電気配線ルートの長さ不足が起こる理由
機械装置、制御盤、搬送設備、車両、建築設備などを設計する現場では、電気配線の長さ不足が組立工程や現地施工の大きな手戻りにつながります。配線が接続先まで数センチ届かないだけでも、配線の再製作、端末処理のやり直し、固定位置の変更、部品配置の修正などが必要になることがあります。すでに装置内部へ組み込まれた後で不足が判明すると、周辺部品を取り外さなければならず、影響範囲が広がる可能性もあります。
3D CADを導入している設計現場でも、電気配線の長さ不足を完全に防げるとは限りません。3D CAD上で接続対象の部品が正しい位置に配置されていても、部品間の直線距離だけを基準に配線長を決めると、実際に必要な長さより短くなることがあります。電気配線は空間を直線的に通るのではなく、フレーム、カバー、配管、駆動部、締結部品などを避けながら配置されるためです。
実際の配線ルートには、接続部品から引き出すための直線部分、固定具までの移動、穴や開口部の通過、障害物を避ける曲がり、分岐、束線、組立時の引き出しなどが含まれます。可動部へ接続する配線では、機構の動きに追従する長さも必要です。完成状態の形状だけを見て長さを算出すると、組立時や動作時に不足するおそれがあります。
また、3D CAD上の配線中心線が実際の通過位置と一致していないケースもあります。筐体表面やフレームの角に沿って経路線を作成すると、配線の外径や保護部材の厚さが考慮されず、実物より内側を通る短い経路になる場合があります。太い配線束では、曲げの内側と外側で必要な長さが異なる点にも注意が必要です。
長さ不足を防ぐためには、配線長を一つの数値として考えるのではなく、完成状態の経路長、曲げによる増加分、組立余長、保守余長、可動余長、製造公差などに分けて確認することが重要です。3D CADでは、これらの条件を三次元空間で可視化し、どの部分にどれだけの長さが必要なのかを確認できます。
配線ルートの設計精度を高めるには、接続点を決めてから長さを測るだけでは不十分です。始点と終点、途中の固定点、曲げ形状、可動範囲、組立工程、製造ばらつきを順番に確認し、実際の作業条件に合った配線長を設定する必要があります。
設計確認1:始点と終点を実際の接続位置に合わせる
電気配線ルートの長さを求める最初の確認は、測定の始点と終点を正しく設定することです。3D CAD上では、部品原点、取付面の中心、外形の中心などを基準に距離を測りやすい一方、それらの位置が実際の配線接続位置とは限りません。
配線長の測定基準にするべきなのは、配線が接続部品へ入り、端子または接続部へ到達する位置です。接続部品の外形中心からではなく、配線の挿入口や端末の接続位置から経路を開始します。終点についても同様に、接続先部品の代表点ではなく、実際の端末位置までの長さを含めます。
接続部品に奥行きがある場合、外側の取付面と内部の端子位置には距離があります。筐体外面から見える接続位置だけを始点にすると、内部へ入る部分の長さが不足する可能性があります。反対に、部品内部の構造まで含めた長さを別の製作工程で管理する場合は、どこからどこまでを3D CAD上の経路長とするのかを明確にしなければなりません。
始点と終点では、位置だけでなく配線の引き出し方向も確認します。接続部品の直後で配線を急角度に曲げることは難しく、端末処理部への負荷も大きくなります。実際には、接続位置から一定の距離をまっすぐ引き出してから方向を変える場合があります。この直線部分を経路に含めないと、計算上の長さが短くなるだけでなく、周辺部品との干渉を見落とす原因にもなります。
接続部品の向きが変更可能な設計では、標準となる取付方向を決めておく必要があります。同じ部品でも、配線口を上向きにする場合と横向きにする場合では、固定点までの経路が変わります。組立現場で任意の方向に取り付けられる状態では、3D CADで確認した長さが再現されない可能性があります。
部品の簡略モデルを使用している場合も注意が必要です。軽量化のために接続部や端末形状が省略されていると、設計者が部品外形の適当な位置から経路を作成してしまうことがあります。詳細形状をすべて作る必要はありませんが、配線の接続位置と引き出し方向を示す基準点や簡略形状は設定しておくと安全です。
複数の接続先を持つ部品では、端子ごとに位置が異なる場合があります。部品中心から一括して経路を作成すると、実際の端子配置による長さの差が反映されません。配線本数が多い場合でも、長さに影響する端子位置は個別に管理することが望まれます。
始点と終点を明確にすることで、設計者、配線製作者、組立担当者の間で長さの基準を共有できます。全長寸法がどの位置間の値なのかが曖昧だと、3D CADで算出した値と現物の測定値を比較できません。配線図や製作情報にも測定基準を示し、端末処理分を含むのか、端末処理前の切断長なのかを区別する必要があります。
設計確認2:直線距離ではなく三次元の実経路を測る
始点と終点を設定した後は、その間を結ぶ実際の三次元経路を作成します。配線長の不足でよくある原因は、接続点間の直線距離を基準にしてしまうことです。直線距離は配置の概略確認には使えますが、製作長を決める値としては十分ではありません。
機械装置の内部には、フレーム、板金、補強材、配管、駆動機構、放熱部品などが配置されています。配線はこれらを貫通できないため、周囲を迂回しながら接続先へ向かいます。直線距離では短く見える配置でも、実際には複数の曲がりや上下移動が必要となり、経路長が大きく増えることがあります。
3D CADでは、配線中心に相当する三次元曲線を作成し、その曲線の長さを取得します。上面図や正面図に投影された二次元の線ではなく、奥行き方向の変化を含む三次元経路そのものを測定することが重要です。二つの投影図の長さを単純に加算しても、実際の三次元長にはなりません。
経路線を作成するときは、部品表面に密着させないようにします。配線には外径があり、複数本を束ねる場合はさらに太くなります。配線中心は部品表面から半径分以上離れた位置を通るため、表面上に作成した曲線より長くなる可能性があります。保護材を巻く場合や、固定具を使用する場合は、その厚みも考慮します。
配線が角部を回り込む箇所では、鋭い折れ線ではなく滑らかな曲線を使います。3D CAD上で直線同士を一点で接続すると、計算上は短い経路になりますが、実際の配線は一定の半径を持って曲がります。円弧や連続した曲線を設定することで、実際に近い経路長を求められます。
三次元経路を確認するときは、視点による見落としにも注意します。正面から見ると障害物を避けているように見えても、側面から見ると部品内部を通過している場合があります。複数方向から確認し、必要に応じて断面表示や透過表示を使って経路の通過位置を確認します。
配線が複数の区画を通る場合は、区間ごとに経路長を管理する方法も有効です。始点から最初の固定点、固定点から通過穴、通過穴から分岐点、分岐点から終点というように分けると、長さ不足が発生しやすい区間を特定できます。全長だけを管理していると、途中の固定位置がずれた際に終端側の長さが不足する問題を発見しにくくなります。
分岐を含む配線では、一本の主経路から複数の枝が伸びます。分岐点の位置が変わると、各枝の必要長だけでなく主経路の長さも変わります。分岐位置を便宜的に決めるのではなく、実際に束線や端末加工が可能な位置へ設定する必要があります。
経路長を測定した後は、部品位置の変更に対して曲線が追従するかも確認します。参照先が固定座標になっていると、部品を移動しても経路が更新されず、古い長さが残る場合があります。設計変更後にはモデルの再計算状態を確認し、経路線が始点、終点、固定点へ正しく接続されているかを点検します。
設計確認3:曲げ半径と固定点を経路へ反映する
配線ルートは、任意の位置で自由に曲げられるものではありません。配線の種類、外径、内部構造、保護材などによって、無理なく形成できる曲げの条件が異なります。3D CADで経路長を測る際は、採用する配線に適した曲げ形状を反映する必要があります。
曲げ半径が小さすぎると、実際の組立時に図面どおりの経路を再現できません。作業者が無理に押し込めば、被覆や内部導体へ負荷がかかる可能性があります。反対に、現場で自然な曲げへ修正すると、その分だけ必要長が増え、終点へ届かなくなることがあります。
配線の曲げ条件は、材料や構造、使用状態によって変わります。静止した状態で一度だけ曲げる部分と、繰り返し動く部分では考え方が異なるため、設計で一律の値を適用しないことが大切です。使用する配線の仕様や社内基準を確認し、実際の条件に合わせて経路を設定します。
固定点も配線長を左右します。固定具の位置を経路へ入れずに始点と終点を直接結ぶと、実際より短いルートになります。固定具では、配線が入る位置と出る位置、保持される方向、固定具の厚さを確認します。固定具の中心を一点として扱うだけでは、実際の回り込みを表現できない場合があります。
板金穴やフレーム開口部を通過するときも、入口と出口を別の経路点として考えます。部材に厚みがあれば、穴の内部を通る長さが必要です。開口部の縁に保護材が取り付く場合は、その形状によって配線中心の位置が変わります。
固定点間の距離は、組立作業にも影響します。配線全体の長さが十分でも、最初の固定具までの区間が短すぎると、端末を接続できないことがあります。また、固定順序によっては途中で長さが吸収され、終点側が不足する可能性があります。3D CADでは全長だけでなく、主要な固定点間の区間長も確認します。
複数本の配線を束ねる場合は、束の中心線と個々の配線長の違いにも注意が必要です。曲げの外側に位置する配線は、中心を通る配線より長い経路を必要とします。束が太く、曲がりが多い場合には、中心線長へ一律の余裕を加えるだけでは不十分なことがあります。
配線束の中で個別長を変える場合は、製作時に各配線の位置関係を維持できるかも確認します。束ねる過程で配線が入れ替わる場合、どの線が曲げの外側になるかは一定しません。その場合は、共通長と収納余裕を組み合わせる方法など、製作しやすさを考慮した設計が必要です。
固定具を後工程で追加する設計では、配線長の再確認を忘れないようにします。接続部品の位置が変わっていなくても、固定具の追加によって経路は長くなります。カバー、保護板、配管などの追加によって配線の通過位置が変わる場合も同様です。
3D CAD上では、固定具や通過部を単なる周辺部品ではなく、配線ルートを決める設計条件として管理します。経路線と固定点の関係を明確にすることで、固定部品を移動した際に影響を確認しやすくなります。
設計確認4:可動部の全動作範囲で長さを検証する
可動部へ接続する電気配線では、装置が停止している一つの姿勢だけで配線長を決めることはできません。扉、スライド機構、昇降部、回転部、可動アームなどでは、動作に応じて接続点間の位置関係が変わります。動作中のどこかで経路が最も長くなるため、その状態を確認する必要があります。
最初に確認するのは、接続点同士が最も離れる姿勢です。ただし、直線距離が最大となる姿勢が、必ずしも配線経路長の最大状態とは限りません。途中の固定点や障害物との位置関係によって、接続点が近くても大きな迂回が必要になる場合があります。
3D CADでは、動作開始位置、終了位置、中間位置など、複数の代表姿勢で配線経路を確認します。さらに、配線がカバーやフレームへ最も近づく姿勢、固定端付近の曲げが最も厳しくなる姿勢、余長が最も大きくたまる姿勢も検証します。
最大長だけでなく、最小長となる状態の確認も重要です。配線を長くすれば届かない問題は避けやすくなりますが、可動部が戻ったときに余長が大きく膨らむ可能性があります。その余長がリンク機構へ入り込む、カバーに挟まれる、発熱部へ接触するなどの問題が起こることがあります。
可動配線では、曲げが一か所へ集中しないように固定位置を設計します。固定端の直後だけが繰り返し曲がる状態では、その部分に負担が集中します。3D CAD上で干渉がなくても、実際の繰り返し動作に適した経路とは限りません。固定点の間隔や位置を調整し、配線が広い範囲で滑らかに変形する構造を検討します。
扉への配線では、ヒンジの回転中心と固定位置の関係を確認します。配線の固定点が回転中心から離れているほど、開閉に伴う長さ変化が大きくなる傾向があります。閉じた状態で適切に収まっていても、扉を開いたときに端末が引っ張られる場合があります。
反対に、開いた状態に合わせて長くすると、閉じた際に配線がヒンジや筐体の縁へ挟まれることがあります。開閉の途中で配線がどちら側へ膨らむかを確認し、安全に収まる空間を確保します。
スライド機構では、移動量だけをそのまま配線長へ加えればよいとは限りません。配線が折り返される構成では、固定点と可動点の関係によって必要な変形量が変わります。経路を案内する部材を使用する場合は、その内部での曲げと通過長も含めます。
回転部では、往復回転と連続回転を区別します。一定角度を往復する構造では、ねじれが戻る場合がありますが、固定点の配置によっては一部の区間へねじれが集中します。3D CADで回転後の形状を確認し、端末部へ過剰なねじりが伝わらない経路を検討します。
可動状態を表現する機能が限られている場合は、姿勢ごとに配線経路を複製して比較する方法もあります。経路を完全に自動変形させられなくても、最大距離、最小収納空間、干渉範囲を個別に検証することで、長さ不足の危険を減らせます。
設計確認5:組立作業と保守作業に必要な余長を加える
完成状態の配線経路だけを基準に長さを決めると、組立工程で配線が届かないことがあります。実際の作業では、接続部品を筐体の外側へ引き出した状態で端末を接続したり、工具を入れるために配線を動かしたりします。完成後には不要に見える長さでも、組立作業には必要な場合があります。
接続部品を取り付ける前に配線を接続する工程では、部品を作業可能な位置まで移動できる長さが必要です。3D CAD上の完成位置だけで経路を作成すると、部品を取り付けた状態でしか配線が届かず、実際には接続作業ができない可能性があります。
組立手順を確認し、どの部品を先に固定するのか、どの位置で端末を接続するのか、接続後にどの方向へ収めるのかを整理します。その作業姿勢を3D CAD上で再現し、必要な引き出し長を確認します。
保守作業でも同様です。点検時に操作部や制御部を引き出す設計では、配線を接続したまま移動するのか、先に取り外すのかを決める必要があります。接続したまま点検する場合は、保守位置までの移動量と作業姿勢を経路長へ反映します。
余長を追加するときは、収納場所も同時に設計します。単に配線を長くするだけでは、装置内部で余った部分が不規則に動き、可動部や鋭利な端部へ接触する可能性があります。余長をまとめる位置、曲げ方、固定方法を3D CADで確認します。
余長を小さな輪にして押し込むと、曲げ条件を満たせない場合があります。狭い空間へ無理に収納すると、組立作業者によって収め方が変わり、品質がばらつきます。自然な曲線で配置できる空間を設け、再現性のある固定方法を決めることが重要です。
組立余長と保守余長は、目的を分けて考えます。初回組立時にだけ必要な長さと、定期点検のたびに引き出す長さでは、求められる耐久性や収納方法が異なります。何のために追加する長さなのかを明確にしておくと、過剰な余長を防げます。
端末処理に使う長さも確認が必要です。被覆を除去する部分、端子へ固定する部分、保護材を取り付ける部分などは、完成状態の中心線長とは別に必要となる場合があります。配線の切断長、端末処理後の有効長、完成品の全長を区別しなければなりません。
製作指示では、3D CADから取得した経路長に何が含まれているのかを明記します。端末処理分を別途追加するのか、製作長へ含めた値なのかが曖昧だと、設計者と製作者で解釈が分かれます。
余長は、一律の割合として加えるよりも、必要となる場所と目的に応じて設定したほうが管理しやすくなります。接続部付近には組立用の長さを設け、可動部には動作追従用の長さを設けるなど、区間ごとに根拠を持たせます。
配線を現場で切断して調整する場合でも、設計上の基準長は必要です。長めに準備すれば不足を避けられますが、材料の無駄や収納性の低下につながります。現場で調整できる範囲と、余った配線を収める方法を事前に決めておくことが大切です。
設計確認6:製造公差と施工ばらつきを見込む
3D CAD上では、すべての部品が指定された寸法と位置で正確に配置されています。しかし、実際の製品には部品寸法、穴位置、組立位置、据付位置などのばらつきがあります。配線長を理論上の最小値に近づけすぎると、個々の部品が許容範囲内であっても、組み合わせによって配線が届かなくなる可能性があります。
始点と終点だけでなく、途中の固定具や通過穴にも位置のばらつきがあります。複数の位置差が配線を長くする方向へ重なると、3D CAD上の基準長より長い配線が必要になります。どの寸法が経路長へ影響するかを整理し、不足側の条件を確認します。
板金部品では、曲げ加工や組立によって開口部と固定面の位置関係が変わる場合があります。フレーム構造では、溶接や締結による位置差が配線経路へ影響することがあります。大型設備では、現地据付時の位置調整によって接続点間の距離が変わる可能性もあります。
配線自体の製作にもばらつきがあります。切断、端末加工、分岐位置の設定、束線などの工程によって、完成後の有効長が設計値と異なる場合があります。全長だけを管理するのではなく、端部から分岐点まで、端部から最初の固定点までといった重要な区間寸法も確認します。
配線作業の取り回しにも違いが生じます。固定具へ通す順番、束をねじる方向、他の配線との上下関係によって、実際の経路長が変わります。3D CAD上の中心線を現場で完全に再現することが難しい場合は、経路が多少変わっても不足しない余裕を持たせる必要があります。
ただし、公差や作業ばらつきを理由に全体を大幅に長くすると、余長の収納が難しくなります。重要なのは、変動が生じる区間を特定し、その区間で吸収できる構造を作ることです。固定点間に適切な余裕を設ける、調整可能な収納部を用意するなどの方法が考えられます。
3D CADでは、部品を基準位置に配置した状態だけでなく、長さ不足につながる方向へ位置を変えた状態を作成して確認できます。すべての公差組み合わせを再現することは難しくても、始点と終点が離れる条件、通過点が外側へずれる条件などを代表ケースとして検証できます。
現地施工を含む配線では、設計値と現況の差を確認することも重要です。既設設備へ接続する場合や、施工後の構造物へ配線する場合は、設計図面どおりの位置に接続点があるとは限りません。現地測定結果を3D CADへ反映し、実際のルートで必要長を確認すると、施工時の不足を減らせます。
製造公差と施工ばらつきを見込む目的は、単に余裕を増やすことではありません。どの要因で必要長が変わるのかを把握し、適切な場所に必要な調整量を持たせることが重要です。
3D CADで配線ルートを作成する実務手順
配線長を正確に管理するには、3D CAD上の作業手順を標準化することが有効です。設計者ごとに異なる方法で経路を作成すると、長さの基準や余長の考え方に差が生じます。
最初に、接続対象となる部品を正しい位置と向きで配置します。仮配置の部品や外形だけの簡略モデルを使用する場合は、配線接続位置を示す基準点を追加します。接続部品の向きが確定していない場合は、配線長も未確定であることを明確にします。
次に、配線を拘束する固定具、通過穴、分岐位置、保護部材を配置します。詳細設計前で正式な部品が決まっていなくても、予定位置を示す簡略形状を置くことで、直線距離だけの仮経路が正式値として扱われることを防げます。
配線中心に相当する三次元曲線を作成し、接続位置から固定点、通過点、分岐点を順番に結びます。曲がり部分には実際に形成可能な曲線を設定し、周辺部品との間隔を確認します。
経路を作成したら、必要に応じて配線外径または配線束の太さを持つ簡略形状へ変換します。中心線だけでは干渉しないように見えても、実際の外形では周囲へ接触する場合があります。特に開口部、狭いすき間、曲がり部、交差部は外形で確認します。
三次元曲線から取得した長さは、完成状態の基礎経路長として記録します。その後、端末処理、組立、保守、可動、公差などに必要な追加長を区分して加えます。すべてを一つの余裕値としてまとめないことで、設計変更時に影響を判断しやすくなります。
可動部では複数の姿勢を作成し、各状態の経路長と収納状態を確認します。最大長だけでなく、最小状態での余長、曲げ位置、干渉の有無を記録します。
経路が確定した後は、製作用の長さ情報と3D CAD上の経路を対応付けます。モデルから得た値と製作図に記載された値が異なる場合は、その差が何を表しているのかを説明できる状態にします。
試作や初回組立では、実際に使用した長さを確認します。余りすぎた区間、不足した区間、固定しにくかった区間を記録し、3D CADの経路や設計基準へ反映します。この繰り返しによって、設計時の想定と現場の差を小さくできます。
配線長の設計変更漏れを防ぐ管理方法
配線長不足は、初期設計だけでなく設計変更時にも発生します。接続部品の移動、フレーム形状の変更、固定具の追加、カバーの変更などによって経路が変わっても、配線長が更新されないことがあります。
接続先の部品を移動したときは、経路線が新しい位置へ追従しているかを確認します。経路の端点が部品ではなく固定座標へ接続されていると、見た目ではつながっていても正しい位置まで更新されない場合があります。
固定具や通過穴を移動した場合も、配線長の再計算が必要です。接続点間の直線距離が変わらなくても、途中の回り込みが増えれば必要長は長くなります。
周辺部品の変更にも注意します。配線と直接接続されていない部品でも、経路上の空間を占有すれば迂回が必要になります。カバーの補強、配管の追加、締結部品の変更などが配線ルートへ影響することがあります。
変更管理では、配線経路を関連部品として登録し、接続部品や固定部品が変更された際に確認対象となる仕組みを作ることが有効です。設計変更票や確認項目に配線長の再評価を含めると、更新漏れを減らせます。
長さが変わらなかった場合でも、確認記録を残します。部品位置を変更したのに配線長が同じであれば、本当に影響がない場合もありますが、経路が更新されていない可能性もあります。変更前後の経路形状を比較し、数値だけで判断しないことが大切です。
配線の品番を共通化している場合は、変更後もすべての搭載位置で使用できるかを確認します。最も長い条件に合わせた共通配線でも、短い箇所で余長を安全に収納できなければ使用できません。
配線ルートの干渉確認で注意したいポイント
配線長が十分でも、経路が周辺部品と干渉していれば実際には配置できません。干渉を避けて現場で経路を変更すると、その分だけ長さが不足する可能性があります。そのため、長さ確認と干渉確認は同時に行う必要があります。
配線中心線だけで干渉を確認すると、外径分の接触を見落とします。配線束、保護材、固定具を含めた外形で確認し、周囲に必要な空間があるかを点検します。
鋭利な板金端部、ねじ先端、可動部、発熱部などへの接触にも注意します。3D CAD上でわずかなすき間があっても、製造公差や振動によって接触する可能性があります。
複数の配線や配管が交差する部分では、上下関係と組立順序を確認します。一方を先に固定すると、もう一方を通せなくなる場合があります。交差部を立体的に整理し、必要な迂回量を経路長へ反映します。
カバーを取り付けた状態で配線が押される場合もあります。カバーを非表示にして経路を作成すると、完成時の収納空間を過大に見積もる可能性があります。完成状態と組立途中の両方で確認することが重要です。
可動部周辺では、静止状態の干渉だけでなく移動領域との重なりを確認します。配線自身が可動する場合は、その包絡範囲も考慮します。
設計レビューで確認するべき情報
配線設計レビューでは、画面上で始点と終点がつながっていることだけを確認してはいけません。表示されている経路長が何を含む数値なのかを明確にし、その根拠を確認する必要があります。
まず、始点と終点が実際の接続位置になっているかを確認します。部品原点や外形中心を使用していないか、引き出し方向が反映されているかを点検します。
次に、固定点、通過点、分岐点が経路へ含まれているかを確認します。仮の直線経路が残っていないか、正式な固定位置へ更新されているかも重要です。
曲げ部分では、採用する配線で実現できる形状かを確認します。3D CAD上で滑らかに見えるだけでなく、配線外径や使用条件に合った曲げになっているかを判断します。
可動部では、確認した姿勢を明確にします。開始位置と終了位置だけでなく、中間姿勢、最大長となる状態、余長が最大となる状態、曲げが厳しくなる状態を確認したかを記録します。
組立と保守の確認では、接続作業をどの位置で行うか、部品をどこまで引き出すか、余長をどこへ収納するかを確認します。完成状態で収まっているだけでは、作業可能とは限りません。
長さ情報については、基礎経路長、端末処理分、組立余長、保守余長、可動対応分、公差対応分を区別します。製作用の総長だけでなく、その内訳が分かる状態にしておくと、設計変更時の判断が容易になります。
最後に、3D CAD上の経路長と製作指示値が一致しているかを確認します。差がある場合は、何を追加した結果なのかを説明できなければなりません。モデルと図面のどちらが正式な値なのかも明確にします。
まとめ
3D CADで電気配線ルートの長さ不足を防ぐには、部品間の直線距離だけで配線長を決めないことが重要です。実際の接続位置を始点と終点に設定し、固定具、通過穴、障害物、曲げ形状を含む三次元の実経路を作成する必要があります。
一つ目の設計確認は、始点と終点を実際の端末位置へ合わせることです。部品原点や外形中心ではなく、配線が接続される位置と引き出し方向を基準にします。
二つ目の設計確認は、直線距離ではなく三次元曲線の長さを測定することです。奥行き方向の変化や障害物の迂回を含め、実際に配線が通る中心経路を作成します。
三つ目の設計確認は、曲げ半径と固定点を反映することです。鋭い折れ線ではなく、現物で形成できる曲線を使い、固定具や通過部による回り込みも含めます。
四つ目の設計確認は、可動部の全動作範囲で検証することです。最も長くなる状態だけでなく、余長がたまる状態、曲げが厳しくなる状態、周辺部品へ近づく状態も確認します。
五つ目の設計確認は、組立作業と保守作業に必要な余長を加えることです。完成状態の経路長とは別に、接続、引き出し、点検、端末処理に必要な長さを整理し、余長の収納場所も設計します。
六つ目の設計確認は、製造公差と施工ばらつきを見込むことです。部品位置、固定具、配線製作、現地据付の差によって必要長が増える可能性を確認し、適切な区間で吸収できる構造を作ります。
配線長は単一の距離ではなく、経路、曲げ、作業、可動、公差を積み重ねて決める設計値です。3D CAD上の経路と製作情報を対応付け、設計変更後に再計算する仕組みを整えることで、組立時の不足や現場での再製作を減らせます。
既設設備や施工現場の三次元形状を設計へ反映し、配線ルート周辺の障害物や接続位置を現況に合わせて確認する場合には、LRTK Phoneで取得した三次元情報を活用する方法もあります。現場と3D CADの位置関係を具体的に把握することで、机上の経路設計と実際の施工条件との差を小さくしやすくなります。