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地籍調査でセットバックが関係する土地の確認項目5つ

地籍調査とセットバックの関係を最初に整理する

地籍調査の対象地が幅の狭い道に接している場合、通常の土地境界の確認に加えて、建築基準法上のセットバックが関係することがあります。現地には舗装端、側溝、塀、門柱、建物の外壁などが並んでいるため、いずれかが道路と宅地の境界であるように見えます。しかし、目に見える構造物の位置と、地籍調査で調べる筆界、所有権界、道路管理上の区域境界、建築基準法上の道路の境界線とみなされる線は、必ずしも一致しません。

地籍調査は、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量して、地籍図と地籍簿に取りまとめる調査です。筆界は、土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線であり、所有者同士の合意だけで自由に動かすことはできません。地籍調査では、関係資料、既設標識、現地状況、土地の沿革、関係者から得た情報などを総合して、本来の筆界の位置を調べます。([地籍情報サイト][1])

一方、一般にセットバックと呼ばれる後退は、主として建築基準法第42条第2項の道路に関する取扱いです。基準時に建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものは、一定の条件の下で建築基準法上の道路とみなされます。原則として基準時の道路中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされますが、道の片側ががけ地、川、線路敷などに沿う場合や、法令上の別の指定がある場合には、後退方法や距離が異なることがあります。([e-Gov 法令検索][2])

ここで重要なのは、建築基準法上の後退線が定まっても、土地の筆界や所有権が自動的に移るわけではないことです。建物や塀を後退させても、後退部分について分筆や所有権移転が行われていなければ、登記上は元の土地の一部として残っていることがあります。道路状に舗装され、一般の通行に利用されていても、私有地のまま管理や使用に関する取決めだけが設けられている場合もあります。国土交通省の資料でも、2項道路のみなし境界線の位置と土地・建物の所有関係は別に整理すべきものとされています。([国土交通省][3])

反対に、狭あい道路の整備や道路用地の取得に伴い、後退部分が分筆され、地方公共団体などへ寄附または譲渡されている場合には、後退後の位置に新たな筆界が設けられていることがあります。この場合でも、現在の塀や側溝の位置が筆界と一致するとは限らないため、登記記録や測量図面を確認する必要があります。

セットバックが関係する土地では、一つの「道路境界」だけを探すのではなく、筆界、所有権界、道路区域境界、基準時の道路中心線、建築基準法上の道路境界線とみなされる線、現在の舗装端、側溝端、塀の位置などを分けて整理します。

これらを混同すると、土地所有者への説明、地籍図の作成、将来の建築確認、道路整備、土地取引で認識違いが生じるおそれがあります。地籍調査の担当者がセットバック線を独自に決めるのではなく、建築関係部門や道路管理部門が保有する資料と見解を確認し、筆界との関係を記録することが重要です。

確認項目1 前面道路の法的な位置付けを確認する

最初に確認したいのは、対象地に接する道の法的な位置付けです。現地で人や車が通行している道が、すべて建築基準法上の道路に該当するわけではありません。また、幅員が4メートル未満であっても、直ちに第42条第2項道路となり、必ず同じ方法でセットバックするわけではありません。

セットバックとの関係が生じやすいのは、建築基準法第42条第2項の規定により道路とみなされる道です。一般には、法の施行時または都市計画区域等への編入時などの基準時に、既に建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道のうち、特定行政庁が指定したものが対象です。具体的な指定範囲や判断方法は特定行政庁が確認するため、外観や現況幅員だけでは確定できません。([e-Gov 法令検索][2])

確認に当たっては、建築関係部門が保有する指定道路図、指定道路調書、道路種別図、過去の道路相談資料、建築確認関係資料などを調べます。インターネット上で道路情報が公開されている地域もありますが、画面上の線や色分けが測量精度のある境界位置を示すとは限りません。公開情報は道路種別や指定の有無を調べる入口として利用し、個別の中心線や後退線は担当窓口で確認します。

道路種別を照会するときは、対象地の地番だけでなく、反対側や両隣の地番、周辺交差点、建物位置、現地写真などを示すと対象区間を特定しやすくなります。同じ一本の道に見えても、途中で道路種別や指定範囲が変わっていることがあります。

建築基準法上の道路、道路法上の道路、地方公共団体が認定した道路、登記上の公衆用道路は、それぞれ確認目的が異なります。地方公共団体が管理する道路であっても、建築基準法上の道路種別やみなし境界線は別に確認が必要です。反対に、私人が所有する通路であっても、建築基準法上の道路として指定されている場合があります。

私道では、道路部分が一筆の土地として登記されている場合、沿道所有者が共有している場合、各宅地の一部が道路状に使われている場合などがあり、所有関係と管理関係が複雑になりやすい点に注意します。

道路種別が確認できない場合は、地籍調査の担当者が現地状況から推測して処理せず、特定行政庁の建築関係部門へ照会します。確認日、確認先、参照した図面、回答内容、回答の前提条件を記録しておけば、後日同じ区間を調べる際にも根拠を追いやすくなります。

確認項目2 道路中心線と後退線の根拠を確認する

前面道路がセットバックに関係する道路であることを確認したら、次に基準時の道路中心線と、道路境界線とみなされる線の根拠を調べます。

原則的な2項道路では、基準時の道路中心線から両側へ水平距離2メートルの線が道路境界線とみなされます。ただし、現在の舗装部分を測り、その中央を取れば基準時の中心線になるとは限りません。片側だけで建替えと後退が進んでいる道路では、現在の道路状空間が一方へ広がり、現況の中央が基準時の中心線からずれていることがあります。国土交通省の運用資料でも、現在の道の形態だけでなく、基準時の資料を踏まえて総合的に判断する考え方が示されています。([国土交通省][3])

側溝や舗装も同様です。道路改良によって側溝が移設されていたり、私有地の一部まで一体的に舗装されていたりすることがあります。側溝間や舗装端間の中央は、中心線を検討する手掛かりにはなっても、それだけで法上の中心線を確定する資料にはなりません。

中心線や後退線の確認資料には、指定道路図・調書、道路境界確定図、道路台帳平面図、道路幅員図、狭あい道路協議図、過去の道路相談資料、建築確認時の配置図、地積測量図、換地図、区画整理事業の確定図などがあります。ただし、各図面は作成目的、縮尺、精度、基準が異なります。

道路台帳平面図は道路管理のための資料であり、筆界を直接確定する目的で作成されたものとは限りません。建築確認時の配置図も、建築計画の適法性を審査するための資料であり、隣接所有者間の筆界確認を証明するものとは限りません。図面に記載された線を利用するときは、作成目的と根拠を確認します。

道路中心線や後退線が図示されている場合は、その線を現地へ再現できる座標や寸法があるか、どの地物や測量点を基準にしたか、特定行政庁による確認や協議があるかを確認します。単に「中心線」と書かれた線を、根拠を確認せず採用することは避けます。

道の片側ががけ地、川、線路敷などに沿う場合には、中心振り分けではなく、反対側へ必要な幅を確保する取扱いになることがあります。ただし、現地に水路や高低差があるだけで一方後退と判断できるわけではありません。基準時の状況、道との位置関係、管理者、指定内容などを特定行政庁へ確認します。

道路が曲がっている場合、道路境界線とみなされる線も中心線の形状に応じて折れたり曲がったりします。角地では複数方向の道路指定に加え、条例、道路整備、過去の協議などによる隅切りが関係する場合があります。隅切り線が筆界、道路区域境界、建築上の制限線のどれに当たるかも区別します。

中心線や後退線を現地に参考表示する必要がある場合は、建築関係部門の確認内容に基づき、筆界標と混同されない方法を選びます。仮杭、鋲、塗料などを使用するときは、その表示が地籍調査の筆界候補点なのか、建築基準法上の参考線なのかを、図面、野帳、写真、立会い記録に明記します。

確認項目3 筆界とセットバック線を区別する

セットバックが関係する土地の地籍調査では、筆界と建築基準法上の道路境界線とみなされる線を明確に区別する必要があります。

筆界は、登記された土地の区画を示す公法上の境界です。所有者間の合意だけで自由に変更できず、分筆や合筆などの登記手続によらなければ変更されません。これに対し、セットバック線は、建築基準法上、道路の境界線とみなされる位置であり、土地所有権の境界そのものを定める線ではありません。([法務省][4])

例えば、従来の道路側の筆界が基準時の道路中心線から1.5メートルの位置にあり、中心線から2メートルの位置まで後退が必要な場合、筆界より宅地側へ0.5メートル入った位置に建築基準法上の道路境界線とみなされる線が生じます。

建替え時に建物や塀をその線まで後退させても、後退部分を分筆していなければ、従来の筆界は道路側に残ります。後退部分が道路状に整備されていても、登記上は元の宅地の一部である場合があります。

現地では、後退後に設けられた塀の位置が土地境界のように見えることがあります。土地所有者から「ここまで下がったので、ここが境界」と説明されることもありますが、その「境界」が建築時の後退線、分筆後の筆界、利用範囲、道路管理範囲のどれを意味するのかを確認しなければなりません。

塀の位置を筆界候補として扱う前に、地積測量図、分筆登記の経緯、道路境界確定図、寄附や譲渡の資料、狭あい道路協議図などを照合します。後退部分が分筆されている場合でも、分筆線が協議上の後退線と完全に一致しているかを確認します。

過去の手続では、構造物、測量条件、道路線形、隅切りなどの事情により、協議図上の後退線と実際の分筆線が一致しないことがあります。「道路になった」という説明も、法上道路とみなされたこと、所有権が移転したこと、道路状に整備されたこと、一般通行に使われていることのいずれかで意味が異なります。

地籍図に表示するのは、地籍調査で調べた筆界です。セットバック線が筆界と異なる場合、その線を筆界として取り込むことはできません。参考情報として保管する場合は、線種、名称、属性を分け、筆界ではないことを明示します。

土地所有者への説明では、「土地の登記上の区切り」「道路管理者が管理する範囲」「建築時に道路内とみなされる範囲」を分けて示します。地籍調査の立会いで筆界が確認されても、将来の建築計画における道路中心線や後退位置は、その時点の法令、指定、特定行政庁の判断に基づいて改めて確認が必要な場合があります。

確認項目4 後退部分の所有権と管理状況を確認する

セットバック部分については、誰が所有しているか、誰が管理しているか、どのような手続が行われたかを分けて確認します。

まず、登記事項証明書、登記所に備え付けられた地図または地図に準ずる図面、地積測量図などから、後退部分がどの筆に含まれるかを調べます。前面道路の地番に含まれている場合、沿道宅地の一部として残っている場合、独立した道路地番へ分筆されている場合があります。

後退部分が分筆されていても、所有者が道路管理者とは限りません。元の所有者が保有している場合、沿道所有者の共有地となっている場合、地方公共団体などへ移転している場合があります。地目が公衆用道路であることだけでは、所有者や管理者を確定できません。

地方公共団体によっては、狭あい道路の拡幅整備制度を設け、後退部分の寄附、譲渡、無償使用、舗装、側溝移設などを扱っています。ただし、制度内容、対象条件、申請時期、整備方法は地域ごとに異なります。

建築確認や道路相談で後退線が示されていても、分筆、所有権移転、寄附受納まで完了しているとは限りません。現地では塀が後退している一方、登記手続や用地処理が未了のこともあります。

反対に、登記名義が個人のままでも、無償使用承諾、管理協定、占用関係などにより、道路管理者が舗装や維持管理を行っている場合があります。国土交通省の資料でも、後退用地が私道のまま公共管理される場合があることが示されています。([国土交通省][5])

そのため、道路管理部門が保有する道路区域図、道路境界確定図、用地取得図、寄附受納資料、無償使用に関する資料、工事完成図などを確認します。建築関係部門の狭あい道路協議資料と、道路管理部門の用地・管理資料が別々に保管されている場合もあります。

固定資産税上の評価や非課税の取扱いについて質問を受けても、所有権、道路管理、建築基準法上の道路内制限と同一視してはいけません。税務上の取扱いは利用状況や自治体の判断により異なるため、担当部門へ確認します。

道路管理者が舗装を補修していることや側溝を清掃していることは管理状況の手掛かりになりますが、それだけで所有権が公共に移っているとは判断できません。後退部分に物品が置かれている場合も、利用者、占有者、所有者が同一とは限りません。

所有者や管理関係が不明なまま現地確認を進めると、本来通知や確認が必要な関係者を把握できないおそれがあります。前面道路が公有地か私有地か、登記名義人は誰か、道路管理者は誰か、共有者や管理組織があるかを資料に基づいて整理します。

確認項目5 現地の構造物と道路利用の実態を確認する

資料調査の後は、現地で道路幅員、境界標、塀、側溝、舗装、建物、擁壁などの位置を確認します。現地構造物は重要な手掛かりですが、単独で筆界やセットバック線を確定するものではありません。

対象地の前面だけでなく、道路の連続性が分かる範囲を確認します。建替え済みの敷地前だけ道路状空間が広く、未後退の建物が残る部分だけ狭いことがあります。片側だけ後退が進んでいるか、道路線形に折れや曲線があるか、反対側に川、水路、がけ地、線路敷などがあるかを記録します。

道路幅員を測るときは、何と何の間を測定したかを明記します。舗装端間、側溝外側間、塀間、境界標間では数値の意味が異なります。野帳に「道路幅3.6メートル」とだけ記載せず、「舗装端間」「側溝外側間」など測定対象を残します。

既設境界標がある場合は、材質、形状、刻印、向き、設置状態を確認します。道路境界標、民有地同士の境界標、中心線標、セットバック協議時の参考標、工事用の仮設標識などが混在している可能性があります。

境界標が見つかっても、直ちに地籍調査の筆界点として採用せず、対応する図面や設置記録、周辺点との整合、関係者の認識を確認します。標識の移動、工事による復元、亡失後の再設置がないかも調べます。

塀や門柱については、上部だけでなく基礎や擁壁の位置も確認します。建物は後退していても、塀や門柱が道路側に残る場合があります。反対に、塀は後退していても、基礎や階段が道路側へ張り出している場合があります。

建築基準法上、2項道路の道路内とみなされる範囲では、建築物や擁壁などに制限があります。一方、花壇や可動物など建築物以外の物件については、建築基準法だけで一律に処理できず、地方公共団体の条例や管理制度が関係する場合があります。地籍調査の担当者が現地で適法性を断定せず、必要に応じて建築関係部門や道路管理部門へ引き継ぎます。([国土交通省][5])

側溝の位置にも注意します。側溝外側が道路境界と一致する地域や区間もありますが、側溝が私有地内にある場合、道路区域をまたぐ場合、改良工事で位置が変わった場合があります。舗装の継ぎ目や材質の違いも施工範囲の手掛かりにはなりますが、筆界や所有権界を直接示すものではありません。

道路の反対側も確認します。セットバックの判断には基準時の中心線や一方後退の取扱いが関係するため、対象地側だけでは道路全体の形状を把握できません。反対側の塀、建物、側溝、境界標、後退状況を測り、資料との整合を検討します。

角地では、二方向の道路からの後退、交差部の隅切り、道路区域の形状が関係する場合があります。現地に斜めの塀や舗装があっても、それが筆界、道路用地取得線、条例上の隅切り、単なる施工形状のどれに当たるかを資料で確認します。

現地写真は、境界標の近景だけでなく、道路、塀、側溝、建物との位置関係が分かる遠景も撮影します。撮影日時、撮影位置、撮影方向、対象点番号を関連付けておくと、帰庁後の照合や将来の再確認に利用しやすくなります。

地籍調査の立会い前に収集したい資料

セットバックが関係する可能性がある土地では、立会い前の資料収集が特に重要です。現地で初めて道路状況を確認すると、筆界と後退線の違いを十分に説明できず、関係者の認識を混乱させるおそれがあります。

基本資料として、対象地、前面道路、反対側の土地、両隣の土地について、登記事項証明書、登記所に備え付けられた地図または地図に準ずる図面、地積測量図を確認します。周囲の土地まで調べることで、道路敷地の成り立ち、分筆の経緯、筆界の連続性を把握しやすくなります。

過去に分筆が行われている場合は、分筆時の地積測量図や申請経緯を確認します。後退部分だけが細長く分筆されている場合、複数区画をまとめて道路用地として整理している場合、隅切り部分だけ別筆となっている場合があります。

道路管理関係の資料には、認定路線図、道路区域図、道路台帳平面図、道路境界確定図、用地取得図、工事完成図などがあります。道路台帳の幅員と現況が異なるときは、記載幅員の測定位置、道路区域と舗装範囲の関係、改良工事の有無を確認します。

建築関係の資料には、指定道路図、指定道路調書、道路種別図、過去の道路相談資料、狭あい道路協議図、建築確認時の配置図などがあります。これらは基準時の道、中心線、道路境界線とみなされる線を調べる手掛かりになります。

ただし、建築確認図面や道路相談図に記載された敷地境界を、そのまま地籍調査の筆界として採用することはできません。図面の作成目的、作成者、測量方法、参照資料、隣接所有者の確認状況を調べます。

土地区画整理、土地改良、道路改良などが行われた地域では、換地図、確定図、事業計画図、出来形図も確認します。現在の地番や道路形状が古い公図と大きく異なる場合、事業により土地の区画や道路用地が再編されている可能性があります。

過去の航空写真や地形図は、道路や建物の変遷を調べる補助資料になります。塀の移設時期、建替え時期、道路改良の時期を推測できますが、画像上の線を筆界として直接用いることはできません。

資料を収集した後は、作業図に筆界候補線、所有権界に関する情報、道路区域境界、基準時の中心線、建築基準法上の道路境界線とみなされる線、舗装端、側溝、塀などを異なる線種と注記で重ねます。

各資料について、資料名、作成年、作成目的、縮尺、座標の有無、線の意味を記録します。資料間に差がある場合は、一方を直ちに誤りとせず、道路工事、分筆、地図訂正、側溝移設、片側後退、測量精度の違いなどの原因を検討します。

現地立会いを進めるときの実務上の注意点

現地立会いでは、最初に地籍調査で確認する対象を関係者へ説明します。セットバックが関係していても、地籍調査の目的は筆界等を調査することであり、建築基準法上の中心線や後退線を地籍調査の場で独自に決定することではありません。

対象地、前面道路、隣接地の地番と登記名義人を確認し、土地所有者等や関係機関への通知、照会、確認が適切に行われているかを確認します。公道であっても土地の所有者と道路管理者が常に同一とは限らず、私道では共有者や管理組織が関係する場合があります。

現地では、既設境界標、過去の測量点、道路境界標、塀、側溝などを資料と照合します。標識が移動、亡失、再設置されていないか、図面に記載された位置と現況が整合するかを確認します。

土地所有者が認識する境界についても聞き取ります。ただし、「昔から塀までが土地だった」「建替えの際に下がった」という説明が、筆界、後退線、利用範囲のどれを意味するかは明確でないことがあります。塀を移設した時期、建物を建て替えた時期、行政との協議、寄附、分筆、舗装工事などを具体的に確認します。

セットバック線を説明するときは、筆界の説明と分けます。作業図でも線種と名称を分け、現地に参考表示を行った場合は、筆界標ではないことを関係者へ伝え、記録と写真に残します。

後退部分へ物を置けるか、舗装できるか、税務上どう扱われるか、寄附や買収が可能かといった質問は、地籍調査だけでは回答できない場合があります。その場で断定せず、建築、道路管理、税務などの担当部門へ確認するよう案内します。

筆界について関係者の認識が一致しない場合に、セットバック線を代わりの境界として合意することはできません。筆界と後退線は成立根拠が異なるため、後退線への認識一致は筆界確認の代替になりません。

資料不足や認識相違がある場合は、追加調査、関係部門への照会、再度の現地確認を検討します。立会い結果には、確認した筆界点、利用した資料、関係者の説明、構造物との位置関係、セットバックに関する参考情報、未解決事項を具体的に記録します。

「塀を境界として確認した」とだけ記載すると、その塀が筆界上にあるのか、後退線上にあるのか、利用上の区切りにすぎないのか分かりません。どの線を、どの根拠で確認したのかを明記します。

セットバックが関係する土地で起こりやすい誤り

代表的な誤りは、現在の塀の位置をそのまま筆界と判断することです。建替え時に塀だけを後退線へ移設し、元の筆界が道路側に残っている場合があります。分筆の有無、地積測量図、協議図を確認します。

次に、幅員4メートル未満の道はすべて中心線から2メートル後退すると考える誤りがあります。建築基準法上の道路種別、指定範囲、基準時の状況、片側のがけ地等、法第42条第3項などの指定により取扱いが異なる場合があります。([e-Gov 法令検索][2])

現在の道路状空間の中央を基準時の中心線と判断することも危険です。片側だけ後退が進んでいる道路では、現況の中央が基準時の中心線からずれることがあります。

側溝外側や舗装端を一律に道路境界とすることも適切ではありません。道路管理者の施工範囲、道路区域、所有権界、筆界、建築基準法上の道路境界線とみなされる線は一致しない場合があります。

道路管理者が舗装しているため公有地だと判断することもできません。私有地について無償使用承諾などを得て公共管理が行われている場合があります。所有者は登記記録、管理関係は道路管理資料で確認します。

後退部分は既に登記面積から除かれていると考える誤りにも注意します。分筆されていなければ、後退部分も元の一筆に含まれます。反対に、分筆されていても所有権移転が済んでいない場合があります。

過去の建築確認時の配置図を、筆界が確定した図面として扱うことも避けます。配置図上の敷地境界が、どの資料や測量に基づくかを確認します。

指定道路図や公開道路情報の画面を、測量精度のある境界資料として利用することも危険です。道路種別や指定区間を確認する資料と、個々の境界点を現地へ再現する資料を区別します。

建築関係部門だけに照会し、道路管理資料や登記資料を確認しないことも情報不足につながります。反対に、道路台帳だけを見て建築基準法上の道路指定を確認しないことも適切ではありません。

地籍調査で筆界が確認されたため、セットバック線も確定したと説明することにも注意が必要です。建築基準法上の後退位置は、具体的な建築計画やその時点の行政確認が必要になる場合があります。

調査記録に複数の線をすべて「道路境界」と記載すると、後日の誤解につながります。筆界、所有権界、道路区域境界、法上の道路境界線とみなされる線の名称と根拠を分けます。

調査結果の記録と関係部門への引継ぎ

セットバックが関係する土地では、筆界点の座標だけでなく、その位置を判断した経緯を記録することが重要です。

境界点について、標識の種類、設置状態、現況写真、見取図、周辺構造物までの距離を残します。道路沿いの標識は、舗装工事、側溝工事、除雪、車両乗入れなどで失われる可能性があるため、将来の復元に役立つ情報を整理します。

写真は標識の近景だけでなく、道路、建物、塀、側溝との位置関係が分かる遠景も撮影します。撮影位置、方向、日時、対象点番号を測量データと関連付けて管理します。

セットバック線を参考情報として記録する場合は、筆界と異なるレイヤー、線種、名称、属性で管理します。根拠とした指定道路図、道路相談、行政照会、協議図などを関連付け、いつの時点の情報かを明記します。

行政への照会結果は、回答内容だけでなく、照会先、照会日、確認資料、対象区間、回答の前提条件を保存します。制度や取扱いが変更される可能性があるため、将来利用する際は最新情報を再確認できる状態にします。

未後退の建物や塀が残っている場合、地籍調査成果の中で適法性を断定せず、現況位置として記録し、必要に応じて建築関係部門へ引き継ぎます。後退部分の寄附や分筆が未了でも、地籍調査によって自動的に手続が完了するわけではありません。

地籍調査で得られた筆界情報は、将来の建築、道路改良、上下水道工事、災害復旧、土地取引などで利用されます。数値だけでなく、現地状況、写真、資料、照会結果を一体的に管理することで、後日の説明や再調査に対応しやすくなります。

まとめ

地籍調査でセットバックが関係する土地を扱うときは、道路の見た目だけで境界を判断せず、法的な道路種別、登記資料、道路管理資料、建築関係資料、現地状況を照合する必要があります。

確認項目は、前面道路の法的な位置付け、基準時の道路中心線と後退線の根拠、筆界とセットバック線の違い、後退部分の所有権と管理状況、現地構造物と道路利用の実態の5つです。

特に重要なのは、筆界と建築基準法上の道路境界線とみなされる線を同じものとして扱わないことです。建物や塀を後退させても、分筆や所有権移転がなければ、元の筆界や所有権が道路側に残る場合があります。

反対に、後退部分が分筆され、地方公共団体などへ寄附または譲渡されていれば、後退後の位置に新しい筆界が設けられていることがあります。登記事項証明書、地積測量図、道路境界資料、寄附関係資料などで確認します。

幅員4メートル未満の道がすべて同じセットバックの対象になるわけではありません。建築基準法上の道路種別、指定範囲、基準時の中心線、片側の状況、個別の水平距離指定を確認し、不明点は特定行政庁の建築関係部門へ照会します。

現地では、舗装端、側溝、塀、門柱、境界標、建物、擁壁などの位置を測定します。ただし、これらは判断材料であり、単独で筆界や後退線を確定するものではありません。

立会いでは、地籍調査で調べる筆界と、建築基準法上の後退線を分けて説明します。塀が境界に見える場合も、その塀が分筆後の筆界上にあるのか、建築時の後退線上にあるのか、単なる利用上の区切りなのかを資料で確認します。

調査結果は、境界点の座標だけでなく、確認資料、現地写真、撮影方向、構造物との位置関係、行政照会の内容まで含めて記録します。複数の線を位置情報と結び付けて整理し、それぞれの名称、根拠、確認時点を明確にすることが、確認漏れや将来の誤解を防ぐ地籍調査につながります。

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