3D CADで造形方向を検討する重要性
3D CADで作成したモデルを積層造形する場合、モデル形状だけでなく「どの向きで造形するか」が仕上がりや作業性に大きく影響します。同じ3Dデータでも、造形方向を90度変えるだけで、必要なサポート材の量、造形時間、表面の状態、後処理のしやすさなどが変化することがあります。そのため、3D CADを造形用データの作成だけに使うのではなく、造形方向まで含めて検討することが重要です。
積層造形では、材料を一層ずつ積み重ねながら形状を作ります。そのため、下側に支えがない部分や、大きく張り出した形状では、造形中の形状を保持するためのサポートが必要になる場合があります。サポート材が増えると、使用材料が増えるだけでなく、造形後にサポートを除去する作業も増えます。サポートとの接触面に跡が残ったり、狭い場所では除去そのものが難しくなったりすることもあります。
そこで有効なのが、3D CAD上で造形方向を変えながら形状を観察し、どの向きならサポートが少なくなるかを事前に検討する方法です。モデル全体を一方向から見るだけではなく、張り出し、穴、曲面、薄肉部、接地面などを個別に確認すると、適した向きを判断しやすくなります。
ただし、サポート材を最小化することだけが造形方向の目的ではありません。造形面との接触面積、積層による強度の方向性、表面品質、寸法精度、造形後の取り外しやすさなども同時に考える必要があります。サポート材を減らした結果、重要な面の品質が低下したり、細長い形状が不安定になったりしては、全体として効率的とはいえません。
3D CADで造形方向を検討するときは、一つの条件だけで最適解を決めるのではなく、造形性、品質、強度、後処理まで含めて比較することが大切です。ここからは、実務で使いやすい5つの考え方に分けて整理します。
方法1|オーバーハングが少なくなる向きを選ぶ
サポート材を減らすうえで最初に確認したいのが、オーバーハングの位置です。オーバーハングとは、下側に十分な形状がなく、外側へ張り出している部分を指します。積層造形では、直前の層を土台として次の層を形成していくため、大きな張り出しがあると形状を安定して造形するための補助が必要になりやすくなります。
3D CADでは、モデルを正面、側面、上面だけで見るのではなく、造形面を仮定して下側から確認すると、どの部分が宙に浮くのかを把握しやすくなります。造形面に対してほぼ水平に張り出した下面が広い場合、その部分にはサポートが多く必要になる可能性があります。一方で、モデルを傾けることで張り出しが連続的な斜面になれば、必要なサポートを減らせる場合があります。
たとえば、箱形部品の側面から棚状の突起が出ているモデルを考えます。箱の底面をそのまま造形面に置くと、棚状部分の下面が大きなオーバーハングになります。しかし、モデル全体を適切に回転させることで、その下面を垂直方向に近づけられれば、サポートが必要な領域を減らせる可能性があります。
3D CAD上で検討するときは、特定方向から見た投影面積だけで判断せず、すべての張り出しを確認します。一つの大きなオーバーハングをなくした代わりに、反対側へ多数の小さなオーバーハングが発生することもあるためです。造形方向の候補を複数作り、それぞれでサポートが付きそうな下面を比較すると判断しやすくなります。
また、張り出し角度について一律の基準を設定するのは避けたほうが安全です。造形方式、材料、層の厚さ、形状の大きさ、造形条件などによって、サポートなしで安定して形成できる形状は異なります。そのため、3D CAD上では「この角度なら必ず問題ない」と断定するのではなく、張り出しが緩やかになる方向を選び、その後の造形条件と合わせて確認する考え方が適しています。
曲面でも同じです。球面や円弧形状を持つ部品では、方向によって曲面の下面側にサポートが集中することがあります。曲率が連続していても、造形方向から見ると急激に外側へ広がる部分があれば、造形条件によっては補助が必要です。3D CADの断面表示を使い、積層方向に対して形状がどのように広がるかを見ると理解しやすくなります。
オーバーハング対策では、モデル全体を何度も回転させながら「下から見たときに広い天井ができていないか」を確認することが実務的です。上から見た形状では問題がなくても、造形中には下面側が重要になります。通常の設計レビューとは異なる視点でモデルを見ることが、サポート材削減の第一歩です。
方法2|広く安定した面を造形面側へ配置する
造形方向を決めるときは、サポート材だけでなく、モデルをどの面から積み上げ始めるかも重要です。3D CAD上で平面や比較的広い面を確認し、安定した状態で造形を開始できる方向を探します。
一般に、造形面との接触が極端に小さい姿勢では、細い部分からモデル全体を積み上げることになります。背の高い形状や細長い形状では、造形が進むほど揺れや変形などの影響を受けやすくなる可能性があります。そのため、サポートを減らせる向きであっても、造形の安定性が不足するようなら別の方向も比較する必要があります。
3D CADでは、モデルに存在する平面を確認し、造形面として利用しやすい候補を探します。部品底面、フランジ面、取付面、平らな側面などが候補になります。ただし、広い面なら何でもよいわけではありません。その面が最終製品で重要な基準面になる場合、造形面との接触や取り外しによる影響を考慮する必要があります。
たとえば、機械部品の取付面に高い平面性が求められる場合、その面をそのまま造形面側に置くと、造形後の状態によっては仕上げ作業が必要になる可能性があります。逆に、外観上あまり重要でない平面を造形面側にできれば、重要面の表面状態を守りやすくなります。つまり「最も広い面を下にする」のではなく、「安定性と品質要求の両方を満たす面を下にする」という考え方が必要です。
接地面積を見るときには、モデルの重心位置も意識するとよいでしょう。3D CADで質量特性を設定できる環境であれば、材料情報や形状に基づく重心位置を参考にできる場合があります。造形中の挙動は実際の設備や造形方式にも左右されますが、細い脚の上に大きな上部構造があるような形状は、見た目からも不安定になりやすいことが分かります。
また、広い平面を下に置くことで、別の場所にオーバーハングが生じることもあります。したがって、接地面の広さとサポート量はセットで確認します。まず安定した候補面を2〜3方向程度考え、その後、それぞれの姿勢でオーバーハングや内部形状を確認すると比較しやすくなります。
3D CADで候補姿勢を保存できる場合は、「底面基準」「側面基準」「斜め配置」などのようにビューや座標系を分けて管理すると便利です。モデルを毎回手作業で回転させるだけでは、どの姿勢を比較したのか分からなくなることがあります。候補ごとに同じ視点で確認できる状態にしておけば、サポート面積、全高、接地状態などを落ち着いて比較できます。
造形方向の検討では、モデルをなるべく低く配置できる方向も一つの判断材料になります。長い部品を直立させるより横向きにしたほうが全高を抑えられる場合がありますが、横向きにすると下面へサポートが増えることもあります。このようなトレードオフを3D CAD上で可視化し、優先順位を決めることが重要です。
方法3|穴や内部形状の向きを見直す
造形方向を検討するときに見落としやすいのが、穴、溝、内部空間などの形状です。外形だけを見るとサポート材が少なそうでも、内部に水平方向の穴や大きな空洞があると、その内部へサポートが必要になる場合があります。内部サポートは外側のサポートより除去しにくいことがあるため、設計段階で特に注意したい部分です。
3D CADで円筒穴を作成したモデルを例に考えると、穴の軸が造形方向と平行に近い場合と、造形方向に対して水平に近い場合では、積層時の形状の作られ方が異なります。垂直方向に延びる穴であれば、各層に閉じた輪郭が形成されながら積み上がります。一方、水平方向の穴では上半分が張り出す形になり、条件によっては内部にサポートが必要になります。
そのため、穴が多い部品では、重要な穴の軸方向を確認しながら造形方向を決めることが有効です。複数方向に穴がある場合、すべてを理想的な向きにすることは難しいため、径、長さ、寸法精度、後加工の有無などを考慮して優先順位を付けます。
たとえば、一つの大きな貫通穴と複数の小さな取付穴がある部品では、大きな穴の内部サポートを避ける方向を優先し、小さな穴は必要に応じて後加工するという考え方もできます。逆に、すべての穴を造形だけで完成させたい場合は、穴方向を重視して造形姿勢を選ぶ必要があります。
内部流路を持つ部品では、さらに慎重な検討が必要です。曲がった流路や閉じた空間の内部にサポートが形成されると、造形後に取り出しにくくなる場合があります。そのため、3D CAD上で断面表示を行い、内部形状を造形方向から追って確認することが重要です。
断面表示を積層方向へ少しずつ移動させていくと、各高さでどのような断面が現れるかを想像しやすくなります。前の層より急激に外側へ広がる部分や、内部に天井状の面が現れる部分があれば、サポートが必要になる可能性を検討します。これは外観だけでは判断しにくい形状ほど有効です。
また、内部のサポート除去が難しい部品では、モデルを一体で造形する前提そのものを見直す方法もあります。3D CAD上で部品を複数に分割し、それぞれをサポートが少ない方向で造形してから組み立てる設計です。分割すると接合部が必要になるため、寸法、強度、位置決め方法など新たな検討項目が増えますが、一体造形にこだわることで大量の内部サポートが必要になる場合には有効な選択肢です。
穴形状そのものを工夫する方法もあります。用途上、完全な円形断面が必須でない場合には、積層方向に対して急な張り出しが生じにくい断面形状へ変更できることがあります。ただし、軸、ベアリング、配管など円形が機能上必要な場所では形状変更が適さないため、使用目的を優先します。
3D CADの段階で内部を確認するメリットは、造形後にサポートが取れないという問題を事前に見つけられることです。外形だけではなく、「造形後に手や工具が届くか」「内部に残った材料を排出できるか」という視点まで含めて確認すると、より実用的な造形方向を選びやすくなります。
方法4|強度が必要な方向と積層方向を合わせて考える
サポート材を減らすことを優先しすぎると、部品の強度要求と造形方向が合わなくなることがあります。積層造形では、材料、方式、条件によって程度は異なるものの、造形方向によって機械的な特性が異なる場合があります。そのため、実際に荷重を受ける部品では、サポート材の量だけで造形方向を決めないことが重要です。
3D CADでは、部品にどの方向から力が加わるかを整理します。引張、曲げ、圧縮、ねじりなど、使用時に想定される荷重の方向をモデル上に重ねて考えると、造形方向との関係が分かりやすくなります。
たとえば、細長いブラケットが長手方向に大きな引張荷重を受ける場合、積層方向との関係によっては、サポート材が最も少ない姿勢が必ずしも強度面で最適とは限りません。強度が重要な部品では、実際の材料特性、造形条件、試験結果などを踏まえて方向を判断する必要があります。
ここで重要なのは、3D CAD段階で荷重経路を意識することです。モデルに荷重が加わったとき、どの部分からどの部分へ力が伝わるかを考えます。細い首部、急激な断面変化、穴周辺、リブの付け根などは応力が集中しやすい形状になり得るため、造形方向と合わせて確認します。
造形方向を変えることでサポート量が大幅に減っても、重要部分の強度や耐久性に不利になる可能性がある場合は、別の方向を採用する判断も必要です。サポート材は後処理で除去できますが、部品として必要な性能が不足すれば目的を達成できません。
一方で、3D CADを活用すれば、方向変更だけでは解決できない部分を形状変更で補える場合があります。たとえば、局所的にリブを追加する、断面変化を緩やかにする、応力集中を避ける形状へ変更するといった方法です。これにより、造形方向と強度の両方を調整できることがあります。
ただし、解析結果だけで最終的な性能を断定することは避ける必要があります。3D CADと連携する解析機能で形状上の傾向を確認できても、積層造形特有の材料特性や製造条件が完全に再現されているとは限りません。重要部品では実際の造形条件を踏まえた評価や試験が必要です。
造形方向を決める実務では、「サポート量」「重要面の品質」「造形安定性」「荷重方向」の4つを並べて比較すると整理しやすくなります。サポート材だけを見るのではなく、完成後に部品がどのように使われるのかまで3D CAD上で確認することが、実用品としての品質を高めるポイントです。
方法5|モデル形状そのものをサポート材が少ない設計へ変える
造形方向をどれだけ工夫しても、形状によっては大量のサポートが必要になる場合があります。その場合は、方向だけを変えるのではなく、3D CADモデル自体を積層造形しやすい形状へ変更する方法を検討します。
これは、製造方法を考慮して設計を行う考え方です。従来の切削加工や金型成形を前提として設計された形状をそのまま積層造形すると、本来不要な張り出しやサポートが発生することがあります。積層造形を前提にするなら、機能を維持しながら造形しやすい形へ調整する余地があります。
代表的な考え方の一つが、水平な張り出しを斜面へ変更する方法です。棚状に直角に突き出した部分をそのまま残すのではなく、下側に傾斜面やリブを追加することで、各層が前の層から連続して広がる形状にできます。これにより、条件によってはサポートの必要量を減らせる可能性があります。
角部の処理も重要です。直角の段差が必須でない場所では、面取りや曲面を利用して急激な張り出しを避けられる場合があります。ただし、単に丸みを付ければよいわけではありません。曲面の向きによっては下面側に急な張り出しが生じるため、造形方向との組み合わせで確認します。
大きな空洞の天井を平面にするのではなく、傾斜した屋根状の形にする方法もあります。内部に広い水平天井があると、その下面全体にサポートが必要になる可能性があります。機能上許される場合には、天井を傾けたり、中央に稜線を設けたりすることで、積層方向に対して連続的に形状を形成しやすくできます。
3D CADでこのような変更を行うときは、造形専用モデルと設計基準モデルを分けるかどうかも検討します。製品形状として変更できない部分まで造形都合で変えてしまうと、設計要求を満たさなくなる可能性があります。造形用の一時的な補助形状をモデルへ追加する方法と、製品そのものを再設計する方法は区別して管理することが大切です。
分割設計も有効です。複雑な一体形状を、サポートが少なくなる位置で二つ以上に分け、それぞれに適した方向で造形します。分割位置は、接合後に荷重が集中しにくい場所、位置決めしやすい場所、外観への影響が少ない場所などを候補にします。
その際、3D CAD上で位置決め形状まで設計しておくと組立精度を管理しやすくなります。単純な平面同士を合わせるだけでなく、段差やはめ合い形状などを利用して位置を決められるようにすると、組立時のずれを抑えやすくなります。ただし、造形物には寸法誤差が生じるため、過度に厳しいはめ合いを前提にしないよう注意します。
サポート材を減らす設計変更では、「材料を減らせたか」だけでなく、後処理まで含めた総作業量を見る必要があります。サポートを減らすために複雑な分割構造を作り、接着や締結、仕上げ作業が大幅に増えるなら、総合的な効率は下がる可能性があります。
3D CAD上で設計変更前後のモデルを残しておけば、元形状と造形最適化後の形状を比較できます。変更箇所、接合部、重要寸法などを確認し、機能に影響していないかをチェックしたうえで造形へ進むことが重要です。
3D CAD上で造形方向を比較するときの確認ポイント
5つの方法を実践するためには、3D CAD上で造形方向を比較する手順をある程度そろえておくと効率的です。担当者ごとに感覚でモデルを回転させているだけでは、同じ部品でも判断がばらつきやすくなります。
まず、モデルの基準方向を確認します。通常の設計座標系と造形時の座標系を混同すると、データを出力したときに想定していた方向と異なる姿勢になることがあります。そのため、どの軸を積層方向として想定しているかを明確にします。
次に、複数の候補方向を作ります。最初から一つに決めるのではなく、代表的な平面を下にした姿勢、90度回転した姿勢、必要に応じて斜めにした姿勢などを比較します。候補が増えすぎると判断が難しくなるため、まず大きく条件が異なる数方向を選び、その中から絞り込む方法が実務的です。
各候補では、下向き面を重点的に確認します。サポートは造形方向から見た下面に関係するため、通常の設計時よりも下側からモデルを見る機会を増やします。外形だけでなく、穴、溝、くぼみ、内部空間も確認します。
断面表示も有効です。複雑なモデルでは、外側から見ただけでは内部の天井や隠れた張り出しを見つけられません。積層方向に沿って断面位置を動かし、形状がどのように広がり、縮まり、分岐していくかを確認します。
次に、重要面を整理します。寸法精度を重視する取付面、外観面、摺動部、穴などを確認し、それらがサポート接触面にならないかを見ます。サポート除去後に仕上げ加工できる場所であれば許容できても、工具が入りにくい場所では問題になる可能性があります。
モデルの全高と幅も比較します。方向を変えることで、造形時の高さや必要な領域が変わります。サポートが少ない姿勢でも、極端に高くなる場合には別の課題が生じることがあります。利用する設備の造形可能範囲を確認し、モデルが収まることを事前に確かめます。
複数部品を同時に造形する場合には、一部品だけで最適化しないことも重要です。個々の部品を最小サポート方向にすると、配置効率が悪化する場合があります。造形する部品数、配置間隔、後処理の流れなどを考慮し、全体として扱いやすい方向を選びます。
候補姿勢ごとの判断結果を記録しておくこともおすすめです。「この方向はサポートが少ない」「この方向は重要面が下面になる」「この方向は内部穴にサポートが入りやすい」といった理由を残せば、設計変更後も判断を再利用できます。
造形方向は、設計完成後に製造担当者だけが決める項目ではありません。設計途中から確認することで、少しの形状変更でサポートを減らせる箇所を見つけられることがあります。設計者と造形担当者が同じ3D CADモデルを見ながら検討できれば、後工程で大きく形状を修正する手間も抑えやすくなります。
サポート材を減らすときに注意したい品質とのバランス
サポート材を減らすことには、材料使用量や後処理の削減など多くのメリットがあります。しかし、サポートを減らすこと自体を最終目的にしてしまうと、別の品質問題につながる可能性があります。
特に注意したいのが、サポートを避けるためにモデルを大きく傾けた場合です。斜め配置によって大きな水平面をなくせることがありますが、その代わりにモデル全体の高さが増えたり、多くの面が階段状の積層表面になったりする場合があります。外観を重視する部品では、どの面をどの方向に向けるかが仕上がりへ影響します。
穴や軸形状についても同様です。サポート材が不要になる方向を選んでも、要求される寸法や真円度などが得られるかは別の問題です。精度が重要な箇所については、造形後の加工を前提に余裕を持たせるなど、製造工程全体で考える必要があります。
薄肉部分も確認が必要です。サポートを減らそうとして部品を立てることで、薄い壁が長い距離にわたって垂直に伸びる姿勢になる場合があります。形状や造形条件によっては、別の安定性の問題を考慮する必要があります。単純に「垂直面ならサポート不要」と考えるのではなく、部品の大きさ、厚さ、高さを含めて評価します。
後処理とのバランスも重要です。少量のサポートを許容すれば、重要面をきれいに保てる場合があります。完全なサポートゼロを目指すよりも、除去しやすい場所へサポートを集約するほうが合理的なケースもあります。
たとえば、外観面や内部流路へのサポートを避け、後で加工しやすい平面側へサポートを集める考え方です。サポート量自体はわずかに増えても、除去と仕上げの作業性が良ければ、製造全体として効率的になります。
サポート材を評価するときは、量だけでなく「どこに付くか」を確認します。面積が小さくても、狭い溝や深い穴の奥に付けば除去が難しくなります。反対に、面積が多少広くても外側の平面で工具が使いやすければ、後処理は比較的行いやすくなります。
この考え方は、3D CADのレビュー段階で特に有効です。造形方向ごとにサポートが付きそうな箇所を想定し、「除去できるか」「跡が残っても問題ないか」「仕上げ加工できるか」という視点で確認します。
品質とのバランスを取るためには、設計条件に優先順位を設定することも有効です。たとえば、最優先を部品強度、次に重要面の品質、その次に内部サポート回避、最後に材料使用量とするなど、部品用途に応じて順位を決めます。優先順位が決まっていれば、候補方向を比較するときに判断がぶれにくくなります。
造形方向の検討を設計工程へ組み込む進め方
3D CADで造形方向を最適化する取り組みは、一度だけ行うよりも、設計工程の中に確認項目として組み込むほうが効果的です。設計が完成してから造形方向を検討すると、大きな問題が見つかった場合に形状変更へ戻る必要があります。
初期設計では、まず機能上必要な形状を作ります。この段階で細かな造形条件まで固定する必要はありませんが、大きな空洞、張り出し、深い穴など、造形時に影響しそうな形状がないかを意識します。
基本形状ができた段階で、一度造形方向を仮設定します。3D CAD上で代表的な方向をいくつか比較し、大きなオーバーハングや内部天井がないかを確認します。この時点なら、リブの向きや穴位置、角度などを比較的変更しやすいためです。
詳細設計へ進んだら、重要寸法や使用時の荷重条件を加えて再度造形方向を見直します。初期段階でサポートが少なかった方向でも、後から追加した取付部や配管穴によって条件が変わることがあります。
造形直前には、完成した3D CADモデルから最終確認を行います。ここでは造形方向だけでなく、薄肉部、微小形状、内部空間、サポート除去経路なども確認します。設計変更後に古い姿勢情報をそのまま使わないよう、最終データで再確認することが重要です。
社内で繰り返し積層造形を行う場合は、過去の事例を蓄積すると効率が上がります。どのような形状でサポートが多くなったか、どの方向で表面状態が良かったか、どの内部形状で除去作業が難しかったかなどを記録します。
ただし、過去の結果をそのまま別の部品へ適用することには注意が必要です。材料、造形方式、形状寸法、設備設定などが変われば結果も変わる可能性があります。事例は判断の参考として使い、最終的には対象モデルごとに確認します。
設計者が3D CAD上で造形方向を意識する習慣を持つと、後工程から「この形状ではサポートが取れない」「この穴の向きでは造形しにくい」といった修正依頼が返ってくる機会を減らしやすくなります。結果として、造形前の手戻り削減にもつながります。
特に試作を繰り返す開発では、造形方向の検討を早めに行う意味があります。試作品を一度造形してから問題を見つけ、その後3D CADへ戻って修正すると、データ作成から再造形まで一連の工程を繰り返すことになります。モデル上で予測できる問題を先に取り除けば、試作回数を抑えられる可能性があります。
造形方向を設計レビューの項目に含める場合は、「サポートは少ないか」だけの確認にしないことがポイントです。オーバーハング、接地面、内部形状、重要面、荷重方向、後処理性などを一緒に見ることで、設計と製造の両方から妥当な判断ができます。
3D CADは形を作るだけの道具ではなく、製造工程を事前に検討するための共通情報として活用できます。モデルを見ながら設計担当者と製造担当者が同じ条件を確認すれば、言葉だけでは伝わりにくい造形方向の問題も共有しやすくなります。
まとめ|3D CADで造形方向を設計段階から最適化する
3D CADを使って積層造形用の部品を設計するときは、完成形状だけでなく、どの方向から積み上げるかまで設計条件として考えることが重要です。造形方向によってオーバーハングの位置や接地面積、内部形状の造形しやすさ、重要面の仕上がり、強度の方向性などが変化する可能性があります。
サポート材を減らすためには、まずオーバーハングが少なくなる方向を探し、次に安定した面を造形面側へ配置できるか確認します。穴や内部空間を持つモデルでは、外形だけでなく内部の天井やサポート除去経路まで確認することが重要です。
さらに、実用品では荷重方向と積層方向の関係を無視できません。サポートが最小になる姿勢が、部品性能の面でも最適とは限らないため、強度、表面品質、寸法、造形安定性などを含めて判断します。
方向変更だけで十分な改善ができない場合には、3D CAD上でモデル形状そのものを見直します。水平な張り出しを斜面へ変更する、内部天井の形状を工夫する、分割して別々の方向から造形できる設計にするなど、機能を損なわない範囲で造形しやすい形へ調整する考え方が有効です。
重要なのは、サポート材を完全になくすことを目的にしないことです。サポートが多少必要でも、除去しやすい位置へ集めることで、重要面の品質や後処理性を保てる場合があります。材料量だけでなく、造形、除去、仕上げ、組立まで含めた工程全体で比較することが、実務では欠かせません。
また、造形方向の検討を設計完成後だけの作業にしないこともポイントです。初期設計、詳細設計、造形前確認の各段階で3D CADモデルを見直せば、後から大規模な設計変更が必要になる可能性を抑えられます。
3D CADを製造条件の検討まで活用すると、設計データは単なる形状情報ではなく、現場での判断を支える共通基盤になります。造形方向を比較し、問題になりそうな部分を事前に見つける習慣を持つことで、サポート材の削減だけでなく、後処理や試作の手戻りを含めた工程全体の改善につなげやすくなります。
3D CAD上で設計した形状を実際の対象物や現場の位置情報と結び付けて確認したい場合には、デジタルデータを現場でどのように活用するかという視点も重要になります。設計データを机上だけで完結させず、現地での確認や計測へつなげる方法を検討するなら、次はLRTK Phoneを活用した現場でのデジタルデータ活用について確認してみてください。