3D CADで部品や装置を設計していると、外観だけでは確認できない内部構造を把握したい場面が数多くあります。ケース内部のリブと部品の干渉、穴や流路のつながり、軸と軸受の位置関係、締結部品の入り込み量、複数部品が重なった状態でのすき間などは、通常の外観表示だけでは確認しにくい要素です。こうした内部を確認するときに役立つのが断面表示です。
ただし、単にモデルを切断表示すれば内部が見やすくなるとは限りません。断面位置が適切でなければ確認したい形状を外してしまいますし、断面線や輪郭線が多すぎると、かえって構造が分かりにくくなります。複雑なアセンブリでは、断面対象にする部品の選び方や、周囲の部品をどの程度表示するかによっても視認性が大きく変わります。
3D CADの断面表示を実務で活用するには、切断面の位置、断面方向、対象部品、表示方法、色や透明度といった設定を目的に合わせて調整することが重要です。本記事では、内部構造を確認しやすくするための5つの設定を中心に、設計確認やレビューで断面表示を使う際の考え方を解説します。
3D CADで断面表示を使う目的を整理する
3D CADの断面表示は、モデルの一部を仮想的に切り取って内部を見える状態にする機能として利用されます。実際のモデル形状そのものを削除せず、表示上だけ切断できるため、設計途中の確認やアセンブリレビューに適しています。
断面表示を使う代表的な目的は、内部形状の確認です。例えば筐体の中に複数の部品が配置されている場合、通常表示では外装部品に隠れて内部が見えません。外装を一つずつ非表示にする方法もありますが、外装との位置関係まで確認したい場合は、部品を完全に消してしまうより断面表示のほうが状況を把握しやすくなります。
また、穴や溝、流路のように部品内部に形成される形状についても断面表示が有効です。穴が想定位置まで到達しているか、段付き穴の深さが適切か、肉厚が部分的に薄くなっていないかなどを視覚的に確認できます。
アセンブリでは、部品同士の組み合わせを確認するためにも利用できます。軸と穴の中心位置、締結部の重なり、シール部品と溝の位置関係、可動部周辺のクリアランスなど、外側からは見えない要素を一つの画面上で確認できるのが利点です。
一方で、断面表示を使えば自動的に設計上の問題が検出されるわけではありません。断面位置によって見える内容が変化するため、確認したい項目をあらかじめ明確にする必要があります。「内部を見る」という漠然とした目的ではなく、「この穴とこの部品の位置関係を確認する」「この範囲の肉厚を確認する」といった具体的な確認項目を設定すると、適切な断面を作りやすくなります。
断面表示の設定を考えるときは、モデルをきれいに見せることより、判断に必要な情報を見やすくすることが重要です。設計者本人には分かりやすい表示でも、レビュー参加者には形状の前後関係が分かりにくいことがあります。そのため、切断面だけでなく、周囲の形状をどの程度残すかも含めて調整する必要があります。
設定1 切断面を確認したい構造に合わせて配置する
断面表示で最も重要なのが、切断面の位置です。断面位置が数mmずれるだけでも、見える穴やリブ、締結部品、空間の形状が変わることがあります。まずは「どこを切れば確認したい構造が最も分かりやすくなるか」を考えます。
基本となるのは、3D CADモデルに設定されている基準面を利用する方法です。左右対称の部品や回転対称形状であれば、モデル中央の基準面を利用すると、内部形状を把握しやすい断面になることがあります。中心軸を通る断面では、穴径や段差、内外径の関係も確認しやすくなります。
ただし、確認したい構造が必ずしも基準面上にあるとは限りません。例えば複数の穴が異なる位置に配置されている部品では、中央断面だけでは目的の穴を通らない場合があります。その場合は、既存の面や基準面から一定距離だけオフセットした断面を設定します。
断面位置を数値で指定できる場合は、目視でドラッグするだけでなく、基準となる面からの距離を数値管理すると再現性を高められます。レビュー中に断面を動かした後でも、同じ位置へ戻しやすくなるためです。また、設計変更前後を比較するときにも、同じ断面位置を使うことで差を把握しやすくなります。
複雑なモデルでは、断面を少しずつ移動させながら内部を確認する方法も有効です。固定された一つの断面だけを見ると、断面からわずかに外れた部分にある形状を見落とす可能性があります。断面位置を連続的に移動できる場合は、内部をスキャンするような感覚で確認すると、構造全体を理解しやすくなります。
切断面の配置では、確認対象の中心を通すことだけが正解ではありません。例えばリブの厚みを確認したい場合、リブの中心を切る断面と、リブが立ち上がる根元付近を確認する断面では得られる情報が異なります。円筒形状でも、中心を通す断面だけでなく、偏心した穴や横穴を通る位置へ動かしたほうが構造を理解しやすい場合があります。
アセンブリでは、部品単体の基準よりも、部品同士の関係を基準に断面を設定することが重要です。例えば軸と軸受の組み付け状態を見るのであれば、軸中心を通る断面を作ります。締結部を確認するのであれば、締結部品の軸を通る断面にすると、挿入深さや相手部品との位置関係が分かりやすくなります。
さらに、切断位置を決める際は、断面の前後に残る形状にも注意します。切断位置が内部へ入りすぎると、構造の基準となる外形がほとんど消えてしまい、断面だけを見てもモデルのどの部分なのか判断しにくくなることがあります。内部形状と外形の関係を同時に把握できる位置を選ぶことが、見やすい断面表示につながります。
設定2 断面方向と切断量を調整する
同じ位置に切断面を置いても、どちら側を切り取るかによって見え方は大きく変わります。3D CADでは、切断面を境界として片側を非表示にする方式が一般的ですが、モデルによっては表示したい側と消したい側を切り替えるだけで内部構造が格段に分かりやすくなります。
例えば装置の正面側にカバーがあり、その奥に内部部品が配置されている場合、正面側を取り除く方向に断面を設定すると内部が確認しやすくなります。反対方向に設定すると、内部部品そのものが切り取られてしまい、目的を果たせません。
断面方向は、視点方向との関係でも考える必要があります。画面の手前側から奥へ切り込むのか、奥側から手前へ切り込むのかによって、表示される構造が異なります。断面方向とカメラ方向が分かりにくい場合は、一度モデルを回転させ、切断面の位置と法線方向を立体的に確認すると設定ミスを減らせます。
また、単純にモデルの半分を切るだけでなく、必要な量だけ切り込むという考え方も重要です。例えばケース内部の一番奥まで切ってしまうと、手前にある内部部品まで消える可能性があります。外装部分だけを取り除き、内部部品はできるだけ残す位置に調整すると、アセンブリ全体を理解しやすくなります。
設計レビューでは、同じ断面位置で方向を反転して確認する方法も役立ちます。一方向から見ただけでは見えないポケット形状や段差が、反対側を表示すると明確になることがあります。特に複雑な内部形状では、一つの断面状態だけで判断せず、方向を切り替えて確認することが重要です。
断面方向と合わせて視点も調整します。断面に対して正面から見ると、断面形状や肉厚を理解しやすくなります。一方、少し斜めから見ると、断面形状と奥行き方向の構造を同時に確認できます。寸法関係を確認するときは断面に正対し、部品同士の立体的な位置関係を見るときは斜め視点を使うなど、確認目的によって使い分けます。
奥行きのある装置では、断面を固定したままモデルを回転させることも有効です。正面からは重なって見える形状でも、斜め方向から見ることで別々の部品として識別できる場合があります。逆に、モデルだけを回転させて切断面の方向を把握できなくなることもあるため、必要に応じて基準面や座標軸を一時的に表示すると位置関係を理解しやすくなります。
内部空間の確認では、切断面から見える「空白」も重要な情報です。部品だけに注目するのではなく、部品間の空間が十分にあるか、工具やケーブルなどが通る余地があるか、組み付け方向に障害物がないかを確認します。そのため、断面方向は単なる見た目ではなく、組立方向や部品の移動方向を意識して設定すると実務的な確認につながります。
設定3 断面対象にする部品を選別する
大規模なアセンブリでは、すべての部品を一律に断面表示すると、断面線が大量に現れて見づらくなることがあります。そこで重要になるのが、どの部品を切断対象にし、どの部品を通常表示のまま残すかという設定です。
例えば装置ケースの内部に軸、締結部品、配管、支持部品などが配置されている場合、ケースだけを断面表示して内部部品を通常表示のまま残すと、部品構成を直感的に把握しやすくなります。すべてを切断すると、軸や締結部品まで途中で切れてしまい、部品の形状や連続性が分かりにくくなる場合があります。
反対に、部品内部の穴や肉厚を確認したい場合は、その部品自体を断面対象に含める必要があります。つまり、断面対象の選択は「何を見せたいか」によって変わります。
特に締結部品周辺では、対象選択によって見やすさが大きく変わります。締結される母材だけを切断し、締結部品を切らずに残せば、部品がどこまで挿入されているかを確認しやすくなります。一方で、締結部内部の状態や中心位置を確認したい場合は、締結部品も断面対象としたほうが適しています。
軸、ピン、シャフトのような細長い部品も同様です。これらを切断すると輪郭が断片的になり、どこまで連続している部品なのか分かりにくくなることがあります。周囲のケースや支持部品だけを断面化して、軸類は通常表示のまま残したほうが構造を説明しやすい場合があります。
大規模アセンブリでは、確認対象以外の部品を一時的に非表示にする方法も有効です。ただし、非表示にしすぎると周囲との位置関係が分からなくなります。例えば干渉を確認する場合、問題の2部品だけを表示すると局所的な形状は分かりやすくなりますが、その周囲に別の部品が存在することを見落とす可能性があります。
そこで、主要な確認対象は通常表示または断面表示で明確に残し、補助的な部品は透明表示や簡略表示にする方法があります。完全に消す部品、薄く残す部品、通常表示する部品を分けることで、情報量を減らしながら周囲との関係を保てます。
断面対象を選別するときは、アセンブリの階層構造も意識すると効率的です。装置全体を一つずつ部品単位で設定するのではなく、ユニット単位やサブアセンブリ単位で表示状態を整理できる場合は、それを利用します。確認目的ごとに表示状態を保存できれば、設計レビューのたびに同じ設定を繰り返す手間も減らせます。
例えば「駆動部確認用」「配管確認用」「筐体内部確認用」といったように、確認内容ごとの表示状態を用意しておけば、同じ3D CADモデルでも短時間で必要な断面状態へ切り替えられます。複雑な製品ほど、断面表示そのものだけでなく、表示対象の管理方法が作業効率を左右します。
設定4 断面輪郭と内部エッジの表示を整理する
断面表示を使ったときに、「内部は見えているのに構造が分かりにくい」と感じる原因の一つが、線の多さです。3D CADでは部品の外形線、内部エッジ、断面輪郭、隠れた形状を示す線など、さまざまな線情報を表示できる場合があります。
これらをすべて表示すると、複雑なアセンブリでは画面全体が線で埋まり、どの輪郭が重要なのか分からなくなります。断面表示では、必要な線だけを残して情報量を調整することが重要です。
最初に確認したいのは、断面によって新しく現れた輪郭です。部品を切断すると、切断面上に形状の輪郭が現れます。この輪郭が明確であれば、肉厚や穴、内部空間の形を理解しやすくなります。反対に、切断輪郭と通常の外形線が同じように見えると、どこが切断された部分なのか判断しづらくなることがあります。
断面部分にハッチングや塗り分けを設定できる場合は、切断された実体部分と空間部分を区別する助けになります。ただし、細かすぎるハッチングや多数のパターンを同時に表示すると、画面が煩雑になることがあります。目的は装飾ではなく、部品の境界を識別することなので、必要以上に情報を増やさないことが大切です。
内部エッジについても同様です。すべての接線エッジや小さな面境界まで表示すると、フィレットや面取りが多いモデルでは大量の線が表示されます。大まかな内部構造を確認するときは、こうした細かな線を減らすことで主要形状を把握しやすくなります。
一方で、加工形状や段差を細かく確認する場合は、内部エッジをある程度残す必要があります。例えば穴の段差、座ぐり形状、溝の底面などを確認する場合、輪郭線が少なすぎると形状の境界を判断できません。
つまり、最適な線表示は確認内容によって異なります。全体構造を見る段階では線を減らし、詳細形状を確認する段階では必要なエッジを表示するという二段階の確認が有効です。
また、断面表示では曲面形状の見え方にも注意が必要です。断面線だけを見ると、円筒なのか自由曲面なのかを判断しにくい場合があります。その場合は、断面に正対した表示だけでなく、少し斜めからモデルを表示して奥行きを確認します。
輪郭線の整理は、設計レビュー資料を作るときにも重要です。設計者自身はモデルを自由に回転できるため多少線が多くても理解できますが、静止画や画面共有で説明する場合は、見る側が自分で視点を変えられないことがあります。そのため、説明に必要な輪郭だけが残るように表示を整理しておくと、短時間で構造を共有しやすくなります。
断面表示の目的は、線をできるだけ多く表示することではありません。判断に不要な情報を減らし、確認対象の形状を目立たせることが重要です。3D CADの表示設定を使って情報量を整理するだけでも、同じ断面モデルの分かりやすさは大きく変わります。
設定5 色・透明度・表示状態を使い分ける
複数部品が集まったアセンブリでは、形状だけで部品を識別するのが難しいことがあります。そのような場合に有効なのが、色、透明度、表示状態を組み合わせた視認性の調整です。
例えばケースを断面表示し、その内部に複数の部品が残っている状態では、すべてが同じような色だと部品境界が分かりにくくなります。主要部品ごとに識別しやすい表示を設定すると、どの部品がどこまで続いているのか把握しやすくなります。
ただし、色数を増やしすぎると別の問題が生じます。小さな部品まで一つずつ異なる色にすると、画面全体が派手になり、確認したい部品が埋もれてしまいます。色は部品番号を識別する目的より、役割や確認優先度を分けるために利用したほうが分かりやすい場合があります。
例えば、今回確認したい部品を通常表示し、周囲の部品を少し薄く表示し、さらに背景的な部品を透明表示にするという方法です。これにより、確認対象を目立たせながら、周囲の構造も失わずに表示できます。
透明度は断面表示と非常に相性のよい設定ですが、使いすぎには注意が必要です。複数の透明部品が重なると、奥にある形状が多数透けて表示され、かえって構造を理解しにくくなることがあります。透明表示は、外装や保護カバーなど「存在は示したいが内部確認を妨げる部品」に限定して利用すると効果的です。
透明度を変更した状態では、部品同士が実際に接触しているのか、単に重なって見えているだけなのか判断しにくい場合もあります。クリアランスや接触状態を確認するときは、一度通常表示へ戻し、断面形状や距離計測と組み合わせて確認することが重要です。
表示状態の保存機能が利用できる環境では、目的別の表示を保存しておくと作業効率が上がります。例えば通常外観、中央断面、締結部断面、透明外装、主要部品のみ、といった状態を切り替えられるようにすると、レビュー中の説明もスムーズになります。
設計変更の前後を確認するときも、同じ表示状態を利用すると比較しやすくなります。視点、断面位置、部品の表示状態が毎回異なると、形状変更による差なのか表示条件による差なのか分かりにくくなります。同じ条件を再現できるようにしておくことが、断面表示を確認手段として安定して使うポイントです。
さらに、背景とのコントラストも視認性に影響します。暗い部品が暗い背景に重なる、明るい断面色が明るい背景に重なるといった状態では輪郭を認識しにくくなります。モデルの色だけでなく、作業画面全体を見ながら調整することが重要です。
複数の断面を使って内部構造を確認する
一つの断面だけでは、複雑な内部構造を十分に把握できないことがあります。その場合は、異なる方向や位置に複数の断面を設定して確認します。
例えば長い筐体では、中央断面だけを見ると端部付近の内部構造が分かりません。長手方向に複数位置の断面を確認すれば、内部形状がどのように変化しているかを追えます。配管や流路のように曲がりながら続く構造も、一断面だけで全体像を理解するのは困難です。
直交する2方向から断面を確認する方法も有効です。正面方向の断面で高さ関係を確認し、側面方向の断面で奥行き関係を確認すると、3次元的な位置関係を整理しやすくなります。
さらに、水平断面を利用すると、平面上での配置を把握しやすくなります。装置内部に多数の部品が並ぶ場合、上から内部を見下ろすような断面にすると、部品間の平面的なすき間や配置関係を確認できます。
断面位置を段階的に変えることで、形状変化を追跡することもできます。例えば複雑な鋳造形状や樹脂部品では、一定間隔で断面を移動させると、肉厚変化や内部空間の連続性を理解しやすくなります。
ただし、複数の断面を一度に表示しすぎると、どの面によって切断されているのか分かりにくくなります。まず一方向の断面で構造を確認し、必要に応じて別方向へ切り替えるほうが分かりやすい場合もあります。
複数断面を使う目的は、画面を複雑にすることではなく、一つの断面からでは判断できない三次元構造を補完することです。各断面で何を確認するかを決め、順序をつけて確認すると効率的です。
アセンブリの断面表示で確認したいポイント
3D CADの断面表示は、単品部品よりもアセンブリで大きな効果を発揮します。部品同士の位置関係や内部クリアランスは、個々の部品だけを見ても確認できないためです。
最初に確認したいのが、部品間の干渉です。断面表示によって、一方の部品が相手部品へ入り込んでいないか、必要なすき間が確保されているかを視覚的に確認できます。ただし、断面画像だけでは微小な干渉を判断しにくい場合があるため、必要に応じて距離計測や干渉確認機能と併用します。
次に、締結状態を確認します。締結部品の長さに対して相手側の穴深さが適切か、途中の部品を正しく通過しているか、座面同士が想定どおり接しているかなどは、断面表示と相性のよい確認項目です。
軸やピンの組み合わせでは、中心軸の位置関係を確認します。断面上で中心が一致しているように見えても、別方向から見るとずれている場合があります。そのため、必要に応じて直交方向の断面も確認します。
シールやパッキンなどが入る部分では、溝との位置関係を確認します。設計上の寸法だけでなく、周囲の部品とどのような関係で配置されているかを見ることで、組み付け状態を理解しやすくなります。
内部配線や配管を含む装置では、経路周辺の空間も確認対象になります。3D CAD上で部品同士が干渉していなくても、組立時に工具を入れるスペースがない、配管を曲げながら挿入できないといった問題が生じることがあります。
そのため、完成状態だけでなく、組立途中を想定した断面確認も重要です。どの方向から部品を入れるか、締結工具をどこから入れるか、取り外すときに周囲の部品が障害にならないかなどを考えながら断面を見ると、製造や保守を意識した設計確認につながります。
断面表示を設計レビューで活用する方法
断面表示は設計者個人の確認だけでなく、複数人で行う設計レビューにも活用できます。ただし、設計者自身が自由にモデルを操作するときと、他の参加者へ構造を説明するときでは、適した表示方法が異なります。
レビューでは、最初から断面状態だけを表示するより、通常外観から断面へ切り替えるほうが位置関係を共有しやすくなります。まず製品全体を見せ、「この部分の内部を確認します」と対象位置を示してから断面表示へ移ることで、参加者がモデル内の位置を見失いにくくなります。
断面へ切り替えた後も、確認したい箇所を一度に大量に説明するのではなく、目的を絞ります。例えば最初はケースと内部部品のすき間、次に締結部、最後に配管経路というように、同じモデルでも表示状態を切り替えながら確認すると理解しやすくなります。
レビューで指摘が出た場合は、どの断面位置で確認した問題なのか分かるようにしておくことも重要です。単に「内部が狭い」と記録するより、「中央基準面から一定距離の断面で確認した箇所」といった形で位置を特定できれば、後から同じ状態を再現しやすくなります。
設計変更後の再確認でも、以前と同じ断面状態を再現できることが重要です。視点や断面位置が大きく変わると、変更によって改善したのか単に見え方が変わったのか判断しにくくなります。
また、断面表示だけで説明を完結させようとしないこともポイントです。必要に応じて通常外観、透明表示、寸法確認、距離計測などを組み合わせます。断面表示は内部を理解するための一つの手段であり、他の表示方法と組み合わせることで設計意図をより正確に共有できます。
設計レビューの参加者が3D CADを日常的に操作しているとは限りません。製造、施工、品質管理、営業など異なる立場の担当者が参加する場合は、モデルの操作方法ではなく、どこが問題でどのように改善したのかが分かる表示を優先します。
この観点では、情報を足すより減らすことが重要になる場合があります。確認対象以外を薄くする、余計なエッジを消す、必要な断面だけ表示するなど、判断に不要な情報を整理することで、3D CADに慣れていない人にも構造を伝えやすくなります。
断面表示で見落としやすいポイント
断面表示は便利ですが、断面上に見えている形状だけで設計全体を判断すると見落としにつながることがあります。特に注意したいのが、断面から少し外れた位置にある形状です。
例えば中央断面では十分なすき間があるように見えても、その数mm横にリブや突起が存在し、実際には別部品と干渉している場合があります。これは断面表示が三次元モデルの一部分だけを切り出して見せる性質によるものです。
そのため、干渉やクリアランスを確認する場合は、断面を一か所に固定せず、周辺へ少しずつ移動して確認します。必要に応じてモデル自体を回転させ、断面外の形状も確認します。
円筒部品や曲面部品では、断面位置によって見かけの寸法が変わることにも注意が必要です。中心を通らない断面では、円形断面が本来の最大径として現れない場合があります。断面形状だけを見て寸法を判断せず、基準面や中心位置との関係を確認します。
断面によって一時的に非表示になった部品を忘れることもあります。特に多数の部品を選択除外している場合、画面上では問題なく見えていても、実際のアセンブリには別部品が存在します。確認後は通常表示へ戻し、全体状態で問題がないか確認することが重要です。
透明表示にも同じ注意が必要です。透明な部品は存在感が弱くなるため、実際には重要な干渉対象であるにもかかわらず、背景のように認識してしまうことがあります。最終確認では通常表示も併用します。
さらに、断面表示で確認できるのは基本的に設計モデル上の形状です。実際の製造では寸法公差、組立ばらつき、加工誤差、変形などが生じる可能性があります。3D CAD上でわずかなすき間が存在するからといって、現物でも必ず同じすき間が確保されるとは限りません。
設計上重要なクリアランスについては、断面表示による視覚確認だけでなく、寸法、公差、組立条件などと合わせて判断する必要があります。断面表示は問題を発見しやすくする手段ですが、製品成立性を保証するものではありません。
また、画面上の表示精度と設計形状そのものを混同しないことも大切です。曲面や円形形状が画面上で粗く表示される場合でも、それがモデル形状そのものの粗さとは限りません。表示品質や描画設定による見え方の可能性もあるため、必要に応じて形状情報や寸法を確認します。
3D CADと現場情報を組み合わせて確認範囲を広げる
3D CADの断面表示は、設計モデル内部を確認するうえで非常に有効ですが、実務ではモデルだけですべてを判断できるとは限りません。既設設備との取り合い、施工済み構造物との位置関係、現場で変更された配管や支持部材など、実空間の状態を考慮する必要があるケースもあります。
特に改修や追加施工では、設計時の3D CADモデルと現状が完全には一致していないことがあります。図面上では十分な空間があるものの、現場には追加部材が取り付けられているといった状況も考えられます。
こうした場面では、3D CAD上の断面確認に加え、現場で取得した位置情報や計測結果を整理し、設計情報と現況情報を照合する考え方が重要になります。内部構造を3D CADで確認したうえで、実際に施工する位置や既設構造との関係を現場側でも確認できれば、設計から施工までの情報をつなげやすくなります。
例えば3D CADで取り合い部分の断面を確認し、現場では対象箇所の位置を測定して記録することで、「モデル上ではどこか」と「現場ではどこか」を対応させやすくなります。特に広い現場や構造物では、写真だけで位置を記録するより、位置情報と組み合わせることで後から確認しやすくなる場合があります。
また、設計変更が発生した場合も、変更対象を3D CADの断面で確認し、現地側で対象位置を確認するという流れを作れば、設計担当者と現場担当者の認識を合わせやすくなります。
3D CADは詳細な内部構造の検討に強く、現場計測は実際の位置や出来形を把握することに強みがあります。それぞれを別々に扱うのではなく、設計情報と現況情報を同じ位置の情報として結び付けることが、今後の3Dデータ活用では重要になります。
まとめ
3D CADの断面表示は、外観だけでは確認できない内部形状や、部品同士の位置関係を把握するための基本的な確認手段です。しかし、単にモデルを中央で切断するだけでは、必要な情報が見やすくなるとは限りません。
まず重要なのは、確認したい内部構造を通る位置に切断面を配置することです。基準面をそのまま使うだけでなく、必要に応じて断面をオフセットし、穴、リブ、軸、締結部など目的の形状を通る位置へ調整します。
次に、断面方向と切断量を調整します。どちら側を残すかによって内部の見え方が変わるため、視点方向や組立方向も考慮しながら設定します。
三つ目は、断面対象となる部品の選別です。アセンブリ全体を一律に切断するのではなく、ケースだけを断面化して内部部品を残すなど、確認目的に応じた表示にすると構造を理解しやすくなります。
四つ目は、断面輪郭や内部エッジの整理です。表示する線が多すぎると重要な形状が埋もれてしまいます。全体構造を見るときと細部を見るときで線の表示量を変えると、断面を読み取りやすくなります。
五つ目は、色、透明度、表示状態の使い分けです。主要部品を目立たせ、周囲を薄く表示するなど、情報の優先順位を視覚的に整理することで複雑なアセンブリでも確認しやすくなります。
さらに、一つの断面だけで判断せず、断面位置を移動させたり、直交する方向から確認したりすることも大切です。3D CADの断面は三次元形状の一部分を表示しているため、断面外に存在するリブや突起などを見落とさないよう、通常表示や干渉確認、距離計測などと組み合わせて確認する必要があります。
設計レビューでは、通常外観から断面へ切り替え、どの部分を確認しているのかを共有してから内部形状を説明すると理解しやすくなります。同じ断面位置や表示状態を再現できるようにしておけば、設計変更前後の比較にも活用できます。
また、設計モデル上で構造を確認した後は、現場の実際の位置や既設構造との関係を確認することも重要です。3D CADで把握した設計情報と、現場で取得する位置情報を結び付けることで、設計から施工、確認、記録まで3D情報を活用できる範囲が広がります。
こうした現場側の位置確認や記録までつなげたい場合は、高精度な位置情報を取得しながら現況を確認できるLRTK Phoneの活用も選択肢になります。3D CADで内部構造を把握し、必要な位置を現場でも確認するという流れを整えることで、画面上の設計確認だけで終わらない3Dデータ活用へつなげられます。