地籍調査の対象地の隣が給食センターである場合は、一般住宅や空き地に接する土地とは別の確認事項が生じることがあります。給食センターは公共施設として設置されていても、土地の所有名義、施設の所管部署、財産管理部署、外構の管理部署、日常業務の運営者が同じとは限りません。現地の責任者に連絡しただけでは、土地の筆界について回答できる担当者へ情報が届かない可能性があります。
敷地周辺には、フェンス、門扉、擁壁、側溝、排水設備、植栽帯、搬入路、配送車両の通路などが設けられていることがあります。これらは利用範囲を把握する手掛かりになりますが、構造物の位置と登記上の土地を区画する筆界が一致するとは限りません。法務省も、筆界は土地が登記された際に区画するものとして定められた線であり、所有者間の合意だけで変更できるものではないと説明しています。([法務局][1])
地籍調査は、主に市町村が主体となり、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量して、地籍図と地籍簿を作成する事業です。従来は現地立会いが中心でしたが、現在は資料や画像を用いる図面等調査が行われる場合もあり、2024年には一定の要件の下で無反応の所有者等について筆界案の確認があったものとみなす制度も整備されました。実施方法は地域や調査方式によって異なるため、通知書と実施主体の案内を優先する必要があります。([地籍ポータル][2])
この記事では、主に自治体が設置する学校給食共同調理場を想定し、隣地が給食センターであるときに立会いまたは図面確認の前に整理したい五つのポイントを解説します。個別の筆界や代理権、越境、取得時効などの判断は、地籍調査の実施主体、法務局、土地家屋調査士、弁護士などへ確認してください。
地籍調査で隣地が給食センターの場合に注意すべき理由
地籍調査では、一筆ごとの土地について、所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量します。その成果は地籍図と地籍簿にまとめられ、認証などの手続を経て登記所へ送付されます。([国土交通省][3])
ここで扱う境界は、単なる利用範囲の境ではなく、主として筆界です。草刈りをしている範囲、舗装の範囲、塀で囲われた範囲などは参考になりますが、それだけで筆界が決まるわけではありません。また、筆界と所有権の及ぶ範囲を示す所有権界は一致しないことがあります。([法務局][1])
給食センターで追加確認が必要になりやすいのは、土地と施設の管理関係が分かれている可能性があるためです。土地は自治体名義でも、財産管理、施設所管、外構工事、運営委託、安全管理などの担当が分かれていることがあります。現地の運営責任者が、土地所有者を代表して筆界を確認する権限まで持つとは限りません。
施設名だけを見て連絡相手を決めると、対象地番の所管部署や資料保管部署へ情報が届かず、当日に回答を持ち帰ることがあります。ただし、誰の出席や署名が必要かは全国一律ではありません。自治体内部の決裁方法、委任状の要否、図面等調査の方法などは、地籍調査の実施主体へ確認してください。
給食センターでは、食材の搬入、調理、配送、容器の回収、洗浄などが時間帯ごとに行われます。境界点が搬入口や車路に近い場合は、車両動線と重ならない時間を選ぶ必要があります。また、学校給食の衛生管理では調理場への不要な立入りを避け、関係者以外が立ち入る場合の健康状態等を確認する考え方が示されています。境界確認で立ち入れる範囲も、施設側の安全・衛生ルールに従います。([文部科学省][4])
敷地周辺の排水施設にも注意が必要です。施設の排水を受ける側溝に見えても、道路敷、水路敷、別筆の土地、隣接地内の施設など、権利関係は外観だけでは判断できません。擁壁も、見えている壁面、天端、下端、基礎の位置と筆界が一致するとは限りません。
このため、立会前には、対象地番、所有名義、確認権限、既存資料、構造物の履歴、施設の運用、安全条件を整理します。事前に疑問点を分けておけば、当日は確認済みの点と追加調査が必要な点を区別しやすくなります。
確認1 土地所有者と立会権限を確認する
最初に確認するのは、給食センターが使用する土地のうち、調査対象地に直接接する筆の所有名義と、筆界確認に対応する部署・担当者です。施設名に自治体名が入っていても、外観上の敷地全体が単一の筆や単一名義とは限りません。
給食センターの敷地は、複数筆で構成されていることがあります。進入路、排水路、駐車場、緑地帯などが別筆であったり、道路・水路などの公共用地が間に入ったりする場合もあります。まず、立会通知、調査図、登記事項証明書などで、調査対象の境界線に接する地番を確認します。
自治体所有地では、普通財産・行政財産などの区分や、財産管理部署、施設所管部署、工事担当部署の役割が分かれていることがあります。境界資料を保管する部署と、現況を説明できる部署が異なることもあるため、実施主体を通じて連絡先を整理すると安全です。
給食センターの調理・配送業務が民間事業者へ委託されている場合、現地責任者は入退場管理や安全誘導には対応できても、自治体所有地の筆界を確認する権限を持たないことがあります。施設へ入るための窓口と、土地所有者側の確認窓口を分けて考えます。
代理人が対応する場合は、委任の範囲を確認します。国の地籍調査関連資料でも、所有者本人以外が境界確認へ対応する場合に、委任状等で権限を確認する考え方が示されています。ただし、必要書類や記載事項は実施主体の運用に従います。([地籍ポータル][5])
立会前の連絡では、日時だけでなく、対象地番、確認する境界点、立入りを希望する場所、提示してほしい資料、撮影や測量の予定を具体的に伝えます。「給食センターとの境界を確認する」という説明だけでは、担当部署を判断しにくいためです。
当日の担当者が最終決裁者でない場合は、現地で確認できる範囲と持ち帰る事項を決めます。現況説明までか、筆界案への意見表明までか、庁内確認後に書面で回答するのかを明確にします。署名や押印の要否・意味も、使用する様式と実施主体の説明に従ってください。
記録しておきたいのは、担当者の氏名、所属、連絡先、所有者との関係、確認できる範囲、追加決裁が必要な事項です。肩書だけで権限を推測しないことが重要です。
確認2 公図以外の境界資料を集める
地籍調査の前には、公図だけでなく、入手できる境界関係資料を幅広く確認します。国の地籍調査案内も、登記所の公図等を基に作成した資料を参考に土地の範囲を確認すると説明していますが、公図には作成年代や地域によって精度上の限界があります。([地籍ポータル][6])
候補となる資料は、地積測量図、過去の境界確認書・確認図、土地取得時の測量図、施設建設時の配置図、造成図、外構工事図、道路・水路との境界資料、境界標の写真、座標値を含む測量成果などです。すべてが同じ証明力を持つわけではないため、作成目的、作成年月日、作成者、縮尺、測量基準、確定図か計画図かを確認します。
給食センターの配置図に敷地境界線が描かれていても、正式に確認された筆界とは限りません。建築計画上の参考線、施工管理線、外構の設置基準線である可能性があります。図面名だけで判断せず、元となった測量成果や境界確認資料の有無を確認します。
完成後にフェンス更新、駐車場拡張、搬入口改修、排水設備更新などが行われていれば、現在の外構と建設当初の外構が異なることがあります。古い図面と現況が違うときは、直ちにどちらかを誤りとせず、工事発注資料、完成図、工事写真、修繕記録を調べます。
現地に境界標らしきものがある場合は、種類と位置を資料に対応させます。コンクリート杭、石杭、金属標、金属鋲、刻印、プレートなどがありますが、測量基準点や工事用の標識も似た外観を持つことがあります。標識があることだけで筆界点と断定しません。
資料の点番号、点間距離、方向、周辺構造物との離れを照合し、その標識がどの点に対応するかを確認します。古い標識と新しい標識が近接している場合は、復元や再設置の記録も確認します。
境界標が見つからない場合も、直ちに消失と断定しないようにします。舗装、盛土、土砂、植栽、フェンス基礎などで見えなくなっている可能性があります。ただし、無断で舗装をはがしたり、深く掘削したりしてはいけません。埋設設備の有無と作業許可を確認します。
資料同士が一致しない場合は、不一致の内容を分けます。境界点の位置、境界線の方向、接続する地番、構造物の位置、作成時期のどこが違うのかを図面へ記載すると、現地で論点を共有しやすくなります。
資料の数よりも、資料の由来と現地復元性が重要です。公図、地積測量図、工事図、写真、聞き取りを同じ重みで扱わず、実施主体や測量担当者に評価を確認します。
確認3 フェンスや側溝を筆界と決めつけない
給食センターの敷地がフェンスで囲われていると、フェンスの線が境界に見えます。しかし、管理上の囲いと筆界は一致する場合も一致しない場合もあります。筆界は所有者同士の都合だけで移動できる線ではないため、構造物の位置と分けて確認します。([法務局][1])
フェンスは、基礎施工、保守点検、隣地への配慮、安全上の余裕などから、筆界より施設側へ控えて設置されることがあります。この場合、フェンスの外側に施設側の土地が残る可能性があります。反対に、基礎や支柱が筆界を越えている疑いがあっても、そのことだけで筆界が変わるわけではありません。
フェンス外側の草刈りを誰が行ってきたかは経緯を知る手掛かりになりますが、管理実態だけで筆界や所有権の範囲を断定できません。筆界の確認と、越境、使用関係、維持管理の問題を分けます。
側溝も外観だけでは判断できません。給食センターの排水を受けていても、道路施設、水路敷、別筆、隣接地内の施設であることがあります。境界が側溝の施設側端、中心、隣地側端のどこかは、地域の慣習や見た目だけで決めず、資料、境界標、管理台帳などを確認します。
擁壁では、天端、壁面、下端、基礎のどこを指しているかを明確にします。見えている壁面と地中の基礎範囲は異なることがあり、擁壁の所有・管理と筆界も必ず一致するとは限りません。
植栽帯、縁石、舗装の色や材料の切替えも、工事範囲や管理区分を示すだけの場合があります。枝や根の越境と土地の筆界は別問題です。
構造物を確認するときは、設置・改修時期にも注目します。舗装の継ぎ目、旧支柱穴、撤去基礎、擁壁の増し打ち、側溝の接続などは経緯を調べる手掛かりですが、単独で筆界を証明するものではありません。
立会時は「フェンスのところ」「側溝のあたり」という表現を避けます。図面上の境界点番号と現地の位置を対応させ、支柱の中心・外側、側溝の端部など、どの位置を指すのかを具体化します。
構造物は重要な現況資料ですが、筆界そのものとは限りません。既存資料、境界標、測量結果、土地利用の経緯、関係者の説明を総合し、実施主体の調査手続に沿って確認します。
確認4 給食センターの稼働時間と安全条件を確認する
境界立会では、施設の稼働時間と安全条件を事前に確認します。食材搬入、調理、積込み、配送、回収、洗浄、清掃などの時間は施設ごとに異なります。境界点が搬入口や車路に近ければ、車両が集中する時間帯を避けます。
正門、搬入口、配送車の待機場所、廃棄物保管場所など、境界点の位置によって安全な時間帯は変わります。図面を広げたり境界標を探したりする間は同じ場所へ滞在するため、短時間でも作業空間の確保が必要です。
休業日が常に最適とは限りません。警備や解錠の体制、設備点検、清掃、修繕工事の予定が異なることがあります。施設担当者が同行でき、対象場所の安全を確保できる日時を調整します。
学校給食共同調理場では、衛生管理のため区域や動線が管理されています。調理に関係のない者の調理室への立入りを避け、関係者以外が入る場合は健康状態等を点検する考え方が示されています。境界点が建物裏側や設備ヤードに近い場合でも、立入り方法は施設の指示に従います。([文部科学省][4])
入場が必要なら、同行者、服装、履物、手洗い、持込品、立入可能区域を確認します。測量器具、三脚、図面、かばんを持ち込める範囲も確認し、施設外から確認できる点は外側から行います。
写真撮影についても事前に許可を得ます。境界標や周辺構造物の写真は記録に役立ちますが、防犯、個人情報、車両情報、衛生管理などの理由で撮影範囲が制限されることがあります。境界標の近接撮影、全景、撮影方向、写り込みの条件を確認します。
撮影できない場合に備え、点番号入り図面、現地スケッチ、測定値、構造物からの離れなど、代替記録を準備します。
境界付近の資材、容器、車両、植木鉢などを無断で動かしてはいけません。事前に対象範囲を伝え、移動可能な物は施設側に対応してもらいます。動かせない場合は、別方向からの確認や測量方法を検討します。
草や土砂で標識が見えなくても、無断で大規模な草刈りや掘削を行わないようにします。埋設管、電気設備、排水設備などがある可能性を考え、作業範囲、道具、担当者を決めます。
当日は、最初に安全な場所で図面と手順を確認し、その後、必要な境界点だけを現地で見ます。現地確認後は再び安全な場所へ移動し、意見、保留事項、記録内容を整理します。車路や搬入口で長時間協議しないことが大切です。
確認5 確認事項と保留事項を記録する準備を整える
境界確認では、すべての点についてその場で意見がそろうとは限りません。資料不足、境界標の不明、担当者の権限不足、工事履歴の未確認などがあれば、追加確認が必要です。確認済み事項と保留事項を分けて記録できるよう準備します。
立会用図面には、対象地番、隣接地番、方位、境界点番号、主な構造物を表示します。給食センターの敷地が複数筆なら、どの筆との境界を扱うのかを明確にします。今回の対象外の線は、線種を変えるなどして区別します。
資料によって境界候補が異なる場合は、それぞれの線や点を区別して表示します。一つの候補だけを示すと、別資料との相違を説明しにくくなります。公図、過去の測量資料、現況フェンス、側溝などを別々に示します。
記録には、日時、対象地番、場所、出席者、所属、立場、提示資料、確認した点、標識の種類と状態、構造物との位置関係、各関係者の意見、保留事項、追加資料を記載します。実施主体の正式様式がある場合は、その様式を優先します。
「現地確認済み」「おおむね異議なし」だけでは範囲が曖昧です。一辺の一部に疑問があるなら、確認できた境界点と保留した境界点を分けます。争点を限定すると、追加調査の範囲を整理しやすくなります。
写真を撮影する場合は、境界標の近接写真と周囲の位置関係が分かる写真を組み合わせます。写真番号、境界点番号、撮影方向を対応させます。撮影制限がある場合は、施設側の条件を記録します。
写真だけでは距離や位置関係を正確に再現できないことがあります。固定構造物からの距離、フェンスや側溝のどちら側かなどを図面へ記入します。標識が見つからなかった場合は「標識なし」と断定せず、確認した範囲と方法を記録します。
署名や押印を求める場合は、何を確認する書面かを説明します。参加事実、現況確認、筆界案の確認では意味が異なります。担当者が所有者を代表する権限を持たない場合の扱いも、実施主体へ確認します。
保留事項は「後日確認」で終わらせず、誰が、どの資料を、どの部署へ、いつまでを目安に確認するかを記録します。再立会いが必要なら、対象点と目的を明確にします。
記録は相手を一方的に拘束するためではなく、認識をそろえ、担当者が交代しても経緯を追えるようにするためのものです。土地所有者や施設担当者が変わっても、確認内容と未解決事項が分かる状態を目指します。
給食センターとの境界立会を円滑に進める手順
立会当日は、最初に参加者と役割を確認します。土地所有者、代理人、自治体の財産管理担当者、施設所管担当者、施設管理担当者、地籍調査担当者、測量担当者などが参加する場合があります。誰が所有者側の意見を述べ、誰が工事履歴を説明し、誰が記録するのかを明確にします。
次に、現地へ移動する前に、対象地番、隣接地番、確認する境界点、使用資料、対象外の範囲を図面で共有します。施設外周の一部だけが対象なら、その区間をはっきり示します。
地籍調査では筆ごとに確認するため、施設名ではなく地番と境界点で説明します。外観上は一体の敷地でも、登記上は複数筆や公共用地が組み合わさっていることがあります。
現地では、資料との整合を確認しやすい点から順に見ます。境界標が残り、複数資料で位置関係が整う点を起点にすると、境界線の方向や隣接点との関係を共有しやすくなります。
各点では、図面の点番号を示し、現地標識、構造物、測量結果との関係を説明します。結論だけでなく、どの資料を参考にしたかを共有します。相手が別の位置を考えている場合は、その根拠を確認します。
施設担当者の説明する旧フェンス位置、工事前の状況、管理範囲などは、追加調査の手掛かりになり得ます。ただし、説明だけで筆界が決まるわけではありません。発言者、内容、対象点を記録し、資料と照合します。
意見が異なる場合は、相手の認識を否定する前に、どの点・線を境界と考えているか、どの固定物を基準としているかを具体的に示してもらいます。過去の立会い、土地取得時の説明、工事時の記憶など、資料探索につながる情報が得られることがあります。
施設運営に必要な通路幅などの説明が出た場合は、筆界の位置に関する主張なのか、利用上の要望なのかを分けます。施設運営上必要な範囲と筆界は同じとは限りません。
フェンスや側溝が筆界と一致していない疑いが出ても、その場で移設や撤去まで決める必要はありません。まず地籍調査上の確認を整理し、越境物、使用関係、維持管理、工事方法は必要に応じて別途協議します。
現地確認後は、安全な場所で記録を見直します。確認済み、資料照合待ち、意見不一致、立入不能を区別し、図面の記載内容を参加者間で確認します。
短時間で結論を出すことよりも、確認内容と次の対応を正確に残すことが重要です。結論が出ない点があっても、論点と追加確認事項が明確なら、次の調査へつなげられます。
境界位置について意見が一致しない場合の対応
筆界の位置について意見が一致しない場合は、無理にその場で結論を出しません。曖昧な確認は、将来の工事、売買、相続などで問題を残す可能性があります。
まず、何が一致しないのかを具体化します。境界標の位置、フェンスと筆界の関係、資料上の地番対応、曲がり点、道路・水路との接続など、争点によって追加確認の方法が変わります。
各当事者が考える位置は、図面上の点や線で示します。「少し施設側」「以前はここまで使っていた」という表現だけでなく、固定物、距離、区間を記録します。
資料不足なら、土地取得資料、過去の境界確認書、施設建設時の測量成果、外構完成図、道路・水路管理資料、隣接地の地積測量図などを探します。自治体内部では、財産管理、施設管理、建築、道路、水路などに資料が分散していることがあります。
標識が不明確なら、周辺の確実な境界点や基準点との関係を測量で確認します。一点だけを構造物から推測するのではなく、連続する筆界全体との整合を見ます。
複数の標識がある場合は、設置時期、目的、材質、点番号、距離、方向を照合します。新しい標識が常に正しい、古い標識が常に正しいとは限りません。
施設建設や道路工事で地形が変わっている場合は、工事前後の図面や写真を確認します。法面、側溝、道路高、フェンス位置などが変わっている可能性があります。
当事者間で筆界確認が難しい場合には、実施主体へ追加調査の方法を確認します。制度上は、一定の場合に地方公共団体が所有者の同意を得て筆界特定を申請できる仕組みもあります。筆界特定は、新しい筆界を決める制度ではなく、もともとの筆界を法務局の筆界特定登記官が明らかにする制度です。([国土交通省][7])
なお、筆界特定は所有権の範囲を確定する制度ではありません。越境、使用権、取得時効、損害などが問題なら、土地家屋調査士や弁護士などへの相談を検討します。([法務省][8])
相手方が自治体でも、行政側の説明だけで筆界が決まるわけではありません。一方、民有地側の長年の利用だけで筆界が決まるわけでもありません。双方の資料と根拠を記録し、実施主体の手続に沿って調査します。
最終的に筆界を確認できない場合、調査上「筆界未定」として扱われることがあります。現在は、図面等調査、所在不明・無反応所有者への手続、地方公共団体による筆界特定申請など、筆界未定を減らす仕組みが整備されていますが、適用可否は実施主体が個別に判断します。([地籍ポータル][9])
一部の点だけに疑問がある場合は、それ以外の確認済み部分まで曖昧にしないよう整理します。争点を限定すれば、追加調査の範囲を絞りやすくなります。
地籍調査の立会後に行う確認
現地確認後も地籍調査の手続は続きます。測量結果を基に地籍図と地籍簿の案が作成され、国土調査法に基づく閲覧に供されます。閲覧期間は20日間で、誤り等があると認める場合は期間内に申出を行う制度です。通知方法や閲覧場所、申出様式は実施主体の案内を確認してください。([地籍ポータル][10])
閲覧時は、対象地の形状、境界点、地番、地目、面積、所有者表示などを確認します。立会時の図面、写真、記録を手元に置き、点番号や線の接続を照合します。
隣地が給食センターの場合は、施設外周だけでなく、道路、水路、進入路、複数筆の接続も確認します。外観上は一続きでも、登記上は土地が分かれていることがあります。
測量面積と従前の登記面積に差が生じることがあります。面積差だけで誤りと決めず、確認した境界点と成果案の形状が一致するかを確認します。公図や従前面積には精度上の限界がある場合があります。([地籍ポータル][2])
保留点があった場合は、追加資料、再立会い、筆界案の修正、筆界未定など、最終的な処理と根拠を確認します。口頭連絡だけでなく、記録として残します。
境界標が設置・確認された場合は、位置情報を施設管理担当者とも共有します。フェンス更新、舗装、排水工事、除草、車両接触などで損傷や埋没が生じないよう、将来の工事図面や管理資料へ反映できるか検討します。
境界標が傾いたり外れたりしても、自己判断で元へ戻さないようにします。正確な位置を再現できない可能性があるため、実施主体や土地家屋調査士などへ相談します。
立会記録、写真、確認図、閲覧時の資料は、土地に関する記録として保管します。施設担当者の異動、相続、売買があっても、経緯を追える状態にしておくことが重要です。
よくある疑問と実務上の考え方
隣地が自治体の給食センターなら、自治体内部だけで確認が完結すると思われがちです。しかし、民有地との筆界を扱う場合は、民有地側の所有者等にも確認手続が関係します。実施方法は、現地立会い、図面等調査、代理人対応など地域の運用によって異なります。([地籍ポータル][6])
給食センターのフェンスが長年動いていなくても、その線が筆界とは限りません。長期間存在する構造物は参考資料ですが、設置目的、境界標、過去の測量資料と照合します。
施設側がフェンス外まで草刈りしていても、その範囲が施設所有地とは限りません。景観や安全のため隣接部分を管理している場合もあり、管理範囲と筆界・所有権界を分けて考えます。
側溝を施設側が清掃していても、側溝の土地や構造物の所有者が同じとは限りません。管理者、土地所有者、筆界の位置をそれぞれ確認します。
立会日に施設の担当者が来られず、警備員や運営受託者だけが対応する場合は、どこまで確認できるかを実施主体へ確認します。案内や安全管理はできても、所有者側の筆界確認権限を持たない可能性があります。
立会いに参加できない場合も、通知を放置せず、日程調整、代理人、図面等による確認方法を相談します。ただし、2024年に整備されたみなし確認制度により、実施主体が所定の通知や筆界案送付を行い、一定期間に意見申出がない場合、確認があったものとみなして進められることがあります。単に欠席すれば必ず調査が止まるとは限りません。([地籍ポータル][5])
境界標がフェンス内にあり、民有地側から見えない場合は、施設側の許可を得ます。無断でフェンスを越えたり、施錠された門扉を開けたりしません。立入りが難しい場合は、測量担当者と施設担当者が別の確認方法を検討します。
越境の疑いが判明しても、地籍調査の場で直ちに撤去を求めるのではなく、筆界、構造物の位置、所有・管理、使用関係を整理します。筆界確認と越境物への対応を分けると協議しやすくなります。
施設に必要な通路幅が不足していても、利用上の都合だけで筆界を動かすことはできません。必要があれば、境界確認とは別に、売買、使用、工事計画などを検討します。([法務局][1])
実施主体が示す筆界案に疑問がある場合は、参照資料、境界標、測量結果などの根拠を確認し、自分が持つ資料と疑問点を具体的に示します。感覚的な賛否ではなく、点や線ごとに意見を伝えます。
まとめ 立会前の確認が再調査と認識違いを防ぐ
地籍調査で隣地が給食センターの場合は、公共施設だから確認が簡単と決めつけず、対象地番、担当部署、資料、施設運用を事前に整理します。土地所有名義、施設所管、財産管理、外構管理、運営受託者が異なる可能性があるためです。
第一の確認は、対象となる隣接地番の所有名義と確認権限です。施設名だけで判断せず、どの筆と接しているのか、誰が資料を持ち、誰が筆界案への意見を示せるのかを確認します。
第二の確認は、境界資料です。公図のほか、地積測量図、過去の境界確認図、土地取得資料、配置図、外構工事図、境界標写真などを確認し、作成目的と現地復元性を見極めます。
第三の確認は、構造物と筆界の区別です。フェンス、側溝、擁壁、舗装端、植栽帯は手掛かりですが、そのまま筆界を示すとは限りません。設置・改修履歴も含めて資料と照合します。
第四の確認は、稼働時間、衛生管理、車両動線、安全条件です。搬入口や車路に近い場合は施設側と時間を調整し、立入り・撮影・持込品の条件を確認します。
第五の確認は、記録の準備です。確認点、保留点、出席者の立場、提示資料、意見、追加調査を具体的に残します。全国一律に署名や押印が必要とは限らないため、実施主体の様式と説明を優先します。
地籍調査で重要なのは、急いで結論を出すことではなく、どの資料を基に、どの点を、誰がどのように確認したかを追える状態にすることです。疑問が残る場合は、不足資料や追加測量、筆界特定などの選択肢を実施主体へ確認します。
立会いまたは図面確認の後は、20日間の成果閲覧の案内を見落とさず、地籍図・地籍簿の案を確認します。保留事項の処理、境界標の保全、記録の引継ぎまで行うことで、将来の認識違いを減らせます。([e-Gov 法令検索][11])
立会通知を受け取ったものの、給食センター側の窓口が分からない、フェンスと図面が一致しない、必要資料を判断できないという場合は、通知書、対象地番、手元の図面や写真を整理し、まず通知書に記載された地籍調査の実施主体へ相談してください。