LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで樹脂部品の肉厚不良を防ぐ5つの設計基準

3D CADで樹脂部品の肉厚を管理する重要性

樹脂部品の設計では、外形寸法や取付位置だけでなく、部品を構成する壁の厚さを適切に管理する必要があります。3D CAD上で形状が問題なく成立していても、肉厚が薄すぎたり、反対に一部だけ厚くなっていたりすると、成形時や使用時の不具合につながる可能性があります。

樹脂部品の肉厚とは、一般に部品の外側の面と内側の面との距離を指します。しかし、曲面、傾斜面、段差、リブ、ボス、コーナーなどを含む複雑な形状では、単純な寸法測定だけで肉厚を把握することは困難です。ある断面では問題がなくても、別の方向から切断すると薄肉部や厚肉部が見つかることがあります。

特に射出成形を前提とした樹脂部品では、溶けた樹脂が金型内を流れ、冷却されながら固まります。そのため、肉厚は樹脂の流れやすさ、冷却速度、収縮量、変形、外観、強度などに関係します。肉厚を単なる形状寸法としてではなく、成形性と品質を左右する重要な設計条件として扱うことが必要です。

肉厚が薄すぎると、樹脂が十分に流れ込まず、形状の一部が充填されない可能性があります。成形できたとしても、使用時にたわみや割れが生じ、必要な強度や剛性を確保できないことがあります。一方、肉厚が厚すぎると、内部まで冷えるのに時間がかかり、表面のくぼみや内部の空洞、反り、寸法変化などが発生しやすくなります。

3D CADを使用すれば、断面表示、距離測定、肉厚解析などによって、目視だけでは見つけにくい肉厚不良を設計段階で確認できます。ただし、解析機能を一度実行するだけでは十分ではありません。基本形状の作成後、補強形状の追加後、設計変更後など、複数の段階で確認することが重要です。

また、肉厚の適正値は、材料、部品の大きさ、成形設備、金型構造、使用条件などによって異なります。すべての樹脂部品に適用できる単一の数値があるわけではありません。一般的な目安を参考にしながらも、使用材料の特性や成形担当者の知見を踏まえて決定する必要があります。

樹脂部品で発生する肉厚不良の種類

樹脂部品の肉厚不良は、薄肉、厚肉、急激な肉厚変化、局所的な肉厚集中などに分けて考えると整理しやすくなります。それぞれで発生しやすい問題が異なるため、設計変更を行う前に、不良の種類と原因を把握することが大切です。

薄肉部では、金型内を流れる樹脂の抵抗が大きくなり、流動の末端まで樹脂が到達しにくくなる可能性があります。特に、ゲートから遠い位置に薄肉部がある場合や、薄い通路が長く続く場合には注意が必要です。形状の一部が欠けるだけでなく、表面状態や寸法の安定性に影響することもあります。

薄肉化は、部品の軽量化や材料使用量の削減に役立ちますが、単純に壁を薄くすればよいわけではありません。荷重を受ける方向、支持位置、部品の広さ、流動距離などを考慮し、必要な剛性と成形性を両立させる必要があります。平板状の広い面では、厚さが不足すると大きなたわみが生じやすくなります。

厚肉部では、表面よりも内部の冷却が遅くなりやすく、収縮の差が生じます。その結果、表面にくぼみが生じるヒケや、内部に空洞が残るボイドにつながる可能性があります。外観上の異常が小さくても、内部の状態が不均一になり、寸法や強度に影響することがあります。

厚肉部は、複数の壁が交差する部分、リブの根元、ボスの底部、フランジの付け根、段差の周辺などに発生しやすい傾向があります。外側から見ると単純な形状でも、内部では複数の体積が重なっている場合があります。そのため、外観だけでなく、断面や肉厚分布を確認する必要があります。

部品内で肉厚差が大きい場合は、場所によって冷却速度と収縮量が変わります。薄い部分が先に固まり、厚い部分が遅れて収縮すると、部品全体に反りやねじれが生じる可能性があります。平面度、直角度、組付け精度などが求められる部品では、肉厚のばらつきが機能に直接影響することがあります。

成形条件の調整によって改善できる場合もありますが、形状そのものに大きな厚肉や急激な肉厚変化があると、安定した量産条件を設定しにくくなります。製造工程だけで解決しようとせず、3D CAD上で形状の原因を減らしておくことが基本です。

設計基準1 材料と成形条件から基本肉厚を決める

肉厚不良を防ぐ第一の設計基準は、部品全体の基礎となる基本肉厚を決めることです。基本肉厚を明確にせずに外形や内部形状を作り始めると、面ごとに異なる厚さが設定され、設計が進むほど薄肉部と厚肉部が増えやすくなります。

基本肉厚は、使用する樹脂材料、部品の大きさ、必要な剛性、流動距離、外観要求、成形方法、金型構造などを踏まえて決定します。同じ寸法の部品であっても、材料の流動性や収縮特性が異なれば、適切な肉厚の範囲も変わります。一般的な推奨値をそのまま適用するのではなく、材料の技術情報と製造条件を確認することが必要です。

設計初期には、部品がどのような役割を持つのかを整理します。外装カバー、内部部品の保持部、荷重を受ける構造部、液体や気体を通す部品などでは、肉厚に求められる条件が異なります。外観を優先する部品ではヒケを抑える必要があり、構造部品では強度と剛性を優先して検討します。

剛性が不足している場合、壁全体を厚くする方法だけに頼ると、重量や冷却時間が増え、厚肉不良の原因になることがあります。リブの追加、断面形状の変更、曲面の利用、支持位置の見直しなどによって、基本肉厚を大きく増やさずに剛性を確保できる場合があります。

一方、軽量化を目的として基本肉厚を小さくする場合は、樹脂の流れと使用時の変形を確認します。特に大型の部品や、ゲートから遠い位置まで樹脂を流す必要がある部品では、薄肉化によって充填が難しくなる可能性があります。局所的な厚さだけでなく、樹脂が流れる経路全体を考えることが重要です。

3D CAD上では、基本肉厚を設計パラメータとして管理すると変更しやすくなります。外形から内側へ一定距離だけ面を移動して中空化する場合には、基本肉厚を一つの値として設定し、必要な部分だけ個別に変更します。材料変更や試作結果に応じて肉厚を見直す場合も、パラメータ化されていれば形状全体へ反映しやすくなります。

ただし、シェル形状が正常に作成できたからといって、部品全体が意図した肉厚になっているとは限りません。小さな曲率半径や複雑な曲面では、内側の面が交差したり、局所的に厚さが変化したりすることがあります。シェル化の完了後には、必ず肉厚解析と断面確認を行います。

基本肉厚を決める際には、製造ばらつきも考慮します。3D CAD上の寸法は理論値ですが、実際の成形品では材料収縮、金型加工誤差、成形条件の変動などが発生します。機能上必要な最小厚さと設計値がほぼ同じである場合、ばらつきによって要求を満たせない可能性があります。

設計基準2 部品全体の肉厚をできるだけ均一にする

樹脂部品では、部品全体の肉厚をできるだけ均一にすることが基本です。すべての部分を完全に同じ厚さにできない場合でも、不要な厚肉部と薄肉部を減らし、厚さの差を小さくすることで、樹脂の流れと冷却を安定させやすくなります。

肉厚を均一に保つためには、外側の形状と内側の形状を一体として考える必要があります。外観面に段差や膨らみを追加したとき、内側の面を動かさなければ、その部分だけ厚肉になります。反対に、内部部品を避けるために内側へくぼみを作ると、外側との距離が小さくなり、薄肉部が生じる可能性があります。

3D CADでは、外観面だけを表示して設計を進めると、内部の肉厚変化を見落としやすくなります。外側へ形状を追加したときは内側への影響を確認し、内側へ形状を追加したときは外側との距離を確認することが必要です。

一定肉厚を作りやすい方法として、基準面から反対側の面をオフセットする方法があります。平面や単純な曲面では有効ですが、複雑な自由曲面では、オフセットした面が自己交差したり、狭い部分で形状が成立しなくなったりする場合があります。このような部分は、面を分割して個別に調整し、接続部の肉厚を確認します。

開口部、フランジ、合わせ面、シール部、締結部などは、機能を持たせるために形状が複雑になり、基本肉厚より厚くなりやすい部分です。必要な補強であっても、広い範囲を一体的に厚くするのではなく、荷重がかかる位置や接触する位置を中心に、必要な範囲だけ補強します。

広い平面の剛性が不足するとき、壁全体を厚くする方法は分かりやすいものの、重量と冷却時間が増えます。さらに、平面の中央付近にヒケや反りが生じる可能性があります。裏側へリブを配置したり、わずかな曲面や折れ形状を設けたりすることで、肉厚を増やさずに剛性を高められる場合があります。

肉厚の均一性を確認するときは、最大値と最小値だけを見るのではなく、その位置と広がりを確認します。ごく小さな範囲だけ厚い部分と、広い面全体が厚い場合とでは、成形への影響が異なります。薄肉部についても、短い範囲に限られる場合と、流動方向へ長く続く場合とでは、充填への影響が変わります。

3D CADの肉厚解析では、基本肉厚を中心に許容範囲を設定し、それより薄い部分と厚い部分を色分けして確認します。異常な色が表示された場合は、その位置に断面を作成し、どの面や形状が肉厚差を生んでいるのかを特定します。

部品全体の肉厚が整理されていれば、設計変更にも対応しやすくなります。材料変更、軽量化、強度向上、金型修正などが必要になったとき、どの部分が基本肉厚で、どの部分が意図的な補強なのかを判断できます。場所ごとに根拠の異なる厚さが設定されていると、変更による影響を把握しにくくなります。

設計基準3 肉厚の変化をなだらかにつなぐ

機能上の理由により、部品の一部を基本肉厚より厚くする必要がある場合があります。締結部、支持部、荷重を受ける部分、開口部の周辺などが代表的です。このような場合は、薄い部分から厚い部分へ急に切り替えるのではなく、できるだけなだらかにつなぐことが重要です。

急激な肉厚変化があると、樹脂の流れ方と冷却速度が境界部で変化します。薄い部分は早く冷えやすく、厚い部分は内部が冷えにくいため、収縮の量や固まる時期に差が生じます。その結果、境界付近にヒケ、反り、寸法変化、残留応力などが発生する可能性があります。

段差形状では、厚さを一度に切り替えるのではなく、傾斜面や曲面を設けて徐々に変化させます。必要な変化距離は、厚さの差、部品寸法、材料、成形方向などによって異なりますが、直角の段差によって急に体積が増える形状は避けることが基本です。

コーナー部では、内側と外側の曲率半径の関係に注意します。外側だけへ大きな丸みを付け、内側が鋭い角のまま残っていると、コーナー部分が厚肉になります。反対に、内側だけを大きく丸めると、外側との距離が小さくなり、局所的な薄肉が発生することがあります。

一定肉厚のコーナーを作るためには、内側と外側の面を関連付けて設計します。基本肉厚を維持するように曲率半径を調整し、断面上で面間距離を確認します。三次元的に形状が変化するコーナーでは、一方向の断面だけでは十分ではありません。複数方向から切断し、最も薄い部分と厚い部分を確認します。

急な段差や鋭い角は、使用時の応力集中にも関係します。荷重が加わる部分に鋭い角があると、割れや破損の起点になる可能性があります。適切な丸みや傾斜を設けることは、成形性だけでなく耐久性の向上にもつながります。

ただし、丸みを大きくすれば必ずよいわけではありません。リブの根元やボスの付け根へ大きな丸みを追加すると、周辺の体積が増え、厚肉化することがあります。応力集中の緩和と肉厚の均一性を両立させるため、丸みを追加した後にも肉厚解析を実行します。

外観面が滑らかにつながっていても、内側の形状が段差になっていれば肉厚は急変します。3D CADでは外観だけで判断せず、内外面を同時に表示し、断面形状として確認することが必要です。

寸法変更やパラメータ変更によって、以前は緩やかだった肉厚変化が急になる場合もあります。形状変更後は、変更した面だけでなく、その周囲のコーナーや接続部まで確認します。

設計基準4 リブとボスの局所的な厚肉を抑える

樹脂部品では、剛性の向上、位置決め、締結、他部品の保持などを目的として、リブやボスが使用されます。これらは壁全体を厚くせずに機能を持たせるために有効ですが、基礎となる壁との交差部が局所的な厚肉になりやすいため注意が必要です。

リブは、壁の厚さを増やさずに断面性能を高めるための補強形状です。しかし、リブ自体を基本肉厚と同程度以上に厚くすると、壁との接続部で大きな厚肉が発生する可能性があります。適切なリブ厚は、材料、外観要求、リブの高さ、荷重条件などによって異なるため、基本肉厚との関係を確認して設定します。

外観面の裏側にリブを配置するときは、表側のヒケに注意します。リブが厚いほど、反対側の外観面へ収縮の影響が現れやすくなります。外観品質が重要な部品では、リブを必要以上に厚くせず、本数、方向、高さ、配置間隔によって必要な剛性を確保します。

リブを高くすると剛性を向上できる場合がありますが、高すぎるリブは樹脂の充填や金型からの取り出しに影響します。高さだけでなく、抜き勾配、根元の丸み、先端の厚さ、周囲との間隔を含めて検討します。

複数のリブが交差する部分では、体積が集中しやすくなります。十字状に交差させると中央部が厚くなるため、交点をずらす、中央に肉抜きを設ける、リブの接続方法を変更するなどの対策を検討します。個々のリブ厚が適切でも、結合後の形状では厚肉になっている場合があります。

ボスは、ねじ、ピン、軸などを受ける円筒状の形状です。ボスの外径を大きくしすぎたり、底部を壁へ全面的に接続したりすると、根元に厚い塊ができます。必要な強度を確保するためには、ボス自体を厚くするだけでなく、周囲へ支持リブを設けて荷重を分散する方法もあります。

ボスを外壁へ直接接続すると、ボスと壁の間が厚肉になる場合があります。ボスを壁から少し離して配置し、薄いリブで接続する方法や、根元に肉抜きを設ける方法が考えられます。ただし、締付荷重や使用時の荷重に耐えられることを確認する必要があります。

ねじ締結部では、締め付けによる割れや変形も考慮します。壁を厚くするだけではなく、荷重が周囲へ分散する形状にします。ボスの高さ、内径、外径、根元形状、支持リブの方向などを使用条件に合わせて検討します。

リブやボスの根元に丸みを追加する場合も、肉厚解析が必要です。丸みは応力集中を緩和する一方で、壁との接続部の体積を増やします。外観側にヒケが発生しやすい位置では、丸みの大きさと補強効果のバランスを確認します。

3D CADでは、リブやボスを追加する前と後の肉厚分布を比較すると、厚肉化した位置を把握しやすくなります。すべての補強形状を作成してから確認するのではなく、リブ、ボス、フランジなどを追加した区切りごとに解析することが有効です。

設計基準5 3D CADの肉厚解析を設計工程に組み込む

肉厚不良を確実に減らすためには、設計者の目視や経験だけに頼らず、3D CADの解析機能を設計工程へ組み込む必要があります。複雑な曲面や内部形状を持つ部品では、通常の表示だけで肉厚を正確に把握することは困難です。

肉厚解析では、部品の内側と外側の面の距離を計算し、設定した厚さの範囲ごとに色分けして表示します。基本肉厚を基準として、許容する最小値と最大値を設定すれば、薄すぎる部分、適正範囲、厚すぎる部分を視覚的に区別できます。

解析条件は、単一の基準値だけでなく、複数の範囲に分けて設定すると確認しやすくなります。修正が必要な範囲、注意して確認する範囲、通常の許容範囲を分けることで、問題箇所の優先順位を付けられます。

ただし、肉厚解析の結果を色だけで判断してはいけません。3D CADによっては、面の法線方向の距離を肉厚として計算する場合や、最も近い面までの距離を計算する場合があります。曲面や傾斜面では、計算方法によって表示値が異なる可能性があります。

疑わしい箇所は、断面表示と距離測定を併用して確認します。断面は一方向だけでなく、複数の角度から作成します。円筒形状や自由曲面では、ある方向から見ると均一でも、別の方向に薄肉部が存在する場合があります。

距離測定を行う際には、選択した面や点が意図した位置であるかを確認します。画面上で近く見える面を選択しても、実際には別の面やエッジを選んでいることがあります。また、測定方向が肉厚方向と一致していなければ、正しい厚さを表さない場合があります。

解析は設計の最後に一度だけ行うのではなく、工程ごとに実施します。基本形状の作成後、シェル化後、リブやボスの追加後、外観変更後、組立干渉の修正後、設計完了前など、確認の区切りを定めます。

設計途中で解析すれば、問題の原因となった形状を特定しやすくなります。設計完了後に多数の厚肉部や薄肉部が見つかると、どの形状を修正すべきか判断しにくくなり、変更によって別の箇所へ問題が移ることもあります。

解析結果は、設計レビューや製造担当者との打ち合わせに利用できるように記録します。問題箇所の画面、断面位置、測定値、修正内容などを残せば、意図的な厚肉と修正が必要な厚肉を区別しやすくなります。

過去の解析結果と成形品の不具合を関連付けて蓄積することも重要です。どのような肉厚分布でヒケや反りが発生したかを記録すれば、次の設計で同じ問題を避けるための判断材料になります。

肉厚解析で見落としやすい形状

3D CADで肉厚解析を実施しても、確認方法が不十分であれば問題を見落とすことがあります。特に、曲面の接続部、狭い溝、文字や記号、微小な段差、複数の補強形状が集まる部分などは注意が必要です。

自由曲面では、表面の曲率が急に変化する部分で内外面の距離が不均一になることがあります。外観上は滑らかに見えても、内側の面が局所的に接近して薄肉になっている場合があります。曲率の変化が大きい箇所には、複数の断面を設定して確認します。

狭い溝や深いくぼみでは、底面と反対側の外観面が近づき、薄肉部が発生しやすくなります。配線を通す溝や部品を避けるための逃げ形状を追加した後は、溝の底部だけでなく、端部やコーナーも確認します。

文字、記号、模様などを部品表面へ追加する場合も注意が必要です。外側へ盛り上げる形状は局所的な厚肉になり、内側へ彫り込む形状は薄肉になる可能性があります。小さな形状であっても、外観面や強度が重要な位置では影響を確認します。

リブ、ボス、フランジが近接する部分では、それぞれの形状が単独では問題なくても、体積が重なって厚肉になることがあります。補強形状を個別に評価するだけでなく、すべてを結合した最終形状で解析することが必要です。

面取りや丸みも見落としの原因になります。角部へ丸みを追加すると形状が滑らかになりますが、周辺の肉厚が変化する場合があります。設計の最終段階で一括して丸みを追加した場合は、追加後に肉厚解析をやり直します。

設計データに微小な面や不要な段差が残っていると、解析結果に細かな異常が多数表示され、重要な問題が分かりにくくなることがあります。解析前にモデルの形状品質を確認し、不要な微小形状を整理することも有効です。

肉厚と合わせて確認したい樹脂部品の設計条件

適切な肉厚を設定しても、他の設計条件が不十分であれば、安定した成形や品質確保が難しくなる場合があります。肉厚解析と合わせて、抜き勾配、成形方向、アンダーカット、角部、流動経路、外観面、寸法公差などを確認します。

抜き勾配は、成形品を金型から取り出すために必要です。垂直に近い壁が長く続くと、離型時の抵抗が大きくなり、傷や変形が生じる可能性があります。必要な勾配は、材料、壁の高さ、表面状態、金型構造などによって異なります。

抜き勾配を追加すると、壁の上端と下端で肉厚が変わる場合があります。外側と内側へ適切に勾配を付ければ一定肉厚を維持しやすくなりますが、一方の面だけに勾配を付けると、端部が厚くなったり薄くなったりします。勾配設定後には肉厚を再確認します。

アンダーカットは、通常の金型開閉方向だけでは成形品を取り出せない形状です。追加の金型機構で対応できる場合もありますが、金型構造が複雑になります。設計初期に成形方向を定め、不要なアンダーカットを避けることが重要です。

ゲート位置と樹脂の流動経路も肉厚に関係します。樹脂は一般に厚い部分を流れやすく、薄い部分では流動抵抗が増える傾向があります。ゲートから遠い位置に長い薄肉部があると、充填が難しくなる可能性があります。

穴やリブの周囲では、流れてきた樹脂が分かれ、再び合流することがあります。合流位置が荷重を受ける部分、締結部、外観面、気密が必要な部分に重なる場合は、性能や外観への影響を検討します。

外観面の裏側にリブやボスを設ける場合は、表面のヒケや光沢差にも注意します。3D CAD上で外観面が滑らかであっても、裏側の体積が大きいと、成形後に表面へ影響が現れる可能性があります。

寸法公差も慎重に設定します。樹脂部品は金属加工品と異なり、材料収縮や成形条件による変形が生じます。すべての寸法へ厳しい公差を設定するのではなく、組付けや機能に必要な寸法を特定し、基準面と測定方法を明確にします。

試作と量産を見据えた肉厚評価の進め方

3D CAD上で肉厚基準を満たしていても、実際の成形品が設計どおりになるとは限りません。材料の収縮、金型温度、射出条件、冷却条件、金型構造などが影響するため、試作結果を確認し、必要に応じて設計へ反映します。

試作時には、外形寸法だけでなく、ヒケ、反り、充填状態、外観、リブやボスの変形などを確認します。直接測定できる部分では実際の肉厚を測り、3D CAD上の設計値と比較します。

測定結果に差がある場合は、設計データ、金型、成形条件のどこに原因があるかを切り分けます。原因を確認せずに3D CADモデルだけを変更すると、別の位置に不具合が発生する可能性があります。

量産では、試作時に問題がなくても、材料ロット、設備状態、周囲温度、連続成形による金型温度の変化などによって品質が変動する場合があります。重要な肉厚や寸法については、検査位置と判定基準を明確にします。

検査位置は、設計者、製造担当者、品質担当者が同じ場所を確認できるように定義します。3D CADの断面位置や基準面からの距離を使えば、測定箇所を共有しやすくなります。

設計変更を行った場合は、変更部分だけでなく、その周辺への影響も確認します。リブを一本追加しただけでも、樹脂の流れや冷却状態が変わる可能性があります。変更後のモデルで肉厚解析を行い、必要に応じて再試作します。

量産後に不具合が発生した場合は、個別の修正で終わらせず、設計基準へ反映します。厚肉によるヒケ、薄肉による充填不足、肉厚変化による反りなどを分類し、次回の確認項目として残します。

3D CADモデル、解析結果、成形品の測定値、不具合の発生位置を関連付けて管理すると、設計知識を蓄積できます。設計と製造の情報を往復させることで、肉厚不良の再発を減らせます。

まとめ

3D CADで樹脂部品を設計するときは、外形が成立しているかだけでなく、部品全体の肉厚が成形と使用に適した状態になっているかを確認する必要があります。薄すぎる部分は充填不足や強度不足につながる可能性があり、厚すぎる部分はヒケ、内部の空洞、反り、冷却時間の増加などにつながります。

肉厚不良を防ぐためには、最初に材料と成形条件から基本肉厚を決めます。次に、部品全体の厚さをできるだけ均一にし、厚さを変更する必要がある部分では、急激な段差を避けてなだらかにつなぎます。

リブやボスを追加するときは、壁との交差部が局所的な厚肉にならないように設計します。補強形状の厚さ、高さ、配置、根元の丸みを検討し、追加後には3D CADで肉厚分布を確認します。

肉厚解析は設計完了時だけでなく、基本形状の作成後、補強形状の追加後、組立干渉の修正後など、設計工程の区切りごとに行うことが重要です。解析結果の色だけで判断せず、断面表示と距離測定を併用し、問題の原因となる形状を特定します。

さらに、肉厚だけを単独で評価するのではなく、抜き勾配、成形方向、流動経路、外観面、寸法公差などと合わせて検討する必要があります。試作と量産で得られた結果を3D CADの設計基準へ戻すことで、品質を安定させやすくなります。

完成した3D CADデータは、設計画面だけで確認するのではなく、実際の設置場所や組付け環境との関係も評価することが大切です。現場でモデルを実寸に近い状態で確認し、周囲の設備や施工対象との位置関係を把握したい場合は、LRTK Phoneを活用した確認方法へつなげることで、設計データと実空間の差を検討しやすくなります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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