地籍調査と分筆予定が重なる時に理解しておきたいこと
地籍調査の対象となっている土地について、売却、相続、宅地利用、公共用地の提供、農地の利用変更などを理由に分筆を検討することがあります。この場合は、地籍調査と分筆登記を別々の作業として進めるのではなく、双方の工程と資料が整合するように調整することが重要です。
地籍調査は、主に市区町村などが実施主体となり、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査し、筆界と地積を測量して、地籍図と地籍簿を作成する事業です。現地調査では、登記所の地図、地図に準ずる図面、過去の測量資料、現地の境界標、土地所有者等の確認結果などを踏まえて筆界を調査します。完成した成果は所定の手続を経て登記所へ送付され、登記記録や登記所備付地図の整備に利用されます。
一方、通常の分筆登記は、一筆の土地を二筆以上に分けて登記記録を作り分ける手続です。一般には、分筆前の土地の状況を調査し、分筆後の土地の位置、形状、境界点、地積などを示す地積測量図を作成して申請します。土地の一部を将来別用途で使いたいと考えているだけでは、その部分が独立した土地として登記されるわけではありません。
地籍調査の実施中には、土地の現況や利用状況などを踏まえ、一定の条件の下で分筆として調査される場合があります。ただし、取り扱う条件や申出期限は実施主体によって異なります。所有者が希望線を示せば必ずその線で分筆されるわけではなく、現況、地目、管理状況、所有者の意思、調査工程などにより、地籍調査の中では対応されないこともあります。
また、地籍調査中であることだけを理由に、通常の分筆登記や所有権移転登記などが全国一律に禁止されるわけではありません。ただし、調査の途中で登記上の地番、形状、地積、名義などが変わると、地籍調査で使用している資料との不一致が生じる可能性があります。調査区域内で登記手続を予定している場合は、申請前の相談が必要か、登記完了後に何を連絡するか、地積測量図や座標の照合が必要かを担当部署へ確認してください。
避けたいのは、土地所有者、地籍調査の担当部署、現地の調査担当者、土地家屋調査士、売買や建築の関係者が、異なる分筆線や異なる日程を前提に動くことです。地籍調査で確認した筆界と分筆登記に用いる測量成果が整合しなければ、図面の修正、現地の再確認、関係者への再説明が必要になる場合があります。
まずは、分筆する目的と希望時期を整理し、現在の登記情報と境界資料を確認します。そのうえで、地籍調査の担当部署と土地家屋調査士へ早めに相談し、立会い、地籍測量、成果閲覧、通常の分筆測量、登記申請の順序を調整することが、手戻りを抑える基本です。
手順1 分筆の目的と希望時期を整理する
最初の手順は、なぜ分筆するのか、いつまでに登記を終えたいのかを明確にすることです。目的と期限が曖昧なままでは、地籍調査成果の登記所送付を待つのか、調査中に通常の分筆登記を進めるのか、地籍調査の中で分筆の希望を申し出るのかを判断しにくくなります。
分筆の目的には、土地の一部売却、相続後の利用区分、住宅敷地と農地の区分、建築予定地の切り分け、進入路の独立管理、公共事業用地の提供などがあります。同じ分筆でも、目的によって必要な形状、面積、接道条件、期限、関係者が変わります。
一部売却を予定している場合は、売買契約、決済、引渡し、所有権移転登記の予定日を確認します。土地の一部だけを独立して移転するには、通常、その部分を分筆して登記上の一筆として特定できる状態にする必要があります。契約時点では概算面積を使う場合もありますが、決済や所有権移転までに確定測量や分筆登記が求められるかは、契約条件によって異なります。
建築を予定している場合は、分筆だけでなく、接道、敷地面積、建蔽率や容積率の算定、既存建物との関係、融資条件などを確認します。分筆登記が完了しても、分筆後の土地が希望する建築計画に使えるとは限りません。設計担当者や行政窓口にも計画図を示し、土地利用上の条件を確認することが必要です。
相続に関係する場合は、現在の登記名義、相続登記の状況、遺産分割の内容を確認します。亡くなった人の名義のまま分筆を検討している場合や、複数の相続人が関係する場合は、申請人や手続の順序について個別判断が必要です。相続登記、分筆登記、持分移転や所有権移転のどれを先に行うかを自己判断せず、関係する専門家へ確認してください。
分筆の理由を整理する際には、予定線が利用上の区切りにすぎないのか、登記上も独立した土地にする必要があるのかを区別します。土地の一部を駐車場や資材置場として使うだけであれば、直ちに分筆が必要とは限りません。反対に、その部分だけを売却する、担保関係を分ける、別名義に移すといった目的では、分筆を含む登記手続が必要になることがあります。
次に、希望時期を具体化します。「早めに終えたい」ではなく、売買契約、引渡し、工事着手、融資実行、地籍調査の立会い、成果閲覧などの予定日を時系列に並べます。地籍調査は、準備、一筆地調査、地籍測量、地籍図と地籍簿の作成、成果閲覧、認証、登記所への送付という段階を経て進むため、現地立会いが終わっても直ちに登記記録へ反映されるわけではありません。
期限に余裕があり、地籍調査成果の登記所送付が近いと見込まれる場合は、成果の反映後に通常の分筆登記を進める方法を検討できます。外周の筆界や地積が整理された後であれば、分筆計画の前提を確認しやすくなることがあります。ただし、地籍調査成果があるからといって、分筆線の測量や分筆登記に必要な調査がすべて不要になるわけではありません。
反対に、売買や事業の期限が迫っていて地籍調査の完了を待てない場合は、通常の分筆登記を先に行う選択肢があります。この場合は、申請前に地籍調査担当部署へ相談し、登記完了後に新しい地番や地積測量図などを共有する必要があるか確認します。地域や調査段階によっては、登記申請に用いる図面と地籍調査成果の照合を求められる場合があります。
地籍調査の中で分筆として扱うことを希望する場合は、できるだけ早い段階で申し出ます。現地調査や測量が進んだ後では、希望線を成果へ反映できないことや、通常の分筆登記を別途行うよう案内されることがあります。
この段階では、分筆線を最終確定していなくても構いません。分筆目的、期限、分けたい範囲、分筆後の用途、優先したい面積や間口を説明できるようにします。道路、建物、塀、擁壁などとの関係を示した概略図を用意すると、相談内容を共有しやすくなります。
手順2 登記情報と境界資料を確認する
二つ目の手順は、対象土地の登記情報と境界資料を集め、分筆計画の前提を確認することです。内部の分筆線だけを先に決めても、分筆前の土地全体の筆界や権利関係が整理されていなければ、通常の分筆登記を円滑に進められない場合があります。
まず、土地の所在、地番、登記名義人、地目、地積を最新の登記事項証明書などで確認します。所有者が保管している古い権利証や売買資料だけでは、現在の登記内容と一致しない可能性があります。相続、住所変更、氏名変更、法人の変更、売買などが未反映であれば、地籍調査の通知先や登記申請の準備に影響します。
共有名義の土地では、共有者、持分、連絡先、分筆目的に対する意向を確認します。分筆登記の申請可否だけでなく、分筆後の土地を誰が取得するのか、売却条件をどうするのか、費用を誰が負担するのかといった合意も必要です。一部の関係者だけで線を決めると、後から形状や面積の見直しが必要になることがあります。
抵当権、根抵当権、地上権、地役権、賃借権の登記、仮登記などがある場合も確認します。分筆によって既存の権利が当然に消滅するわけではありません。分筆後の各土地に権利がどのように関係するか、金融機関や権利者との調整が必要かは、登記内容と取引条件によって異なります。
次に、登記所に備え付けられている地図または地図に準ずる図面、過去の地積測量図を確認します。地積測量図は、分筆登記や地積更正登記などに伴って提出されることが多い図面ですが、すべての土地に備え付けられているわけではありません。また、作成年代によって記載内容、座標の有無、測量方法、精度が異なるため、図面があるだけで現在の筆界位置を直ちに断定できるとは限りません。
土地所有者が保管している筆界確認書、境界確認書、官民境界に関する図面、道路境界図、過去の売買時の測量図、造成図、換地図なども探します。現地に境界標がある場合は、種類、位置、周囲の状況を確認します。ただし、石杭、金属標、鋲、塀の角、擁壁の端などが存在しても、それだけで筆界と判断するのは避けます。既存資料、周辺の境界点、土地利用の経過、隣接地との関係を総合して確認する必要があります。
分筆予定線は、既存の筆界と明確に区別します。地籍調査で中心となるのは、現在の一筆ごとの外周を構成する筆界の調査です。これに対し、分筆線は一筆の内部に新たに設ける線です。外周の筆界位置が変われば、同じ分筆線を想定しても、分筆後の地積や辺長が変わる可能性があります。
例えば、道路境界から一定の奥行きで土地を分ける計画でも、道路との筆界が想定と異なれば、分筆後の面積、間口、建物配置が変わります。隣地側の筆界が当初の見込みより内側に確認されれば、通路幅や建築可能な範囲にも影響します。希望面積だけで線を決めず、外周の筆界を確認した後で分筆線を設計することが重要です。
既存建物がある場合は、建物と分筆線の関係を確認します。建物本体だけでなく、屋根、ひさし、雨どい、基礎、階段、擁壁、浄化槽、給排水管、電気設備、車両の出入口なども対象です。分筆後に設備が他人の土地を通る状態になると、移設、使用承諾、地役権などの検討が必要になることがあります。
農地を分筆する場合は、分筆登記だけで予定する売買や転用が完結するとは限りません。農地法上の許可や届出、都市計画、開発、道路、河川、森林などの関係手続が別途必要になる場合があります。分筆の可否と分筆後の利用可否は別の問題として確認してください。
資料を集めたら、確認済みの事項と未確認の事項を分けます。南側の筆界資料がない、過去の地積測量図はあるが境界標が見つからない、希望面積は決まっているが接道条件を確認していない、といった形で整理すると、地籍調査担当部署や土地家屋調査士へ相談しやすくなります。
手順3 地籍調査の担当部署と専門家へ相談する
三つ目の手順は、地籍調査の担当部署と、土地の表示に関する登記を扱う土地家屋調査士へ早めに相談することです。売買、相続、抵当権、所有権移転などが関係する場合は、必要に応じて司法書士や取引の担当者にも確認します。
地籍調査担当部署には、対象土地の所在と地番を伝え、現在の調査段階を確認します。説明会前、資料収集中、現地立会い前、一筆地調査中、地籍測量中、成果作成中、閲覧前後、認証手続中、登記所送付前後では、可能な対応が異なります。
相談時には、分筆目的、希望時期、希望線の概要、売買や建築の日程、すでに測量を依頼しているか、通常の分筆登記を申請する予定があるかを伝えます。計画が確定していなくても、分筆の可能性が高い段階で相談しておけば、申出期限や必要資料を確認できます。
特に確認したいのは、地籍調査の中で分筆として扱えるかどうかです。地域によっては、一筆の一部が別地目で利用されている場合や、利用または管理上分けることが適当と認められる場合などに、地籍調査の成果へ分筆を反映する運用があります。一方で、希望面積に合わせるだけの線や、将来計画だけを根拠とする線は取り扱われないことがあります。具体的な条件は担当部署の案内を基準にしてください。
通常の分筆登記を地籍調査中に行う場合は、どの時点までに登記を完了すれば調査資料へ反映できるか、申請前の図面照合が必要か、登記完了後に登記事項証明書や地積測量図を提出するかを確認します。自治体によっては、地籍測量後から成果の登記所送付前までの期間に、地積測量図の境界座標と地籍調査成果との照合手続を設けています。
土地家屋調査士へ依頼する場合は、対象土地が地籍調査区域内であり、現在どの工程にあるかを必ず伝えます。分筆登記では、分筆予定部分だけでなく、分筆前の土地全体の筆界や地積を調査する必要が生じることがあります。必要な立会い、官民境界の確認、既存資料の検証、地積測量図の作成方法は、土地ごとに異なります。
地籍調査成果を待つ案と、通常の分筆登記を先行する案の双方について、工程、必要資料、手戻りの可能性を比較します。成果を待てば外周の筆界や地積を確認しやすくなることがありますが、登記所への反映まで時間を要することがあります。先行して分筆すれば期限に合わせやすい反面、地籍調査資料との照合や更新連絡が必要になる場合があります。
相談時には、地籍調査成果を後の分筆登記に利用できる範囲も確認します。地籍図や座標資料が利用できても、新たな分筆線の位置を決める測量、現地への境界標設置、地積計算、登記申請書類の作成などが別途必要になることがあります。
売買が関係する場合は、契約上の面積が公簿面積か実測面積か、面積差を精算するか、分筆登記完了を決済条件とするかを確認します。建築が関係する場合は、分筆後の敷地が計画条件を満たすかを設計担当者と確認します。相続が関係する場合は、相続登記や遺産分割との順序を整理します。
地籍調査担当部署と専門家の説明が異なるように見える場合は、回答の前提となる工程や資料を確認します。地籍調査側は区域全体の成果整合を管理し、土地家屋調査士は個別の分筆登記を検討するため、見ている手続が異なります。必要に応じて同じ計画図や地積測量図を双方へ示し、認識を合わせることが大切です。
手順4 立会いから登記までの工程を調整する
四つ目の手順は、現地立会い、地籍測量、成果閲覧、分筆測量、分筆登記の順序を調整することです。最適な順番は、分筆の期限、地籍調査の進捗、外周筆界の確認状況によって変わります。
地籍調査の現地調査では、登記所の地図、既存資料、現地の境界標、関係者の確認結果などを踏まえ、一筆ごとの筆界を調査します。分筆予定がある場合でも、まず分筆前の土地の外周を確認することが重要です。外周が変われば、分筆後の形状、面積、接道幅も変わるためです。
立会い当日は、分筆予定があることを現地の担当者へ改めて伝えます。事前に担当部署へ相談していても、現地担当者が同じ資料を持っているとは限りません。希望線を示した概略図、売却予定部分、建築予定範囲、優先する面積や間口を持参すると、認識を合わせやすくなります。
ただし、現地で所有者が示した線が、その場で正式な分筆線として確定するとは限りません。分筆線の決定には、外周筆界、分筆後の地積、接道、建物や設備との関係、権利関係、関係法令、地籍調査の取扱条件などの確認が必要です。地籍調査の立会いは重要な相談機会ですが、通常の分筆登記や土地利用の審査を代替するものではありません。
外周筆界について隣接所有者との認識が一致しない場合は、分筆線の検討より先に、既存資料と現地状況を整理します。筆界を確認できない土地が筆界未定として処理されると、地籍図に筆界線が表示されず、後の分筆登記や地積更正登記などに支障が生じる場合があります。解消には追加の測量や登記手続が必要になることがあるため、立会い、資料提示、担当部署への相談を丁寧に行います。
地籍測量後は、確認された外周筆界と分筆計画に食い違いがないかを確認します。当初の想定面積と測量結果が異なる場合は、売却面積、建物からの離隔、道路への接し方、通路幅など、何を優先するかを決めます。優先条件を決めずに面積だけを調整すると、利用しにくい形状になるおそれがあります。
地籍調査では、作成された地籍図案と地籍簿案について、通常20日間の閲覧期間が設けられます。閲覧時には、地番、所有者、地目、地積だけでなく、土地の形状、隣接関係、確認した境界点、地籍調査の中で申し出た分筆の反映状況を確認します。
閲覧は、調査結果に誤りがあると考える場合に申し出るための工程です。分筆希望が反映されていない場合は、その理由と今後の手続を確認します。ただし、所有者の希望どおりでないことだけで、直ちに地籍調査成果の誤りになるわけではありません。分筆の取扱条件を満たさない場合や、申出時期が工程に間に合わない場合は、通常の分筆登記を別途行うことになります。
地籍調査中に通常の分筆登記が完了した場合は、担当部署の案内に従い、新しい地番、登記地積、地積測量図などを連絡または提出します。登記完了の情報が地籍調査側へ直ちに自動反映されるとは限らないため、申請前と完了後の連絡方法を確認しておくことが安全です。
地籍調査成果の登記所送付後に分筆する場合は、最新の登記事項証明書、地図、地積測量図などを取得し、現在の登記内容を基準に計画を確定します。地籍調査時に相談した線と、登記所送付後の登記記録が一致しているかも確認してください。
工程を調整するときは、口頭説明だけに頼らず、提出書類、提出先、期限、図面の版、担当者、連絡日を記録します。地籍調査成果と通常の分筆登記で座標を扱う場合は、使用している座標系や基準点、図面の作成時点についても土地家屋調査士と担当部署で確認します。
分筆線を決める前に確認したい実務上の注意点
分筆線を検討する際は、希望面積だけでなく、分筆後の各土地が目的どおりに利用できる形になるかを確認します。面積が希望どおりでも、間口が狭い、不整形になる、道路へ出られない、建物や設備が複数筆にまたがるといった状態では、売却や建築の目的を達成できない可能性があります。
最初に確認したいのは道路との関係です。建築を予定する土地では、接する道路の種別、接道部分の長さ、敷地と道路の高低差などが影響します。現在は一筆全体が道路に接していても、分筆方法によって奥側の土地が道路に接しなくなることがあります。通路状の土地を設ける場合は、幅、所有方法、管理方法、車両通行の可否を検討します。
私道や通路を分筆する場合は、所有権だけでなく、通行、掘削、給排水管の埋設、維持管理に関する権利関係も整理します。共有にするのか、特定の所有者が保有するのか、他の土地のために地役権等を検討するのかによって、将来の利用や売却条件が変わります。
建物がある土地では、母屋、倉庫、車庫などの外壁だけでなく、屋根、ひさし、雨どい、基礎、階段、給排水設備、浄化槽、井戸、電気や通信の引込設備を確認します。分筆線が建物や設備の直近を通ると、修繕や建て替えの際に隣接地への立入りが必要になることがあります。
擁壁や法面がある場合は、見た目の上端や下端をそのまま分筆線にするのではなく、構造物の所有、支持する土地、排水設備、補修方法を確認します。分筆後に擁壁が複数所有者にまたがると、点検や補修の負担が不明確になる可能性があります。
給水管、排水管、ガス管、電気設備などが分筆後の別の土地を通る場合は、移設の必要性、使用承諾、維持管理の方法を確認します。同じ所有者の一筆内では問題が表面化しなくても、一部売却後には他人の土地を利用する設備になることがあります。
農地や山林では、畦畔、樹木、作業道、法面、耕作範囲などの現況区分が、登記上の筆界と一致するとは限りません。現況の利用線に沿って分筆を希望する場合でも、既存筆界と地籍調査で確認される筆界を踏まえて位置を決めます。
分筆後の地積は、固定した一つの数値だけでなく、許容範囲と優先条件を決めておくと調整しやすくなります。外周筆界の確認により土地全体の実測面積が当初想定と異なる場合があります。売却部分の最低面積を優先するのか、道路への接し方を優先するのか、既存建物を一つの土地に収めることを優先するのかを決めます。
新しい分筆線上に境界標を設置する場合は、車両通行、除草、造成工事、農作業などで損傷しにくい位置と方法を検討します。設置後は、境界標の近接写真だけでなく、道路、建物、擁壁など周辺固定物との関係が分かる写真も残します。境界標だけに頼らず、地積測量図や座標資料と合わせて管理することが重要です。
地籍調査の途中で計画が変わった場合の対応
地籍調査や分筆準備の途中で、売却範囲、建築計画、相続内容などが変わることがあります。変更自体は珍しくありませんが、古い計画図のまま関係者が作業を続けると、大きな手戻りにつながります。
分筆を取りやめた場合は、地籍調査担当部署と土地家屋調査士へ速やかに連絡します。地籍調査資料に希望線が記載されている場合は、その線をどのように扱うか確認します。
分筆線を変更する場合は、変更前と変更後の図面を残します。「少し東側へ動かす」といった口頭説明だけでは、関係者ごとに理解が異なる可能性があります。道路、建物、既存境界点などを基準に、変更箇所が分かる図面を共有します。
買主や取得予定者が変わった場合は、必要な面積、間口、通路、設備の条件が変わることがあります。新しい関係者の要望を確認するとともに、すでに土地家屋調査士や設計担当者へ伝えた条件との差を整理します。
所有者が死亡して相続が発生した場合や、売買等により登記名義人が変わった場合は、地籍調査の通知先や確認を行う関係者に影響します。地籍調査中に所有権移転登記などを行った場合は、担当部署へ連絡し、必要な資料を確認してください。
現地立会い後に計画を変更する場合は、地籍測量や成果作成がどこまで進んでいるかを確認します。測量前なら対応できる変更でも、地籍図案や地籍簿案の作成後には、地籍調査の中で変更できないことがあります。
成果閲覧後に分筆線を変えたい場合は、その変更が調査結果の誤り訂正なのか、新しい利用計画に基づく分筆なのかを区別します。閲覧制度は調査結果に誤り等がある場合に申し出るための制度であり、閲覧後に新たに決めた分筆計画を当然に成果へ反映する制度ではありません。
地籍調査成果がすでに登記所へ送付されている場合は、最新の登記情報を基に通常の分筆登記を検討します。地籍調査中に示した希望線が登記済みかどうかを推測せず、地図と登記事項証明書で確認してください。
実務担当者が残しておきたい記録
地籍調査と分筆予定が重なる案件では、誰が、いつ、どの資料を基に、何を確認したかを記録することが重要です。担当者の記憶だけに頼ると、数か月後の立会いや成果閲覧で当初の条件を確認できなくなることがあります。
最初に、土地の所在、地番、登記名義人、共有者、連絡先、分筆目的、希望期限、売買や建築の予定を整理します。複数筆が関係する場合は、各地番の役割と分筆対象を区別します。
次に、資料一覧を作ります。登記事項証明書、地図、地積測量図、筆界確認書、道路境界図、現地写真、分筆計画図について、取得日、作成日、作成者、版を記録します。同名の図面が複数ある場合は、最新版と参考資料を区別します。
相談記録には、相談日、相談先、担当部署または担当者、質問、回答、次の作業を記載します。特に、地籍調査の中で分筆を扱えるか、通常の分筆登記を行う場合の事前照合、提出資料、期限は明確に残します。
現地立会いでは、参加者、確認した境界点、未確認箇所、提示した資料、分筆予定を伝えた相手を記録します。境界標を撮影するときは、番号や種類が分かる近接写真と、周辺との位置関係が分かる遠景写真を残します。
図面には作成日と版を記載します。変更前の図面を消去せず、どの時点で、誰の要望により、どの線へ変わったかを追える状態にします。所有者、買主、設計担当者、土地家屋調査士、地籍調査担当部署が異なる版を使わないよう、現行版を明示します。
成果閲覧時には、地番、所有者、地目、地積、形状、隣接関係、確認した筆界、分筆の取扱結果を記録します。疑問がある場合は、閲覧期間内に担当部署へ確認し、申出内容と回答を残します。
通常の分筆登記を先に行った場合は、申請日、登記完了日、新地番、地積測量図の作成日、地籍調査担当部署へ連絡または提出した日を記録します。資料を提出しただけでなく、調査資料との整合について確認した結果も残します。
地籍調査は複数年度にわたることがあり、売買、相続、建築なども並行して進みます。担当者が途中で変わっても判断の根拠を追えるよう、資料、図面、写真、協議記録を案件単位でまとめて管理することが大切です。
まとめ
地籍調査の対象土地に分筆予定がある場合は、希望する分筆線だけを先に決めるのではなく、分筆の目的と期限、現在の登記情報、外周筆界、地籍調査の進捗を順に確認することが重要です。
手順1では、売却、相続、建築などの目的と、分筆登記を終えたい時期を整理します。手順2では、登記事項証明書、地図、地積測量図、境界関係資料、現地の境界標を確認し、分筆前の土地全体の状況を把握します。
手順3では、地籍調査担当部署と土地家屋調査士の双方へ相談します。地籍調査の中で分筆として扱えるか、通常の分筆登記を先に行うか、地籍調査成果の登記所送付を待つかは、地域の運用、調査段階、取引期限によって異なります。
手順4では、現地立会い、地籍測量、成果閲覧、通常の分筆測量、登記申請の工程を調整します。地籍調査中に分筆登記を行った場合は、担当部署の案内に従い、新しい地番や地積測量図などを共有し、調査成果との整合を確認します。
地籍調査は、現在の一筆ごとの筆界や地積などを明らかにするための調査です。将来の利用計画だけを理由に、希望線が自動的に分筆登記されるものではありません。一方、一定の条件を満たす場合に、地籍調査の成果へ分筆を反映する運用を行う地域もあります。全国共通の取扱いだと決めつけず、対象地域の担当部署へ早めに相談してください。
現地では、図面だけでは分からない境界標、塀、擁壁、建物、通路、配管などを確認する必要があります。確認した位置、写真、計画図、協議内容を整理して共有することで、認識違いと手戻りを減らせます。地籍調査と分筆計画が重なるときは、最新資料を基準に、関係者間で工程と図面をそろえて進めることが安全です。