斜変化による保護は、法尻、小段端部、排水溝の縁、掘削底面端部、構造物との接続部にも応用できます。数量計算で重要な境界をあらかじめ整理し、平滑化対象と保護対象を分けることが必要です。
採用条件は、法肩線が見えるかどうかだけでなく、平面位置の連続性でも確認します。点密度が低い部分だけ法肩が内側へ入り込んでいないか、不自然に蛇行していないか、途切れていないかを確認します。断面上の折れ点と平面上の法肩線が対応していることが、境界保護が機能している目安になります。
設定基準3 処理前後の断面と体積差で採否を決める
三つ目の設定基準は、入力した数値だけで良否を決めず、処理前後の形状と数量を比較して採否を判断することです。同じ参照半径や近傍点数を使用しても、点密度、法面勾配、天端幅、地表面の粗さ、欠測位置によって結果は変わります。
最初に、元データを変更せず保存します。計測直後、不要点削除後、平滑化試行、採用面、体積計算用面を分けて管理します。平滑化後のデータで元データを上書きすると、どの部分がどの程度変わったか確認できず、再処理も困難になります。
処理前後を比較するときは、座標系、標高基準、計算範囲、基準面、格子間隔、欠測部の扱いをそろえます。範囲線や基準面まで変更すると、体積差が平滑化によるものか計算条件によるものか分からなくなります。
まず法肩を横切る断面を作ります。盛土では天端中央から法肩、法面、法尻まで含めます。掘削では周辺地盤から掘削上端、法面、底面端部まで確認します。処理前後の断面を重ね、法肩上部の低下、折れ点の横移動、天端幅の変化、法面上部の持ち上がりを確認します。
一断面だけでは不十分です。法肩の延長方向へ一定間隔で複数断面を配置し、点密度が低い場所、計測方向が変わる場所、法面勾配が変化する場所を追加します。局所的な変形と連続的な変形を分けて把握するためです。
次に、処理前後の標高差を面的に確認します。平坦部へ小さな正負の差が分散し、法肩沿いへ連続した帯状差が出ていないかを見ます。法肩上に負の差、法面上部に正の差が帯状に並ぶ場合は、天端側と法面側が混ざり、角部が丸くなった可能性があります。
体積は同じ基準面と範囲で算出し、全体値だけでなく区域別にも比較します。天端、法肩周辺、法面、法尻周辺などに分けると、全体差では相殺される変化を確認できます。法肩で減った体積と別の凹部で増えた体積が相殺されれば、全体差が小さくても形状は大きく変わっている可能性があります。
反対に、体積差が大きいからといって直ちに不適切とは限りません。元データに人、車両、資材、植生、飛び点などが含まれていた場合、適切な不要点削除によって数量が変わります。重要なのは、差の位置と原因を説明できることです。保存すべき地形が変形したのか、不要な対象を除外したのかを区別します。
採用設定を決めるときは、弱い設定、中程度の設定、強い設定を同じ元データから作成して比較します。平坦部のばらつき低減、法肩の位置、天端幅、法面勾配、区域別体積差を確認し、目的を満たす最小限の設定を選びます。
許容できる変化量は、工種、出来形管理方法、計測精度、規格値、成果用途によって異なります。記事だけを根拠に一律の許容値を定めず、適用要領、発注条件、社内基準、協議結果に基づいて決めます。明確な条件がない場合は、代表断面と体積差の確認方法を事前に共有し、採否判断を記録します。
記録には、元データ名、処理日時、担当者、使用した処理方式、参照範囲、近傍点数、高さ差や傾斜条件、格子間隔、保護領域、確認断面、処理前後の体積、区域別差、採用理由を残します。設定値だけでなく、結果をどのように確認したかを残すことで再現性が高まります。
計測データの種類によって変わる注意点
平滑化の影響は、計測方法によって異なります。同じ点群形式でも、点の配置、密度、欠測、ノイズ、重複部の性質が異なるためです。
地上型のレーザー計測では、機器から見えない場所や入射条件の悪い場所で点密度が低下します。法肩の裏側、法面下部、重機や資材の陰では欠測が生じやすくなります。近傍点数で処理する場合、点の少ない側ほど遠い点を参照しやすいため、法面側が天端側へ引かれる可能性があります。
複数地点から取得した点群を合成する場合は、先に位置合わせの状態を確認します。重複部に系統的なずれが残ったまま平滑化すると、二つの面の中間へ形状が移動し、本来の法肩まで変形する可能性があります。基準点、標定結果、重複部の残差を確認したうえで、必要最小限の処理を行います。
空中写真から三次元形状を作る方法では、地表面の模様、明るさ、影、撮影角度、重複、植生などが形状生成へ影響します。法肩が影になっている場合や、天端と法面に識別可能な模様が少ない場合は、境界付近の形状が不安定になることがあります。生成段階ですでに法肩が丸い場合、後から平滑化を弱めても元の形状は戻りません。取得計画と再構成結果の確認が重要です。
移動しながら近距離計測する方法では、計測経路と対象までの距離によって点密度が変わります。天端側からだけ取得すると法面上部の点が不足し、法肩をまたぐ形状が偏る可能性があります。可能な範囲で天端側と法面側の両方から取得し、法肩周辺の点密度を確保します。
特徴点や断面点を個別に取得して補間面を作る場合は、一点の影響が大きくなります。法肩、法尻、小段端部などは一般の面上点と区別し、特徴点またはブレークラインとして面生成へ反映します。少ない測点へ強い平滑化を行うと、実測点より補間面の性質が強くなり、境界位置が変わることがあります。
異なる計測方法のデータを組み合わせる場合は、座標系、標高基準、計測時期、点密度、精度、地表状態を確認します。片方だけが細密で、もう片方が粗い状態を一括処理すると、接続部に不自然な段差や丸まりが生じる可能性があります。必要に応じて領域を分け、接続部を断面と差分で確認します。
どの計測方法でも、欠測を平滑化だけで埋めないことが原則です。平滑化は周辺情報の変動を抑える処理であり、計測していない形状を正確に復元する処理ではありません。法肩付近に大きな欠測がある場合は、追加計測、別方向からの取得、現場記録との照合を優先します。
法肩を残すための実務的な処理手順
法肩を潰さずに平滑化するには、設定値だけでなく処理順序を固定することが重要です。不要点削除、平滑化、格子化、面生成、体積計算を無計画に繰り返すと、どの工程が形状変化の原因か分からなくなります。
最初に、計測直後の元データを変更せず保存します。処理は複製データで行い、計測日、対象区画、処理段階、版番号をファイル名や管理表へ記録します。
次に、座標系、標高基準、基準点、計測時期を確認します。異なる基準のデータを比較すると、平滑化以前に全体的な標高差や位置差が生じます。複数回計測や複数機器のデータを使う場合は、共通基準へ整合していることを確認します。
その後、明らかな不要点を確認します。人、車両、資材、植生、空中の飛び点、水面反射などを残したまま平滑化すると、周囲の地盤が不要点の高さへ引かれることがあります。不要点は、平滑化で押しつぶすのではなく、現場写真や施工記録と照合して除外します。
不要点削除後は、点密度と欠測を確認します。法肩、法尻、天端端部、小段、掘削底面端部に必要な情報が残っているかを見ます。点密度不足が大きい場合は、平滑化を進める前に追加計測の可否を判断します。
次に、処理前の法肩位置を確認します。標高表示、傾斜表示、陰影表示、等高線、断面などを使い、天端と法面の境界を把握します。実測した法肩線や特徴点がある場合は、保護情報として準備します。
平滑化は弱い設定から始めます。参照範囲を小さくし、高さ差や傾斜変化を利用できる場合は、法肩を越えた点の影響を抑えます。法肩周辺は処理対象から外すか、別条件で処理する方法も検討します。
設定を変えるたびに同じ元データへ戻ります。処理済みデータへ重ねて平滑化しないことで、各試行の違いを比較しやすくします。
処理後は、平面、断面、標高差分、体積の順に確認します。平面では法肩線の連続性、断面では折れ点と天端幅、差分では帯状変化の有無、体積では全体値と区域別差を見ます。一つの表示だけで採否を決めません。
採用条件が決まったら、処理方式と判断理由を記録します。最終的な面、計算範囲、基準面、体積結果を関連付けて保存し、後日同じ条件で再計算できる状態にします。
平滑化で起こりやすい失敗と対処方法
最も多い失敗は、表面が滑らかなほど精度が高いと判断することです。画面上のざらつきが消えても、法肩や小段まで丸められていれば、数量算出用の面として適切とは限りません。見た目と形状保持を分け、断面と差分で確認します。
次に、現場全体へ同じ条件を一括適用する失敗があります。平坦部、急斜面、狭い天端、点密度の低い場所では適切な条件が異なります。平坦部で問題のない設定でも、法肩だけ大きく変形することがあります。地形領域ごとに条件を変え、結合部を確認します。
近傍点数だけを固定し、実際の参照距離を確認しないことも問題です。点密度の低い法面では遠い点まで参照され、法肩を越えた平均化が起こります。近傍点数と参照距離を合わせて管理し、点不足を広域平滑化で補わないようにします。
平滑化の重ね掛けも避けます。結果が弱い場合は処理済みデータへ追加するのではなく、元データへ戻って条件を変更します。各試行を別版として保存します。
格子化や面生成にも平均化が含まれていることを見落とす場合があります。点群処理、格子化、面生成の各工程で標高が変わると、合計の変形量が大きくなります。工程ごとの処理内容を確認し、同じ目的の平滑化を重複させないことが重要です。
外れ値除去と平滑化を同じ処理として扱うことも失敗につながります。外れ値除去は異常点を判別する工程であり、平滑化は地表面の局所変動を弱める工程です。法肩点を外れ値として削除すると、後工程で境界を復元できません。
全体体積差だけで採否を決めることも危険です。法肩で減った量と別の場所で増えた量が相殺されると、全体差は小さくなります。区域別体積、断面、差分位置を組み合わせて確認します。
設定条件を記録しない場合、後日同じ結果を再現できません。元データ、処理方式、設定値、保護領域、確認断面、体積差、採用理由まで残します。
再現性のある出来形体積計測にする管理方法
平滑化を使用する場合は、担当者ごとの判断差を減らす管理が必要です。同じデータでも、処理する人が異なれば参照範囲やしきい値が変わり、算出体積が変わる可能性があります。
最初に、平滑化の目的を明確にします。「見た目をきれいにする」では終了条件を決められません。「平坦部の微小なばらつきを抑え、法肩位置、天端幅、法面勾配を維持する」のように、減らすものと残すものを定義します。
次に、保存すべき特徴を整理します。法肩、法尻、小段端部、天端端部、掘削底面端部、排水施設、構造物との境界など、数量や出来形判定に必要な形状を対象区画ごとに決めます。
標準条件を作る場合も、一つの固定値だけにしないことが重要です。弱い初期条件、法肩周辺の保護条件、点密度不足時の中止条件、追加計測の判断条件を組み合わせます。適用する工事や計測方法が変われば、同じ数値が同じ効果を示すとは限りません。
確認断面の選び方も統一します。法肩が明確な場所だけでなく、点密度が低い場所、表面が荒い場所、勾配が変化する場所、対象範囲端部を含めます。法肩延長方向へ一定間隔で配置し、条件の悪い場所を追加する方法が有効です。
処理前後の比較資料は、同じ縮尺、同じ断面位置、同じ表示範囲、同じ色分け条件を使用します。表示条件が異なると変化を正しく比較できません。
体積記録では、最終値だけでなく処理前値、処理後値、区域別差、差が生じた主な理由を残します。全体差が小さい場合でも、法肩形状を確認した結果を省略しません。
版管理では、元データ、不要点削除後、平滑化試行、採用面、体積計算版を明確に区別します。試行途中の面を最終成果へ使わないよう、保存場所、命名規則、承認状態を統一します。
複数時期の計測結果を比較する場合は、処理条件を可能な範囲でそろえます。ただし、前回と今回で点密度や地表状態が異なる場合、同じ設定値が同じ処理強度になるとは限りません。設定値の一致だけでなく、処理後の法肩形状と区域別体積差を同じ基準で確認します。
現場担当者と処理担当者の情報共有も重要です。重機跡、仮置き土、施工途中の段差、排水による侵食、残すべき構造物などは、現場状況を知らなければ判断しにくい対象です。計測時の写真、施工範囲、作業状況、除外対象を共有します。
最終的には、平滑化を行った事実と処理条件を成果管理の一部として扱います。体積値だけでなく、どの元データ、どの範囲、どの基準面、どの処理条件から算出したかを追跡できる状態にします。
まとめ
出来形体積計測の平滑化は、点群や標高データに含まれる微小なばらつきを抑えるために利用できる処理です。しかし、強い条件を一律に適用すると、法肩、法尻、小段、天端端部など、数量計算で重要な形状まで丸める可能性があります。
一つ目の設定基準は、参照範囲を保存したい最小形状より小さくすることです。除去したい微小凹凸と保存したい形状の大きさを整理し、弱い条件から試します。近傍点数を使う場合は、点密度によって実参照距離が変わることを確認します。
二つ目の設定基準は、高さ差と傾斜変化を使って境界を保護することです。距離が近いだけで天端と法面を同一面として扱わず、面の向きが急変する場所では平滑化の影響を弱めます。実測した法肩線や特徴点がある場合は、実測形状を守るための保護情報として利用します。
三つ目の設定基準は、処理前後の断面と体積差で採否を決めることです。全体体積だけでは変形を見落とすため、複数断面、標高差分、区域別体積を組み合わせます。最も滑らかな設定ではなく、目的を満たしながら法肩位置、天端幅、法面勾配を維持できる最小限の設定を採用します。
平滑化は欠測地形を正確に復元する処理ではありません。法肩付近の点が不足している場合は、処理範囲を広げる前に追加計測や別方向からの取得を検討します。
また、本稿の三基準は一律の公的数値基準ではありません。実際の出来形体積計測では、適用する最新の要領、発注図書、工種、計測方法、必要精度、使用ソフトウェアの仕様を確認し、必要に応じて処理方法を協議します。
元データの保存、不要点削除、点密度確認、弱い平滑化、法肩保護、断面比較、区域別体積比較、設定記録までを一つの工程として管理することが、法肩を潰さず、説明可能で再現性のある出来形体積計測につながります。