LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで人体モデルを使い操作性を高める5つの検証法

3D CADで人体モデルを使う操作性検証とは

機械、設備、作業台、操作盤、車両、家具などを設計するときは、部品同士が正しく組み付くことだけでなく、人が無理なく操作できることも確認しなければなりません。寸法上は成立している設計でも、実際に人が立ったり座ったりすると、操作レバーに手が届かない、表示が見えにくい、身体を大きくひねらなければならないといった問題が発生することがあります。

こうした問題を設計段階で見つける方法の一つが、3D CADに人体モデルを配置する操作性検証です。人体モデルは、設計対象と人の位置関係を三次元空間で確認するためのモデルです。身長や手足の長さを設定できるものや、肩、肘、手首、腰、膝などの関節を動かせるものがあり、人が製品や設備をどのように使用するかを3D CAD上で再現できます。

人体モデルを使うと、単純な寸法確認では捉えにくい問題を可視化できます。たとえば、操作ボタンまでの直線距離が短くても、手前に部品があれば腕を自然に伸ばせません。目と表示器の距離が適切でも、筐体の縁や開いた扉によって表示が隠れる場合があります。足元の空間が十分に見えても、着座や立ち上がりの途中で膝が周辺部品に接触することもあります。

ただし、3D CADに人体モデルを置くだけで操作性が自動的に保証されるわけではありません。重要なのは、実際の使用場面を想定し、操作の開始から終了までを分解して確認することです。誰が、どの姿勢で、どの方向から、何を見ながら、どこへ手を伸ばし、どのように身体を移動させるのかを整理する必要があります。

人体モデルによる検証は、完成後の使いにくさを予測し、設計変更が比較的容易な段階で改善するための手段です。試作後に操作盤の位置や筐体寸法を変更すると、部品配置、配線、構造、図面など広い範囲へ影響が及びます。3D CAD上で早期に検証しておけば、大きな手戻りを抑えながら操作性を高められます。

人体モデルによる検証を始める前の準備

人体モデルを使った検証では、モデルを配置する前の準備が結果を左右します。使用条件が曖昧なまま検証すると、都合のよい姿勢だけを作ってしまい、実際には操作しにくい設計を見逃す可能性があります。

最初に整理したいのは、想定する利用者です。設計対象を使う人の体格、年齢層、作業経験、身体能力、服装、保護具の有無などによって、必要な空間や操作しやすい位置は変わります。特定の作業者だけが使う専用設備と、不特定多数が使う製品では、検証すべき人体モデルの範囲も異なります。

次に、使用姿勢を定義します。立位で操作するのか、椅子に座るのか、床に膝をつくのか、中腰になるのかによって、目の位置や手の届く範囲は大きく変わります。同じ操作部であっても、通常運転時、清掃時、点検時、部品交換時では姿勢が異なる場合があります。通常操作だけを検証し、保守作業を見落とさないように注意が必要です。

人体モデルの基準位置も決めます。立位であれば足の位置、着座であれば座面と骨盤の位置などを基準にします。基準が曖昧なまま人体モデルを移動させると、検証ごとに立ち位置や座る位置が変わり、結果を比較できません。床面、座面、足元の基準線などを3D CAD上に設定し、同じ条件を再現できるようにします。

操作対象については、ボタン、ハンドル、レバー、工具、表示器、点検口、交換部品などを区別して整理します。手が触れる位置だけではなく、実際に握る範囲、押す方向、引く方向、回転させる方向まで定義することが大切です。操作方向を考慮しなければ、手が届いていても力を加えにくい配置になることがあります。

さらに、扉やカバーの開閉状態、可動部の位置、工具の長さ、取り外す部品の移動経路なども準備します。設計対象を閉じた状態だけで確認すると、扉を開いたときに作業者の立ち位置がなくなる、工具を差し込む方向が確保できないといった問題を見逃します。

検証条件は、3D CADデータ内や設計資料に記録しておくと便利です。人体モデルの体格、姿勢、基準位置、対象操作、使用する工具、装備条件などを残しておけば、設計変更後も同じ条件で再確認できます。操作性検証は一度だけ行う作業ではなく、設計の進行に合わせて繰り返すことが重要です。

検証法1 操作部への到達性を確認する

人体モデルを使った基本的な検証が、ボタン、レバー、ハンドル、取っ手などへの到達性確認です。到達性とは、使用者が想定した姿勢を保ちながら、対象位置へ無理なく手や足を届かせられるかという考え方です。

到達性を確認するときは、人体モデルの手先を操作点へ移動させるだけでは不十分です。3D CAD上では関節を自由に動かせるため、現実には不自然な姿勢でも操作点へ手を合わせられる場合があります。肩が大きく持ち上がっていないか、肘が伸び切っていないか、上体が前へ倒れすぎていないか、腰が座面から浮いていないかを併せて確認します。

操作頻度も重要です。頻繁に使う操作部は、腕を自然に動かせる範囲へ配置することが望まれます。一方で、非常時だけ使う操作部や、誤操作を防ぐ必要がある操作部は、通常の操作範囲から意図的に離すことがあります。単純にすべての操作部を近づけるのではなく、使用頻度、操作順序、重要度を踏まえて配置を検討します。

到達性には、最大到達範囲と実用的な操作範囲があります。腕を限界まで伸ばせば触れられる位置であっても、繰り返し操作には適さないことがあります。手先が届くかだけでなく、ボタンを押す、レバーを引く、ハンドルを回すといった動作を安定して行えるかを確認します。

操作部の手前に障害物がある場合は、手先の位置だけではなく、腕全体の経路を見る必要があります。手は届いても、肘が筐体に当たる、前腕が別のレバーに接触する、手首を大きく曲げなければならないといった状態が考えられます。人体モデルの上腕、前腕、手の各部と周辺形状の干渉を3D CADで確認します。

足で操作するペダルやスイッチについても同様です。足先が対象へ届いていても、かかとが床から大きく浮く、膝が周辺部品に当たる、上体をずらさなければ踏み込めない場合があります。着座姿勢では、座面の高さ、背もたれとの位置関係、膝下空間を含めて確認します。

両手操作が必要な場合は、左右の操作部へ同時に手が届くかを検証します。片方ずつであれば届いても、両手を同時に伸ばすと肩や上体の動きが制限されることがあります。工具や部品を片手で保持しながら、もう一方の手で操作する作業も同様です。作業の順番を再現し、どの段階で身体の自由度が失われるかを確認します。

到達性に問題が見つかったときは、操作部を単純に近づけるだけでなく、取付角度、操作方向、ハンドル形状、作業者の立ち位置なども見直します。操作方向を変えるだけで、腕や手首の負担を抑えられる場合があります。人体モデルを使えば、複数の配置を比較しながら改善案を検討できます。

検証法2 表示部や作業対象の視認性を確認する

操作性を高めるには、手が届くだけでなく、必要な情報や作業対象が見えることも重要です。表示器、目盛り、警告灯、加工位置、接続部、点検箇所などが見えにくいと、作業者は身体を傾けたり、覗き込んだりしなければなりません。見えにくさは操作ミスや確認漏れの原因にもなります。

3D CAD上で視認性を確認するときは、人体モデルの目の位置を基準にします。立位と着座では目の高さが異なり、同じ表示位置でも見え方が変わります。さらに、頭部を正面へ向けた状態だけでなく、実際の操作姿勢に合わせた視線方向を設定します。

視線と対象物の間に遮蔽物がないかを確認することが基本です。筐体の縁、手すり、扉、配管、ケーブル、作業者自身の腕などが表示を隠す場合があります。特に、操作中に手や工具が視界を遮る配置は、静止状態の確認だけでは見落としやすい点です。

表示部の正面方向も確認します。目の位置から表示面が大きく傾いていると、形状上は見えていても情報を読み取りにくくなる可能性があります。表示面の角度を変えたり、操作位置に合わせて向きを調整したりすることで、視認性を改善できます。

視認性の検証では、一つの人体モデルだけで判断しないことが大切です。身長が異なれば目の高さも変わり、背の高い人には見やすい表示が、小柄な人には筐体の縁で隠れることがあります。反対に、低い位置へ合わせすぎると、背の高い人が大きく首を曲げる必要が生じます。

表示と操作部の関係も確認します。表示を見ながら操作する必要がある場合、操作中に視線を大きく移動させずに済む配置が求められます。表示部と対応する操作部が離れすぎていると、どの表示がどの操作に対応するのか分かりにくくなることがあります。3D CAD上で視線方向と手の位置を同時に確認すると、表示と操作の関係を検討しやすくなります。

内部を目視しながら調整する作業では、開口部の大きさと奥行きも重要です。開口部から対象物が見えていても、工具を差し込んだときに視線が遮られることがあります。人体モデル、工具モデル、作業対象を同時に配置し、見る動作と操作する動作が両立するかを検証します。

扉やカバーがある場合は、開いた状態での視認性も確認します。開いた扉そのものが表示部を隠したり、作業者が立つ位置を制限したりする場合があります。扉の開き角度やヒンジの位置を変更すると、視線と作業空間の両方を改善できることがあります。

視認性に問題が見つかった場合は、表示部の高さや角度だけでなく、作業照明の配置、反射しやすい面の向き、ラベルの位置、確認窓の形状なども検討します。ただし、3D CAD上では実際の明るさや反射の程度を完全には再現できないことがあります。そのため、形状による遮蔽を3D CADで確認し、見え方の細部は試作や現物で確かめるという使い分けが必要です。

検証法3 操作時の姿勢と関節負担を確認する

操作対象へ手が届き、表示も見える設計であっても、身体に大きな負担がかかる姿勢では操作性が高いとはいえません。人体モデルを使うことで、操作中の肩、肘、手首、腰、首、膝などの状態を三次元的に確認できます。

姿勢検証では、まず通常姿勢を設定し、そこから操作に伴って身体がどのように変化するかを見ます。たとえば、立位で正面のボタンを押す動作であれば、足の位置を固定したまま腕を伸ばします。そのとき、上体を大きく前傾させなければ届かない、肩を持ち上げなければならない、手首を不自然に曲げなければならない場合は、配置の見直しが必要です。

着座作業では、座面、背もたれ、足元、操作部の位置関係が重要です。人体モデルの腰が背もたれから離れすぎていないか、足裏が安定しているか、太ももや膝が筐体に接触していないかを確認します。操作部が高すぎると肩が上がり、低すぎると上体が前へ倒れやすくなります。

首の姿勢も見落としやすい項目です。表示部が低い、または横へ寄りすぎていると、作業者は首を曲げたり回したりした状態を維持することになります。短時間の確認であれば問題が目立たなくても、長時間繰り返す作業では負担につながる可能性があります。

人体モデルの関節角度を表示できる環境では、操作前後の角度変化を記録すると比較に役立ちます。ただし、特定の角度だけを合否基準として扱うのは慎重であるべきです。身体への負担は、姿勢の大きさだけでなく、姿勢を保つ時間、動作の回数、加える力、休憩の有無などによって変わります。

3D CADで姿勢を検証するときは、瞬間的な操作だけでなく、作業の継続時間を想定することが重要です。少し腕を伸ばす姿勢でも、一日に数回だけ行う作業と、短い間隔で繰り返す作業では負担の意味が異なります。頻度の高い操作ほど、自然な姿勢の近くで行える配置を優先します。

工具を使う作業では、人体モデルの手先に工具モデルを配置します。工具の長さや握る位置を含めることで、手首や肘の姿勢が変化します。工具本体が周辺形状に当たり、手首をひねらなければ使用できないこともあります。工具を省略して人体モデルの手だけで検証すると、実際の作業姿勢を過小評価する可能性があります。

力を加える方向も考慮します。重いレバーを引く、固い部品を押し込む、締結部を回すといった作業では、単に手が届くだけでは不十分です。身体を安定させる足場や、反力を受ける姿勢を確保できるかを確認します。片足立ちに近い姿勢や、腰をひねった状態では、十分な力を安全に加えにくくなります。

姿勢に問題がある場合は、操作位置の移動だけでなく、対象物の角度、作業台の高さ、座面の調整範囲、足元の形状、工具を差し込む方向などを見直します。設計の自由度が高い段階で人体モデルを使えば、複数の変更案を短時間で比較できます。

検証法4 動作経路と身体周辺の空間を確認する

人体モデルによる操作性検証では、最終的な姿勢だけでなく、そこへ至るまでの動作経路を確認することが重要です。開始位置と終了位置の両方で干渉がなくても、動作の途中で腕、肘、頭、膝などが設計対象に接触することがあります。

たとえば、筐体内部へ手を入れて部品を交換する作業では、交換位置に手が届くだけでは十分ではありません。手を開口部へ入れ、部品をつかみ、固定を解除し、向きを変えながら取り出す一連の動作が必要です。部品をつかんだ状態では手の幅が増え、取り外した部品を通過させる空間も必要になります。

動作経路を確認するときは、操作を複数の段階に分けます。接近、姿勢の変更、手の挿入、操作、部品の保持、取り出し、退避といった流れに分け、それぞれの状態を3D CAD上に保存します。各段階を比較すると、どの瞬間に空間が不足するかを特定しやすくなります。

乗り込みや立ち上がりを伴う設計では、身体全体の移動を確認します。着座状態だけでは問題がなくても、腰を下ろす途中で頭が上部構造に当たる、膝を曲げたときに操作盤へ接触する、立ち上がるときにつかまる場所がないといった問題が発生します。

通路や作業スペースでは、人体モデルの輪郭だけでなく、身体を動かす余裕を考えます。人が静止して立てる幅と、向きを変える、しゃがむ、荷物を持つといった動作に必要な幅は同じではありません。作業者が工具箱や交換部品を持って移動する場合は、それらを人体モデルと一体で扱います。

頭上空間も重要です。通常の立位では余裕があっても、段差を上る、前かがみから身体を起こす、ヘルメットなどの装備を着用するといった条件で接触する可能性があります。人体モデルの頭部に装備分の形状を加え、動作中の最も高い位置を確認します。

保守作業では、取り外す部品の移動経路も検証します。作業者の手は届いていても、部品を周辺構造から抜き出せない設計では交換できません。部品の固定を解除した後、回転や傾きを伴いながら外部へ移動できるかを3D CADで確認します。

複数の作業者が関わる場合は、人体モデルを複数配置します。一人が部品を支え、もう一人が締結部を操作する作業では、互いの腕や立ち位置が干渉することがあります。設計対象との干渉だけでなく、作業者同士の距離や視線の遮りも確認します。

扉、引き出し、スライド部、回転部などの可動域と人体モデルの位置関係も重要です。扉を開くために作業者が一度後退しなければならない、引き出した部品が通路をふさぐ、可動部の通過範囲へ手を置きやすいといった問題が考えられます。可動部を複数の角度や位置へ動かし、人体モデルとの関係を確認します。

空間不足が見つかった場合は、開口部を広げるだけでなく、部品の取り外し方向、締結位置、扉の開き方、作業者の接近方向を見直します。部品を正面から外す設計を側面から外す設計へ変えるなど、作業経路そのものを変更することで、限られた空間を有効に使える場合があります。

検証法5 体格差や装備差を反映して確認する

一人分の人体モデルだけで検証すると、その体格には適していても、ほかの利用者には使いにくい設計になる可能性があります。操作性を高めるには、想定利用者の体格差を反映した複数の人体モデルで確認することが重要です。

体格差の検証では、小柄な人体モデル、標準的な人体モデル、大柄な人体モデルを用意し、同じ操作を行わせます。小柄な人では到達性や視認性が問題になりやすく、大柄な人では足元空間、頭上空間、着座空間、通路幅などが問題になりやすい傾向があります。

ただし、身長だけを変える検証では不十分です。同じ身長でも、腕の長さ、脚の長さ、肩幅、座ったときの目の高さなどには差があります。人体モデルの設定項目が利用できる場合は、操作内容に関係する寸法を確認し、必要に応じて条件を変えます。

着座設備では、座面の前後位置や高さを調整できるかが操作性に大きく影響します。調整機構がある場合は、最小位置と最大位置の両方で人体モデルを配置し、操作部への到達性、表示部の視認性、足元の余裕を確認します。調整範囲が広くても、調整後に一部の操作部へ届かなくなる場合があります。

服装や装備も身体寸法を変化させます。厚手の衣服、手袋、履物、保護具、工具袋などを使用する環境では、人体モデルの素体だけで判断しないことが大切です。装備の厚みや張り出しを簡略形状として追加し、筐体や通路との干渉を確認します。

手袋を着用すると、指先の細かな動作が制限され、つまみや小さなボタンを扱いにくくなる場合があります。3D CADでは触感や操作力を直接評価できませんが、手袋を含めた手の外形と操作部周辺の空間を確認することで、指を入れる余裕や握る空間の不足を見つけられます。

携行品や工具を身に着ける作業では、腰や背中の張り出しも考慮します。人体モデルだけでは通過できる通路でも、装備を追加すると周辺構造へ接触する可能性があります。装備が引っ掛かりやすい突起や、身体を回転させにくい狭い場所がないかを確認します。

利用者が荷物や部品を持つ場合は、人体モデルの手に対象物を配置します。両手がふさがると手すりを使用できなくなり、身体の向きを変える動作も難しくなります。交換部品を胸の前で持つ、片側で抱えるなど、実際の保持姿勢を想定することが重要です。

体格差の検証結果を設計へ反映するときは、すべての寸法を最大化すればよいわけではありません。操作部を広い範囲に分散させると、小柄な人には届きにくくなる一方で、空間を狭くすると大柄な人が入りにくくなります。高さや位置を調整できる構造、複数の方向から操作できる配置、使用頻度に応じた操作部の集約などを検討します。

対象となる利用者が明確な場合は、その集団に合った条件を設定します。不特定多数が利用する設備では、より広い体格差や動作条件を考える必要があります。誰を基準にした設計なのかを記録し、想定外の利用条件まで対応できると断定しないことが重要です。

3D CAD上の検証結果を設計へ反映する方法

人体モデルを使って問題を発見しても、その結果が設計変更へつながらなければ操作性は改善しません。検証結果は、どの人体モデルが、どの姿勢で、どの操作を行ったときに、何が問題になったのかを具体的に記録します。

単に「手が届きにくい」と書くのではなく、操作時に上体を前へ傾ける必要がある、肘が筐体に接触する、表示を確認しながら操作できないといった状態を記録します。問題となる姿勢の3D CAD画面や視点を保存しておけば、設計者以外にも状況を伝えやすくなります。

改善案を作成した後は、同じ人体モデルと同じ基準位置で再検証します。人体モデルの位置や姿勢を変更してしまうと、改善前後を正しく比較できません。検証条件を複製し、変更した部品だけを差し替える方法が有効です。

操作性の改善によって、別の問題が発生することもあります。操作盤を近づけた結果、通路が狭くなる、表示器の角度を変えた結果、ほかの位置から見えにくくなるといった影響が考えられます。到達性、視認性、姿勢、動作空間、体格差を個別に扱うだけでなく、変更後に五つの観点を再確認します。

設計変更の優先順位は、問題の重大さ、操作頻度、発生する利用者の範囲、変更に伴う影響を踏まえて決めます。頻繁に行う通常操作の問題は優先度が高くなりやすい一方、使用頻度が低い作業でも、安全確保や緊急対応に関わる場合は重要です。

設計変更が難しい場合は、操作方法や作業手順を見直す方法もあります。ただし、使いにくい構造を手順だけで補うと、作業者の負担や教育内容が増える可能性があります。構造で解決できる問題と、運用で管理する問題を区別することが大切です。

検証結果は、設計レビューで共有できる形式にまとめます。人体モデルを表示した3D CADデータだけでは、設定条件が分からないことがあります。利用者条件、姿勢、視線方向、操作内容、装備、可動部の状態などを併記すると、検証の前提を理解しやすくなります。

また、人体モデルを設計データ内に残す場合は、通常の部品と区別して管理します。製品構成や部品表へ誤って含まれないようにし、表示状態や専用の管理区分を設定します。複数の人体モデルを配置するとデータが重くなることもあるため、検証用データと製造用データを分ける方法も有効です。

人体モデルだけでは判断できない項目

3D CADによる人体モデル検証は有効ですが、実際の操作性を完全に再現できるわけではありません。人体モデルは形状や姿勢を確認するための手段であり、触感、疲労感、操作音、振動、心理的な使いやすさなどは判断しにくい部分です。

たとえば、ボタンの位置が適切でも、押す力が大きすぎれば使いにくくなります。ハンドルを握る空間が確保されていても、表面が滑りやすい、角が手に当たるといった問題は3D CAD上の人体モデルだけでは把握できません。

表示器についても、視線が通っていることと、内容が読みやすいことは別です。文字の大きさ、明るさ、反射、周辺照明、表示内容の分かりやすさなどは、実際の使用環境で確認する必要があります。3D CADでは、まず形状による遮蔽や表示面の向きを検証します。

作業時に必要な力も、姿勢だけでは評価できません。手が届く位置でも、強い力を加えると身体が不安定になる場合があります。実際の操作力が大きい箇所は、試作機や簡易模型を用いた確認が必要です。

繰り返し作業による疲労も同様です。一回だけ姿勢を再現すると問題が小さく見えても、同じ動作を長時間繰り返すと負担が蓄積する可能性があります。操作時間、回数、休憩、作業の切り替えなどを含めて検討します。

人体モデルには、関節の動きや身体寸法を簡略化したものもあります。モデル上で成立する姿勢が、すべての人にとって自然とは限りません。関節可動範囲の設定や姿勢評価機能があっても、結果を絶対的な判定として扱わず、設計判断を支援する情報として利用します。

そのため、重要な操作部や長時間使用する設備では、3D CAD上の人体モデル検証と、実物大の簡易模型、試作機、実際の利用者による操作確認を組み合わせることが効果的です。3D CADで明らかな問題を早期に減らしてから現物確認を行えば、試作段階で検討すべき項目を絞り込めます。

現物確認で見つかった問題は、3D CADへ戻して記録します。人体モデルの姿勢や位置を修正し、なぜ設計段階で発見できなかったのかを整理すると、次回以降の検証精度を高められます。

操作性検証を設計業務に定着させるポイント

人体モデルによる検証を定着させるには、特定の担当者だけが必要に応じて行うのではなく、設計工程へ組み込むことが重要です。検証の実施時期、対象となる操作、使用する人体モデル、記録方法をあらかじめ決めます。

構想段階では、人体モデルを使って製品や設備のおおまかな高さ、奥行き、操作面の方向を検討します。詳細設計へ進む前であれば、大きな配置変更も比較的行いやすくなります。

詳細設計段階では、ボタン、レバー、表示器、扉、点検口などの具体的な位置を確認します。工具や交換部品も配置し、通常操作だけでなく、清掃、調整、点検、交換といった作業を検証します。

設計変更後には、影響を受ける操作を再確認します。内部部品の変更で外観寸法が変わっていなくても、点検時の手の経路や工具空間が変化する可能性があります。操作性に関係する部品を特定し、変更時の確認対象に含めます。

人体モデルの配置テンプレートを用意する方法も有効です。立位、着座、小柄、大柄、装備ありなど、頻繁に使用する条件をあらかじめ保存しておけば、案件ごとの準備時間を減らせます。ただし、テンプレートをそのまま使うのではなく、対象製品の利用者条件に合っているかを確認します。

操作性の判定基準も共有します。単に干渉がないことだけを合格条件にすると、腕を限界まで伸ばす姿勢や、大きく身体をひねる姿勢を許容してしまいます。到達性、視認性、姿勢、動作経路、体格差について、どの状態を問題として扱うかを設計チーム内で整理します。

設計レビューでは、完成状態の外観だけでなく、人体モデルを配置した状態も表示します。操作開始前、操作中、保守作業中など複数の状態を示すことで、関係者が実際の使用場面を想像しやすくなります。

製造、保守、現場運用の担当者から意見を得ることも重要です。設計者が想定した作業手順と、実際の現場で行われる手順が異なる場合があります。作業者がどの位置に立ち、どの工具を使い、どの順番で操作するかを確認し、人体モデルの検証条件へ反映します。

操作性検証の結果は、次の製品や設備にも活用できます。過去に問題となった姿勢、狭かった開口部、見えにくかった表示位置などを蓄積すれば、新規設計の初期段階から注意できます。人体モデルの利用を単発の確認作業ではなく、設計知識を蓄積する仕組みとして扱うことが大切です。

まとめ

3D CADに人体モデルを配置すると、製品や設備と人との関係を設計段階で確認できます。部品単体の寸法や干渉だけでは見つけにくい、手が届かない、表示が見えない、姿勢が不自然になる、動作途中で身体が接触するといった問題を可視化できることが大きな利点です。

操作性を高めるためには、操作部への到達性、表示部や作業対象の視認性、操作時の姿勢と関節負担、身体や部品の動作経路、利用者の体格差や装備差という五つの観点から検証します。いずれか一つだけを確認するのではなく、実際の操作手順に沿って組み合わせることが重要です。

人体モデルを動かす際は、手先を目的位置へ合わせるだけでなく、肩、肘、手首、腰、首、膝などの状態を確認します。最終姿勢だけでなく、接近、操作、部品の保持、取り出し、退避までの動作を分解すると、途中で発生する干渉や空間不足を見つけやすくなります。

また、標準的な体格だけでなく、小柄な人、大柄な人、装備を着用した人など、想定利用者に応じた条件で確認する必要があります。人体モデルの基準位置や姿勢を保存し、設計変更の前後で同じ条件を再現すれば、改善効果を比較できます。

一方で、人体モデルだけでは、操作力、触感、表示の読みやすさ、疲労、振動などを十分に評価できません。3D CADによる検証で形状や配置の問題を早期に減らし、重要な項目は簡易模型や試作機による確認へつなげることが有効です。

既存設備や作業場所を3D CADへ反映する場合は、現場形状の取得精度も検証品質に影響します。現地の空間や設置物を点群として記録し、人体モデルと組み合わせて操作空間を検討する方法もあります。現場の三次元情報を設計や検証へ活用したい場合は、LRTK Phoneを使った計測と点群活用も次の選択肢になります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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