地籍調査の対象地に隣接して、地下に設置された変電設備や関連管路がある場合、通常の宅地や道路との境界確認よりも事前調整が増えることがあります。地表には換気口、点検口、設備扉、フェンスなどしか見えず、地下構造物や管路の範囲を外観だけでは把握できないためです。
また、土地の所有者、設備の所有者・管理者、道路管理者、道路占用者がそれぞれ異なる場合があります。地表で見える設備の外周やフェンスが筆界と一致するとは限らず、設備の保安上の管理対象範囲も、土地の筆界とは別に設定されていることがあります。
地籍調査は、主に市町村などが実施主体となり、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、筆界の位置と面積を測量する調査です。施設の形状や管理区域だけを測る手続ではありません(国土交通省「地籍調査とは」)。
地下変電設備に隣接する土地では、筆界を検討する資料と、安全な現地作業のための資料を分けて整理する必要があります。本記事では、現地確認の前に確認したい4種類の資料と、照合時の注意点を解説します。
なお、設備の構造、立入条件、資料の名称や開示範囲は、施設管理者や地籍調査の実施主体によって異なります。実際の作業では、各機関の指示と現場固有の安全ルールを優先してください。
地籍調査で隣地に地下変電設備があると難しくなる理由
地下変電設備に隣接する土地の地籍調査が難しくなる理由は、地表から把握できる情報と、地下にある設備の実態が一致しないことです。
地表では舗装面や植栽帯に見えても、その地下に設備室、電線管路、点検通路、換気設備、排水設備、接地設備などが配置されている場合があります。点検口や換気口は地下設備の一部分を示すものであり、通常は設備全体の外周を示すものではありません。
反対に、地上のフェンス、縁石、舗装の切替線などが土地の境界に見えても、実際には設備の保守や入退場管理のために設けられた区画であることがあります。設備が敷地境界から後退して設置されている場合も、地下構造物だけが地上施設より広い場合も考えられます。
さらに、地下変電設備が設置された土地の登記名義人と、設備の所有者・管理者が同じとは限りません。土地所有者が設備用地を貸している場合、公共用地に民間事業者の設備がある場合、道路区域内に管路などが占用物件として設置されている場合など、複数の関係者が存在し得ます。
そのため、筆界に関する確認を求める相手と、設備への立入りや作業条件を調整する相手を分けて整理する必要があります。設備管理の現場担当者が、土地所有者を代理して筆界を確認できるとは限りません。反対に、土地所有者が設備の安全条件を判断できるとも限りません。
地籍調査の一筆地調査では、通常、土地所有者などの関係者に資料を示し、筆界の位置を確認しながら調査を進めます。ただし、現在は現地立会い以外の確認方法や、一定の要件の下で調査を進める制度もあります。したがって、具体的な確認方法は、実施主体の手順に従う必要があります(国土交通省「地籍調査の流れ」「土地境界のみなし確認制度」)。
地下設備付近では、現地に到着してから初めて設備管理者へ連絡する進め方は避けるべきです。立入申請、安全教育、本人確認、作業時間の指定などが必要な施設では、当日に立ち入れない可能性があります。
したがって、地下変電設備に隣接する地籍調査では、筆界に関する資料確認、設備上の安全確認、関係者との日程・権限調整を並行して進めることが重要です。
まず押さえるべき筆界と設備範囲の違い
地下変電設備がある現場では、筆界、所有権界、設備の外周、保安上の管理範囲を混同しないことが重要です。
不動産登記法上の筆界は、表題登記がある一筆の土地と隣接地との間で、その土地が登記された時に境を構成するものとされた点と、それらを結ぶ直線を指します。筆界は、現在の所有者同士の合意だけで自由に移動できる線ではありません。
一方、所有権界は、所有権が及ぶ範囲として当事者が認識する境界を指す一般的な表現です。多くの土地では筆界と一致しますが、常に一致するとは限りません。地籍調査が対象とするのは、原則として筆界です。
本記事でいう「設備の外周」は、地下構造物、管路、点検通路などが存在する範囲を指します。また、「管理範囲」は、保守、点検、入退場管理などの対象となる範囲を指します。これらは法令上の統一用語ではなく、施設ごとに名称や意味が異なるため、図面の凡例と管理者の説明を確認してください。
設備配置図に描かれた外周線が、そのまま筆界を表すとは限りません。フェンスや扉も、設備本体より広い保安範囲を囲っている場合や、逆に敷地境界から内側へ後退して設置されている場合があります。
土地の所有権と、設備の利用権の範囲が一致しない場合もあります。地上権、地役権、賃借権などが設定されている可能性があるほか、登記されていない契約や協定が存在することもあります。
実務では、図面に線があるだけで筆界と判断してはいけません。各線について、何を表すのか、誰が何の目的で作成したのか、作成年月日はいつか、どの測量成果や座標系を参照しているかを確認します。
筆界の検討に使う主な資料は、いわゆる公図、地積測量図、地籍図、過去の境界確認資料などです。設備配置図や埋設物図は、主に設備位置や安全条件を確認するための資料です。作成目的が違うため、同じ証拠価値があるものとして扱うべきではありません。
ただし、設備の建設時に官民境界や隣接地との筆界を基準に配置が決められていれば、設備図面に境界点や基準線が記載されていることがあります。その場合も、線の出典を確認し、登記所備付図面や境界確認資料と照合します。
舗装目地、縁石、擁壁、フェンス、換気口などの現地構造物も、位置関係を考える手掛かりにはなりますが、それだけで筆界を確定するものではありません。
資料1 登記事項証明書で所有者と権利関係を確認する
最初に確認したい資料は、対象地と隣接地の登記事項証明書です。地下変電設備がある土地では、現在の所有者だけでなく、設備利用に関係する権利が登記されていないかも確認します。
土地の登記事項証明書では、表題部に所在、地番、地目、地積などが記録されます。権利部は甲区と乙区に分かれ、甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利に関する事項が記録されます(法務省「不動産登記のABC」)。
まず、対象地と地下変電設備がある隣接地について、地番を取り違えていないかを確認します。住居表示、施設住所、土地の地番は一致しない場合があります。施設名や住所だけで対象筆を判断せず、いわゆる公図や地図証明書と照合してください。
次に、隣接地の所有者を確認します。外観が公共施設に見えても民有地である可能性があり、民間事業者が管理する設備でも、土地は国や地方公共団体の所有である可能性があります。
所有者が法人や公共団体の場合は、筆界に関する確認を担当する部署と、設備管理を担当する部署を分けて把握します。現場の保守担当者が設備には詳しくても、土地所有者を代理して筆界確認を行う権限を有するとは限りません。代理人が参加する場合は、実施主体が求める委任方法も確認します。
権利部では、地上権、地役権、賃借権など、土地利用に関係する登記の有無を確認します。地下管路や保守通路が対象地側へ延びている可能性がある場合、権利関係を整理する手掛かりになります。
地役権が登記されている場合は、地役権図面が備え付けられているかも確認対象です。法務局では、登記事項証明書のほか、地図証明書、地積測量図などの図面証明書を所定の方法で請求できます。ただし、対象土地や登記の時期によって、該当図面が存在しない場合があります(法務局「登記事項証明書、地図・図面証明書を取得したい方」)。
登記に設備利用権の記載がないからといって、地下設備や契約関係が存在しないとは判断できません。賃貸借契約、使用許可、管理協定、工事協定などが、登記されずに当事者間で保管されていることもあります。
登記事項証明書は、対象筆、所有者、登記された権利関係を確認する基本資料です。ただし、設備の正確な位置、深さ、保安範囲を確認する資料ではないため、次の資料と組み合わせて使用します。
資料2 公図・地積測量図・地籍調査成果で筆界の根拠を整理する
二つ目に確認する資料は、いわゆる公図、地積測量図、既存の地籍調査成果、過去の境界確認資料です。ここでは、筆界の位置を検討する根拠を整理します。
一般に「公図」と呼ばれるものには、登記所に備え付けられた地図または地図に準ずる図面があります。土地の区画や地番の配列を確認するうえで重要ですが、作成時期や作成方法によっては、現地の形状や境界位置と一致しないことがあります。国土交通省も、古い地図や図面には境界や形状が現実と異なる場合があると案内しています。
したがって、公図を拡大して現地へ重ね、その線をそのまま筆界とすることは適切ではありません。公図は、隣接関係、筆の配列、道路や水路との位置関係を把握するために使い、具体的な位置はほかの資料と照合します。
地積測量図が備え付けられている場合は、作製年月日、縮尺、方位、境界点、辺長、座標、隣接地番などを確認します。地積測量図は一筆の土地の測量結果を示す図面で、主に分筆登記などの際に提出されますが、すべての土地に存在するとは限りません。また、年代によって様式や記載内容が異なります(法務局「土地・建物の地図・図面など」)。
地下変電設備に隣接する現場では、地積測量図に示された境界点がフェンス内や点検口付近に位置することがあります。その場合、境界点へ直接近づけるとは限りません。座標や辺長を利用した間接観測が可能か、必要な精度を満たせるかを、測量担当者と設備管理者が検討します。
すでに地籍調査が実施されている地域では、地籍図、地籍簿、筆界点に関する座標成果、基準点成果などが利用できる場合があります。ただし、閲覧・交付できる成果の種類、形式、手続は実施主体ごとに異なります。自治体などの担当窓口へ確認してください。
過去に官民境界確認、土地売買、道路拡幅、施設建設、分筆などが行われている場合は、その際の境界確認書、測量図、立会記録、写真も重要です。地下変電設備の建設時に境界確認が行われていれば、境界標の種類や設置位置が記録されている可能性があります。
資料は、新しいものを無条件に優先するのではなく、作成目的、測量方法、参照資料、作成者、確認者を比較します。施設改修用の新しい配置図より、過去の分筆登記に用いられた地積測量図の方が、筆界の検討に適する場合があります。
一方、古い測量図に記載された境界標が工事で失われている場合や、その後に適法な手続を経て標識が再設置されている場合もあります。年代だけで判断せず、座標、現地標識、過去の確認記録を一体として評価します。
資料3 地下設備配置図・埋設物図で立入りと測量の安全を確認する
三つ目に確認する資料は、地下設備配置図、埋設物平面図、断面図、竣工図、設備管理図などです。これらは通常、筆界を直接決定する資料ではなく、設備位置と現地作業の安全条件を確認する資料として扱います。
地下変電設備の周辺には、設備室、管路、ケーブル、排水管、接地設備などが存在する可能性があります。境界標を探すために杭を打つ、鋲を設置する、穿孔する、試掘するといった作業は、設備管理者の承認と必要な安全確認なしに行ってはいけません。
国土交通省の建設工事向け安全資料では、地下埋設物について、管理者が保有する情報を確認し、必要に応じて立会いや試掘などにより位置・深さ等を確認する考え方が示されています。ただし、これらの指針が地籍調査のすべての作業へ一律に直接適用されるとは限りません。掘削や穿孔などを伴う場合の安全上の参考としつつ、施設管理者の規程と実施主体の作業手順を優先します。
地下設備配置図では、設備本体の平面位置だけでなく、地下構造物の外周、管路の方向、点検口、換気口、出入口、作業禁止区域などを確認します。断面図がある場合は、設備の深さ、地表面との関係、床版や基礎の位置も確認します。
竣工図が入手できる場合は、計画図ではなく竣工時の状態が反映されているかを確認します。ただし、竣工後に更新、増設、撤去、管路変更が行われている可能性があります。作成年月日、改訂番号、最終更新日を確認し、現況との差異を管理者へ照会してください。
地表の点検口や換気口が図面と一致しない場合は、改修後の未更新、測量基準の違い、図面精度の限界などが考えられます。測量図と設備図を重ねる際は、方位、縮尺、基準点、座標系、図面の作成目的を確認します。
設備管理図には、保安上またはセキュリティ上、外部提供できない情報が含まれる場合があります。その場合は、図面一式の提供を求めるのではなく、地籍調査に必要な事項を限定して照会します。具体的には、境界付近の地下構造物の有無、立入可能範囲、測量機器の設置可否、地面に触れる作業の可否、管理者立会いの要否などです。
資料を持ち出せない場合は、施設内で閲覧し、管理者が許可した範囲で確認事項を協議記録へ残す方法があります。図面の複製を保有することよりも、安全条件を現地作業者へ正確に伝えることが重要です。
地籍調査で大規模な掘削を予定していなくても、境界標を探すために土や砕石を動かす、標識を設置するなどの作業が生じる場合があります。地下設備に近接する可能性がある場所では、どの作業まで認められるかを事前に明確にします。
設備管理者の立会いが必要な場合は、土地所有者等による筆界確認の機会と、設備保安上の立会いを可能な範囲で同じ日時に調整します。ただし、両者の確認目的と権限は別であることを記録してください。
資料4 道路台帳・占用許可資料・官民境界資料で管理区分を確認する
四つ目に確認する資料は、道路台帳、道路占用許可に関する資料、占用物件台帳、官民境界確認資料です。地下変電設備や関連管路が道路に接している、または道路区域内へ延びている場合に重要です。
道路区域を継続的に使用して、道路法で定める工作物や物件を設置する場合は、原則として道路管理者の道路占用許可が必要です。道路法上の対象には、電線、変圧塔、管路類、地下室や通路などが含まれます。ただし、個別設備がどの制度・許可の対象になるかは、設置形態や管理関係によって異なるため、道路管理者へ確認してください(国土交通省「道路占用制度」)。
道路占用許可の申請・管理資料には、占用場所、占用物件の名称、規模、数量、構造、工事方法などが記録され、位置図、平面図、横断面図、構造図などが添付される場合があります。ただし、保存状況や開示範囲は道路管理者や案件ごとに異なり、保安上の理由などで閲覧できない情報もあります。
道路台帳では、路線、道路区域、幅員、道路構造物などを確認します。ただし、道路区域を示す線、道路敷地の所有関係、官民境界、登記上の筆界は、それぞれ根拠と目的が異なります。道路台帳の線と筆界が当然に一致すると決めつけず、登記資料や官民境界確認資料と照合してください。
官民境界確認資料がある場合は、確認年月日、当事者、境界点番号、境界標の種類、座標、添付図面を確認します。地下設備の建設工事と同時期に官民境界確認が行われていれば、設備配置図との対応も確認します。
道路地下の設備では、土地所有者、道路管理者、道路占用者、設備管理者が別々であることがあります。筆界に関する確認先は土地の所有・管理関係と地籍調査の手続に基づいて整理し、設備付近への立入りや作業条件は占用者または設備管理者と調整します。
道路台帳や占用資料だけで地下設備の現在位置を断定することは避けます。許可時の計画図から設備が変更されている可能性や、図面の縮尺・測量基準が筆界確認用ではない可能性があるためです。必要に応じて、変更許可、更新、移設、撤去などの履歴も照会します。
4資料を照合するときの実務手順
4種類の資料を集めた後は、資料を個別に読むだけでなく、相互の関係を整理します。
最初に、対象地、隣接地、道路、水路などの地番を一覧化します。地下変電設備の施設名や住所だけではなく、登記上の地番を基準に整理してください。
次に、各筆の登記名義人と、設備所有者、設備管理者、道路管理者、道路占用者を分けて記録します。同じ組織でも、土地管理担当と設備管理担当では権限や保有資料が異なる場合があります。
その後、公図、地積測量図、地籍図、境界確認図などから、筆界を検討するための線と境界点を整理します。境界点番号、座標、辺長、境界標の種類が分かる場合は、資料ごとの対応表を作ると照合しやすくなります。
設備図面については、筆界の検討線と、設備外周、管路、点検口、作業制限区域との位置関係を確認します。設備図面に「境界」などの表示があっても、根拠資料が明記されていなければ、直ちに筆界として採用せず、出典を確認します。
道路に接している場合は、道路区域線、官民境界線、道路筆の形状、占用物件の位置を加えます。資料によって線が一致しないときは、どの資料が誤っているかを即断せず、不一致の内容と想定原因を記録します。
例えば、公図では直線なのに地積測量図では折れ点がある、設備配置図のフェンス線と境界確認図がずれている、道路台帳の区域線と道路筆の形状が異なる、といった不一致が考えられます。
不一致を見つけたら、現地で確認すべき項目へ置き換えます。「図面が違う」だけではなく、「境界標の現存確認が必要」「フェンスが筆界上か内側かを資料で確認する」「道路区域と筆界の関係を道路管理者へ照会する」など、具体的に記載します。
現地確認の前には、設備管理者へ予定作業を伝えます。測量機器を置く場所、境界標を探索する範囲、フェンス内への立入りの有無、地面や構造物に触れる可能性、作業人数、作業時間などを説明します。
立入りが認められない区域に境界点がある場合は、周辺の既知点や座標成果を用いた間接観測など、直接立入りを避ける方法を検討します。「復元」という表現や作業は、単なる目印の設置と筆界標の再設置を混同しやすいため、実施主体の手順と有資格者の判断を踏まえて扱ってください。
また、資料の閲覧日、取得日、発行日、図面作成年月日、改訂日を区別して記録します。設備図面は更新される可能性があるため、現地確認日時点で有効な情報かを管理者に確認します。
現地確認で押さえるポイント
現地では、最初に参加者の立場と確認範囲を整理します。土地所有者本人、代理人、設備管理者、道路管理者、測量担当者など、それぞれが何を確認するために参加しているのかを明確にします。
設備管理者が参加していても、土地所有者から筆界確認の委任を受けているとは限りません。その場合、設備管理者には安全条件や設備位置を確認し、筆界に関する確認は実施主体が適切な権限を持つ者へ求めます。
現地では、境界標の有無と状態を確認します。コンクリート標、金属標、鋲、刻印、構造物上の表示などが見つかった場合は、位置、形状、向き、周囲の状況を記録します。
ただし、設備管理用の表示鋲、測量の仮設点、施工基準点、管路位置の標識を境界標と誤認しないよう注意が必要です。境界標と判断する前に、地積測量図、境界確認資料、写真などとの対応を確認します。
フェンス、擁壁、縁石、舗装目地も確認しますが、これらが筆界上に設置されているとは限りません。構造物の中心、外面、内面のどこが境界かを外観だけで判断しないでください。
点検口や換気口付近では、機器の設置や長時間の滞在が制限されることがあります。設備管理者の指示に従い、通行、換気、点検作業、緊急時の動線を妨げない位置に測量機器を設置します。
現地で設備図面と状況が一致しないことが判明した場合は、その場の推測だけで図面を書き換えません。相違箇所を、許可された方法で写真、スケッチ、測量値などに記録し、管理者へ確認を求めます。
筆界案を図示するときは、設備外周線、フェンス線、道路区域線、管理上の制限線と区別できるよう、線種や注記を変えます。関係者が同じ図面を見ても、何を確認しているのかが分かるようにしてください。
境界標が構造物の下にある可能性がある、立入禁止区域内で接近できない、過去の工事で失われたと考えられる場合は、その事実と確認できなかった理由を記録します。確認できない境界点を、現認したものとして処理してはいけません。
直接確認できない場合は、周辺の既知点、座標成果、地積測量図、過去の境界確認資料などから位置を検討し、採用した方法、精度、未確認事項を関係者へ説明します。
よくある判断ミスと対処法
地下変電設備に隣接する地籍調査では、地表に見える施設の形に判断が引っ張られやすくなります。
代表的なミスは、フェンスや舗装の端をそのまま筆界と考えることです。設備は保守空間を確保して敷地境界から離して設置される場合があり、地下構造物だけが地上施設より広い場合もあります。構造物は現況情報として扱い、筆界資料との照合を優先します。
次に多いのが、設備管理者を土地所有者と思い込むことです。施設の看板や緊急連絡先は設備管理の窓口を示すものであり、土地所有権を示すものではありません。登記事項証明書で所有者を確認し、設備所有者・管理者との関係を整理します。
公図だけで境界位置を決めることも避ける必要があります。公図は隣接関係の確認に有用ですが、現地へ直接重ねられる精度を持つとは限りません。地積測量図、地籍調査成果、境界確認資料、現地標識などを組み合わせます。
反対に、設備の竣工図を筆界確定用の測量図と考えるのも危険です。設備図面は、設計、施工、保守を目的に作成されます。境界線が記載されていても、登記資料に基づく線か、設計上の参考線かを確認してください。
古い設備図を現在も有効だと考えるミスもあります。地下設備は外観から変更を把握しにくいため、更新や移設が行われていても気づかない場合があります。現地確認前に、図面の改訂状況と現況との差異を管理者へ照会します。
現地確認当日に設備管理者へ初めて連絡する進め方も、再調査の原因になります。立入申請、安全教育、作業届、時間指定などが必要な施設では、即日の立入りが認められないことがあります。
また、安全上の確認と筆界に関する確認を一つの回答で済ませると、記録が曖昧になります。「その場所で作業してよいこと」と「その位置が筆界であること」は別の事項です。記録でも項目を分けてください。
資料間に不一致があるとき、最も新しい図面だけを採用するのも適切ではありません。新しい設備図が、過去の境界確認資料を参照せず作成されている可能性があります。作成年月日だけでなく、作成目的、測量方法、参照資料、確認者を比較します。
道路占用許可が見当たらないことを理由に、直ちに無許可設備と判断することも避けます。別制度に基づく設置、資料の保存・検索方法の違い、管理主体の変更などがあり得るため、道路管理者と設備管理者へ確認します。
調査記録に残すべき事項
地下変電設備に隣接する地籍調査では、筆界に関する確認結果だけでなく、安全確認と管理者協議の経過を記録することが重要です。
最初に、取得・閲覧した資料を記録します。資料名、対象地番、作成年月日、取得日、発行元、図面番号、改訂履歴、閲覧場所などを整理します。管理者から口頭説明を受けた場合は、説明日時、担当部署、説明者、確認内容を記録します。
次に、土地所有者、筆界確認に関する担当者・代理人、設備所有者、設備管理者、道路管理者、道路占用者を分けて記録します。連絡先だけでなく、各人・各部署が確認できる事項も整理します。
現地作業の制限も記録します。立入可能範囲、作業可能時間、機器設置の可否、杭打ち・鋲設置・穿孔・掘削の禁止、点検口付近の滞在制限、管理者立会いの要否、緊急時の退避方法などです。
境界標については、種類、位置、状態、確認者、写真番号を記録します。発見できなかった場合も、「フェンス内で接近不能」「構造物下の可能性」「舗装で確認不能」など、理由を具体的に残します。
資料間に不一致がある場合は、対象となる線や点を明確にします。公図、地積測量図、設備配置図、道路台帳、官民境界確認図のどの部分が一致しないかを示し、追加照会や再確認の要否を記載します。
筆界案を作成した場合は、その根拠を整理します。使用した図面、座標、境界標、過去の確認記録、関係者の説明などを記録し、設備外周や舗装端だけを根拠にしていないことが分かるようにします。
参加者については、所属、氏名、参加目的、確認範囲、代理権の確認方法を記録します。設備管理者の説明を、土地所有者による筆界確認と誤認しないよう、記録上も区分してください。
未解決事項が残った場合は、無理に結論を作らず、追加資料、再確認、関係部署への照会、専門家への相談など、次の対応を明記します。担当者が交代しても経緯を追える記録にすることが重要です。
まとめ
地籍調査で隣地に地下変電設備がある場合、地表に見える設備の形だけで筆界を判断してはいけません。地下構造物の外周、保安上の管理範囲、道路区域、土地の筆界は、それぞれ異なる根拠を持つ可能性があります。
事前に確認したい一つ目の資料は、登記事項証明書です。対象地番、土地所有者、地目、地積、登記された権利関係を確認し、筆界に関する確認先を整理します。
二つ目は、公図、地積測量図、地籍調査成果、過去の境界確認資料です。筆界を検討する根拠、境界点、座標、辺長、境界標の情報を整理します。
三つ目は、地下設備配置図、埋設物図、断面図、竣工図などです。設備本体や管路の位置、立入制限、地面に触れる作業の可否などを把握し、現地作業の方法を設備管理者と協議します。
四つ目は、道路台帳、道路占用許可に関する資料、占用物件台帳、官民境界確認資料です。設備が道路区域内へ延びている場合や道路境界へ近接している場合に、管理区分と占用状況を確認します。
4種類の資料は、同じ目的や精度で作成されたものではありません。筆界を検討する資料と、設備位置・安全条件を確認する資料を区別し、作成目的、作成年月日、座標系、更新状況を確認しながら照合することが重要です。
資料収集が不十分なまま現地確認を行うと、立入制限、権限のある担当者の不在、図面の不一致などにより、再調査が必要になる可能性があります。現地へ入る前に、地籍調査の実施主体、土地所有者、設備管理者、道路管理者の役割を整理し、確認方法と安全条件を事前に確認しておきましょう。
権利関係が複雑な場合、筆界資料が不足している場合、境界点が立入制限区域内にある場合は、推測で進めず、地籍調査の実施主体、設備管理者、道路管理者へ確認してください。登記資料の取得方法は法務局で確認し、必要に応じて土地家屋調査士などの専門家へ相談しましょう。