災害を受けた地域で地籍調査を進める際、対象土地が復興事業の区域に含まれていると、通常の地域よりも資料の時点と線の意味を丁寧に区別する必要があります。被災前の筆界、災害後の現況、復興計画上の区域線、公共施設の用地取得線、仮換地の使用収益位置、換地処分後の土地などが、同じ地区で併存することがあるためです。
「災害復興事業区域」は、全国一律の単一制度に基づく正式な区域名として使われているとは限りません。実際の復興まちづくりでは、土地区画整理事業、防災集団移転促進事業、津波復興拠点整備事業など、目的と法的根拠の異なる事業が組み合わされることがあります。したがって、通称だけで区域の効果を判断せず、正式な事業名、根拠となる計画や認可、施行者、区域の確定状況、現在の事業段階を確認することが出発点です。([復興庁][1])
地籍調査は、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目、筆界、面積などを調査・測量し、地籍図と地籍簿を作成する制度です。成果は閲覧や認証などの手続を経て登記所へ送付され、登記記録や登記所備付地図の整備に利用されます。土地の形状や位置が座標と結び付けて保存されていれば、災害で境界標が失われた場合の復旧・復興にも役立ちます。([国土交通省][2])
ただし、地震による地殻変動、地すべり、液状化、地盤沈下、盛土や切土などが生じた地域では、災害前の座標をそのまま現地へ適用できない場合があります。国や自治体が再測量や補正情報の整備を行っている地域では、補正前後の成果を混在させず、使用する基準点、座標系、補正の適用範囲を確認しなければなりません。([国土交通省][3])
この記事では、地籍調査の実務担当者が災害復興事業に関係する土地を扱うときに、優先して確認したい四つの資料を整理します。個別の土地に対する法的効果や必要手続は、事業の種類、認可内容、事業段階、自治体の運用によって異なるため、最終的には各事業の施行者と地籍調査実施主体が保有する最新資料で確認することが重要です。
災害復興事業区域では最初に言葉の意味を確定する
最初に確認するのは、対象地が「何という事業の、どの区域に、どの根拠で含まれているのか」です。復興に関係する区域には、市街地を再編する施行地区、住宅移転を促進する区域、公共施設や防災拠点の整備区域、道路や河川などの用地取得範囲などがあります。同じ土地に複数の事業が重なることもあり、ある図面では事業区域内でも、別の事業の取得対象には含まれないことがあります。
土地区画整理事業では、従前の宅地に対して換地を定め、公共施設の整備改善と宅地利用の増進を図ります。事業中に仮換地が指定されると、実際に使用収益する場所と登記上の従前地が一致しない期間が生じることがあります。換地処分後は権利関係や登記の整理が進みますが、仮換地指定、換地計画、換地処分、登記の各段階を区別しなければ、確認対象となる土地や関係者を取り違えるおそれがあります。([国土交通省][4])
防災集団移転促進事業では、移転促進区域、移転先の住宅団地、移転元地の買取り、土地利用や建築制限に関する措置などが関係します。ただし、移転促進区域に含まれることだけから、個々の土地の取得状況や具体的な建築制限を一律に判断することはできません。事業計画、災害危険区域等の指定、条例その他の規制根拠を分けて確認する必要があります。([国土交通省][5])
実務では、担当者から聞いた通称だけを記録するのではなく、事業計画書、都市計画決定図書、認可書類、公告・告示、区域変更資料などに記載された正式名称を確認します。同時に、施行者、認可日、変更日、施行期間、現在の工程を記録します。復興計画に方針が掲載されていても、個別事業の区域が確定していない場合があります。反対に、工事が完成していても、換地処分や登記整理、公共施設の管理引継ぎが完了していない場合があります。
地籍調査の調査区と復興事業の区域は、同じ単位で設定されるとは限りません。一筆の一部だけが区域に含まれる場合や、小縮尺の区域図では区域線が筆界付近を通っているように見える場合があります。概要図を拡大しただけで区域内外を判断せず、地番一覧、区域調書、詳細図、座標資料、変更図などに当たることが必要です。
事業区域の指定や決定は、通常、それだけで既存の筆界を当然に移動させるものではありません。ただし、分筆、合筆、用地取得、仮換地指定、換地処分などの手続が進むと、登記上の土地、使用収益する区画、公共施設の管理範囲が変化します。区域の確認と筆界の確認を別々に終わらせず、土地の変化を時系列で整理することが重要です。
資料1は区域図と事業計画書
一つ目に確認する資料は、区域図と事業計画書です。この資料は、対象土地がどの事業に関係し、その事業が土地利用や公共施設配置をどのように変えようとしているかを把握するために使います。住民説明会用の構想図ではなく、できる限り最新の決定、認可、変更認可に対応した図書を確認します。
区域図では、作成日、縮尺、方位、凡例、図面番号、版番号、区域線の根拠、座標の有無、変更履歴を見ます。災害直後の構想図、比較検討案、説明会資料、正式決定図、変更後の図面が同じフォルダーに保存されていることがあります。見た目が新しい図面でも、現在有効な区域を示しているとは限らないため、事業担当部署に有効版を確認します。
事業計画書では、事業目的、施行地区、設計の概要、公共施設配置、土地利用方針、施行期間、変更内容などを確認します。地番が列挙されている場合は、分筆や合筆後の現在地番に対応しているかを確かめます。旧地番しか記載されていない場合は、閉鎖登記記録、登記事項証明書、地番対照表などを用いて現在の筆との対応を整理します。
土地区画整理を伴う区域では、事業計画書だけで個々の換地位置を判断できません。施行地区全体の計画と、各権利者に関係する仮換地指定や換地計画の資料は役割が異なります。計画道路、公園、水路などの線を、従前地の筆界や換地後の筆界と読み替えないことが重要です。
防災集団移転促進事業などでは、移転元、移転先、買取り対象、土地利用方針、建築制限に関する区域が別資料で示されることがあります。建築制限は条例や別の区域指定に基づくことがあるため、事業区域図だけで可否を断定せず、規制を所管する部署と根拠規定を確認します。([国土交通省][5])
対象筆ごとに、区域内、区域外、一部区域内、区域線付近、判定保留のいずれかを記録し、判定に使った資料名、作成日、図面番号を残します。一部区域内の場合は、区域線が既存筆界に沿うのか、筆を横断するのか、将来の分筆や取得が予定されているのかを事業担当者へ確認します。
小縮尺図では一本の線が現地で大きな幅に相当することがあります。線の中心を区域界とみなせるとは限らず、地番界、道路中心線、座標列、地物など、区域設定の根拠が別に存在する場合があります。区域端部の土地では、概要図の画像を拡大するのではなく、詳細図や座標資料に切り替えることが安全です。
資料2は地籍図と地籍簿および測量成果
二つ目に確認する資料は、地籍図、地籍簿、筆界点番号図、筆界点座標、基準点成果、点の記、測量計算簿、災害後の補正記録などです。この資料は、調査時点の筆界と、現在利用できる測量成果の状態を把握するために使います。
地籍調査では、土地所有者等の立会いを求めるなどして一筆ごとの筆界等を調査し、地籍測量を行い、地籍図と地籍簿の案を作成します。作成した地図と簿冊は国土調査法に基づき二十日間閲覧に供され、申出への対応、認証などを経て登記所へ送付されます。したがって、作業中の素図、閲覧前の成果案、閲覧後の修正成果、認証済み成果では、資料としての段階が異なります。([国土交通省][6])
最初に、対象地の地籍調査が実施済みか、実施中か、未実施かを確認します。実施済みの場合は、調査年度、認証、登記所送付、登記反映、座標成果の保管状況を確認します。実施中の場合は、一筆地調査前、現地調査後、測量中、閲覧中など、現在の工程を把握します。復興工事と地籍調査が並行している地区では、測量後に地形や構造物が変わることがあるため、測量日と工事工程を対応させます。
地籍図だけでなく、登記所の地図、地積測量図、過去の境界確認資料、道路・水路の境界資料、分筆や合筆の履歴も照合します。地籍調査後に分筆や合筆が行われていれば、現在の地番や形状は当時の地籍図と異なります。復興事業の用地取得に伴って先行分筆が行われた場合は、地籍調査成果と現在の登記をつなぐ沿革資料が必要です。
災害区域では、座標成果の適用可否が重要です。地殻変動が複雑な地域では、基準点を再測量し、地籍図等の位置情報を修正するための補正情報が整備された例があります。対象地が補正対象に含まれる場合は、補正前後の座標、点番号、座標系、適用日を記録し、古い座標一覧を現地復元に使わないようにします。([国土交通省][3])
現地に杭や鋲が残っていても、それが地籍調査の筆界標、工事測量点、施工管理点、仮換地に関する標識、公共施設の管理標などのどれに当たるかを確認します。標識の材質、表示、点番号、設置者、設置時期を写真で記録し、点の記や座標成果と照合します。「杭がある」という事実だけで筆界と判断することは避けます。
なお、地籍調査は土地に関する基礎情報を整備する行政上の調査であり、所有権の範囲をめぐる民事上の争いを裁判と同じように解決する制度ではありません。関係者の見解が一致しない場合や資料が不足する場合は、調査実施主体の手続に従って保留事項を整理し、必要に応じて専門家や関係機関へ確認します。
資料3は換地や用地取得などの権利調整資料
三つ目に確認する資料は、仮換地指定、換地計画、換地処分、用地取得、補償、分筆、所有権移転、権利設定などに関する資料です。この資料は、復興事業によって土地の権利と利用区画がどのように移り変わったかを把握するために使います。
土地区画整理事業では、従前地、仮換地、換地処分後の土地を区別します。仮換地が指定されると、使用収益する場所が従前地と異なる場合がありますが、仮換地指定の段階で登記上の表示が最終形に切り替わるとは限りません。地籍調査の対象がどの時点の土地なのか、誰に通知し、どの線を確認するのかを施行者と調整する必要があります。([国土交通省][4])
確認候補となる資料には、仮換地指定通知、仮換地図、換地設計図、各筆に関する明細、換地計画、換地処分の公告、換地処分に伴う登記の進捗資料などがあります。ただし、閲覧できる資料や提供範囲は事業段階、法令、個人情報の取扱いによって異なるため、地籍調査の目的に必要な範囲で施行者へ照会します。
用地買収方式では、買収予定図、用地実測図、土地調書、境界確認書、分筆図、契約関係資料、所有権移転登記の確認資料などを見ます。契約、分筆、所有権移転、引渡し、工事着手は同じ日に完了するとは限りません。時点を分けて整理すると、登記上の所有者、現地の管理者、事業側の取得状況のずれを説明しやすくなります。
一筆の一部を取得する場合は、取得予定線、境界確認済みの用地線、分筆後の筆界を区別します。計画段階の取得線は、測量、設計変更、協議によって動く可能性があります。正式な分筆登記が完了しているか、図面と座標が対応しているか、確認書がどの線を対象としているかを確認します。
抵当権、地上権、賃借権、通行や配管に関する権利、仮登記、差押えなどがある場合、地籍調査だけでその権利を消滅・変更させることはできません。ただし、通知先や関係者を整理するうえで、最新の登記事項と事業側の権利者資料は重要です。相続登記が未了である場合や、避難・転居により連絡先が変わっている場合もあるため、基準日を明示して確認します。
土地所有者等の所在が不明な場合や、遠隔地居住などで現地立会いが難しい場合には、一定の要件の下で筆界案の公告や図面等による確認を用いる制度があります。したがって、立会いが得られないからといって直ちに現況施設の位置を筆界とするのではなく、作業規程準則その他の手続に従って対応します。([国土交通省][7])
資料3では、「誰が所有者か」だけでなく、「どの時点のどの土地について、誰がどの権利または使用関係を持つか」を整理します。従前地の所有者、仮換地の使用収益者、買収後の所有者、公共施設の管理者を一つの欄に混在させず、時点別に分けて記録することが重要です。
資料4は造成や公共施設の設計図と完成資料
四つ目に確認する資料は、造成、道路、河川、排水施設、公園、擁壁、宅地整備などの設計図と完成資料です。この資料は、現在の地形や構造物が何の目的で、どの位置に施工されたかを把握し、筆界資料との関係を検討するために使います。
確認する資料には、平面図、縦断図、横断図、造成計画図、道路計画図、排水計画図、構造物配置図、施工区域図、出来形測量成果、竣工図、公共施設引継図、管理台帳などがあります。計画図、施工図、完成図、管理図は作成目的が異なるため、最新図だけを見れば足りるわけではありません。
道路の縁石、側溝、擁壁、フェンス、法肩、法尻などは、現地では境界のように見えます。しかし、構造物が筆界から離して設置される場合や、公共用地内に収めて施工される場合、複数筆にまたがる場合があります。道路区域界、用地取得線、施設管理界、施工範囲、筆界は意味が異なります。図面の線種と凡例を確認し、構造物の位置を筆界と読み替えないようにします。
造成地では、盛土によって旧地盤が覆われ、境界標が撤去または埋没していることがあります。切土や地すべりにより旧地形との比較が難しい場合もあります。このような場所では、被災前の地籍成果、工事前測量、工事後の出来形測量を、同じ座標基準と適切な補正条件で比較します。紙図面を画像として重ねただけでは、印刷変形や座標系の違いによるずれを排除できません。
公共施設が管理部署へ引き継がれている場合は、事業担当部署の完成図だけでなく、道路、河川、下水道、公園などの管理部署が保有する区域図や台帳も確認します。完成後の補修や追加工事で現況が変化している可能性があるためです。ただし、管理台帳の線も必ずしも筆界を示すものではなく、管理上の範囲を表している場合があります。
工事中の区域では、仮設道路、工事用フェンス、仮排水、仮置土、施工ヤードなどが現地を覆っていることがあります。これらは一時的な施設であり、将来の筆界や土地利用を示すものではありません。立会いの安全、立入り許可、工事工程、測量点の保全方法を工事担当者と調整し、安全を確保できない場合は日程や確認方法を見直します。
資料4の目的は、設計図や完成図だけで筆界を決めることではありません。現況が形成された経緯を理解し、地籍成果、用地取得資料、換地資料との不一致を発見するために用います。構造物と筆界の関係は、設計図、用地図、権利資料、測量成果を合わせて検討します。
4資料を一筆ごとに照合する実務手順
四つの資料は、別々に読むだけでは不十分です。対象となる一筆ごとに、区域、筆界、権利、現況の四つの視点を重ね、資料の基準日と判断根拠を残します。
最初に、現在の所在、地番、登記名義人、地目、地積を確認します。分筆、合筆、地番変更がある場合は、閉鎖登記記録や地番対照資料を用いて沿革を追います。復興事業の資料が旧地番で作成されている場合、地番の変遷を追えないと対象筆を誤認するおそれがあります。
次に、資料1で対象筆と事業区域の関係を判定します。複数事業が重なる場合は、事業ごとに区域内外と事業段階を分けて記録します。一筆の一部だけが区域に入る場合は、区域線の根拠と将来の分筆予定を確認します。
資料2では、地籍調査の実施状況、筆界点、座標、基準点、災害後補正の有無を確認します。未実施地区では、登記所の地図、地積測量図、官民境界資料、過去の測量図、現地標識などを集めますが、各資料の作成目的と精度を区別して扱います。
資料3では、従前地、仮換地、換地後の土地、取得予定地、買収済み部分、残地を時系列で並べます。過去の境界確認書があっても、その対象が筆全体の筆界なのか、公共事業の用地取得線だけなのかを確認します。
資料4では、道路、側溝、擁壁、法面、フェンスなどの構造物を表示し、筆界資料との離れや重なりを確認します。立会いで説明が必要な箇所は、確認点番号、写真撮影位置、関係図面を事前に整理します。
四資料を重ねて一致しない場合は、無理に一つの線へ統合しません。「地籍成果上の筆界」「事業区域線」「用地取得線」「仮換地線」「施設管理界」「施工範囲」のように線の意味を分けて記録します。そのうえで、地籍調査で確認する対象線と、復興事業側で確認すべき線を切り分けます。
確認票には、資料名、作成年月日、作成部署、縮尺、座標系、図面番号、版番号、受領日、確認日を記録します。電子データはファイル名だけで管理せず、更新日と保存場所を残します。同名ファイルの上書きによる混乱を防ぐため、受領時点の版を保存し、更新版との変更点を確認します。
現地立会で確認しておきたい事項
現地立会いでは、机上で整理した四資料を前提に、筆界を示す可能性のある標識や地形を確認します。復興事業区域では被災前の塀、樹木、水路、道路などが失われていることがあるため、記憶だけに依存せず、座標成果、過去写真、工事前測量、周辺筆との連続性を総合して確認します。
立会いの案内では、「何の線を確認する場なのか」を明確にします。地籍調査の筆界確認と、復興事業の用地取得線や補償協議は目的が異なります。地籍調査の場で買収条件や補償額が決まるわけではないことを説明し、事業に関する質問は所管部署につなぎます。
現地では、境界標、仮設杭、測量鋲、構造物角、道路施設、法面、旧地形の痕跡を確認します。標識には点番号を付け、全景と近景を撮影し、位置関係と確認者の説明を記録します。工事中の杭は移設される可能性があるため、設置者と用途を確認します。
土地所有者等が示す位置と測量成果が異なる場合は、その場で一方を正しいと断定せず、それぞれの主張と根拠を記録します。区域端部では、区域外の隣接土地の資料も確認し、筆界の連続性を検討します。
災害後に自主的に設置された塀、仮囲い、土留め、目印が、正式な境界確認を経ていない場合があります。所有者双方が現況線を境として利用していても、それだけで地籍調査上の筆界と断定せず、既存資料との整合を確認します。
立会い終了時には、確認できた点、追加資料が必要な点、意見が一致しなかった点を分けて共有します。署名や確認方法は調査実施主体の手続に従い、確認対象と保留事項が分かる記録を作成します。
資料同士が一致しないときの整理方法
区域図と地番一覧が合わない、地籍図と構造物がずれている、用地取得図と登記が一致しない、完成図と現況が異なるといった不一致は、復興事業区域では起こり得ます。不一致が見つかっても、直ちにどれかの資料を誤りと決めつけず、時点、目的、縮尺、座標基準を確認します。
まず、災害前、発災後、事業計画時、用地取得時、工事着手時、完成時、仮換地指定時、換地処分時、登記整理時の順に資料を並べます。現在の施設位置を確認する資料と、従前の筆界を確認する資料では、重視すべき時点が異なります。
次に、資料の作成目的を確認します。住民説明用の概要図は全体像を示すためのもので、一筆単位の区域判定には適さない場合があります。施工図は構造物を施工するための資料であり、権利境界を確定するための資料とは限りません。用地図も取得範囲を示すことが中心で、周辺のすべての筆界を確認したものとは限りません。
紙図面の複写や画像化では、伸縮や傾きが生じることがあります。異なる座標系や補正前後のデータを重ねると、全体がずれて表示されます。図面上の差を現地の筆界不一致と判断する前に、座標系、測地成果、単位、縮尺、変換方法をそろえます。
解消できない論点は、「区域への包含は確認済みだが端部座標が未確認」「地籍成果上の筆界は確認できるが補正の適用範囲が未確認」「用地契約は確認できるが分筆登記の完了が未確認」のように具体化します。次に確認する担当部署、資料、測量作業を明記します。
復興事業の工程が迫っていても、未確認の線を便宜的に筆界として扱うことは避けます。一方で、全資料がそろうまで全作業を止めるのではなく、確認済み部分と保留部分を区分し、調査実施主体と事業施行者が工程を調整することが現実的です。
関係部署と土地所有者への確認の進め方
災害復興事業区域の地籍調査は、一つの部署だけで完結しにくい業務です。地籍調査、復興計画、都市計画、区画整理、用地、道路、河川、下水道、公園、工事、登記関係などの部署が、それぞれ異なる資料を保有していることがあります。
庁内協議では、対象筆一覧と位置図を共有し、各資料の所管、最新版、提供可能範囲を確認します。口頭説明だけでなく、資料名、日付、版番号、回答部署を記録します。区域変更や設計変更が続く時期は、立会い直前にも更新の有無を確認します。
土地所有者等への説明では、復興事業区域に含まれることと、地籍調査の目的を分けて伝えます。事業区域内であることだけから、土地取得、建築制限、利用制限の内容を断定することはできません。地籍調査担当が回答できない事項は、所管部署と確認方法を案内します。
過去の立会い、用地交渉、売買、相続などで関係者が保管している境界確認書や測量図が手掛かりになることがあります。ただし、写しだけでは作成者、対象線、作成時点、原本との一致を確認できない場合があります。資料の由来と目的を聞き取り、行政側の資料と照合します。
被災前の土地、現在の現況、事業完成後の計画を一枚に重ねると、説明が複雑になります。従前図、現況図、計画図を分け、各線の名称と時点を明記すると理解されやすくなります。色だけに頼らず、線種、点番号、注記を使って区別します。
関係者の認識が一致しない場合は、結論を急がず、争点となる線と根拠資料を明確にします。土地所有者等の記憶、地籍成果、用地資料、構造物位置のどこが異なるのかを整理し、追加の資料調査、測量、関係部署との協議が必要かを判断します。
まとめ
地籍調査で土地が災害復興事業に関係する区域へ含まれる場合は、現地の杭や一枚の計画図だけで判断せず、四つの資料を組み合わせて確認することが重要です。
一つ目は区域図と事業計画書です。正式な事業名、法的根拠、施行者、区域、変更履歴、事業段階を確認します。二つ目は地籍図、地籍簿、筆界点座標、基準点成果などです。地籍調査の工程、成果の認証や登記所送付、災害後補正の有無を確認します。
三つ目は仮換地、換地計画、用地取得、分筆、所有権移転などの権利調整資料です。従前地、仮換地、換地後の土地、取得地、残地を時系列で整理します。四つ目は造成や公共施設の設計図、出来形測量、完成図、管理資料です。構造物の位置と筆界、用地境界、管理界、施工範囲を区別します。
資料同士が一致しない場合は、異なる意味の線を無理に一本へまとめず、資料の時点、目的、縮尺、座標基準をそろえて検証します。未確認事項は具体的に記録し、次に確認する資料と担当部署を明確にします。
現地では、確認点の番号、位置、写真、関係者の説明、使用した図面と座標を一体として記録することが重要です。復興事業のように現況と資料が変化しやすい区域ほど、最新版管理と時点別の整理を徹底し、地籍調査実施主体、事業施行者、土地所有者等の間で確認対象を共有することが、安全で円滑な調査につながります。