LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで治具設計の干渉と作業性を見直す6つのポイント

治具設計で3D CADによる干渉と作業性の確認が重要な理由

治具は、加工、組立、検査、測定などの工程でワークを所定の位置に保持し、作業を安定させるために使用されます。治具そのものの形状が成立していることはもちろん重要ですが、実際の現場では、形状が成立しているだけでは十分ではありません。ワークを治具へ入れられるか、固定操作ができるか、工具を使えるか、作業後に無理なく取り出せるかまで確認する必要があります。

3D CADを使うと、治具、ワーク、可動部などの位置関係を立体的に把握できます。二次元図面では分かりにくい奥行き方向の接近や、斜め方向から見たときの干渉を確認しやすくなるため、治具設計との相性が良い手法です。

一方で、3D CAD上で部品同士の接触がないことを確認しただけでは、現場で使いやすい治具になっているとは限りません。モデルが静止している状態では問題がなくても、ワークを挿入する途中でフレームに当たることがあります。クランプを閉じた状態では収まっていても、開放時にハンドルが隣の部品へ当たることもあります。

さらに、工具の先端が作業位置へ届いていても、工具本体を保持する手のスペースが不足していれば、実作業では扱いにくくなります。締結箇所が見えにくい、確認面が治具の陰になる、交換部品を抜き取る方向に別の部材があるなど、干渉判定だけでは評価しにくい問題も少なくありません。

そのため、3D CADを使った治具設計では、単純な「接触の有無」から一歩進み、「作業の流れの中で必要な空間が確保されているか」を確認することが重要です。

特に繰り返し使用される治具では、わずかな作業性の差が積み重なります。毎回ワークを大きく傾けなければならない、操作のたびに姿勢を変える、締結部が見えないため手探りで作業するといった状態は、継続的な作業負担につながります。

治具設計で確認する範囲は、治具単体だけではありません。ワーク、工具、作業者、周辺設備、保守作業まで含めて考えることで、製作後の修正を減らしやすくなります。ここからは、3D CADを活用して治具の干渉と作業性を見直す際に確認したい6つのポイントを詳しく解説します。

ポイント1:ワークの着脱経路を含めて干渉を確認する

治具設計で最初に確認したいのが、ワークを治具へ取り付けるときと、作業終了後に取り外すときの経路です。

3D CADではワークを治具の完成位置へ配置した状態を簡単に確認できます。しかし、実際の作業ではワークが最初からその位置に存在するわけではありません。治具の外から運び込み、位置決め部へ近づけ、所定の姿勢まで移動させる必要があります。

完成状態では干渉していなくても、その途中で治具の支柱やクランプ、位置決め部に当たる場合があります。特に、ワークを囲い込むような治具、複数の突起を持つワーク、開口部へ部品を差し込む構造では、着脱経路の確認が重要です。

3D CADで確認するときは、ワークを完成位置だけに置くのではなく、実際の作業を想定して移動させます。上から下ろすのか、横方向から差し込むのか、斜めに入れて途中で姿勢を変更するのかによって必要な空間は異なります。

例えば、ワークを上方からセットする治具では、ワーク上面から治具上部の構造物まで十分な空間があるかを確認します。位置決めピンから外すために一度上へ持ち上げる必要がある場合、その持ち上げ量も考慮します。最終位置では数十ミリメートルの余裕があっても、着脱途中ではより大きな空間が必要になることがあります。

横方向から差し込む場合は、入口付近だけではなく、ワークの後端や側面が通過する範囲まで確認します。ワークの一部が先に治具へ入ることで、後端が大きく振れる場合もあります。

大型のワークでは、搬送時に使用する装置や吊り具なども考慮します。ワーク本体だけが通過できても、それを保持する部分が治具へ接触する可能性があるためです。小型ワークであっても、作業者が両手で持った状態を想定すると、ワーク周辺に一定の作業空間が必要になります。

取り付け側だけでなく、取り外し側も同じように確認する必要があります。加工、組立、溶接などの工程では、作業前と作業後でワークの外形が変わる場合があります。別部品を組み付けることで外形が大きくなる場合、取り付け時には通れた経路を完成品が通れなくなる可能性があります。

そのため、可能であれば作業開始時と終了時の両方の形状を3D CAD上に用意し、それぞれの着脱経路を確認します。

また、必要以上に複雑な取り付け動作になっていないかも重要です。理論上は斜めに入れて少し回転させればセットできるとしても、毎回その動作が必要な治具は作業者によってセット方法に差が出る可能性があります。できるだけ単純な方向で着脱できる構造にできないかを検討します。

3D CADでワークを動かしながら確認することで、「完成位置に入るか」ではなく、「現場で自然な動きで完成位置まで持っていけるか」という視点で設計を見直せます。

ポイント2:工具と作業者の操作スペースを確認する

治具とワークの間に干渉がなくても、工具を使用するための空間が不足していることがあります。治具設計では、工具先端が作業箇所へ届くことだけでなく、工具本体と作業者の手を含めて操作できるかを確認する必要があります。

例えば、締結部の正面に空間があるように見えても、その近くに支柱が配置されていると、工具本体を正しい向きに構えられないことがあります。工具を大きく傾ければ届くとしても、本来想定する方向から操作できないのであれば、作業性に問題が残ります。

3D CADで検討するときは、実際に使う工具のおおまかな外形をモデル化して配置すると確認しやすくなります。工具の内部構造や細かな形状まで再現する必要はありません。全長、幅、高さ、グリップ部分など、周辺との干渉に関係する外形が分かれば、空間検討に利用できます。

重要なのは、工具を一度配置できるかどうかではなく、操作に必要な動作範囲を確認することです。締め付け作業で回転動作が必要なら、その方向へ動かせるかを見ます。工具を差し込んだ後に引き抜く必要があれば、引き抜き方向にも障害物がないかを確認します。

工具を持つ手の位置も考慮します。モデル上では工具と治具の間に隙間があっても、作業者の指や手の甲が入らない場合があります。操作レバーやハンドルについても、手を掛けるために必要な空間を確保することが重要です。

作業者が対象部分を見ながら作業できるかという視点も欠かせません。3D CADでは工具と部品の干渉だけを確認しがちですが、締結位置や検査位置が治具の陰になっていると、作業状態を目視しにくくなります。

特に位置合わせが必要な工程では、視認性の不足が作業時間や確認のしやすさに影響します。作業者がどの方向に立つのかを想定し、その位置から作業箇所が見えるかを3D CAD上で確認します。

治具の奥深い場所に操作箇所を配置している場合も注意が必要です。手は届いても、身体を大きく前へ倒さなければ操作できない設計では、繰り返し作業に向かない場合があります。頻繁に扱う操作部ほど、無理の少ない位置へ配置できないかを検討します。

作業内容によっては、両手を使う場合もあります。一方の手でワークを保持しながら、もう一方の手でクランプを操作する工程なら、両方の動作を同時に行える空間が必要です。

3D CADでの工具アクセス確認は、「届く」「届かない」という二択だけで判断せず、「正しい姿勢で操作できるか」「手を安全に動かせるか」「作業対象を確認できるか」という観点まで広げることが重要です。

ポイント3:クランプや可動部の全ストロークを確認する

治具にはワークを固定するクランプ、押さえ機構、スライド機構、回転部、開閉部など、さまざまな可動要素が使われます。こうした部品は、固定状態だけでなく、動作範囲全体で干渉を確認する必要があります。

よくある問題の一つが、ワークを固定した状態では問題がないものの、クランプを開いたときに別の部材へ接触するケースです。設計時に完成状態を中心に確認していると、開放側の空間が不足していることがあります。

3D CADでは、クランプを閉じた状態、途中の状態、最大まで開いた状態など、複数の姿勢を確認します。回転する部品の場合は、始点と終点だけではなく、その途中で描く軌跡まで見ることが大切です。

例えば長いハンドルを回転させる機構では、ハンドルの先端が大きな円弧を描きます。開始位置と終了位置では周辺部品から離れていても、中間位置で支柱に最も近づくことがあります。

スライド部の場合も、収納位置と最大ストローク位置だけでは不十分な場合があります。スライドに取り付けた別部品が途中で固定部へ近づくなど、移動中にだけ発生する干渉があるためです。

また、可動部品単体ではなく、その先に取り付けられている構成まで含めて確認します。クランプアームに押さえ部品が付いているなら、押さえ部まで含めた軌跡を確認します。ハンドルが付いているなら、ハンドル先端も対象です。

配線や配管が可動部と一緒に動く構造の場合は、それらの経路にも注意します。3D CAD上の剛体部品には干渉がなくても、実物では配線などが引っ張られたり、別部材へ接触したりすることがあります。詳細な変形挙動まで再現しない場合でも、余裕のある取り回しになっているかを確認しておくことが重要です。

可動部とワークの寸法ばらつきについても考慮します。3D CAD上の理想的な形状でぎりぎり干渉しない状態では、現物の寸法差、組付け状態、治具の調整状態によって接触する可能性があります。

必要なクリアランスは用途や要求精度によって異なるため、一律の数値で判断するのではなく、対象となるワークや治具の条件に合わせて決める必要があります。

複数の可動部がある治具では、動かす順番も確認します。特定の順番で操作すれば成立するものの、順序を変えると干渉する構造では、現場で操作ルールを明確にする必要があります。可能であれば、誤った順番でも重大な干渉が起きにくい構造にできないか検討します。

3D CADを使った可動範囲の検討では、静止状態の部品を眺めるだけでなく、「この部品がここからここまで動く間に、周辺との距離がどう変化するか」を意識することで、実際の操作時に発生する問題を見つけやすくなります。

ポイント4:位置決め部と逃げ形状を見直す

治具には、ワークを一定の位置に再現性よく配置するための位置決め機能が必要です。しかし、位置決めを優先してワークと治具を必要以上に密着させると、かえってセットしにくくなる場合があります。

3D CADで位置決め部を確認するときは、どの面や点を基準として使用し、どこは接触させる必要がないのかを明確にします。

ワークには、設計上の形状だけでなく、実際の製造による寸法差や表面状態の違いがあります。加工方法によっては角部の状態が変わったり、接合部分にわずかな形状差が生じたりすることもあります。そのため、理想的な3Dモデルに全面密着するような治具形状が、必ずしも実物に適しているとは限りません。

位置決めに必要な箇所は確実に接触させ、それ以外については必要に応じて逃げを設けます。これにより、基準としたい箇所以外が先に当たり、ワークが浮いてしまう状態を避けやすくなります。

例えば、ワーク下面を支持する治具では、広い面をすべて受けるよりも、目的に応じて支持位置を整理した方が状態を把握しやすい場合があります。不要な部分に適切な逃げを設ければ、小さな異物や形状差の影響を受けにくくできます。

位置決めピンを使用する場合は、穴とピンの完成位置だけを見るのではなく、ワークがピンへ入っていく過程を確認します。作業者がワークを多少傾けた状態でも自然に位置を合わせられるか、入口で引っ掛かりやすくなっていないかを確認します。

複数の位置決め要素を組み合わせるときは、過剰な拘束になっていないかも検討が必要です。3D CAD上ではすべての位置決め部が完全に一致しますが、現物では各部の寸法ばらつきが存在します。複数箇所を必要以上に厳しく規制すると、すべての条件を同時に満たせず、ワークが入りにくくなる場合があります。

どの方向をどの位置で規制するのかを整理し、それぞれの位置決め要素に明確な役割を持たせることが重要です。

加工くずや粉じんなどが発生する工程では、位置決め部の清掃性も考えます。基準面の周囲に深い溝や狭い隙間があると、異物が入り込んで除去しにくくなる可能性があります。

異物が位置決め部へ残ったままワークをセットすると、設計上の基準位置からずれる要因になります。そのため、3D CAD上で基準面へのアクセス性や、清掃しやすい形状になっているかも確認します。

治具設計では、3D CAD上で部品をぴったり合わせることが目的ではありません。現物のワークを繰り返しセットしたときに、必要な位置で安定して保持できることが重要です。位置決めに必要な接触と不要な接触を分けることで、精度と作業性を両立しやすくなります。

ポイント5:組立・調整・清掃・保守まで含めて確認する

治具の作業性というと、ワークをセットして実際の作業を行うときの使いやすさに注目しがちです。しかし、治具自体を組み立てる工程、位置を調整する工程、清掃する工程、消耗部品を交換する工程まで確認しておくことも重要です。

3D CAD上では、すべての部品を一度に完成位置へ配置できます。そのため、モデルとしては成立していても、実際の組立順序では取り付けられない構造を見落とす可能性があります。

例えば、先にプレートを固定すると、その奥にある締結部へ工具が届かなくなる場合があります。逆に奥の部品を先に取り付けると、後から位置決め部品を挿入できないこともあります。

治具を設計したら、主要部品をどの順番で組み立てるのかを3D CAD上で追い、締結部へ工具を入れられるかを確認します。

調整機構についても同様です。治具の設置後に微調整が必要な箇所がある場合、調整用の操作部へ工具を入れられること、調整中に基準となる位置を確認できることが必要です。

調整ねじにはアクセスできても、工具を取り付けると測定箇所が見えなくなるような構造では、作業が複雑になります。測定と調整を繰り返す工程を想定し、どの方向から操作するのかを確認します。

消耗する可能性がある部品は、交換経路まで確認します。接触部、受け部、押さえ部などが交換対象になる場合、締結を外した後にどの方向へ抜くのかを3D CAD上で確認します。

画面上で交換対象部品だけを非表示にできたとしても、それは現物で交換できることを意味しません。現実には部品を直線的に引き抜いたり、持ち上げたりする空間が必要です。

交換のたびに治具の大部分を分解しなければならない構造では、保守に時間がかかります。定期交換を想定する部品ほど、周囲を大きく分解せず交換できるよう検討することが有効です。

清掃性も重要な確認項目です。加工や組立の工程によっては、切粉、粉じん、油分などが治具へ付着する場合があります。狭い隙間や深い凹部が多いと、清掃用具が届きにくくなります。

特に位置決め面やワーク支持面の周辺は、汚れや異物の残留が位置決め状態に影響する可能性があります。3D CADで形状を見る際には、汚れが入り込みやすい空間がないか、清掃時に手や用具が届くかという視点も持つことが大切です。

治具は製作した瞬間だけ使えればよいものではありません。使用期間を通じて組立、調整、確認、清掃、交換を行いながら状態を維持します。そのため、治具設計の段階から保守作業までを3D CAD上で想定しておくことが、長期的な作業性の確保につながります。

ポイント6:周辺設備と実際の使用環境まで含めて確認する

治具単体の3D CADモデルで干渉がなくても、現場へ設置すると問題が起きる場合があります。理由の一つは、実際に治具を使用する場所には、治具以外の設備や構造物が存在するためです。

治具の周囲には、作業台、設備フレーム、搬送設備、棚、配線、配管、安全対策用の構造、通路などがあります。これらを無視して治具だけを確認すると、設置後に初めて干渉が判明することがあります。

可能であれば、3D CAD上に周辺設備の概略モデルを配置します。詳細形状をすべて作る必要はなく、干渉や作業スペースの判断に必要な外形を表現するだけでも有効です。

治具を設置したときに周囲との距離が十分か、可動部を最大まで開けるか、ワークを搬入できるか、作業者が想定位置に立てるかを確認します。

特に注意したいのが、治具の外形から一時的に飛び出す部品です。クランプのハンドルや開閉部などは、収納状態では治具の範囲内に収まっていても、操作すると通路側へ張り出す場合があります。

治具の設置位置だけでなく、作業中に使う空間まで含めて考えることで、周辺との干渉を発見しやすくなります。

ワークの搬入と搬出に必要なスペースも確認します。治具の正面に十分な空間があっても、そこが別工程の通路として使用されている場合や、仮置き品が存在する場合があります。実際の工程を考えるなら、ワークをどこから持ってきて、作業後にどこへ置くのかまで想定した方が現実的です。

高さ方向の確認も重要です。床から治具までの高さ、ワークの最高位置、周辺設備の張り出しなどを同じ基準で確認します。大型ワークを上方から搬入する場合には、上部の構造物が障害になる可能性もあります。

既存設備に治具を追加する場合には、設計時の図面と現在の現場が一致しているかを確認することも必要です。運用中に部品が追加されていたり、周辺設備の配置が変更されていたりする場合があります。

そのため、現地寸法や現場写真などを確認しながら、3D CAD上の検討条件が実際の状態と合っているかを確認します。

治具の設計範囲を治具の外周で終わらせず、実際に人と物が動く範囲まで広げることで、干渉チェックを現場で役立つものにできます。

3D CADで治具設計をレビューするときの進め方

治具の干渉と作業性を効率よく確認するには、レビューの順番を決めておくことが有効です。細かな部品形状から確認を始めると、工程全体に関わる大きな問題を後から発見することがあります。

まず、治具の目的と作業工程を整理します。どのワークを何のために保持するのか、作業前の状態はどうなっているのか、治具上でどの作業を行い、作業後にワークがどの状態になるのかを明確にします。

次に、ワークの搬入から取り出しまでを確認します。セット前の位置から完成位置まで移動させ、治具との干渉がないかを見ます。作業後にワーク形状が変わる場合には、その状態で取り外せるかも確認します。

続いて、位置決めと固定を確認します。ワークが基準位置へ自然に入るか、不要な箇所へ接触していないか、クランプを操作できるかを確認します。

その後に、工具アクセスを確認します。作業に使用する工具の外形を3D CAD上へ配置し、治具、ワーク、クランプなどとの干渉を見ます。工具を使う際の回転、挿入、引き抜きなどの動作も考慮します。

可動部は全ストロークを確認します。開閉の端点だけでなく、途中の状態も対象にします。複数の可動部がある場合は、操作順序による違いも確認します。

さらに、組立、調整、清掃、交換などの保守作業を確認します。日常の作業では使用しない箇所であっても、治具の維持には必要になるためです。

最後に、周辺環境を含めた状態で確認します。現場配置が分かっているのであれば、周辺設備の概略形状を配置し、治具の操作空間、ワークの搬入経路、作業者の立ち位置を確認します。

こうした順序でレビューを行うことで、最初に工程全体の成立性を確認し、その後に個別部品の詳細へ進めます。3D CAD上の確認項目を一定にすることは、担当者による見方のばらつきを減らすうえでも有効です。

問題が見つかった場合には、単に形状を変更して終わらせるのではなく、原因を整理します。ワークの着脱方向を考慮していなかったのか、工具の大きさがモデルに入っていなかったのか、周辺設備の情報が不足していたのかを把握します。

原因まで整理できれば、次回の治具設計で同じ種類の問題を早い段階から確認できるようになります。

干渉チェックだけでは見つけにくい作業性の問題

3D CADの干渉チェックは、部品同士が重なっている箇所を見つけるために有効ですが、干渉がゼロであれば作業性にも問題がないとは限りません。

例えば、二つの部品の間にわずかな隙間があり、3D CAD上では干渉していないとします。しかし、その隙間へ作業者が手を入れる必要があるなら、十分な作業空間とはいえない場合があります。

工具でも同様です。工具と治具の間に数ミリメートルの隙間があるため接触判定にはならなくても、工具を回転させられなければ締結作業はできません。

視認性も干渉チェックだけでは判断しにくい要素です。ワーク、工具、治具がどこにも接触していなくても、作業箇所が支柱の裏側にあり、作業者から見えないことがあります。

ワークを保持する際の手の位置も同様です。ワーク本体の移動経路には干渉がなくても、作業者が持つ場所と治具が近すぎれば、セット途中に手を持ち替える必要が生じます。

このような問題を見つけるためには、3D CAD上で「物」だけを見るのではなく、「行為」を考える必要があります。

誰がどこからワークを持つのか、どの方向へ移動させるのか、どの工具をどの向きから入れるのか、作業中に何を見る必要があるのかを整理します。

また、作業順序によって必要な空間が変化する場合もあります。最初の工程では十分な空間があっても、別部品を組み付けた後にはアクセスできなくなることがあります。

そのため、工程ごとの状態を3D CAD上で確認し、作業が進むにつれて何が変化するのかを見ることが大切です。

干渉チェックは治具設計の重要な確認手段ですが、それだけでレビューを完了させないことがポイントです。数値的な接触判定と、人が作業できるかという視点を組み合わせることで、設計段階で発見できる課題を増やせます。

現場で見つかった課題を次の治具設計へ反映する

3D CAD上で十分に検討した治具でも、実際に使用すると新しい課題が見つかることがあります。これは必ずしも設計検討が不足していたという意味ではありません。実際のワークのばらつき、作業者の動き、現場環境など、設計段階では完全に再現しにくい条件があるためです。

重要なのは、現場で見つかった問題をその場限りの修正で終わらせないことです。

例えば、工具を入れにくい場所が見つかった場合、治具の一部を削って対応するだけでは、次の治具で同じ配置を繰り返す可能性があります。

どの作業で、どの工具を使い、どの部位が障害になったのかを記録し、3D CADモデル上でも該当位置を確認します。

ワークを取り出しにくかった場合も、「取り出しにくい」という感想だけで終わらせず、どの方向へ動かすと、どの箇所が接近したのかを確認します。

治具へ現地修正を加えた場合には、その内容を3D CADデータへ反映しておくことも重要です。現物だけが変更され、設計データが古いまま残ると、再製作時に修正前の形状へ戻ってしまう可能性があります。

治具を改良した理由も合わせて管理しておけば、類似治具を設計するときの参考になります。

また、問題だけでなく、使いやすかった設計も蓄積すると有効です。操作しやすかったハンドル位置、交換しやすい受け部の構造、清掃しやすかった逃げ形状などを設計上の知見として残せば、次の案件で再利用できます。

3D CADは形状を作成するだけの道具ではなく、設計と現場の知見を結び付けるためにも活用できます。

治具ごとに新しく設計する部分が多くても、過去の問題と改善内容を確認できれば、同じ失敗を繰り返す可能性を抑えられます。現場で得た情報を3D CADへ戻す流れを作ることで、治具設計を継続的に改善しやすくなります。

LRTK Phoneで現場情報を記録して3D CAD設計へつなげる

治具が工場内だけで使用されるとは限りません。大型設備に取り付ける治具、現地組立で使用する治具、施工現場で使う治具などでは、設置場所そのものの情報が設計条件に関係する場合があります。

こうした治具では、3D CADモデルだけを見て設計するのではなく、実際の現場状態を把握することが重要です。

既存設備の近くへ治具を設置する場合、現場では後から追加された設備や部材が存在していることがあります。配管や構造物などの位置が設計時の資料と異なっていれば、3D CAD上では問題のなかった治具が現場で干渉する可能性があります。

現場確認では、寸法だけでなく、「どの位置を確認したのか」を残しておくことも大切です。広い設備や施工現場では、写真だけを後から見ても撮影場所が分かりにくくなることがあります。

このような場面では、LRTK Phoneを使い、現場の位置と写真などを関連付けながら記録する方法を検討できます。

例えば、治具の設置候補位置、干渉が懸念される既存構造物、設計変更が必要になった場所などについて、現地の位置情報と写真を記録しておけば、設計担当者が3D CAD上で確認すべき場所を整理しやすくなります。

治具を設置した後に問題が見つかった場合にも、発生位置と現場状況を記録しておけば、設計側へ伝える情報をまとめやすくなります。

また、改修後に同じ場所を再確認したい場合にも、位置を手掛かりに記録を整理できます。現場と設計担当者が離れた場所にいる場合には、写真だけでなく位置を合わせて共有できることが、状況確認の補助になります。

ただし、LRTK Phoneなどで取得した現場情報を、すべての治具寸法や加工精度を直接決定するために使用するのではなく、用途に応じて必要な測定方法と組み合わせることが重要です。

治具の位置決め精度、加工精度、現場で必要となる位置確認の精度はそれぞれ異なるため、目的を明確にして使い分けます。

3D CADで治具そのものを設計し、LRTK Phoneで現場の位置や状況を記録することで、設計室と現場の情報を結び付けやすくなります。

特に既存設備との取り合いや現場条件の影響が大きい治具では、設計前の現地確認、設計中の照合、設置後の改善という流れを継続して管理することが重要です。

まとめ

3D CADを使った治具設計では、完成状態で部品同士が干渉していないことだけを確認しても十分とはいえません。実際の現場では、ワークの搬入、位置決め、固定、作業、固定解除、取り外しという一連の動作が発生するため、その途中で必要になる空間まで含めて検討する必要があります。

1つ目のポイントは、ワークの着脱経路を確認することです。最終位置だけを見るのではなく、どの方向から治具へ入れ、どの方向へ取り出すのかを3D CAD上で確認します。

2つ目は、工具と作業者の操作スペースです。工具先端が作業位置へ届くだけでなく、工具本体を動かせるか、作業者の手が入るか、対象箇所を目視できるかまで確認します。

3つ目は、クランプや可動部の全ストロークです。閉じた状態と開いた状態だけでなく、動作途中の軌跡も対象にすることで、静止状態では見つからない干渉を確認しやすくなります。

4つ目は、位置決め部と逃げ形状です。位置決めに必要な接触箇所を明確にし、それ以外は適切な逃げを設けることで、現物のばらつきや異物の影響を受けにくい治具を検討できます。

5つ目は、組立、調整、清掃、保守まで含めた確認です。治具は完成後に繰り返し使用されるため、消耗部品の交換や調整が無理なく行えるかを設計時から考えることが重要です。

6つ目は、実際の使用環境との関係です。周辺設備、作業通路、ワークの搬入経路などを含めて確認することで、治具単体では見えなかった干渉を発見しやすくなります。

3D CADの干渉チェックは有効な機能ですが、接触判定の結果だけで治具の良し悪しを決めるものではありません。「誰が、どこから、何を、どのように動かすのか」を具体的に考え、その動作に必要な空間を3D CAD上で確認することが重要です。

さらに、実際に使用して分かった問題や改善内容を3D CADデータへ反映していけば、治具設計の知見を次の案件へ引き継ぎやすくなります。

現場条件が設計へ影響する治具では、現地の位置や写真などの情報を整理することも重要です。LRTK Phoneを活用して現場の位置と状況を記録し、3D CADによる設計検討とつなげることで、現場確認から設計、設置後の見直しまでを一貫した情報として管理しやすくなります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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