地籍調査の対象地に古いブロック塀があると、土地所有者や実務担当者は、塀の中心と外面のどちらが境界なのか、塀をそのまま筆界の根拠としてよいのか、塀が越境しているように見える場合はどう扱うのかといった問題に直面します。
長年同じ場所にあるブロック塀は、現地で土地の区切りを把握するための重要な手掛かりです。しかし、塀が存在する位置と、登記された土地を区画する筆界の位置が一致するとは限りません。一方の土地の内側に控えて設置された塀、筆界をまたいで設置された塀、建替えや補修によって元の位置から変わった塀などもあります。
地籍調査は、主に市町村などが主体となり、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目、筆界の位置、面積などを調査・測量するものです。筆界の調査では、登記簿、登記所地図、地積測量図などの資料、地形や地物の状況、設置の経緯などを総合的に確認します。国土交通省の説明でも、地籍調査は一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査とされています。地籍ポータル
土地所有者等による筆界の確認は重要ですが、現在の地籍調査には、現地立会いだけでなく、図面や現地写真などを用いて確認する方法もあります。また、必要な通知が到達しているにもかかわらず所有者等が応答しない場合には、所定の要件と手続の下で、筆界案の確認があったものとみなす制度も設けられています。したがって、すべての調査で必ず関係者全員が現地に集まり、その場で合意しなければならないと説明するのは正確ではありません。地籍ポータル
この記事では、古いブロック塀がある土地について、地籍調査の際に確認したい4つのポイントを解説します。塀だけを根拠に結論を出さず、客観資料、現地状況、関係者の説明を整理するための実務的な考え方を確認しましょう。
地籍調査で古いブロック塀が問題になりやすい理由
古いブロック塀が境界付近にあると問題になりやすい理由は、塀が土地の境目を示す線として分かりやすく見えるからです。住宅地では、隣接地との間に塀が連続しているだけで、現在の土地所有者や近隣住民が長年その位置を境界だと考えている場合があります。
しかし、土地の境界を確認するときは、筆界と所有権界を分けて考える必要があります。筆界とは、土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線です。所有者同士の合意だけで任意に移動させることはできません。
一方、所有権界は、当事者が所有権の及ぶ範囲として認識している線です。筆界と所有権界は一致することが多いものの、時効取得、越境、土地利用上の合意などを背景として一致しない場合があります。法務局も、筆界は所有者間の合意だけでは変更できず、所有権界とは異なることがあると説明しています。法務局+1
古いブロック塀が当事者間で土地利用上の境として扱われていても、それだけで塀の位置が筆界であると確定するわけではありません。塀が一方の土地の内側に設置されている場合や、筆界線をまたいで設置されている場合もあります。
設置当時の資料が残っていないことも、判断を難しくする原因です。建物の新築時に一方の所有者だけで設置したのか、隣接する所有者同士が費用を負担したのか、以前にあった生け垣や板塀の位置を踏襲したのかによって、塀が示す意味は変わります。
相続や売買が繰り返されている土地では、現在の所有者が設置経緯を知らないこともあります。「土地を購入したときから塀があった」「先代から塀が境界だと聞いている」という説明は参考になりますが、その説明だけで筆界を確定することはできません。
ブロック塀の形状にも注意が必要です。塀の基礎が一方の敷地側に張り出している、控え壁が片側だけにある、笠木とブロック本体の中心が一致していない、途中で塀の種類や方向が変わっているといった場合には、外観上の中心だけから筆界を判断することは困難です。
地籍調査では、ブロック塀を無条件に境界として扱うのでも、まったく考慮しないのでもなく、筆界に関する地物の一つとして位置付けます。そのうえで、登記関係資料、過去の測量成果、境界標、地形、関係者の説明などと照合することが重要です。
確認1 ブロック塀と筆界の位置関係
最初に確認したいのは、ブロック塀のどの部分が筆界であると認識されているかです。「塀が境界です」という説明だけでは、具体的な位置を特定できません。
ブロック塀には、隣地側の外面、自地側の外面、ブロック本体の中心、笠木の中心、基礎の端、控え壁の端など、複数の位置があります。関係者が塀の中心を筆界と考えているのか、塀全体が一方の土地内にあると考えているのかを具体的に確認します。
一方の所有者が塀の中心を筆界と考え、もう一方が塀の外面を筆界と考えている場合、数センチから数十センチの認識差が生じることがあります。塀が長期間問題なく使われていても、土地の売買、分筆、建物の建替え、塀の撤去などを契機として、この認識差が表面化することがあります。
塀の全区間を一つの直線として扱わないことも重要です。道路側から敷地奥まで同じ塀に見えても、途中で施工時期や構造が変わっている場合があります。色や目地が異なる部分、補修跡、門柱との接続部分、段差、折点などを確認し、塀の位置関係が区間ごとに変わっていないかを見ます。
塀の折点と筆界点が一致するとは限りません。敷地形状に合わせて折れた可能性がある一方、施工上の都合や障害物を避ける目的で塀だけが折れている場合もあります。塀の角を直ちに筆界点として扱わず、周囲の境界標や図面と照合する必要があります。
老朽化した塀では、傾きにも注意します。上部が隣地側へ傾いている場合、塀上端の中心と地際の中心は一致しません。筆界との位置関係を確認するときは、どの高さ、どの構造部分を基準にしているのかを明確にします。
塀の外面を基準としているとの説明があった場合は、モルタルや化粧材の厚みにも注意します。後年の補修によって表面が塗り増されていると、現在見えている外面と設置当初の外面が異なることがあります。塀本体の位置、仕上げ面、基礎の位置を可能な範囲で区別して記録します。
現地では、道路側の始点、敷地奥の終点、途中の折点、施工継ぎ目、境界標の周辺などを分けて撮影すると整理しやすくなります。写真には撮影方向が分かる情報を残し、調査図上の位置と対応させます。
地籍調査では、塀があるからその位置を筆界にするのではありません。登記簿や登記所地図などの資料、地形や地物、設置経緯その他の筆界に関する情報を総合的に検討し、筆界の位置と塀との関係を整理するという順序が基本です。国土交通省の手引でも、工作物、囲障、境界標などの設置経緯は、筆界に関する情報に含まれるとされています。地籍ポータル
確認2 ブロック塀の所有者と設置経緯
二つ目の確認点は、ブロック塀を誰が設置し、誰が所有物として管理してきたのかという経緯です。塀の所有関係だけで筆界が決まるわけではありませんが、どのような意図で塀が設置されたかを検討する材料になります。
現在の所有者が施工を依頼した塀であれば、設置時期、施工会社、当時確認した境界標、隣地所有者との協議内容などを聞き取ります。契約書、見積書、領収書、外構図、施工前後の写真などが残っていないかも確認します。
相続した土地であれば、先代から聞いている内容を整理します。ただし、本人が直接経験した事実と、家族や近隣住民から聞いた話は区別して記録することが大切です。「父から境界だと聞いた」という説明と、「塀の設置工事に立ち会い、境界杭を確認した」という説明では、情報の性質が異なります。
売買で取得した土地では、売買契約時の境界確認書、物件状況報告書、測量図、重要事項説明に関連する資料などが参考になる場合があります。ただし、書類の名称だけで内容を判断せず、どの範囲について、誰が、どのような資料を基に確認したのかを確認します。
塀の維持管理状況も手掛かりになります。一方の土地所有者だけが長年にわたり塗装や補修を行っている場合、その人が塀を自分の所有物と認識している可能性があります。ただし、補修費用を負担してきた事実だけで、塀の所有や筆界の位置が確定するわけではありません。
隣地所有者が管理できない事情があり、便宜上一方だけが補修してきた場合もあります。また、双方で費用を負担していても、領収書や契約書が一方の名義になっていることがあります。管理実態は、他の資料や説明と組み合わせて評価します。
構造から設置者を推測できる場合もあります。控え壁や基礎の張り出しが一方の敷地側にあり、建物の外構と一体的に施工されている場合には、その側の所有者が設置した可能性があります。しかし、施工スペースや地盤条件などによって構造が決まった可能性もあるため、外観だけで所有者や筆界を断定してはいけません。
設置時期も確認します。建物の新築時、宅地造成時、道路拡幅後、隣地の建替え時など、塀が造られた時期によって探索すべき資料が変わります。造成工事と同時に施工された塀なら造成図面が、道路工事後に築き直された塀なら道路境界関係の資料が残っている可能性があります。
塀が途中で建て替えられている場合は、旧塀と新しい塀の位置が同じかを確認します。古い基礎を再利用した場合、基礎とブロック本体の中心がずれていることがあります。既存の塀を撤去して新設した際に、施工上の都合で位置を内側へ移した可能性もあります。
聞き取りでは、「誰の塀ですか」という質問だけで終わらせず、時系列に沿って確認します。塀ができる前に何があったのか、工事前に境界標を確認したのか、隣地所有者と何を話し合ったのか、費用を誰が負担したのか、過去に補修や建替えを行ったのかを整理します。
塀の所有に関する認識と、筆界に関する認識は分けて記録します。「塀は一方の所有物だが、双方とも塀の中心を筆界と認識している」「共同で設置したと認識しているが、筆界の具体的な位置については意見が異なる」といった形で整理すると、後から争点を把握しやすくなります。
確認3 境界標や既存資料との整合性
三つ目は、ブロック塀の位置と、境界標や既存資料との整合性です。古い塀は重要な現況地物ですが、客観的な資料と照合することで、筆界を検討する際にどの程度重視できるかが見えてきます。
まず、塀の始点、終点、折点付近に境界標が残っていないか確認します。コンクリート杭、石杭、金属標、金属鋲、刻印などが、土砂、舗装、植栽、塀の基礎などによって見えにくくなっている場合があります。
境界標らしいものを発見しても、直ちに対象地の筆界点と判断しないことが重要です。道路工事、上下水道工事、構造物の設置、測量作業などで使用された別の標識である可能性があります。標識の形状、表示、周囲の資料との関係を確認します。
塀の途中に境界標がある場合は、塀の中心、外面、基礎端のどこに対応しているかを確認します。境界標が塀から一定の距離を置いて連続している場合には、塀が敷地内に控えて設置された可能性を検討できます。
ただし、境界標についても、移動、破損、再設置の可能性があります。塀の工事や舗装工事の際に取り外され、元の位置とは異なる場所に戻された事例も考えられます。標識の現況だけではなく、地積測量図などの資料から復元できる位置と一致するかを確認します。
資料確認では、公図だけに依存しないことが重要です。公図は土地の位置関係を確認する基礎資料ですが、作成時期や作成方法によって精度が異なります。国土交通省も、登記所に備え付けられた地図や図面には、境界や形状が現地と異なる場合があると説明しています。地籍ポータル
確認対象となる資料には、登記簿、登記所地図、公図、地積測量図、筆界特定手続記録、過去の境界確認図、官民境界関係図面、道路台帳、水路関係資料、区画整理や土地改良の成果、造成図面、売買時の測量図、古い写真などがあります。
各資料は、作成年、作成者、作成目的、測量方法、座標の有無、基準点との関係、関係者による確認の有無などを見て評価します。新しい資料だから正確である、古い資料だから使えないという単純な判断は避けます。
例えば、建築時の配置図は、建物と敷地の位置関係を示す参考にはなりますが、筆界確定を目的として作成された図面とは限りません。一方、古い測量図であっても、筆界点の座標、辺長、境界標の種類、周辺地物との関係が記録され、現地に復元できるものであれば重要な手掛かりになります。
筆界案の作成に使用する客観資料については、原則として現地復元性を有する資料を使用するという運用が示されています。数値、座標、辺長、角度、基準点との関係などにより、現地で位置を検証できるかが重要です。地籍ポータル+1
塀と資料上の筆界が一致しない場合は、差が生じた原因を検討します。塀が敷地内に控えて設置されたのか、塀の建替え時に位置が変わったのか、塀が傾いたのか、境界標が移動したのか、資料の精度に限界があるのかを分けて考えます。
差が小さい場合でも、根拠なく測定誤差として処理してはいけません。使用している資料の精度、測量時期、座標系、地殻変動等の補正の有無、現地測量の方法などを確認し、許容される誤差の範囲を踏まえて検討します。
実務では、塀の中心線、両外面、基礎端、境界標、各資料から推定される筆界線を調査図上で区別すると、関係者への説明がしやすくなります。現地に入る前に資料間の相違を把握し、確認したい箇所と質問事項を整理しておくことが重要です。
確認4 ブロック塀の安全性と今後の取扱い
四つ目は、ブロック塀の安全性と今後の取扱いです。地籍調査は、塀が建築基準関係規定に適合しているかを判定したり、構造上の安全性を診断したりする手続ではありません。それでも、古い塀の近くで現地確認や測量を行う以上、作業時の安全には注意が必要です。
外観上は、著しい傾き、ひび割れ、欠損、目地の劣化、ぐらつき、基礎周辺の沈下、控え壁の破損、鉄筋の露出などがないかを確認します。危険が疑われる塀には寄り掛からず、強く押したり、塀の直下で長時間作業したりしないようにします。
国土交通省のブロック塀の点検資料では、塀の高さや厚さ、控え壁、基礎、傾き、ひび割れに加え、専門家による鉄筋や基礎の根入れの確認などが点検項目として示されています。外観で異常がある場合や内部構造が分からない場合は、建築士などの専門家や自治体の建築担当窓口へ相談することが適切です。国土交通省+1
地籍調査の担当者が、その場で塀の適法性や撤去の必要性を断定することは避けます。筆界の調査と、建築物・工作物の安全性の判断は目的と根拠が異なるためです。危険な状態が疑われる場合には、現況を記録し、安全な場所で作業を行い、必要な相談先を案内します。
境界標を探すために塀の基礎周辺を確認する場合も、無断で掘削したり、構造物を傷つけたりしてはいけません。土地所有者等の了解を得たうえで、安全を確保し、必要最小限の確認にとどめます。
塀の撤去、補修、建替えが予定されている場合は、工事によって筆界を示す手掛かりや既存の境界標が失われないように注意します。工事前に実施市町村の地籍調査担当部署や測量を担当する事業者へ予定を伝え、境界標や筆界点の取扱いを確認します。
地籍調査では、すべての筆界点に恒久的な境界杭が新設されるとは限りません。測量成果や座標によって筆界点を管理する方法もあるため、所有者の判断だけで任意の場所に杭を設置せず、調査実施者の方針に従う必要があります。
塀が筆界上にあると確認された場合でも、塀の所有権、補修費、建替え費用、工事のための立入りなどが地籍調査によって自動的に決まるわけではありません。筆界の確認と、塀の所有・管理に関する当事者間の問題は分けて整理します。
塀が筆界を越えている可能性がある場合も、現場で直ちに撤去や移設を求めるのではなく、まず筆界と塀の位置関係を図面や写真で記録します。越境物の撤去、取得時効、使用関係などの民事上の問題については、必要に応じて弁護士や土地家屋調査士などへ相談します。
現地立会いを円滑に進める実務上のポイント
古いブロック塀がある現場では、現地確認の日に初めて問題を検討するのではなく、事前準備を行うことが重要です。登記情報、公図、地積測量図、過去の測量成果、道路や水路の資料、造成図、現地写真などを確認し、塀と筆界が一致しない可能性を想定します。
地籍調査では、現地立会いによる調査のほか、図面、写真、三次元画像などを用いる図面等調査が行われることがあります。そのため、自治体から届いた通知に記載された確認方法、日時、提出資料、回答方法を確認する必要があります。地籍ポータル+1
現地で説明を始める際は、確認の対象を明確にします。地籍調査は筆界、地番、地目、面積などを調査する手続であり、塀の修理費をどちらが負担するか、塀を撤去すべきか、所有権界をどこにするかといったすべての民事問題を決定する場ではありません。
関係者には、塀のどの位置を筆界と認識しているか、その認識の根拠は何かを確認します。一方の説明を先に結論として扱うのではなく、可能な範囲で双方に同じ事項を確認し、共通する説明と異なる説明を整理します。
「塀沿い」「この辺り」といった曖昧な表現だけで確認を終えないようにします。塀の中心なのか、外面なのか、基礎端なのかを具体的に示し、必要に応じて調査図や現地写真に記録します。
塀の中心と説明された場合は、上端の中心か地際の中心か、傾きがある部分をどのように扱うのかも確認します。外面と説明された場合は、仕上げ材を含む現在の表面なのか、ブロック本体の面なのかを明確にします。
写真は、塀の全景だけでなく、始点、終点、折点、施工継ぎ目、基礎、控え壁、境界標などを撮影します。全景写真で周辺との位置関係を示し、近接写真で具体的な状態を残します。必要な場合は計測値も併記します。
現地で新しい資料の存在が判明した場合は、その場の口頭説明だけで判断せず、資料の内容を確認します。「以前の測量図が自宅にある」「先代が隣地と確認書を交わした」といった情報が出た場合には、後日提出できるかを確認し、未確認事項として記録します。
代理人が対応する場合は、代理権の範囲と、現地事情に関する知識を分けて確認します。現地に詳しい親族や管理者の説明は事実関係を調べるうえで有用ですが、境界確認について所有者を代理する権限があるとは限りません。実施主体の案内に従い、必要な委任関係を確認します。
関係者の認識が一致しない場合の対応
古いブロック塀をめぐって関係者の認識が一致しない場合は、その場の雰囲気や長年の利用状況だけで一方の主張を採用しないことが重要です。塀が古いこと、長期間異議がなかったこと、一方だけが補修してきたことは参考事情ですが、それぞれ単独で筆界を決める根拠にはなりません。
まず、争点を具体的に分けます。塀の所有者について争っているのか、塀の中心と外面のどちらが筆界かで意見が異なるのか、一部の区間だけ塀がずれているのか、道路側の筆界点は一致しているが奥側が一致しないのかを整理します。
次に、関係者が一致して認めている事実を確認します。塀が設置されたおおよその時期、過去の補修、残っている境界標、塀の建替え履歴などです。共通認識と対立している事項を分けると、追加で調べるべき資料が明確になります。
資料が不足している場合は、過去の地積測量図、分筆資料、官民境界資料、造成図面、近隣筆の測量成果などを追加で確認します。現地で見つからなかった境界標についても、資料上の座標や辺長から位置を検討できる場合があります。
所有者等が積極的に異議を述べている場合と、通知に応答しない場合は区別する必要があります。2024年に設けられたみなし確認の手続は、必要な通知や筆界案が到達しているにもかかわらず、所定期間内に意見が示されない場合などを対象とするものです。筆界案に明確な異議が出ている場合に、単に一定期間が経過したという理由で確認済みと扱う制度ではありません。地籍ポータル+1
所有者等の確認が得られない場合でも、所在不明者や無反応者に関する所定の調査方法、筆界案の作成・通知・公告などが利用できる場合があります。どの手続を適用できるかは、土地の状況や応答の有無によって異なるため、実施主体が現行の作業規程準則等に基づいて判断します。
適用可能な調査や手続を行っても筆界を確認できない場合は、筆界未定として処理されることがあります。筆界未定になると、関係する土地について、後の分筆などに支障が生じる可能性があります。ただし、筆界未定になる範囲や影響は個別の状況によって異なるため、実施市町村や管轄法務局へ具体的に確認することが必要です。地籍ポータル+1
当事者同士が塀の位置で合意したとしても、その合意だけで本来の筆界を任意に移動させることはできません。筆界の位置が不明な場合には、法務局の筆界特定制度を検討することがあります。
筆界特定制度は、新しい筆界を合意によって設定する制度ではなく、土地が登記された際に定められた元の筆界を、資料や現地状況を調査して明らかにする制度です。また、所有権がどこまで及ぶかを最終的に判断する制度ではありません。法務省+1
塀の越境、取得時効、撤去義務、損害賠償などの民事上の問題が含まれる場合は、筆界とは別の問題として整理します。必要に応じて、土地家屋調査士、弁護士、法務局、自治体の担当部署などへ相談します。
意見が対立している場面では、「塀が間違っている」「一方の説明が正しい」と即断するのではなく、「現時点の資料だけでは確認できない」「主張している位置が異なる」「追加資料の確認が必要」と客観的に記録します。無理に当日中の決着を求めず、未確認事項を整理することが重要です。
地籍調査後のトラブルを防ぐ記録の残し方
古いブロック塀がある境界では、確認した筆界の位置だけでなく、どの資料と説明を基に確認したのかを記録することが重要です。後年に塀が撤去されたり、所有者が変わったりすると、現地の手掛かりや設置当時の記憶が失われます。
調査図には、筆界線とブロック塀の位置を区別して記載します。両者が一致する場合も、塀の中心、外面、基礎端など、どの構造部分と一致しているのかが分かるようにします。途中で関係が変わる場合は、変化点を明確にします。
写真には、撮影日、撮影位置、撮影方向、対象となる筆界点などの情報を付けます。塀の全景、折点、境界標、基礎、傾き、補修跡など、判断に関係した箇所を記録します。
聞き取り内容は、説明者、確認日、土地との関係、説明の根拠を整理します。「昔から境界だった」という記載だけではなく、誰が設置したと聞いているのか、本人が工事を見たのか、境界杭を確認した記憶があるのかを具体的に残します。
資料については、名称、作成年、作成者、作成目的、対象範囲、座標や辺長の有無、現地復元性などを整理します。複数資料の内容が異なる場合は、差異と、それぞれの資料をどのように評価したかを記録します。
地籍調査の結果に基づいて作成された地図と簿冊は、国土調査法により公告の日から20日間、一般の閲覧に供されます。測量や調査上の誤り、政令で定める限度を超える誤差があると考える場合は、閲覧期間内に申し出ることができます。e-Gov 法令検索+1
所有者は、現地で説明を受けただけで終わらせず、閲覧の通知が届いたら、地籍図原図や地籍簿案に示された筆界、地番、地目、面積などを確認することが重要です。現地で理解した内容と成果図の表示が一致しているかを確かめます。
塀の撤去や建替えを予定している場合は、工事前に境界標や筆界点との位置関係を写真や測量成果で確認します。施工者にも境界標の存在を伝え、無断で撤去、移動、埋没させないようにします。既存の標識を動かす必要が生じた場合は、所有者だけで判断せず、実施市町村や専門家へ相談します。
記録には、「現況どおり」「塀沿い」といった将来解釈が分かれやすい表現をできるだけ避けます。塀が撤去されても位置を検証できるよう、筆界点の座標、恒久的な地物、基準点、境界標との位置関係などを残すことが重要です。
まとめ
地籍調査で境界付近に古いブロック塀がある場合は、塀をそのまま筆界と決めつけず、現況地物の一つとして客観的に確認する必要があります。
一つ目の確認点は、塀の中心、外面、基礎端など、どの部分が筆界と認識されているかです。二つ目は、塀の設置者、設置時期、費用負担、補修履歴、隣地との協議などの設置経緯です。三つ目は、境界標、公図、地積測量図、過去の測量成果などとの整合性です。四つ目は、現地作業時の安全性と、撤去・補修・建替えを行う際の境界標や記録の保全です。
古いブロック塀が長年存在していることは重要な事情ですが、それだけで筆界と一致するとは限りません。筆界、所有権界、塀の所有関係、利用上の境を分け、資料、地形や地物、設置経緯、関係者の説明を総合して確認します。
所有者等の認識が一致しない場合は、争点を細かく整理し、追加資料や測量成果を検討します。無反応の所有者等に対しては所定の要件を満たす場合にみなし確認などの手続が利用されることがありますが、明確な異議がある場合と混同してはいけません。
地籍調査で確認できる範囲を超えて、塀の越境、所有権、撤去、費用負担などの問題が残る場合があります。判断に迷うときは、自治体から届いた通知や対象地の資料を整理し、実施市町村の地籍調査担当部署、管轄法務局、土地家屋調査士、弁護士など、問題の内容に応じた窓口へ相談してください。