3D CADにおけるPMI情報とは
3D CADで扱うPMIとは、製品の三次元形状に関連付けて付与される製造情報や品質情報の総称です。代表的な内容には、寸法、公差、幾何公差、基準、表面性状、注記、材料に関する指示、加工上の注意事項などがあります。単に三次元モデルの近くへ文字を表示するだけではなく、どの面、穴、稜線、軸、中心線などを対象とした指示なのかをモデル内に保持できることがPMIの重要な特徴です。 従来は、3D CADで設計した形状を二次元図面へ展開し、製造に必要な寸法や公差を図面上へ記載する方法が一般的でした。一方、三次元モデルを中心に設計情報を管理する運用では、形状と製造情報を同じデータ内にまとめ、設計、製造、検査、調達などの工程で共有します。このような運用では、PMI情報が図面の補助ではなく、製品仕様を伝える主要な情報になります。 ただし、3D CAD上で正しく表示されていたPMIが、別形式への変換後に消えたり、一部だけ欠落したりすることがあります。形状そのものは問題なく表示されているため、変換が成功したように見えても、寸法や公差が失われていれば製造データとしては不完全です。 PMIの欠落は、単純な表示設定だけでなく、ファイル形式の仕様、変換機能の対応範囲、形状要素との参照関係、受け側の3D CADの読込仕様など、複数の要因によって発生します。そのため、変換後にPMIが見えない場合は、元データの問題と決めつけず、変換経路全体を段階的に確認する必要があります。
PMI情報が変換時に消えると何が起こるのか
PMI情報が失われると、設計意図を受け手が正確に判断できなくなる可能性があります。例えば、穴径の寸法だけが残り、位置に関する公差が消えてしまうと、穴をどの範囲に加工すべきか判断できません。形状だけを見れば製作できそうに見えても、要求精度を満たすための条件が欠けている状態です。 表面性状や加工指示が欠落した場合は、必要な仕上げ品質を製造側へ伝えられません。基準記号や幾何公差が消えれば、検査時にどこを基準として測定するのかが分からなくなります。注記の一部が欠けることで、熱処理、面取り、バリ処理、適用範囲などの重要な条件を見落とすことも考えられます。 さらに注意したいのは、PMIがすべて消えるとは限らない点です。寸法は表示されているものの、対象面との関連付けが失われている場合や、見た目は同じでも機械的に読み取れる属性が削除されている場合があります。人が画面で確認するだけなら問題がないように見えても、製造設備や検査システムへ情報を引き渡す段階で利用できないことがあります。 変換後のデータを二次利用する場合は、PMIの有無だけでなく、意味を持った情報として残っているかを確認しなければなりません。外観上の表示確認だけで変換結果を承認すると、後工程で入力のやり直しや設計者への問い合わせが発生し、作業時間の増加や転記ミスにつながります。
PMI情報が消える仕組みを理解する
PMIは、三次元形状とは異なる種類の情報として管理されています。形状データには、面、稜線、頂点、曲面、ソリッドなどの幾何情報があります。一方、PMIには、表示する文字や記号に加えて、指示の種類、数値、対象となる形状要素、表示方向、配置位置、適用範囲などの情報が含まれます。 変換処理では、元の3D CADが持つ内部構造を、変換先の形式で表現できる構造へ置き換えます。このとき、形状の表現には対応していても、PMIの表現方法まで一致しているとは限りません。変換先で対応できない情報は、削除される、単純な線や文字へ置き換えられる、属性を失った表示情報になるといった処理が行われることがあります。 また、PMIは特定の面やエッジを参照していることがあります。形状変換によって面の分割や結合が発生すると、元のPMIが参照していた対象を特定できなくなる場合があります。見た目の形状がほぼ同じでも、データ内部では面の識別方法が変わっているため、PMIだけが孤立することがあります。 PMIの消失を防ぐには、ファイルが開けるかどうかだけで判断せず、どの種類の情報をどのような状態で渡す必要があるのかを明確にすることが重要です。人が閲覧できればよいのか、編集が必要なのか、自動加工や自動検査へ利用するのかによって、必要な変換条件は異なります。
原因1:変換先のファイル形式がPMIに対応していない
最も基本的な原因は、変換先として選んだファイル形式がPMI情報を保持できないことです。3D CADで利用されるファイル形式には、形状だけを受け渡すことを主な目的としたものと、属性や注記を含めて受け渡せるものがあります。形状専用に近い形式を選ぶと、ソリッドやサーフェスは保存できても、寸法、公差、注記などは変換対象になりません。 同じ拡張子に見える形式でも、仕様の世代や出力方式によって、PMIへの対応範囲が異なることがあります。出力側が新しい仕様に対応していても、受け側が古い仕様として読み込めば、PMIが無視される可能性があります。その反対に、受け側がPMI読込に対応していても、出力時に形状のみの設定を選択していれば情報は含まれません。 ファイル形式を決める際は、単に取引先が開ける形式を選ぶのではなく、寸法、公差、注記、基準、表面性状など、必要な情報を保持できるか確認する必要があります。PMI対応と表示されている形式でも、すべての種類のPMIを同じ精度で扱えるとは限りません。 特に、三次元形状を軽量化して閲覧するための形式や、表示速度を優先した形式では、PMIが画像や線として残っても、編集可能な属性としては保持されないことがあります。変換の目的を明確にしないまま形式を決めると、後工程で必要な情報が不足しやすくなります。
原因2:セマンティックPMIと表示用PMIの扱いが異なる
PMIには、画面上に寸法線や記号を表示するための情報と、寸法の種類や公差値、参照対象などを構造化して保持する情報があります。前者は表示用PMI、後者はセマンティックPMIとして区別されることがあります。 表示用PMIは、人が画面を見て指示内容を確認するための情報です。寸法線、引出線、文字、記号などの見た目を再現することが主な目的になります。これに対してセマンティックPMIは、その指示が直径寸法なのか、位置に関する公差なのか、どの面や穴へ適用されているのかといった意味を機械的に読み取れる状態で保持します。 変換機能によっては、表示用PMIだけを出力し、セマンティックPMIを変換しない場合があります。この場合、変換先の画面では寸法や記号が見えるため、正常に変換されたように感じられます。しかし、自動加工や自動検査へ利用しようとすると、数値や対象形状を読み取れません。 反対に、セマンティックPMIは保持されているものの、表示用の配置情報が適切に再現されず、画面上では見えにくくなることもあります。PMIが消えたように見えても、表示フィルターや専用の情報一覧を確認すると属性が残っている場合があります。 変換結果を評価するときは、見た目の再現と意味情報の保持を分けて確認することが大切です。変換の用途が閲覧だけであれば表示用PMIで対応できる場合がありますが、後工程の自動化を目的とするなら、セマンティックPMIの保持が重要になります。
原因3:変換設定で注記や属性が除外されている
3D CADの変換画面には、出力対象を選択する設定が用意されていることがあります。形状、属性、色、レイヤー、注記、PMI、補助要素などを個別に選択できる場合、PMIに関する項目が無効になっていると、変換先へ情報が渡りません。 初期設定が形状優先になっていることもあります。普段は解析用や形状確認用として変換しているため、注記を出力しない設定が保存されており、そのまま製造用データにも使用してしまうケースです。担当者はPMIを付けたつもりでも、変換時に対象から除外されていれば、受け側では確認できません。 表示中の要素だけを書き出す設定にも注意が必要です。PMIが非表示の状態で変換すると、非表示要素として除外される場合があります。特定のレイヤー、グループ、モデル状態にPMIが格納されている場合は、その状態が出力対象になっているか確認しなければなりません。 また、選択した部品だけを変換する操作では、上位の組立データに付与されたPMIが含まれないことがあります。部品単位のPMIと組立単位のPMIが別々に管理されている場合、形状を選択しただけでは必要な注記まで選択されない可能性があります。 変換設定の見落としは、元データやファイル形式を変更しなくても改善できることが多い原因です。まずは出力設定を確認し、PMI、注記、属性、非表示要素、組立情報などの項目がどのように扱われているかを整理する必要があります。
原因4:変換によって面やエッジの参照関係が変わる
PMIは、三次元モデル内の面、エッジ、穴、軸、中心、基準要素などと関連付けられています。変換処理で形状の内部構造が変化すると、PMIが参照していた要素を変換先で特定できなくなることがあります。 例えば、元の3D CADでは一つの面として管理されていた部分が、変換後に複数の面へ分割される場合があります。反対に、複数の面が一つへ結合されることもあります。微小な面や短いエッジが整理されたり、曲面の表現方法が置き換えられたりすることで、元の識別情報が維持されないことがあります。 参照先が変わると、PMIそのものが削除される場合だけでなく、モデルから離れた位置に表示される、別の面を指す、関連付けのない注記として残るといった問題も発生します。そのため、変換後に寸法が表示されているだけでは十分ではありません。引出線の接続先や、選択時に強調される対象面まで確認する必要があります。 形状の修復処理も参照関係へ影響します。変換時に隙間の修正、面の簡略化、重複要素の削除などが自動的に行われると、形状品質は改善しても、元のPMIとの対応が崩れる可能性があります。 特に、複雑な曲面、微小なフィレット、薄い形状、細かな穴が多いモデルでは、形状要素の再構成が起こりやすくなります。PMIを確実に保持したい場合は、変換前後で形状要素の数や構成が大きく変わっていないかを確認することが重要です。
原因5:PMIビューや表示状態が引き継がれていない
PMIが実際には残っているにもかかわらず、変換後の初期画面で見えないことがあります。これは、PMIを表示するためのビュー、表示方向、レイヤー、フィルターなどが正しく引き継がれていないことが原因です。 三次元モデルでは、多数の寸法や注記を同時に表示すると画面が見づらくなります。そのため、正面、側面、断面、加工工程などに応じてPMIをグループ化し、特定のビューごとに必要な情報だけを表示する運用が行われます。変換後にこのビュー情報が失われると、PMIが非表示になったり、すべて同じ方向へ投影されて重なったりすることがあります。 PMIは表示方向にも依存します。元データでは正面から読みやすい向きに配置されていても、変換先ではモデル座標だけが引き継がれ、文字が裏向きになることがあります。モデルの内部や遠く離れた位置に表示されることで、消えたように見える場合もあります。 受け側の3D CADでPMI表示が初期状態では無効になっていることもあります。注記表示、製造情報表示、補助要素表示などの機能を有効にしなければ確認できません。 PMIが見えない場合は、すぐに再変換する前に、表示設定、情報一覧、レイヤー、保存ビュー、モデルの表示範囲を確認することが有効です。情報が存在するかどうかと、画面上に表示されているかどうかを分けて判断する必要があります。
原因6:文字や記号の互換性に問題がある
PMIには、数値だけでなく、直径、深さ、角度、公差、表面性状、基準などを表す記号が使用されます。変換元と変換先で文字や記号の表現方法が異なると、一部が空白になる、別の文字へ置き換わる、四角形の代替表示になるといった問題が発生します。 特殊な文字、独自に作成した記号、外字、特殊なフォントを使用している場合は、変換先で同じ表現を再現できない可能性があります。元の3D CAD環境では正常に表示されていても、その環境に依存した文字情報であれば、別の環境へ渡した時点で欠落します。 複数行の注記や、枠で囲まれた指示、上下付き文字、分数表現なども変換時に崩れることがあります。文字自体は残っていても、改行位置や文字幅が変わり、他の注記と重なる場合があります。小数点や単位表記の扱いが異なることで、数値の意味を誤解させるおそれもあります。 記号が欠落した場合、PMI全体が消えていなくても重大な影響があります。直径記号が消えれば、通常の長さ寸法と区別できません。基準記号や公差枠の一部が欠けると、検査条件を正しく伝えられなくなります。 変換前には、独自フォントや環境依存文字を避け、一般的な文字表現へ統一することが重要です。変換後は、文字化けの有無だけでなく、記号、枠、上下関係、改行位置まで確認する必要があります。
原因7:受け側の3D CADがPMIを正しく読み込めない
出力データにPMIが含まれていても、受け側の3D CADがすべての情報を読み込めるとは限りません。読込機能が形状だけに対応している場合や、PMIの一部だけを表示する仕様の場合、変換元では問題がなくても受け側で欠落します。 受け側の設定によっても結果が変わります。PMIを読み込む項目が無効になっている、属性の読込を省略している、軽量表示を優先しているなどの状態では、必要な情報が展開されない場合があります。 同じデータでも、3D CADの更新状態や読込機能の構成によって結果が異なることがあります。ある端末では表示できるのに、別の端末では表示できない場合は、データそのものよりも利用環境の差を疑う必要があります。 また、受け側でPMIを閲覧できても、編集や再保存を行うと一部の情報が失われることがあります。読込時には保持されていた属性が、受け側の内部形式へ保存する段階で単純化されるためです。変換したファイルをさらに別形式へ変換する運用では、変換回数が増えるほど情報が欠落する可能性も高まります。 PMIの受け渡しでは、送信側だけでなく、受信側の3D CAD、読込設定、保存方法まで含めて確認することが重要です。送信側で正常に出力できたという事実だけでは、最終的な情報伝達を保証できません。
対策1:PMIを保持できる変換形式を選ぶ
最初の対策は、PMIの保持を前提として変換形式を選定することです。取引先や他部署から指定された形式をそのまま使うのではなく、必要なPMIの種類を保持できるか確認します。 形式を評価するときは、寸法や注記が表示されるかだけでなく、セマンティックPMI、対象形状との関連付け、保存ビュー、組立階層、属性などがどこまで受け渡せるかを確認します。自動加工や自動検査へ利用する予定がある場合は、機械的に読み取れる情報が残ることが重要です。 一つの形式ですべての用途を満たすことが難しい場合は、目的別にデータを分ける方法もあります。編集や自動処理に使用するデータと、目視確認用のデータを併用し、欠落のリスクを補います。ただし、複数のデータを渡す場合は、どれが正しい仕様を示すのかを明確にしなければなりません。 形式の選定は、実際のモデルを使って事前に検証することが効果的です。単純な試験モデルだけではなく、普段使用する寸法、公差、基準、表面性状、複数行注記などを含むデータで確認します。 変換形式の名称だけで判断せず、出力側と受け側の組み合わせで評価することが大切です。同じ形式でも、変換機能や読込機能の対応範囲によって結果が変わるためです。
対策2:セマンティックPMIの変換可否を確認する
PMIを後工程で活用する場合は、セマンティック情報が維持されているかを確認します。画面に寸法が表示されているだけでは、対象となる形状や公差値を自動的に取得できるとは限りません。 検証時には、変換後の寸法や公差を選択し、対象となる面、穴、軸などが関連要素として認識されるか確認します。PMIの属性画面で、指示の種類、数値、上限値、下限値、基準との関係などを読み取れるかも確認します。 自動検査へ利用する場合は、検査対象となる形状とPMIの対応が維持されていることが欠かせません。寸法値だけが残っていても、どこを測定するのか判断できなければ自動処理には利用できません。 変換後にセマンティック情報が失われる場合は、変換形式や設定を見直す必要があります。どうしても保持できない場合は、表示用PMIとして利用する範囲と、別の手段で伝達する情報を決めます。 運用開始前に、PMIを閲覧だけに使うのか、製造条件の取得に使うのか、検査項目の作成に使うのかを明確にすると、必要な検証内容を整理しやすくなります。
対策3:変換設定をテンプレート化する
PMIの欠落を防ぐには、担当者ごとに変換設定が変わらない仕組みを整えることが重要です。形状、PMI、注記、属性、表示状態、組立情報などの設定を標準化し、用途ごとのテンプレートとして管理します。 例えば、製造受け渡し用、検査用、閲覧用など、目的に応じて必要な情報が異なる場合は、それぞれの設定を分けます。担当者が毎回一から項目を選択する運用では、チェック漏れが発生しやすくなります。 テンプレートには、出力形式だけでなく、仕様の世代、単位、座標系、非表示要素の扱い、部品階層の保持、PMIビューの出力なども含めます。ファイル名や改訂番号の付け方も統一すると、変換後の取り違えを防ぎやすくなります。 設定を変更できる担当者を限定し、変更時には試験データで検証する運用も有効です。3D CADの更新や変換機能の変更後は、以前と同じ設定でも結果が変わる可能性があるため、定期的な確認が必要です。 テンプレート化の目的は操作時間を短縮することだけではありません。同じ条件で繰り返し変換できる状態をつくり、問題が起きたときに原因を追跡しやすくすることが重要です。
対策4:形状変換の前後で参照関係を検証する
PMIが参照している面やエッジの関係を守るには、変換前後の形状構造を確認します。外観が一致しているだけでなく、重要な面の分割、結合、欠落、微小要素の削除などが発生していないかを調べます。 すべての形状要素を手作業で確認するのは現実的ではないため、重要度の高い箇所から検証します。基準となる面、公差が厳しい穴、複雑な曲面、複数のPMIが集中する部分などを優先すると効率的です。 PMIを選択したときに、対象形状が正しく強調されるか確認する方法もあります。変換後の引出線が元と同じ対象を指しているか、別の面へ移動していないかを比較します。 形状修復を行う場合は、PMI変換の前後どちらで実施するかを決めておく必要があります。変換と同時に自動修復すると、どの処理によって参照関係が変わったのか判断しにくくなります。可能であれば、元モデルの形状品質を整えてからPMIを含む変換を行います。 参照関係の検証結果を記録しておけば、同じ種類のモデルを変換するときの注意箇所を共有できます。問題が起きやすい形状やPMIの付け方を把握することで、設計段階から欠落しにくいデータを作成できます。
対策5:PMIビューと表示方向を整理して渡す
PMIを受け手が確認しやすい状態にするには、保存ビューや表示グループを整理します。一つの画面にすべてのPMIを表示するのではなく、正面、側面、断面、加工工程、検査工程などに分けて管理します。 各ビューには、その方向から確認すべきPMIだけを配置します。文字や寸法線が重ならないように調整し、モデルの内部へ入り込んでいないか確認します。受け手がビューを切り替えるだけで必要な情報を確認できる構成が理想です。 変換前には、使用していない古いビューや重複したビューを整理します。不要な表示状態が多数残っていると、どれを確認すべきか分からず、受け手が重要なPMIを見落とす可能性があります。 ビュー名にも一定のルールを設けます。単なる連番ではなく、方向や工程、対象部位が分かる名称にすると、変換後も目的を判断しやすくなります。ただし、特殊な文字や長すぎる名称は変換時に崩れることがあるため、簡潔で統一された表記が適しています。 変換後は、保存ビューを順番に開き、PMIの表示位置、文字の向き、重なり、欠落を確認します。初期画面だけで判断せず、用意したすべてのビューを確認することが重要です。
対策6:文字や記号の表現ルールを統一する
文字化けや記号欠落を防ぐには、PMIで使用する文字表現を標準化します。環境に依存するフォント、独自の外字、担当者が個別に作成した記号などはできるだけ避けます。 寸法、公差、基準、表面性状などの指示には、3D CADが標準機能として持つ記号を使用します。見た目を整えるために文字を手入力すると、変換先で意味情報として認識されないことがあります。例えば、専用の寸法機能を使わず、文字として数値や記号を配置した場合は、表示はできても寸法属性を保持できません。 注記の文章も簡潔にし、不要に複雑な装飾を避けます。複数行の注記では、改行位置が変わっても意味が伝わる文章構成にします。単位、小数点以下の桁数、公差の表現、記号の使い方を社内で統一すると、変換後の確認もしやすくなります。 変換テストでは、一般的な文字だけでなく、実務で使用する特殊記号を含めて確認します。文字が表示されるかだけでなく、その記号が本来の意味を維持しているかを確認する必要があります。 変換後に一部の文字を手作業で修正する運用は、見落としや転記ミスの原因になります。可能な限り、元データの作成ルールと変換条件を整え、修正を必要としない状態を目指します。
対策7:変換後の受入検査を標準化する
どれだけ変換条件を整えても、PMIが必ず完全に保持されるとは限りません。最終的には、変換後のデータを一定の手順で検査し、必要な情報が残っていることを確認します。 受入検査では、元データと変換後データを並べ、PMIの総数、種類、表示状態、参照先、文字、記号などを比較します。すべての注記を一つずつ確認することが難しい場合でも、基準、公差が厳しい寸法、重要な加工指示などは優先して確認します。 単に画面を目視するだけでなく、PMI一覧や属性情報を利用して確認することも重要です。表示されている寸法が意味情報を保持しているか、参照先が存在するか、孤立した注記がないかを調べます。 検査結果は、合格または不合格だけで終わらせず、欠落した情報の種類、発生箇所、使用した設定、変換日時などを記録します。問題が発生したときに履歴を追えるため、原因の特定と再発防止につながります。 受け手側でも確認を行い、送信側と同じ結果になるか確かめます。送信側の環境で正常に見えても、受け側で正しく表示されるとは限りません。実際に使用する環境での確認までを受入検査に含めることが大切です。
3D CAD変換前に確認したい実務手順
PMIを含む3D CADデータを変換する前に、まず受け渡しの目的を確認します。閲覧だけに使用するのか、受け側で編集するのか、自動加工や自動検査へ利用するのかによって、保持すべき情報が変わります。目的が曖昧な状態では、変換結果が十分かどうか判断できません。 次に、受け側が必要とするPMIの種類を整理します。寸法、公差、基準、表面性状、注記、材料情報などのうち、どれを正式な製造情報として扱うのかを決めます。画面表示だけでよい情報と、セマンティック情報として必要な項目も区別します。 元データでは、PMIの参照切れや重複がないか確認します。設計変更によって形状が更新された後も、古い面を参照したPMIが残っている場合があります。変換前のデータに問題があれば、どの形式を使用しても正しく受け渡せません。 PMIビュー、表示グループ、レイヤーなども整理します。不要な注記を削除し、正式に使用する情報を明確にします。非表示のまま残っているPMIがないか、部品と組立のどちらに情報が付与されているかも確認します。 その後、標準化した設定で変換を実行します。変換時に警告やエラーが表示された場合は、その内容を記録し、無視したままデータを渡さないことが重要です。形状変換が完了していても、属性や注記に関する警告が出ている可能性があります。 変換後は、ファイルを閉じてから改めて開き、保存された状態を確認します。変換直後の一時的な表示だけではなく、実際に受け渡すファイルにPMIが含まれているかを検証します。可能であれば、受け側と同等の環境でも開きます。 最後に、元データとの比較結果、使用した変換条件、確認者、改訂番号などを記録します。再変換が必要になった場合でも、同じ条件を再現できる状態をつくることが大切です。
PMI情報を安定して受け渡す運用ルール
PMIの欠落を防ぐには、一度だけ適切に変換するのではなく、継続して同じ品質を保てる運用が必要です。担当者の経験だけに依存すると、異動や引き継ぎの際に設定や確認方法が失われてしまいます。 まず、正式な元データを一つに定めます。変換後のファイルへ直接PMIを追加したり、複数の形式で別々に修正したりすると、どのデータが最新なのか判断できなくなります。修正は原則として元の3D CADデータで行い、承認後に再変換する流れを整えます。 改訂管理では、形状変更とPMI変更を区別して記録します。形状が変わっていなくても、公差や注記が変更されることがあります。ファイルの更新日時だけでは変更内容を判断できないため、何を修正したかを明確にします。 変換設定や受入検査の手順は、担当者が参照できる文書として残します。使用する形式、必要な出力項目、確認するPMIの種類、合格条件などを決めておけば、案件ごとの判断差を減らせます。 定期的な試験変換も有効です。3D CADの更新、変換機能の変更、利用端末の入れ替えなどがあった場合は、標準的な試験モデルを変換し、以前と同じ結果になるか確認します。実際の案件で初めて不具合に気付く状態を避けるためです。 取引先や他部署との間では、受け渡し時の責任範囲も明確にします。どのファイルを正式な指示として扱うのか、変換後の確認を誰が行うのか、欠落が見つかった場合にどのデータへ戻って修正するのかを決めておきます。 PMIを含む3D CADデータは、単なる形状ファイルではありません。製品の要求事項を含む重要な情報であるため、変換、確認、承認、配布までを一つの工程として管理する必要があります。
まとめ
3D CADのPMI情報が変換時に消える原因には、ファイル形式の非対応、セマンティックPMIと表示用PMIの違い、出力設定の漏れ、形状要素との参照切れ、保存ビューの欠落、文字や記号の互換性、受け側の読込制限などがあります。 形状が正しく表示されていても、PMIが完全に引き継がれているとは限りません。寸法や記号の見た目だけでなく、対象形状との関連付けや意味情報が保持されているかを確認することが重要です。 対策としては、PMIに対応した変換形式を選び、必要なセマンティック情報を明確にしたうえで、変換設定を標準化します。さらに、形状との参照関係、保存ビュー、文字表現を確認し、変換後の受入検査を工程として定着させます。 PMIの受け渡し品質を高めることで、製造側や検査側による再入力を減らし、設計意図の読み違いを防ぎやすくなります。変換作業を単なるファイル保存として扱わず、設計情報を次工程へ正確に伝えるための品質管理として運用することが大切です。 3D CADの情報を製造や検査だけでなく、施工現場や維持管理の業務へつなげたい場合は、三次元データと位置情報を現場で活用する方法も検討できます。設計データを現地確認へ展開する次の選択肢として、LRTK Phoneの活用情報もご確認ください。