3D CADデータをクラウドで共有すると、設計者が別々の場所で作業していても、同じモデルを確認しやすくなります。設計部門だけでなく、製造、調達、品質管理、施工、保守などの担当者も必要な情報へアクセスできるため、データ受け渡しの時間を短縮し、確認作業を進めやすくなる点が大きな利点です。 一方で、共有方法や編集ルールが曖昧なまま運用すると、同じ3D CADデータを複数人が変更し、先に保存された内容が後から別のデータで上書きされる事故が起こります。上書きに気付かないまま設計審査や製造手配へ進むと、形状の不整合、図面との食い違い、部品の手配間違い、現場での組立不能などにつながる可能性があります。 3D CADデータは、一般的な文書ファイルよりも関連構造が複雑です。一つの部品ファイルだけで完結せず、組立データ、図面、参照形状、属性情報、外部リンクなどが相互に関係している場合があります。そのため、単純に過去のファイルを復元すれば元どおりになるとは限りません。 クラウド共有で上書き事故を防ぐには、保存先を統一するだけでなく、誰が編集するのか、編集中であることをどう示すのか、変更履歴をどこまで残すのか、ローカルデータをどう扱うのかを明確にする必要があります。本記事では、3D CADの実務担当者が取り入れやすい5つの対策を中心に、安全なクラウド共有の考え方を解説します。
3D CADのクラウド共有で上書き事故が起こる原因
3D CADのクラウド共有で発生しやすいのは、複数の担当者が同じファイルをそれぞれの端末へ保存し、別々に編集した後で共有領域へ戻すケースです。担当者Aが午前中に変更したデータを登録し、その事実を知らない担当者Bが古いデータを午後に保存すると、担当者Aの変更が失われる可能性があります。 自動同期を利用している場合も注意が必要です。クラウド上のファイルが端末に表示されていても、同期が完了しているとは限りません。通信が不安定な環境では、古い状態のファイルを開いて作業を始めることがあります。その後、通信が回復して同期が再開されると、クラウド上の最新版と端末内の編集済みデータが競合します。 競合が検出されたときに複製ファイルが作られる仕組みもありますが、複製されたから安全とは限りません。担当者が内容を確認せず、更新日時やファイル名だけを見て片方を削除すると、必要な設計変更まで失う恐れがあります。端末の時刻設定や同期の遅延によって、表示される日時が実際の編集順と一致しない場合もあります。 ファイル名による管理にも限界があります。「最新」「最終」「修正版」「確定版」といった名称は、付けた時点では分かりやすく見えます。しかし、複数人が同じ表現を使うと、「最終の修正版」や「最新の確定版」のようなファイルが増え、どれが正式なのか判断できなくなります。 上書き事故は、担当者の不注意だけで起こるものではありません。閲覧だけを行う担当者に編集権限が与えられていた、作業中データと承認済みデータが同じ場所に保存されていた、異動者や退職者の権限が残っていたなど、管理体制の問題が原因になることもあります。 3D CADでは、一つの部品を変更すると複数の組立データに影響する場合があります。部品単体では正しく見えても、組立へ読み込むと干渉が発生したり、拘束条件が解決できなくなったりすることがあります。上書きによって失われるのはファイルの内容だけではなく、関連データ間の整合性や設計意図でもあるのです。 事故を防ぐには、「担当者が注意する」という方針だけでは不十分です。間違えにくい権限設定、同時編集を制限する仕組み、過去の状態を追跡できる版管理、保存場所を迷わせないフォルダ構成などを組み合わせる必要があります。
対策1:編集権限と担当範囲を明確にする
最初の対策は、3D CADデータを編集できる担当者を必要最小限に絞ることです。関係者全員がすべてのファイルを編集できる状態は、柔軟に見える一方で、誤操作が起きやすく、変更者や変更理由の特定も難しくなります。 権限は、閲覧、コメント、登録、編集、承認、削除など、作業内容に応じて分けて考えます。製造担当者が形状や寸法を確認するだけであれば、元の3D CADデータを直接編集できる必要はありません。社外関係者へ確認を依頼する場合も、閲覧やコメントに限定し、正式な設計データへの編集権限を与えない方法が安全です。 設計部門内でも、担当範囲を明確にすることが重要です。装置全体を誰でも編集できる状態にするのではなく、筐体、機構、配管、配線、治具などの単位で責任範囲を分けます。同じ部品へ複数の担当者が関係する場合は、最終的に変更を反映する責任者を決めておきます。 担当範囲が曖昧だと、一人が干渉回避のために形状を変更し、別の担当者が強度確保のために元の寸法へ戻すといった衝突が起こります。どちらの変更にも理由があっても、相手の作業を知らなければ、後から保存した内容だけが残る可能性があります。 権限は個人ごとに設定するだけでなく、役割ごとに整理すると管理しやすくなります。設計担当者、設計承認者、製造確認者、品質確認者、社外閲覧者などの役割を定義し、必要な操作だけを許可します。担当変更があった場合は、個別の設定を一つずつ修正するのではなく、役割への所属を変更することで対応できます。 削除権限は、編集権限と分けて考えることが大切です。形状を変更する担当者であっても、正式なファイルやフォルダを削除する必要があるとは限りません。削除できる人を管理者や責任者に限定すれば、操作ミスによって関連データ一式が失われる危険を減らせます。 一時的に編集権限を付与する場合は、目的と期限を記録します。緊急の修正や応援作業のために付与した権限が、そのまま残ることは珍しくありません。作業終了後に誰が権限を戻すのかまで決めておく必要があります。 プロジェクトの進行中には、権限の定期確認も行います。開始時の担当者と現在の担当者が同じとは限らないためです。異動者、退職者、作業を終えた外部関係者などの権限が残っていないかを確認し、不要なアクセスを停止します。 権限設定の目的は、担当者の作業を妨げることではありません。必要な人が必要な範囲だけを編集でき、変更責任の所在が分かる環境を整えることです。操作範囲を明確にすれば、担当者自身も保存前に確認すべき相手や影響範囲を判断しやすくなります。
対策2:チェックアウトとファイルロックを運用する
二つ目の対策は、編集中の3D CADデータをほかの担当者が同時に更新できないようにすることです。そのために活用できるのが、チェックアウトやファイルロックの仕組みです。 チェックアウトとは、編集を始める担当者が対象データを確保し、作業中であることを共有する運用です。チェックアウト中は、ほかの担当者がデータを閲覧できても、変更を正式に登録できない状態にします。作業が終わったら変更内容を登録し、チェックインして編集権限を解放します。 ファイルロックも、同時保存を防ぐための考え方です。誰かがファイルを開いて編集している間、そのファイルを更新不可にすることで、後から保存したデータが先の変更を消す事故を防ぎます。 ただし、3D CADでは対象ファイルだけをロックすればよいとは限りません。部品ファイルを変更すると、組立データや図面にも影響する可能性があります。部品だけを確保し、関連する組立を別の担当者が同時に変更すると、個別の作業は成立していても、統合時に不整合が生じることがあります。 編集を始める前には、変更対象と影響範囲を確認します。寸法変更が一つの部品だけで完結するのか、組立条件や周辺部品も調整する必要があるのかを判断し、必要な範囲を確保します。影響範囲が広い場合は、関係者へ作業予定を知らせてから編集を開始します。 チェックアウト時には、編集目的も記録すると効果的です。「干渉回避のための寸法変更」「設計審査の指摘対応」「加工方法変更に伴う形状修正」など、作業内容が分かれば、ほかの担当者が待つべきか、別の作業を進めるべきか判断できます。 長時間のロックを放置しない運用も必要です。担当者がチェックアウトしたまま休暇に入ったり、作業を中断したりすると、ほかの担当者が更新できなくなります。一定時間以上ロックが続いた場合に確認する、作業終了時に解除状況を点検するなどのルールを設けます。 管理者による強制解除を認める場合は、手順を明確にしておきます。担当者の端末内に未登録の変更がある状態でロックを解除すると、後から別の編集済みデータが現れ、競合する可能性があります。強制解除の前には、担当者への連絡、ローカルデータの有無、変更内容の確認を行います。 チェックアウト手順が複雑すぎると、担当者が正式な仕組みを避け、ファイルを手元へコピーして編集することがあります。そのため、編集開始時の確保、作業後の登録、ロック解除という流れを簡潔にし、日常作業として無理なく実行できるようにします。 正式な設計データには厳格なロックを適用し、初期検討や形状比較に使用するデータは別の作業領域で扱う方法も有効です。すべてのデータに同じ制限をかけるのではなく、重要度と利用目的に応じて管理方法を分けることで、安全性と作業効率を両立しやすくなります。
対策3:版管理と変更履歴を残す
三つ目の対策は、保存前の状態を追跡できる版管理を行うことです。上書きを完全に防げない場合でも、過去の状態が残っていれば、誤った変更から復旧できる可能性が高まります。 単純な共有フォルダに同じファイル名で保存するだけでは、以前の内容が失われる場合があります。クラウド側に履歴機能があっても、保持期間や復元対象が運用条件に合っているとは限りません。どの程度の期間、何回分の変更が残るのかを事前に確認する必要があります。 版管理では、単に番号を増やすだけでなく、データの状態を明確にします。作業中、確認待ち、修正中、承認済み、発行済み、廃止などの状態を定義し、どのデータを製造や施工に使用できるのかを判断できるようにします。 最も番号が大きいデータが、必ずしも正式に使用できるとは限りません。最新版であっても、設計審査中や未承認であれば、製造手配へ使用すべきではない場合があります。版番号だけでなく、承認状態、承認者、承認日も確認できるようにすることが重要です。 変更履歴には、変更者、変更日時、変更内容、変更理由、影響範囲を記録します。「修正」「更新」「対応済み」といった短い記録だけでは、後から設計意図を確認できません。どの形状や寸法を、何のために変え、どの部品や図面に影響するのかを残します。 履歴の書き方を担当者ごとの判断に任せると、記録の詳しさがばらつきます。変更箇所、変更理由、関連データ、確認結果など、記載項目を決めておくと、必要な情報をそろえやすくなります。 細かな保存をすべて正式な版として扱うと、版の数が増えすぎます。そのため、日常的な保存履歴と、設計上の節目となる正式版を分ける考え方が有効です。作業途中の変更は細かな履歴として残し、設計審査、試作依頼、製造発行などの段階で正式な版を確定します。 過去版を復元するときは、対象ファイルだけを戻さないよう注意します。部品を以前の状態へ戻すと、現在の組立データや図面との間に不整合が生じることがあります。どの時点の部品、組立、図面が組み合わせとして正しかったのかを確認し、必要な範囲をまとめて復元します。 復元操作も、新たな変更として履歴へ残します。過去の版をそのまま正式版へ戻すだけでは、なぜ状態が変わったのか分からなくなります。復元理由、対象データ、確認内容を記録し、復旧後の状態を新しい版として登録します。 版管理は、事故が起きた後の復旧手段にとどまりません。誰が何を変更したかが残る環境では、担当者が保存前に変更内容と影響範囲を意識するようになります。その結果、無意識の上書きや理由の分からない変更を減らす効果も期待できます。
対策4:共有フォルダと命名規則を標準化する
四つ目の対策は、保存場所とファイル名の付け方を統一することです。クラウド上に多数の3D CADデータが保存されていても、正式データの場所が分からなければ、担当者は手元にあるファイルを使って作業を始めてしまいます。 同じ場所に作業中データ、承認済みデータ、受領データ、変換データ、参考データが混在していると、どれを編集すべきか判断しにくくなります。試作検討のために作成したコピーを正式データと間違えて保存し、承認済みの内容を上書きする危険もあります。 共有領域は、データの状態や用途に応じて分けます。作業中、確認中、承認済み、発行済み、受領原本、参考資料などの領域を設け、正式性を見分けられるようにします。 フォルダを分けるだけでなく、データを移動できる担当者も制限します。誰でも承認済みの領域へファイルを移動できる場合、フォルダ名だけでは正式なデータであることを保証できません。承認者や管理責任者だけが正式領域へ登録できる運用が適しています。 作業中のデータと正式データを明確に分けることが特に重要です。正式領域のデータを直接編集するのではなく、編集対象を作業領域へ確保し、変更と確認が終わった後で正式版として登録します。検討途中の形状が誤って製造へ使われるリスクを下げられます。 ファイル名には、部品番号、図面番号、管理番号など、対象を一意に識別できる情報を使用します。「最新」「最終」「確定」「修正版」といった表現は避けます。これらは付けた時点でしか意味を持たず、後から別の変更が加わると混乱の原因になるためです。 日付をファイル名に入れる場合も、日付だけで版を管理しないようにします。同じ日に複数回変更した場合や、過去の日付を含むファイルを後日修正した場合に判断できなくなります。日付は補助情報として使い、正式な識別には管理番号や版番号を用います。 3D CADでは、ファイル名を変更すると参照関係が切れる可能性があります。組立データが部品名を参照している場合、担当者が任意に名前を変更すると、部品を読み込めなくなることがあります。名称変更が必要なときは、参照関係を維持できる方法で行い、変更後に組立や図面を開いて確認します。 フォルダ階層を深くしすぎることにも注意します。保存場所を見つけるまでに多くの階層を移動する必要があると、担当者が端末内にコピーを作り、そのまま作業を続ける原因になります。プロジェクト、装置、データ状態など、必要な分類に絞り、誰が見ても同じ場所へ到達できる構成にします。 自動保存ファイルや一時ファイルの扱いも決めておきます。正式データと同じ場所へ一時ファイルが作られると、誤って開いたり、不要なデータを正式版と判断したりする可能性があります。一時データは専用領域へ保存し、一定期間後に整理します。 社外から受領したデータは、原本を変更せずに保管します。受領したファイルを直接編集すると、元の状態を確認できなくなります。原本を保管したうえで社内作業用のコピーを作り、変換や修正の履歴を残すことが大切です。
対策5:同期方法とローカル保存のルールを決める
五つ目の対策は、クラウドと端末間の同期方法を統一し、ローカル保存の扱いを明確にすることです。3D CADデータは容量が大きくなりやすく、通信環境によって同期に時間がかかる場合があります。 クラウド上のデータが端末に表示されていても、最新版の取得が完了しているとは限りません。同期中、通信停止中、競合処理中といった状態を確認せずに開くと、古いデータを編集する可能性があります。 作業開始前には、対象データの同期が完了しているかを確認します。更新日時だけでなく、版番号や承認状態も確認し、正式な最新版であることを確かめてから編集を始めます。 作業終了後も、端末へ保存しただけで完了と判断してはいけません。クラウドへの登録が完了し、ほかの担当者からも変更後のデータを参照できる状態になったことを確認します。端末内だけに変更が残ると、別の担当者が古いクラウドデータを編集し、後から競合が起こります。 通信が不安定な現場や移動中に編集する場合は、オフライン作業のルールが必要です。誰がどのデータを持ち出し、いつから編集しているのかを共有し、その間はほかの担当者が同じ対象を変更しないようにします。 オンラインへ戻ったときは、直ちに端末内のデータを上書き登録するのではなく、クラウド側に新しい変更がないかを確認します。別の変更が存在する場合は、内容を比較して統合方法を決めます。 ローカルコピーを全面的に禁止すると、通信障害時に作業できないことがあります。一方で、自由なコピーを認めると、複数の端末に異なる最新版が存在する状態になります。ローカル保存を許可する対象、保存期間、保存場所、作業終了後の削除方法を定めることが重要です。 個人のデスクトップや任意のフォルダに保存すると、本人以外がデータの存在を把握できません。担当者が不在になった場合や端末を交換した場合に、作業途中の変更を回収できない可能性があります。ローカル作業が必要なときも、組織が管理する作業領域を使用します。 クラウド上のファイルを直接開く方法と、端末へ同期して編集する方法を担当者ごとに使い分けると、更新の反映タイミングがばらつきます。プロジェクト内では基本となる編集方法を決め、例外的な方法を使う場合は関係者へ知らせます。 同期競合によって複製されたデータは、内容を確認するまで削除しません。形状だけでなく、寸法拘束、属性、材質、注記、参照設定などを比較し、双方の変更内容を把握します。見た目が同じでも、内部情報が異なる場合があります。 大規模な組立データでは、すべての関連ファイルを常時同期すると負荷が高くなることがあります。担当範囲に必要なデータだけを取得する場合は、どの部品や参照データを一つのまとまりとして扱うかを定義し、不足による参照切れを防ぎます。 同期方法を決めたら、実際に作業する通信環境で確認します。社内では問題なくても、現場、出張先、在宅環境では通信速度や安定性が異なります。想定環境で同期時間や競合時の動作を確認し、障害時の対応を手順化します。
部品・組立・図面の関連性を保つ管理方法
3D CADの上書き対策では、単一のファイルだけを管理しても十分ではありません。部品、組立、図面、参照形状、材質情報、属性情報などを、関連するデータのまとまりとして管理する必要があります。 組立データは、複数の部品ファイルを参照して構成されます。組立ファイルだけが最新版でも、参照先の部品が古ければ、意図した形状を再現できません。反対に、一つの部品だけを新しい状態へ更新すると、その部品を使用している別の組立にも影響が及ぶ場合があります。 編集前には、対象部品がどの組立や図面で使用されているかを確認します。共通部品を変更する場合は、担当している装置だけでなく、ほかの製品や設備への影響も調べる必要があります。 外部参照が個人端末のフォルダを指していると、別の担当者の環境で正しく開けません。参照先は共通の管理領域へ統一し、必要な関連データを一式で取得できる状態にします。 図面との整合性も重要です。3Dモデルを更新した後に図面が古いままだと、製造担当者が変更前の寸法や注記を参照する可能性があります。モデル、図面、部品情報を別々に確定するのではなく、関連性を確認してから正式版として発行します。 同じ時点で確定したデータの組み合わせを記録しておくと、過去の設計状態を再現しやすくなります。ある組立が、どの版の部品と図面で構成されていたかを追跡できれば、復旧や設計変更の確認にも役立ちます。 参照切れや欠落部品の警告が出た状態で保存すると、不完全なデータが正式版として登録される恐れがあります。保存前には、未解決の参照、重複した参照、意図しない部品の置換がないかを確認します。 共有相手が元の3D CADデータを開けない場合は、参照用に変換したデータを用意することがあります。この場合は、変換後のデータを元データと同じものとして扱わないようにします。変換元の版、変換日時、用途を記録し、どの正式版から作成されたかを明確にします。
社外関係者と3D CADデータを共有するときの注意点
取引先、協力会社、施工会社などと3D CADデータを共有する場合は、社内共有よりも慎重な権限管理が必要です。社内の作業領域をそのまま公開すると、共有対象外のデータまで閲覧されたり、正式データを直接変更されたりする可能性があります。 社外共有用の領域を分け、必要なデータだけを登録します。確認だけが目的であれば、閲覧やコメントに限定し、元データへの編集権限は与えません。 修正データを外部から受け取る場合も、正式領域へ直接保存させないことが重要です。受領専用の領域を設け、社内担当者が変更内容、参照関係、属性情報などを確認してから正式版へ反映します。 共有期限も設定します。案件終了後も外部からアクセスできる状態が続くと、誤操作や情報管理上の問題につながります。共有開始日、終了予定日、延長の承認方法を決めておきます。 外部へ渡すデータには、設計上不要な情報が含まれていないかを確認します。非表示にしている部品や属性であっても、元データには残っている場合があります。共有目的に必要な範囲へ整理してから登録します。 社外関係者が独自にファイル名を変更すると、社内へ戻したときに参照関係や版の対応が分からなくなる可能性があります。受け渡し時の命名規則、変更内容の記録方法、返却先を事前に共有します。 メールなどで個別に添付して受け渡すと、クラウド上の正式版とは別に複数のコピーが残ります。可能な範囲で共有場所を一つに統一し、どこにあるデータを正式な確認対象とするかを明確にします。
上書き事故が発生したときの復旧手順
対策を整えても、上書き事故を完全になくすことは困難です。重要なのは、事故に気付いた直後に被害の拡大を止め、正しい状態を確認できる手順を用意しておくことです。 上書きに気付いたら、まず対象データの編集と同期を停止します。関係者が誤った状態を基に作業を続けると、復旧がさらに複雑になります。対象ファイルだけでなく、関連する組立や図面の更新も一時的に止めます。 次に、事故が発生した時刻、操作した担当者、対象ファイル、直前の作業内容を確認します。クラウド上の変更履歴、端末内の作業データ、自動保存データなどを調べ、どの時点まで正しい状態だったのかを特定します。 現在のデータを削除したり、別のファイルで上書きしたりする前に、事故発生後の状態を退避します。誤ったデータであっても、変更内容を比較するための重要な情報になります。 復元候補は、正式領域へ直接戻さず、別の確認用領域に展開します。元の環境を残したまま、形状、寸法、拘束、属性、参照関係などを確認します。 複数人の変更が競合している場合は、新しい方を単純に採用しません。それぞれの変更理由を確認し、必要な内容を統合します。更新日時だけを基準にすると、重要な変更を失う可能性があります。 復旧後のデータは、過去版をそのまま正式版に置き換えるのではなく、復旧作業を反映した新しい版として登録します。復旧理由、確認範囲、再確認が必要な事項を履歴へ残します。 事故後には、個人の操作ミスだけで終わらせず、仕組みや運用の問題を確認します。編集権限が広すぎなかったか、チェックアウトが使われていたか、正式データの場所が分かりやすかったか、同期完了を確認できたかを振り返ります。 注意喚起だけでは、繁忙時や担当者交代時に同じ事故が再発します。権限の見直し、保存場所の整理、ロック機能の適用、通知の追加など、原因に対応した具体的な改善を行います。
クラウド共有を継続できる運用へ改善する
安全なクラウド共有を定着させるには、担当者が日常的に実行できる手順へ落とし込む必要があります。複雑で時間のかかるルールを作っても、実務で省略されれば事故防止にはつながりません。 作業開始から終了までの標準的な流れを決めます。最新版と同期状態を確認し、編集対象を確保し、変更目的を記録して作業を始めます。作業後は関連データとの整合性を確認し、変更履歴を記録して登録し、ロックを解除します。 手順書には操作方法だけでなく、その確認を行う理由も記載します。なぜチェックアウトが必要なのか、なぜ正式領域を直接編集してはいけないのかを理解できれば、担当者が状況に応じて適切に判断しやすくなります。 新しい担当者が参加したときは、実際のデータを使って教育します。正式な保存場所、編集開始の手順、競合が起きた場合の連絡先などを実務に沿って確認します。 運用開始後は、実際の上書き事故だけでなく、その前兆も記録します。競合ファイルが頻繁に作られる、ロック解除の依頼が多い、正式データが見つからないという問い合わせが続く場合は、運用が合っていない可能性があります。 担当者の入力負担も確認します。変更者や日時など、自動的に取得できる情報まで手入力させると、記録漏れが起こりやすくなります。自動化できる情報は自動で残し、担当者には変更理由や影響範囲など、判断が必要な内容を入力してもらいます。 完了したプロジェクトは、作業中の領域から保管領域へ移します。編集を制限し、必要に応じて閲覧専用にすることで、過去の正式データが誤って更新されるのを防ぎます。 運用ルールは、プロジェクトの規模に応じて調整します。少人数の設計と、多数の部門や社外関係者が参加する案件では、必要な承認段階や権限の細かさが異なります。 ただし、正式データを一つに定めること、同時編集を制御すること、変更履歴を残すこと、ローカルコピーを管理することという基本は共通です。これらを維持したうえで、業務に合った手順へ改善します。
まとめ
3D CADのクラウド共有は、設計データの受け渡しを効率化し、複数部門や離れた拠点の連携を進めるために有効です。しかし、保存場所をクラウドへ移しただけでは、上書き事故や最新版の取り違えを防ぐことはできません。 上書き事故を防ぐには、編集権限と担当範囲を明確にし、必要な担当者だけがデータを変更できる状態にすることが第一歩です。チェックアウトやファイルロックを使って同時編集を制御し、誰が編集中なのかを共有する必要もあります。 版管理と変更履歴を整えれば、誤った変更が起きた場合でも過去の状態を確認しやすくなります。版番号だけでなく、承認状態、変更理由、影響範囲まで記録することが重要です。 共有フォルダと命名規則を標準化し、作業中データ、承認済みデータ、受領原本などを分けることで、担当者が正しいファイルを選びやすくなります。同期方法やローカル保存のルールも決め、端末ごとに異なる最新版が残る状態を防ぎます。 3D CADでは、部品、組立、図面、属性情報などが相互に関連します。一つのファイルだけを守るのではなく、設計成果物全体の整合性を保つ管理が必要です。 クラウド共有の安全性は、機能の有無だけで決まりません。担当者が無理なく守れる手順を整え、競合や権限の問題を定期的に見直すことで、上書き事故を継続的に減らせます。 設計データと現場で取得した位置情報や記録を結び付ける場合は、現場側のデータについても保存先、更新履歴、共有範囲を統一することが大切です。3D CADと現場情報を円滑に連携させたい場合は、LRTK Phoneを活用した記録と共有の方法も確認してみてください。