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地籍調査で土地に送電線地役権がある時の確認4点

地籍調査の対象地に送電線が通過し、登記記録に送電線に関する地役権が記録されている場合は、土地の筆界と地役権の範囲を分けて確認する必要があります。送電線の直下、鉄塔の柵、伐採された帯状の区域、管理用通路などは現地で目立ちますが、それらが筆界や登記された地役権の外縁と一致するとは限りません。

地籍調査は、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量して地籍図と地籍簿にまとめる調査です。一方、地役権は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する物権です。便益を受ける土地を要役地、負担を受ける土地を承役地といいます。送電線に関する地役権では、架空線の通過、設備の保守、樹木や建築物の高さ、作業時の立入りなどが目的や条件に含まれることがありますが、具体的な内容は登記記録と設定資料ごとに確認しなければなりません。

また、送電設備に関する権利がすべて一つの地役権にまとめられているとは限りません。架空線の通過に関する地役権とは別に、鉄塔敷地の所有権、地上権、賃借権、使用に関する契約、進入路の承諾などが存在する場合があります。送電線があるという現況だけから権利の種類や範囲を決めつけないことが重要です。

地籍調査によって筆界や地積が整理されても、既に登記されている地役権の目的や範囲が自動的に変更、移転、消滅するわけではありません。登記と現地に差異がある場合は、地籍調査の担当者だけで法的結論を出さず、土地所有者、要役地側の権利関係者、送電設備の管理者、法務局、必要に応じて専門家へ確認できる形で資料を整理します。

本記事では、地籍調査の対象地に送電線地役権があるときに確認したい4点を、立会い前の資料確認、現地での安全確保、調査後の記録まで含めて解説します。

地籍調査と送電線地役権の関係を整理する

地籍調査で扱う土地の境界と、送電線地役権が及ぶ範囲は、法的な性質も確認方法も異なります。

筆界は、土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線です。一般に公法上の境界と説明され、所有者同士の合意だけで任意に動かせるものではありません。現地では境界標、道路、水路、擁壁、柵、畦畔、法面などが手掛かりになりますが、目に見える構造物が筆界そのものとは限りません。地籍調査では、登記所に備え付けられた地図や図面、既存の測量成果、現地の状況、関係者の確認などを踏まえて境界を調査し、測量します。

これに対し、地役権は、要役地の便益のために承役地を一定の目的で利用する権利です。送電線に関する地役権では、送電線路の設置や維持に必要な上空利用、保守点検のための立入り、建築物や樹木に関する制限などが設定内容となることがあります。ただし、一般的な名称が同じでも、目的、範囲、条件は登記や契約によって異なります。

送電線の真下が一つの独立した筆になっているとは限りません。一筆の全部が承役地として地役権の対象となる場合もあれば、一筆の一部だけが設定範囲となる場合もあります。複数の筆を送電線が横断し、筆ごとに登記時期や設定内容が異なることもあります。

現地には、鉄塔を囲う柵、線下区域を管理するための標識、樹木を低く管理した帯状の区域、点検車両が通る通路などが見られることがあります。しかし、それらは設備の安全管理や作業上の必要に応じて設けられたものであり、筆界や地役権図面の外縁を示す標識とは限りません。

さらに、鉄塔がある土地では、架空線に関する地役権と鉄塔敷地の権利が別に整理されている可能性があります。鉄塔周辺の土地が送電設備側の所有地として分筆されている場合もあれば、土地所有者の土地に別の権利や契約を設定して設備を設置している場合もあります。鉄塔があるから地役権だけが存在すると考えず、承役地の登記記録全体を確認する必要があります。

実務では、土地の外周を示す筆界、登記された地役権の設定範囲、設備が実際に占める範囲、保守作業で使用される範囲を別々に整理します。これらを一枚の図面に重ねる場合も、線種や注記を分け、どの資料に基づく線なのかが後から判別できるようにします。

地籍調査は、地役権の設定契約を更新したり、地役権の範囲を新たに合意したりする手続ではありません。地籍調査で従前資料と異なる筆界位置や地積が示された場合でも、それだけで地役権の登記内容を書き換えてよいとは限りません。差異が生じたときは、筆界に関する成果と地役権に関する資料を切り分けて検討します。

確認1 登記記録と地役権設定資料を照合する

最初の確認点は、現在の登記記録にどのような権利が記録されているかを確認し、地役権設定時の資料と照合することです。

土地の登記記録は、土地の所在、地番、地目、地積などを示す表題部と、権利に関する事項を示す権利部に分かれています。地役権は所有権以外の権利として記録され、承役地側の登記では、要役地、設定の目的、設定の範囲などが確認対象になります。登記上は地役権者の名称が承役地の登記事項として表示されない仕組みであるため、設備管理者名だけを手掛かりに登記を読むのではなく、要役地と目的の記載を確認することが大切です。

登記事項証明書を読むときは、地役権の有無だけでなく、受付年月日、登記原因の日付、目的、範囲、要役地、変更や抹消に関する履歴を確認します。現在事項証明書だけでは経過を把握できない場合は、全部事項証明書や閉鎖事項証明書など、必要な資料の取得可否を法務局に確認します。

承役地の一部が地役権の設定範囲である場合は、地役権図面が重要な資料になります。地役権図面は、承役地のどの部分に地役権が及ぶかを示すための登記所備付図面です。一方、承役地の全部が設定範囲である場合は、部分範囲を示す地役権図面が前提となるとは限りません。登記記録に範囲がどのように記載され、図面が備え付けられているかを個別に確認します。

地役権図面がある場合でも、現在の地籍図や測量成果とそのまま重なるとは限りません。古い図面では、基準となる座標、縮尺、作成方法、地番、周辺地物が現在と異なることがあります。図面の外形だけを拡大縮小して現地へ当てはめるのではなく、作成年月日、方位、縮尺、隣接地番、基準となる地物などを確認します。

地役権設定後に分筆や合筆が行われている場合は、設定当時の承役地と現在の筆の対応関係を追います。現在の地番だけを見て判断すると、旧地番に設定された地役権がどの筆へ承継されているかを見落とすおそれがあります。分筆時の地積測量図、閉鎖登記記録、過去の地図、地番の沿革が分かる資料を併せて確認します。

地役権の登記とは別に、地役権設定契約書、承諾書、覚書、補償関係書類、線下区域図、設備配置図、保守作業に関する文書などが残っていないかを確認します。契約書では、架空線の通過だけでなく、樹木の伐採や枝払い、建築物や工作物の設置、盛土や掘削、保守点検のための立入り、緊急時の対応、進入経路などの定めがないかを読み取ります。

ただし、登記された地役権と契約上の合意は、同じ範囲や同じ内容であるとは限りません。登記で第三者に公示されている事項、当事者間の契約で定めた事項、設備管理者が運用上求めている安全上の条件を混同しないようにします。

送電線が存在していても、権利関係が地役権だけとは限りません。鉄塔敷地について所有権移転や地上権、賃借権などが設定され、架空線の通過部分に地役権が設定されている場合があります。管理用通路も、地役権の一部ではなく別契約や個別承諾に基づいて使用されている可能性があります。承役地の権利部全体と関連契約を確認し、設備ごとの根拠を分けて整理します。

反対に、登記記録に地役権が見当たらなくても、契約や承諾に基づいて設備が設置されている可能性があります。また、設備が撤去または移設されていても、登記上の地役権が残っている場合があります。現況のみで権利の有無や消滅を判断せず、登記と契約の双方を確認します。

地籍調査の担当者が、登記された地役権の有効性や契約解釈を独自に断定することは避けます。資料同士に食い違いがあるときは、どの資料のどの記載が一致しないのかを記録し、土地所有者、要役地側の関係者、設備管理者、法務局、司法書士、土地家屋調査士、弁護士などへ確認できる状態にします。

確認2 筆界と地役権範囲を分けて確認する

2つ目の確認点は、地籍調査で調査する筆界と、送電線地役権の設定範囲を明確に分けることです。

送電線がある現地には、土地の筆界、地役権図面の外縁、送電線路の中心を示す線、鉄塔敷地の外周、立入防止柵、管理用通路の端、伐採や枝払いを行った範囲など、複数の線が存在します。これらは目的が異なるため、近接していても同一の線として扱えません。

特に鉄塔周囲の柵は、筆界と誤認されやすい構造物です。柵は設備への無断立入りを防ぎ、安全を確保するために設置されている場合があります。柵の角に杭や鋲があっても、それが境界標とは限りません。設備工事の基準点、変位観測点、施工管理標、接地設備の表示などである可能性があります。

線下区域を示す標識や管理番号も、筆界標ではない場合があります。標識に記載された番号が、地役権図面、設備台帳、鉄塔番号、管理区間のどれに対応するかを確認し、材質や外観だけで用途を決めないようにします。

筆界の検討では、登記所の地図や地図に準ずる図面、地積測量図、過去の境界確認資料、既存境界標、周辺地物、関係者の説明などを総合します。地役権の範囲については、登記記録、地役権図面、設定契約書、線下区域図、設備管理資料などを照合します。筆界を検討する資料と地役権を検討する資料を分け、それぞれの証拠力や作成年代を意識することが重要です。

古い地役権図面では、道路端、水路、石積み、建物、樹木などを手掛かりに範囲が示されていることがあります。基準物が撤去、改修、移動していると、現地での再現が難しくなります。現在の地籍調査成果に図面を重ねる場合は、単純な見た目合わせではなく、地番の沿革や図面の作成条件も確認します。

地役権設定時の土地形状と、地籍調査で調査された筆の形状が異なる場合もあります。過去の図面精度、分筆や合筆、道路や水路の改修、造成、災害による地形変化など、複数の要因が考えられます。差異の原因が分からない段階で、地籍調査の筆界に合わせて地役権範囲を独自に平行移動したり、幅を変更したりすることは避けます。

登記記録に承役地全部を範囲とする趣旨の記載があっても、具体的な利用条件は設定目的や契約によって限定されている場合があります。逆に、図面上の帯状部分だけが地役権範囲であっても、保守作業の進入について別の権利や承諾が存在することがあります。図面だけから、土地所有者が自由に使える範囲や設備管理者が立ち入れる範囲を断定しないことが重要です。

現地立会いでは、いま確認している点が筆界候補なのか、地役権範囲の参考点なのか、設備管理上の標識なのかを、その都度明確にします。写真や野帳にも同じ区分を記載し、後から別の線として復元できるようにします。

筆界と地役権範囲が近接する場所では、境界標だけを接写すると周辺との関係が分からなくなります。対象標の近景に加え、鉄塔、柵、道路、水路、建物などが写る中景と遠景を残し、撮影方向を記録します。ただし、写真上の見かけの位置だけで距離や範囲を確定せず、必要な位置は測量成果と対応させます。

確認3 現地の送電設備と利用状況を確認する

3つ目の確認点は、送電設備の種類と位置、土地の利用状況、安全上の制約を現地で確認することです。

対象地では、上空を電線が通過するだけの場合と、鉄塔、支線、基礎、接地設備、標識、柵、管理用通路などが存在する場合とで、作業条件が異なります。現地へ入る前に、送電線の通過方向、鉄塔や関連設備の位置、立入制限、車両や作業員の移動経路を把握します。

送電設備の近くでは、電線や設備へ接触しないことはもちろん、長尺物、測量ポール、標尺、脚立、クレーン、高所作業車などを不用意に接近させないことが重要です。電圧や設備条件により必要な安全措置は異なるため、一般的な数値を自己判断で当てはめず、作業内容を設備管理者へ伝え、現場ごとの指示と作業計画に従います。

鉄塔や設備を囲う柵がある場合は、境界確認を目的としていても無断で立ち入りません。柵内に境界標がある可能性があるときは、設備管理者の立会い、既存測量成果の利用、柵外からの観測など、安全な確認方法を協議します。設備へ登る、柵を越える、施錠を外すといった行為は避けます。

境界標の設置や復元のために、送電設備の周辺で無断で杭を打ち込んだり掘削したりすることも適切ではありません。鉄塔基礎、接地線、埋設物、排水設備などが存在する可能性があります。標識の施工が必要な場合は、位置だけでなく、深さ、施工方法、使用機械についても関係者と調整します。

農地では、畦、作付けの区切り、耕作されていない鉄塔周辺の空地が筆界のように見えることがあります。しかし、耕作上の区切りは移動することがあり、鉄塔周辺が未耕作であることも設備管理や作業上の都合による可能性があります。現況利用と筆界を分けて確認します。

山林では、送電線の下だけ樹木が低く管理され、帯状に伐採されていることがあります。この帯は安全確保や保守作業の結果として形成された可能性があり、筆界や地役権図面の範囲と完全に一致するとは限りません。伐採線、林相の違い、作業道だけを根拠に境界を判断しないようにします。

宅地や事業用地では、線下に駐車場、通路、庭、資材置場、簡易な工作物などが設けられていることがあります。現在使われているという事実だけで、その利用が登記や契約上無条件に認められているとは判断できません。個別協議や一時的な承諾に基づく利用である可能性もあります。

送電線の地上投影位置は、気象条件や電線のたわみなどの影響を受けます。地役権範囲が送電線路の中心から一定幅で示されている場合でも、現地で見上げた電線の位置だけから外縁を判断することは避けます。どの中心線、鉄塔間の基準、幅員、図面条件を用いているかを資料で確認します。

設備管理者が使用している進入路についても確認します。道路から鉄塔までの農道、林道、門扉、仮設的な通路などがあっても、それが地役権に含まれるとは限りません。別の地役権、賃貸借、使用承諾、慣行的な利用など、根拠が異なる可能性があります。

土地所有者から、点検車両の進入、樹木の伐採、鉄塔周辺の利用制限などについて説明を受けた場合は、聞き取り情報として記録します。ただし、聞き取りだけで地役権の範囲や契約条件を確定せず、通知書、契約書、管理者の資料などと照合します。

現地の設備位置を地籍調査の測量成果に取り込む場合は、その位置情報が何を示すかを明記します。地籍調査時の参考測量で得た設備座標が、設備管理者の正式な管理座標と同じ精度や基準を持つとは限りません。境界確認の参考記録と設備管理資料を混同しないことが大切です。

確認4 土地利用の制限と関係者への確認事項を整理する

4つ目の確認点は、送電線地役権や関連契約による土地利用上の制約を整理し、相談内容ごとの確認先を明確にすることです。

地役権が設定された土地でも、土地所有者が一切利用できなくなるとは限りません。設定目的を妨げない範囲で、耕作、通行、駐車、緑地利用などが行われている場合があります。ただし、認められる利用は、地役権の目的と範囲、契約条件、設備の電圧や構造、計画する行為の内容によって異なります。

建築物や工作物を設置する計画では、住宅、倉庫、車庫、物置、看板、照明柱、通信設備、仮設建物などの高さや位置だけでなく、保守作業の支障、設備への接近、安全上必要な措置を確認します。地籍調査で筆界が明確になっても、建築の可否や条件が自動的に決まるわけではありません。

盛土や切土は、送電線との離隔や鉄塔基礎の安定に影響する可能性があります。地盤面が高くなれば上空電線との関係が変わり、鉄塔周辺を掘削すれば基礎や埋設設備に影響するおそれがあります。造成計画は、行政上の許可だけでなく、設備管理者との事前協議が必要か確認します。

クレーン、足場、高所作業車、重機、長尺資材を使用する工事では、完成後の建物位置だけでなく施工中の動作範囲を検討します。作業計画の変更によって電線へ接近する可能性もあるため、現場条件を反映した計画と関係者間の情報共有が必要です。

植栽については、植え付け時の高さだけでなく成長後の樹高や枝張りを考慮します。樹木が送電線へ接近すれば、剪定や伐採の対象となる可能性があります。樹種、位置、管理方法について契約や設備管理上の条件を確認します。

資材置場として利用する場合は、積み上げ高さ、保管物の材質、車両や荷役機械の動線、緊急時の進入確保を確認します。短期間の仮置きでも、送電設備の点検や復旧作業の妨げになることがあります。

地籍調査の担当者は、土地利用計画の具体的な適否をその場で判断するのではなく、確認が必要な事項を整理する役割を意識します。土地所有者から建築や造成の相談を受けても、地籍調査の成果だけを根拠に、建てられる、掘削できる、自由に使用できると断定することは避けます。

送電設備への接近、安全措置、保守管理については設備管理者へ確認します。建築、開発、農地、森林、道路などの行政規制は、それぞれの担当窓口へ確認します。地役権の登記内容や変更登記については法務局や登記の専門家、契約解釈や権利関係の争いについては必要に応じて法律の専門家へ相談します。

売買や相続が予定されている場合は、送電線地役権の存在だけでなく、要役地、設定目的、範囲、関連契約、設備管理者の立入り状況を整理します。登記された地役権は、承役地の所有者が変わったことだけで当然に消滅するものではありません。権利関係を説明できる資料を引き継ぐことが重要です。

地籍調査の成果を将来の土地利用計画に活用するときは、筆界や地積の成果と、地役権図面や契約条件を重ねて検討します。地籍調査で土地形状が明確になったことは、利用制限がなくなったことを意味しません。むしろ、地役権範囲との位置関係を具体的に確認するための基礎資料が整ったと考えるのが安全です。

地籍調査の立会い前に準備したい資料

送電線地役権がある土地の立会いでは、現地へ入る前の資料整理が重要です。

まず、対象地の現在の登記事項証明書を確認します。表題部の地番、地目、地積、分筆や合筆の履歴に加え、権利部に地役権、地上権、賃借権などの記録がないかを確認します。共有地であれば、共有者と連絡方法も整理します。

次に、登記所の地図または地図に準ずる図面、地積測量図、地役権図面、閉鎖された図面の取得可否を確認します。地籍調査の基礎資料、過去の境界確認書、既存測量成果も準備し、筆界用の資料と地役権用の資料を分類します。

地役権設定契約書、承諾書、覚書、線下区域図、設備配置図、補償関係書類、設備管理者からの通知書がある場合は、作成年月日と対象地番を確認します。旧地番が使われている場合は、現在の筆との対応表を作成すると混同を防げます。

過去の航空写真や現地写真は、鉄塔、道路、水路、建物、林相、柵などの変化を確認する補助資料になります。ただし、写真上の線を筆界や地役権の外縁として扱わず、地形や利用状況の変遷を読む参考にとどめます。

土地所有者への事前聞き取りでは、設備管理者からの定期連絡、点検車両の進入、樹木管理、工事協議、過去の境界立会い、契約書の保管状況を確認します。相続や売買直後で資料が引き継がれていない場合は、その事実も記録します。

立会い参加者は、土地所有者と隣接土地の関係者を基本に、設備区域への接近や柵内確認が必要な場合は、設備管理者への連絡要否を検討します。設備管理者の参加は地役権や設備位置に関する情報確認には有用ですが、設備管理者が単独で筆界を決めるものではありません。

作業計画では、測量機器の設置場所、作業員の動線、車両の駐車場所、長尺物の使用、鉄塔周辺の掘削や標識設置の有無を確認します。送電線近接作業が生じる場合は、設備管理者と安全措置を協議し、現場で独自判断をしない体制を整えます。

現地立会いで混同を防ぐ進め方

現地立会いの冒頭では、今回の地籍調査で確認する主な対象が土地の境界であり、地役権の新設、変更、抹消や契約条件の決定を行う場ではないことを関係者へ説明します。

土地所有者から、送電線の真下が境界である、鉄塔の柵までが設備側の土地である、伐採された線が地役権の端であるといった説明があった場合は、その根拠を聞き取ります。過去の所有者からの伝聞、設備管理者との協議、農作業上の区切りなどが背景にある可能性があります。

聞き取り内容は重要な参考情報ですが、直ちに筆界や地役権範囲の確定根拠とせず、登記資料、測量成果、現地地物と照合します。誰が、いつ、どの資料を見て説明したのかが分かるように記録します。

境界標が鉄塔の柵内や設備の近くにある場合は、安全な確認方法を選びます。設備管理者の立会い、柵外からの観測、既存座標との照合などを検討し、境界標を確認する目的でも無断立入りや設備への接触を行いません。

現地の杭、鋲、標識は、境界標、測量基準点、設備管理標、施工管理点など用途が異なります。形状や材質だけで判断せず、刻印、番号、設置位置、関連図面との対応を確認します。用途を確認できない標識は、未確認の参考物として記録します。

設備工事によって古い境界標が亡失または移動している疑いがある場合も、現況の杭をそのまま筆界として扱いません。過去の測量成果、周辺の境界標、関係者の説明などを確認し、必要な手続に沿って検討します。

筆界と地役権範囲の関係に疑問が生じても、立会いの場で無理に一つの線へまとめる必要はありません。確認できた事実、未確認事項、追加で必要な資料、照会先を整理し、後日の確認手順を明確にします。

関係者の意見が一致しない場合は、各人が示す位置、根拠とする標識や資料、食い違う範囲を具体的に記録します。単に境界不明とするのではなく、どの情報が一致し、どの情報が対立しているかを残します。

設備管理者が立ち会う場合は、設備位置、管理範囲、地役権資料、保守作業の実態について情報提供を受けます。ただし、その説明は設備管理上の情報として整理し、隣接土地間の筆界に関する資料や関係者確認と区別します。

地籍調査後に記録しておく内容

現地作業後は、筆界確認の結果に加え、送電線地役権と設備の関係について確認した内容を記録します。

記録には、調査した筆界点、既存境界標の種類と状態、鉄塔や柵との位置関係、送電線の通過方向、管理用通路、現地の土地利用、関係者の説明などを含めます。写真は撮影地点と方向を整理し、境界標の近景、周辺設備との関係が分かる中景、土地全体を把握できる遠景を使い分けます。

図面には、地籍調査で測量した筆界関係の線、登記上の地役権範囲、契約図面に示された範囲、現況設備の位置を区別して表示します。根拠資料が異なる線を一つの確定線として描かないことが重要です。

地役権範囲を確定的に確認できなかった場合は、推測で補わず、未確認として残します。登記記録で確認できた事項、地役権図面の表示、契約資料の表示、設備管理上使用されている範囲を分けて記載します。

地籍調査で得た座標や地積と、地役権設定時の図面に差がある場合は、差の量だけで法的意味を判断しません。測量基準、図面精度、作成年代、分筆や合筆、地形変化などの可能性を整理し、追加確認が必要な事項として示します。

地籍調査成果に合わせて地役権の変更登記や契約変更が必要かどうかは、登記内容と当事者の権利関係によって異なります。調査担当者だけで結論を出さず、土地所有者や関係権利者が法務局や専門家へ相談できるよう、差異を分かりやすくまとめます。

土地所有者へ結果を説明するときは、筆界や地積が整理されたことと、地役権の利用条件が確認されたことを混同しないようにします。境界が分かったから自由に建築できる、面積が変わったから地役権も同じ割合で動く、設備が見当たらないから地役権は消えた、といった説明は避けます。

将来の売買、相続、造成、建築に備え、確認した登記資料、契約書の保管場所、設備管理者への照会内容、立会い参加者、未解決事項を引継ぎ可能な形で残します。記録の目的と根拠が明確であれば、後日の再調査や関係者説明を行いやすくなります。

送電線地役権がある土地で起こりやすい誤解

送電線地役権がある土地では、送電線の下は土地所有者の土地ではないという誤解が生じることがあります。しかし、地役権は承役地の所有権を当然に要役地側へ移す権利ではありません。土地所有者が所有権を持ちながら、設定目的の範囲で土地に負担を受けるのが基本です。

鉄塔が建っている部分だけが地役権の対象であるとも限りません。架空線の通過、樹木や建築物に関する制限、保守作業の条件などが地役権の目的や範囲に含まれる場合があります。一方、鉄塔敷地の権利が地役権とは別に設定されている場合もあるため、鉄塔周辺だけを見て判断できません。

地役権がある土地は何も利用できないという理解も適切ではありません。設定目的を妨げない範囲で利用できる場合がありますが、現在行われている利用と、将来計画する建築や造成が認められるかは別問題です。

地籍調査で地積が変われば地役権が自動的に消える、または同じ割合で縮小するという考えも正確ではありません。地籍調査成果による表題部の整理と、権利部に記録された地役権の変更や抹消は別の問題として確認する必要があります。

公図や地籍図に地役権範囲が描かれていないから地役権は存在しないという判断も避けます。土地の筆の位置関係を示す地図と、承役地の一部に及ぶ地役権範囲を示す地役権図面は役割が異なります。登記記録と図面の双方を確認します。

鉄塔の柵があるから柵が境界であるという理解も典型的な誤認です。柵は設備の安全管理を目的として設置されている場合があり、筆界、所有権界、地役権範囲のいずれとも一致しない可能性があります。

設備管理者が立ち会えば筆界も決められるという理解にも注意が必要です。設備管理者は設備位置や管理資料を把握していても、隣接土地間の筆界を一方的に変更または決定する立場ではありません。地籍調査の手続と資料に沿って確認します。

送電線が撤去されたから登記上の地役権も消えているという判断もできません。設備の撤去、契約の終了、地役権の消滅、抹消登記が同時に行われているとは限らないため、現況と登記を別々に確認します。

誤解を防ぐには、筆界、所有権、地役権、設備の占有範囲、管理用通路を別の概念として説明します。土地の外周を調査する作業と、送電設備のために利用が制限される範囲を確認する作業を分けて示すと、関係者間の認識をそろえやすくなります。

まとめ

地籍調査の対象地に送電線地役権がある場合は、土地の筆界だけでなく、登記された地役権、関連契約、送電設備の現況、土地利用上の制約を分けて整理する必要があります。

1つ目の確認点は、登記記録と地役権設定資料の照合です。承役地の登記では、要役地、目的、範囲、登記の履歴を確認します。承役地の一部が設定範囲である場合は地役権図面を確認し、旧地番や分筆、合筆の履歴も追います。

2つ目の確認点は、筆界と地役権範囲を混同しないことです。鉄塔の柵、線下の伐採帯、管理標識、通路の端は、筆界や地役権図面の外縁と一致するとは限りません。根拠資料ごとに線を分けて記録します。

3つ目の確認点は、現地の設備と利用状況を安全に確認することです。鉄塔、柵、接地設備、管理用通路などを把握し、設備への無断立入り、接近、杭打ち、掘削を避けます。長尺物や重機を使う可能性がある場合は、設備管理者と事前に協議します。

4つ目の確認点は、土地利用の制約と相談先を整理することです。建築、造成、盛土、掘削、植栽、資材保管などは、地籍調査成果だけで実施可能と判断せず、設備管理者、行政窓口、法務局、必要に応じて登記や法律の専門家へ確認します。

地籍調査で筆界や地積が整理されても、地役権の目的、範囲、契約条件が自動的に変わるわけではありません。筆界に関する成果と地役権に関する資料を切り分け、現地写真、測量記録、関係者の説明、未確認事項を一貫した形式で残すことが、誤認や将来のトラブルを防ぐ基本です。

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