3D CAD導入では価格だけでなく総合的な運用負担を比較する
3D CADの導入を検討するとき、最初に比較しやすいのが価格です。しかし、実務で長期間使用することを考えると、導入時の負担だけを見て3D CADを選ぶ方法では十分とはいえません。必要な機能、利用人数、パソコン環境、データ管理方法、教育時間、保守、将来的な拡張まで含めて比較する必要があります。
3D CADは、単に2D図面を立体化するためのソフトウェアではありません。部品や構造物を3次元モデルとして作成し、そのモデルを設計変更、干渉確認、図面作成、製造、施工、検査などへ利用することで、設計情報を複数工程へ展開できる点に大きな特徴があります。
一方、3D CADを導入すれば自動的に業務が効率化されるわけではありません。現在の業務フローに合わない環境を選ぶと、操作が複雑になったり、既存データとの変換作業が増えたりして、かえって業務負担が大きくなる場合があります。高機能であることと、自社にとって使いやすいことは必ずしも同じではありません。
特に注意したいのが、導入後に発生する運用コストです。3D CADを快適に利用するには、扱うモデルによって一定のパソコン性能が必要です。設計者が増えれば、教育やデータ共有の仕組みも必要になります。さらに、設計データが蓄積されるほど、バックアップやバージョン管理、アクセス権限などの管理も重要になります。
そのため、3D CADを比較するときには「利用開始時にどの程度の負担があるか」だけではなく、「数年間使い続けた場合にどのような作業とコストが発生するか」という視点が欠かせません。
3D CAD導入の目的も明確にしておく必要があります。設計時間を短縮したいのか、設計変更を効率化したいのか、部品間の干渉を事前に確認したいのか、製造や施工へ3Dデータを引き渡したいのかによって、重視すべき機能は変わります。
目的が曖昧なまま比較すると、機能数や目立つ特徴だけで選びやすくなります。反対に、自社が解決したい課題を先に整理すれば、本当に必要な機能と不要な機能を区別でき、比較もしやすくなります。
ここからは、3D CAD導入前に確認しておきたい7つの比較項目を、価格、機能、運用コストという観点から詳しく解説します。
比較項目1 導入時と継続利用時に必要となるコスト
3D CADのコストを比較するときは、導入時だけではなく、継続利用を含めた総保有コストとして考えることが重要です。
3D CADの利用形態は一様ではありません。一定期間利用する契約方式や、利用する機能によって構成が変わる方式などがあり、必要な条件は利用人数や業務内容によって変化します。そのため、表面的な導入条件だけを比較しても、実際の総コストを判断できない場合があります。
まず整理したいのが、誰がどの機能を使用するのかです。設計モデルを作成する担当者と、モデルを確認するだけの担当者では、必要な機能が異なる可能性があります。全員に同じ環境を用意するのではなく、担当業務ごとに必要な範囲を整理することで、過剰な構成を避けやすくなります。
次に確認したいのが、追加機能の必要性です。基本的な3Dモデリングだけで業務が完結する企業もあれば、解析、製造支援、データ管理、レンダリング、共同作業などの機能が必要な企業もあります。
導入時には基本機能だけで十分だと考えていても、運用を始めてから別機能が必要になるケースがあります。例えば、3Dモデルを作れるようになったことで、次はモデルを利用した解析や製造工程へのデータ連携を行いたくなる場合があります。このような拡張まで想定しておくことが重要です。
また、3D CADそのもの以外に必要になる費用もあります。代表的なのがパソコン環境です。現在使用している事務用パソコンで十分に動作するとは限りません。大型モデルや多数の部品から構成されるアセンブリを扱う場合は、パソコンの更新が必要になる可能性があります。
データ保存環境もコストに含める必要があります。3D CADでは、部品データ、アセンブリデータ、図面、変換ファイルなど複数のデータが発生することがあります。さらに履歴やバックアップを保存する運用であれば、必要な容量は継続的に増えていきます。
教育も見逃せないコストです。新しい3D CADを導入した直後は、担当者が操作方法を習得する時間が必要です。操作研修だけでなく、社内で統一したモデル作成方法やファイル管理ルールを整備する時間も考える必要があります。
このように3D CADの価格を比較するときは、単純な利用条件だけではなく、機器、教育、データ管理、保守などを含めて考えることが大切です。
導入前に数年間の利用を想定し、どのようなコストが発生する可能性があるのかを洗い出しておけば、導入後に想定外の負担が発生するリスクを抑えやすくなります。
比較項目2 自社の設計業務に必要な3D CAD機能
3D CADには数多くの機能がありますが、機能数の多さだけで選ぶべきではありません。重要なのは、自社の業務で頻繁に行う作業を効率よく処理できるかどうかです。
基本的な部品設計では、押し出し、回転、穴、面取り、フィレットなどの形状作成機能が利用されます。こうした基本機能は多くの3D CADで利用できますが、同じ形状を作る場合でも操作手順や修正方法には違いがあります。
特に確認したいのが、設計変更への対応です。実際の設計業務では、一度作成したモデルをそのまま完成まで使用できるとは限りません。寸法変更、穴位置変更、部品追加など、さまざまな変更が発生します。
寸法や拘束条件を利用して設計意図をモデルへ組み込める3D CADでは、元になる寸法を変更することで関連部分を更新できる場合があります。ただし、モデルの作り方が適切でなければ、変更時に意図しない形状になる可能性もあります。
そのため、導入候補を比較するときは、単に形状を作れるかを見るだけでなく、一度作ったモデルをどれだけ修正しやすいかまで確認する必要があります。
複数部品を組み合わせる業務では、アセンブリ機能も重要です。部品同士の位置関係を設定し、完成状態に近い形で確認できれば、設計段階で組立性や干渉を検討できます。
大型装置や設備など部品点数が多い設計では、アセンブリの処理性能も確認しておきたいポイントです。部品数が増えたときに表示や編集が極端に遅くなると、日常的な作業効率が低下します。
干渉確認についても、どの範囲まで対応できるか確認しましょう。静止状態で部品が重なっている箇所を確認するだけでなく、可動部品を動かした際の干渉を検討したい場合もあります。
板金、配管、フレームなどを頻繁に設計する企業では、それぞれに適した専用機能の有無が生産性へ影響します。一般的なモデリング操作だけで形状を作成することも可能ですが、専用機能を使ったほうが修正や図面化を効率化できる場合があります。
自由曲面を多く扱う業務では、サーフェス作成や曲面編集の機能も重要です。反対に、直線や円弧を中心とした一般的な機械部品しか扱わない企業では、高度な自由曲面機能をほとんど利用しないこともあります。
3Dモデルから2D図面を作成する業務では、図面機能も必ず確認しておきましょう。3D CADを導入した後も、製造指示や検査、取引先との情報交換で2D図面が必要になる場合があります。
3Dモデルの変更が2D図面へ適切に反映されるか、寸法や注記を配置しやすいか、必要な図面表現を作成できるかなどを確認する必要があります。
機能比較を行う際は、機能一覧に丸が多いかどうかだけで判断しないことが大切です。自社で頻繁に作成している形状を候補環境で実際に作り、さらに寸法変更や部品交換まで行ってみると、実務での使いやすさを把握しやすくなります。
比較項目3 データ形式と他工程との互換性
3D CADを導入するとき、機能と同じくらい重要なのがデータの互換性です。設計業務は一つの3D CADだけで完結するとは限らないためです。
顧客、協力会社、製造部門、施工部門などと3Dデータを交換する場合、相手側が異なる設計環境を利用していることがあります。その際は、汎用的な中間形式などを利用してデータを受け渡すことになります。
ここで注意したいのは、「ファイルを読み込める」ということと「元データを完全に再現できる」ということは同じではない点です。
3Dモデルを変換すると、形状自体は維持されていても、寸法設定、拘束関係、モデル作成履歴、部品情報などが失われる場合があります。相手から受け取ったデータを参照するだけなら問題にならなくても、そのモデルを編集して再利用する場合には負担が増える可能性があります。
曲面が多いモデルや非常に細かな形状を含むモデルでは、データ変換によって面の欠落や形状の不整合が発生する場合もあります。設計データを製造工程へ利用する場合、このような問題を放置すると後工程へ影響する可能性があります。
そのため、導入前の互換性確認では、単純なサンプルデータではなく、自社で日常的に扱っているデータを使用することが重要です。
過去の2D図面資産をどのように扱えるかも確認しましょう。長年2D CADを利用してきた企業では、既存の図面が大量に蓄積されています。3D CADへ移行したからといって、すべての過去図面を直ちに3D化する必要があるとは限りません。
過去図面を参照しながら新しい3Dモデルを作成したり、一部の図形を再利用したりするケースもあります。そのため、既存の2Dデータをどの程度扱えるかは移行負担に影響します。
また、3D CADで作成したモデルを下流工程へ受け渡せるかも重要です。製造、加工、検査、施工、維持管理などで3Dデータを利用するのであれば、それぞれの工程で必要な形式へ適切に変換できることが求められます。
近年では、現場計測によって取得した点群データを3D CADと組み合わせる使い方もあります。既存設備や構造物を3次元計測し、設計モデルと現況を比較するような用途です。
このような業務を想定する場合は、点群を直接扱えるか、別の処理環境を経由する必要があるか、座標や尺度を適切に維持できるかなども確認しておく必要があります。
3D CADを選定するときは、ソフトウェア単体で考えるのではなく、自社の業務フローの中でどのシステムからデータを受け取り、どの工程へ渡すのかを整理することが重要です。
比較項目4 パソコン性能と周辺環境にかかるコスト
3D CADの操作性は、ソフトウェアそのものだけで決まりません。利用するパソコンの性能も作業効率へ大きく影響します。
導入候補を比較するときは、最低動作条件だけを見るのではなく、自社が実際に扱うモデルを快適に操作できる環境を確認する必要があります。
単純な部品を一つだけ作成する場合と、多数の部品を組み合わせた大型アセンブリを扱う場合では、必要な性能が大きく異なります。
特に作業効率へ影響するのが、モデルを開く時間、回転や拡大縮小を行ったときの表示、形状変更後の再計算、図面作成などです。
一回の待ち時間がわずかでも、一日に何度も発生すれば年間では大きな差になります。設計者が処理終了を待つ時間は、そのまま業務コストになるためです。
パソコンを比較する際には、演算処理性能、メモリ、描画性能、保存装置などを総合的に見る必要があります。ただし、どの部分を重視するべきかは3D CADの処理内容によって異なります。
例えば、大容量モデルを複数開く業務ではメモリ容量が重要になることがあります。一方で、複雑なモデルを頻繁に再計算する場合は、演算処理の性能が作業時間へ影響する可能性があります。
点群などの大容量データを扱う場合は、3D CADモデルだけを利用する場合よりも多くのメモリや保存容量が必要になることがあります。
また、設計者は3D CADだけを起動して作業するとは限りません。資料作成、表計算、コミュニケーション、データ管理など複数のソフトウェアを同時に使用するケースが一般的です。そのため、3D CAD単体の必要条件だけを見て機器を選ぶと、実務では余裕がなくなることがあります。
保存環境も重要です。3D CADでは部品、アセンブリ、図面などが関連しながら保存されることがあります。ファイル数が増えると容量だけではなく、データ読み書きの速度も作業効率に影響します。
社内サーバーやクラウド環境へ保存する場合は、通信速度についても確認が必要です。特に複数拠点から大容量データへアクセスする場合、通信環境によってファイルを開く時間が変わります。
3D CAD導入時には、ソフトウェアの条件とパソコン更新を別々に考えるのではなく、一つのシステムとして検討することが大切です。
既存機器をそのまま使える部署と更新が必要な部署を整理し、今後扱うモデルが大型化することも考慮すると、導入後の追加投資を予測しやすくなります。
比較項目5 教育時間と操作習得にかかる運用コスト
3D CADの運用コストを考えるうえで、教育時間は非常に重要です。新しい環境を導入すると、設計担当者が一定期間学習する必要があります。
特に2D CADから3D CADへ移行する場合は、単に画面上の操作方法を覚えるだけではありません。3次元モデルをどのような構成で作るのかという考え方そのものを身につける必要があります。
3D CADでは、作成する順番や基準の取り方が後の修正に影響する場合があります。見た目が同じモデルでも、作り方によって変更のしやすさが異なることがあります。
そのため、最初に形状を完成させることだけを目標にすると、数か月後の設計変更で大きな修正が必要になる場合があります。
寸法、拘束条件、基準面、基準軸、部品間の関連などを適切に利用し、設計意図を維持できるモデルを作ることが重要です。
教育では、基本操作だけでなく、自社に合ったモデリング方法を決める必要があります。例えば、同じ部品を複数の設計者がそれぞれ異なる方法で作成していると、担当者変更時に修正方法が分かりにくくなります。
ファイル名、部品名、フォルダ構成、基準の設定方法などを標準化しておけば、担当者間の引き継ぎを行いやすくなります。
また、導入当初は3D CADを使うことで作業時間が一時的に増える可能性があります。操作に慣れていないため、従来の2D作業より時間がかかることもあります。
この期間を想定せず、導入直後から高い生産性を求めると、担当者が従来の方法へ戻ってしまう可能性があります。3D CADを社内に定着させるためには、習熟期間を運用計画へ組み込むことが重要です。
社内に詳しい担当者を育成することも効果的です。日常的な疑問を相談できる人がいれば、担当者が問題解決のために長時間作業を止めることを防ぎやすくなります。
さらに、よく発生する操作やトラブルへの対処方法を社内資料として蓄積すると、後から利用者が増えた際にも教育しやすくなります。
3D CADを比較するときは、「初めて触ったときに簡単だった」という印象だけで判断しないほうがよいでしょう。
実務で必要なモデルを作り、変更し、図面化し、保存して他の担当者へ渡すところまで試すことで、実際の習得負担を判断しやすくなります。
利用者が数人であれば教育時間の差は限定的かもしれませんが、多人数へ展開する場合は、一人あたりの習得時間の違いが大きな運用コスト差になります。
比較項目6 データ管理・共同作業・セキュリティ
3D CADを複数人で利用する場合、データ管理の仕組みが非常に重要になります。
少人数の段階では、共有フォルダへファイルを保存するだけでも運用できることがあります。しかし、利用者や案件が増えると、最新版がどれなのか分からなくなる、誤って別の担当者のファイルを上書きする、古いデータを製造へ渡してしまうといった問題が起こりやすくなります。
3D CADでは、複数の部品ファイルを一つのアセンブリから参照する構成になることがあります。そのため、ファイル名や保存場所を安易に変更すると、関連するデータを正しく読み込めなくなる場合があります。
データ管理方法を比較するときは、単純なファイル保存だけでなく、参照関係を維持しやすいかどうかを確認する必要があります。
履歴管理も重要です。設計変更が繰り返される案件では、誰がいつどの部分を変更したのか分かる状態にしておくことが望まれます。
変更前の状態へ戻す必要が生じる可能性もあります。単純にファイル名へ日付を追加して保存する方法では、利用者が増えるほど管理が複雑になりがちです。
複数人で同じ製品を設計する場合は、同時作業への対応も確認する必要があります。一人が編集中のデータを別の担当者が変更した場合にどのように処理されるのか、担当範囲を分割できるかなどを確認するとよいでしょう。
社外へ3Dデータを渡す場合には、セキュリティも重要になります。
3D CADモデルには製品形状だけでなく、内部構造や設計上のノウハウなど重要な情報が含まれる可能性があります。そのため、すべての情報をそのまま渡すのではなく、相手に必要な範囲だけを共有する運用も検討する必要があります。
クラウドを利用する場合には、アカウント管理、認証方法、アクセス権限、データ保存、バックアップなどを確認する必要があります。
企業によっては、社内の情報セキュリティ規程によって利用できる保存方法が限定されることもあります。3D CADを選んだ後に情報システム部門の条件を満たせないことが判明すると、導入計画そのものを見直す必要が生じるため、早い段階で確認しておくことが重要です。
適切なデータ管理環境を構築できれば、3D CADは単なる設計ツールではなく、部門間で設計情報を共有する基盤として活用できます。
設計部門が作成した3Dモデルを製造部門や施工部門が確認できれば、図面だけでは伝わりにくい形状を共有しやすくなります。
そのため、3D CAD導入ではモデル作成機能だけではなく、「完成したモデルを社内でどのように管理し、誰がどのように利用するのか」まで考えることが重要です。
比較項目7 保守・拡張性と将来の業務変化への対応
3D CADは、一度導入すると長期間利用する可能性が高い業務環境です。そのため、現在必要な機能だけではなく、将来の変化に対応できるかも比較しておく必要があります。
導入時には単品の部品設計だけを予定していた企業でも、事業拡大によって大型アセンブリを扱うようになる場合があります。
設計モデルを製造工程へ利用するようになったり、解析やシミュレーションを設計段階へ取り入れたりする可能性もあります。
そのとき、必要な機能を追加できるかどうかは重要な比較項目です。
現在使用しない高度な機能を最初からすべて用意する必要はありません。しかし、将来的に必要になったときに無理なく拡張できる環境であれば、業務の変化へ対応しやすくなります。
反対に、将来必要になる機能へ対応できない場合は、別の環境を追加したり、3D CADそのものを切り替えたりする必要が生じる可能性があります。
3D CADを変更する場合には、単に新しい環境を導入すれば終わりではありません。過去に作成したモデル、図面、部品データを移行する必要があります。利用者の再教育も必要になります。
そのため、将来的な移行コストまで考えると、長期間利用できることは重要な条件です。
データのバージョン互換性も確認しましょう。3D CADでは、使用する世代が異なることでファイルの受け渡しに制約が生じる場合があります。
社内だけであれば更新時期を統一できますが、取引先と3Dデータを交換する場合は相手側の環境も考慮する必要があります。
保守体制も比較したい項目です。3D CADを実務で使用していると、ファイルが正しく開けない、モデルの更新結果がおかしい、変換したデータに問題があるなど、さまざまな疑問が発生する可能性があります。
このような問題が発生した際に、原因を短時間で切り分けられるかどうかは生産性へ影響します。
将来的には、自動化も重要になる可能性があります。定型部品の作成、図面出力、データ変換など、繰り返し発生する作業を自動化できれば、設計者の手作業を減らせる可能性があります。
導入当初は少人数で使用するため必要性を感じなくても、利用者や案件数が増えるほど、標準化や自動化の効果は大きくなります。
3D CAD選定では、現在の業務だけを基準にするのではなく、数年後にどのような設計業務を行っている可能性があるのかを考えることが大切です。
3D CAD比較では実案件による検証が重要
3D CADの候補を絞り込んだら、資料上の比較だけで導入を決定するのではなく、可能な範囲で実案件に近い条件による検証を行うことが重要です。
機能一覧では同じように見えても、実際の操作方法や処理速度、モデル修正のしやすさには違いがあります。
検証するときは、簡単な練習用モデルだけで判断しないことがポイントです。自社で頻繁に扱っている代表的な部品や構造物を選び、通常の設計手順を再現します。
モデルを一度完成させるだけではなく、その後に寸法変更や形状変更を行うことも大切です。3D CADの実務では設計変更が発生するため、変更への強さを確認する必要があります。
アセンブリを使用する企業であれば、実際に近い部品点数まで増やし、モデルの開閉、回転、部品交換、干渉確認などを試します。
2D図面が必要な場合は、3Dモデルから図面を作成し、寸法や注記を配置するところまで確認します。その後、3Dモデルを変更し、図面側へどのように反映されるかも確認するとよいでしょう。
外部とのデータ交換が多い企業では、日常的に受け取っている形式を読み込み、逆に必要な形式で書き出すテストも必要です。
形状が正しく表示されるかだけではなく、寸法や座標、部品構成など、自社にとって重要な情報が維持されるかを確認します。
検証には、実際に利用する設計担当者が参加することが重要です。選定担当者だけで操作すると、現場で頻繁に使う機能を見落とすことがあります。
さらに、経験豊富な担当者だけではなく、3D CADに不慣れな担当者にも試してもらうことで、教育負担を判断しやすくなります。
各候補について同じ作業を実施すれば、感覚だけではなく、設計時間、修正時間、操作の分かりやすさ、データ変換の手間などを比較できます。
3D CADは長期間利用する可能性があるため、導入前の検証にある程度時間をかけることは、その後の運用トラブルを減らすうえで重要です。
3D CAD導入後の費用対効果を高める運用方法
3D CADは、適切な製品を選ぶだけで導入効果が最大になるわけではありません。導入後の運用方法によっても費用対効果は大きく変わります。
まず重要なのが、利用目的を継続的に確認することです。
3D CAD導入そのものを目標にしてしまうと、モデルを作成することだけが目的になりやすくなります。本来は、設計変更を効率化する、干渉を早期に発見する、製造部門との情報共有を改善するなど、具体的な業務課題を解決するために利用するものです。
導入後には、3D CADによってどの作業が改善されたかを確認するとよいでしょう。
設計時間だけではなく、確認作業、図面修正、製造部門からの問い合わせ、現場での手戻りなども含めて評価します。
例えば、3D CADを使うことで設計時間そのものが大幅に短縮されなかったとしても、部品干渉を設計段階で発見できるようになり、製造後の修正が減ったのであれば、大きな効果が得られている可能性があります。
また、社内標準を整備することも重要です。
モデルの作り方が担当者によって大きく異なると、他の担当者が修正しにくくなります。基本的なモデリング方針、ファイル名、保存先、部品構成などを統一することで、データを再利用しやすくなります。
よく使う部品や形状を共通化する方法もあります。毎回ゼロから同じようなモデルを作るのではなく、標準部品やテンプレートとして再利用できれば、作業時間を短縮できます。
教育も一度実施して終わりではありません。実務を始めると、導入前の研修では想定していなかった疑問が出てきます。
定期的に困っている操作を共有し、社内で解決方法を蓄積すると、組織全体のスキルを高めやすくなります。
3D CADの利用範囲を広げる際には、一度にすべての業務を変更しようとしないことも重要です。
最初は特定の部品や案件から3D化し、運用上の問題を確認してから対象範囲を拡大する方法があります。小規模な運用で社内ルールを整えておけば、利用人数を増やす際の混乱を抑えやすくなります。
このように、3D CADの費用対効果は導入価格だけでは測れません。設計、製造、施工など業務全体の手戻りや情報共有まで含めて評価することが重要です。
3D CADと現場の3Dデータをつなげる
3D CADの活用範囲は、設計室の中だけに限定されません。現場で取得した3次元データと設計モデルを組み合わせることで、施工、改修、設備管理、出来形確認などへ利用範囲を広げられる可能性があります。
特に既存構造物や既存設備を対象とする設計では、現場の状態を正確に把握することが重要です。
既存図面が残っていても、過去の工事や改修によって現在の状態と一致していない場合があります。図面だけを前提に改修部品を設計すると、現場で位置や形状が合わないといった問題が生じる可能性があります。
従来は、現場へ行って複数箇所を計測し、その結果を手書きメモや図面へ記録して設計へ持ち帰る方法が一般的でした。
しかし、対象が複雑な形状の場合、必要な寸法をすべて事前に予測することは簡単ではありません。設計を進めてから別の寸法が必要になり、再度現場へ確認に行くこともあります。
このような場面で活用できるのが、点群をはじめとする3次元計測データです。
点群は、対象物の表面を多数の3次元座標として記録したデータです。現場の形状を立体的に記録できるため、後から必要な箇所を確認したり、設計モデルとの位置関係を検討したりする用途に利用できます。
3D CAD導入前にこのような現場データ活用まで検討している場合は、3D CADが点群などのデータをどのように扱えるか確認しておくとよいでしょう。
直接読み込んで参照できる場合もあれば、事前に別の環境でデータ量を調整したり、形式を変換したりする必要がある場合もあります。
重要なのは、点群を読み込めるかどうかだけではありません。3D CADモデルと現場データの座標や尺度を適切に合わせられることも重要です。
現場で取得した3Dデータと設計モデルを組み合わせれば、既存設備との干渉検討や改修設計などに役立てられる可能性があります。
建設や土木の現場では、設計モデルと現況を比較して施工状況を確認したり、地形や構造物を3次元で記録したりする用途も考えられます。
このような運用を行う場合、設計担当者だけが3Dデータを扱える仕組みにするのではなく、現場担当者が必要な情報を取得し、それを設計側へ共有できる流れを構築することが重要です。
計測機器が高性能であっても、操作やデータ処理が複雑で一部の専門担当者しか利用できなければ、計測のたびに担当者を手配する必要があります。
一方、日常的に現場へ持ち出せる3次元計測手段を整備できれば、必要なタイミングで現況を記録し、設計や施工へ共有しやすくなります。
LRTK Phoneは、現場で位置情報や3次元データを取得し、その情報を設計や施工などの業務へ活用したい場合に検討できる選択肢です。
3D CADを導入する際には、設計モデルを作るところだけで業務フローを区切るのではなく、現場から取得する3Dデータとどのようにつなぐかまで考えることで、3次元情報の活用範囲を広げられます。
3D CAD選定で比較したいのは、導入時の条件だけではありません。必要なモデリング機能、データ互換性、パソコン環境、教育、データ管理、保守、将来の拡張まで含めて総合的に判断することが重要です。
そして、設計した3Dモデルを製造や施工へ展開し、さらに現場で取得した3Dデータを設計へ戻す流れを構築できれば、3D CADは単独の設計ツールではなく、設計と現場をつなぐ情報基盤として活用しやすくなります。
これから3D CADを導入するのであれば、ソフトウェアだけを比較するのではなく、実際の業務フロー全体を整理し、どこで3次元情報を作り、どこで利用し、どのように共有するのかまで確認することが大切です。現場計測を含めた3Dデータ活用まで広げたい場合は、LRTK Phoneを活用した現場と設計の連携もあわせて検討してみてください。