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3D CADで治具のクランプ干渉を防ぐ6つの配置確認

加工治具や組立治具を設計するとき、ワークを確実に固定できることだけを確認しても、実際の作業で使いやすい治具になるとは限りません。クランプ本体が工作物に接触しなくても、レバーの回転範囲、締め付け工具の操作空間、作業者の手、切削工具、測定器、切りくずなどが干渉し、現場で治具を修正する事態が起こることがあります。

こうした問題を減らすために役立つのが、3D CADを使った配置検証です。治具部品とワークを立体的に組み合わせ、固定前後の状態や作業中の動きを再現すれば、二次元図面だけでは気づきにくい干渉を設計段階で発見できます。

ただし、3D CAD上で静止した完成状態だけを確認しても十分ではありません。クランプを開くときの軌跡、ワークを出し入れする方向、工具の接近経路、寸法ばらつき、切りくずの堆積など、実際の工程を想定した確認が必要です。

この記事では、3D CADで治具のクランプ干渉を防ぐために確認したい6つの配置ポイントを、実務で使いやすい順序に沿って解説します。新規治具の設計だけでなく、既存治具の改良、段取り替え時間の短縮、加工不良の原因調査にも活用できる内容です。

治具のクランプ干渉を3D CADで確認する重要性

治具におけるクランプの役割は、加工中や組立中にワークが移動しないよう、必要な位置と姿勢を維持することです。しかし、固定力を確保するためにクランプをワークへ近づけすぎると、さまざまな干渉が発生しやすくなります。反対に、干渉を避けることだけを優先して離しすぎると、押さえ位置が不適切になり、ワークの浮き、変形、振動、位置ずれにつながる可能性があります。

そのため、クランプ配置では固定性能と作業空間を同時に成立させなければなりません。平面図や断面図でも主要寸法は確認できますが、複数方向に傾いた面、複雑なレバー形状、工具の斜め進入、作業者の手の動きなどを二次元だけで把握するのは容易ではありません。

3D CADを使えば、ワーク、ベース、位置決め部品、クランプ、締結部品、加工工具などを同一空間に配置できます。任意の方向からモデルを観察できるため、正面図では離れて見えていた部品が、奥行き方向では重なっているといった問題も発見しやすくなります。

さらに重要なのは、クランプの開閉状態を分けて検証できることです。治具が完成した状態では干渉していなくても、クランプを解除する途中でレバーが隣のクランプに当たったり、アームを開いた状態ではワークを取り出せなかったりする場合があります。3D CAD上で可動部を動かし、工程ごとの状態を再現することで、静的な図面確認では見逃しやすい問題を減らせます。

治具の干渉は、組立後に発見すると修正範囲が広がりやすい問題です。クランプ位置を数ミリ変更するだけでも、取付穴、ねじ穴、座面、補強リブ、配管、近接センサーなどへ影響が及ぶことがあります。設計段階で干渉を発見できれば、モデル上で配置を調整できるため、部品の再加工や再製作を抑えやすくなります。

配置確認1 クランプ本体とワークの静的な干渉を確認する

最初に確認したいのは、クランプ本体とワークの直接的な干渉です。これは最も基本的な確認ですが、クランプの押さえ部だけに注目すると、取付座、支柱、ボルト頭、ナット、シリンダー、配管接続部などの干渉を見落とすことがあります。

3D CAD上では、クランプを簡略的な箱形状で置くのではなく、少なくとも外形、取付面、可動部、締結部品が分かる形状で配置します。クランプの詳細な内部構造まで再現する必要はありませんが、周辺部品との距離を判断できる程度の外形精度は必要です。

ワークについても、完成形状だけでなく、加工前の素材形状を用意することが重要です。加工後のモデルではクランプと干渉していなくても、加工前には余肉や鋳肌が残っており、実際には治具へ載せられない場合があります。加工工程ごとにワーク形状が変わる場合は、工程別のモデルを作成し、それぞれで配置を確認します。

干渉確認では、単純に部品同士が重なっているかを見るだけでなく、接触させる場所と接触させてはいけない場所を区別します。クランプの押さえ面はワークへ接触する必要がありますが、クランプ本体の側面や取付ボルトがワークへ接触する状態は避けなければなりません。接触箇所を色分けしたり、断面表示で内部を確認したりすると、意図した接触かどうかを判断しやすくなります。

また、ワークの着座面が位置決め部品に正しく接触している状態で確認することも欠かせません。ワークが基準面からわずかに浮いた状態でモデル化されていると、クランプとの隙間が実際より大きく見えます。基準面、基準穴、位置決めピンなどの拘束条件を設定し、実際の着座状態を再現してから干渉を調べます。

クランプの押さえ位置も重要です。押さえ点がワークの端部に近すぎると、締め付け時にワークが傾いたり、薄肉部が変形したりする可能性があります。反対に、加工部へ近づけすぎると工具と干渉しやすくなります。3D CAD上では、押さえ点から支持点までの位置関係を確認し、固定力が安定して伝わる配置を検討します。

直接干渉が見つからない場合でも、隙間が極端に小さい箇所は記録しておく必要があります。モデル上では接触していなくても、部品公差、組立誤差、表面処理、溶接変形などによって実物では接触することがあるためです。静的な干渉確認は、重なりの有無だけで終わらせず、必要な余裕が確保されているかまで判断することが大切です。

配置確認2 レバーやアームの可動範囲を確認する

クランプ干渉で特に見落とされやすいのが、レバーやアームの移動軌跡です。固定状態と解除状態の二つだけを比較しても、その途中で周辺部品へ接触する可能性があります。そのため、可動部は移動開始から終了まで連続的に確認する必要があります。

3D CAD上では、回転軸やスライド方向に合わせて拘束条件を設定し、実際のクランプ動作に近い状態で動かします。回転式のレバーであれば回転角度、直線移動式であればストローク量を設定し、可動範囲全体を確認します。動作が複数の回転や直線移動で構成される場合は、それぞれの動きを順番に再現します。

確認対象は、クランプ本体だけではありません。レバー端部、持ち手、連結部、ばね、ボルト、配管、ケーブルなども可動範囲に含めます。特に長いレバーは、回転中心から離れるほど大きな軌跡を描くため、隣接する治具部品や機械カバーへ接触しやすくなります。

複数のクランプを並べて配置する場合は、開閉順序も考慮します。一つ目のクランプを開いた状態では二つ目を操作できるものの、二つ目を先に開くとレバー同士が重なることがあります。作業手順を限定すれば使える配置でも、順序を間違えやすい設計は現場での作業ミスにつながります。可能であれば、どの順序で操作しても干渉しにくい配置を目指します。

可動範囲は、クランプが正常に取り付けられている状態だけでなく、調整範囲の端でも確認します。押さえボルトの長さ調整、アーム位置の変更、交換式パッドの使用などによって、レバー角度やアーム高さが変わる場合があるためです。標準位置では問題がなくても、最大調整位置では隣の部品へ接触することがあります。

動作確認では、軌跡を包み込む空間を干渉禁止領域としてモデル化する方法も有効です。レバーが通過する範囲を立体形状として表現しておけば、その領域へ別部品を配置したときに干渉を見つけやすくなります。設計変更で周辺部品が追加された場合にも、再確認しやすくなります。

さらに、クランプの動作速度や慣性も考慮します。手動クランプでは作業者が勢いよくレバーを開くことがあり、設計上の停止位置をわずかに越える可能性があります。動力式のクランプでも、停止位置のばらつきや機構の遊びによって、理論上の軌跡より広い範囲を動くことがあります。3D CADでは理想的な動作だけでなく、実際の使用を想定した安全側の可動範囲を確保します。

配置確認3 ワークの搬入出経路と着脱空間を確認する

クランプをすべて解除した状態でワークが干渉していなくても、治具へ載せる途中や取り出す途中でクランプに当たる場合があります。治具設計では、固定後の状態だけでなく、ワークが治具へ近づき、位置決めされ、固定され、加工後に取り出されるまでの経路を確認する必要があります。

まず、ワークの搬入方向を明確にします。上方から載せるのか、横方向から差し込むのか、傾けながら入れるのかによって、必要な空間が変わります。重量物の場合は吊り具や搬送装置を使うこともあるため、ワーク単体だけでなく、つり上げ部品や把持部品を含めた形状で確認します。

3D CAD上では、ワークを搬入開始位置から着座位置まで移動させ、その途中でクランプ、位置決めピン、支柱、ガイド、機械カバーなどに接触しないかを確認します。直線的に入らない場合は、実際の作業に近い複数段階の移動を設定します。例えば、最初に斜め下へ移動し、位置決めピンを越えた後に水平へ戻す動作などです。

着脱時には、ワークをつかむための空間も必要です。小型部品であれば作業者の指が入る隙間、大型部品であれば持ち手、フック、吊りベルト、搬送アームなどの空間を考えます。ワークの周囲に隙間があっても、つかむ場所がなければ取り外しにくい治具になります。

特に注意したいのが、クランプを開いた状態での突出です。解除したアームがワークの搬出経路へ残る構造では、ワークを持ち上げる際に接触する可能性があります。アームが完全に退避する構造なのか、作業者が手動で横へ逃がす必要があるのかを確認し、必要な退避量を3D CAD上で測定します。

ワークの重心位置も搬入出のしやすさに影響します。重心が偏っているワークは、持ち上げた際に傾きやすく、想定した直線経路から外れることがあります。理想的な姿勢だけでなく、多少傾いた状態でも周辺部品へ接触しにくい余裕を設けます。

加工後にばりや切りくずが付着する工程では、搬出時のワーク外形が加工モデルと完全には一致しないことがあります。切断後の突起、溶接後の余盛、加工面に残った切りくずなども想定し、搬出経路を狭くしすぎないことが重要です。

また、ワークを誤った向きで載せようとした場合の挙動も検討します。治具へ逆向きに置けない構造が望ましい場合は、クランプ配置や位置決め部品を使って誤組付けを防ぎます。一方で、誤った姿勢のままクランプを閉じられる設計では、ワークや治具を損傷する可能性があります。3D CAD上で代表的な誤投入姿勢を再現すると、誤操作防止の改善点を見つけやすくなります。

配置確認4 加工工具と測定器の接近空間を確認する

クランプはワークを固定するための部品ですが、加工や測定を妨げない位置に配置しなければなりません。工具先端とクランプが離れていても、工具本体、保持部、主軸周辺、測定器の本体などが干渉することがあります。

3D CADで工具干渉を確認するときは、刃先だけではなく、工具全体の外形を配置します。工具保持部や突出し長さも含めてモデル化し、加工開始位置から終了位置まで移動させます。穴加工では工具がワークへ近づく方向、側面加工では工具が輪郭に沿って移動する経路を確認します。

加工中に使用する工具が一種類とは限りません。下穴加工、仕上げ加工、面取り、測定などで工具径や長さが変わる場合があります。最も細い工具だけで確認すると、太い工具や短い突出しの工具保持部がクランプへ接触することがあります。工程で使用する代表的な工具を一通り配置し、最も厳しい条件を見つけます。

工具経路には、切削中の経路だけでなく、早送りで接近する経路や退避経路も含めます。加工位置では干渉しなくても、工具交換後の接近動作でクランプ上部を横切る場合があります。機械の動作を簡略化して再現し、加工前後の移動を含めて確認することが大切です。

測定器についても同様です。加工後に寸法を確認するため、接触式の測定子、手持ち測定器、専用ゲージなどを使用する場合は、それらが測定箇所へ届くかを確認します。クランプが測定面の正面を塞いでいると、加工後にワークを一度取り外さなければ測定できなくなり、工程内での品質確認が難しくなります。

クランプを避けるために工具の突出しを長くすると、加工条件や剛性に影響することがあります。したがって、工具側で無理に対応するのではなく、クランプ位置、クランプ高さ、押さえ方向、ワーク支持位置を含めて配置を見直します。低い位置から押さえる構造や、加工範囲の外側へ退避する構造を検討すると、工具空間を確保しやすくなります。

工具干渉の確認では、ワークの全加工範囲を立体的な禁止領域として設定する方法も有効です。工具や工具保持部が通過する空間をあらかじめモデル化し、その領域へクランプやボルトが入らないよう設計します。加工内容が変更された場合でも、禁止領域を更新すれば影響範囲を判断しやすくなります。

また、工具の振れ、取付誤差、機械の位置決め誤差などを考慮し、理論上ぎりぎり通過する配置は避けます。3D CAD上で接触していないだけでは安全とは限りません。使用する設備、工具径、突出し量、加工条件に合わせて、現実的な余裕寸法を設定することが重要です。

配置確認5 作業者の手と締め付け工具の操作空間を確認する

クランプ本体や工具が干渉しなくても、作業者が操作できなければ実用的な治具とはいえません。特に手動クランプでは、レバーを握る空間、ボルトを回す空間、指を逃がす空間など、人の動きを考慮した配置が必要です。

3D CADでは、作業者の手を簡略化した形状や、必要な操作空間を表す立体形状を配置します。人体モデルを細かく再現しなくても、握り幅、手の甲の厚み、指先が通る範囲などを直方体や円柱で表現すれば、明らかに狭い場所を発見できます。

レバー操作では、握り始める位置と操作を終える位置の両方を確認します。レバーそのものが壁に当たらなくても、作業者の手の甲が支柱や機械カバーへ接触する場合があります。また、レバーを下へ押し込む構造では、指がベースプレートとの間に挟まれる危険がないかも確認します。

ボルトやナットで締め付ける場合は、使用する工具の外形と動作範囲をモデル化します。工具を差し込む方向、回転させる角度、抜き取る方向まで確認することが重要です。ボルト頭の周囲に隙間があっても、工具の柄が隣のクランプやワークへ当たり、十分に回せないことがあります。

一度の操作で締め付けられず、工具を何度も差し替えなければならない配置は、段取り時間を増やします。作業頻度が高い治具では、工具を大きく振れる空間を確保し、少ない動作で締め付けられるようにします。作業方向をそろえることも有効です。複数のクランプが異なる方向を向いていると、作業者が治具の周囲を移動する必要があり、操作漏れも起こりやすくなります。

クランプの配置高さにも注意が必要です。低すぎる位置では手が入りにくく、高すぎる位置では加工工具や搬送装置と干渉しやすくなります。作業者が無理な姿勢にならないか、機械の開口部から手が届くか、視認できる位置にあるかを確認します。

操作空間は、手袋の使用も考慮して設定します。素手では操作できても、保護具を着用すると指先が太くなり、細い隙間へ手が入らなくなることがあります。油や切削液が付着する環境では、滑りにくい握り方ができるかも重要です。

さらに、クランプを解除した際に急にレバーが動く構造では、手や腕の逃げ場が必要です。ばね力や圧力によって可動部が戻る場合は、その動作範囲へ作業者の手が入らないよう配置します。3D CADによる確認では、通常操作だけでなく、誤操作や急な動きも想定し、安全な空間を確保します。

作業性の評価では、設計者だけで判断せず、実際に治具を使用する担当者の意見を取り入れることも大切です。3D CADの画面上で操作手順を説明し、どこを持つのか、どの方向へ力を加えるのか、どの工具を使うのかを確認すれば、設計段階で具体的な改善案を得やすくなります。

配置確認6 公差と切りくずを含めた余裕寸法を確認する

3D CAD上のモデルは、一般に基準寸法どおりの理想的な形状で作成されます。しかし、実際の部品には寸法公差、組立誤差、表面処理の厚み、溶接変形、摩耗などがあります。モデル上でわずかな隙間があっても、実物では干渉する可能性があるため、余裕寸法を確認しなければなりません。

まず、干渉が問題となる箇所について、ワークと治具の寸法公差を整理します。ワークが最大寸法になり、クランプ側が最小隙間となる組み合わせを考え、最悪条件でも接触しないかを確認します。複数の寸法が連続する場合は、それぞれの公差が積み重なるため、単一寸法だけを見て判断しないことが重要です。

位置決めピン、ストッパー、クランプ取付穴などの位置誤差も、クランプとワークの隙間に影響します。ベースプレート上の穴位置が片側へずれ、ワークも反対側へずれた場合、設計値より隙間が小さくなることがあります。3D CAD上で部品を公差範囲内に移動させ、厳しい組み合わせを再現すると、必要な余裕を判断しやすくなります。

余裕寸法は、すべての場所で一律に設定するのではなく、用途に応じて決めます。工具が高速で通過する場所、作業者の指が入る場所、切りくずが堆積しやすい場所、位置決め精度に影響する場所では、必要な余裕が異なります。干渉した場合の影響が大きい箇所ほど、安全側の隙間を確保します。

加工治具では、切りくずの存在を忘れてはいけません。クランプとワークの間、位置決め面、ベースプレート上などに切りくずが入り込むと、ワークが正しく着座せず、クランプ位置も変化します。細かな切りくずであっても、精度が求められる加工では無視できません。

3D CAD上では切りくず一粒ずつを再現する必要はありませんが、切りくずが落ちる方向やたまりやすい場所を確認できます。水平な面、壁際、クランプ根元、狭い溝などは堆積しやすいため、逃げ溝、傾斜面、排出穴、清掃空間を設けます。切削液を使用する場合は、液体と切りくずが流れる経路も考慮します。

クランプの押さえ面に切りくずが付着すると、ワーク表面を傷つけたり、固定姿勢を変化させたりする可能性があります。押さえ部を確認しやすい向きに配置し、清掃や交換がしやすい構造にします。消耗部品を交換するための工具空間も、クランプ干渉確認の対象です。

長期間使用する治具では、可動部の摩耗やがたも考慮します。新品時には問題がなくても、回転軸やリンク部が摩耗すると、レバーやアームの軌跡が変化することがあります。交換部品や調整機構を設ける場合は、調整後の最大変位でも干渉しないかを確認します。

余裕を大きく取りすぎると、治具全体が大型化し、クランプ力の伝達や作業性が悪化することがあります。そのため、単に広く空けるのではなく、干渉リスク、加工精度、固定性能、設備内の制約を整理し、必要な場所へ適切な余裕を割り当てることが大切です。

3D CADでクランプ干渉を検証する実務手順

クランプ干渉の検証は、部品を並べて一度確認するだけでは不十分です。工程ごとの状態を整理し、一定の手順で確認することで、見落としを減らせます。

最初に、ワークの工程形状を準備します。素材状態、中間加工状態、完成状態で外形が変わる場合は、それぞれのモデルを用意します。すべてを一つのモデルへ重ねるのではなく、表示状態や構成を切り替えられるように管理すると確認しやすくなります。

次に、ベースプレート、位置決め部品、支持部品、クランプ、締結部品を配置します。この段階では、細かな面取りやねじ形状よりも、干渉判断に必要な外形を優先します。モデルが重くなりすぎると動作確認がしにくくなるため、購入部品や標準部品は適度に簡略化します。

ワークを基準面へ正しく拘束した後、固定状態で静的干渉を確認します。クランプ本体、ボルト、ナット、支柱などとワークが意図せず接触していないかを調べます。干渉検出機能だけに頼らず、断面表示や透明表示を使い、狭い部分を目視でも確認します。

続いて、クランプの可動部を動かします。閉じた状態から開いた状態まで段階的に変化させ、周辺部品との最小距離を確認します。動作途中の代表位置を保存しておくと、設計レビューで問題箇所を説明しやすくなります。

その後、ワークの搬入出を再現します。クランプを開いた状態でワークを移動させ、実際の持ち方や搬送方法に近い経路を確認します。大型ワークでは、吊り具や搬送部品も追加します。

加工工具と測定器を配置し、接近、加工、退避の各経路を確認します。工具の種類が複数ある場合は、径、長さ、保持部外形が大きいものを優先して検証します。加工途中でクランプ位置を変更する場合は、それぞれの段階を別状態として確認します。

最後に、作業者の操作空間と公差条件を加えます。手や工具が入るか、指を挟む場所がないか、ワークや治具が公差範囲内でずれた場合にも隙間が残るかを確認します。問題が見つかった場合は、クランプだけを動かすのではなく、支持点、位置決め点、加工順序を含めて見直します。

設計変更後は、変更部分だけでなく一連の検証を再実施します。クランプを数ミリ移動したことで工具空間は広がっても、搬入経路や操作空間が狭くなることがあります。変更による副作用を確認するため、決めた手順を最初から繰り返すことが重要です。

クランプ配置で起こりやすい設計ミス

クランプ配置の代表的なミスは、固定状態だけを見て設計を完了してしまうことです。固定後に干渉がなくても、開閉途中、ワーク搬入時、工具接近時に問題が起こる可能性があります。治具は複数の状態を持つ設備であるため、静止した一場面だけで評価しないことが大切です。

次に多いのが、クランプ本体だけをモデル化し、取付ボルトや操作工具を省略することです。実際にはボルト頭がワークへ当たったり、工具の柄を振れなかったりするため、作業に必要な周辺要素も配置しなければなりません。

完成品形状だけで検証することも問題です。加工前の素材には余肉があり、外形が大きい場合があります。素材状態では治具へ入らない、クランプが閉じないといった問題を防ぐため、工程ごとの形状を使い分けます。

クランプを加工箇所から離すため、押さえ位置をワーク端部へ寄せすぎる設計にも注意が必要です。押さえ点と支持点の関係が悪いと、締め付けによってワークが傾く可能性があります。干渉回避と固定性能は別々に考えず、同時に評価します。

隙間があることだけを確認し、寸法公差を考慮しない設計も避けなければなりません。基準寸法でわずかな隙間があっても、ワーク寸法や取付位置が公差内で変化すると接触する場合があります。最小隙間となる条件で検証します。

また、作業者が決められた順序で正確に操作することを前提としすぎる設計も、現場では問題になりやすい傾向があります。特定のクランプを先に開かなければワークを取り出せない構造では、操作順序を間違えた際に部品を損傷する可能性があります。手順表示を設けるだけでなく、できる限り順序に依存しない配置を検討します。

清掃性を考慮しないことも見落とされがちです。クランプ周辺へ切りくずがたまり、清掃工具が入らない構造では、ワークの着座不良が繰り返し発生する可能性があります。排出経路と清掃空間も、干渉確認の一部として扱います。

治具データを運用しやすくする管理方法

3D CADで干渉確認を行っても、検証条件が記録されていなければ、設計変更後に同じ品質で再確認することが難しくなります。治具モデルには、確認したワーク形状、クランプ状態、工具条件、搬入方向などを分かる形で残すことが重要です。

ワークの素材状態、加工途中、完成状態は、名称だけで判別できるように管理します。クランプについても、固定、解除、最大調整位置などの状態を切り替えられるようにします。担当者ごとに異なる方法でモデルを動かすのではなく、社内で基本的な状態名や確認順序をそろえると、レビューの抜けを減らせます。

可動範囲や工具通過範囲は、補助形状としてモデル内に保存すると便利です。通常の図面には表示しなくても、干渉検証時に呼び出せるようにしておけば、周辺部品を変更した際の影響をすぐに確認できます。

設計レビューでは、完成状態の画像だけでなく、クランプ開閉途中、ワーク搬入途中、工具接近時など、問題が起こりやすい状態を共有します。静止画像だけでは動作を伝えにくい場合は、視点と状態を順番に切り替えながら説明し、実際の作業手順と対応させます。

干渉箇所を修正したときは、変更理由も記録します。単にクランプを移動したという情報だけでなく、工具保持部との隙間確保、作業者の手の逃げ、最大素材寸法への対応など、判断根拠を残します。将来の設計変更で元の配置へ戻してしまうことを防ぎやすくなります。

既存治具を3D CAD化する場合は、現物寸法を正確に把握する必要があります。図面と実物が一致していない治具では、図面どおりにモデル化しても干渉検証の精度が上がりません。長期間使用した治具には、現場で追加工された逃げ、交換されたクランプ、位置変更されたストッパーなどが残っていることがあります。

現物の状態を記録するときは、主要寸法の測定に加え、写真や点群データを活用すると、複雑な設備周辺の位置関係を把握しやすくなります。治具単体だけでなく、機械の扉、カバー、配管、周囲の搬送設備まで記録できれば、設備内へ設置した状態での干渉確認にも役立ちます。

まとめ

3D CADで治具のクランプ干渉を防ぐには、固定状態の部品同士が重なっていないことを確認するだけでは不十分です。クランプ本体とワークの静的干渉、レバーやアームの可動範囲、ワークの搬入出経路、加工工具と測定器の接近空間、作業者の操作空間、公差や切りくずを含めた余裕寸法まで、工程全体を通して確認する必要があります。

特に重要なのは、治具を一つの完成形状として見るのではなく、複数の状態を持つ作業設備として捉えることです。ワークを載せる前、位置決めした後、クランプを閉じる途中、加工中、測定中、クランプ解除後、ワーク搬出中では、干渉条件がそれぞれ異なります。

3D CAD上でこれらの状態を再現すれば、試作後の追加工、クランプ位置の変更、工具経路の修正といった手戻りを減らしやすくなります。また、作業者や加工担当者と立体モデルを共有することで、設計者だけでは気づきにくい操作上の問題も早い段階で確認できます。

既存治具を改良する場合は、図面だけに頼らず、現在の設備や治具の形状を正しく記録することが出発点になります。現場の位置関係を写真や点群として残し、3D CADモデルと比較すれば、クランプ周辺だけでなく、機械カバーや搬送設備を含めた配置検討がしやすくなります。

現場の設備形状や治具配置を効率よく記録し、設計データへつなげたい場合は、位置情報付きの計測や点群記録に対応するLRTK Phoneの活用も検討できます。現物確認と3D CADによる事前検証を組み合わせることで、クランプ干渉を防ぎながら、加工性、安全性、作業性を両立した治具設計へつなげられます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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