LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで鋳造部品の収縮と加工代を見込む5つの設計ポイント

3D CADで鋳造部品を設計するときに収縮と加工代が重要な理由

鋳造部品の設計では、完成品の寸法だけを3D CAD上に正確に作成しても、その形状をそのまま鋳型へ反映すればよいとは限りません。溶けた金属は鋳型の中で凝固し、固体となった後も常温へ近づく過程で収縮します。また、鋳造直後の表面には鋳肌が残り、寸法精度や面粗さが求められる部分は切削や研削などの機械加工によって仕上げる必要があります。そのため、模型や金型には鋳造後の収縮を補う寸法を与え、加工面には仕上げで除去する材料を確保しておかなければなりません。

このとき注意したいのは、収縮と加工代が単純な一律拡大だけでは処理できない場合があることです。寸法変化は、材質、鋳造方法、製品寸法、肉厚分布、鋳型や中子による拘束、冷却条件などの影響を受けます。加工代も、加工方法、鋳造公差、型ずれ、反り、加工基準、把持方法、工程順序によって必要量が異なります。全体へ同じ割合を掛け、すべての加工面へ同じ厚さを追加するだけでは、ある面で素材が不足し、別の面では不要な除去量が増える可能性があります。

3D CADを活用する利点は、完成形状、鋳造素材形状、模型や金型の基準形状、加工途中形状を分けて可視化し、形状差を立体的に確認できる点にあります。加工面だけを抽出してオフセットしたり、収縮補正の基準を定めて形状を拡大したり、抜け勾配や見切り位置との関係を確認したりすることで、図面だけでは見落としやすい問題を設計段階で発見しやすくなります。鋳造方案、模型や金型、機械加工の担当者が同じ基準データを参照できれば、完成品寸法と素材寸法の取り違えも減らせます。

鋳造部品の品質を安定させるには、収縮率や加工代を経験値として入力するだけでなく、その値を採用した理由を設計情報として残すことが重要です。設計変更が発生した際にも、どの面へどの加工代を付けたのか、どの材質や鋳造条件を前提に収縮補正を行ったのかが追える状態にしておけば、修正漏れや二重補正を防ぎやすくなります。ここからは、実務で特に確認したい5つの設計ポイントを順に解説します。

設計ポイント1 材質と鋳造条件に応じて収縮率を設定する

収縮率を設定するときは、材質名だけで値を決めないことが大切です。同じ材質区分でも、合金成分、鋳造温度、鋳型の種類、製品の大きさ、肉厚分布、冷却条件などによって実際の寸法変化は異なります。一般的な標準値は初期検討の参考になりますが、量産品や寸法要求の厳しい部品では、適用する規格、鋳造メーカーの標準、過去の類似品、試作結果を基に補正値を決める必要があります。

3D CADで収縮を反映する方法としては、鋳造後に得たい素材形状を所定の倍率で拡大し、模型や金型の基準形状を作る方法が基本になります。ただし、モデル全体を原点から一括拡大すると、基準となる面や穴位置が意図しない方向へ移動することがあります。たとえば、一方の端面を模型製作や寸法管理の基準として固定したい場合、モデル中心から拡大すると両端が均等に動き、基準面から見た寸法関係が分かりにくくなります。収縮補正を行う際は、どの点、軸、面、座標系を基準にするかを先に決めます。

長尺部品や左右非対称の部品では、方向ごとの寸法傾向を確認することも重要です。鋳型や中子による拘束が強い方向と、比較的自由に縮む方向では、実際の寸法変化が同じにならない場合があります。ただし、長手方向、幅方向、高さ方向へ安易に異なる倍率を与えると、円、穴、勾配面、角度などが意図せず変形します。方向別補正を行う場合は、過去実績や試作測定による根拠を持ち、機能形状への影響を個別に確認する必要があります。

収縮補正を適用する順序も重要です。通常、模型や金型の基準形状を作る場合は、まず完成品形状に鋳造素材として必要な加工代を加え、その鋳造素材寸法全体へ収縮補正を適用します。加工代として追加した部分も鋳造後の冷却過程で収縮するためです。CAD上で収縮補正後に加工代を付ける運用を採る場合は、模型や金型に追加する量を逆算し、鋳造後に所定の加工代が残ることを確認しなければなりません。処理順序や寸法の定義を混在させると、加工代が意図より小さくなったり、二重に補正されたりするため、社内と鋳造メーカーのルールを統一しておきます。

実務では、収縮補正前の鋳造素材モデルと、補正後の模型や金型用モデルを重ねて差分を確認すると効果的です。断面表示を使えば、各方向へどの程度形状が増えたかを確認できます。穴や中空部では、外形だけでなく、中子や鋳抜き部に関係する寸法も確認します。外形だけを拡大し、内部形状や中子側の寸法定義を見落とすと、肉厚や穴位置が設計意図から外れるおそれがあります。

また、収縮率は一度決めたら固定するのではなく、実測結果から見直せる仕組みを持つことが望まれます。初回品の寸法を測定し、鋳造素材モデルや完成品モデルと比較すれば、どの方向に不足や過大があるかを確認できます。測定差が全体に同じ傾向なら倍率の見直しが候補になりますが、局所的な差なら、肉厚、冷却、湯流れ、押湯、鋳型拘束、中子位置など別の要因を検討します。すべてを一つの収縮率だけで補正しようとすると、別の部位へ新たな誤差を生む可能性があるため、全体傾向と局所変形を分けて評価することが重要です。

設計ポイント2 加工面ごとに必要な加工代を分けて設定する

加工代は、鋳造素材から完成寸法までに除去する材料の余裕です。加工面へ十分な加工代がなければ、鋳肌、表面の凹凸、鋳造公差、型ずれ、反りなどを削り切れず、完成面に鋳肌が残る可能性があります。反対に加工代が過大であれば、加工時間、工具負荷、材料除去量が増え、加工中の変形や製造負荷の増加につながります。そのため、加工代は多ければ安全というものではなく、必要な面へ必要な量を付ける設計が求められます。

3D CADでは、まず完成品モデル上で機械加工する面を明確に区別します。平面、円筒面、穴、溝、座面、シール面、合わせ面など、加工対象を用途別に分類しておくと、加工代の設定漏れを防ぎやすくなります。単に加工面という一つの属性にまとめるのではなく、旋削、フライス、穴加工、研削など、工程の違いが分かるように管理すると、製造側との確認がしやすくなります。

加工代の付け方は、面の法線方向へオフセットする方法が基本です。ただし、複雑な自由曲面や小さな曲率半径を持つ部分では、一定距離のオフセットによって面が自己干渉したり、角部が不自然に膨らんだりすることがあります。特に凹形状では、加工代を付けることで溝幅が狭くなり、工具が入らなくなる場合があります。オフセット形状が生成できたかだけでなく、断面形状、最小幅、工具径、工具進入方向まで確認します。

穴やボスでは、加工代の方向を取り違えやすいため注意が必要です。外径を仕上げるボスは、素材外径を完成径より大きくします。一方、穴を仕上げる場合は、下穴や鋳抜き穴を完成径より小さくし、内径側に削りしろを残します。完成品モデルに対してすべての面を外側へオフセットする考え方では、内径形状を正しく処理できません。3D CAD上で内外を判別し、機械加工で材料を除去できる側へ余裕を設けます。

加工代は、面の大きさや鋳造時の姿勢によっても検討内容が変わります。鋳造時に上側となる面は、鋳造方法や方案によって表面状態や欠陥の現れ方が下側と異なる場合があります。大きな平面は反りやすく、端部と中央部で削りしろの残り方が変わることがあります。また、最初に基準面を加工する部位には、素材の傾きや据え付け誤差を吸収できる余裕が必要です。面粗さだけで加工代を決めず、鋳造公差、素材姿勢、初回把持、基準面加工、反転後の仕上げまで含めて検討します。

複数工程で加工する部品では、工程ごとの残し代も分けて考えます。鋳造素材から荒加工を行い、その後に熱処理や応力除去を経て仕上げ加工する場合、最初の加工ですべてを完成寸法まで削るわけではありません。鋳造素材に必要な加工代、荒加工後の残し代、仕上げ加工で除去する量を区別しなければ、途中形状の寸法が曖昧になります。3D CAD上に加工段階ごとのモデルを用意しておくと、各工程でどの面をどこまで加工するかを明確にできます。

加工代の量を決める際は、鋳造側と加工側の責任範囲も整理します。鋳造素材図に記載する寸法が、理論形状なのか、鋳造公差を含む受渡し寸法なのかによって、加工側が期待できる最小余裕は変わります。3D CADモデルに公称加工代を追加しただけでは、実際の素材が常にその形状どおりにできるわけではありません。鋳造公差、型ずれ、反り、鋳肌の凹凸を含めても加工可能かを確認し、必要な加工代と許容差を図面、PMI、仕様書などで明確にします。

設計ポイント3 鋳肌基準と加工基準を分けて寸法を管理する

鋳造部品では、完成品の寸法基準と鋳造素材の寸法基準が一致しないことがあります。完成品図では、加工済みの穴中心、仕上げ面、軸受座、合わせ面などが基準になります。一方、鋳造工程では、見切り面、中子の位置決め、模型や金型の基準面、鋳型内での配置などが重要です。この二つを混同すると、加工代は付いていても、加工時に正しい位置関係を確保できない問題が起こります。

たとえば、完成品で二つの加工穴の中心距離が重要であっても、鋳造素材では穴を鋳抜かず、後加工で新しく穴を開けることがあります。この場合、鋳造形状に必要なのは穴中心そのものではなく、穴加工の基準となる外形や座面に十分な素材余裕があることです。反対に、中子で下穴を形成する場合は、中子位置のばらつきを考慮し、完成穴と鋳抜き穴の位置関係を確認しなければなりません。鋳抜き穴が偏ると、片側の加工代が不足し、反対側には余分な材料が残ります。

3D CADでは、完成品のデータムと鋳造用の基準を別の座標系や参照要素として定義すると管理しやすくなります。完成品座標系は機能寸法と加工検査の基準に使用し、鋳造座標系は見切り、模型や金型の製作、鋳型組立、中子配置の基準に使用します。両者の位置関係を固定しておけば、設計変更で外形が変わった場合にも、どの基準を維持すべきか判断しやすくなります。

加工基準面には、最初の段取りで確実に加工できるだけの面積と加工代が必要です。小さな座面だけを基準にすると、素材の傾きや鋳肌の不均一によって安定した支持や把持が難しくなることがあります。また、最初に削る面と、その後の加工で位置決めに使う面が離れている場合、素材の反りが寸法精度へ影響します。3D CAD上で部品を仮想的に治具へ配置し、支持点、クランプ位置、工具方向を確認すると、基準設計の不足を発見しやすくなります。

寸法の付け方にも注意が必要です。完成品寸法、加工代を含む鋳造素材寸法、収縮補正後の模型や金型寸法を別々に手計算して入力すると、設計変更時に一部だけが更新されるおそれがあります。可能な範囲で、完成品モデルを基準とした関連付けによって下流モデルを生成し、寸法変更が追従する構成にします。ただし、自動追従に任せきると、参照面が変わった際に意図しない形状が生成されることがあります。更新後には差分表示や断面確認を行い、基準面、加工面、穴位置が維持されているかを確認します。

鋳造素材図では、加工面、鋳肌のまま使用する面、基準として使用する面を視覚的に区別します。3D注記や面属性を使える環境であれば、面ごとに状態を付与し、製造データへ引き継ぐ方法が有効です。ただし、寸法や公差が指示されていない単なる3D形状だけでは、鋳造公差や必要な加工代を一意に伝えられません。3Dモデルを正データとして運用する場合でも、PMI、モデル属性、受渡し仕様などによって、寸法、公差、加工代、基準、適用条件を明示します。2次元図面を併用する場合は、3Dモデルと注記内容が矛盾しないようにし、素材寸法と完成寸法を混在させないことが大切です。

設計ポイント4 肉厚差と形状拘束による変形を見込む

鋳造部品の寸法変化は、全体が均一に小さくなる線収縮だけでは説明できません。肉厚の厚い部分と薄い部分では凝固や冷却の速度が異なり、温度差や拘束によって反り、ねじれ、局所的な寸法変化が生じることがあります。また、凝固時の体積収縮と給湯の不足などによって生じる引け巣や収縮ポロシティは、寸法収縮とは区別して扱うべき鋳造欠陥です。これらの内部欠陥は、単純な寸法拡大や加工代の追加では解決できません。リブ、ボス、フランジ、厚肉の交差部、大きな平面などは、変形や欠陥のリスクを確認したい代表的な形状です。

3D CAD設計では、まず肉厚の急変を減らします。厚い部分から薄い部分へ急に切り替わる形状は、凝固時間の差を大きくし、内部応力、局所変形、引け欠陥のリスクを高めることがあります。必要な強度を確保しながら、肉厚をできるだけ滑らかに変化させ、段差部には適切なつながりを設けます。ボスの根元やリブの交差部では、単純に材料を足すのではなく、熱が集中しにくく、鋳造しやすい形状へ調整することが重要です。

大きな平面に加工代を付ける場合は、平面全体へ一定量を追加するだけで十分かを検討します。中央が完成面より内側へ反る部品では、端部に加工代が残っていても中央部を削り出せない可能性があります。逆に中央が盛り上がる場合は加工できますが、除去量の増加や、加工による残留応力の解放で再変形することがあります。過去実績や解析結果を基に想定変形モデルを作り、最小加工余裕を断面で確認すると、公称加工代だけでは見えにくい危険箇所を把握できます。

リブやフランジが片側に偏った形状では、冷却収縮が非対称になり、全体が湾曲することがあります。設計段階では、形状の対称性、リブ配置、肉抜き、補強位置を見直し、必要以上に片側へ熱容量が集中しないようにします。機能上どうしても非対称になる場合は、鋳造後の矯正、熱処理、荒加工後の安定化、仕上げ加工の順序を含めて製造方法を検討します。加工代だけを増やして変形を吸収しようとすると、素材重量や加工負荷が増え、根本原因を残すことになります。

鋳型や中子による拘束も変形へ影響します。自由に収縮できる部分と、鋳型内部で動きにくい部分が混在すると、局所的な応力が生じます。細長い穴、中空部、複数の中子を使う形状では、中子の支持方法、位置精度、崩壊性などが寸法へ影響する場合があります。3D CAD上で中子形状を含めて検討し、製品形状だけでなく、どこが拘束され、どこに型ずれや中子ずれの余裕が必要かを確認します。

変形の見込み方は、過去の実績と実測データを活用すると精度が高まります。類似形状で特定方向への反りが繰り返し発生している場合、模型や金型の形状をあらかじめ逆方向へ補正する方法が検討されます。ただし、逆反り補正は鋳造条件が変わると効果も変わるため、安易に標準化できません。補正前後のモデルを分け、対象となる材質、鋳型、方案、製造条件、適用範囲を記録します。条件を明示せずに補正形状だけを流用すると、別製品で過補正になるおそれがあります。

解析を使う場合は、一般的な3D CADの形状確認と、専用の鋳造CAEや凝固・熱変形解析を区別します。熱や凝固を考慮する解析では、材料物性、注湯条件、境界条件、熱伝達、鋳型や中子の条件など多くの入力が必要です。入力条件が実際の製造と合っていなければ、見た目が精密な結果でも現場と一致しないことがあります。解析結果を絶対値として扱うのではなく、変形しやすい部位や欠陥リスクの傾向を把握する手段として使い、試作や実測結果と照合しながらモデルを改善します。

設計ポイント5 鋳造モデルと加工後モデルを分けて管理する

鋳造部品の3D CADデータで避けたいのは、完成品モデル、加工代付きの鋳造素材モデル、収縮補正後の模型や金型用モデルが一つのファイル内で曖昧に混在することです。どの段階の形状か分からないデータが製造側へ渡ると、収縮補正を二重に掛けたり、加工代のない完成品形状から模型や金型を作ったりする事故につながります。モデルを工程別に分け、名称、版、基準、用途を明確に管理する必要があります。

基本となるのは、機能要件を表す完成品モデルです。このモデルには、加工後に必要な寸法、穴、面、はめ合い、機能形状を定義します。次に、完成品モデルへ必要な加工代を追加し、鋳造後に得たい素材形状を作成します。さらに、その素材形状へ収縮補正を適用し、抜け勾配、鋳造用の丸み、見切り、必要に応じた局所補正を反映して、模型や金型の基準形状を作成します。

ただし、使用するCADや鋳造メーカーの運用によってモデル構成は異なるため、モデル名だけでなく寸法の定義と生成ルールを決めておくことが重要です。加工代が鋳造後の実寸なのか、模型や金型上の追加量なのかを明確にし、収縮補正との関係を統一します。抜け勾配や鋳造用の角丸をどの段階で付けるかも決めます。処理順序が違えば、局所寸法や鋳造後に残る加工代が変わる場合があります。

各モデルは、できるだけ元の完成品モデルと関連付けて更新できる構成にします。設計変更で完成品の穴位置や外形が変わった際、鋳造モデルへ手作業で反映すると修正漏れが起こりやすくなります。一方で、関連付けが複雑すぎると、参照切れや更新エラーが発生し、意図しない面へ加工代が付くことがあります。モデル履歴は、担当者以外でも処理内容を追える程度に整理し、加工代、収縮、勾配、丸み、局所補正を区別します。

モデルの表示状態も管理に役立ちます。完成品形状、加工代領域、鋳造素材形状、模型や金型用形状を重ね、色分けや透過表示によって差を確認できるようにすると、加工代の付け忘れや過大な追加を見つけやすくなります。特に穴、溝、薄肉部、交差部は断面表示を使い、完成品と素材の間に必要な余裕があるかを確認します。差分体積を抽出すれば、どの領域が加工によって除去されるかも把握できます。

データ受け渡しでは、ファイル名に工程や版を含めるだけでなく、モデル内にも識別情報を持たせることが重要です。ファイル名は複製や変換時に変更される可能性がありますが、モデル属性や注記に用途、材質、収縮条件、加工代条件、更新日を記録しておけば、受け取った側が内容を判断しやすくなります。中間形式へ変換すると履歴、属性、PMIが失われる場合があるため、受け渡し用データには最低限必要な情報を図面や仕様書でも補います。

また、鋳造用モデルを直接修正して完成品モデルへ戻す運用は避けたほうが安全です。鋳造上の都合で追加した勾配や丸み、逆反り補正が、完成品設計へ誤って取り込まれる可能性があるためです。設計変更は原則として完成品モデルへ反映し、そこから下流モデルを更新します。製造側から鋳造形状の変更提案があった場合も、機能形状へ影響するかを確認し、完成品設計と鋳造設計の境界を保ちます。

3D CADで収縮と加工代を確認する実務フロー

実務では、最初に完成品の機能要件を整理します。どの面が他部品と接触するのか、どの穴が位置決めに使われるのか、どの寸法が性能に直結するのかを確認し、加工が必要な面と鋳肌のまま使える面を分けます。完成品モデルが曖昧なまま加工代を付け始めると、後から仕上げ面が増え、鋳造形状の修正範囲が広がります。

次に、鋳造方法、材質、鋳型、見切り、中子、抜き方向、想定する製造数量、適用する公差や加工代の基準を確認します。収縮率や加工代は設計部門だけで確定せず、鋳造担当者と加工担当者の知見を反映します。類似品の実績がある場合は、設定値だけでなく、実測結果、変形方向、加工時の不足箇所、鋳造欠陥の発生位置も参照します。

その後、完成品モデルに加工面属性を設定し、面ごとに必要な加工代を追加して、鋳造後に得たい素材モデルを作成します。外径、内径、平面、自由曲面で加工代の方向が正しいかを確認し、凹部では工具進入性も確認します。加工基準面は、初回段取りで確実に加工できるか、把持や支持が可能かという観点でも確認します。

加工代付きの鋳造素材形状を作成したら、収縮補正を適用して模型や金型の基準形状を作ります。このとき、拡大の基準点、座標系、方向、倍率、適用範囲を記録します。外形だけでなく、中子、穴、内部流路、肉厚がどのように変化したかを断面で確認します。局所的な逆反り補正や寸法補正が必要な場合は、全体の収縮補正とは別の工程として管理します。

続いて、抜け勾配、鋳造用の丸み、見切り部の処理などを追加します。これらの処理によって、鋳造後の加工代が減少する箇所がないか確認します。たとえば、勾配を付ける方向によっては、加工面の端部で素材余裕が小さくなることがあります。加工代を付けた時点では問題がなくても、模型や金型用形状へ変換した後に不足する場合があるため、最終形状から鋳造後の寸法を逆算して再確認します。

最後に、完成品モデル、鋳造素材モデル、模型や金型用モデルを比較し、加工によって除去する領域、鋳肌として残る領域、機能寸法に近い薄肉部を確認します。断面を複数位置で作成し、鋳造公差や想定変形を考慮しても最小加工余裕が残るかを調べます。大きな平面や長尺形状では、想定変形を加味した場合にも削り出せるかを確認します。設計レビューでは、画面上の形状だけでなく、基準面、収縮条件、加工代、変形リスク、検査方法まで説明できる状態にしておきます。

収縮と加工代の設計ミスを減らすチェック方法

設計ミスを減らすには、数値の確認だけでなく、処理の抜けや二重適用を見つける仕組みが必要です。まず、完成品モデルと下流モデルの版が対応しているかを確認します。完成品設計が更新されているのに、古い鋳造素材モデルや模型用モデルが製造へ流れると、収縮率や加工代以前の問題になります。更新日だけで判断せず、元モデルの版、生成履歴、承認状態との関連を確認します。

次に、収縮補正の適用回数を確認します。外部から受け取ったモデルがすでに収縮補正済みであることに気づかず、さらに拡大してしまう事例は避けなければなりません。モデル属性、引き継ぎ資料、代表寸法の比較を使い、完成品寸法、鋳造素材寸法、模型や金型寸法の関係を確認します。代表寸法を数か所選び、採用した倍率と寸法定義に整合しているかを確かめる方法も有効です。

加工代については、加工面一覧と3D CAD上の面属性を照合します。図面上で加工指示がある面に加工代があるか、反対に鋳肌面へ不要な加工代が付いていないかを確認します。穴や溝では、加工代の方向が逆になっていないか、鋳抜き形状が工具径、加工深さ、中子位置のばらつきに対して適切かを確認します。

断面チェックは一か所だけで終わらせず、形状が変化する位置ごとに行います。加工面の中央では十分な余裕があっても、端部、勾配との境界、角丸付近、リブ交差部で不足することがあります。自由曲面では、偏差表示や距離解析を使い、完成面と鋳造素材面の距離が局所的に小さくなっていないか確認します。

加工工程との整合も欠かせません。どの面を最初に加工し、どこを基準に次工程へ進むかを確認します。第一工程で必要以上に削ると、反転後の工程で加工代が不足することがあります。荒加工と仕上げ加工を分ける場合は、各段階の残し代がモデルや図面に反映されているかを確認します。

さらに、検査方法を設計段階で考えておくと、初回品から補正へつなげやすくなります。完成品寸法だけを測るのではなく、必要に応じて鋳造素材の状態でも代表点や代表面を測定します。鋳造直後、熱処理後、荒加工後、仕上げ加工後の寸法差を比較すれば、どの工程で変形や寸法変化が生じたかを推定しやすくなります。測定結果を3D CAD上へ戻し、偏差の分布として確認すれば、全体の寸法傾向と局所変形を分けて評価できます。

3D CADデータを現場計測と組み合わせる考え方

3D CADで収縮と加工代を丁寧に設計しても、実際の鋳造品が想定どおりに仕上がっているかは現物を測定して確認する必要があります。初回品や形状変更後の部品では、完成寸法だけでなく、加工前素材の外形、基準面候補、加工代の残り方を確認することが重要です。測定結果と3D CADデータを比較すれば、加工を始める前に素材不足の可能性を把握しやすくなります。

測定では、部品全体の位置合わせ方法が結果を左右します。完成品モデルへ単純に最適一致させると、本来確認したい基準面のずれや反りが平均化されることがあります。加工基準で評価するのか、鋳造基準で評価するのかを決め、それぞれの座標系で偏差を確認します。基準を変えて比較することで、全体の位置ずれ、寸法傾向、局所変形を切り分けやすくなります。

部品寸法の検査には、要求公差、対象寸法、部品サイズ、表面状態に応じて、接触式三次元測定機、可搬式多関節アーム、レーザートラッカー、工業用3Dスキャナー、専用ゲージなどから適切な方法を選びます。測定機器の公称精度だけでなく、校正状態、測定不確かさ、温度、表面反射、測定距離、基準点の設定、作業者の手順も結果へ影響します。加工代の有無や寸法合否を判断する場合は、対象公差に対して十分な測定能力と、必要なトレーサビリティを確保することが重要です。

LRTK PhoneのようにRTK-GNSSによる位置情報や点群、写真記録を扱える端末は、鋳造部品そのものの精密寸法検査を置き換える用途ではなく、工場や屋外ヤードでの保管位置、搬入経路、据え付け基準点、周辺設備との位置関係を記録する補助として活用を検討できます。加工代の残量や部品寸法の合否は、要求精度を満たす測定機器で確認する必要があります。鋳造部品が機械や構造物へ組み込まれる場合は、部品形状の検査データと現場座標の記録を役割分担させることで、据え付けや交換時の確認に使いやすい情報を残せます。

計測結果を設計へ戻す際は、単発の数値ではなく、条件とセットで蓄積します。材質、鋳造日、鋳型、製造条件、測定温度、測定工程、使用機器、基準合わせの方法、加工前後の状態を記録し、3D CADモデルの版と関連付けます。これにより、次回の設計で収縮率や加工代を決める際に、根拠のある実績値として利用できます。経験を個人の記憶に残すのではなく、形状、工程、測定結果を結び付けて共有することが、継続的な品質向上につながります。

まとめ

3D CADで鋳造部品を設計する際は、完成品形状を作るだけでなく、収縮、加工代、基準、変形、工程別モデルを一体として管理することが重要です。収縮率は材質名だけで一律に決めず、鋳造方法、形状、拘束、適用規格、過去実績を踏まえて設定します。加工代はすべての面へ同じ量を付けるのではなく、加工方法、面の向き、鋳造公差、素材の変形、基準面、工程順序に合わせて分けて設定します。

模型や金型の基準形状を作る場合は、原則として完成品形状へ加工代を加えて鋳造素材形状を定義し、その全体へ収縮補正を適用します。別の処理順序を採用する場合は、鋳造後に必要な加工代が残るよう寸法を換算し、定義を明確にしなければなりません。また、完成品の加工基準と鋳造工程の基準を区別し、どの座標系と寸法定義から補正したのかを残すことが大切です。

肉厚差や非対称形状による反りは、単純な拡大だけでは補正できません。さらに、引け巣や収縮ポロシティは寸法収縮とは異なる鋳造欠陥であり、加工代を増やすだけでは解決できません。形状改善、鋳造方案、工程設計、必要に応じた鋳造CAE、試作と実測による検証を組み合わせ、全体の寸法傾向と局所的な変形や欠陥を分けて扱います。

完成品モデル、鋳造素材モデル、模型や金型用モデル、加工途中モデルを工程別に管理すれば、二重補正や加工代の付け忘れを防ぎやすくなります。3D CAD上で差分、断面、偏差を確認し、初回品の測定結果を設計へ戻すことで、次の製品ではより現実に合った補正値を設定できます。

鋳造部品が大形で、工場内外の保管位置や据え付け基準まで記録したい場合は、精密な部品検査と現場座標の記録を分けて運用します。加工代や寸法合否は要求精度を満たす測定機器で確認し、LRTK Phoneは保管位置、搬入状態、据え付け位置、周辺設備との関係を記録する補助として検討できます。3D CAD、検査データ、現場情報の役割を明確にして結び付けることが、安全で再現性のある鋳造部品設計につながります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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