LRTKレフィクシア株式会社

3D CADのリンク部品更新で形状が変わる事故を防ぐ7対策

3D CADのリンク部品更新で形状が変わる事故とは

3D CADでアセンブリを設計するとき、共通部品や標準部品を外部ファイルとして保存し、複数の製品モデルからリンクして利用する方法があります。リンク部品を活用すると、同じ形状を案件ごとに作り直す必要がなくなり、参照元を修正するだけで複数のアセンブリへ変更を反映できます。設計効率を高め、類似部品の重複を減らすうえで有効な仕組みです。

一方で、リンク部品の参照元が更新された結果、アセンブリを開いたときに意図しない形状へ置き換わる事故が発生することがあります。設計者が変更した覚えのない穴、取付面、外形、板厚などが変化し、周辺部品との干渉や位置ずれが生じるケースです。参照元の変更が自動的に反映される設定では、アセンブリを開いた直後や再計算を実行した時点で形状が変わることもあります。

この事故が難しいのは、3D CAD上で必ずしもエラーが表示されるとは限らない点です。リンクが切れておらず、モデルの再計算も正常に完了していれば、システム上は問題のない更新として処理されます。しかし、正しいリンク先を読み込めていることと、現在の設計に適した形状を読み込めていることは同じではありません。

例えば、共通ブラケットの取付穴を別製品向けに変更し、同じファイルへ上書き保存したとします。そのブラケットを参照している既存アセンブリを開くと、新しい穴位置が反映される可能性があります。穴の相手側となる部品が変更されていなければ、組立時に穴が一致しません。画面上では部品同士が近い位置に配置されているため、拡大確認をしないと異常に気づけない場合もあります。

外形寸法が変更された場合は、周辺部品との干渉だけでなく、工具の進入空間、配線経路、配管経路、可動範囲、点検空間にも影響します。材料や内部形状が変われば、質量や重心、強度計算の結果が変化する可能性もあります。リンク部品の更新は、一つの部品形状だけの問題ではなく、アセンブリ全体の成立性に関わる変更として扱う必要があります。

さらに、更新された3Dモデルを基に図面や加工データを再出力すると、意図しない変更が正式な製造情報として流れる危険があります。設計段階で発見できなければ、加工、組立、検査、現場施工まで影響が広がり、手戻りの規模が大きくなります。

そのため、リンク部品は便利な自動更新機能として扱うのではなく、変更の入口、確認方法、承認条件を明確にした管理対象として運用することが重要です。

リンク部品の更新事故が起こりやすい主な原因

リンク部品の更新事故には、いくつかの典型的な原因があります。最も起こりやすいのは、参照元のファイルを同じ名称のまま上書きする運用です。同じ保存場所に同じファイル名が残っているため、3D CADから見ればリンクは正常です。しかし、内部の形状が変更されていても、利用者が更新内容を確認する仕組みがなければ、そのまま新しい形状が読み込まれます。

次に多いのが、最新版を常に正しいデータと考える運用です。最新版には、承認済みの改善形状だけでなく、試作中の形状、評価用の暫定形状、別案件専用の変更が含まれることがあります。作成日時が新しいことは、その部品がすべての参照先で利用できることを意味しません。

案件の複製時にも事故が起こります。既存アセンブリをコピーして新しい製品の設計を始めたものの、リンク先が元案件の保存場所を参照したままになっているケースです。新案件向けに部品を変更したつもりでも、元案件の共通ファイルを編集してしまい、複数のアセンブリへ影響することがあります。

反対に、共通部品として管理するべきモデルを案件ごとに複製し、それぞれ同じ部品番号のまま別形状へ変更してしまう問題もあります。この場合、同じ名称や部品番号でありながら内容が異なるファイルが複数存在し、どの形状が正しいのか判断できなくなります。

原点、基準面、座標系の変更も重要な原因です。外形が同じでも、原点位置や軸方向が変わると、リンク先で部品の配置位置や向きが変わります。左右対称に近い部品では、反転していても画面上で気づきにくいことがあります。

面やエッジを直接利用した拘束も不安定要因になります。参照元でフィーチャの追加、削除、作成順序の変更が行われると、同じように見える面でも内部的には別の要素として再生成されることがあります。その結果、拘束が切れるだけでなく、意図しない別の面へ接続される場合があります。

複数の仕様を一つの部品ファイルで管理している場合は、参照する構成や状態の切り替えにも注意が必要です。標準長さ、穴配置、左右形状、加工前後などを切り替えられるモデルでは、設定が変わるだけで別形状が読み込まれます。

更新事故の背景には、技術的な原因だけでなく、運用上の原因もあります。変更理由が記録されていない、参照先が把握されていない、承認前のデータを共有領域へ保存している、図面と3Dモデルの版が一致していないといった状態です。

事故を防ぐには、一つの設定だけを変更するのではなく、版管理、参照設計、形状比較、影響確認、承認を組み合わせた対策が必要です。

対策1 使用するリンク部品の版を固定する

最初の対策は、アセンブリごとに使用するリンク部品の版を固定することです。参照元に新しい形状が保存されたからといって、すべての参照先へ自動的に適用してよいとは限りません。各アセンブリがどの版の部品を使用しているかを明確にし、更新を適用するまでは既存版を維持できる状態にします。

版を固定するときは、ファイル名だけに依存しないことが重要です。名称の末尾へ番号を付ける方法は分かりやすい一方で、手入力の間違い、番号の重複、変更忘れが起こり得ます。部品番号、版、承認状態、適用案件、更新日、変更理由などを属性情報として管理し、モデルを開いたときに確認できる状態が望ましいです。

使用中の版を固定せず、常に共有フォルダー内の最新版を読み込む運用では、参照元の担当者が保存しただけで複数の設計へ変更が広がります。更新を管理するには、作業中のデータと承認済みのデータを分離し、参照先が原則として承認済みデータだけを読み込む構成にします。

案件を複製するときは、共通利用を続けるリンク部品と、案件専用に分離する部品を選別します。外形、穴位置、材料、取付条件などを新案件だけで変更する予定がある場合は、共通部品を直接編集せず、専用の部品番号と版を設定して参照先を切り替えます。

共通部品を変更する場合は、その部品を参照しているアセンブリを事前に確認します。一つの案件だけを見て変更を承認すると、別案件で干渉や組立不良が発生する可能性があります。複数の製品で使われる部品ほど、変更前の影響調査が重要です。

参照元の保存場所も統一します。個人の作業領域、社内共有領域、受け渡し用領域などに同名ファイルが存在すると、環境や検索順によって異なるモデルを読み込む可能性があります。どの領域のデータを正式版とするかを決め、不要な複製を残さない運用が必要です。

相対的な保存位置を利用する参照と、特定の場所を直接指定する参照では、ファイル移動時の挙動が異なります。案件フォルダーをまとめて移動した結果、意図しない同名ファイルへ接続されないよう、移動後には参照元の保存場所を確認します。

版を固定する目的は、設計変更を止めることではありません。いつ、誰が、どのアセンブリへ新しい版を適用するかを管理し、変更を予測可能にすることです。最新版への置換を自動的な処理ではなく、確認と承認を伴う設計作業として位置付けます。

対策2 更新前後の形状差分を確認する

リンク部品を更新する前には旧版を保存し、更新後のモデルと比較できる状態を準備します。アセンブリを開いた時点で自動更新される環境では、旧版を確認できないまま新しい形状へ切り替わることがあります。更新前のアセンブリや部品を別の作業領域へ保存し、比較用の基準として残します。

形状差分の確認では、外形だけでなく、穴、溝、切り欠き、板厚、曲げ位置、取付面、接触面、逃げ形状、面取り、丸みなどを確認します。全体の大きさが同じでも、局所的な変更が組立や加工に影響することがあります。

比較機能を利用できる場合は、旧版と新版を同じ座標へ重ね、追加された領域、削除された領域、移動した面を確認します。機能がない場合でも、二つの部品を同一位置へ配置し、透過表示、断面表示、表示色の切り替えなどを使えば差分を把握できます。

目視だけでは見落としやすいため、主要寸法も確認します。全長、全幅、全高、穴径、穴間距離、基準面からの距離、板厚など、機能に関わる寸法を旧版と比較します。差が小さくても、公差や組立隙間に対して大きな影響を持つ場合があります。

取付穴については、中心位置と直径だけでなく、深さ、貫通状態、座ぐり、皿形状、面取り、ねじ情報も対象にします。穴の位置が変わっていなくても、締結部品の選定や必要長さが変わる可能性があります。

内部形状も確認が必要です。肉厚、リブ、空洞、補強形状などが変わると、質量、重心、剛性、成形性、加工性に影響します。外側から見えない変更であるため、断面表示や質量特性の比較を行います。

材料、密度、表面処理、品名、部品番号、左右区分といった属性の差分も確認します。形状が同じでも、属性が変われば部品表、重量計算、製造指示、検査基準へ影響します。形状比較と属性比較を別々の作業として扱わず、一回の更新確認に含めます。

参照元の担当者が申告した変更内容と、実際の差分が一致しているかも重要です。例えば、穴位置だけを変更したと説明されているにもかかわらず、外形や原点にも差がある場合は、更新を保留して原因を確認します。

変更内容は、「微修正」「形状調整」といった曖昧な言葉ではなく、設計への影響を判断できる表現で記録します。どの基準から、どの方向へ、何を変更したのかが分かれば、参照先で必要な確認項目を決めやすくなります。

対策3 原点や基準面を安定した要素に統一する

リンク部品の配置に使用する原点や基準面は、設計変更によって変わりにくい要素へ統一します。外形の面や稜線を直接拘束に使用すると、形状変更時に参照切れや誤接続が起こりやすくなります。

例えば、部品端部の平面をアセンブリの取付基準として使用している場合、端部へ段差や面取りを追加したことで元の面が分割される可能性があります。3D CADが新しく生成された別の面へ拘束を接続すると、エラーがなくても配置位置が変わることがあります。

安定した配置には、原点、基準平面、基準軸、専用の配置用座標系などを利用します。外形の詳細形状とは独立した基準を用意すれば、穴や面取りを変更しても、部品の基本的な配置条件を維持しやすくなります。

基準要素には、その役割が分かる名称を設定します。初期名称や連番だけでは、どの基準を取付、中心、挿入、回転に使用しているのか判断しにくくなります。用途を明示しておけば、参照元の担当者が誤って削除したり、別の基準へ置き換えたりする危険を減らせます。

原点位置の変更は、形状の移動を伴わなくても重大な変更として扱います。部品モデルの内部では正しい位置に見えていても、リンク先では原点を基準に配置されるため、アセンブリ内で大きく移動する可能性があります。

座標軸の向きにも注意が必要です。軸方向の反転や基準面の裏表が変わると、部品が左右反転したり、挿入方向が逆になったりします。左右形状の違いが小さい部品では、反転していても気づきにくいため、基準マークや非対称部分を確認します。

外部形式を介してリンク部品を更新する場合は、単位、縮尺、軸方向の設定も確認します。元データが同じ形状でも、読み込み条件が変われば、大きさ、向き、原点位置が変化することがあります。自動判定に任せず、旧版と同じ条件で読み込まれているかを確かめます。

基準要素を変更しなければならない場合は、その要素を使用している参照先を事前に調査します。新しい基準を追加し、参照先を段階的に切り替えてから古い基準を削除する方法を取れば、一斉に参照切れが発生するリスクを抑えられます。

対策4 外部参照の範囲を必要最小限にする

リンク部品の更新事故を減らすには、他部品から参照する情報を必要最小限に絞ります。多くの面、稜線、スケッチ、寸法を外部参照すると、参照元の小さな変更が複数の部品へ連鎖しやすくなります。

周辺部品の設計に必要なのが取付位置だけであれば、リンク部品の詳細な外形すべてを参照する必要はありません。取付基準、中心位置、接続点、占有範囲など、設計判断に必要な情報だけを公開し、細かな加工形状への依存を避けます。

例えば、相手部品の複数の稜線を直接取り込んでスケッチを作成すると、相手側のフィーチャ構成が変わっただけで参照が不安定になります。完成後の形状がほぼ同じでも、稜線の分割や統合が起きれば、別の要素として認識される可能性があります。

外部参照用の基準モデルを用意し、製品全体で共有する主要寸法や配置条件をそこから配布する方法も有効です。各部品が互いの完成形状を直接参照するのではなく、共通の基準を参照すれば、部品同士の複雑な依存関係を減らせます。

ただし、基準モデルへ情報を集めすぎると、変更の影響範囲が広がります。製品全体で安定して利用する中心位置、取付位置、占有範囲などに限定し、個別部品だけで使用する詳細寸法は各モデル内で管理します。

周辺設計で必要なのが干渉確認用の外形であれば、細部を省略した簡略形状を用いる方法もあります。小さな面取りや加工穴までリンクすると更新回数が増えますが、占有範囲だけを示す形状であれば、不要な変更の影響を受けにくくなります。

循環参照にも注意します。部品Aが部品Bを参照し、部品Bが部品Aを参照する構成では、再計算の順序によって結果が不安定になる可能性があります。どのモデルを基準とし、どの方向へ情報を流すかを明確にします。

設計途中で一時的に作成した外部参照が、完成モデルへ残っていることもあります。検討段階では便利でも、正式な設計情報として不要であれば削除または内部化します。設計の節目ごとに参照関係を確認し、目的を説明できないリンクを残さないようにします。

外部参照を減らすことは、設計変更の連動性を失わせることではありません。安定して共有するべき情報を選び、変化しやすい詳細形状との依存を分離することで、安全な連動を実現する考え方です。

対策5 アセンブリ全体への影響を確認する

リンク部品を更新した後は、対象部品だけを見て完了とせず、アセンブリ全体への影響を確認します。更新された部品単体に問題がなくても、周辺部品との位置関係や機能が変われば、製品として成立しない可能性があります。

最初に確認するのは、拘束状態です。エラーの有無だけでなく、部品が意図した位置と向きに配置されているか、必要な自由度が残っていないかを調べます。別の面へ誤接続されている場合でも、拘束自体は成立することがあります。

部品を一時的に動かせる環境では、移動後に正しい位置へ戻るかを確認する方法も有効です。見た目が合っているだけではなく、拘束条件によって正しく位置決めされていることを確かめます。

次に、干渉を確認します。外形が大きくなった場合だけでなく、穴、突起、リブ、補強部などの変更でも周辺部品と接触する可能性があります。締結部品、配線、配管、カバー、治具、工具の進入空間も対象にします。

隙間については、接触していないことだけでなく、設計上必要な最小値を満たしているかを確認します。加工公差、組立誤差、振動、熱変位、たわみなどを考慮すると、3D CAD上でわずかな隙間があるだけでは不十分な場合があります。

可動部品では、動作範囲全体を確認します。初期位置と終端位置で干渉がなくても、移動途中で接触することがあります。回転、直線移動、開閉、伸縮など、実際の動きを再現して確認します。

リンク部品がケーブルや配管の固定に関係する場合は、経路や曲げ状態も確認します。取付位置が少し変わるだけで、必要長さ、曲げ半径、周辺部品との距離が変化する可能性があります。

質量と重心の再計算も重要です。材料、肉厚、内部形状が変更されると、部品単体の重量だけでなく、製品全体の重心位置が変わります。搬送、吊り上げ、駆動、支持、転倒安定性などに関係する場合は、必ず確認します。

締結部品との組み合わせも見直します。取付部の板厚、座面、穴深さが変わると、従来の締結部品では長さやかかり量が不足することがあります。3D CAD上で干渉がない場合でも、締結機能を満たしているとは限りません。

共通部品を更新した場合は、参照しているすべての主要アセンブリを確認します。ある製品では周辺空間に余裕があっても、別の製品ではぎりぎりの配置になっていることがあります。一つの代表例だけで更新を承認しないことが重要です。

変更内容に応じて確認範囲を決めると、効率よく点検できます。外形変更なら干渉と隙間、取付面変更なら拘束と締結、材料変更なら質量と強度、原点変更なら位置と向きを重点的に確認します。

対策6 図面や製造データとの整合を確認する

リンク部品の更新後は、3Dモデルと図面、部品表、加工用データ、検査情報の整合を確認します。3D CAD上の形状が正しくても、派生データが旧版のまま残っていれば製造事故につながります。

図面では、投影図、断面図、詳細図、寸法、中心線、注記、部品番号などを確認します。形状更新後も図面が表示されているからといって、内容が正しいとは限りません。参照していた面や稜線が変わり、寸法が別の要素へ接続される場合があります。

寸法値が自動的に変わったときは、表示されている値が設計意図に合っているかを確認します。自動更新は転記作業を減らせますが、意図しない形状変更も自動的に図面へ反映します。値が更新されたことではなく、その値を正式な設計値として承認できることが重要です。

寸法の参照が切れた場合は、近くにある稜線へ機械的に付け直さないようにします。元の寸法がどの基準を表していたのかを確認し、同じ設計上の意味を持つ要素へ再接続します。

断面図や詳細図では、更新によって表示範囲や切断位置が不適切になることがあります。必要な内部形状が表示されているか、重要な部分が隠れていないかを確認します。

部品表では、部品番号、品名、数量、材料、版、左右区分などを点検します。形状が変更されているのに部品番号や版が旧情報のままだと、製造現場で別の部品として区別できません。

加工用データは、3Dモデルを更新しただけでは自動的に差し替わらない場合があります。旧版の加工データと新版の加工データが同じ場所に混在すると、製造担当者が誤って古いデータを使用する可能性があります。

新版を出力するときは、出力元モデルの部品番号と版、出力日時、作成者を追跡できるようにします。旧版は削除するだけでなく、使用停止であることが分かる状態にすることも重要です。すでに現場へ配布している場合は、新版の送付だけでなく、旧版の回収や破棄まで確認します。

検査情報も更新対象です。測定箇所、基準座標、公差、測定方向が変更されている場合、従来の検査手順では新しい形状を正しく判定できません。設計変更の内容を検査担当者へ伝え、必要に応じて検査項目を更新します。

解析用モデルや簡略モデルを別に作成している場合も、リンク部品の版を確認します。設計モデルだけが新しく、解析モデルが旧形状のままでは、計算結果を現在の設計へ適用できません。

3Dモデル、図面、製造データ、検査情報を一つの変更単位として確認することで、設計部門では正しくても現場では古い情報が使われるという事故を減らせます。

対策7 更新履歴と承認記録を残す

リンク部品の更新は、ファイルを保存しただけで完了とせず、変更履歴と承認記録を残します。誰が、いつ、どの版からどの版へ更新し、どの範囲を確認したのかを追跡できる状態が必要です。

記録には、参照元の部品番号、旧版、新版、参照先のアセンブリ、変更理由、形状差分、確認項目、確認結果、承認者などを含めます。「最新版へ更新」「軽微な変更」といった記録だけでは、後から影響を判断できません。

履歴を残す目的は、問題が起きた後に担当者を特定することだけではありません。設計判断を再現し、同じ変更を別のアセンブリへ適用するときの参考にするためです。過去にどの部品で干渉が発生したか、どの図面を修正したかが分かれば、次回の確認精度が上がります。

更新作業者と承認者を分けることも有効です。変更内容をよく知る担当者は、意図した結果に見える部分へ注意が偏り、想定外の差分を見落とす可能性があります。別の担当者が形状差分やアセンブリ全体を確認することで、思い込みを減らせます。

すべての変更に同じ承認手順を適用する必要はありません。表示上の変更と、外形、穴、材料、原点、取付面の変更では影響が異なります。変更を重要度別に分類し、必要な確認者や承認範囲を決めます。

ただし、軽微変更という分類を広く使いすぎないことが重要です。設計担当者にとっては小さな変更でも、加工工具、検査方法、組立手順へ大きな影響を与えることがあります。軽微と判断できる条件を具体的に定めます。

作業中、確認中、承認済み、使用停止といった状態を明確に分け、承認前のモデルが製造や外部提出に使われないようにします。共有場所へ保存されているだけで正式版と判断される運用は避けます。

緊急対応で先に形状を更新しなければならない場合でも、最低限の履歴を残します。変更理由、適用先、暫定対応であること、後日確認する項目を記録し、緊急対応が未承認のまま固定化しないようにします。

更新履歴と承認記録が整っていれば、リンク部品の自動更新機能を利用しながらも、変更を管理された工程として扱えます。

リンク部品を安全に更新する実務手順

実務では、七つの対策を個別に行うだけでなく、更新作業の順序を標準化すると効果的です。担当者ごとに作業方法が異なると、必要な確認を理解していても抜けが生じます。

最初に、更新対象となるアセンブリとリンク部品の現在の版を確認します。参照元の保存場所、部品番号、版、承認状態を記録し、どのデータから更新を始めたのかを明確にします。

次に、新版の変更理由を確認します。何が変更され、どの製品や案件への適用を想定しているのかを把握します。変更内容が記載されていない場合は、形状を更新してから推測するのではなく、参照元の担当者へ確認します。

更新前の部品とアセンブリを保存し、比較できる状態を作ります。自動更新が有効な場合は、更新を抑制した状態で旧版を開く、別の作業領域へ複製するなどの方法で基準データを確保します。

リンク先を新版へ切り替えたら、最初に部品単体の差分を確認します。申告された変更と実際の変更が一致しているか、原点、基準面、属性に予期しない差がないかを調べます。

次に、アセンブリを再計算し、拘束、位置、向き、干渉、隙間、可動範囲を確認します。必要に応じて質量、重心、締結条件、配線経路、配管経路も確認します。

その後、図面を更新し、寸法、断面、注記、部品番号を点検します。加工用データや検査情報を使用している場合は、新版への差し替えと旧版の使用停止を確認します。

確認結果に問題がなければ、更新したアセンブリを新しい版として保存し、レビューと承認を行います。承認完了後に初めて製造や外部共有へ使用します。

更新中に問題が見つかった場合は、無理に新版へ合わせるのではなく、旧版へ戻せる状態を維持します。どの段階で、どの差分によって問題が発生したのかを記録し、参照元の修正または参照先の設計変更を検討します。

一連の手順を定型化すれば、更新担当者が変わっても確認品質を保ちやすくなります。

更新事故を減らすためのチェック体制

リンク部品の更新事故を継続的に減らすには、個人の注意力だけに頼らない体制が必要です。確認項目を決め、変更情報を関係者が共有し、問題が発生したときに運用へ反映できる仕組みを作ります。

設計担当者は、形状差分、拘束、干渉を中心に確認します。製造担当者は、加工方法、工具、締結、組立手順への影響を確認します。検査担当者は、測定基準、公差、検査項目の変更を確認します。担当分野ごとに視点が異なるため、一人ですべてを判断するよりも見落としを減らせます。

変更内容に応じて確認担当者を決める方法も有効です。材料変更なら解析や品質の担当者、取付面変更なら組立担当者、外形変更なら周辺設計の担当者を確認に加えます。

チェック項目は多ければよいわけではありません。過剰な項目を毎回確認すると、形式的に完了印を付けるだけになりやすくなります。変更内容とリスクに応じて対象を絞り、判断に必要な確認を確実に実施することが重要です。

過去に起きた問題は、次回の確認ルールへ反映します。原点変更による位置ずれが発生したなら、更新時に原点座標を比較します。締結部品の長さ不足が発生したなら、板厚変更時に締結条件を確認します。実際の事故や手戻りを基にチェック内容を改善します。

リンク部品を多く使用する組織では、定期的に参照関係を点検することも有効です。使用されていないリンク、承認前データへの参照、同名異形状のファイル、参照先が不明な共通部品などを確認します。

現場で組立不良や位置ずれが見つかった場合は、現物の状態と3D CAD上の設計を照合します。単に部品が合わなかったという報告だけでなく、どの位置で、どの方向に、どの程度の差があったかを記録すれば、リンク部品の版違い、配置基準のずれ、製造誤差などの原因を切り分けやすくなります。

設計部門と現場の間で情報を共有するときは、対象物、位置、撮影時点、使用していた図面やモデルの版を関連付けることが重要です。現場記録と設計データの対応が明確であれば、更新事故の確認や是正を効率化できます。

まとめ

3D CADのリンク部品は、共通形状の再利用や設計変更の反映を効率化できる便利な仕組みです。しかし、参照元の変更が複数のアセンブリへ波及するため、管理方法が曖昧なまま利用すると、意図しない形状変更、位置ずれ、干渉、図面不整合などの事故につながります。

事故を防ぐための第一歩は、各アセンブリで使用するリンク部品の版を固定し、承認されていない最新版へ自動的に置き換わらないようにすることです。そのうえで、更新前後の形状と属性を比較し、申告された変更以外の差分がないか確認します。

部品の配置には、変化しやすい外形面や稜線ではなく、安定した原点、基準平面、座標系を使用します。外部参照の範囲を必要最小限に絞り、詳細形状への過度な依存や循環参照を避けることも重要です。

更新後は、対象部品だけでなくアセンブリ全体を確認します。拘束、位置、干渉、隙間、可動範囲、質量、締結条件などを調べ、製品として成立しているかを判断します。

さらに、3Dモデルだけで作業を終わらせず、図面、部品表、加工用データ、検査情報を新版と整合させます。旧版が現場に残っていないかを確認し、更新履歴と承認記録を残すことで、変更の追跡性を確保します。

リンクが正常に接続され、3D CADの再計算が完了していることは、設計内容が正しいことを保証しません。どの版を適用し、どの差分を確認し、どの範囲へ影響するかを人が判断する工程が必要です。

また、更新した3D CADモデルと実際の現場状態を照合することで、設計上では見つけにくい位置ずれや組立上の問題を把握しやすくなります。現場の対象物を位置情報とともに記録し、設計データと関連付けて管理する方法を検討する際は、LRTK Phoneの活用も有効です。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る