樹脂部品の肉厚不足とヒケが起こる理由
樹脂部品を3D CADで設計するとき、肉厚は外観、強度、重量、成形性、寸法精度を左右する重要な条件です。肉厚が薄すぎると、必要な剛性を確保できないだけでなく、射出成形時に樹脂が金型内の末端まで流れにくくなり、充填不足やウェルド部の強度低下につながる可能性があります。一方、肉厚が厚すぎる部分や局所的な肉だまりがあると、内部まで冷えるのに時間がかかり、表面にヒケが生じやすくなります。
そのため、樹脂部品の設計では、単純に肉厚を増やせば安全になるとは限りません。薄すぎる部分をなくしながら、厚すぎる部分も作らないという、相反しやすい条件を両立させる必要があります。特に、リブ、ボス、段差、コーナー、複数形状の交差部などは、画面上では問題がないように見えても、断面を確認すると周辺より大幅に厚くなっていることがあります。
ヒケは、成形品の内部が冷却によって収縮するとき、表面側が内側へ引かれることで現れるくぼみです。一般に、厚肉部は表面が固まった後も内部の冷却と収縮が続きやすいため、ヒケや内部空隙の発生要因になります。ただし、実際の発生状況は樹脂材料、成形温度、金型温度、保圧条件、ゲート位置、冷却構造などにも左右されます。設計だけですべてのヒケをなくすことは難しいため、3D CADによる形状改善と成形条件の調整を分けて考えることが大切です。
肉厚不足についても、設計上の最小値だけを守ればよいわけではありません。薄肉部まで樹脂が流れる距離、流路の幅、ゲートからの位置、材料の流動性、表面形状、要求される強度などによって、適切な肉厚は変わります。同じ厚さでも、短い距離にある広い面と、細長く奥まった部分では成形の難しさが異なります。
また、3D CADのモデルを作成する過程で、意図せず肉厚不足が発生することもあります。シェル化した後に外形を切り欠いた場合や、曲面をオフセットして内面を作成した場合、急な曲率変化や狭いコーナーで部分的に肉厚が薄くなることがあります。外形寸法だけを確認していると、こうした局所的な薄肉部を見落としやすくなります。
樹脂部品の肉厚設計では、外観面から見えない内部形状まで含めて、断面、肉厚分布、曲率、形状の交差状態を確認しなければなりません。3D CADの解析機能や断面表示を活用し、薄い部分と厚い部分を同じ視点で確認することが、肉厚不足とヒケを同時に防ぐ基本になります。
設計対策1 基準肉厚を決めて全体を均一にする
最初の設計対策は、部品全体の基準となる肉厚を決め、可能な範囲で均一にすることです。外形を作ってから部分ごとに厚さを調整するのではなく、設計初期に基準肉厚を定義し、その値を中心に形状を組み立てると、局所的な薄肉や厚肉を抑えやすくなります。
基準肉厚は、材料の特性、製品寸法、流動距離、要求強度、外観品質、成形方法などを踏まえて決めます。材料ごとに成形しやすい厚さの目安はありますが、公開されている一般値をそのまま全製品へ適用するのは適切ではありません。実際には、使用する材料の技術資料、成形会社の実績、類似部品の成形結果を参考にして設定する必要があります。
3D CADでは、基準肉厚を単なる設計者の記憶に頼らず、パラメータや設計ルールとして管理すると効果的です。シェル機能で部品の主要部分を同じ厚さにしたり、肉厚寸法を共通の変数に関連付けたりすることで、変更時の更新漏れを減らせます。設計変更で基準肉厚を調整したときも、関連する面をまとめて変更できれば、部分的に古い寸法が残る危険を抑えられます。
ただし、均一な肉厚とは、すべての箇所を完全に同じ寸法にすることではありません。取付部、摺動部、シール部、荷重集中部などでは、機能上の理由から厚さを変える必要があります。重要なのは、理由のない厚肉部や薄肉部を作らず、厚さを変える場合には目的と影響を明確にすることです。
外観面と内面のどちらを基準に肉厚を設定するかも重要です。外観形状を優先して内側へ厚みを持たせる場合、狭いコーナーでは内面同士が接近し、意図しない肉だまりや形状のつぶれが発生することがあります。反対に、内部空間を優先して外側へ厚みを持たせると、外形寸法や隣接部品との隙間が変わる可能性があります。基準面を決めたうえで、厚み方向を統一しておくと設計変更を管理しやすくなります。
基準肉厚を確認するときは、代表的な数か所だけを測定するのではなく、部品全体を対象とした肉厚解析を行います。色分け表示によって基準値から外れた範囲を確認できれば、設計者が想定していない薄肉部や厚肉部を見つけやすくなります。特に、自由曲面、フィレット周辺、シェル端部、穴の近傍、段差の裏側は重点的に確認する必要があります。
また、金型内で樹脂が流れる方向も考慮します。基準肉厚が一定でも、流れの途中に狭い部分があると、その先への充填が難しくなる可能性があります。薄肉部が樹脂流路を遮る位置にある場合は、厚さだけでなく形状幅やゲートからの距離も含めて見直します。
基準肉厚を設計初期に決めておくことは、後工程の判断基準をそろえることにもつながります。設計レビュー、成形性検討、試作評価、寸法検査で同じ基準を参照できるため、「どこからが薄すぎるのか」「どこを厚肉と判断するのか」という認識差を減らせます。
設計対策2 肉厚変化を緩やかにつなぐ
機能上の理由で肉厚を変える場合は、段差で急に切り替えるのではなく、できるだけ緩やかにつなぐことが重要です。急激な肉厚変化は、樹脂の流れ、冷却速度、収縮量の差を大きくし、ヒケ、反り、内部応力、外観不良の原因になることがあります。
たとえば、薄い壁から厚い取付部へ直角の段差で接続すると、境界部分に樹脂が集中します。厚い部分は薄い部分より冷えにくく、収縮の進み方も異なります。その結果、厚肉側の表面にヒケが生じたり、部品全体が変形したりする可能性があります。
3D CADで肉厚を変えるときは、テーパー形状や緩やかな曲面を使い、断面積が段階的に変わるように設計します。厚さの切り替え部分に十分な距離を確保できない場合でも、直角の段差を避け、傾斜や丸みを設けるだけで急激な変化を抑えられることがあります。
ただし、テーパーを付ければ必ず問題が解決するわけではありません。変化区間が短すぎる場合や、周辺のリブやボスと重なる場合は、結果として大きな肉だまりが残る可能性があります。断面表示を使い、厚さの変化がどの程度の距離で行われているか、周辺形状との交差によって局所的に厚くなっていないかを確認する必要があります。
肉厚変化の確認では、単一方向の断面だけで判断しないことも大切です。複雑な曲面や斜めに接続された形状では、正面断面では滑らかに見えても、別方向から切ると急激な変化が現れる場合があります。主要な軸方向だけでなく、荷重方向、樹脂の流動方向、形状の接続方向に沿って複数の断面を作成します。
外観面の裏側で厚さを変える場合は、外観への影響も確認します。裏面側の段差や補強形状が外観面に近いと、外側からは平滑な面に見えても、成形後にヒケとして輪郭が現れることがあります。特に光沢面や広い平面では、小さなくぼみでも照明の反射によって目立ちやすくなります。
反対に、肉厚を薄くする部分では、急に薄くなった箇所が樹脂の流れを妨げないかを確認します。流動途中に薄肉部があると、その部分で樹脂温度が低下し、下流側まで充填できない可能性があります。設計上は薄肉部の面積が小さくても、流路全体を横切る形状であれば影響が大きくなることがあります。
肉厚変化の形状は、抜き勾配との整合も必要です。テーパーを付けたつもりでも、金型の開閉方向に対して逆勾配や抜きにくい形状になっていると、別の成形問題を招きます。厚さの変化を設計するときは、金型分割、抜き方向、スライド構造の必要性も併せて確認します。
3D CAD上では、肉厚変更前後の断面を保存し、どの部分の変化を緩和したのかを比較できるようにすると、レビューがしやすくなります。単に「段差を修正した」と記録するのではなく、最大肉厚、最小肉厚、変化区間、周辺形状への影響を残すことで、後から設計意図を確認できます。
設計対策3 リブとボスの厚さを抑える
リブとボスは、樹脂部品の剛性向上や締結に欠かせない形状ですが、ヒケの原因になりやすい部分でもあります。外壁と同じ厚さのリブをそのまま接続すると、リブの根元が周辺より厚くなり、外観面にヒケが現れる可能性があります。ボスも、円筒壁と底面、補強リブが重なることで、大きな肉だまりを作りやすい形状です。
リブを設計するときは、基準肉厚より薄く設定し、必要な剛性は高さや本数、配置によって確保する考え方が基本になります。ただし、適切な比率は材料、リブの高さ、外観要求、成形条件によって変わるため、一律の数値だけで判断しないことが重要です。類似形状の成形実績や材料資料を参照し、必要に応じて成形担当者と調整します。
リブの根元には、応力集中を緩和するための丸みを設けることがあります。しかし、丸みを大きくしすぎると、外壁との交差部分がさらに厚くなり、ヒケを促す可能性があります。強度のために丸みを追加した結果、成形性を悪化させることがあるため、根元形状は断面で確認しなければなりません。
また、リブを高くすると剛性向上に寄与しますが、細長いリブは充填不足、変形、金型からの離型不良を起こしやすくなる場合があります。高さだけで剛性を確保しようとせず、複数本に分ける、向きを変える、箱形状や曲面を利用するなど、部品全体で補強する方法を検討します。
ボスでは、ねじ締結や位置決めに必要な内径と外径を確保しながら、底部を厚くしすぎないことが重要です。ボスを外壁へ直接つなぐと大きな肉だまりができる場合は、細いリブを介して接続したり、底部を抜いた形状にしたりする方法があります。締結荷重がかかるため単純に薄くするのではなく、荷重経路を考えながら材料の集中を避けます。
ボスの周囲に複数のリブを配置するときは、すべてのリブが同じ位置に集まらないように注意します。外壁、ボス、リブが一点で重なると、断面上では想定以上の厚肉部になります。上面から見た配置だけでなく、底面や斜め方向から交差状態を確認します。
リブやボスのヒケは、外観面との距離にも影響されます。補強形状が外観面のすぐ裏側にある場合、局所収縮が表面へ現れやすくなります。外観を重視する面では、補強部の位置を目立たない領域へ移す、外観面との間に距離を確保する、表面形状を工夫するなどの対策を検討します。
ただし、表面に模様を付けてヒケを目立ちにくくする方法は、ヒケそのものをなくす対策ではありません。外観上の見え方を緩和できる場合はありますが、内部の収縮や寸法変化が残る可能性があります。外観対策と構造対策を混同せず、最初に肉だまりを減らすことを優先します。
3D CADでリブやボスを作成するときは、後から個別に修正できるように、主要寸法を管理しやすい構成にします。基準肉厚との比率、リブ高さ、ボス外径、根元の丸みなどを関連付けておくと、基準肉厚を変更した際に補強形状だけが過大になることを防ぎやすくなります。
設計対策4 交差部と根元の肉だまりを減らす
樹脂部品のヒケを防ぐうえで見落としやすいのが、複数の形状が交差する部分です。単独の壁、リブ、ボスがそれぞれ適切な厚さでも、それらが重なると局所的な厚肉部になることがあります。とくに、リブ同士の十字交差、ボスと外壁の接続部、段差とコーナーの重なり、複数のフィレットが集中する部分は注意が必要です。
3D CADの通常表示では、外形面に隠れた肉だまりを見つけにくい場合があります。透明表示や断面表示を使い、交差部の内部形状を確認します。肉厚解析の色分けだけでなく、実際の断面寸法を測定し、どの形状が厚肉化の原因になっているかを特定することが重要です。
リブ同士が交差する場合は、一点に集中させず、位置をずらして配置する方法があります。十字形の交差を避けて交互に接続したり、交差部に開口を設けたりすることで、樹脂の集中を減らせることがあります。ただし、開口を追加すると剛性や荷重伝達が変わるため、構造上の影響も確認します。
ボスと外壁が近接する場合は、ボスを外壁から離し、細いリブで接続する形状を検討します。ボスを直接外壁に一体化すると、接続部が基準肉厚の数倍に相当する厚さになることがあります。位置決めや締結の都合で移動できない場合は、ボスの外側を部分的に削る、底面を抜く、接続範囲を限定するなどの方法で肉だまりを減らします。
コーナー部分では、内側と外側の丸みの関係にも注意します。外側だけに大きな丸みを付け、内側の形状を変えないと、コーナー部の厚さが増えることがあります。基本的には、内側と外側の曲率を連動させ、基準肉厚に近い状態を保つことが望まれます。ただし、外観上の制約や金型加工上の条件があるため、設計目的に応じた調整が必要です。
複数のフィレットを順番に追加したモデルでは、形状の重なりによって意図しない厚肉部が生じることがあります。フィレットの寸法自体が小さくても、近接した複数の曲面が合流すると、広い範囲で厚さが増える場合があります。設計履歴上の操作だけを確認するのではなく、完成形状の断面を検証します。
段差の根元も肉だまりが生まれやすい場所です。外側に突起を追加した際、内側を平面のまま残すと、その部分だけ厚くなります。外側形状に合わせて内側を逃がす、突起を中空化する、別の補強形状へ置き換えるなど、内部側の形状も同時に設計します。
肉だまりを減らす作業では、外観面を変えずに内側だけを修正することが多くなります。しかし、内側へ大きな逃げを設けると、成形時に樹脂が流れにくい細い部分や、金型加工が難しい深い溝ができる可能性があります。ヒケ対策だけを優先せず、樹脂流動、金型強度、加工性、離型性を含めて判断します。
3D CAD上で肉だまり候補を管理するときは、最大肉厚だけでなく、厚肉部の面積や位置も記録します。同じ最大厚さでも、狭い点状の部分と広い面積にわたる部分では、冷却や外観への影響が異なる場合があります。外観面の裏側、締結部の周辺、寸法精度が必要な部分など、発生位置を踏まえた優先順位付けが必要です。
設計対策5 強度を肉厚以外の形状で確保する
樹脂部品の強度や剛性が不足したとき、最も単純な対策は肉厚を増やすことです。しかし、全体や局所の肉厚を増やすと、ヒケ、反り、重量増加、冷却時間の増加などにつながる可能性があります。そのため、強度不足を解消するときは、肉厚を増やす前に形状による補強を検討することが重要です。
平板部分のたわみを抑える場合は、単純に板厚を増やすのではなく、緩やかな曲面、段差、折れ形状、周囲の立ち上がりなどを利用できます。断面形状の高さを確保すると、材料を大幅に増やさなくても曲げに対する剛性を高められる場合があります。
リブによる補強も有効ですが、前述のとおり、厚すぎるリブや集中配置はヒケの原因になります。荷重方向に合わせて細いリブを配置し、必要な部分へ力を伝える構造にすることが大切です。格子状に多数のリブを配置すれば常に強くなるとは限らず、交差部の肉だまりや樹脂流動の複雑化を招くこともあります。
部品の周囲にフランジや立ち壁を設ける方法もあります。外周部の断面形状を工夫することで、中央部の肉厚を増やさずに全体の変形を抑えられる可能性があります。ただし、立ち壁が高すぎる場合や抜き方向に対して不適切な場合は、成形上の制約が増えるため注意が必要です。
締結部の強度を高める場合は、ボスだけを太くするのではなく、荷重を周囲へ分散させる構造を検討します。細いリブを複数方向へ伸ばす、支持面を広げる、締結位置を外周壁へ近づけるなど、荷重経路を短くすることで、ボスの過度な厚肉化を避けられる場合があります。
荷重が繰り返しかかる部分では、最大応力だけでなく、応力集中を抑えることも重要です。急な段差、鋭い内角、穴の近傍、リブの終端などは応力が集中しやすいため、形状を滑らかにつなぎます。ただし、丸みを大きくすると肉だまりになる場合があるため、強度と成形性の両方を断面で確認します。
3D CADの構造解析を利用する場合は、解析条件の設定に注意します。材料特性、拘束位置、荷重方向、接触条件が実際と異なると、結果も実際の状態を正しく表しません。また、樹脂材料は温度、成形条件、繊維配向、使用時間などによって特性が変わる場合があります。解析値だけで肉厚を決定せず、試験や実績と組み合わせて判断します。
軽量化と剛性確保を両立するには、部品全体を一度に厚くするのではなく、必要な場所へ必要な形状を配置することが基本です。たわみが大きい面、荷重が入る位置、固定点までの経路を確認し、どこを補強すれば効果が高いかを検討します。これにより、ヒケを起こしやすい厚肉部を増やさずに性能を高めやすくなります。
また、複数部品で構成される製品では、一つの樹脂部品だけで全荷重を受けようとせず、周辺部品との支持関係を見直す方法もあります。取付点や接触面を変更することで、局所的な高強度を必要としなくなる場合があります。単品形状だけでなく、アセンブリ全体を3D CAD上で確認することが大切です。
設計対策6 3D CAD上で肉厚と成形性を検証する
肉厚不足とヒケを防ぐためには、設計者の目視確認だけでなく、3D CAD上で定量的な検証を行うことが必要です。複雑な曲面や内部形状を持つ樹脂部品では、外観だけを見ても厚さの異常を判断できません。肉厚解析、断面表示、干渉確認、寸法測定などを組み合わせて確認します。
肉厚解析では、最小肉厚と最大肉厚の基準を設定し、部品全体を色分け表示します。基準より薄い箇所、基準範囲内の箇所、厚すぎる箇所を視覚的に区別できるため、確認漏れを減らせます。ただし、色分けの境界値が適切でなければ、重要な問題を見落とす可能性があります。基準肉厚だけでなく、材料、成形条件、機能要件を踏まえて許容範囲を設定します。
解析結果では、最小値や最大値だけに注目しないことが重要です。非常に小さな面の端部や理論上の一点に極端な値が出ることがあり、それが実際の成形品質へどの程度影響するかは別途判断が必要です。一方、数値上は許容範囲内でも、広い範囲にわたって厚肉になっていればヒケの危険が高まる可能性があります。値、面積、位置、周辺形状を合わせて確認します。
断面表示では、部品の主要方向に加え、リブ、ボス、段差、コーナーを通る断面を作成します。特に、外壁と補強形状が重なる位置は、形状の中心を正確に通る断面で確認します。断面位置が少しずれるだけで肉だまりを見逃すことがあるため、複数の平行断面を連続して確認する方法も有効です。
曲面部では、面間距離の測定方法にも注意が必要です。単純な水平距離や垂直距離では、実際の肉厚を表さない場合があります。外面に対して法線方向の距離を確認し、局所的な厚さを評価します。曲率が急に変化する部分では、オフセット面が乱れたり、内面が接近したりすることがあるため、重点的に確認します。
シェル化やオフセット処理を使用したモデルでは、処理が成功したことだけで品質を判断しないようにします。計算上は形状が作成できても、細い面、非常に小さな曲面、複雑なつなぎ面が生成されている場合があります。こうした面は後工程の修正を難しくし、データ変換時の形状欠落にもつながる可能性があります。
成形性をより詳しく確認する場合は、樹脂の流動、充填、冷却、収縮などを評価する解析手法を利用します。これにより、薄肉部まで樹脂が到達するか、どの部分で圧力が高くなるか、どこに温度差が残りやすいかを予測できます。ただし、解析結果は入力条件に依存します。材料データ、ゲート位置、成形条件、金型温度などが実際と異なる場合、予測結果にも差が生じます。
流動解析を行わない場合でも、ゲート候補から各部への流動距離を想定し、狭い部分、急な厚さ変化、行き止まり形状がないかを3D CAD上で確認できます。部品の外形設計だけでなく、樹脂がどの方向からどの順序で流れるかを考えると、薄肉部の問題を早期に見つけやすくなります。
設計変更後は、変更した箇所だけでなく部品全体を再解析します。局所的な厚肉部を削った結果、その先が薄くなったり、リブを移動したことで別の交差部が生まれたりすることがあります。変更内容が小さくても、肉厚分布は広い範囲で変化する可能性があるためです。
検証結果は、画面を見て終わりにせず、設計記録として残します。問題箇所、測定値、修正内容、判断理由を保存し、次のレビューや類似部品の設計に利用します。肉厚解析の基準値や確認方法を社内で統一すれば、担当者による判断差も抑えやすくなります。
肉厚不足とヒケを同時に確認する設計レビュー
樹脂部品の設計レビューでは、薄い部分と厚い部分を別々に確認するのではなく、同じ手順の中で両方を確認することが重要です。強度担当者は薄肉部に注目し、成形担当者は厚肉部に注目する傾向がありますが、設計変更は双方へ影響します。薄肉部を補強した結果、ヒケの原因となる厚肉部が生まれることもあるためです。
レビューの最初に、部品の基準肉厚と例外箇所を明確にします。どの部分が標準厚さで、どの部分が機能上の理由により厚いまたは薄いのかを説明できる状態にします。理由を説明できない肉厚差がある場合は、設計履歴や作成意図を確認します。
次に、肉厚解析で部品全体の分布を確認します。基準値から外れた箇所を抽出し、薄肉側と厚肉側に分けて評価します。薄肉部では、強度、流動性、穴や切り欠きとの距離、耐久性を確認します。厚肉部では、外観面との位置関係、冷却差、収縮、反りへの影響を確認します。
その後、断面を使って、リブ、ボス、交差部、段差、コーナーを確認します。断面図には必要に応じて寸法を表示し、画面上の印象ではなく数値で判断します。形状が左右対称であっても、周辺の穴や切り欠きによって肉厚分布が異なることがあるため、対称形状を一方だけ確認して終わらせないことが大切です。
外観面については、どの面でヒケが許容されないかを明確にします。同じ厚肉部でも、製品正面の光沢面と、内部に隠れる面では優先度が異なります。外観上重要な面の裏側にリブやボスがある場合は、特に慎重に確認します。
機能面では、荷重がかかる位置と方向を確認します。薄肉部があっても荷重を受けない領域であれば影響が小さい場合がありますが、締結部や繰り返し変形する部分では小さな肉厚不足が破損につながる可能性があります。反対に、荷重がかからない部分を過度に厚くしている場合は、ヒケや重量増加を避けるために見直します。
アセンブリ状態の確認も欠かせません。単品では十分な肉厚があっても、締結時に変形させる構造や、隣接部品との接触によって局所荷重がかかる場合があります。また、他部品との隙間を確保するために内面を削った結果、薄肉部が生じていることもあります。単品モデルと組立モデルの両方で確認します。
レビューでは、成形条件で対応する問題と、形状変更が必要な問題を区別します。保圧や冷却条件の調整でヒケを抑えられる場合はありますが、極端な肉だまりがある形状を成形条件だけで補うと、成形可能な条件範囲が狭くなることがあります。安定した量産を目指す場合は、設計段階で形状要因をできるだけ減らすことが望まれます。
レビュー結果は、修正箇所だけでなく、変更しないと判断した箇所も記録します。厚肉部を残す場合は、その理由、外観への影響、成形上の対策を明確にします。判断の記録があれば、試作で問題が発生したときに、設計時の想定と実際の結果を比較できます。
試作と測定結果を3D CADへ反映する方法
3D CAD上で十分に検証しても、実際の成形品では材料、金型、成形条件の影響を受けます。そのため、試作後は完成品を確認し、設計モデルと実物の差を把握することが重要です。ヒケ、反り、寸法差、充填状態などを記録し、次の設計へ反映します。
ヒケを確認するときは、目視だけでなく、照明方向や観察角度を変えて確認します。浅いヒケは正面から見えにくくても、斜めから光を当てると反射の乱れとして現れる場合があります。外観基準がある場合は、観察距離、照明、角度などの条件をそろえます。
ヒケが発生した位置は、写真だけでなく3D CADモデル上でも特定できるようにします。外観面のどこに現れたかを記録し、その裏側にあるリブ、ボス、段差、交差部との関係を確認します。表面のヒケ位置と内部の厚肉位置が必ず完全に一致するとは限らないため、周辺の冷却状態や樹脂流動も含めて検討します。
肉厚不足が疑われる場合は、成形品の断面測定や非破壊測定など、目的に合った方法を選びます。設計値と実測値に差がある場合は、成形収縮、反り、測定位置、測定方法を確認します。曲面部では、どの方向を肉厚として測るかによって結果が変わるため、3D CAD上の測定定義と実物の測定方法をそろえることが必要です。
寸法測定結果を反映するときは、設計値を実測値へ合わせるだけでなく、差が生じた原因を考えます。金型寸法、材料収縮、成形条件、離型後の変形、測定環境など、複数の要因が考えられます。原因を整理せずに3D CADモデルだけを変更すると、別の条件で成形したときに過剰補正になる可能性があります。
試作結果を3D CADへ戻す際は、問題箇所に識別情報を付け、修正前後を比較できるようにします。ヒケの位置、程度、外観への影響、肉厚、周辺形状、修正内容をまとめておくと、次回の設計レビューで判断しやすくなります。
設計変更後は、肉厚解析と断面確認を再度実施します。ヒケ対策として内側を削った結果、必要な強度が不足していないか、樹脂流路が狭くなっていないかを確認します。反対に、強度対策としてリブを追加した場合は、新たな厚肉部や交差部が生じていないかを確認します。
試作回数を重ねる場合は、成形条件の変更と形状変更を記録上で分離します。どの結果が設計変更によるものか、どの結果が成形条件の調整によるものかが分からなくなると、次の製品で知見を活用しにくくなります。3D CADの改訂番号、試作品の識別番号、成形条件の記録を対応付けます。
類似部品を設計する際には、過去にヒケが発生した形状や、薄肉による充填不足が起きた形状を参照します。単に成功した最終モデルだけを残すのではなく、問題があった形状と修正理由も残しておくと、同じ失敗を繰り返しにくくなります。
実物の状態を3D CAD上の設計検討へ戻す仕組みを作ることで、肉厚設計は経験だけに依存しにくくなります。設計、試作、測定、修正を一つの流れとして管理することが、安定した樹脂部品設計につながります。
まとめ
3D CADで樹脂部品を設計するときは、肉厚不足を避けるだけでなく、ヒケの原因となる厚肉部や肉だまりも同時に確認する必要があります。薄すぎる部分は強度不足や充填不良につながる可能性があり、厚すぎる部分は冷却差、収縮差、ヒケ、反りなどの原因になることがあります。
基本となるのは、材料や製品条件に合った基準肉厚を設定し、部品全体をできるだけ均一にすることです。肉厚を変える必要がある場合は、段差で急に切り替えず、緩やかな形状でつなぎます。リブやボスは基準肉厚より過大にならないように設計し、交差部や根元に樹脂が集中していないかを断面で確認します。
強度や剛性が不足する場合も、最初から肉厚を増やすのではなく、曲面、段差、立ち壁、適切なリブ配置など、形状による補強を検討することが大切です。材料を必要な場所へ効率よく配置することで、重量とヒケの増加を抑えながら性能を確保しやすくなります。
3D CADの肉厚解析では、最小値と最大値だけで判断せず、問題箇所の面積、位置、周辺形状、外観面との関係を確認します。断面表示、法線方向の厚さ測定、アセンブリ確認、必要に応じた成形解析を組み合わせることで、目視では発見しにくい問題を早期に見つけられます。
また、試作品で確認されたヒケや寸法差を3D CADへ戻し、設計変更と成形条件の調整を記録することも重要です。過去の問題形状と修正結果を蓄積すれば、新しい樹脂部品でも設計初期からリスクを予測しやすくなります。
設計画面だけで判断するのではなく、3Dモデルを実際の大きさや使用環境に近い状態で確認すると、周辺部品との隙間、取付位置、補強形状の配置も理解しやすくなります。3D CADモデルの現場確認や実寸レビューを次の工程へつなげる手段として、LRTK Phoneの活用もご検討ください。