LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで金型の抜き勾配不足を防ぐ5つの確認手順

3D CADで抜き勾配を確認する重要性

樹脂成形品や鋳造品など、金型を使用して製造する部品では、成形後の製品を金型から取り出せる形状にしておく必要があります。そのために、金型の開閉方向や入れ子の移動方向に対して製品面へ設ける傾きが抜き勾配です。

抜き勾配が不足していると、製品が金型へ強く密着し、離型時に傷や変形が発生しやすくなります。樹脂成形品では、表面の擦れ、白化、割れ、押し出し跡の悪化などにつながることがあります。金型側にも過度な負荷がかかり、成形の安定性や金型の保守性に影響する可能性があります。

抜き勾配は、単に製品面へ傾きを付ければよいものではありません。どの方向へ製品を抜くのか、どの位置を基準に面を傾けるのか、製品の外側と内側のどちらへ寸法を変化させるのかを明確にする必要があります。これらの判断を誤ると、角度は付いていても、金型の動きと反対向きの勾配になったり、重要寸法が変化したりします。

複雑な製品では、正面や側面から形状を目視するだけで、抜き勾配不足をすべて見つけることは困難です。外周の大きな壁面には勾配があっても、リブ、ボス、穴、爪、文字、模様、フィレットなどの細部に垂直面や逆勾配が残ることがあります。曲面では、面全体に勾配があるように見えても、一部だけ抜き方向に対する角度が不足する場合があります。

3D CADには、指定した方向に対する各面の傾きを計算し、角度の状態を色分けする機能があります。このドラフト解析を利用すれば、モデル全体から角度不足の面や逆勾配となる面を効率的に探せます。しかし、解析を実行するだけでは十分ではありません。基準となる抜き方向や判定角度が間違っていれば、表示された結果も実際の金型構造とは一致しないためです。

また、必要な抜き勾配は製品全体で一律ではありません。材料の性質、製品の深さ、表面状態、模様の有無、成形収縮、金型温度、押し出し方法、外観要求などによって、離型しやすさは変化します。3D CADで角度を確認するときは、数値だけで合否を判断せず、金型構造や成形条件を含めて検討することが重要です。

抜き勾配確認を製品設計の終盤だけで行うと、大幅な形状修正が必要になる可能性があります。壁面へ勾配を追加すると、開口部の寸法、底面側の寸法、肉厚、リブの位置、相手部品とのすき間などが変化するためです。基本形状を作成した段階から確認を始め、細部追加後や設計変更後にも再解析することで、修正範囲を小さく抑えやすくなります。

金型の抜き勾配不足で起こりやすい問題

抜き勾配不足によって起こりやすい問題の一つは、製品表面の擦れです。製品が金型から移動するときに、面同士が長い距離にわたって接触すると、表面へ傷や光沢の変化が現れることがあります。外観部品では、機能に影響がなくても不良と判断される可能性があります。

製品が金型へ強く抱き付くと、押し出し時の力も大きくなります。押し出し力が限られた範囲へ集中すれば、製品が変形したり、押し出し位置の周辺に跡が残ったりすることがあります。薄肉部品や大きな平面を持つ部品では、離型時の変形が製品全体の反りにつながることもあります。

内側に深い壁を持つ製品では、成形後の収縮によってコア側へ締め付く可能性があります。抜き勾配が小さいと、製品とコアの接触が長く続き、離型抵抗が大きくなります。3D CAD上では同じ角度に見える形状でも、浅い壁と深い壁では金型から抜けるまでの接触距離が異なるため、必要な余裕も同じとは限りません。

逆勾配やアンダーカットが残っている場合は、通常の金型開閉だけで製品を取り出せないことがあります。金型設計の段階でスライド機構や傾斜する入れ子などを追加すれば対応できる場合もありますが、金型構造が複雑になり、部品点数、加工工程、調整箇所、保守箇所が増える可能性があります。製品機能上必要な形状でなければ、製品側の形状変更によって機構を減らせないか検討することが重要です。

抜き勾配を後から追加すると、製品寸法へも影響します。面の上端を固定して傾ければ下端側の寸法が変わり、下端を固定すれば上端側の寸法が変わります。重要寸法の位置を決めずに勾配を付けると、組み付け部のすき間、嵌合部の寸法、穴と壁面の距離などが設計意図から外れる可能性があります。

さらに、モデルを修正できても、図面、解析データ、製造用データ、組立モデルが更新されていなければ、異なる版の情報が混在します。金型製作の開始後に不整合が判明すると、追加加工や設計の差し戻しが必要になる場合があります。抜き勾配不足の防止は、形状確認だけでなく、設計変更管理の観点からも重要です。

確認手順1 金型の抜き方向を正しく設定する

最初の確認手順は、3D CADで解析を開始する前に、金型から製品を取り出す方向を明確にすることです。抜き勾配は、指定した抜き方向に対する面の傾きとして評価されます。そのため、基準方向が誤っていれば、角度の計算結果が正しくても実際の金型構造には適用できません。

まず、金型の主な開閉方向を決めます。製品モデルの上下方向や標準座標軸が、そのまま金型の開閉方向になるとは限りません。製品が組立状態の向きで作成されている場合や、外観面を見やすい向きでモデリングされている場合は、金型の開閉方向がモデルの座標軸と異なることがあります。

抜き方向を検討するときは、製品の形状だけでなく、外観面、パーティングライン、アンダーカット、ゲート候補、押し出し機構、金型の加工性なども考慮します。製品の向きを変更することで、アンダーカットを減らせる場合があります。一方で、向きを変えると外観面に金型の合わせ目が現れたり、押し出し位置が制限されたりすることもあります。

抜き方向が決まったら、3D CAD上に基準軸、基準面、専用座標系などを作成し、方向を明示します。画面の表示方向や担当者の記憶だけに頼ると、モデルを回転したときや別の担当者が開いたときに判断を誤りやすくなります。専用の基準をモデル内に残しておけば、設計変更後も同じ条件で解析しやすくなります。

基準には、主型の抜き方向であることが分かる名称を付けます。スライド機構や傾斜する入れ子を使用する場合は、それぞれの移動方向についても別の基準を用意します。一つの製品に複数の抜き方向が存在する場合、製品全体を主方向だけで解析しても正しい評価にはなりません。

横穴や側面の爪など、主型の開閉方向ではアンダーカットになる形状は、スライド方向を基準として個別に確認します。主方向で不適合と表示された領域でも、別の機構で成形する計画が明確であれば、直ちに製品形状の不良とは限りません。ただし、その形状をどの機構で処理するかが決まっていない状態は避ける必要があります。

方向の正負にも注意します。同じ軸を設定していても、固定側から可動側を見る方向と、可動側から固定側を見る方向では、勾配の判定が反対になります。ドラフト解析の色分けで正勾配と負勾配が想定と逆に表示された場合は、製品形状を修正する前に基準方向の向きを確認します。

抜き方向は、製品設計者だけで確定せず、可能な段階で金型設計担当者や製造担当者と共有することが望ましいです。製品形状を細部まで作り込む前に方向を確認できれば、大きなアンダーカットや複雑なパーティングラインを早期に見直せます。方向の確定を設計初期の確認項目にすることが、後工程の手戻り防止につながります。

確認手順2 ドラフト解析で角度不足の面を抽出する

抜き方向を確定したら、3D CADのドラフト解析を使用して、モデル全体の傾斜状態を確認します。ドラフト解析では、指定した抜き方向に対する各面の角度を計算し、正方向の勾配、反対方向の勾配、判定値に満たない領域などを色分けして表示できます。

解析を行う前に、判定角度を設定します。判定角度には、設計上必要とされる最小の抜き勾配を使用します。ただし、すべての面へ同じ値を適用できるとは限りません。外側の壁面、内側の壁面、リブ、ボス、深い穴、模様のある面などでは、離型条件が異なる場合があります。

最初の解析では、垂直面や逆勾配の有無を把握しやすい条件を設定し、モデル全体の問題を広く探します。その後、製品仕様や社内基準に応じた角度を設定し、必要な勾配を満たしていない面を絞り込みます。複数の条件で段階的に確認することで、金型構造に関わる大きな問題と、角度の微調整で対応できる問題を分けやすくなります。

解析結果を確認するときは、モデルを一方向から見るだけでは不十分です。製品を回転し、裏側、内側、凹部の奥、段差の周辺などを確認します。外側から見えない部分には、透明表示や断面表示を利用すると効果的です。複数のボディや部品が含まれている場合は、確認対象以外を一時的に非表示にすると細部を見やすくできます。

曲面では、面全体が同じ角度ではありません。大部分が十分な勾配を持っていても、接線の向きが変化する場所に細い角度不足領域が現れることがあります。解析結果に帯状や点状の領域が表示された場合は、単なる表示上の細かさと判断せず、その位置が離型時に金型と擦れる可能性を確認します。

フィレットの周辺も見落としやすい部分です。直線的な壁面には十分な勾配があっても、壁面と底面をつなぐフィレットの一部が抜き方向に対して垂直に近づくことがあります。フィレットが小さい場合は画面上で選択しにくいため、拡大表示や断面表示を利用して確認します。

解析で問題のある面を見つけたら、色だけで判断せず、角度測定機能で実際の値を確認します。解析の境界付近では、設定値との差が小さい場合があります。対象面の深さ、面積、表面仕様、製品機能を確認し、修正が必要かどうかを判断します。

問題箇所は、後から特定できる形で記録します。対象となるフィーチャー、製品上の位置、解析条件、判定角度などを残すことで、修正後の再確認が容易になります。画面の画像だけを保存すると、どの方向や角度で解析したのか分からなくなる場合があるため、条件も併記することが重要です。

ドラフト解析は、抜き勾配不足を見つける有効な方法ですが、離型力や成形収縮を直接計算するものではありません。色分けが合格であっても、深い形状や大きな接触面を持つ製品では離型抵抗が大きくなる可能性があります。解析結果は最終判断ではなく、確認対象を抽出するための基礎情報として利用します。

確認手順3 パーティングラインと勾配の向きを照合する

ドラフト解析で面ごとの傾きを確認した後は、勾配の向きとパーティングラインの位置を照合します。パーティングラインは、金型の固定側と可動側が接する境界です。製品面の勾配が切り替わる位置と金型の分割位置が合っていないと、意図しないアンダーカットや複雑な合わせ面が発生する可能性があります。

一般に、固定側へ向かって広がる面と可動側へ向かって広がる面の境界は、パーティングラインを検討する手掛かりになります。3D CADのドラフト解析では、勾配の方向が切り替わる位置を色の境界として確認できます。ただし、その境界をそのまま金型の分割位置として採用できるとは限りません。

パーティングラインには、製品外観、バリの許容位置、金型の加工性、合わせ面の強度、金型の密閉性などが関係します。外観上目立つ場所に設定すると、わずかな段差やバリでも品質問題になる可能性があります。組み付け面や密閉面に近い場合は、寸法や機能への影響も確認しなければなりません。

曲面の外周では、最大輪郭となる位置が滑らかに連続しているかを確認します。曲面に小さなうねりがあると、正勾配と負勾配の境界が細かく変化し、複雑なパーティングラインになることがあります。3D CAD上では滑らかに見えても、解析結果では境界が揺れている場合があるため、曲面の連続性や断面形状を確認します。

パーティングライン付近へ抜き勾配を付けるときは、どの線や面を中立位置とするかが重要です。中立位置とは、勾配を追加しても形状や寸法を変化させない基準です。パーティングラインを中立線として面を傾ければ、金型の合わせ位置を保ちやすくなりますが、反対側の寸法は変化します。

製品の開口寸法や嵌合寸法が重要な場合は、その位置を基準として勾配を付けることもあります。どこを固定するかによって、製品の上端、下端、中央付近の寸法が異なります。重要寸法を維持する基準を決めずに勾配を追加すると、後から組立不良や肉厚不足が判明する可能性があります。

フィレットがパーティングラインをまたいでいる場合も注意が必要です。先に壁面へ勾配を付け、その後にフィレットを作成した形状と、フィレットを含む面へ勾配を適用した形状では、曲面の状態が異なることがあります。フィレットの一部へ逆勾配が発生していないか、解析を再実行して確認します。

製品形状を変更した場合は、既存のパーティングラインが維持されているかも確認します。高さ、外周曲面、段差、開口形状などを変更すると、最大輪郭の位置が移動することがあります。変更箇所だけを見るのではなく、製品全周の境界を再確認することが重要です。

パーティングラインと勾配の関係は、製品設計だけで完結する項目ではありません。金型の分割方法、入れ子の構成、加工方向などによって適切な位置が変わります。3D CADで候補を確認した後は、金型設計担当者と成立性を確認し、必要に応じて製品形状を調整します。

確認手順4 リブやボスなどの細部を個別に確認する

製品の主要な外壁に十分な抜き勾配があっても、細部形状に不足が残っていることがあります。特に、リブ、ボス、穴、爪、段差、文字、模様などは形状が小さく、モデル全体の解析結果だけでは見落としやすい部分です。

リブを確認するときは、両側面の勾配を個別に確認します。中心面を基準に押し出して作成したリブは、側面が垂直になっている場合があります。リブへ勾配を追加すると、先端と根元の厚さが変化するため、抜き勾配だけでなく、成形性や強度も確認しなければなりません。

高さのあるリブでは、わずかな角度でも先端側の厚さが大きく変化します。根元寸法を固定して勾配を付けると、先端が薄くなりすぎる可能性があります。反対に、先端寸法を固定すると、根元が厚くなり、周辺の壁面との間に局所的な肉厚増加が生じることがあります。

リブ根元のフィレットも確認対象です。フィレット曲面の一部が抜き方向に対して角度不足になる場合があります。また、リブと壁面が交差する場所では複数のフィレットが重なり、細い面や複雑な曲面が生成されることがあります。ドラフト解析を拡大して確認し、必要に応じて断面を作成します。

ボス形状では、外周面だけでなく内周面も確認します。外側には勾配を付けていても、穴の内側が垂直のまま残っていることがあります。穴が深いほどコアとの接触距離が長くなり、製品がコア側へ抱き付きやすくなります。穴径、深さ、勾配、底部形状を合わせて確認することが重要です。

ボスと補強リブの接続部では、面同士の交差によって局所的な逆勾配が生じることがあります。ボス単体とリブ単体がそれぞれ基準を満たしていても、接続フィレットや面のつながりに問題が残る場合があります。周辺形状を含めてドラフト解析し、色の変化が不自然な部分を確認します。

爪やフックは、主抜き方向に対するアンダーカットになりやすい形状です。製品の弾性変形を利用して金型から取り出す設計もありますが、材料の性質、爪の厚さ、変形量、製品温度などによって成立性が変わります。3D CAD上で干渉なく変形できるように見えても、実際の離型が安定するとは限りません。

横穴や側面の凹凸には、スライド機構など別方向へ移動する金型部品が必要になる場合があります。その場合は、主抜き方向での解析だけで終わらせず、スライドの移動方向に対しても面の勾配を確認します。スライドが移動する途中で製品や他の金型部品へ干渉しないかも確認します。

製品表面へ設ける文字、記号、目盛りなども見落としやすい部分です。文字の側面が垂直であったり、線幅が細すぎたりすると、金型加工や離型が難しくなる可能性があります。文字を追加した後に、その範囲だけを拡大してドラフト解析すると確認しやすくなります。

表面へ模様や細かな凹凸を付ける場合は、平滑面と同じ勾配でよいとは限りません。模様の深さや方向によって金型とのかみ合いが強くなり、離型抵抗が増える可能性があります。3D CADモデルへ模様の細部を作り込んでいない場合でも、模様を加工する範囲を確認し、必要な抜き勾配を製品形状へ反映します。

細部確認を効率化するには、形状の種類ごとに表示状態を分ける方法が有効です。外壁、内壁、リブ、ボス、穴、アンダーカット候補などに分けて確認すれば、同じ条件を適用できる範囲が分かりやすくなります。確認済みの範囲を記録し、変更後に再点検できる状態を整えておくことも重要です。

確認手順5 金型構造と成形条件を含めて最終判断する

最後の確認手順では、3D CAD上の角度が設定値を満たしているかだけでなく、金型構造や成形条件を含めて離型性を判断します。抜き勾配の解析は重要ですが、製品が金型から安定して取り出せることを単独で保証するものではありません。

最初に、製品が固定側と可動側のどちらへ残る想定なのかを確認します。製品は収縮によって内側のコアへ抱き付く傾向がありますが、外形、肉厚、材料、表面状態などによって挙動は変わります。意図しない側へ製品が残ると、押し出し機構が使用できず、成形サイクルが不安定になる可能性があります。

製品の深さも確認します。同じ抜き勾配であっても、浅い形状と深い形状では、離型時に金型と接触する距離が異なります。深い箱形状や筒形状では、接触面積や収縮による締め付けが大きくなるため、角度へ余裕を持たせる必要が生じることがあります。

3D CADでは、抜き方向に沿った断面を作成し、壁面の高さ、接触範囲、形状の狭まり方を確認します。断面を一か所だけでなく、複数の位置で確認すると、曲面や偏った形状による局所的な問題を見つけやすくなります。

表面状態も離型性へ影響します。滑らかな面、加工目が残る面、模様を付けた面では、金型との摩擦やかみ合い方が異なります。特に模様の深い外観面では、一般的な平滑面より大きな勾配が必要になる場合があります。表面仕様が設計途中で変更された場合は、抜き勾配も再検討します。

材料の収縮特性や剛性も考慮します。成形後の収縮が大きい材料では、製品がコアを強く締め付ける可能性があります。剛性が高い材料では、離型時の変形を利用しにくくなります。柔軟性がある材料でも、繰り返し変形によって白化や形状変化が生じる可能性があるため、無理な離型を前提としないことが重要です。

押し出し機構との関係も確認します。抜き抵抗が大きい部分へ十分な押し出し力を伝えられないと、製品が局所的に変形することがあります。押し出し位置の周辺に薄肉部や外観面がある場合は、跡や変形が品質問題になる可能性があります。3D CAD上で押し出し位置を仮配置し、製品を均等に支持できるか確認します。

スライド機構や傾斜する入れ子を使用する場合は、移動方向だけでなく移動順序も確認します。主型が開く前に移動するのか、型開きと連動するのか、製品の押し出し前に完全に後退するのかによって、必要な逃げ形状が変わります。各部品を途中位置へ移動させ、干渉の有無を確認します。

金型の加工性も最終判断に含めます。製品上は滑らかな曲面でも、金型側では細く深い溝や鋭い突起になる場合があります。工具が届きにくい形状や、加工後の仕上げが困難な形状は、金型製作上の負担になります。勾配を増やすことで加工しやすくなる場合もあるため、製品機能と金型製作の両面から調整します。

最終確認では、例外箇所も明確にします。製品機能上の理由から標準より小さい勾配を採用する場合や、別の金型機構で対応する場合は、その判断根拠を記録します。採用した抜き方向、判定角度、表面仕様、金型担当者との確認内容などを残しておけば、後の設計変更や不具合調査で判断経緯を確認できます。

抜き勾配を修正するときの注意点

ドラフト解析で角度不足が見つかった場合、対象面へ勾配を追加するだけでは修正が完了しません。勾配によって製品寸法や周辺形状が変化するため、修正後の影響を広い範囲で確認する必要があります。

まず、面を傾けるときの中立位置を決めます。上端を基準にするのか、下端を基準にするのか、パーティングラインを基準にするのかによって、変化する寸法が異なります。嵌合位置、外観上の基準線、測定位置など、維持すべき寸法を確認してから設定します。

次に、肉厚の変化を確認します。外側面と内側面に異なる勾配を付けると、製品の高さ方向で肉厚が変わります。根元が厚くなりすぎれば、冷却差による外観変化や変形が発生する可能性があります。先端が薄くなりすぎれば、充填性や強度が不足する可能性があります。

断面表示や肉厚確認機能を利用し、複数の位置で厚さを確認します。壁面とリブ、壁面とボス、段差とフィレットなどが重なる部分は、局所的に肉厚が増えやすいため注意が必要です。

フィレットや面の連続性も確認します。壁面へ勾配を追加すると、既存のフィレットが再計算できなくなったり、曲率が不自然になったりする場合があります。計算エラーが出ていなくても、細い面や急激な曲率変化が新たに生成されることがあります。

穴、リブ、ボスなどの配置が壁面を基準にしている場合は、勾配追加によって位置関係が変わる可能性があります。3D CADの履歴によって自動的に追従する形状と、元の位置に残る形状が混在する場合があるため、関連寸法を再測定します。

勾配を作成するフィーチャーの順序も重要です。基本形状へ勾配を付けてから細部を追加すると管理しやすい場合がありますが、設計意図によって適切な順序は異なります。履歴の途中へ新しい勾配フィーチャーを挿入した場合は、それ以降のすべての形状が正しく再計算されているか確認します。

修正後は、問題があった面だけでなく、モデル全体へドラフト解析を再実行します。一つの面を傾けたことで、隣接するフィレットや曲面に新しい角度不足が発生する可能性があります。変更前後の解析結果を比較すると、改善範囲と新たな影響範囲を把握しやすくなります。

設計変更後の見落としを防ぐ再確認方法

抜き勾配は、初回設計時に問題がなくても、設計変更によって不足することがあります。壁面の移動、製品高さの変更、フィレット寸法の変更、穴位置の変更、曲面の置換などが行われると、周辺の面が再生成され、傾きが変化する場合があります。

変更箇所が抜き勾配と直接関係しないように見えても、モデル全体を再解析することが重要です。3D CADの履歴では、上流の形状変更が下流のフィーチャーへ連鎖的に影響します。外観上は同じように見えても、細いフィレットや接続面の角度が変わることがあります。

再確認では、初回と同じ抜き方向、判定角度、表示条件を使用します。条件が変わると、変更前後の結果を正しく比較できません。解析用の基準軸や座標系をモデル内に保存し、同じ設定を再利用できるようにします。

変更前後のモデルを比較できる場合は、形状差分とドラフト解析の両方を確認します。どの面が移動したのか、どの境界が変わったのかを把握したうえで、抜き勾配への影響を確認すると効率的です。

図面や製造用データも更新します。3Dモデルだけを修正し、図面の断面、寸法、注記が古いまま残ると、製造側へ異なる情報が伝わる可能性があります。モデル、図面、解析記録の版をそろえ、正式なデータを明確にします。

金型製作が始まった後に製品形状を変更する場合は、変更部分だけでなく、既に加工された金型部品への影響も確認します。勾配の変更によってパーティングラインや入れ子形状が変われば、追加加工だけで対応できない場合があります。変更前に金型担当者と影響範囲を共有することが重要です。

抜き勾配確認を社内標準へ組み込む方法

抜き勾配不足を継続的に防ぐには、設計者個人の経験や注意力だけに頼らず、3D CADによる確認を標準工程へ組み込むことが有効です。確認する時期、条件、記録内容、承認方法を定めれば、担当者が変わっても一定の品質を維持しやすくなります。

最初の確認は、基本形状が決まった段階で実施します。外形、主要な壁面、パーティングライン候補、主なアンダーカットが分かる状態で解析すれば、金型構造に関わる大きな問題を早期に見つけられます。

次の確認は、リブ、ボス、穴、爪、文字などの細部を追加した段階で行います。基本形状に問題がなくても、細部によって新しい逆勾配や垂直面が発生する可能性があります。

設計完了時には、金型構造や成形条件を含めた最終確認を行います。製品設計者だけでなく、金型設計、加工、成形などの担当者が参加すると、角度の数値だけでは判断しにくい問題を見つけやすくなります。

解析条件は、確認用のテンプレートとして整理できます。主抜き方向の基準、代表的な判定角度、表示方法、確認対象などをあらかじめ用意すれば、作業者による設定差を減らせます。ただし、テンプレートの角度をすべての製品へ機械的に適用するのではなく、材料、表面仕様、製品深さなどに応じて変更できるようにします。

確認記録には、使用したモデルの版、抜き方向、判定角度、問題箇所、対応内容、例外判断などを残します。単に確認済みと記録するだけでは、後から判断根拠を追跡できません。

過去の成形不具合や金型修正事例も蓄積します。離型傷が出た形状、製品が変形した部分、追加加工が必要になった部分などを3Dモデルと関連付ければ、類似形状を設計するときの参考になります。

自動チェック機能を利用できる場合は、垂直面や設定角度未満の面を検出する処理を設計確認へ組み込む方法もあります。ただし、自動判定だけで製品の離型性を判断することはできません。自動チェックは見落としを減らす補助として利用し、最終的には金型や成形を理解した担当者が判断します。

まとめ

3D CADで金型の抜き勾配不足を防ぐには、単に対象面の角度を測るのではなく、金型から製品を取り出す工程全体を意識して確認する必要があります。

最初に、実際の金型構造に合った抜き方向を設定します。主型だけでなく、スライド機構や傾斜する入れ子など、異なる方向へ動く部分がある場合は、それぞれの方向を個別に設定します。

次に、ドラフト解析を使用し、垂直面、角度不足面、逆勾配となる面を抽出します。モデルを複数の方向から確認し、曲面、フィレット、凹部の奥など、見えにくい部分も点検することが重要です。

その後、勾配の向きとパーティングラインの位置を照合します。正勾配と負勾配の境界が、実際の金型分割として成立するかを確認し、外観、寸法、加工性への影響を判断します。

リブ、ボス、穴、爪、文字、模様などの細部は、製品全体の解析とは別に拡大して確認します。細部形状は金型側で深い溝や細い突起となることがあり、わずかな角度不足でも離型や加工へ影響する可能性があります。

最後は、製品の深さ、材料の収縮、表面状態、押し出し機構、金型の移動順序などを含めて総合的に判断します。3D CADの解析結果が設定値を満たしていても、実際の成形条件によっては勾配へ追加の余裕が必要になることがあります。

抜き勾配を修正した後は、重要寸法、肉厚、フィレット、周辺フィーチャーへの影響を確認し、モデル全体へ再度ドラフト解析を実行します。さらに、設計変更後も同じ条件で再確認し、図面や製造用データとの整合を維持することが大切です。

3D CAD上で金型成立性を丁寧に確認し、解析条件と判断根拠を記録しておけば、金型完成後の追加修正や成形時の不具合を減らしやすくなります。設計データと実際の現場状況を照合するときは、位置情報付きの写真や3次元データを記録できるLRTK Phoneも、情報共有を補助する選択肢になります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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