農振農用地を地籍調査前に確認する理由
地籍調査の対象地が農用地区域に含まれる場合は、筆界や面積だけでなく、農業上の土地利用計画、農地としての利用状況、農道や用排水路などの施設との関係を事前に確認しておく必要があります。農地では、現地の耕作区画、登記上の一筆、農用地区域の範囲、土地改良事業後の区画が一致しないことがあるためです。
実務で使われる「農振農用地」は一般的な呼び方で、法令上は「農用地区域内の土地」や「農用地区域内にある農地」などと整理されます。農業振興地域の全域が農用地区域ではありません。都道府県が指定する農業振興地域の中で、市町村が農業振興地域整備計画を定め、その農用地利用計画において農業上の利用を確保すべき区域を農用地区域として設定します。農用地区域には農地だけでなく、一定の農業用施設用地や土地改良施設用地などが含まれる場合があります。農林水産省の制度説明でも、農業振興地域制度と農地転用許可制度は別の仕組みとして整理されています。([農林水産省][1])
確認時には、農用地区域という計画上の区分、農地法上の農地に該当するか、登記記録に記載された地目、現地の利用状態を分けて整理します。登記地目が田や畑でも農用地区域外の場合があり、登記地目が田や畑以外でも農用地区域内の土地に含まれている場合があります。登記地目だけで農振農用地かどうかを判断することはできません。
地籍調査は、主に市町村が一筆ごとの所有者、地番、地目を調査し、筆界の位置と面積を測量する調査です。地籍調査を行っただけで農用地区域から除外されることはなく、農地転用の許可や届出が不要になることもありません。地籍調査と農業振興地域制度、農地転用許可制度は、それぞれ目的と手続が異なります。([地籍情報システム][2])
地籍調査によって筆の位置や形状が従来より明確になると、既存の農用地区域図との間にずれが見えることがあります。ただし、見た目にずれがあるだけで、地籍調査成果または農用地区域図のどちらかが誤っているとは直ちに判断できません。資料ごとに作成目的、縮尺、作成時期、基礎図、座標の有無が異なるため、関係部署で照合する必要があります。
事前確認を行えば、農用地区域の線を筆界と誤認すること、耕作範囲を所有権の範囲と取り違えること、農道や水路を隣接農地の一部と誤認することを防ぎやすくなります。とくに区域外縁部、道路や水路に接する土地、圃場整備済みの地区では、資料を早めに集めておくことが重要です。
地籍調査と農振農用地指定の関係
地籍調査では、一筆地調査によって所有者、地番、地目、筆界などを確認し、地籍測量によって確認された筆界を測量します。その結果を基に地籍図と地籍簿が作成され、閲覧や認証などの手続を経て成果の写しが登記所へ送付されます。
一方、農用地区域は、市町村農業振興地域整備計画の農用地利用計画に定められる農業上の土地利用区分です。農用地区域の設定や変更は、土地の所有権境界を確定するための手続ではなく、農業上の利用を確保するための計画手続です。したがって、地籍調査の筆界と農用地区域の区域線は、同じ役割を持つ線ではありません。
農用地区域図が古い公図、地形図、地番配置図などを基礎として作成されている場合、区域線が現地座標を持たないことがあります。線が公図上の筆界に沿って描かれていても、地籍測量で得られた座標と厳密に一致するとは限りません。紙図面を拡大したり、画像を地図上に重ねたりしても、元資料以上の位置精度が得られるわけではありません。
地籍調査によって明らかになった筆界と区域図を比較する場合は、区域設定が地番単位なのか、筆の一部を含む設定なのか、道路や水路などの地物を基準としているのかを市町村の農政担当部署に確認します。図上の線だけから区域内外を断定せず、地番照会や計画資料で確認することが安全です。
地籍調査における地目の調査と、農地法上の適法性の確認も別に扱います。現地が資材置場、駐車場、通路、建物敷地などとして使われていても、その利用について農地転用の許可や届出、農用地利用計画の変更が適切に行われているとは限りません。現況を記録することは必要ですが、現況だけを根拠に許認可の有無や区域指定の効力を判断してはいけません。
また、地籍調査は境界紛争を裁判のように最終判断する制度ではありません。関係者の確認が得られない場合や資料が食い違う場合は、調査実施主体の手順に従って扱い、必要に応じて関係部署や専門家へ確認します。記事や説明資料では「地籍調査で境界が必ず確定する」と断定せず、「筆界を確認し、測量する」と表現するのが適切です。
資料1 市町村農業振興地域整備計画と農用地利用計画
最初に確認する資料は、市町村農業振興地域整備計画と、その中の農用地利用計画です。
市町村農業振興地域整備計画には、農業振興の方向、農用地等として利用すべき土地の区域、農業生産基盤の整備、農用地等の保全、農業用施設の整備などに関する事項が定められます。農用地区域と区域内の土地の農業上の用途は、農用地利用計画で確認します。
対象地について確認する際は、農用地区域に入っているかだけでなく、農用地利用計画上の用途、区域設定の単位、現在有効な計画の決定日や変更日も確認します。市町村によって計画書、付図、地番一覧、区域台帳などの構成や名称が異なるため、どの資料が正式な確認資料になるのかを担当部署へ確認してください。
農用地区域には、田や畑に加え、農道、用排水路、ため池、農業用施設用地など、周辺農地の利用を支える土地が含まれることがあります。現地で耕作されていないという理由だけで、農業上の利用と無関係な土地だと判断することはできません。
農業振興地域整備計画は変更されることがあります。過去に取得した計画書や区域図のみで判断せず、照会時点で有効な計画と直近の変更履歴を確認します。対象地が過去に分筆、合筆、換地、地番変更を受けている場合は、旧地番と現地番の対応も併せて確認します。
土地所有者が農用地区域からの除外を申し出たことがあっても、申出だけで区域から外れるわけではありません。農用地区域から除外するには農用地利用計画の変更が必要であり、農地を農地以外に利用する場合は、別途、農地転用に関する手続が必要になることがあります。農用地区域内の農地の転用は原則として認められない扱いですが、法令上の例外があるため、個別案件は市町村や農業委員会などに確認します。([農林水産省][1])
計画資料を確認したら、計画名、対象地区、決定日、変更日、用途区分、照会先、回答日を記録します。担当者の口頭説明だけに頼らず、可能な範囲で回答書、画面出力、照会記録などを残すと、立会い時や地籍調査後の再確認に役立ちます。
資料2 農用地区域図と区域照会資料
二つ目に確認する資料は、農用地区域図と、市町村の区域照会資料です。
農用地区域図は、農用地区域の範囲を図面上で把握するための資料です。「青地図」「青地」などの呼び方が使われることもありますが、色、名称、凡例、縮尺、公開方法は市町村によって異なります。通称や色だけで判断せず、正式な図面名と凡例を確認します。
最も重要なのは、農用地区域図の区域線を筆界として扱わないことです。区域図は農業上の土地利用計画を示す資料であり、土地所有権の範囲や筆界を測量した図面とは限りません。道路、水路、畦畔、公図上の線に沿って見える場合でも、地籍調査で確認する筆界と同じ位置とは限りません。
区域図を使用するときは、作成時点、縮尺、基礎図、座標系、精度に関する注意書きを確認します。紙図面をスキャンした電子データでは、紙の伸縮、画像化、位置合わせによるずれが含まれる場合があります。座標系が不明な区域図を地籍測量成果へ直接重ね、線の一致や不一致だけで区域内外を判定することは避けます。
対象地が区域の内側に十分入っているように見える場合でも、地番単位の照会が可能なら確認しておくと安全です。区域の外縁部、一筆の一部だけが含まれているように見える土地、分筆や換地の履歴がある土地では、図面表示だけで結論を出さず、市町村の農政担当部署へ所在、地番、枝番、字名を示して照会します。
自治体によっては、区域確認書、照会回答書、証明書などを発行する場合があります。一方で、窓口閲覧や口頭回答のみの場合もあります。発行の有無、申請者の範囲、必要書類、回答単位は自治体ごとに異なるため、地籍調査の確認記録として何を残せるかを事前に確認します。
区域図が旧地番で管理されている場合は、現在の登記事項証明書だけでは対応できないことがあります。分筆前の地積測量図、閉鎖登記記録、換地図などを使い、旧地番と現在地番の関係を整理します。似た地番や枝番を取り違えると、別の土地について区域照会を行うおそれがあります。
実務では、農用地区域図は区域の概略と計画上の位置付けを確認する資料とし、筆界は登記所備付け図面、既存測量成果、現地の境界標、関係者の確認などを総合して調査します。区域線と筆界線の役割を分けて扱うことが基本です。
資料3 登記事項証明書と法務局備付け図面
三つ目に確認する資料は、登記事項証明書と、登記所に備え付けられた地図、地図に準ずる図面、地積測量図などです。
登記事項証明書では、土地の所在、地番、地目、地積、所有者などを確認します。地籍調査の通知先や立会関係者を整理する際は、取得時点が古い証明書に頼らず、相続、売買、住所変更などが反映された最新の登記情報を確認します。
登記地積と地籍測量で得られる面積が一致するとは限りません。古い公図などを基礎とする地域では、土地の形状や境界位置、地積が現地と異なる場合があります。地籍調査は、このような一筆ごとの地籍を調査し、地籍図と地籍簿を作成して登記所の地図や登記記録の整備に活用する制度です。([地籍情報システム][2])
地図または地図に準ずる図面では、対象地と周辺地の地番配置、道路、水路、細長い筆、無地番地などの位置関係を確認します。現地で一枚の田畑として耕作されていても、登記上は複数筆に分かれていることがあります。反対に、一筆の中に耕作地、法面、管理用通路など複数の利用状態が含まれる場合もあります。
公図上の細長い土地は、農道、水路、畦畔、旧道、旧水路などの可能性があります。現地で目立たない、または周辺と一体的に使われているという理由だけで、隣接農地の一部と扱ってはいけません。所有者、管理者、地番の有無を関係資料で確認します。
地積測量図がある場合は、作成年月日、作成原因、境界点、辺長、座標、隣接地番を確認します。ただし、図面が存在しても境界標が現存するとは限りません。また、古い図面では現在と測量方式や精度が異なることがあります。図面の数値だけで判断せず、周辺の残存点、既存成果、現地状況との整合を確認します。
分筆、合筆、換地、地番変更の履歴がある土地では、閉鎖登記記録や過去の図面が必要になる場合があります。農用地区域図が旧地番を基礎としているときは、時系列で地番の変遷を整理し、どの範囲が現在の対象地に対応するかを確認します。
登記地目と現況が異なる場合も、直ちに違法または適法と決めつけないことが重要です。地籍調査の地目調査、農地法上の農地判断、農地転用の許認可、登記上の地目変更は関連しますが、同一の手続ではありません。必要に応じて農業委員会、農政担当部署、登記の専門家へ確認します。
資料4 農地台帳と許認可・土地改良関係資料
四つ目に確認する資料は、農地台帳、農地転用関係書類、農用地区域の変更関係書類、土地改良事業関係資料です。
農地台帳は、農業委員会が農地の所在、地目、面積、利用状況、権利関係などを管理するための資料です。公表される項目と、農業委員会の窓口で閲覧できる項目は異なり、閲覧方法や手数料は自治体の取扱いによる場合があります。農地台帳は対象地の農地利用を確認する手掛かりになりますが、登記記録の代わりでも、所有権や筆界を証明する資料でもありません。([map.maff.go.jp][3])
農地台帳に記録された所有者や耕作者の情報は、登記情報や現況と一致しない場合があります。相続、賃貸借、利用権設定、農地中間管理機構の事業などにより関係者が複数になることもあるため、立会関係者を農地台帳だけで決めず、登記記録や権利設定書類と照合します。
対象地について農地転用の許可、届出、協議などが行われている場合は、処分書や受理通知だけでなく、添付図面と対象面積を確認します。一筆全体が対象なのか、一部だけなのか、仮設利用など期間を限定した内容なのかによって、現況との照合方法が変わります。
農用地区域からの除外や用途区分変更に関する履歴がある場合は、申出書だけでなく、最終的な計画変更の内容と効力発生日を確認します。「申請した」「担当者に相談した」という説明だけでは、区域変更が完了したことの確認にはなりません。
農用地区域からの除外は、個人の希望だけで決まるものではありません。農業上の土地利用への影響、代替地、農地の集団性、農業基盤整備や土地改良施設への影響など、法令や運用に基づく要件が確認されます。具体的な要件や受付時期は制度改正や自治体運用の影響を受けるため、最新の案内を担当部署で確認します。
圃場整備や土地改良事業が行われた地域では、換地処分関係資料、従前地図、換地図、確定測量図、農道台帳、用排水路台帳、施設管理図などを確認します。整然とした耕作区画でも、耕作上の区画と登記上の筆界が一致するとは限りません。
畦畔、水路、農道、ため池、管路などが境界付近にある場合は、施設の所有者と管理者を分けて確認します。市町村、土地改良区、農業関係団体、共有者、個人など、所有と管理の主体が異なることがあります。施設の中心線、構造物外側、法肩、法尻のどこが筆界かは、一般論で決めず、既存資料と現地確認に基づいて判断します。
施設用地との境界を農地所有者同士だけで決めると、将来の維持管理や改修に支障が生じる可能性があります。必要に応じて道路、水路、土地改良施設の管理者にも資料確認や立会いを依頼します。
4資料を照合する実務手順
4資料は、個別に確認するだけでなく、一筆ごとに地番、位置、区域指定、利用状況、手続履歴を関連付けて整理します。
最初に登記事項証明書を基準として、所在、地番、地目、地積、所有者を整理します。分筆、合筆、換地、地番変更がある場合は、旧地番から現在地番までの流れを確認します。
次に、登記所備付けの地図、地図に準ずる図面、地積測量図などで周辺筆との位置関係を確認します。道路、水路、畦畔、細長い筆、無地番地など、現地で筆界判断に影響しそうな箇所を抽出します。
その後、市町村農業振興地域整備計画と農用地利用計画を確認し、対象地が農用地区域に含まれるか、計画上の用途は何かを確認します。区域外縁部や地番変更のある土地では、区域図だけでなく地番照会の結果も記録します。
さらに、農地台帳、農地転用関係資料、農用地区域の変更履歴、土地改良関係資料を照合します。登記地目と現況が異なる場合、区域図と筆配置が合わない場合、施設の位置が不明な場合は、その理由につながる過去の手続や工事を探します。
資料は新しいものだけを残すのではなく、作成時期順に並べます。旧地番の区域図と現在地番の登記情報をつなぐには、中間時点の分筆図、換地図、土地改良事業資料などが必要になることがあります。
図面を重ねる場合は、縮尺、座標系、測量精度、基礎図を確認します。座標を持たない公図や区域図を見た目だけで地籍測量成果に合わせると、誤った位置関係を作るおそれがあります。概略把握に使う資料と、筆界の検討に使う資料を明確に分けます。
照合結果は対象地ごとの確認記録として残します。資料名、取得先、取得日、作成日、回答者、確認内容、未確認事項を記録すると、立会い当日に新しい情報が出ても再検討しやすくなります。
資料間に不一致がある場合は、一人の担当者だけで結論を出さず、地籍調査担当部署、農政担当部署、農業委員会、道路・水路管理部署、土地改良区などと情報を共有します。制度の所管が異なるため、それぞれの資料が何を証明し、何を証明しないのかを確認することが重要です。
現地立会い前に確認する土地の状況
資料確認後は、現地立会い前に対象地と周辺の状況を確認します。
農地は季節や作付状況で境界の見え方が変わります。作物や雑草が繁茂すると境界標や水路が見えにくくなり、耕起後は杭や石標が土に埋もれることがあります。水田では湛水中に畦畔の形状を確認しにくい場合もあります。現地確認の時期を調整できるなら、農作業や水管理への影響も考慮します。
境界標、杭、鋲、石標などを見つけた場合は、位置、形状、材質、表示、周辺状況を記録し、既存図面と照合します。発見した標識が筆界を示すとは限らず、測量点、施工管理点、耕作上の目印である場合もあります。
畦畔では、現在の中心、肩、裾のどこかを機械的に境界と判断しません。長年の耕作で畦畔が移動したり、盛り直されたりしている可能性があります。関係者の認識だけでなく、過去の図面、境界標、周辺筆との整合を確認します。
用排水路では、開水路か管路か、独立した地番があるか、土地改良施設として管理されているかを確認します。改修で水路の構造や流路が変わっても、筆界が自動的に移動するわけではありません。
農道や進入路も、舗装端や路肩がそのまま筆界とは限りません。公有地、土地改良施設用地、個人所有地、共有地など、法的な位置付けを資料で確認します。
対象地の一部が資材置場、駐車場、建物敷地、通路などとして使われている場合は、農地転用や区域変更の履歴を再確認します。現況利用だけで登記地目や農用地区域の扱いを決めないことが重要です。
写真は、対象地全体、周辺地との関係、境界候補、境界標、水路、農道、畦畔、構造物が分かるように撮影します。撮影日、撮影位置、方向を記録し、必要に応じて図面上の位置と対応付けます。ただし、写真やスマートフォンの位置情報だけで筆界を決定することはできません。
地籍調査の立会い当日に注意するポイント
一筆地調査では、原則として土地所有者などの関係者に現地で土地の範囲を確認してもらい、公図等を基に作成した資料、境界標、占有状況、既存測量成果などを参考に筆界を調査します。制度上は、一定の条件の下で図面等による調査や筆界案のみなし確認が行われる場合もあるため、具体的な進め方は調査実施主体の案内に従います。([地籍情報システム][4])
農地の立会いでは、耕作範囲と筆界を混同しないことが重要です。複数筆を一体的に耕作していて畦畔がなくても、登記上の筆界が存在する場合があります。反対に、一筆の中に作付けや管理の区画線があっても、それが筆界とは限りません。
農用地区域の区域線について質問が出た場合も、その場で筆界として扱いません。区域線は農業上の土地利用計画を示す線であり、筆界とは目的が異なります。区域内外の判断に疑義があれば、農政担当部署へ持ち帰って確認します。
土地所有者から「農振除外済み」「転用許可済み」と説明された場合は、口頭説明だけで処理せず、計画変更の告示や通知、許可書、受理通知、添付図面などで対象範囲を確認します。過去の手続が旧地番で行われている場合は、現在地番との対応も確認します。
水路、農道、ため池などに接する筆界では、施設管理者の確認や立会いが必要になる場合があります。個人間で認識が一致しても、公有地や施設用地との境界を関係のない当事者だけで処理することは避けます。
境界標を見つけても、勝手に移動、抜去、打ち直しをしません。農作業や工事で動いた可能性もあるため、既存図面、周辺点、関係者の説明と照合します。新たに標識を設置する場合は、調査実施主体の指示に従います。
関係者の認識が一致しない場合は、無理に合意を求めず、それぞれの説明と根拠資料を記録します。地籍調査で確認できない筆界の取扱いは、調査実施主体が法令や作業手順に基づいて判断します。
地籍調査後に確認しておきたい事項
一筆地調査と地籍測量が終わると、地籍図と地籍簿が作成され、通常は20日間の閲覧が行われます。土地所有者などは調査結果を確認し、誤りがあると考える場合は所定の期間内に申し出ます。閲覧場所や具体的な手続は、調査実施主体の案内を確認してください。([地籍情報システム][4])
農用地区域内の土地では、地籍図上の筆配置と農用地区域図の関係を改めて確認します。地籍調査によって筆の位置や形状が明確になり、従来の区域図では判断しにくかった箇所が表面化することがあります。
ただし、地籍調査成果が作成されたことにより、農用地区域図や農用地利用計画が自動的に変更されるわけではありません。地番や筆形状の変更を農政担当部署の管理情報へどのように反映するかは、自治体の運用や計画変更の手続によります。
地番の表示、地積、筆形状などが従前と変わった場合は、必要に応じて農地台帳、農用地区域の管理資料、土地改良関係台帳との対応を確認します。地籍調査担当部署と農政担当部署で情報が自動連携されるとは限らないため、事業計画や許認可申請に使う場合は最新情報を照会します。
地積が増減しても、そのことだけで農用地区域から外れたり、農地転用が可能になったりすることはありません。土地利用計画や許認可は、地籍調査とは別の制度に基づいて判断されます。
将来の売買、転用、施設整備を検討する場合は、地籍調査成果が登記へ反映された後の登記事項証明書や地図を取得し、改めて農用地区域の該当状況、農地法上の手続、接道や水路との関係を確認します。調査前の公図や地積だけで計画を進めると、利用可能な範囲を誤るおそれがあります。
農振農用地に関するよくある誤解
農振農用地は、農業振興地域、農用地区域、農地法上の農地、登記地目など似た言葉が並ぶため、誤解が生じやすい分野です。
一つ目の誤解は、農業振興地域に入っている土地はすべて農用地区域だという認識です。農業振興地域の中には、農用地区域とそれ以外の区域があります。対象地の該当状況は、市町村の農用地利用計画や区域照会で確認します。
二つ目の誤解は、登記地目が田または畑なら必ず農用地区域内だという認識です。登記地目と農用地区域は別の制度情報であり、一致しない場合があります。
三つ目の誤解は、現地で耕作されていなければ農地ではないという認識です。休耕、作付準備、管理不足など状況はさまざまで、農地法上の農地該当性は現況や経緯を踏まえて判断されます。所有者だけで決めず、必要に応じて農業委員会へ確認します。
四つ目の誤解は、地籍調査で地目を変更すれば農地転用手続が不要になるという認識です。地籍調査の地目調査と、農地転用の許可や届出は別の手続です。地籍調査の結果だけで非農業的利用が適法になるわけではありません。
五つ目の誤解は、地籍調査で面積が減れば、減った部分が農用地区域から外れるという認識です。農用地区域は農用地利用計画に基づく区域であり、地積の増減だけで自動変更されません。
六つ目の誤解は、区域図の線が土地所有権の境界だという認識です。区域図は農業上の土地利用計画を示す資料で、筆界を測量した図面とは限りません。
七つ目の誤解は、農用地区域からの除外を申し出れば必ず認められるという認識です。除外には法令や運用上の要件があり、計画変更の手続が必要です。個別の可否は市町村の担当部署へ確認します。
八つ目の誤解は、インターネット地図やスマートフォンの位置情報だけで区域線や筆界を正確に確認できるという認識です。公開地図や端末の測位情報は事前確認に役立ちますが、元資料の精度、座標系、端末の測位条件によって誤差が生じます。正式な区域照会や地籍測量の代わりにはなりません。
こうした誤解を避けるには、農用地区域、農地法上の農地、登記地目、現況、筆界を一つにまとめず、それぞれの根拠資料と所管部署を確認することが重要です。
まとめ
地籍調査の対象地が農用地区域に含まれる場合は、筆界や面積だけでなく、農業上の土地利用計画、農地の利用状況、過去の許認可、土地改良施設との関係を確認する必要があります。
中心となる資料は、市町村農業振興地域整備計画と農用地利用計画、農用地区域図と区域照会資料、登記事項証明書と登記所備付け図面、農地台帳と許認可・土地改良関係資料の四つです。
これらは作成目的、精度、作成時期、所管部署が異なります。農用地区域図を筆界図として扱わず、登記地目だけで区域指定を判断せず、地番の履歴や土地改良事業の資料まで含めて照合します。
とくに農用地区域の外縁部、道路や水路に接する土地、圃場整備が行われた地域、複数筆を一体的に耕作している地域では、資料間のずれが表面化しやすくなります。立会い前に地籍調査担当部署、農政担当部署、農業委員会、施設管理者と情報を共有しておくことが大切です。
現地では境界標、畦畔、農道、用排水路、耕作範囲、構造物を記録し、資料上の位置関係と照合します。写真、地図アプリ、スマートフォンの測位情報は記録や情報共有の補助として活用できますが、筆界や農用地区域を確定する資料ではありません。
最終的な区域該当、農地転用、農用地区域の変更、筆界の取扱いは、個別の土地条件と最新の行政資料に基づいて確認する必要があります。地籍調査の前後で資料を更新し、判断根拠を記録として残すことが、手戻りや誤認を減らす基本です。