地籍調査で高低差のある境界を確認する重要性
地籍調査は、主に市町村が主体となり、一筆ごとの土地について所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する事業です。土地所有者などの関係者による確認を得ながら一筆地調査や地籍測量を進め、地籍図と地籍簿を作成します。実際の実施主体や調査方法は地域によって異なるため、届いた案内と担当窓口の説明を確認することが基本です。([地積測量登記所][1])
土地の境界付近に高低差がある場合、平坦な土地よりも現地の位置関係が分かりにくくなります。上段の土地と下段の土地の間に擁壁があると、擁壁天端の上段側、天端の下段側、壁面、壁面下端、基礎付近など、境界に見える場所が複数存在するためです。
法面がある場合も、上段の平坦面から斜面へ変わる法肩、斜面の途中、下段の平坦面へ変わる法尻のうち、どこを筆界が通るのかを見た目だけで決めることはできません。高低差をつくっている地形と登記上の土地の区画は、別の時期や目的で形成されていることがあるからです。
長年土地を使用している所有者でも、擁壁までが自分の土地、斜面は上側の土地に含まれる、水路の中心が境界といった認識を持っていることがあります。しかし、現在の利用範囲や管理範囲が筆界と一致しているとは限りません。
筆界とは、土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線です。所有者間の合意だけで任意に変更できるものではありません。一方、当事者が所有権の及ぶ範囲として認識している所有権界は筆界と一致することが多いものの、一致しない場合もあります。([法務局][2])
擁壁や石積みが建設された時期と、筆界が成立した時期が同じとも限りません。土地の分筆後に擁壁が設置された場合や、既存の石積みを残したまま周囲が造成された場合も考えられます。現在見えている構造物が、筆界を示す目的で設けられたとは限らないのです。
そのため、高低差のある境界を確認するときは、構造物、地形、境界標、図面、過去の工事履歴、所有者等から得られた情報を分けて整理する必要があります。目立つ構造物を境界と決めつけるのではなく、複数の資料と現地状況を照合しながら確認の根拠を積み重ねることが重要です。
高低差のある土地で境界が分かりにくくなる理由
高低差のある土地で境界確認が難しくなる理由の一つは、境界点を直接確認しにくいことです。境界標が擁壁天端付近に設置されていても、舗装、土砂、植栽、落ち葉などに隠れていることがあります。下段側から見上げても、擁壁の上にある標識を確認できない場合があります。
反対に、擁壁の根元や側溝付近に金属製の印や石があっても、それが境界標とは限りません。工事の基準点、構造物の施工位置を示した印、設備管理用の標識などが残っている可能性があります。境界標らしい形をしているという理由だけで判断することは避けます。
二つ目の理由は、擁壁の上端と下端で平面的な位置が異なることです。擁壁には厚みがあり、壁面が垂直とも限りません。勾配をつけて施工されている場合や、古い石積みのように表面が不規則な場合は、上から見た位置と下から見た位置に差が生じます。
擁壁天端を境界と考える人と、壁面下端を境界と考える人が話し合うと、言葉では同じ擁壁沿いを指していても、実際には異なる線を認識していることがあります。高低差が大きいほど、写真や平面図だけではこの違いを把握しにくくなります。
三つ目の理由は、地形や構造物が時間とともに変化することです。盛土の沈下、法面の浸食、樹木の根の成長、地震や豪雨による変状、擁壁の補修などにより、現在の地表面が過去の状態と異なっていることがあります。
境界標が当初の位置から傾いたり、周辺の地面だけが下がったりする場合もあります。境界標が現存している場合でも、見えている標識の上端だけを基準にせず、傾き、周辺の改変、資料上の標識種別などを確認する必要があります。
四つ目の理由は、造成工事や外構工事によって境界付近の見た目が変わることです。既存擁壁の前面への補修材の追加、笠材の交換、フェンス基礎の設置、排水溝の改修などが行われると、どの部分が従前から存在していたのか分かりにくくなります。
高低差がある土地では、地上に見える壁体だけでなく、地中に基礎や底版が設けられていることもあります。ただし、地中構造物が一定方向へ延びているからといって、その先端が筆界になるわけではありません。構造物の施工範囲と筆界は別の情報として扱います。
さらに、上段側と下段側では土地の見え方が異なります。上段側の所有者は擁壁天端やフェンスを日常的な区切りとして認識しやすく、下段側の所有者は壁面や側溝を区切りとして認識しやすいことがあります。双方が自分の敷地側からしか現地を見ていない場合、認識の違いが長期間表面化しないこともあります。
こうした事情が重なるため、高低差のある土地では、一方向から見た現況だけで結論を出さないことが大切です。安全を確保したうえで上段側と下段側の双方から確認し、可能であれば側面方向からも地形と構造物の関係を観察します。
確認ポイント1 擁壁や法面を境界そのものと決めつけない
一つ目の確認ポイントは、擁壁、石積み、法面、フェンスなどを直ちに筆界そのものと考えないことです。高低差のある土地では、これらの構造物や地形が土地の区切りとして目立ちますが、見た目の区切りと筆界が一致しているとは限りません。
擁壁がある場合は、まず構造物のどの部分を見ているのかを明確にします。擁壁天端の上段側端部、下段側端部、壁面、壁面下端、基礎の外側などは、それぞれ異なる位置です。擁壁が境界という表現だけでは、関係者ごとに想定する場所が変わる可能性があります。
擁壁が上段側の土地の内側に設置されている場合、筆界が擁壁天端や壁面から離れた位置にある可能性があります。反対に、擁壁が下段側の土地内に設置されている場合には、壁面より上段側に筆界がある可能性もあります。実際の位置は資料と調査結果によって確認します。
擁壁が土を支えている方向だけで所有関係を判断することも避けます。上段側の土地を支える構造物に見えても、工事の経緯、施工主体、土地所有者間の契約や取り決めによって状況は異なります。擁壁の所有や補修責任については、筆界とは別の確認が必要になることがあります。
古い石積みでは、表面の凹凸や傾斜が大きく、どの位置を線として扱っているのかが曖昧になりやすい点に注意します。石の先端を結んだ線、石積み上端、根元の線では位置が異なります。崩れた部分だけが積み直されている場合、従前の線形を現在の外観から読み取れないこともあります。
法面の場合も同様です。法肩、斜面の途中、法尻のいずれに筆界が存在する場合も考えられますが、地形だけでは判断できません。法面全体が上段側または下段側の土地に含まれる場合もあれば、斜面の途中を筆界が通る場合もあります。
長年の草刈り範囲や管理状況は参考情報になりますが、単独で筆界を決める根拠にはなりません。上段側の所有者が安全管理のため法面全体を除草している場合や、下段側の所有者が自宅に面した範囲を管理している場合もあるためです。
フェンスや塀も、筆界線上に設けられているとは限りません。転落防止、施工スペースの確保、将来の維持管理などを考慮し、所有地の内側へ控えて設置されることがあります。フェンスの中心、基礎の中心、外側面のどこが筆界かを外観だけで決めることはできません。
現地では、構造物を一本の線として扱うのではなく、特徴のある点を分けて記録します。擁壁の始点、終点、折れ点、天端の両端、壁面下端、法肩、法尻、側溝の角などを個別に確認すると、既存資料との照合がしやすくなります。
構造物の新旧も確認します。材料の色、仕上がり、継ぎ目、ひび割れの連続性などから、後から増設または補修された部分が分かることがあります。現在の仕上げ面が従前の壁面より外側へ追加されている場合、見えている面を基準にすると古い図面とのずれが生じます。
重要なのは、擁壁や法面を筆界の手掛かりとして観察しつつ、それ自体を最初から答えにしないことです。構造物と筆界の関係を確認するという順序で調査を進めると、見た目や日常の管理状況に引きずられにくくなります。
確認ポイント2 境界標と既存資料を丁寧に照合する
二つ目の確認ポイントは、現地にある境界標と、登記や測量に関する既存資料を照合することです。高低差のある境界では現況だけで位置を判断しにくいため、資料の作成目的や時期を含めて確認することが特に重要です。
準備したい資料には、登記事項に関する資料、公図や登記所備付地図、地積測量図、過去の境界確認図、土地売買時の図面、造成工事の図面、建築工事の配置図などがあります。すべての土地に同じ資料が残っているわけではないため、入手できる資料を時系列で整理します。
公図や地図は、対象地と隣接地の配置を把握する手掛かりになります。ただし、作成時期や地域によって現地との整合性や精度に差があります。図面上の線を単独で現地へ当てはめるのではなく、境界標、地積測量図、過去の確認記録などと合わせて検討します。
地積測量図がある場合は、作成年月日、縮尺、方位、辺長、座標値、境界標の種類などを確認します。座標が記載されていても、使用された測地系、基準点、測量方法、作成目的が現在の調査と異なる場合があります。数値だけを取り出すのではなく、図面全体の記載を確認することが大切です。
辺長が記載されている場合は、隣接する境界点間の距離と現地の関係を確認できます。ただし、高低差のある土地では、斜面に沿った距離と水平距離を混同しないようにします。巻尺を斜面に沿わせて測った距離は、平面上の距離より長くなる場合があります。
地積は、法令上、水平投影面積によって定められます。そのため、斜面の表面積や斜面に沿った長さを、そのまま登記上の地積や平面図上の辺長と比較することはできません。([e-Gov 法令検索][3])
造成時の平面図や断面図が残っている場合は、擁壁と敷地境界の位置関係を確認する手掛かりになります。特に断面図には、上段と下段の地盤面、擁壁の厚み、基礎の方向、計画上の境界線などが記載されていることがあります。
ただし、工事図面は設計や施工を目的として作成されたものであり、筆界を確定する目的の資料とは限りません。計画図と実際の施工位置が異なる場合もあるため、地籍調査資料や境界確認記録と同じ証明力があると決めつけないようにします。
現地で境界標を見つけた場合は、形状、材質、刻印、矢印の有無、向き、傾き、周辺状況を確認します。コンクリート杭、石杭、金属標、鋲などさまざまな標識がありますが、外見だけで正式な境界標かどうかを判断しないことが重要です。
境界点として扱う位置も標識ごとに異なる可能性があります。杭や鋲の中心を使用する場合もあれば、矢印や刻線が示す位置を使用する場合もあります。杭が傾いている場合は、地表に見える上端と当初設置された点の位置が一致していない可能性もあるため、測量担当者へ確認します。
擁壁天端に設置された金属標の場合は、周辺のコンクリートや笠材が補修されていないかを確認します。笠材の交換などに伴って標識が付け直された可能性や、元の位置を示す別の痕跡が残っている可能性もあります。
境界標が見つからなくても、所有者だけの判断で掘削したり、擁壁や舗装を壊したりしないことが重要です。擁壁天端の内部には鉄筋があり、周囲には排水管、電線、通信線などが設置されている場合もあります。探索が必要なときは、地籍調査の担当者や測量を行う専門家と方法を確認します。
資料同士の内容が異なる場合もあります。古い図面と新しい図面で辺長が異なる、境界標の種類が変わっている、擁壁の記載位置が現況と合わないといった場合でも、一方を直ちに誤りと判断しません。
作成年月日、作成目的、測量方法、座標の基準、現地改変の履歴を整理し、不一致が生じた理由を検討します。高低差のある土地では、擁壁の改修や盛土によって現況が変化している可能性があるため、資料の時系列を意識することが大切です。
確認ポイント3 平面位置と高さ情報を分けて記録する
三つ目の確認ポイントは、境界の平面位置と、土地の高さや高低差を分けて記録することです。高低差のある土地では、擁壁の高さや斜面の長さに注意が向きやすくなります。しかし、筆界を確認するには、平面図上でどこを通る線なのかを明確にする必要があります。
擁壁の高さが二メートル程度あることが分かっても、筆界が擁壁天端のどちら側を通るのかは判断できません。反対に、境界標の平面位置が確認できても、上段側と下段側の地盤面との関係を記録していなければ、後から現場の立体的な状況を説明しにくくなります。
現地記録では、境界点、擁壁の始点、終点、折れ点などを平面上の位置として整理し、上段地盤、擁壁天端、下段地盤、側溝天端などを高さの関係として整理します。平面位置と高さを分けたうえで、写真や簡単な断面メモによって関連付けます。
擁壁が傾斜している場合は、上端と下端の水平位置が異なります。上段側から見た境界点と擁壁天端との関係だけでなく、下段側から見た壁面下端との関係も残すと、構造物の断面を理解しやすくなります。
法面では、斜面に沿った距離と水平面に投影した距離を区別します。巻尺を斜面に沿わせて測った場合は、その測定方法を明記します。どの方法で取得した数値なのかを記録しなければ、既存図面の辺長と比較した際に誤解が生じます。
写真も、平面関係と高さ関係の両方が分かるように撮影します。境界標の接写だけでは、擁壁や法面との位置関係が分かりません。反対に、遠景写真だけでは標識の種類、刻印、傾き、周囲の補修状況を確認できません。
現場全体が分かる遠景、境界点と構造物の関係が分かる中景、標識の状態が分かる近景を組み合わせます。安全に撮影できる範囲で、上段側、下段側、側面方向から記録すると、後から断面関係を説明しやすくなります。
写真を撮る際は、どちらの土地側から、どの方向へ撮影したかを記録します。高低差のある境界では似たような擁壁写真が複数枚になりやすく、撮影位置や方向が分からないと資料として利用しにくくなります。
建物の角、道路、電柱、側溝、階段、擁壁端部など、簡単に移動しない対象を一緒に写すと、撮影場所を特定しやすくなります。ただし、それらの構造物が筆界を示すと断定するのではなく、位置を説明するための補助物として扱います。
寸法を記録する場合は、起点と終点を具体的に記載します。境界から擁壁までとだけ書くのではなく、境界標の矢印先端から擁壁天端下段側端部までというように、どの点間を測ったのかを明確にします。
高さについても、擁壁の高さとだけ記載するのではなく、どの地盤面からどの位置までを測ったのかを残します。下段側の地盤が傾斜している場合、測定位置によって高さが変わるためです。
地籍調査の現地確認では、土地所有者がすべての高さを詳細に測量する必要があるわけではありません。境界の位置を説明するうえで必要な高低差や構造物との関係を補助的に残し、正式な測量や判断は実施主体や測量担当者の説明に従います。
重要なのは、平面位置と高さを一つの曖昧な情報として扱わないことです。地図上の線としての筆界と、現地の立体的な形状を分けて記録したうえで両者を関連付けることが、高低差のある土地の状況を正しく共有するポイントです。
確認ポイント4 排水・安全・維持管理の問題を切り分ける
四つ目の確認ポイントは、筆界の確認と、排水、安全、擁壁の維持管理に関する問題を切り分けることです。高低差のある土地では、境界の話し合いを始めると、擁壁の補修、水の流入、落ち葉、草刈りなどの問題も同時に持ち出されやすくなります。
しかし、地籍調査で筆界を確認することと、擁壁の所有者や補修責任を決めることは同じ手続きではありません。筆界が確認されても、構造物の設置経緯、契約内容、共同利用の有無などによって、所有や管理について別の確認が必要になることがあります。
排水施設についても同様です。擁壁の水抜き穴、上段側の側溝、下段側の集水桝、法面の排水管などがある場合、施設の位置と利用状況は確認しますが、それだけで筆界を判断することはできません。
上段側の雨水を処理する施設が下段側に設置されている場合や、周辺の複数の土地から流れてくる水をまとめて処理している場合もあります。水の流れる方向だけで土地や施設の所有関係を決めつけないようにします。
一方、排水の不具合は現場の安全に関係します。擁壁の水抜き穴が詰まっている、法面から水が集中して流れている、側溝が土砂で閉塞しているといった状況では、境界確認とは別に所有者や管理者へ連絡し、必要な対応を検討します。
現地立会いでは、転落や滑落の危険にも注意します。擁壁天端に柵がない、法面が急勾配である、足元が濡れている、落ち葉や苔が堆積しているといった場所では、境界標へ無理に近づかないことが大切です。
降雨中や雨上がりは、法面表面の土が緩み、擁壁周辺が滑りやすくなる可能性があります。水が集中している場所や、擁壁に大きなひび割れ、傾斜、はらみ出しなどが見られる場所には不用意に立ち入らないようにします。
境界確認のためであっても、擁壁をよじ登る、フェンスを越える、急斜面を直線的に移動するといった行動は避けます。安全に確認できない場合は、遠景写真や既存資料を利用して状況を共有し、測量担当者と別の確認方法を検討します。
擁壁のひび割れや変形が見つかった場合も、地籍調査の場だけで構造物の安全性を判断しないようにします。境界調査と構造物の安全点検は目的が異なります。安全上の懸念がある場合は、所有者や管理者に伝え、必要に応じて構造物に詳しい専門家へ相談します。
隣接所有者と話す際も、筆界、擁壁の所有、排水、越境、維持管理を分けて整理することが有効です。筆界の位置には異論がないが排水方法については別途協議が必要というように、合意できた事項と未解決事項を明確にします。
すべての問題を一度の地籍調査立会いで解決しようとすると、話し合いが複雑になります。まず調査対象となる筆界の確認に集中し、構造物や排水に関する問題は別の記録として残すことで、論点を整理しやすくなります。
地籍調査の立会い前に準備しておきたい資料
地籍調査の通知が届いたら、最初に対象地番、確認方法、日時、集合場所、対象となる境界区間を確認します。地籍調査では現地立会いのほか、条件に応じて図面等を用いた確認方法が採用される場合もあるため、実施主体から届いた案内を優先します。
複数の土地を所有している場合は、どの筆が調査対象なのかを取り違えないようにします。共有名義である場合や、相続後の登記手続が完了していない場合は、誰が確認に参加するのか、代理人による対応が可能かなどを早めに担当窓口へ確認します。
登記事項に関する資料があれば、所有者、所在、地番、地目、地積を確認します。現在の利用状況と登記上の地目が異なって見える場合でも、所有者だけで判断せず、調査担当者の説明を確認します。
公図や地図、地積測量図、過去の境界確認図が手元にある場合は、対象地と隣接地の地番を確認します。図面に記載された擁壁、石積み、側溝、建物などが現在も存在するかを見ておくと、現地での照合がしやすくなります。
土地の購入時に受け取った図面や書類も確認します。境界確認に関する図面、売買対象範囲を示す図面、測量結果、現地写真、重要事項説明に添付された資料などが含まれている可能性があります。
造成や建築を行った土地では、工事時の平面図、断面図、外構図、擁壁の配置図などを探します。古い資料でも、高低差が生じた時期や構造物の新旧を判断する手掛かりになります。
過去の写真も参考になります。擁壁の補修前、建物の建築前、法面の植栽前などの写真があれば、現在見えなくなっている地形や標識の状況を確認できる場合があります。
写真については、撮影年月日、撮影場所、撮影方向が分かるかを確認します。日時や場所が不明な写真も参考資料にはなりますが、特定の時点の状況を証明する資料としては慎重に扱います。
相続した土地などで経緯が分からない場合は、家族や以前の管理者から話を聞いておきます。過去に境界確認をしたか、擁壁工事を行ったか、境界標を見た記憶があるかなどを整理します。
ただし、聞き取った内容は客観的な資料と区別します。以前の所有者から聞いた話、過去の写真から確認できる事実、図面に記載されている内容を分けてメモすると、立会い時に説明しやすくなります。
事前に現地を確認できる場合は、安全な場所から擁壁、法面、境界標、排水施設、植生の状態を見ます。境界標が草木で隠れているように見えても、隣地へ無断で立ち入ったり、構造物や標識を動かしたりしないようにします。
草刈りや枝払いが必要と思われる場合は、地籍調査の担当者や関係する土地所有者と方法を調整します。急な法面や擁壁周辺での作業は危険を伴うため、立会い直前に無理な作業を行うことは避けます。
集めた資料は、作成年月日と作成目的が分かるように整理します。新しい資料が常に優先されるとは限らず、古い資料にしか従前の地形や構造物が記録されていない場合もあります。時系列に並べておくと、土地の変化を把握しやすくなります。
現地立会い当日の確認手順
立会い当日は、最初に対象となる土地と境界区間を確認します。土地全体を確認するのか、高低差のある一辺だけを確認するのか、どの境界点からどの境界点までが対象なのかを把握します。
次に、実施主体や測量担当者から示される図面と説明を確認します。図面上の点が現地のどこに対応するのか、既存の境界標があるのか、どのような資料を参考に調査しているのかを確認します。
現地へ移動する前に、安全な経路を確認します。上段側と下段側を移動する必要がある場合は、道路や階段を利用して回り込めるかを確認し、擁壁や急斜面を直接越えないようにします。
境界標が見つかった場合は、標識の種類と状態を確認します。傾き、割れ、浮き、埋没、周辺の補修跡などがないかを見ます。疑問がある場合は勝手に触ったり動かしたりせず、担当者へ伝えます。
境界標と擁壁や法面との関係も確認します。境界標が擁壁天端の上段側にあるのか、下段側にあるのか、壁面の延長上にあるのか、法肩または法尻に近いのかを具体的に見ます。
擁壁沿いや斜面の端といった曖昧な表現だけで確認を終えず、関係者全員が同じ位置を見ていることを確かめます。高低差がある場所では、上から指した位置と下から指した位置が異なることがあるため、必要に応じて複数方向から確認します。
境界標が見つからない場合は、擁壁の角や側溝の端を直ちに境界点の代わりとして扱わないようにします。資料上の位置と現況を比較し、追加の資料確認や測量が必要かを担当者と相談します。
隣接所有者から過去の経緯について説明があった場合は、その内容が図面や書面に基づくものか、記憶や管理状況に基づくものかを分けて確認します。長年使用しているという事情だけで筆界の位置が決まるわけではありません。
現地で位置を確認した後は、確認書などへの署名、記名その他の手続を求められる場合があります。書類に記載された地番、対象境界、添付図面などを確認し、理解できない点があれば説明を求めます。
判断できない事項が残っている場合は、その場で無理に同意しないことも重要です。どの点が確認できておらず、どの資料を追加で調べる必要があるのかを明確にし、担当者に伝えます。
当日の記録には、確認できた事項だけでなく、確認できなかった事項も残します。植生により擁壁下端が見えなかった、境界標が傾いていた、古い図面を追加確認する予定であるなど、後から状況を追える形で記録します。
隣接所有者と認識が異なる場合の進め方
高低差のある土地では、隣接所有者と境界の認識が一致しないことがあります。その場合は、双方の主張を抽象的に比べるのではなく、どの位置について認識が異なるのかを具体的に整理します。
一方は擁壁天端の下段側端部を境界と考え、もう一方は壁面下端を境界と考えていることがあります。この場合、双方が擁壁が境界と話していても、実際に主張している線は一致していません。
まず、擁壁天端のどちら側か、壁面か、壁面下端か、法肩か、法尻か、境界標の位置かというように、争点となっている場所を明確にします。そのうえで、それぞれが何を根拠としているのかを確認します。
過去の測量図や境界確認書に基づく主張なのか、以前の所有者から聞いた話なのか、日常的な管理範囲に基づく認識なのかによって、情報の性質は異なります。確認できた事実と、記憶や推測による情報を分けて扱います。
認識が異なる場合でも、双方が納得しやすい中間位置をそのまま筆界として選べるわけではありません。筆界は所有者間の合意だけで任意に変更できず、土地の形状や権利関係を変更する場合には、契約や分筆など別の手続が問題になります。([法務局][2])
土地の使用範囲について合意することと、筆界を確認することは分けて考える必要があります。擁壁の使用や維持管理について取り決めが存在しても、その取り決めが直ちに筆界の位置を示すとは限りません。
資料が不足している場合は、周辺の境界点を含めて確認する方法もあります。対象となる一辺だけでは位置を判断できなくても、隣接する境界点、道路、水路、土地全体の形状との関係から検討できる場合があります。
古い境界標が失われている場合には、既存図面、周囲の境界点、過去の測量成果などを基に位置を検討します。復元や追加測量が必要となる場合は、地籍調査の担当者や測量を行う専門家と相談します。
資料や調査を尽くしても所有者等による筆界の確認が得られない場合には、筆界未定として扱われることがあります。ただし、現在の地籍調査には、客観的資料を用いた筆界案の提示や、一定の要件を満たす場合の確認方法もあります。認識が一致しないだけで自動的に筆界未定になると決めつけず、具体的な扱いを実施主体へ確認します。([地積測量登記所][4])
地籍調査の中で筆界を確認できず、当事者間の争いが続く場合は、法務局の筆界特定制度や専門家への相談を検討することがあります。所有権の範囲、越境、損害、擁壁の補修費用などを争っている場合には、筆界の問題とは別の法的検討が必要になることもあります。
話し合いでは感情的な表現を避け、確認できた事実と未確認情報を分けます。擁壁は自分のものだと断定するのではなく、この図面では境界線が擁壁天端から一定距離の位置に記載されているというように、根拠を具体的に示します。
合意できた事項と合意できない事項を分けて記録することも重要です。一方の境界点は確認できたが、別の点は資料不足で未確認という場合、すべてを一括して扱うのではなく、点ごとの確認状況を整理します。
地籍調査結果の閲覧時に確認すること
地籍調査では、現地調査や測量の後に地籍図案と地籍簿案が作成され、土地所有者などが内容を確認する閲覧手続が行われます。通常の閲覧期間は二十日間と案内されていますが、日時、会場、確認方法は実施主体から届く通知を確認します。([地積測量登記所][5])
現地立会いや図面による確認が終わったからといって、すべての確認が完了したとは限りません。閲覧時には、自分の土地の地番、地目、地積、形状、隣接地との接続関係を確認します。
高低差のある境界では、現地で確認した境界点や折れ点が図面に反映されているかを重点的に見ます。擁壁端部や法面付近で境界線が折れている場合は、点の順番、位置、接続関係を確認します。
現地写真や立会い時のメモを利用できる場合は、図面と照合します。地籍図は土地の平面的な位置関係を示すため、図面だけでは境界点が擁壁天端の上段側にあるのか、下段側にあるのかを思い出しにくい場合があります。
地積が従前の登記記録と異なる場合は、増減の数値だけを見るのではなく、境界位置や土地形状の確認結果と合わせて見ます。斜面に沿った表面の広さと、水平投影面積による地積を混同しないことも大切です。
疑問がある場合は、面積が違うという表現だけでなく、具体的な地番と位置を示して説明を求めます。北側擁壁の東端付近にある折れ点が、現地で確認した位置と異なるように見えるというように伝えると、確認対象を共有しやすくなります。
閲覧時に誤りと思われる事項を見つけた場合は、案内された期間内に定められた方法で申し出ます。必要な資料や手続は地域によって異なるため、通知書を確認し、不明点は実施主体へ問い合わせます。
高低差のある境界では、図面を一度見ただけでは立体的な状況を再現できないことがあります。立会い時の写真、撮影方向、寸法、現地メモを整理しておくことが、閲覧時の確認にも役立ちます。
調査後に境界情報を残す方法
地籍調査が完了した後も、境界に関する資料を継続的に管理することが重要です。擁壁補修、外構工事、舗装工事、排水施設の改修、建物の解体などにより、境界標が隠れたり損傷したりする可能性があります。
調査時に受け取った資料や閲覧時に確認した内容は、土地の地番ごとに整理して保管します。図面、写真、確認記録、担当窓口との連絡内容などを一か所にまとめると、将来の土地取引や相続時にも確認しやすくなります。
写真には、撮影日、撮影場所、撮影方向を付けます。境界標だけでなく、擁壁端部、道路、側溝、建物角などとの位置関係が分かる写真を残します。
高低差のある場所では、上段側と下段側の双方から撮影した写真が役立ちます。上段側からは境界標と擁壁天端の関係、下段側からは壁面や法尻との関係を確認できます。
境界標周辺の植生が増えた場合は、安全な範囲で状態を確認します。ただし、標識を見やすくする目的であっても、勝手に掘削したり、標識を引き抜いたり、傾きを直したりしないようにします。
擁壁や外構の工事を予定している場合は、着工前に境界標の位置を確認し、施工者へ伝えます。工事範囲が境界付近に及ぶ場合には、必要に応じて土地家屋調査士などの専門家へ相談し、工事前の測量や写真記録を検討します。
工事後にも同じ位置を記録しておけば、境界標の移動や埋没がないかを比較できます。擁壁の笠材やフェンス基礎を交換する工事では、境界標が構造物に近接または取り込まれている可能性があるため、特に注意が必要です。
土地を売却または相続する場合には、境界に関する資料の保管場所も引き継ぎます。高低差のある土地では、現地を一度見ただけで筆界と構造物の関係を理解することが難しいため、写真と図面を組み合わせて説明できる状態にしておくことが大切です。
スマートフォンを使った現場記録の考え方
高低差のある土地では、境界標、擁壁、法面、排水施設などの位置関係を写真だけで正確に整理することが難しい場合があります。同じような擁壁の写真が複数あると、どの場所で撮影したものか分からなくなることもあります。
スマートフォンを利用し、現場写真に撮影日時、撮影場所、撮影方向、対象物の名称を関連付けて記録すると、資料を整理しやすくなります。境界標だけでなく、擁壁の始点、終点、折れ点、法肩、法尻、側溝角なども撮影しておくと、現場全体の関係を把握しやすくなります。
写真を撮影する際は、自動的に付与される位置情報だけに頼らず、どちら側からどの方向へ撮影したかを文字でも記録します。上段側から下段方向を撮影したのか、下段側から見上げたのかが分かるようにすると、後から確認しやすくなります。
一般的なスマートフォンの位置情報は、端末、衛星配置、通信状況、周辺環境などによって誤差が変わります。外付けのGNSS受信機や補正情報を利用する場合でも、測位状態、座標系、観測方法、再現性を確認せずに取得座標だけで筆界を判断することはできません。
GNSSによる測位は、上空を遮る建物や周辺の構造物などによって信号の反射や回折の影響を受け、精度が低下する場合があります。擁壁際、建物際、樹木の近くなどでは、画面上に位置が表示されていても、その値を境界点の正式な座標として扱わないことが重要です。([国土地理院][6])
上段側では安定して測位できても、下段側の擁壁際では値が安定しない場合があります。その場合は、安全で状況を記録しやすい場所から写真を撮り、対象物までの方向や寸法を補助的に残します。所有者の判断だけで新しい境界点や測量基準点を設置しないようにします。
スマートフォンで作成した記録には、計測日、記録者、対象地番、点や対象物の名称、現地状況を付けます。点1という番号だけでは時間がたつと意味が分からなくなるため、北西側境界標、擁壁東端、下段側側溝角など、場所を識別できる名称を使います。
位置情報を含む写真や地図を第三者へ共有する場合は、対象地以外の住宅、人物、車両番号などが写り込んでいないかも確認します。隣接地の内部を無断で撮影したり、個人情報を不必要に共有したりしないよう配慮が必要です。
スマートフォンによる記録は、立会い前の現況整理、当日の説明補助、調査後の資料管理に活用できます。ただし、地籍調査では既存資料、境界標、所有者等による確認、正式な測量結果などを総合して扱います。スマートフォンの写真や位置情報は、筆界を独自に確定する資料ではなく、現地状況を共有するための補助記録として使用します。
まとめ
地籍調査で境界に高低差がある土地を確認するときは、擁壁や法面の見た目だけで筆界を判断しないことが重要です。高低差のある場所には、擁壁天端、壁面、壁面下端、法肩、法尻、側溝など、境界に見える線が複数存在します。
一つ目の確認ポイントは、擁壁や法面を筆界そのものと決めつけず、構造物の各部と筆界の関係を確認することです。構造物が支えている土地や、日常的に管理している人だけを根拠として筆界を判断しないようにします。
二つ目は、境界標と公図、地積測量図、境界確認図、造成図面などを丁寧に照合することです。境界標が見つかった場合も、傾き、刻印、矢印、補修跡を確認し、資料上の点と対応しているかを担当者へ確認します。
三つ目は、平面的な境界位置と、高低差や擁壁の高さを分けて記録することです。上段側と下段側の双方から写真を撮り、どの点間を測ったのか、斜距離か水平距離かが分かるように記録します。
四つ目は、筆界の確認と、擁壁の維持管理、排水、安全、越境などの問題を切り分けることです。すべてを一度の立会いで解決しようとせず、確認できた事項と別途協議が必要な事項を分けます。
立会い前には対象地番と既存資料を整理し、現地の安全状況を確認します。立会い当日は、関係者全員が同じ点を見ていることを確かめ、擁壁沿いといった曖昧な表現だけで確認を終えないようにします。
隣接所有者と認識が異なる場合は、擁壁のどの部分を主張しているのか、根拠となる資料があるのかを整理します。双方が都合のよい中間位置を選ぶのではなく、既存資料や調査結果を基に本来の筆界を確認するという目的を保つことが大切です。
調査後も、図面、写真、撮影方向、立会い記録などを保管し、工事や相続の際に引き継げる状態にしておきます。スマートフォンの写真や位置情報は整理に役立ちますが、その数値だけで筆界を判断せず、補助記録として利用します。
地籍調査の方法や必要書類は実施主体、地域、土地の状況によって異なります。筆界、所有権、越境、擁壁の所有や補修責任などに疑問が残る場合は、市町村等の地籍調査担当窓口、法務局、土地家屋調査士、弁護士など、問題の内容に応じた窓口や専門家へ確認してください。