3D CADにおけるスケルトン設計とは
3D CADで機械装置、治具、搬送設備、筐体、構造物などを設計するときは、複数の部品を一つのアセンブリとして組み合わせます。部品数が少なく、設計変更もほとんどない製品であれば、個々の部品を作成してから組み立てる方法でも対応できます。しかし、部品数が増えたり、全体寸法や配置を何度も変更したりする設計では、部品を個別に修正する方法だけでは整合性を保ちにくくなります。
そこで活用されるのが、スケルトン設計です。スケルトン設計とは、製品全体の骨格となる基準情報を最初に作り、その基準を参照しながら各部品を設計する方法です。スケルトンには、製品の原点、座標軸、基準面、中心線、回転軸、主要寸法、部品の配置位置、可動範囲、外形境界、接続位置などを定義します。
各部品は、ほかの部品の完成形状を基準にするのではなく、共通のスケルトンを基準として作成します。たとえば、二つの軸受部品で一本の回転軸を支持する場合、それぞれの部品モデル内で軸中心を個別に設定するのではなく、スケルトン上に定義した共通の中心軸を参照します。これにより、軸位置を変更したときに、関連する部品を同じ基準へ追従させやすくなります。
スケルトンという名称から、製品の外形線だけを簡略的に描く方法と考えられることがあります。しかし、実際には形状の下書きだけではありません。スケルトンは、製品全体で共有する設計意図を集約するモデルです。どの面を固定するのか、どの方向へ寸法を変えるのか、どの部品が同じ軸を共有するのか、どこに必要な隙間を確保するのかといった関係を明示します。
3D CADでは、現在の形状が正しく見えていても、設計変更を加えたときに部品間の関係が崩れることがあります。スケルトン設計は、完成時の見た目だけでなく、変更後の挙動を管理するための方法でもあります。製品全体を共通の基準から構成することで、穴位置、取付面、軸中心、部品間距離などのずれを抑えやすくなります。
スケルトン設計で部品間のずれを防げる理由
部品間のずれが発生する大きな原因は、同じ位置関係を複数の部品で別々に定義していることです。たとえば、左右に配置する二つのブラケットについて、それぞれの部品モデルで原点からの距離を入力したとします。初期設計では同じ値を入力しているため、問題なく配置できます。
しかし、装置の全幅を変更したとき、一方の部品だけを修正し、もう一方の修正を忘れると、左右の位置関係が崩れます。数値を修正したとしても、片方は中央面からの寸法、もう片方は外側面からの寸法で管理していれば、外形変更後の動き方が一致しないことがあります。
スケルトン設計では、左右の配置位置を共通の中央面や基準線から定義できます。両方の部品が同じ配置情報を参照していれば、装置幅を変更したときも、設計意図に沿って位置を更新しやすくなります。
また、部品同士を直接参照する設計では、参照元となる部品を変更したときに、関連部品へ連鎖的な影響が生じます。カバーの面を基準にブラケットを配置し、ブラケットを基準に配管を配置し、配管を基準に支持部品を作ると、最初のカバー変更が複数の部品へ順番に伝わります。このような参照の連鎖は、変更結果を予測しにくくする原因です。
スケルトンを共通の参照元にすれば、カバーの境界、ブラケットの取付位置、配管中心線、支持位置を一つの基準モデルへ整理できます。それぞれの部品がスケルトンを参照するため、参照経路を短くでき、どの情報が変更の起点になっているかを把握しやすくなります。
ただし、スケルトンを作成するだけで、自動的にすべてのずれを防げるわけではありません。基準要素の選び方、参照方向、寸法の定義方法、変更手順が適切でなければ、かえってモデルが複雑になることもあります。安定したスケルトン設計を行うには、次に説明する7つの基本を一貫して運用することが重要です。
基本1 製品全体の原点と座標系を統一する
スケルトン設計の第一歩は、製品全体で使用する原点と座標系を決めることです。原点や軸方向が曖昧なまま部品設計を始めると、部品ごとに異なる基準が作られ、組み合わせたときに位置関係を管理しにくくなります。
原点は、単に3D CADの画面上で操作しやすい場所を選ぶのではなく、製品の構造、組立方法、設置方法、検査方法を考慮して決めます。機械装置であれば、ベースの基準角、装置の中央、主要な回転軸の中心、据付基準点などが候補になります。左右対称の製品であれば中央面と設置面の交点、搬送設備であれば搬送中心線と入口側基準面の交点を原点にする方法が考えられます。
原点を決める際は、将来の設計変更によって動きにくい場所を選ぶことが重要です。外装の端部を原点にすると、外形寸法の変更によって基準位置そのものが動く可能性があります。一方、装置中央や据付基準点など、仕様変更後も維持される位置を選べば、関連部品の配置を安定して管理できます。
座標軸の方向も統一します。製品の前後、左右、上下と3D CAD上の各軸を対応させ、どちらを正方向とするかを決めます。前側、後側、操作側、反操作側、入口側、出口側など、現場や部署によって異なる呼び方が使われる場合は、設計上の方向表現を統一しておく必要があります。
大型設備や屋外構造物では、設計座標と現場座標の関係も考慮します。3D CAD上の原点が現場で確認できない位置にあると、施工や据付後の位置確認が難しくなります。現物で再現できる基準点、基準穴、据付点、加工面などとの関係を定義しておくと、設計と現場を同じ座標の考え方で管理しやすくなります。
原点と座標系は、設計途中で安易に変更しないことも大切です。原点を変更すると、部品配置だけでなく、図面上の座標、解析条件、測定データ、加工基準などへ影響する可能性があります。設計初期に関係者で確認し、原則として固定する基準として扱います。
基本2 主要な基準面と中心軸を先に定義する
原点と座標系を決めたら、製品全体で共有する基準面と中心軸をスケルトン上に定義します。基準面や中心軸は、各部品の位置、向き、形状を決める土台になります。
代表的な基準面には、設置面、製品中央面、前面、後端面、左右の外形基準面、主要ユニットの取付面などがあります。中心軸には、回転部の軸、シャフトの軸、穴列の中心、搬送方向の中心線、配管やケーブルの経路中心などがあります。
基準面を作るときは、完成部品の表面をそのまま共通基準として使うのではなく、設計意図を表す専用の基準要素を作ることが重要です。完成形状の面は、形状変更によって分割されたり、別の面へ置き換わったり、削除されたりする可能性があります。変更されやすい面を多くの部品が参照すると、わずかな形状変更で参照エラーが発生することがあります。
一方、スケルトン上に明示的に作成した基準面や中心軸であれば、部品形状が変わっても維持できます。たとえば、軸受部品の穴面から軸中心を取得するのではなく、スケルトンに回転軸を作成し、その軸を軸受、シャフト、歯車、カバーなどが共通して参照する構成にします。
基準面や中心軸は、必要以上に増やさないことも重要です。同じ位置に似た基準面が複数存在すると、部品ごとに異なる面を参照する可能性があります。初期状態では重なって見えても、設計変更後に片方だけが移動すれば、部品間のずれにつながります。
新しい基準要素を追加する前に、同じ目的の要素がすでに存在しないか確認します。また、一時的な検討用の面や線と、正式な設計基準を区別します。設計が進んだ後も仮の基準を残すと、別の担当者が正式な基準と誤認する恐れがあります。
基準面や中心軸には、役割が分かる名称を付けます。番号だけの名称ではなく、設置基準面、装置中央面、主軸中心、搬送中心線など、用途を判断できる名称にします。これにより、参照先の取り違えを防ぎやすくなります。
基本3 部品間で共有する寸法をスケルトンへ集約する
部品間の位置関係に影響する寸法は、個別部品へ分散させず、スケルトンへ集約します。全長、全幅、全高だけでなく、軸間距離、取付高さ、穴中心位置、ユニット間隔、必要隙間、可動範囲、接続位置なども集約の対象になります。
たとえば、左右のフレームをつなぐ複数の梁がある場合、それぞれの梁モデルでフレーム間距離を入力すると、幅変更時にすべての梁を修正しなければなりません。スケルトン上で左右フレームの基準位置を定義し、各梁がその位置を参照すれば、全体幅の変更を一つの基準から反映しやすくなります。
ただし、すべての寸法をスケルトンへ集める必要はありません。面取り、丸み、加工逃げ、局所的な穴径など、特定の部品だけに関係する寸法は、部品モデル内で管理した方が分かりやすい場合があります。スケルトンへ集約するのは、複数部品が共有する寸法や、製品全体の成立性に影響する寸法を中心にします。
寸法を集約するときは、数値だけでなく、どの関係を維持するための寸法なのかを考えます。左右の部品を中央面から対称に配置するのか、片側の基準面を固定して反対側だけを動かすのかによって、同じ全幅でも変更時の挙動は異なります。
装置高さを変更する場合も同様です。設置面を固定して上側へ伸ばすのか、中央を固定して上下へ均等に広げるのか、上面を固定して下側を動かすのかを決めます。現在の形状だけを見れば同じでも、設計変更を加えたときの結果は大きく変わります。
また、必要な隙間を単なる結果として確認するのではなく、スケルトン上で設計条件として定義する方法も有効です。カバーと内部機器の間に保守空間が必要であれば、内部機器の最大領域とカバーの内側境界を共通基準で管理します。配管やケーブルの経路についても、通過可能な領域や曲げに必要な空間をスケルトンに表現できます。
共有寸法を集約することで、設計変更の入力場所を限定できます。どの寸法を変更すれば、どの部品が動くのかを把握しやすくなり、個別部品の修正漏れを防ぎやすくなります。
基本4 部品同士を直接参照させすぎない
3D CADでは、既存部品の面、穴、稜線などを参照して別の部品を作成できます。この方法は短時間で形状を合わせられるため便利ですが、部品同士の直接参照を増やしすぎると、設計変更に弱いモデルになります。
たとえば、部品Aの端面を参照して部品Bを作り、部品Bの穴を参照して部品Cを作り、部品Cの外形を参照して部品Dを作ると、参照関係が長く連なります。部品Aを変更したとき、部品B、部品C、部品Dが順番に更新されるため、途中で参照が切れたり、意図しない形状変化が起きたりする可能性があります。
また、どの部品が変更の起点なのか分かりにくくなります。部品Dにずれが見つかっても、原因が部品D自身にあるのか、部品Cの参照にあるのか、さらに上位の部品Aにあるのかを調べなければなりません。
スケルトン設計では、部品間で共有する位置や境界をスケルトンに定義し、それぞれの部品が共通基準を直接参照する構成を目指します。部品Aから部品Dまでを順番に参照させるのではなく、必要な位置情報をスケルトンから各部品へ渡します。
ただし、部品同士の直接参照を完全に禁止する必要はありません。隣接部品の実形状に合わせて局所的な逃げを作る場合など、直接参照が合理的な場面もあります。その場合でも、製品全体の配置や主要寸法を決める基準として使うのではなく、限定的な形状調整として扱うことが重要です。
直接参照を使う場合は、どの部品を参照しているか、参照先の形状が変更される可能性はあるか、参照が切れた場合にどの範囲へ影響するかを確認します。完成形状の細かな稜線より、基準面や明示的に作成した軸など、安定した要素を優先します。
部品同士の参照を減らすことで、個別部品の独立性も高まります。ある部品を交換したり、別仕様へ変更したりするときに、周辺部品の参照が一斉に切れる事態を避けやすくなります。
基本5 参照方向を上位から下位へ統一する
スケルトン設計では、情報が流れる方向を上位から下位へ統一します。製品全体のスケルトンが最上位にあり、その情報をユニットや部品が参照する構成です。下位の部品から上位のスケルトンへ情報を戻す参照は、できるだけ避けます。
参照方向が混在すると、循環参照が発生する可能性があります。循環参照とは、要素Aが要素Bを参照し、要素Bが再び要素Aへ依存している状態です。3D CADが更新順序を確定できず、計算エラーや不安定な挙動につながることがあります。
たとえば、スケルトンが部品Aの位置を決め、部品Bが部品Aの面を参照し、さらにスケルトンの境界が部品Bの外形を参照していると、参照が一周します。このようなモデルは、一度は更新できても、寸法変更や形状追加をきっかけに計算できなくなることがあります。
安定した構造は、全体スケルトンからユニットスケルトンへ、ユニットスケルトンから個別部品へという一方向の流れです。大規模な製品では、すべての情報を一つのスケルトンに集中させるのではなく、階層ごとに分ける方法が有効です。
全体スケルトンでは、製品外形、ユニット配置、主要軸、外部設備との接続位置などを管理します。ユニットスケルトンでは、そのユニット内部の取付面、部品配置、可動範囲などを管理します。個別部品は、必要な範囲の基準だけを参照します。
この構成で重要なのは、個別部品の完成形状を全体スケルトンへ戻さないことです。全体スケルトンは設計条件を与える側、部品は条件を受け取って形状を作る側として役割を分けます。
設計中に実部品の形状を確認したい場合は、設計基準としての参照と、表示や干渉確認のための参照を区別します。確認用の形状をスケルトンの寸法決定へ使うと、意図せず参照方向が逆転する可能性があります。
参照方向を統一すると、設計変更の影響範囲を予測しやすくなります。スケルトンのどの要素を変更すると、どのユニットや部品が更新されるのかを整理でき、変更前の確認作業も行いやすくなります。
基本6 固定要素と変更要素を明確に分ける
スケルトン上の要素には、設計中に変更するものと、原則として固定するものがあります。両者を区別せずに作成すると、設計者が誤った基準を動かし、製品全体の位置関係を崩す可能性があります。
固定要素として扱う代表例は、製品原点、基本座標軸、設置面、据付基準、外部設備との接続基準、製造や検査で使用する基準点などです。これらは、通常の仕様変更では動かさない基準として管理します。
変更要素には、全長、全幅、全高、軸間距離、ユニット位置、カバー高さ、可動範囲、配管経路などがあります。これらは、仕様や設計条件に応じて調整する入力情報です。
さらに、入力値と計算結果も分けて考えます。たとえば、全幅と中央面を入力条件として左右面を計算する場合、左右面は結果として動きます。結果側の面を直接動かすのではなく、元となる全幅の寸法を変更する構成にします。
固定要素と変更要素を区別することで、設計者はどの項目を操作すればよいか理解しやすくなります。変更してはいけない基準を誤って編集するリスクも減らせます。
左右対称の製品では、中央面を固定して左右へ均等に広げる方法が一般的ですが、実際の製品条件によっては片側固定が適切な場合もあります。壁際に設置する装置や、既存設備との接続面が決まっている装置では、接続側を固定し、反対側だけを動かす必要があります。
可動部を含む製品では、固定側と可動側の関係を明確にします。回転部であれば回転軸を固定基準とし、可動部の姿勢を角度で管理します。直線移動部であれば、移動軸と基準位置を定義し、移動量によって位置を変化させます。
固定部品が可動部の一時的な姿勢を参照すると、可動確認のために角度を変えた際、固定部品まで移動したり変形したりする可能性があります。固定部品は固定基準を参照し、可動部だけが可動条件へ従う構造にします。
スケルトン上で要素の役割を明確にすると、設計変更後の動きが予測しやすくなります。どこを固定し、どこを変化させるかという設計意図をモデル内に残すことが、部品間のずれを防ぐうえで重要です。
基本7 命名規則と変更手順を標準化する
スケルトン設計は、一人の設計者だけが短期間使用する場合よりも、複数人が長期間扱う場合に効果を発揮します。そのためには、基準要素の命名規則と変更手順を標準化する必要があります。
基準面、軸、点、線、曲線、寸法が初期名称のまま並んでいると、どの要素が何を表しているか判断できません。設置基準面、製品中央面、主軸中心、入口側接続面、配管通過中心など、役割が分かる名称を付けます。
前後、左右、上下といった方向表現も統一します。前側と入口側、左側と操作側など、異なる呼び方を混在させると、担当者によって解釈が変わる可能性があります。図面、3D CAD、設計資料、現場資料で共通の表現を使います。
寸法名も、意味を理解できる形にします。単なる連番ではなく、全体幅、主軸間距離、取付基準高さなど、変更内容を判断できる名称を設定します。似た寸法が複数ある場合は、対象となるユニットや機能を名称に含めます。
変更手順については、誰がスケルトンを変更できるのか、変更前に何を確認するのか、変更後にどの部品を更新するのかを決めます。スケルトンは複数部品へ影響するため、個別部品の設計者が自由に変更すると、ほかの担当範囲へ予期しない影響が出ることがあります。
重要な寸法を変更するときは、変更理由、対象仕様、影響が予想される部品、確認結果を記録します。数値だけを書き換えると、後から変更理由を追跡できません。変更の背景を残すことで、別の担当者が元へ戻したり、同じ修正を重複して行ったりすることを防げます。
版管理も欠かせません。変更前後の状態を比較できるようにし、正式なデータがどれかを明確にします。ファイル名へ日付や番号を付けて複製するだけでは、どのデータが承認済みなのか分からなくなる可能性があります。正式版、作業版、検討版の扱いを統一します。
不要になった基準要素についても管理が必要です。単純に削除すると参照が切れる可能性があるため、使用状況を確認します。すぐに削除できない場合は、廃止予定であることが分かる名称へ変更し、新しい参照を追加しないようにします。
命名規則と変更手順の標準化は、モデルを見やすくするだけではありません。参照先の誤り、変更漏れ、設計意図の喪失を防ぎ、担当者が変わっても安定した3D CADデータを維持するために必要です。
スケルトン設計で起こりやすい失敗
スケルトン設計で起こりやすい失敗の一つは、情報を集約しすぎることです。全体配置に関係しない細かな加工寸法までスケルトンへ入れると、要素数が増え、更新時間が長くなります。どの情報が製品全体に重要なのかも分かりにくくなります。
反対に、スケルトンの情報が少なすぎる場合も問題です。原点と外形だけを定義し、部品間の穴位置や取付面を各部品で個別に作成すると、重要な位置関係を一元管理できません。複数部品が共有する情報を見極め、適切な範囲で集約する必要があります。
完成部品の面や稜線を安易に参照することも、よくある失敗です。形状変更によって参照先がなくなると、関連部品にエラーが発生します。特に、丸みや面取りを加えたことで稜線の構成が変わり、別部品の参照が切れることがあります。
似た基準要素を重複して作ることにも注意が必要です。同じ位置にある二つの基準面を別々の部品が参照していると、片方だけを変更した際に部品間のずれが発生します。既存要素を確認し、共通化できる基準は一つにまとめます。
一時的な検討用要素を正式な参照に使い続けることも問題です。設計初期の簡易的な線や面は、検討を進めるうえで便利ですが、正式な設計条件が決まった段階で整理する必要があります。仮の要素を多数の部品が参照すると、後から削除できなくなります。
スケルトンを変更した後に、計算エラーがないことだけを確認して完了とするのも危険です。3D CAD上で更新が完了していても、設計意図どおりに動いているとは限りません。変更対象外の部品が移動したり、必要な隙間が減少したり、可動範囲で干渉したりする可能性があります。
スケルトン設計を自動修正の仕組みと考えすぎることも避ける必要があります。スケルトンは共通基準を効率的に反映する仕組みですが、変更結果の妥当性を保証するものではありません。変更後の形状、干渉、組立性、製造性を設計者が確認することが必要です。
設計変更時に確認したいポイント
スケルトンを変更した後は、関連部品が正常に更新されたかを確認します。最初に見るべきなのは、3D CAD上のエラー表示だけではありません。部品の位置、向き、外形、穴位置、取付面などが設計意図どおりに変化しているかを確認します。
全長や全幅を変更した場合は、固定する側が動いていないかを確認します。片側固定の設計にもかかわらず、中央を基準として両側が動いていれば、既存設備や周辺構造との接続位置がずれる可能性があります。
軸間距離を変更した場合は、軸受、シャフト、回転部品、カバー、駆動部など、同じ軸を参照する部品を確認します。中心軸だけが動き、関連する穴や支持部品が追従していない場合は、部品内に独立した基準が残っている可能性があります。
取付高さを変更した場合は、部品同士の接続だけでなく、配管、ケーブル、保守空間、作業姿勢への影響も確認します。形状同士が干渉していなくても、工具を入れる空間や部品を取り外す経路が失われていることがあります。
可動部を含む場合は、初期位置だけでなく、移動途中と両端位置を確認します。回転部では複数の角度、直線移動部では複数の移動量で干渉を確認します。スケルトン上の可動範囲が仕様上の限界と一致しているかも確認します。
図面や関連資料への反映も必要です。3D CADモデルが更新されても、部品図、組立図、加工情報、検査位置、据付座標などが古い状態のままでは、製造や現場作業でずれが発生します。変更された基準や寸法がどの成果物へ影響するかを整理します。
変更前後の比較も有効です。全体寸法、主要部品の座標、質量、重心、可動限界などを比較し、変更対象外の項目が大きく変化していないか確認します。意図しない変化が見つかった場合は、不要な参照や固定条件の誤りを調べます。
設計変更では、更新できたかどうかではなく、設計意図を維持したまま更新されたかどうかを確認することが重要です。
スケルトン設計を導入する実務手順
既存の設計業務へスケルトン設計を導入するときは、最初からすべての製品を複雑な構成へ変更する必要はありません。まず、設計変更が多く、部品間のずれが発生しやすい製品やユニットを対象にします。
最初に、過去の設計変更で修正漏れが起きた箇所を整理します。軸位置、取付穴、外形寸法、配管経路、カバーとの隙間など、複数部品にまたがる情報を特定します。これらが、スケルトンへ集約する候補です。
次に、製品全体の原点、座標軸、固定基準を決めます。既存図面や製造工程、据付方法、検査方法を確認し、設計だけでなく後工程でも利用できる基準を選びます。
その後、主要な基準面、中心軸、配置点、外形境界を作成します。この段階では、細かな部品形状を作り込まず、製品全体の成立条件を表現することを優先します。主要ユニットの位置関係、接続位置、可動領域などが確認できる状態を目指します。
共有寸法をスケルトンへ登録し、どの値を変更するとどの要素が動くかを確認します。代表的な寸法を一時的に変更し、固定側と可動側が意図どおりに動くかを検証します。
次に、個別部品をスケルトンへ接続します。一度にすべての部品を移行するのではなく、ずれが発生しやすい主要部品から進めると、問題を切り分けやすくなります。部品内の細かな形状は保持しつつ、配置や共有寸法に関わる基準だけをスケルトンへ置き換えます。
移行後は、複数の設計変更を想定して動作を確認します。全幅、軸間距離、取付高さ、ユニット位置などを変更し、参照エラーや意図しない変形がないかを確認します。
最後に、命名規則、参照ルール、変更権限、確認項目を文書化します。スケルトンの作成者だけが理解できる状態では、担当者が変わった際に運用できません。別の設計者がモデルを開き、主要な基準と変更方法を理解できる状態にします。
3D CADデータと現場の位置情報をつなぐ方法
スケルトン設計で定義した原点や座標軸は、製造、組立、据付、検査に引き継ぐことで、さらに効果を発揮します。3D CAD内だけで基準を統一しても、現場が別の基準を使っていれば、設計と現物の位置関係を正しく比較できません。
大型設備や構造物を据え付ける場合は、スケルトン上の基準点と現場で確認できる測定点を対応させます。設計原点、軸方向、高さ基準、据付点などを共有し、現物の位置を同じ考え方で確認できるようにします。
3D CAD上の原点が製品内部にあり、完成後に測定できない場合は、外部から確認できる基準点との位置関係を定義します。基準穴、外側の角、測定用の目印などを設け、原点からの距離や方向を管理します。
現場で取得した点群や座標を3D CADと比較するときは、単位、原点、軸方向、高さ基準を合わせます。座標系が異なるまま重ねると、形状そのものは正しくても、全体が回転したり平行移動したりして表示されます。
位置合わせに使用した点も記録します。どの設計基準とどの現場測定点を対応させたのかが分からなければ、表示されたずれが施工誤差なのか、位置合わせの誤差なのか判断できません。
設計変更で基準点や部品位置が変わった場合は、現場へ渡す座標や3Dデータも更新します。古いデータが残っていると、3D CAD上では整合していても、現場では変更前の位置を基準に作業する可能性があります。
屋外の設備や構造物について、設計位置と現況を確認する場合は、位置情報を取得できる機器と3D CADデータを組み合わせる方法があります。スケルトンで定義した基準点を現場で再現できれば、据付位置の確認、既設物との位置関係の把握、施工後の記録などへつなげやすくなります。
LRTK Phoneを活用して現場の位置情報や3Dデータを取得する場合も、最初に3D CAD側の座標系と基準点を整理することが重要です。設計上の原点と現場の基準を対応させることで、設計データと現況を比較しやすくなります。
まとめ
3D CADのスケルトン設計は、製品全体の原点、座標軸、基準面、中心軸、主要寸法、部品配置、可動範囲などを共通の基準モデルへ集約し、各部品を同じ設計意図に従わせる方法です。
部品間のずれを防ぐためには、最初に製品全体の原点と座標系を統一し、変更されにくい位置を基準として固定します。次に、設置面、中央面、主要軸などの基準要素をスケルトン上へ定義し、複数部品が同じ基準を参照できる状態にします。
軸間距離、取付高さ、部品間隔、必要隙間など、複数部品で共有する寸法はスケルトンへ集約します。ただし、部品単体で完結する細かな寸法まで集約すると複雑になるため、製品全体へ影響する情報を選ぶことが重要です。
部品同士の直接参照は必要な範囲に限定し、基本的な情報の流れをスケルトンから各部品への一方向にそろえます。大規模な製品では、全体スケルトン、ユニットスケルトン、個別部品という階層を作ることで、参照関係を整理できます。
また、固定要素、変更要素、計算結果を区別し、どの寸法を変更するとどちら側へ形状が動くのかを明確にします。現在の形状が合っているだけでなく、設計変更後も意図した関係を維持できることが、安定した3D CADモデルの条件です。
基準要素には役割が分かる名称を付け、変更権限、版管理、更新後の確認方法を標準化します。スケルトンを変更した後は、計算エラーの有無だけでなく、部品位置、干渉、隙間、可動範囲、組立性、関連図面への反映まで確認します。
スケルトン設計で整理した座標系や基準点は、製造、組立、据付、検査にも活用できます。3D CAD上の基準と現場の測定基準を対応させれば、設計位置と現況の比較や、据付後の位置確認を行いやすくなります。
現場で設計座標や3Dデータを確認する際は、LRTK Phoneを利用した位置情報の取得も選択肢になります。3D CADのスケルトンで統一した基準を現場へ正しく引き継ぐことで、設計から製造、施工、据付、検査まで、一貫した位置管理につなげられます。