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地籍調査で境界が法面の途中なら?確認する5項目

地籍調査の現地確認で判断に迷いやすい場所の一つが、筆界が法面の途中にあると考えられるケースです。平坦な土地では、境界標、塀、側溝、道路端などを手掛かりに位置関係を確認しやすい一方、傾斜地では、法面の上端、下端、中腹のどこを筆界が通るのかを外観だけで判断することはできません。

この記事では、切土や盛土などによって生じた傾斜面を中心に「法面」と表現します。現場では上端を法肩、下端を法尻と呼ぶことがありますが、法肩や法尻がそのまま筆界になるとは限りません。造成、道路工事、宅地開発、切土、盛土、崩落、補修などによって現在の地形が形成されている場合、土地が区画された当時の地形や、過去の境界標の位置が現況から読み取りにくくなっていることがあります。

地籍調査は、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査し、筆界と地積に関する測量を行い、地籍図と地籍簿を作成する調査です。現在の使用範囲を基に新しい境界を自由に決める手続ではありません。登記所の地図や地図に準ずる図面、地積測量図、過去の測量成果、境界標、地形や工作物の状況、設置や工事の経緯、関係者の説明などを総合的に確認して進めます。

法面の途中に筆界がある可能性が出てきたときは、見た目の分かりやすさよりも、資料と現地情報の整合を一つずつ確認することが大切です。また、急斜面では無理な立入りや掘削を避け、調査の正確さと同時に安全を確保しなければなりません。

この記事では、法面上の位置関係、過去資料、現地痕跡、工事履歴、安全な確認方法という五つの項目を中心に、立会い前の準備、認識が一致しない場合の対応、将来に残す記録まで整理します。

地籍調査で法面の境界確認が難しい理由

法面の上端や下端は現地で目につきやすいため、境界のように見えることがあります。しかし、地形上の折れ目と登記上の筆界は別の情報です。道路と宅地の間に法面がある場合でも、筆界が法尻付近に位置するケース、法肩付近に位置するケース、法面の途中を通るケース、法面を含む一帯が一筆の土地であるケースなどが考えられます。

外観上は一体の斜面であっても、登記上は複数の筆に分かれていることがあります。反対に、上段の平場、法面、下段の平場が同じ筆に含まれる場合もあります。そのため、法面という地形だけを筆界の根拠にすることはできません。

日常的な管理範囲と筆界が一致しないこともあります。長年草刈りをしている範囲、擁壁を補修している範囲、排水を管理している範囲、植木を手入れしている範囲は、土地の利用や管理の実態を示す情報にはなりますが、それだけで筆界の位置を示すとは限りません。「管理してきた法面だから自分の土地である」と直ちに結論づけず、管理の事実と筆界に関する資料を分けて整理する必要があります。

法面は、雨水による浸食、表土の流出、崩落、土砂の堆積、樹木の成長、除草、補修工事などによって形状が変わりやすい場所です。過去に設置された標識が土砂に埋まったり、露出したり、傾いたりしている可能性もあります。標識が現存していても、現在見えている頭部の位置が設置当初の点を正確に示しているかは別に確認しなければなりません。

さらに、法面上の筆界は平面図では一本の線として表されますが、現地では高さの異なる傾斜面上にあります。図面だけを見た説明では、ある人は法肩を、別の人は中腹を指していることがあります。関係者が同じ位置を認識できるように、平面位置だけでなく、法肩、法尻、擁壁、側溝などとの高低関係も併せて示すことが重要です。

地籍調査で扱う筆界と、私人間で所有権が及ぶ範囲として主張される所有権界は、論点が一致しない場合があります。占有、越境、時効取得などの問題が含まれるときは、地籍調査の現地確認だけで所有権紛争が解決するとは限りません。まずは、何について意見が分かれているのかを整理する必要があります。

確認項目1 法面の上端・下端・途中の位置関係

最初に確認したいのは、関係者が「法面の境界」という言葉で、具体的にどの位置を指しているかです。法肩や法尻が明確な現場もありますが、緩やかな傾斜から急な傾斜へ連続的に変化している場所では、上端や下端を一点に定めにくいことがあります。

法尻に側溝、擁壁、水路、道路、畦畔などが接している場合、傾斜面が終わる位置と構造物の端が一致するとは限りません。法肩でも、平場と斜面の境が丸くなっていると、見る方向によって位置が違って見えます。このような場所では、「法肩付近」「法尻付近」といった曖昧な表現だけで確認を終えないことが大切です。

現地では、筆界候補点がどの地点にあり、そこからどの地点へ線が続くと考えているのかを具体的に示します。法面の途中に点がある場合は、上段の平場、下段の側溝、擁壁の端、既存の標識など、比較的確認しやすい地物との位置関係を記録します。

境界線の方向も確認が必要です。等高線に近い方向へ法面を横切るのか、斜面を上から下へ下る方向に延びるのか、途中の一点で折れるのかによって、現地での見え方は大きく変わります。両端の境界点が確認できても、その間に斜面の膨らみやくぼみがあれば、地表上では直線を見通せないことがあります。

法面上に溝、植生の境目、石の列などが見えても、それが筆界線と一致するとは限りません。雨水による浸食、作業道の跡、排水経路、植栽列など、別の理由で線状の痕跡が生じている場合があります。目立つ線をそのまま採用するのではなく、資料上の境界点と結んだときに整合するかを確認します。

境界標らしい杭や鋲が見つかった場合も、頭部だけで判断しません。傾き、根元の露出、周囲の土砂流出、破損、表示の向きなどを観察します。工事用の仮杭や管理杭である可能性もあるため、標識の材質や形状だけで筆界標と断定せず、過去の測量記録や写真と照合します。

距離の扱いにも注意が必要です。法面に沿って巻尺で測った斜距離は、平面図上の水平距離より長くなります。過去の図面の辺長と現地の斜距離をそのまま比較すると、差があるように見えることがあります。測定値が水平距離、斜距離、高低差のいずれなのかを明記し、同じ基準で比較します。

法面の途中に筆界点を示す場合は、平面位置と高さ方向の説明を混同しないことも重要です。筆界の平面位置を確認したうえで、「法肩から下方へどの程度の位置か」「法尻からどの程度上方か」といった情報を補助的に加えると、関係者間で認識を合わせやすくなります。

確認項目2 公図・地積測量図・過去資料の整合

法面の筆界を確認するときは、一つの図面だけに依存しないことが基本です。まず、登記所に備え付けられた地図または地図に準ずる図面で、対象地と隣接地の地番、土地の並び、道路や水路との接続関係を確認します。

一般に公図と呼ばれる図面には、作成年代や地域によって現地復元性に差があります。図面の形をそのまま現在の地形へ重ねれば筆界が決まるわけではありません。方位、縮尺、地番の配置、隣接関係、長狭物との関係などを確認し、ほかの資料と組み合わせて評価します。

対象地または隣接地に地積測量図がある場合は、作成年月日、境界点の配置、辺長、方位、座標値、基準点、境界標の種類などを確認します。ただし、地積測量図が存在するだけで現在の現地へ正確に復元できるとは限りません。座標や基準点が記載されているか、基準点が現存するか、周辺の既知点と整合するかなどを確認します。

現地に境界標がない場合でも、現地復元性を有する地積測量図などの客観的資料があれば、実施主体がその情報を基に筆界の位置を検討できる場合があります。反対に、図面の作成目的や精度が不明な場合は、記載された線を単独で決定的な根拠として扱わないことが大切です。

過去に分筆、合筆、道路拡幅、用地買収、宅地造成、土地改良、災害復旧などが行われている場合は、その際の測量図、境界確認書、用地実測図、工事平面図、確定図、換地関係資料などを確認します。法面が公共施設に接しているときは、道路、水路、河川、公園などの管理機関が保有する資料が参考になる場合があります。

公共用地との筆界確認では、土地所有者間だけで判断せず、地籍調査の実施主体を通じて関係する管理機関と調整します。道路区域、河川区域、施設の管理範囲、登記上の所有地は同じ概念ではないため、どの範囲を示す図面なのかを区別して確認する必要があります。

古い売買契約書や覚書に「法面を含む」「法尻まで」「擁壁上まで」などの記載があれば、当時の認識を知る資料にはなります。ただし、契約上の表現だけで地籍調査上の筆界位置が直ちに確定するわけではありません。対象地番、添付図面、作成年月日、当時の地形、後の登記手続と併せて確認します。

固定資産税、農地、森林、施設管理などの目的で作られた図面が参考になることもありますが、作成目的が筆界の測量とは異なる場合があります。名称だけで資料の優劣を決めず、作成者、作成年代、縮尺、測量の有無、元になった資料を確認します。

現在の航空写真だけでなく、過去の航空写真や工事前写真も有効です。造成前の斜面、旧道、畦畔、石積み、樹林の境目などが写っていれば、法面が形成された時期や地形変化の経緯を考える手掛かりになります。ただし、写真から見える利用境界が筆界と一致するとは限らないため、測量資料と照合して利用します。

資料間に差があるときは、いずれか一つを都合よく採用するのではなく、時系列で整理します。古い図面の後に造成や道路工事が行われているなら、図面と現在の地形が一致しないこと自体は不自然ではありません。従前の筆界、工事に伴う分筆や用地取得、工事後の登記、現在の地形を分けて確認することが重要です。

確認項目3 境界標・構造物・植生などの現地痕跡

資料調査と並行して、現地に残る手掛かりを確認します。代表的なものは、コンクリート杭、石杭、金属標、鋲、刻印、プレートなどです。法面では落ち葉、表土、草木、崩落土に覆われ、標識が見えにくくなっていることがあります。

標識を探すときは、資料からおおよその位置を絞り込んでから慎重に確認します。急斜面をむやみに掘り返すと、転倒、崩落、落石につながるおそれがあります。排水施設、法面保護工、埋設物などを傷つける可能性もあるため、土地所有者や管理者の了解なく掘削、伐採、構造物の取り外しを行わないようにします。

杭が見つかっても、それが境界標とは限りません。工事用の仮杭、丁張、測量用の補助杭、植林位置を示す杭、施設の管理杭などの可能性があります。材質、刻印、向き、周辺の標識との連続性、図面記載との一致を確認します。

擁壁、石積み、コンクリート枠、排水溝、側溝、フェンスなども位置関係を把握する参考になります。しかし、構造物の端が筆界と一致するとは限りません。構造物が所有地の内側に設置されている場合、隣接地へ越境している場合、公共用地内に設置されている場合などが考えられます。

擁壁については、「擁壁が境界」という説明だけでは不十分です。前面、背面、天端の中央、基礎の端など、どの位置を指しているのかを確認します。擁壁の基礎や控えは地中に広がっていることがあるため、見えている壁面だけで所有地の範囲を判断することはできません。

石積みでも、境界を示すために設けられたものか、土留めや耕作のために後から施工されたものかを確認します。上端や下端が不規則な場合は、関係者がどの線を基準として認識してきたのかを聞き取り、過去資料と照合します。

植生の違いは、過去の利用区分を考える補助情報になります。樹種、植林方向、樹齢、草刈り範囲などに違いがあれば、土地の利用履歴を推測できることがあります。ただし、植物は成長や自然更新によって広がり、伐採や管理方法でも境目が変化します。植生の境目だけを筆界の根拠にすることは避けます。

法面に残る溝、段差、盛り上がりも同様です。古い畦畔、排水路、作業道、施工跡である可能性がある一方、浸食、土砂流出、崩落によって自然に形成された可能性もあります。直線的に見えるからといって、人為的な境界施設であるとは限りません。

現地痕跡は、単独で筆界を確定するものではなく、資料や関係者の説明を検討する材料です。複数の異なる情報が同じ位置を示している場合は有力な手掛かりになりますが、食い違う場合は、それぞれが設置または形成された時期を確認し、どの時点の状況を示しているのかを評価します。

確認項目4 切土・盛土・造成工事の履歴

現在の法面が、いつ、どのような工事で形成されたのかを把握することは重要です。自然斜面を整形したもの、道路工事で山側を切り取ったもの、谷側へ土を盛ったもの、宅地造成で高低差を処理したものなど、法面ができた経緯はさまざまです。

切土では従前の地表が削られるため、過去の地形や境界標が失われていることがあります。盛土では元の地表が埋まり、旧標識が現在の地表より低い位置に残っている可能性があります。ただし、現場を許可なく掘削して確認するのではなく、工事図面や過去の測量成果から検討します。

法面の途中に筆界がある場合、その筆界が工事前から存在したのか、工事に伴う分筆や用地取得によって生じたのかを確認します。工事で手を加えた範囲と、工事主体が所有する土地の範囲は必ずしも一致しません。承諾を得て民有地内を施工した場合や、管理上の必要から隣接地側まで整備した場合も考えられます。

道路工事では、道路区域、施工範囲、維持管理範囲、用地取得範囲、登記上の道路用地を区別します。法面部分まで用地取得されている場合もあれば、道路の平坦部分を中心に取得され、法面の一部が民有地として残っている場合もあります。道路区域図だけで所有権の範囲を判断せず、登記資料や用地実測図と照合します。

宅地造成地では、造成計画図、確定測量図、区画図、擁壁配置図、排水計画図、工事完了時の資料などを確認します。計画上の区画線が最終的な登記上の筆界と一致しているか、工事中に変更がなかったか、完了後に分筆や合筆が行われていないかを調べます。

農地では、圃場整備、土地改良、農道整備、水路改修、換地処分などの履歴を確認します。耕作面の端、畦畔、法尻などについて地域の慣行がある場合でも、慣行だけで筆界を決めることはできません。土地改良事業や換地に関する成果があるときは、現在の登記との関係を確認します。

山林では、林道開設、治山工事、砂防工事、伐採、植林などによって斜面の見え方が変わることがあります。旧版の地形図、過去の航空写真、施業記録、工事資料などを組み合わせ、現況だけでは分からない地形変化を確認します。

造成や道路工事によって地形が変わっても、筆界が自動的に法肩や法尻へ移るわけではありません。一方で、工事に伴って分筆、合筆、所有権移転などの登記手続が行われていれば、従前の筆界関係が変わっていることがあります。工事の実施と登記手続を切り分けて確認します。

関係者へ聞き取りをするときは、誰が工事をしたかだけでなく、時期、目的、施工範囲、用地取得の有無、境界確認の有無、図面や確認書の所在まで尋ねます。記憶は重要な手掛かりですが、年月の経過による誤差があるため、可能な範囲で資料による裏付けを取ります。

確認項目5 現地立会いの安全と測量方法

法面での現地確認では、安全を優先します。急傾斜、崩落跡、湧水、落石のおそれ、軟弱な表土、密生した竹や雑木、車道に近い場所などでは、平坦地より危険性が高くなります。

事前に傾斜、表面状態、進入経路、足場、退避場所、周辺交通、天候を確認します。雨の直後は地表が滑りやすく、落石や小規模な崩落の危険が高まることがあります。夏季は熱中症や虫害、冬季は凍結や積雪にも配慮します。

立会者全員が法面へ入る必要はありません。上段と下段の安全な場所から確認したり、写真、平面図、断面図を使って位置を共有したりする方法を検討します。急峻な場所では、現地以外で図面や写真を示して確認を求める調査方法が選ばれる場合もあるため、実施主体の判断と案内に従います。

法面上の点を測量するときは、樹木、擁壁、建物、地形による遮へいを考慮します。一つの測量方法だけでは安定した結果が得られない場合があるため、現場条件に応じて衛星測位、測距・測角、既知点からの位置出しなどを組み合わせます。実際の方法は、地籍調査の作業規程、精度区分、現場条件に適合させます。

斜面上へ測量機器を無理に設置すると、機器の転倒や滑落、作業者の転倒につながります。安全な平場から観測できる位置を選び、必要に応じて補助点や偏心観測を利用します。その場合は、どの点からどのように求めたかを記録します。

写真は接写だけでなく、法面全体の中での位置が分かるものを残します。境界標の形状が分かる写真、上段と下段を含む全景、周辺の固定物との関係が分かる写真を組み合わせます。撮影方向が変わると位置関係が分かりにくくなるため、撮影位置と方向も記録します。

高さ情報は、法面上の位置を説明する補助資料として有効です。ただし、標高や法肩からの高低差だけで筆界の平面位置が決まるわけではありません。平面位置、使用した基準、観測方法と組み合わせて管理します。

現地で標識を設置または復元する場合は、土地所有者や管理者との調整、実施主体の手続に従います。深く杭を打つことで排水施設、擁壁の基礎、法面保護工を損傷するおそれがある場合は、別の標示方法を検討します。担当者の判断だけで既存標識を動かしたり、新しい標識を設置したりしないことが大切です。

測量値に差があるときは、直ちに一方を誤りと決めつけず、基準点、座標系、観測年月日、測定方法、水平距離と斜距離の違い、標識の傾き、過去資料の精度などを確認します。古い測量成果と現在の成果を比較する場合は、当時の測量条件も考慮します。

法面の境界立会い前に準備すること

立会い当日に初めて法面を見て結論を出そうとすると、確認に時間がかかり、関係者の説明も混乱しやすくなります。対象地の地番、所有者、隣接地、道路や水路などの管理者を事前に整理し、必要な資料をそろえます。

現地へ持参する図面には、対象地だけでなく、周辺地番、既知の境界点、道路、水路、擁壁なども表示します。法面の一部だけを切り出した図面では、境界線がどこからどこへ続くのか分かりにくいためです。

可能であれば、平面図と現地写真を対応させ、境界候補点に共通の番号を付けます。法肩、法尻、側溝、擁壁なども同じ番号体系で整理すると、現地での指示語による行き違いを減らせます。

過去資料は作成年月日順に並べます。登記所の図面、地積測量図、工事前写真、造成図面、用地実測図、現在の測量結果を時系列で見ると、地形の変化と登記手続の関係を説明しやすくなります。

土地所有者には、法肩か法尻かを見た目で選ぶ立会いではなく、筆界に関する資料と現地状況を照合する確認であることを事前に伝えます。筆界が法面の途中にある可能性や、現地だけでは結論を出せない場合があることも共有しておくと、立会いを進めやすくなります。

過去の土地利用や工事を知る人がいる場合は、実施主体と相談のうえ、聞き取りを検討します。以前の所有者、耕作者、施工関係者、地域事情に詳しい人の証言が参考になる場合があります。ただし、「昔からこの辺だった」という説明だけでなく、当時存在した杭、石積み、道、水路、樹木など、記憶の基準となる物を具体的に確認します。

立会い日時は、天候、日照、草木の繁茂、交通量を考慮して設定します。必要な除草がある場合も、土地所有者や管理者と範囲や方法を調整します。急斜面での伐採や掘削を立会い当日に即興で行うことは避けます。

参加者、確認対象、使用資料、予定する測量方法、判断できなかった場合の追加調査先も整理します。公共用地に接する場合は、実施主体を通じて適切な管理機関との調整が行われているか確認します。

関係者の認識が一致しない場合の対応

法面境界では、上側の所有者が法尻付近を筆界と考え、下側の所有者が法肩付近を筆界と考えるなど、主張が大きく異なることがあります。この場合、双方の主張の中間を取って筆界を作るような対応は適切ではありません。

まず、各関係者が主張する点と線を図面上で分けて記録します。法肩、法尻、中腹のどこを通るのか、どの境界点と結ぶのか、根拠が測量図、境界標、売買時の説明、管理実績、記憶のいずれなのかを整理します。

草刈り、補修、排水管理などの実績は重要な事情ですが、それだけで筆界の位置を示すとは限りません。管理範囲を主張しているのか、登記上の筆界を主張しているのか、所有権の範囲を主張しているのかを分けて確認します。

資料の読み方に違いがある場合は、縮尺、方位、基準点、作成年代、水平距離と斜距離の違いを共通認識にします。古い図面を現在の法面へそのまま当てはめていることや、構造物の管理範囲を所有地と考えていることが、意見の違いの原因になっている場合があります。

その場で確認できないときは、無理に結論を出さず、追加調査事項を明確にします。地積測量図、分筆時の資料、用地取得資料、造成図面、工事前写真、管理機関の図面などを確認してから、改めて説明または立会いを行います。

法面上の候補点へ安全に近づけない場合も、推測だけで確認を進めません。安全な場所からの測量、遠景写真、断面図、三次元的な現況記録などを利用し、関係者が同じ位置を認識できる資料を作ります。

地籍調査では、所有者等の確認を求める方法として、現地調査のほか、図面や写真などを用いる図面等調査が行われる場合があります。また、現地調査等の通知を複数回行っても反応がない所有者等については、法令と運用基準に定める要件を満たす場合に、筆界案を到達確認ができる方法で送付し、到達後二十日間意見の申出がないときに確認を得たものとみなして調査を進める手続があります。単に一度の立会いへ欠席しただけで、自動的に筆界が確定する制度ではありません。

関係者の意見が一致せず、客観的資料からも筆界を確認できない場合は、地籍調査の実施主体が定められた手続に沿って取扱いを判断します。担当者が独自に線を作らず、確認できた事実、未確認事項、各関係者の主張を区別して記録します。

筆界と所有権界の不一致、越境、占有、時効取得などの争いが含まれる場合は、地籍調査だけでは解決できないことがあります。必要に応じて、土地家屋調査士や弁護士など、論点に応じた専門家への相談を検討します。

法面境界の記録を将来に残す方法

法面の途中にある筆界は、標識だけを残しても将来見つけにくくなる可能性があります。土砂の移動、植生の繁茂、法面補修、災害復旧などによって現地の状況が変わるため、複数の方法で記録を残します。

記録には、境界点番号、座標、標識の種類、設置状態、観測日、観測方法、使用した基準点、周辺地物との位置関係を含めます。境界点番号を図面、写真、測量記録で統一すると、後から照合しやすくなります。

写真は、標識の形状が分かる接写だけでなく、法面全体が分かる遠景も残します。道路、側溝、擁壁、建物、電柱、樹木など、比較的長く残る地物との位置関係が分かるように撮影します。撮影位置と方向を記録しておけば、将来同じ方向から比較できます。

法面の断面関係も記録すると有効です。上側の平場、法肩、斜面、境界点、法尻、下側の平場を簡潔な断面図で示すと、平面図だけでは伝わりにくい高さ関係を共有できます。ただし、断面図は平面位置を補う資料であり、断面だけで筆界を表すものではありません。

三次元の現況記録を取得できる場合は、法面形状、擁壁、側溝、標識などを一体的に保存できます。将来の補修や崩落後に以前の地形と比較しやすくなりますが、三次元データを取得しただけで筆界の法的根拠になるわけではありません。どの資料と確認手続に基づいて境界点を記録したのかを併せて残します。

座標を保存するときは、座標系、使用した基準点、観測日、観測方法、精度に関する情報も記録します。緯度経度や数値だけを保存すると、測定条件が分からず、将来の復元に利用しにくくなります。

標識が傾いている場合は、頭部を観測したのか、根元または設置位置を推定して観測したのかを明記します。後に標識を補修したとき、元の測量値との関係が分からなくなることを防ぐためです。

法面工事や災害復旧が予定されている場合は、工事前の記録を充実させます。標識の一時撤去や復元が必要になるときは、実施主体、土地所有者、管理者などと事前に方法を確認し、工事前後の写真、座標、復元の経緯を残します。

資料は担当者個人の端末だけに保存せず、案件名、地番、境界点番号、記録日を付けて整理します。写真、図面、測量成果、立会い記録の対応関係が分かる状態にしておくことが、将来の確認に役立ちます。

まとめ

地籍調査で筆界が法面の途中にある可能性が出てきた場合、法肩や法尻といった見た目の分かりやすい位置だけで判断することはできません。法面は造成、道路工事、切土、盛土、崩落、補修などによって形状が変わりやすく、現在の地形が土地を区画した当時の状態を残しているとは限らないためです。

確認の基本は、法面の上端、下端、中腹の位置関係を明確にし、登記所の地図や地図に準ずる図面、地積測量図、工事資料、過去写真などを照合することです。境界標、擁壁、側溝、石積み、植生などの現地痕跡も参考になりますが、一つの物だけを根拠にせず、設置や形成の経緯を確認します。

切土や盛土の履歴がある場所では、施工範囲、管理範囲、用地取得範囲、登記上の土地範囲を分けて検討します。工事をした範囲や長年管理してきた範囲が、そのまま所有地の範囲になるとは限りません。

現地立会いでは、法面への無理な立入りや掘削を避け、安全な場所から確認できる方法を選びます。平面位置に加え、法肩や法尻との高低関係、周囲の固定物との関係を記録すると、関係者間で位置を共有しやすくなります。

確認後は、座標、写真、断面図、観測条件、周辺地形を組み合わせて記録を残します。法面は将来形状が変化する可能性があるため、標識だけに依存せず、複数の情報から位置関係をたどれる状態を整えることが大切です。

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