LRTKレフィクシア株式会社

3D CADでOリングの漏れを防ぐ5つの溝寸法チェック

Oリング溝設計を3D CADで確認する理由

Oリングは構造が単純に見えるため、部品表で呼び寸法を指定し、相手部品に環状の溝を設ければ機能すると考えられがちです。しかし、実際の密封性能はOリング単体では決まりません。Oリングの内径と断面径、溝深さ、溝幅、溝径、相手部品とのすきま、圧力方向、材質、硬度、温度、流体、組立方法、公差の重なりが一つのシール系として働きます。どれか一つが適正でも、別の条件が許容範囲を外れていれば、初期漏れ、経時漏れ、押し出し、ねじれ、切れ、摩耗などにつながる可能性があります。

特に注意したいのは、図面上の公称寸法だけでは、Oリングが実際にどの程度変形するかを判断しにくい点です。溝深さが適正に見えても、軸径や穴径の公差を含めると、最小つぶし率と最大つぶし率の差が大きくなる場合があります。溝幅に余裕があるように見えても、Oリングの断面公差、流体による膨潤、温度変化、装着時の伸びを重ねると、溝の空き容積が不足することがあります。反対に、溝幅を必要以上に広げると、用途によってはOリングの姿勢が安定しにくくなり、動作時の転がりやねじれを招くことがあります。

3D CADを使う利点は、環状溝を立体化できることだけではありません。断面を切って溝の高さと幅を確認し、パラメータからつぶし率や充填率を計算し、公差の組み合わせを変えて最小条件と最大条件を比較できます。さらに、溝入口の面取り、段差、ねじ山、横穴、分割面など、組立時にOリングを傷つける形状も同じモデル上で確認できます。2次元図面で寸法を個別に追うより、部品間の関係と組立経路を把握しやすいことが大きな利点です。

ただし、一般的な3D CADの干渉チェックだけで漏れの有無を判定することはできません。Oリングを剛体のように配置して干渉量を測っても、ゴムの大変形、材料の非線形性、摩擦、接触圧、温度や流体による物性変化までは自動的に再現されません。設計者が用途に応じた規格や供給元の設計資料を選び、モデルから取得した寸法を計算へ反映し、必要に応じて解析や試験で確認する必要があります。

Oリングとハウジングに関する規格や技術資料には、内径、断面径、公差、呼び方、用途別の溝寸法などが整理されています。しかし、すべての圧力、温度、流体、動作速度、寿命要求を一つの共通値で保証するものではありません。規格に適合する寸法であっても、材料との適合性、部品の剛性、圧力変動、製造方法が異なれば追加検証が必要です。使用するOリングの最新版の寸法表と技術資料を基準にし、3D CADで実際の構造へ落とし込む姿勢が重要です。

Oリング溝には、端面で挟む面シール、軸と穴の間を半径方向に密封するラジアルシール、往復運動を伴う動的シールなどがあります。同じ断面径のOリングでも、必要なつぶし、溝の配置、圧力を受ける方向、許容すきまは同じではありません。最初にシール形式を決めず、過去の溝寸法だけを流用すると、以前は成立していた寸法が新しい構造では不適切になることがあります。3D CADで溝を作成する前に、静止部か可動部か、圧力がどちら側から作用するか、組立時にOリングがどの形状を通過するかを明確にしておく必要があります。

チェック1:溝深さとつぶし率が用途に合っているか

最初に確認するのは、Oリングの断面径に対して密封高さが適切かどうかです。Oリングは、溝へ入れるだけではなく、相手面との間で所定量つぶされることで初期接触を得ます。無加圧時のつぶしが不足すると、圧力が立ち上がる前の密封が不安定になることがあります。一方、つぶしが過大になると、組立荷重や摩擦の増加、発熱、摩耗、永久変形、表面損傷などを招く可能性があります。

つぶし率は、基本的にはOリングの自由状態の断面径に対して、組付け後に減少した高さの割合として考えます。自由状態の断面径をd、組付け後にOリングが収まる機能上の高さをhとすれば、概念上のつぶし率は(d−h)÷d×100で表せます。ただし、面シールでは溝底から相手面までの距離がhとなり、ラジアルシールでは軸径、穴径、溝底径の関係から半径方向の高さを求めます。直径差をそのまま高さとして使うと値が二倍になるため、3D CAD上で測定方向と計算式を固定しておくことが重要です。

静的シールと動的シールでは、推奨されるつぶしの考え方が異なります。一般に動的用途では、摩擦、発熱、摩耗を抑えるため、静的用途より小さなつぶしが選ばれる傾向があります。ただし、許容範囲は断面径、シール形式、材料、硬度、圧力、温度、潤滑、速度などによって変わります。数値を一律の社内ルールとして固定せず、採用するOリングの技術資料に示された用途別の設計範囲へ、3D CADの実寸法を照合します。

3D CADで公称寸法だけを測って終わらせると、つぶし率の上下限を見逃します。Oリングの断面径には製造公差があり、溝深さ、軸径、穴径、合わせ面位置にもばらつきがあります。最小断面径と最大密封高さが重なる条件では、つぶし率が最小になります。反対に、最大断面径と最小密封高さが重なる条件では、つぶし率が最大になります。この二つを別々に計算し、いずれも採用資料の許容範囲に入るかを確認する必要があります。

実務では、Oリング断面径、溝深さ、軸径、穴径を名称付きのパラメータとして管理すると確認しやすくなります。公称状態のほかに、最小つぶし条件と最大つぶし条件の構成を作り、設計表や寸法変数で切り替えられるようにすると、設計変更後の再確認が容易です。断面ビューには測定方向、圧力方向、高圧側、低圧側を表示し、レビュー時に直径と半径を取り違えないようにします。

面シールでは、溝寸法だけでなく、締結による合わせ面の変形も確認します。公称状態でつぶしが適切でも、締結間隔が広い、カバーが薄い、圧力を受ける面積が大きいといった条件が重なると、加圧時に合わせ面が局所的に開く可能性があります。3D CADで締結点、溝位置、支持幅、板厚を確認し、影響が無視できない場合は構造解析や実機試験で密封高さの変化を検証します。

チェック2:溝幅と充填率に余裕があるか

二つ目は、溝幅と充填率の確認です。エラストマーは一般に体積変化が小さいため、Oリングをつぶすと断面が横方向へ広がります。溝幅や容積が不足すると、温度上昇や流体による膨潤が重なったときに逃げ場が少なくなり、摩擦、かじり、過大な組立荷重、合わせ面への負荷などにつながる可能性があります。反対に、溝幅を広げすぎると、動的用途ではOリングが溝内で移動し、転がりやねじれが起きやすくなる場合があります。

充填率は、Oリングが占める体積を、溝の有効体積で割って評価するのが基本です。円形で断面が一定であり、Oリングと溝の周長差が小さい場合は断面積比で概算できます。しかし、Oリングが周方向に伸びる場合、面シールで内径側または外径側へ寄る場合、非円形の経路を使う場合は、断面積比だけでは誤差が生じます。3D CADで実際の溝体積を取得し、装着後のOリング体積を周長変化も考慮して計算すると、評価の根拠が明確になります。

溝底Rや面取りが大きい場合、溝を単純な長方形として扱うと、実際より有効容積を大きく見積もることがあります。とくに断面径が小さいOリングでは、同じR寸法でも溝断面に占める割合が大きくなります。3D CADモデルへ実加工に近いRや面取りを反映し、理想形状ではなく完成形状から体積を取得します。

一部の設計資料では、常温の公称状態で溝に一定の空き容積を残す考え方や、充填率が高い領域では膨潤と熱膨張に注意する考え方が示されています。ただし、適切な充填率は、静的か動的か、液体か気体か、真空か、温度範囲はどの程度か、材料が流体でどれだけ体積変化するかによって異なります。特定の割合をすべての用途へ当てはめず、採用する材料と用途に対応した設計資料を優先します。

3D CADで充填率を確認するときは、公称値だけでなく、最大充填となる条件も作ります。最大断面径、最小溝幅、最小溝深さ、想定する膨潤、温度による寸法変化を組み合わせ、空き容積が確保されるかを確認します。すべての限界が同時に起こる想定は保守的ですが、まず限界状態を把握しておくことで、どの公差や使用条件が結果へ強く影響するかを判断できます。

補助リングを併用する場合は、その体積と配置を含めて溝幅を決めます。圧力が一方向から作用する構造と、両方向から作用する構造では、必要な補助リングの配置が異なることがあります。3D CAD上でOリングと補助リングを別部品として配置し、最小溝幅条件でも重なりがないか、最大溝幅条件で過大な移動余地が生じないかを確認します。補助リングの追加後に、Oリング単体で計算した古い充填率が残らないように注意します。

溝幅の寸法基準も重要です。片側面を基準に加工するのか、中心振り分けで加工するのかによって、低圧側の溝肩位置とシールすきまの関係が変わります。Oリングは加圧されると低圧側へ移動するため、低圧側の支持形状が機能に影響します。3D CADでは溝中心だけでなく、圧力側と低圧側の各側面を個別に寸法管理し、加工基準からの位置を確認します。

チェック3:溝径とOリングの伸び・圧縮が適正か

三つ目は、溝径とOリングの内径または外径の関係です。Oリングは環状であるため、溝へ装着すると周方向に伸びたり、外径側から圧縮されたりします。断面径と溝深さが適切でも、周方向の変形が大きすぎると、断面が細くなる、溝内でたるむ、組立中にねじれるといった問題が起こる可能性があります。周方向の変形は、つぶし率と充填率の計算にも影響します。

軸側の溝へOリングを装着する構造では、自由状態の内径が溝底径より小さければ、装着時にOリングは伸ばされます。適度な伸びは溝内での保持に役立ちますが、伸びが増えると断面径が減少するため、公称断面径をそのまま使ったつぶし率は実際より大きく見えることがあります。採用資料の許容伸びと断面補正の考え方を確認し、溝底径だけを変更した場合にも再計算します。

穴側の溝へ装着する構造では、Oリングを縮径させて入れる場合があります。周方向の圧縮が過大になると、余った長さが局所的なたるみや波打ちとなり、組立時の噛み込みや不均一な接触につながる可能性があります。自由外径と溝側の支持径を比較し、供給元が示す許容範囲から外れないようにします。

伸び率を確認するときは、自由状態のOリング内径と、装着される溝底径の比を使うのが基本です。円形以外の溝では、単一の直径だけでは評価できないため、溝の基準経路長とOリングの自由状態の中心線周長を比較します。真円度、偏心、合わせ面の段差がある場合は、平均的な伸びだけでなく、局所的なつぶしの偏りも確認します。

面シールでは、内圧を密封するのか外圧を密封するのかによって、加圧時にOリングが寄る方向が変わります。溝径を決める際には、組立時にOリングが安定することに加え、加圧時に適切な溝肩へ支持されることを確認します。圧力方向と支持側が曖昧なまま溝径を決めると、Oリングが溝内を移動し、局所的な密封状態が変化するおそれがあります。

3D CADでは、自由状態モデルと装着状態の参考モデルを分けて管理すると便利です。自由状態モデルは部品表や受入寸法の基準に使い、装着状態の参考モデルは溝内の位置、組立干渉、圧力方向の確認に使います。ただし、装着状態を単純な拡大縮小で表現しても、体積一定に近い変形や接触圧を正確には再現できません。装着状態モデルは視覚確認用とし、設計判定は計算式、材料データ、規格、試験結果で行います。

シリーズ設計では、同じ溝断面を呼び径の異なる部品へコピーするだけでなく、Oリング内径と溝底径の関係を自動計算します。設計表に自由内径、溝底径、装着伸び率、補正後の断面径、つぶし率、充填率を持たせると、サイズ展開時の流用ミスを減らせます。

チェック4:シールすきまと押し出しリスクを抑えられているか

四つ目は、Oリングの低圧側にあるシールすきまです。圧力が加わると、Oリングは低圧側へ移動し、軸と穴のすきま、合わせ面の開き、部品分割部などへ押し込まれようとします。すきまが大きい状態で圧力が作用すると、Oリングの一部がはみ出し、圧力の繰り返しによって表面が削られたり切れたりする可能性があります。漏れが発生したときに溝深さだけを変更しても、押し出しの原因となるすきまが残れば再発するおそれがあります。

許容できるすきまは、圧力だけでは決まりません。材料、硬度、断面径、温度、圧力変動、流体、保持時間、可動速度、偏心量、摩耗量などが関係します。温度によって材料特性が変わる場合や、偏心によって片側のすきまだけが広がる場合は、局所的な押し出しリスクが高まります。大きな圧力やすきまが避けられない場合は、補助リング、材料や硬度の見直し、支持長の確保、部品剛性の向上などを検討します。

3D CADで確認すべき寸法は、軸径と穴径の公称差だけではありません。軸の最小径と穴の最大径を組み合わせた最大直径すきまを求め、必要に応じて片側すきまへ換算します。さらに、同軸度、位置度、振れ、軸受すきま、荷重によるたわみを考慮すると、実機で生じ得る最大局所すきまを把握しやすくなります。公称状態で左右均等に見えるすきまでも、偏心時には片側が閉じ、反対側が大きく開きます。

面シールでは、合わせ面の分離量が押し出しすきまとなります。ボルト間隔、板厚、圧力を受ける面積、材料剛性によって局所的な開きが生じるため、ボルト本数だけでは判断できません。3D CAD上でOリング溝から締結部までの距離、内外の支持幅、カバー厚さを確認します。影響が大きい場合は、圧力荷重と締結条件を考慮した解析や試験で合わせ面の開きを確認します。

補助リングは、一般にOリングが押し出される低圧側へ配置します。圧力方向が反転する構造では、両側への配置が必要になる場合があります。ただし、必要性や配置は圧力、すきま、材料、温度、運動条件によって変わるため、補助リング製品の設計資料を確認します。3D CADでは補助リングの厚さ、切れ目、向き、溝内での位置、組立順序を確認し、追加後の溝容積とOリングの移動余地を再計算します。

押し出し対策では、すきまを小さくするだけでなく、機構の作動性と製造可能性を両立させます。すきまを詰めすぎると、熱膨張、汚れ、変形、加工ばらつきによって金属同士が接触するおそれがあります。3D CADの限界構成を使い、最低温度と最高温度、無荷重と最大荷重、組立直後と摩耗後を分けて確認します。シール性能だけを優先して運動部の必要なクリアランスを失わないよう、機構全体で判断します。

チェック5:溝底R・面取り・公差を一体で確認できているか

五つ目は、溝底R、溝肩、面取り、挿入部、寸法公差を一体で確認することです。溝幅と深さが適切でも、Oリングが通過する角部に鋭いエッジやばりがあると、組立時に表面を傷つける可能性があります。反対に、溝底Rが大きすぎると有効な溝容積が減り、Oリングが角部へ乗り上げて局所的なつぶしが増えることがあります。角部形状は小さな要素に見えますが、密封面の連続性と組立品質に直接関係します。

溝底Rは、加工工具の都合だけで決めるのではなく、採用するOリングの断面径、溝容積、支持形状と合わせて決めます。3D CADで理想的な直角溝を作り、図面注記だけでRを追加すると、モデルから取得した体積と実加工形状が一致しません。充填率を3D CADで計算する場合は、実際に加工するRをモデルへ反映し、溝断面積または体積を再取得します。

Oリングが通過する入口には、用途と組立方法に合った面取りや丸みを設けます。軸端、穴入口、横穴、キー溝、止め輪溝、ねじ部、鋭い分割面などは、装着時にOリングを切ったり削ったりする原因になります。最終組付け位置だけを表示していると通過経路の危険形状を見落とすため、3D CAD上で組立途中の位置を作り、Oリングがどのエッジを越えるかを確認します。

面取りは大きければよいわけではありません。面取りを広げすぎると、シールに必要な支持長が減り、Oリングが安定して支持される位置までの移動距離が長くなります。薄肉部では、面取りによって溝肩の強度が不足することもあります。挿入方向、相手部品の公差、組立治具、潤滑、必要な支持面を考慮し、採用資料の入口形状と照合して寸法を決めます。

公差の確認では、個々の寸法公差だけでなく、基準の取り方を見ます。溝深さを外径からの差で管理するのか、溝底径を直接管理するのかによって、つぶし率のばらつきは変わります。複数の直径寸法を連鎖させると、公差が積み上がりやすくなります。機能上重要な溝高さや溝底径を直接管理できる場合は、加工方法と測定方法を確認したうえで、機能寸法として明確に指示します。

3D CADでは、寸法公差、幾何公差、表面性状の情報を、該当する形状と関連付けます。Oリングが接触する面では、傷、段差、ばり、パーティングライン、連続した工具目などが漏れ経路にならないようにします。必要な仕上げは、静的か動的か、気体か液体か、圧力差、材料、速度によって異なるため、表面粗さの数値だけを別設計から流用しないことが重要です。円周方向へ連続する傷や、密封方向を横切る加工目の有無も確認します。

表面処理やめっきがある場合は、処理後の寸法を基準に評価します。溝底や相手径に処理膜が付けば、つぶし率、充填率、シールすきまが変わります。膜厚の公差やマスキング範囲が機能寸法へ与える影響を3D CADの限界構成へ反映し、処理前寸法だけで判定しないようにします。

3D CADで行うOリング溝寸法の確認手順

Oリング溝を効率よく確認するには、設計の最後にまとめて見るのではなく、シール条件の定義、基準寸法の設定、限界条件の確認、組立経路の確認、製造情報の付与という順序で進めます。最初に、静的か動的か、面シールかラジアルシールか、圧力方向、最高圧力、温度範囲、流体、期待寿命、分解頻度を設計条件として記録します。ここが曖昧なままでは、同じ溝寸法でも良否を判断できません。

次に、採用するOリングの規格または供給元、呼び寸法、自由内径、断面径、各公差、材質、硬度を確定します。3D CADのモデル名には呼び名だけでなく、識別できる寸法情報や品目番号を持たせると取り違えを減らせます。外観が似たOリングを同じフォルダへ保存していると、内径または断面径がわずかに異なる部品を誤配置することがあります。部品属性には材質、硬度、適用流体、使用温度の確認状況も登録します。

その後、溝深さ、溝幅、溝径、入口面取り、溝底R、シールすきまをパラメータとして作成します。断面ビューを標準表示として保存し、Oリング断面と相手面の関係を一画面で確認できるようにします。面シールでは溝底から相手面までの距離、ラジアルシールでは溝底径と相手径を同じ断面へ表示します。圧力方向の矢印と高圧側、低圧側の注記も付けます。

計算では、公称つぶし率、公称充填率、公称伸び率に加え、最小値と最大値を求めます。公差解析用の構成を作り、寸法を切り替えると結果が更新されるようにすると便利です。外部計算シートを使う場合でも、3D CADモデルの寸法名と計算項目名を一致させ、設計変更時に古い値が残らない仕組みにします。手作業の転記だけに頼ると、モデルと計算書の不一致が起きやすくなります。

次に、組立経路を確認します。Oリングが軸端を越える、穴へ押し込まれる、ねじ部を通過する、分割ハウジングへ載せられるなど、実際の順序を3D CAD上で再現します。最終位置で干渉がなくても、途中のエッジ、ばり、横穴、段差で損傷することがあります。組立治具や保護スリーブを使う場合は簡易モデルとして配置し、局所的な過伸長や噛み込みが生じないかを確認します。

最後に、設計レビュー用の断面図と検査項目を作ります。溝深さ、溝幅、溝底径、相手径、面取り、R、表面性状、同軸度など、密封性能に影響する項目を明確にします。加工後に測定できない寸法を重要管理項目へ指定しても品質保証は難しいため、測定器、測定姿勢、基準面、演算方法まで想定します。必要であれば、測定しやすい基準面や逃げ形状を設けます。

漏れにつながる設計ミスと修正の考え方

よくあるミスの一つは、過去の溝断面をそのままコピーし、Oリングの呼び径だけを変更することです。断面径が同じでも、溝径が変われば伸び率が変わり、周方向の変形によって実効断面や充填率が変化します。修正するときは、コピー元と新規設計のシール形式、圧力方向、温度、流体、動作条件を比較し、異なる項目があれば再計算します。

二つ目は、溝深さだけでつぶし率を決め、相手部品の寸法と公差を含めないことです。ラジアルシールでは軸径、穴径、溝底径の組み合わせが密封高さを決め、面シールでは溝底から相手面までの距離が密封高さを決めます。修正では、機能上の高さを一つの寸法関係として定義し、最小つぶしと最大つぶしを計算します。公差が大きすぎる場合は、溝深さだけを変えるのではなく、基準面や加工工程も見直します。

三つ目は、公称充填率が適正だから問題ないと判断することです。最大断面径、最小溝容積、温度変化、膨潤を考慮すると、空き容積が不足する場合があります。修正では、最大充填条件を計算し、必要に応じて溝寸法、材料、温度条件を見直します。ただし、動的用途で溝幅をむやみに広げるとねじれや移動が増える可能性があるため、潤滑、作動速度、保持方法も同時に確認します。

四つ目は、最大圧力だけを見て、圧力の立ち上がり、脈動、反転を考慮しないことです。圧力変動があると、Oリングが溝内を移動し、低圧側のすきまへ押し出される動作を繰り返すことがあります。修正では、最大局所すきま、圧力方向、支持面、補助リングの必要性を確認します。両方向から圧力を受ける場合は、一方向用の配置をそのまま流用しないようにします。

五つ目は、3D CADモデルを理想形状のままにし、加工R、面取り、抜き勾配、表面処理厚さを注記だけで済ませることです。実加工形状がモデルと異なると、モデルから求めた溝容積やすきまも実物と一致しません。修正では、機能に影響する加工形状をモデルへ反映し、処理後寸法を含めて再計算します。

漏れが発生した場合は、Oリングだけを交換して原因が解消したと判断しないことが大切です。取り外したOリングの損傷位置、つぶれ方、切れ、摩耗、膨潤、ねじれを観察し、3D CAD上の圧力方向、溝肩、分割面、最大すきまと照合します。円周全体で均一な変形と、局所的な傷や欠けでは、疑うべき原因が異なります。現物の損傷位置をモデルへ記録すると、設計変更と再発防止の根拠を残せます。

製造・組立・検査までつながる3D CADデータの整え方

Oリング溝の設計品質を高めるには、設計者だけが理解できるモデルではなく、加工、組立、検査、保守の担当者が同じ意図を読み取れる3D CADデータにする必要があります。モデルには、Oリングの品目属性、材質、硬度、断面径、圧力方向、シール形式を関連付けます。図面を併用する場合も、モデルと図面で溝寸法、部品番号、改訂が一致していることを確認します。

加工向けには、溝幅、溝深さ、溝底径、R、面取り、表面性状、基準面を明確にします。工具の進入方向や加工可能な最小Rを確認し、設計上の理想形状と現場で実現できる形状の差を早い段階で解消します。旋削溝では工具幅と底R、フライス加工では工具径と逃げ、成形品では抜き勾配や型の分割位置が影響します。加工方法を想定した形状へ3D CADモデルを整えることで、製造段階の解釈違いを減らせます。

組立向けには、Oリングの装着方向、潤滑の要否、ねじれ防止、通過するエッジ、治具の使用、再使用の可否を整理します。Oリングが見えない状態で部品を挿入する構造では、噛み込みを目視しにくいため、工程内で確認できる方法も検討します。3D CADの分解表示や組立途中の構成を作り、どの段階でOリングを装着し、どのエッジを保護するかを共有します。

検査向けには、密封性能へ影響する寸法を優先順位付きで管理します。すべての寸法を同じ厳しさで検査するのではなく、つぶし率、充填率、押し出しすきまを決める機能寸法を特定します。溝深さを直接測れない場合は、測定可能な径から算出する方法と測定不確かさを定めます。測定結果を公差解析へ戻せるようにしておけば、量産データから実際のつぶし率分布を評価できます。

保守向けには、交換するOリングの識別を確実にします。似た寸法の部品を誤使用すると、組み付け自体はできても、つぶし率や伸び率が不足または過大になることがあります。整備資料には自由状態の内径、断面径、材質、装着位置、交換時の注意点を示します。3D CADから断面図を作成し、どの溝へどのOリングを入れるかを視覚的に示すと、現場での取り違えを減らせます。

既存設備を現地確認する場合は、周辺構造、部品の取り外し方向、作業空間、設備位置を写真や3D記録で残すと、設計検討に役立ちます。ただし、Oリング溝の幅、深さ、R、表面状態の判定には、要求精度に合った接触式測定器、輪郭測定器、画像測定器、三次元測定機などを使う必要があります。広い設備周辺の位置関係や設置状況を記録する用途ではLRTK Phoneを補助的に活用できますが、Oリング溝の精密寸法を取得する測定器の代替として扱わないことが重要です。

まとめ

3D CADでOリングの漏れを防ぐには、溝を作成してOリングを配置するだけでは不十分です。第一に、溝深さと相手寸法から最小・最大つぶし率を確認します。第二に、溝幅と実形状の容積から充填率を求め、温度変化や膨潤を受け入れる空き容積を確認します。第三に、溝径とOリング内径または外径の関係から、周方向の伸びや圧縮を確認します。第四に、圧力方向と最大局所すきまを見て、押し出しリスクを評価します。第五に、溝底R、面取り、組立経路、公差、表面状態を一体で確認します。

この五つは独立した項目ではなく、互いに影響します。溝深さを浅くしてつぶしを増やせば充填率も上がり、溝幅を広げれば動的用途での安定性が変わります。溝径を変えればOリングの伸びと実効断面が変わり、すきまを小さくすれば機構側の作動余裕が減ります。一つの数値だけを設計表へ合わせるのではなく、公差と使用条件を含む最小条件と最大条件を3D CAD上で切り替え、シール系全体として成立するかを確認する必要があります。

設計段階でシール形式、圧力方向、材質、温度、流体、寿命、組立方法を定義し、モデル寸法と計算項目を関連付けておけば、設計変更やサイズ展開でも再確認しやすくなります。さらに、加工可能なRや面取り、処理後寸法、測定方法、組立経路までモデルへ反映することで、設計意図が製造と現場へ伝わりやすくなります。

最終的な溝寸法は、採用するOリングの最新版の規格、供給元の技術資料、実際の使用条件を基準に決定します。高圧、危険流体、真空、広い温度範囲、長寿命、動的用途など、漏れの影響が大きい条件では、3D CAD上の確認に加えて、適切な解析、試作、耐圧試験、漏れ試験、耐久試験を組み合わせることが安全な設計につながります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
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