LRTKレフィクシア株式会社

地籍調査で土地に高低差がある時は?測量前の5注意

土地に高低差がある場合、地籍調査の準備は平坦地より慎重に進める必要があります。斜面の上端や下端、擁壁、階段、側溝、フェンスなど、境界のように見える地物が多い一方、それらが地籍調査で確認する筆界と一致するとは限らないためです。また、上段と下段で現地への進入経路が異なり、関係者が同じ場所を見ているつもりでも、別の点や別の線を示していることがあります。草木や構造物で見通しが遮られれば、既存の境界標を見落としたり、測量機器を安全に設置できる場所を確保しにくくなったりすることもあります。

地籍調査は、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査し、筆界の位置と面積を測量して、地籍図と地籍簿を作成する調査です。ここで扱う筆界は、登記上の一筆の土地と隣接する土地を区画する線であり、土地所有者が利用や合意によって定めた所有権の範囲と常に一致するとは限りません。地籍調査は新しい筆界を任意に作る手続ではなく、登記所の地図や図面、地積測量図、既存の境界標、過去の調査成果、地形や地物、所有者等の確認などを総合して、既存の筆界を調査するものです。

従来は現地で土地所有者等の立会いを求める方法が中心でしたが、現在の制度では、現地が急峻である場合などに、図面、写真その他の資料を用いる図面等調査が採用されることもあります。どの方法を用いるかは、土地所有者だけで決めるのではなく、地籍調査の実施主体が法令、作業規程、現場条件、利用できる資料などを踏まえて判断します。したがって、測量前に大切なのは段差の高さを測ることだけではありません。どの点や線を筆界候補として確認するのか、何を根拠に照合するのか、安全に調査できるのかを整理する必要があります。

この記事では、地籍調査に関わる自治体担当者、受託事業者、土地所有者との調整を行う実務担当者に向けて、高低差のある土地で測量前に確認したい5つの注意点を解説します。個別の現場では、調査実施者の作業方法、既存成果の精度、道路や水路などの管理区分、土地所有者等の確認状況によって対応が変わります。現地の見た目だけで進めず、資料、現地状況、関係者の説明を相互に照合することが基本です。

地籍調査で高低差のある土地が難しい理由

高低差のある土地で最初に理解したいのは、地形の形や構造物の位置と筆界が必ずしも一致しないことです。現地では、斜面の上端、法尻、擁壁の天端、擁壁の下端、側溝の縁などが連続した線として見えるため、境界らしく感じられます。しかし、造成後に設置された構造物や、侵食、盛土、切土などで変化した地形だけから、筆界の位置を決めることはできません。地籍調査では、登記所の地図や図面、地積測量図、既存の境界標、過去の測量成果、地形や地物の状況、土地所有者等の確認を総合して調査します。

筆界と所有権界の違いにも注意が必要です。隣接所有者同士がフェンスや擁壁を使用上の区切りとして扱っていても、その線が登記上の筆界と一致するとは限りません。反対に、地籍調査で確認される筆界が、現在の占有範囲や構造物の管理範囲とずれている場合もあります。地籍調査の現場で確認する対象を曖昧にすると、擁壁の補修責任や越境問題まで同時に決める手続だと誤解されやすいため、筆界の調査と私法上の権利関係の整理を分けて考える必要があります。

さらに、高低差があると筆界候補点を平面だけで理解しにくくなります。図面では隣り合う二点が近く見えても、現地ではその間に急斜面や高い擁壁があり、直接移動できない場合があります。逆に、斜面に沿って歩いた距離が長く感じられても、平面上の位置関係はそれほど離れていないことがあります。斜面長、水平距離、高低差を混同すると、既存資料に記載された辺長や座標との照合を誤るおそれがあります。

上段側と下段側で見える地物が異なることも、認識差の原因になります。上段からはフェンスや擁壁天端が目立ち、下段からは壁面、基礎付近、排水口などが目立ちます。同じ場所について話していても、関係者が異なる線を指している可能性があります。立会いの場で単に「この壁が境界です」と表現するだけでは、壁の天端外縁、下端、中心、背面のどこを指すか分かりません。高低差のある土地ほど、筆界候補を点と線で示し、構造物のどの部位を指しているのかを具体的に共有することが重要です。

高低差は調査作業の安全性にも影響します。急斜面、崩れやすい法面、老朽化した擁壁、濡れた階段、落ち葉に覆われた通路では、通常の現地確認でも転倒や滑落の危険があります。急峻で植生が濃い地域では、現地立会いや測量作業が土地所有者等と作業者の双方に大きな負担となります。現地へ入ることだけを前提にせず、図面等調査や航測法など、制度上利用可能な方法があるかを実施主体に確認する視点も必要です。ただし、これらの方法はどの土地でも自由に選べるものではなく、対象区域、精度区分、資料の状況、実施計画などに応じて判断されます。

注意1 境界と地形の折れを同一視しない

一つ目の注意は、段差や構造物の位置をそのまま筆界と判断しないことです。造成地では、隣地との間に擁壁が設けられていると、見えている壁面が境界であるように感じられます。しかし、擁壁がどちらの土地に築造されているか、基礎や底版がどこまで広がっているか、施工時に筆界から控えて設置されたかは、現況だけでは分かりません。古い石積みや土留めでは、崩落後の積み直しや補修によって位置が変わっていることもあります。地形の折れや構造物は重要な手掛かりになり得ますが、それだけを根拠に結論を出さないことが大切です。

測量前には、現地で筆界らしく見える線を一つに決め打ちせず、複数の候補として記録します。例えば、上段のフェンス線、擁壁天端の外縁、擁壁下端、法尻、側溝の縁にずれがある場合は、それぞれの位置関係を写真と略図に残します。そのうえで、既存の境界標、地積測量図に記載された辺長や座標、過去の地籍調査成果、道路や水路の管理資料などと照合します。候補線同士の離れが小さく見えても、長い区間では地積や隣接関係に影響する可能性があるため、「ほぼ同じ」と処理せず、差が生じている理由を確認します。

境界標が見つかった場合も、直ちに現在の筆界点であると断定しないようにします。高低差のある場所では、土砂の移動、擁壁工事、排水工事、庭の改修などに伴い、標識が動いたり、抜かれた標識が近くに置かれたりしている可能性があります。標識の材質、表示、向き、周囲の地盤とのなじみ方、他の境界点との位置関係を確認し、既存資料に示された点と整合するかを調べます。境界標が存在することと、その標識が本来の位置に保持されていることは別の問題です。

斜面そのものが筆界候補となっている場合は、線の示し方を明確にします。「斜面の中ほど」「石積み沿い」といった表現では、測量対象となる点を再現できません。斜面上端の折れ点なのか、下端の折れ点なのか、特定の標識や地物を結ぶ線なのかを具体化し、関係者が同じ位置を見ていることを確認します。樹木、仮杭、移動しやすい石など、将来失われる可能性がある目印だけに依存せず、周辺の固定物や測量点との関係も記録しておくと、後日の確認がしやすくなります。

地籍調査では、所有者等の説明だけで筆界を新設するのではなく、筆界に関する資料や現地の情報を総合して既存の筆界を調査します。高低差がある現場では、目立つ地形に判断が引っ張られやすいからこそ、見た目の分かりやすさより、資料間の整合、隣接点との連続性、現地での再現性を重視する姿勢が必要です。

注意2 事前資料を平面と立体の両面から確認する

二つ目の注意は、平面図だけで現地を理解したつもりにならないことです。地籍調査で参照される資料には、登記所の地図や地図に準ずる図面、登記事項に関する情報、既存の地籍図、地積測量図、境界確認図、道路や水路の台帳図、区画整理や土地改良の成果、造成時の計画図などがあります。ただし、すべての資料が存在するとは限らず、作成年代、作成目的、縮尺、精度、更新状況も異なります。複数の資料がある場合は、単に新しい図面を優先するのではなく、何のために作成された資料か、どの範囲と点を示しているかを確認する必要があります。

高低差のある土地では、平面上の筆界候補と現地の高さ関係を結び付ける資料が重要です。造成計画図、擁壁配置図、断面図、階段や排水施設の施工図が残っていれば、地形がどのように改変されたかを検討する材料になります。ただし、計画図どおりに施工されたとは限らず、完成後に増改築、補修、盛土、切土が行われている場合もあります。造成図や施工図は筆界を直接証明する資料としてではなく、現況地物がいつ、どの目的で設けられたかを読み解く補助資料として扱います。

資料の確認では、同じ点を表す名称や記号が図面ごとに異なる点にも注意します。ある図面では角点、別の図面では擁壁端部、別の資料では境界標番号として記載されていることがあります。点番号が一致していても、改訂や作図の過程で番号が変更されている可能性があるため、番号だけで同一点と判断しないようにします。座標、辺長、隣接点、周辺構造物との位置関係を合わせて確認し、必要に応じて写真や断面メモを添えます。

高低差が大きい現場では、平面位置が近い複数の点が上下に存在することがあります。擁壁天端の角と、ほぼ同じ平面位置にある壁面下端の角を、同じ点と取り違える例です。平面図に標高や高さの情報がない場合は、上段側の点か下段側の点か、道路面から見えるか、どの構造物に接するかを補足します。ただし、現況把握のための簡易な高さ記録と、正式な測量成果に用いる標高値は区別し、必要な精度に応じた方法で取得します。

現地踏査の前には、資料上の筆界候補線を現況図や案内図に整理しておくと効果的です。厳密な重ね合わせができない場合でも、道路側から入るのか、上段宅地から入るのか、下段通路から確認するのかを図上で検討できます。擁壁の裏側からしか近づけない点、隣接地を通らなければ確認しにくい点、道路から目視できる点を分けておけば、立会当日の混乱を減らせます。

資料は現地確認を省略するためだけのものではなく、現地で何を確認し、どの点に不一致があるかを明らかにするために使います。一方、現地が急峻である、遠隔地に所有者が居住しているなどの事情がある場合は、実施主体の判断で図面等調査が用いられることがあります。高低差のある土地では、平面資料に写真、断面メモ、進入経路、見通しの有無、危険箇所を加え、現地調査にも図面等調査にも使える準備資料へ整理しておくことが重要です。

注意3 擁壁・法面・排水施設の管理関係を整理する

三つ目の注意は、筆界の位置と構造物の所有・管理を混同しないことです。高低差のある土地では、擁壁、石積み、法面、側溝、集水ます、排水管、階段、手すり、フェンスなどが筆界付近に集中します。これらがどちらの土地に設置され、誰が利用し、誰が維持管理しているかは、現地の経緯を理解する参考情報になります。しかし、日常的に管理している人が構造物敷地の所有者とは限らず、構造物の中心や端部が筆界であるとも限りません。

例えば、上段所有者が土留めのために擁壁を設けていても、壁面や壁の下端が筆界線上にあるとは限りません。壁全体が上段側の土地内にある場合、筆界が壁の背面側にある場合、道路や水路の管理施設として設置された壁が民有地との筆界付近にある場合など、複数の可能性があります。見た目や利用実態だけで判断せず、道路境界確定図、用地測量図、管理台帳、用地取得時の図面、過去の立会記録など、管理者が保有する資料の有無を確認します。

排水施設は、高低差のある土地で特に見落としやすい要素です。斜面の上から下へ雨水を流すため、側溝や排水管が筆界を横断していることがあります。地表で見える側溝だけを追っても、地下の管路、暗渠、集水ますとの接続、越境の有無は判断できません。地籍調査は排水設備の権利関係や使用権を直接決める手続ではありませんが、筆界候補付近に施設があることを記録しておけば、調査中の安全確保や、後日の維持管理に関する確認に役立ちます。

法面については、自然斜面か造成斜面かを確認します。自然地形の尾根、谷、傾斜の変化が古くから筆界の手掛かりとなっている場合もありますが、造成による切土や盛土で地形が変わっていれば、現在の法肩や法尻が過去の筆界を反映していない可能性があります。古い航空写真、造成前後の図面、工事記録、近隣所有者の説明などが残っていれば、地形変化の経緯を整理します。ただし、記憶や証言だけを優先せず、他の客観資料や隣接する筆界との整合を確認します。

構造物に変状がある場合は、調査の実施より安全を優先します。擁壁の傾き、はらみ、目立つひび割れ、目地の開き、湧水、法面の崩落跡、落石、陥没などが見られる場所では、壁際や斜面下への立入りを避けるなど、現場に応じた措置を検討します。地籍調査の担当範囲と構造物の安全性評価は別であるため、危険が疑われる場合は土地所有者や施設管理者へ共有し、必要に応じて専門分野の確認につなげます。測量のためであっても危険箇所へ無理に入らず、立入範囲や代替の観測位置を事前に検討することが大切です。

注意4 安全な立会・測量ルートを先に決める

四つ目の注意は、筆界候補点の位置だけでなく、そこへ安全に到達できるかを測量前に確認することです。高低差のある土地では、図面上は数メートル先の点でも、実際には擁壁や急斜面に遮られ、遠回りしなければ近づけないことがあります。上段と下段で出入口が別の場合、参加者が別々の場所に集合してしまうこともあります。立会案内には集合位置だけでなく、確認順序、移動経路、利用する階段や通路、立入禁止箇所を分かる範囲で示します。

事前踏査では、斜面の勾配だけでなく、土の緩み、ぬかるみ、苔、落ち葉、砕石、段差、腐食した踏み板、手すりの有無などを確認します。雨の後は乾燥時と状況が変わるため、測量日直前の天候も考慮します。高齢者、歩行に不安のある人、現地条件に不慣れな関係者が参加する場合は、全員が筆界候補点の直近まで移動することを前提にせず、安全な位置から写真、図面、現地の見通しを使って確認する方法を実施主体と相談します。

隣接地を通行する必要がある場合は、実施主体の運用に従い、事前の連絡や承諾を整えます。対象地だけに入れば足りるとは限らず、測量機器の設置、見通しの確保、別方向からの写真撮影などのために隣接地側へ入る場合があります。無断で植木を動かしたり、フェンスを越えたり、擁壁天端へ機器を置いたりしてはいけません。立入場所、作業時間、車両の駐車、刈り払いの要否などを事前に共有します。

植生の刈り払いが必要な場合も、境界標、排水管、配線、構造物を傷つけないよう、実施者、範囲、方法を決めてから行います。特に斜面では、刈った草が足元を滑りやすくしたり、地表のくぼみを見えにくくしたりすることがあります。作業後の状態まで含めて安全を確認し、必要に応じて測量日と刈り払い日を分けます。

転落防止のため、擁壁天端や法肩の近くでは作業位置を限定します。筆界候補点が端部にあっても、観測者が端に立たなければならないとは限りません。離れた安全な位置から測定する方法、補助点を利用する方法、別方向から観測する方法を採れる場合があります。具体的な方法は現場条件、必要精度、使用機器、実施主体の作業計画により異なるため、測量技術者が判断します。実務担当者は、危険箇所を事前に洗い出し、作業計画に反映できる情報を提供することが重要です。

急峻で危険な場所では、図面等調査のほか、高精度な空中写真や航空レーザ測量データを活用する航測法が採用される場合があります。ただし、航測法は単に高低差があるという理由だけで使えるわけではありません。対象区域、精度区分、筆界を推定できる資料の有無、実施計画などを踏まえ、地籍調査の実施主体が適用を判断します。所有者側の判断で現地確認を省略するのではなく、危険箇所を具体的に伝え、どの確認方法が可能かを相談することが重要です。

注意5 観測条件と記録方法を現地に合わせる

五つ目の注意は、高低差により変化する観測条件を事前に把握することです。地籍測量では、調査された筆界点の位置を測り、地籍図の作成と地積の測定に用いる成果を作成します。現場では、基準となる点との見通し、機器を安全に据えられる場所、周囲の建物や樹木、斜面の向き、電波や衛星の受信環境などが作業方法に影響します。高低差があるから特定の測量方法が必ず使えないということではありませんが、平坦地と同じ設置計画では効率、安全性、観測の確実性が低下することがあります。

地上から視準する方法では、擁壁、建物、樹木、塀などが筆界候補点への見通しを遮ることがあります。上段からは見えても下段からは見えない点や、季節による植生の変化で見通しが失われる点もあります。衛星測位を利用する方法でも、建物や樹冠に囲まれた場所、壁際の狭い場所などでは観測条件が不利になる場合があります。事前踏査では、点そのものだけでなく、周囲に機器を設置できる平場があるか、別方向から確認できるか、障害物を避ける経路があるかを記録します。

境界標や筆界候補点の写真は、近景だけでなく中景と遠景も残します。近景では標識の種類、表示、破損状況を確認できるようにし、中景では擁壁や側溝など周辺構造物との位置関係を示します。遠景では道路、建物、斜面全体のどこに点があるかが分かるようにします。高低差のある現場では、真上から撮った写真だけでは上下関係が伝わりにくいため、斜面に対して横方向から撮影した写真も有効です。撮影位置と方向を略図に残すと、後日同じ点を探しやすくなります。

記録では「擁壁の角」とだけ書かず、「上段から見て擁壁天端外縁の南端」「道路側から見て壁面東端付近の金属標」のように、見る方向と構造物の部位を含めます。左右の表現は観察方向で変わるため、方位、道路側、建物側、上段側、下段側など、変わりにくい基準を使います。点番号、写真番号、図面上の記号を対応させ、現地メモと測量成果の間で取り違えが起きないようにします。

高低差を示す記録も、目的を明確にして取得します。地籍調査の中心は筆界、地番、地目、所有者、地積に関する成果ですが、現地の高さ関係は、筆界候補を説明したり、構造物との位置関係を再確認したりする補助情報として役立ちます。一方、現況確認のために簡易に測った高さを、擁壁の設計、安定計算、施工管理、安全性評価にそのまま流用してはいけません。必要な基準、精度、調査項目が異なるためです。地籍調査用の記録なのか、別の設計や工事に使う測量なのかを分け、用途に応じた方法を計画します。

現地記録には、確認できた事項だけでなく、確認できなかった事項も残します。例えば、植生で標識を確認できなかった、危険のため下段から接近できなかった、図面上の点と現況地物の対応を判断できなかったといった内容です。未確認事項を推測で補うと、後の照合で確定事項と混同されます。再調査、追加資料の収集、図面等調査への切替えなど、次の対応につなげられる形で記録します。

測量前に関係者へ共有しておきたい内容

高低差のある土地では、立会当日に初めて現場の複雑さを説明すると、確認に時間がかかります。測量前に、対象筆、隣接筆、筆界候補点、主な段差、集合場所、進入経路、危険箇所を一枚の案内図にまとめて共有すると、関係者が事前に土地の状況を思い出しやすくなります。案内図は正式な地籍図や測量成果と混同されないよう、調査用の参考図であることを明記します。上段と下段の関係が分かるよう、写真番号や撮影方向を加えると効果的です。

共有時には、現地の擁壁やフェンスを筆界として決め打ちしていないことも伝えます。「当日はこの壁を境界として確認します」と書くと、結論が先に決まっているように受け取られる可能性があります。「壁付近に筆界候補があるため、資料と現地を照合します」と表現し、確認対象と調査結果を区別します。過去の境界立会いや工事の記憶がある関係者には、地積測量図、境界確認書、写真、工事図面、合意書などを保管していないか事前に尋ねます。

擁壁や排水施設の管理者が土地所有者と異なる可能性がある場合は、必要な関係機関への照会を早めに行います。道路、水路、公園、公共施設に接する土地では、一般の隣接所有者だけでは確認できない管理資料が存在することがあります。自治体内でも、地籍調査、道路管理、河川・水路管理、公有財産、建築・開発などの担当が分かれている場合があります。どの部署がどの資料を保有している可能性があるかを整理し、照会する地番、位置、構造物、必要な資料を具体的にします。

立会参加者には、服装や持ち物だけでなく、無理に斜面へ入らないことを案内します。現地へ到達しにくい場合の確認方法、代理人が参加する場合の手続、天候による延期判断についても、実施主体の運用に沿って伝えます。所有者等が現地へ来られない場合でも、直ちに確認済みと扱えるわけではありません。図面等調査、代理人による確認、所在不明者等への手続など、状況に応じた制度上の方法を実施主体が判断します。

現地調査等の通知を複数回行っても所有者等から必要な応答がない場合には、一定の要件の下で土地境界のみなし確認制度が用いられることがあります。この制度では、実施主体が筆界に関する情報を総合して筆界案を作成し、所定の方法で送付したうえで、到達後20日間に意見の申出がない場合に、当該所有者等による筆界案の確認があったものとみなして調査を進めることができます。単に立会日に欠席しただけで自動的に適用される制度ではなく、通知、筆界案の作成と送付、意見申出期間などの手続が必要です。実務担当者が便宜的に判断せず、実施主体の定める手順に従うことが重要です。

測量当日の確認手順

測量当日は、まず集合場所で対象地、確認順序、危険箇所を共有します。いきなり筆界候補点へ移動すると、上段側と下段側で参加者が分かれたり、同じ点を別方向から指したりしやすくなります。案内図を使い、どの筆とどの筆の間を確認するのか、現在地から見える擁壁や建物が図面上のどこに当たるのかをそろえます。現地調査を行う範囲と、危険のため接近しない範囲も確認します。

次に、既存の境界標や参考となる地物を確認します。標識が見つからない場合は、むやみに掘削せず、実施主体や測量担当者の判断に従います。擁壁際や法面では、地下に排水管、電線、基礎、暗渠などがある可能性があります。土地所有者の了解があっても、構造物や埋設物を損傷するような探索は避けます。標識が見つかった場合は、周囲の状態を変える前に写真を撮り、発見時の状態、表示、向き、周囲の地物との位置関係を記録します。

筆界候補を示す際は、点ごとに確認し、点を結ぶ線の通りも確認します。端点だけが一致していても、その間に折れ点がある、擁壁の途中で線が変わる、斜面上で別の筆が接しているといった場合があります。高低差のある土地では、平面図上で目立たない小さな折れが、現地利用や隣接関係に大きく影響することがあります。点の確認と線の確認を分け、対象となる筆界に抜けがないかを見ます。

上段側と下段側で同じ点を確認する場合は、見る方向ごとの呼び方を統一します。「右端」「左端」ではなく、方位、道路側、建物側、上段側、下段側を使い、写真番号や点番号と対応させます。指差しだけで済ませず、どの構造物のどの部位を示したかを調査図や地籍調査票など、実施主体の定める記録へ反映します。

認識が一致しない場合は、その場の多数決や印象だけで決めません。どの資料とどの現況が食い違っているか、どの位置について確認が得られないか、追加で確認すべき資料は何かを記録します。地籍調査は既存の筆界を調査する手続であり、当事者間の私法上の紛争を多数決で解決する手続ではありません。確認できない点を曖昧なまま測量済みとして扱わず、実施主体の手続に戻して整理します。

測量後に図面と写真を整理するポイント

測量が終わった後は、成果の数値だけでなく、現地でどの点を確認したかを追跡できるように整理します。高低差のある土地では、平面図だけを見ると、上段の構造物と下段の構造物のどちらに対応する点か分からなくなることがあります。点番号ごとに、写真、確認日、確認者、標識の種類、周辺構造物、接近方向、危険箇所、未確認事項のメモを関連付けます。

図面では、筆界線と現況線を明確に区別します。擁壁天端、擁壁下端、法肩、法尻、フェンス、側溝などを筆界線と同じ表現で描くと、後から見た人が現況構造物を筆界と誤認するおそれがあります。正式成果の図式や様式は実施主体の指示に従い、内部確認用の図面でも線種、記号、注記の意味をそろえます。現況構造物が筆界から離れている場合は、その位置関係が読み取れるようにします。

写真整理では、撮影日、撮影位置、撮影方向を残します。上段から下段を見た写真と、下段から上段を見た写真では、同じ構造物でも印象が大きく異なります。写真番号を図面上に配置し、矢印で方向を示せば、現地を知らない担当者でも状況を理解しやすくなります。草刈り前後、標識清掃前後、仮表示設置前後など状態が変わった場合は、どの時点の写真かを区別します。

現況の高さを記録した場合は、基準、測定方法、精度、用途を明記します。どの基準面からの高さかが分からない数値は、後から比較できません。筆界点の平面位置を示す正式な成果と、現況説明のための参考高さを混在させないようにします。別の設計や工事で高さ情報を使う場合は、その目的に必要な基準と精度で改めて測量する必要があります。

地籍調査の結果は地籍図と地籍簿に取りまとめられ、国土調査法に基づく閲覧や認証などの手続を経た後、登記所へ送付され、登記記録や地図の更新に利用されます。そのため、測量後の整理では、現地説明用の参考資料、内部検討資料、正式成果を混同しないことが重要です。内部メモに推測を書く場合は、確定事項と明確に区別し、正式成果へ反映する内容を確認します。閲覧時や後日の問い合わせに対して、どの資料と現地確認に基づいて整理したかを説明できる状態にしておくことが望まれます。

高低差のある土地で起こりやすい誤解

よくある誤解の一つは、「上の土地の所有者が擁壁を管理しているから、擁壁の下端が筆界である」という考え方です。管理の実態は参考情報になりますが、筆界の位置を直接示すものではありません。設置時の用地関係、図面、境界標、周辺の筆界との連続性を確認しなければ、壁のどの位置と筆界が関係するかは判断できません。

二つ目は、「古くからある石積みなので筆界に違いない」という誤解です。古い構造物は重要な手掛かりになる一方、補修、崩落、積み直し、道路改修、造成などで位置が変化している可能性があります。古さだけで信頼性を決めず、周辺の境界標、過去の図面、隣接点とのつながり、施工の経緯を確認します。

三つ目は、「斜面を実測した距離と図面の距離が違うので、図面が間違っている」という判断です。斜面に沿った距離と水平距離は同じではありません。また、測った端点が資料上の筆界点と一致していない可能性や、図面自体の縮尺、精度、作成年代による差もあります。差が出た場合は、測定方法、端点、傾斜、資料の性質を順に確認します。

四つ目は、「高さも測ったので擁壁の安全性まで判断できる」という誤解です。地籍測量や現況記録で得た高さは、位置関係の把握には役立ちますが、構造物の安全性を評価するには、設計条件、基礎、材料、排水、地盤、荷重、変状など別の調査が必要です。目的の異なる測量成果を流用せず、危険が疑われる場合は適切な専門分野へつなぎます。

五つ目は、「地籍調査が行われれば、越境や擁壁の補修責任も自動的に解決する」という誤解です。地籍調査は筆界、地番、地目、所有者、地積に関する地籍を明確にする重要な事業ですが、境界付近の構造物に関する所有権、使用関係、補修費用、越境物の扱いなどをすべて決める手続ではありません。筆界が明らかになることで話し合いの前提は整いやすくなりますが、私法上の問題は必要に応じて別途確認することになります。

六つ目は、「土地所有者が立会日に来なければ、自動的に筆界が決まる」という誤解です。現地立会いができない場合には図面等調査などが用いられることがありますが、欠席だけで確認済みになるわけではありません。無反応な所有者等に対するみなし確認制度を使う場合も、複数回の通知、筆界案の作成と送付、20日間の意見申出期間など、所定の手続が必要です。

まとめ

土地に高低差がある時の地籍調査では、段差を測ることだけに意識を向けると、筆界調査の本質を見失いやすくなります。測量前に注意したいのは、地形の折れや擁壁を筆界と決め付けないこと、平面資料と現地の高さ関係を結び付けること、構造物の所有・管理と筆界を分けて整理すること、安全な立会・測量ルートを確保すること、観測条件と記録方法を現場に合わせることの5点です。

実務では、資料が十分にそろわない現場もあります。その場合でも、現地の見た目だけで判断せず、何が確認でき、何が未確認なのかを分けて記録することが重要です。筆界候補の点と線、上段と下段からの見え方、既存標識、構造物、進入経路、危険箇所を一つずつ整理すれば、関係者間の認識差を小さくできます。

また、高低差のある土地では、写真、撮影方向、点番号、図面上の位置を結び付けた記録が大きな助けになります。現地調査を行う場合も、図面等調査や航測法を検討する場合も、利用する資料と未確認事項を明確にし、実施主体の定める手順に従うことが必要です。地籍調査は新たな境界を便宜的に作るものではなく、既存の筆界を資料と現地の情報から調査する手続であることを関係者で共有し、安全と再現性を確保しながら準備を進めましょう。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る