LRTKレフィクシア株式会社

3D CADで人間工学に基づく操作性を評価する6つの指標

3D CADによる人間工学評価が必要な理由

機械、装置、作業台、操作盤、工具、車両、建設機械などを設計するときは、部品が正しく組み付くか、必要な強度を確保できるか、製造可能な形状になっているかといった技術的な確認が欠かせません。しかし、設計上は成立している製品でも、実際に人が使うと操作しにくい、姿勢が窮屈になる、表示が見えない、レバーに手が届かないといった問題が発生することがあります。

このような問題を防ぐために必要なのが、人間工学に基づく操作性の評価です。人間工学では、人の身体寸法、姿勢、動作、視野、筋力、判断のしやすさなどを考慮し、人と製品の関係を設計します。使う人に無理な姿勢や過度な力を求めないことに加え、必要な情報を見つけやすくし、誤った操作を起こしにくくすることも重要な目的です。

従来は、実物大の模型や試作品を製作してから操作性を確認する方法が一般的でした。ただし、試作品の完成後に問題が見つかると、筐体、操作部、配線、内部部品などを含めた広範囲の設計変更が必要になる場合があります。変更内容によっては、加工済み部品や金型、組立工程にも影響が及びます。

3D CADを活用すれば、設計の比較的早い段階から人と製品の位置関係を立体的に確認できます。人体を模したデジタルモデルを配置し、手足が操作部に届くか、関節が不自然な角度にならないか、視線が表示部へ向けられるかといった条件を検討できます。製品の形状を修正したときも、変更後の状態を同じ条件で確認しやすい点が利点です。

ただし、3D CAD上に人体モデルを置くだけでは、適切な人間工学評価にはなりません。評価対象者の体格、作業条件、使用時間、服装、保護具、操作頻度などを定義し、判断に使う指標を決める必要があります。見た目だけで「使いやすそう」と判断するのではなく、姿勢、到達性、視認性、操作力、認知負荷、誤操作の可能性を体系的に確認することが重要です。

本記事では、3D CADを使って人間工学に基づく操作性を評価するときに確認したい6つの指標を解説します。製品設計、設備設計、治具設計、施工機械の検討など、人が直接操作する対象を設計している実務担当者が、レビュー項目を整理するための考え方として活用できます。

操作性を評価する前に決めておく条件

3D CADで操作性を評価する前に、誰が、どのような環境で、どのように使用するのかを明確にする必要があります。同じ製品でも、使用者や作業条件が異なれば、適切な寸法や操作部の配置は変わります。

最初に決めたいのは、想定する使用者の範囲です。平均的な体格の人体モデルだけで確認すると、小柄な人には操作部が遠く、大柄な人には空間が狭いという問題を見落とす可能性があります。設計対象に応じて、身長、座高、肩幅、腕の長さ、手の大きさなどが異なる複数の人体モデルを用意し、それぞれで評価することが重要です。

評価対象者を設定するときは、単純な身長差だけでなく、身体各部の寸法差も考慮します。同じ身長であっても、腕の長さや座高が同じとは限りません。手元の操作部を評価する場合は、腕長や手寸法が大きく影響します。座席から前方の表示部を見る設計では、座高や目の位置が重要です。足元のペダルや踏み台を評価するときは、脚の長さや足の寸法を確認します。

次に、作業姿勢を定義します。立位、座位、中腰、膝をついた姿勢など、実際の使い方に近い状態を設定します。座位で操作する製品では、座面の高さ、背もたれの角度、座面の前後位置も人体モデルの姿勢に影響します。座席を調整できる場合は、調整範囲の端でも操作可能かを確認します。

作業時の服装や装備も無視できません。厚手の作業着、防寒着、手袋、安全靴、保護帽、保護眼鏡などを着用すると、身体の外形や動作範囲、視野が変化します。3D CAD上の人体モデルが薄着の状態だけであれば、実際の使用時よりも空間に余裕があるように見えることがあります。必要に応じて装備分の厚みや干渉領域をモデルへ加えます。

操作時間と頻度も評価条件に含めます。一度だけ行う操作と、長時間繰り返す操作では、許容できる姿勢や力が異なります。短時間なら問題になりにくい姿勢でも、同じ姿勢を長く維持すると負担が蓄積します。頻繁に使用する操作部は、自然な姿勢で手が届き、少ない力で操作できる場所に配置することが基本です。

さらに、通常運転だけでなく、点検、清掃、部品交換、異常時の停止なども評価対象に含めます。通常操作では問題がなくても、保守作業時に身体を大きくひねる必要がある、工具を持った状態では手が入らない、緊急停止操作へすぐに届かないといった問題が起こることがあります。

評価前にこれらの条件を整理しておけば、設計者ごとの感覚的な判断を減らし、同じ基準で比較しやすくなります。3D CAD上の評価条件を記録し、設計変更後も同じ人体モデル、姿勢、装備、操作シナリオで確認することが、再現性のある操作性評価につながります。

指標1:姿勢と関節角度

人間工学に基づく操作性評価で最初に確認したい指標は、作業姿勢と関節角度です。操作に必要な姿勢が不自然であると、短時間の作業でも疲れやすくなり、長時間または反復作業では身体への負担が蓄積しやすくなります。

3D CADでは、人体モデルの腰、首、肩、肘、手首、股関節、膝などの関節を動かし、実際の操作姿勢を再現します。ここで重要なのは、操作点へ手を届かせることだけを目的に姿勢を作らないことです。手が届いていても、上体を大きく前へ倒している、肩を持ち上げている、手首を強く曲げているといった状態では、操作しやすい設計とはいえません。

立位作業では、操作対象の高さが姿勢へ大きく影響します。操作部が低すぎると上体を前へ曲げる姿勢になり、高すぎると肩や腕を持ち上げる必要があります。頻繁に確認する表示部が低い場合は、首を下へ向けた姿勢が続くこともあります。3D CAD上では、操作部、表示部、作業対象物の高さを変えながら、腰や首の角度がどのように変化するかを比較します。

座位作業では、座面と操作部の相対位置が重要です。操作部が遠いと背もたれから身体を離して前傾する必要があり、近すぎると肘や手首が窮屈になります。足元の空間が不足している場合は、膝や足首の姿勢が制約されます。座席を前後に調整できる設計であれば、小柄な人と大柄な人の両方で姿勢を確認します。

首の姿勢は、表示部の位置と角度に左右されます。表示内容を見るために頭を大きく下げる、横を向き続ける、身体をひねる必要がある配置は、視認できるとしても負担が増える可能性があります。表示部の高さや傾きを変更した複数案を3D CADで作成し、目の位置と表示面の関係を比較すると改善点を見つけやすくなります。

上肢では、肩、肘、手首の組み合わせを確認します。腕を長時間浮かせる操作、肘を伸ばし切った状態での操作、手首を曲げたまま力を加える操作などは、負担につながりやすい設計です。特に、押す、引く、回す、持ち上げるといった力を伴う操作では、関節角度だけでなく、力を加える方向も考慮する必要があります。

評価時には、人体モデルが取れる姿勢と、実際に無理なく維持できる姿勢を区別します。人体モデルの関節を可動限界付近まで動かせば操作部へ届く場合でも、その状態を繰り返し使用する設計は適切でない可能性があります。可動するかどうかではなく、余裕を持って自然な姿勢を取れるかを確認します。

姿勢の評価結果は、単に「問題あり」「問題なし」と記録するだけでは不十分です。どの操作で、どの関節に、どの方向の負担が生じるのかを残します。例えば、前方の操作部へ手を伸ばす際に腰の前傾が大きくなる、上段のスイッチ操作時に肩が上がるといった形で記録すると、操作部の移動方向を具体的に検討できます。

3D CADを使った姿勢評価では、複数の設計案を同じ視点から比較できることが利点です。操作面の高さを変える、座席位置を調整する、表示部へ角度を付けるなど、わずかな形状変更による姿勢の差を確認できます。これにより、試作品を製作する前に、身体負担を減らす方向へ設計を修正できます。

指標2:操作範囲と到達性

2つ目の指標は、操作範囲と到達性です。到達性とは、使用者が必要な操作部、取っ手、工具、部品などへ無理なく手足を届かせられるかを示す考え方です。

3D CADで到達性を評価するときは、人体モデルの手先が操作点へ届くかだけでなく、その途中に障害物がないか、操作後に元の姿勢へ戻れるか、力を加えられる余裕があるかを確認します。指先が触れるだけでは、実際の操作に必要な握りや押し込みを行えない場合があります。

操作範囲には、自然に手が届く範囲と、身体を伸ばして到達できる最大範囲があります。使用頻度の高い操作部を最大範囲付近へ置くと、操作のたびに肩や上体を動かす必要があります。日常的に使用する操作部は、肘や肩へ過度な負担をかけずに届く範囲へ配置し、使用頻度の低い操作部はその外側へ配置するという考え方が有効です。

ただし、使用頻度だけで配置を決めることはできません。緊急時に使用する操作部は、通常の操作回数が少なくても、すぐに届く場所へ配置する必要があります。作業者が片手で部材を保持している、身体が特定方向を向いているなど、緊急時に想定される姿勢から操作できるかも確認します。

到達性の評価では、人体モデルの体格差が大きな意味を持ちます。大柄な人は遠方へ届きやすい一方、狭い空間では腕や肩が干渉しやすくなります。小柄な人は空間的な余裕があっても、奥側や高い位置へ届かないことがあります。したがって、複数の体格条件で操作範囲を重ねて確認することが重要です。

足で操作するペダルや踏み板についても同様です。足先が届くだけでなく、かかとを安定させられるか、踏み込む方向に脚を動かせるか、隣のペダルへ誤って触れないかを確認します。座席位置が調整可能な場合は、調整範囲の両端でペダル操作を再現します。

保守作業の到達性も設計段階で確認します。装置内部の部品へ手が届いても、工具を回す空間がなければ交換作業はできません。部品を取り外す方向に別の構造物がある場合は、分解手順が複雑になります。3D CAD上で手や工具の外形を配置し、作業経路を確認すると、完成後の保守性を高められます。

到達性を評価するときは、静的な一場面だけでなく、操作開始から終了までの動きを確認します。扉を開ける、取っ手を握る、レバーを引く、部品を取り出すといった一連の動作では、途中で身体や腕が干渉することがあります。操作前の姿勢では届いていても、可動部を動かす途中で腕の逃げ場がなくなる場合もあります。

3D CAD上で動作を再現する際は、人体モデルと製品モデルの干渉判定を利用します。身体の外形だけでなく、作業着や手袋、携行品などを考慮した余裕を設けると、現場条件に近い評価になります。人体モデルが接触していないから問題ないと判断せず、動作に必要なすき間を確保できているかを確認します。

到達性の評価結果は、操作部の配置変更に直接反映しやすい情報です。操作部を手前へ移す、高さを下げる、角度を変える、開口部を広げるといった改善案を作成し、同じ人体モデルで再評価します。到達距離だけでなく姿勢や視認性も同時に変化するため、ほかの指標とのバランスを見ながら決定することが重要です。

指標3:視認性と視野

3つ目の指標は、視認性と視野です。表示器、目盛り、警告灯、操作対象、周辺状況などが見えにくいと、作業時間の増加や見落とし、誤操作につながる可能性があります。

3D CADでは、人体モデルの目の位置を基準に視線を設定し、対象物が見えるかを確認します。表示部の正面に立てるか、別の部品によって視線が遮られないか、操作中に必要な情報を同時に確認できるかを検討します。

視認性の評価では、対象が見えるかどうかだけでなく、見るために必要な姿勢も確認します。顔を大きく近づける、腰を曲げる、身体を横へ移動する必要がある場合は、表示自体が視界に入っていても操作性が高いとはいえません。自然な姿勢で情報を読み取れる位置と角度を検討します。

表示面の角度も重要です。表示部が目の位置に対して極端に傾いていると、文字や記号を認識しにくくなる可能性があります。表示面の向きは、使用者が主に立つ位置や座る位置に合わせます。複数方向から使用する装置では、表示部の角度を調整できる構造や、複数位置から確認しやすい配置を検討します。

機械内部や収納部を確認する作業では、開口部の形状が視野に影響します。手を入れられる開口であっても、奥の接続部や固定部が見えなければ、作業者は手探りで作業することになります。3D CAD上で目の位置から視線を通し、必要な部位まで見通せるかを確認します。

視野の評価では、人体モデルの体格差にも注意が必要です。身長や座高が異なると目の位置が変わるため、同じ表示部でも見え方が変わります。小柄な人では前方の構造物に遮られ、大柄な人では表示面を見下ろす角度が大きくなる場合があります。座席の調整範囲がある場合は、それぞれの位置で目の高さを確認します。

保護具を着用する作業では、視野が制限される可能性があります。保護帽のつば、保護眼鏡、顔面を覆う装備などにより、上方、下方、側方の見え方が変化します。必要に応じて、装備を含む視野範囲を想定して評価します。

視認性には、表示内容の大きさや配置も関係します。3D CADだけで文字の読みやすさを完全に評価することは難しいものの、表示面までの距離、見る角度、周辺部品による遮蔽は確認できます。表示部が遠い場合は、文字や記号を大きくするだけでなく、表示部自体を近づける検討も必要です。

また、表示と操作部の対応関係も視認性に含めて考えます。操作する手元と結果を示す表示が離れていると、使用者は視線を何度も移動しなければなりません。操作部を見ながら表示も確認できる配置にすると、作業の流れが分かりやすくなります。ただし、情報を一か所へ集めすぎると表示が混雑するため、重要度と使用頻度を考慮して配置します。

周囲の明るさ、反射、影などは、3D CAD形状だけでは判断しにくい要素です。それでも、表示面の向きや遮蔽物の位置から、照明が届きにくい場所や反射が生じやすい形状を予測できます。設計段階では視線経路を確認し、試作段階で実際の照明条件による見え方を検証する流れが有効です。

指標4:操作力と身体負荷

4つ目の指標は、操作力と身体負荷です。レバーを動かす、ボタンを押す、ハンドルを回す、部品を持ち上げる、扉を開閉するといった操作では、必要な力の大きさだけでなく、力を加える姿勢と方向が重要です。

3D CADモデルから操作力そのものを直接確定することはできませんが、力を加える位置、方向、腕の姿勢、足場との関係を確認できます。機構設計や重量計算などから得られた必要操作力と組み合わせることで、身体負荷を検討しやすくなります。

同じ大きさの力でも、身体に近い位置で加える場合と、腕を伸ばした状態で加える場合では負担が異なります。腕を伸ばした状態では肩や腰に負担がかかりやすく、安定した力を出しにくくなります。力を必要とする操作部は、身体の近くで、両足や座面によって姿勢を安定させられる位置へ配置することが基本です。

押す操作では、力を加える方向に身体を支えられるかを確認します。足元が狭い、床面に段差がある、背後に空間がないといった条件では、十分な力を加えにくくなります。引く操作では、操作部を引いたときに身体が後方へ移動できる空間が必要です。3D CAD上で人体モデルの姿勢だけでなく、周囲の足場や壁との関係も確認します。

回転操作では、ハンドル径、握り位置、回転軸の高さが身体負荷へ影響します。ハンドルが高すぎると肩を持ち上げる必要があり、低すぎると上体を曲げる姿勢になります。また、回転中に手や肘が周辺部品へ接触しないよう、動作軌跡を確認します。

持ち上げ作業では、対象物の重量、重心、持ち手の位置、持ち上げる高さ、移動距離を考慮します。部品の重量が変わらなくても、身体から離れた位置で持つ設計では負担が増える可能性があります。3D CADでは、部品の重心と持ち手の位置を確認し、身体に近づけて保持できるかを検討します。

持ち手の形状も重要です。指が入る空間が不足している、手袋を着用すると握れない、角部が手に当たるといった問題は、操作力を適切に伝えにくくします。人体モデルの手形状だけで完全に評価することは難しいものの、握り空間や周囲の干渉は設計段階で確認できます。

反復操作では、一回当たりの力が小さくても、回数や速度によって負担が蓄積します。頻繁に押す操作部が硬い、手首を曲げた状態で何度も回転させる、腕を上げたまま連続作業するといった条件は、使用時間と合わせて評価する必要があります。

操作力を評価するときは、正常な状態だけでなく、汚れ、摩耗、温度変化などによって抵抗が増える可能性も考慮します。設計初期の想定値だけで余裕を使い切ると、使用環境の変化によって操作しにくくなる場合があります。必要な力に対して適切な余裕を持たせ、操作姿勢も無理のない状態にします。

3D CADで身体負荷を検討した結果、操作部の位置変更だけで改善できない場合は、機構そのものの変更も必要です。てこの長さを変える、補助機構を追加する、重量を分割する、両手で扱える持ち手を設けるといった方法があります。人が無理に対応する設計ではなく、製品側で必要な負担を減らす考え方が重要です。

指標5:操作手順と認知負荷

5つ目の指標は、操作手順と認知負荷です。人間工学というと身体寸法や姿勢が注目されがちですが、使用者が情報を理解し、操作内容を判断し、正しい順番で実行できるかも操作性を左右します。

認知負荷とは、使用者が操作中に記憶、判断、注意の切り替えなどへ必要とする負担です。操作部が多い、表示と操作の対応が分かりにくい、複数の場所を行き来する、手順を記憶しなければならないといった設計では、認知負荷が高くなる可能性があります。

3D CADは主に形状を扱うため、認知負荷を数値として直接算出することは困難です。しかし、操作部と表示部の配置、作業順序に沿った移動距離、視線の切り替え、手の動線などを立体的に確認できます。

操作手順を評価するときは、作業開始から終了までの流れを工程ごとに再現します。例えば、扉を開く、部品を取り付ける、固定具を締める、設定を入力する、運転を開始するといった順序です。それぞれの工程で使用者がどこを見て、どこへ手を伸ばし、どのように姿勢を変えるかを確認します。

操作部の配置は、作業順序と一致していることが望ましい場合があります。使用する順番と配置が大きく異なると、次に何を操作するのか迷いやすくなります。左右や上下の並びに意味を持たせる場合は、その意味が一貫しているかを確認します。

同じ機能を持つ操作部が異なる場所に配置されている、似た形状の操作部が別の機能を持っているといった設計は、判断を難しくすることがあります。3D CAD上で操作面全体を俯瞰し、形状、大きさ、位置の違いによって機能を識別しやすいかを検討します。

表示と操作部の対応も重要です。表示内容を確認した後、離れた場所へ移動して操作する必要があると、使用者は情報を一時的に記憶しなければなりません。表示部と関連する操作部を近づける、視線を大きく動かさずに確認できる配置にするなど、記憶や注意の負担を減らす方法を検討します。

保守作業では、部品の取り外し順序が認知負荷へ影響します。複数の部品を特定の順序で外さなければならない場合、作業者が順序を間違える可能性があります。形状的に誤った順序では外せない構造にする、作業対象が分かりやすく見える配置にするなど、製品形状によって判断を支援できます。

複数人で作業する設備では、担当者同士の位置関係も確認します。一人が操作し、別の人が状態を確認する場合、互いの視線や合図が通るか、相手の作業位置が見えるかが重要です。3D CAD上に複数の人体モデルを配置すると、作業者同士の距離や遮蔽物を確認できます。

認知負荷を減らすためには、操作方法の説明を追加するだけでなく、説明がなくても理解しやすい配置や形状を目指すことが大切です。取扱手順で設計上の分かりにくさを補うのではなく、設計段階で迷いにくい構造にします。

3D CADによる評価では、操作シナリオを文章で定義し、その順序に沿って人体モデルや可動部を動かします。設計者が頭の中で想定している使い方と、実際の作業手順に差がないかを、設計、製造、保守、安全管理など複数の担当者で確認すると効果的です。

指標6:誤操作の起こりやすさ

6つ目の指標は、誤操作の起こりやすさです。操作しやすい製品とは、目的の操作を容易に実行できるだけでなく、意図しない操作を起こしにくい製品でもあります。

誤操作には、隣の操作部を押す、異なる方向へ動かす、操作順序を間違える、緊急時に必要な操作部を見つけられないなど、さまざまな種類があります。原因は使用者の注意不足だけではなく、操作部の間隔、形状、配置、表示、身体姿勢など、設計側の条件にあることも少なくありません。

3D CADでは、操作部同士の間隔や周囲の形状を確認できます。手袋を着用した手で一つのボタンを押したとき、隣のボタンへ触れないか、レバーを握る途中で別の操作部に接触しないかを検討します。指先だけでなく、手のひらや腕の移動範囲も含めて干渉を確認します。

似た形状の操作部が並んでいる場合は、触った感覚だけで識別しにくくなる可能性があります。重要な操作部については、形状、大きさ、高さ、動作方向などに違いを設けることを検討します。ただし、違いを増やしすぎると操作面が複雑になるため、機能のまとまりと一貫性を保つことが重要です。

意図しない接触を防ぐために、操作部の周囲へ保護形状を設ける方法もあります。一方で、保護形状が大きすぎると、通常操作がしにくくなったり、手袋を着用した手が入らなくなったりすることがあります。3D CAD上で保護範囲と操作空間を同時に確認し、誤操作防止と操作性のバランスを取ります。

操作方向の誤りも評価します。レバーやハンドルの動きと、機械の動作方向との関係が分かりにくい場合、使用者が反対方向へ操作する可能性があります。操作対象の動きが直接見えない設備では、配置や動作方向の一貫性がより重要になります。

緊急停止などの重要な操作部は、見つけやすく、届きやすく、ほかの操作部と区別しやすい位置へ配置する必要があります。ただし、通常作業中に身体や資材が接触して作動する位置では、意図しない停止が起こる可能性があります。作業姿勢、搬送物、工具、衣服などの移動範囲を3D CADで確認し、必要なときには操作でき、通常時には誤って触れにくい配置を検討します。

誤操作後に安全な状態へ戻せるかも重要です。操作を取り消せるか、異常状態を認識できるか、復旧手順が分かりやすいかを検討します。3D CADだけで制御内容を評価することはできませんが、復旧に必要な操作部や確認箇所へアクセスできるかは確認できます。

作業者が焦っている場面も想定します。通常時には問題なく区別できる操作部でも、異常音や警告が発生している状況では、注意が分散します。暗い場所、狭い場所、手袋を着用した状態など、実際の条件に近いシナリオで配置を見直します。

誤操作の評価では、設計者が正しい使い方を知っていることが弱点になる場合があります。設計意図を知らない人に3D CADモデルや簡易試作品を確認してもらい、どこを操作すると思うか、どの順番で使うと思うかを観察すると、設計者が気づかなかった分かりにくさを発見できます。

6つの指標を組み合わせた評価の進め方

姿勢、到達性、視認性、操作力、認知負荷、誤操作の6つの指標は、個別に評価するだけでは不十分です。一つの指標を改善した結果、別の指標が悪化することがあるためです。

例えば、操作部を手前へ移動すると到達性は改善しますが、表示部を遮る可能性があります。表示部を高くすると見やすくなる場合がある一方、小柄な人には見上げる姿勢が必要になることがあります。誤接触を防ぐために操作部を離すと、手の移動距離が増え、操作手順が複雑になる場合もあります。

そのため、3D CAD上の評価では、六つの指標を共通の操作シナリオに沿って確認します。最初に、使用者が作業位置へ移動し、製品を操作し、結果を確認し、作業を終了するまでの流れを定義します。その後、各場面で姿勢、手足の到達、視線、必要な力、判断内容、誤操作の可能性を確認します。

評価対象となる操作は、通常使用だけに限定しません。設置、起動、運転、停止、調整、清掃、点検、部品交換、異常対応、撤去など、製品の使用期間全体を対象にします。日常操作が良好でも、定期的な保守作業に大きな負担がある設計では、総合的な操作性が高いとはいえません。

評価条件を管理するために、3D CADモデル内で人体モデルの体格、姿勢、配置を分けて保存すると便利です。小柄な使用者、大柄な使用者、厚手の作業着を着た使用者など、条件ごとの状態を再現できるようにします。設計変更後も同じ条件を呼び出せれば、改善前後を比較しやすくなります。

各指標は、評価結果だけでなく根拠も記録します。「操作しにくい」という表現だけでは、設計変更の方向が分かりません。「操作部が遠いため上体の前傾が必要」「表示部を見る際に前方カバーが視線を遮る」「手袋着用時に隣の操作部へ接触する可能性がある」といった具体的な状態を残します。

優先順位を決める際は、発生頻度、身体への影響、安全性、作業時間、修正の難しさなどを考慮します。頻繁に繰り返す操作や、安全に直接関係する操作は優先度を高く設定します。一方で、使用頻度が低い操作でも、事故や重大な停止につながる可能性がある場合は慎重な評価が必要です。

評価会では、3D CADモデルを操作しながら設計者だけで判断するのではなく、製造担当者、保守担当者、実際の使用者、安全管理担当者など、異なる立場の意見を取り入れます。設計者にとって自然な操作でも、現場では別の姿勢や手順が使われていることがあります。

複数の改善案がある場合は、評価条件をそろえたうえで比較します。操作部の位置だけを変えた案、操作面全体の角度を変えた案、座席位置を変えた案など、変更内容を明確に分けると、どの変更が各指標へ影響したかを判断しやすくなります。

3D CADモデルを設計改善へ反映する方法

人間工学評価の目的は、問題を指摘することではなく、設計を改善することです。評価結果を実際の形状や配置へ反映し、再評価する仕組みが必要です。

改善を進める際は、最初に問題の原因を整理します。手が届かないという結果でも、操作部が遠い、座席位置が固定されている、前方の部品が腕の動きを妨げているなど、原因によって対策が異なります。操作部だけを移動すると、配線や内部機構へ影響する場合があるため、製品全体の関係を確認します。

3D CADでは、操作部、表示部、座席、足場などの位置をパラメータとして管理できる場合があります。位置や角度を変更した複数案を作成し、人体モデルとの関係を比較します。変更のたびにモデルを作り直すのではなく、評価しやすい構成を初期段階で準備すると効率的です。

改善案を作るときは、単に空間を広げるだけでなく、人体の動きに合わせた形状を検討します。腕を差し込む開口は、静止した腕の外形だけでなく、肘や手首を動かす余裕が必要です。取っ手の周囲には、握るための指の空間と、手を近づける経路を確保します。

可動部がある場合は、操作中の人体との干渉を確認します。扉、レバー、スライド部、回転部などは、停止位置だけでなく移動途中でも身体や衣服へ接触しないことが重要です。3D CADの動作確認や干渉判定を利用し、人体モデルの動作範囲と重ねます。

設計変更後は、問題となった指標だけでなく6つの指標を再確認します。到達性を改善するために操作部を近づけた結果、誤接触の可能性が増えることがあります。表示部の角度を変えた結果、照明や周囲の部品との関係が変わることもあります。

改善内容は、設計変更の理由とともに記録します。人間工学上の問題を解決するために変更したことが分からないと、後の設計変更で元の状態へ戻される可能性があります。どの使用者条件、どの操作場面、どの指標を改善したのかを設計記録へ残します。

3D CADモデルに評価用の寸法、視線、動作範囲などを表示しておけば、後続工程でも意図を共有しやすくなります。ただし、評価用の補助形状が製造データへ混入しないよう、表示状態やデータ管理を分ける必要があります。

試作と実機確認を組み合わせる重要性

3D CADによる人間工学評価は、設計初期から操作性を検討できる有効な方法ですが、すべての問題を仮想空間だけで確認できるわけではありません。実際の触感、操作音、摩擦、反力、振動、照明、表示の読みやすさなどは、実物でなければ判断しにくい要素です。

そのため、3D CADによる評価と試作による確認を段階的に組み合わせます。設計初期には3D CADで大きな配置問題や干渉を取り除き、その後、簡易模型や部分試作で手の届き方、握りやすさ、視認性などを確認します。最終段階では、実際の使用環境に近い条件で一連の操作を検証します。

簡易試作では、製品全体を完成させる必要はありません。操作面、取っ手、座席周辺、保守開口など、人と接する部分を優先して確認できます。3D CAD評価で問題が疑われた箇所を部分的に再現すれば、比較的早い段階で具体的な感触を確認できます。

実機確認では、設計担当者だけでなく、想定する使用者に近い人へ操作してもらうことが重要です。操作方法を細かく説明しすぎると、初見での分かりにくさを発見できません。まずは必要最低限の情報を伝え、どこを見て、どのような姿勢を取り、どこで迷うかを観察します。

評価時には、使用者の感想だけでなく、実際の動作も記録します。「使いにくい」という感想があった場合は、どの操作で、どの身体部位に、どのような負担を感じたのかを確認します。反対に、本人が問題を訴えていなくても、肩を上げ続けている、腰をひねっているといった動作が見られる場合があります。

試作で見つかった問題は3D CADモデルへ戻し、形状を修正します。実物だけを現場で加工して調整すると、正式な設計データへ変更が反映されない可能性があります。3D CADモデルを設計情報の基準とし、評価、修正、再試作の履歴を管理します。

また、操作性は設置環境によって変わります。製品単体では問題がなくても、壁際へ設置すると保守扉を開けられない、周辺設備によって作業者の立ち位置が制限されるといった問題があります。最終確認では、設置先の床、壁、通路、周辺機器なども含めて評価することが重要です。

3D CAD上で設置環境まで再現すれば、現場条件を考慮した操作性評価がしやすくなります。現況の形状や設備配置を立体的に把握し、設計モデルと重ねることで、操作空間や保守動線を確認できます。

まとめ

3D CADを活用した人間工学評価では、人体モデルを配置して見た目を確認するだけでなく、明確な指標に基づいて操作性を検討することが重要です。

確認したい指標は、姿勢と関節角度、操作範囲と到達性、視認性と視野、操作力と身体負荷、操作手順と認知負荷、誤操作の起こりやすさの6つです。これらを共通の操作シナリオに沿って評価することで、設計者の感覚だけに頼らず、改善すべき位置や形状を具体化できます。

評価前には、使用者の体格、作業姿勢、服装、保護具、操作頻度、使用環境などを定義します。平均的な人体モデルだけで判断せず、複数の体格条件で確認することが、幅広い使用者に対応した設計につながります。

また、一つの指標だけを改善すると、別の指標が悪化する場合があります。操作部を近づけたことで視界を遮る、保護形状を追加したことで手が入りにくくなるといった変化を見逃さないため、設計変更後は6つの指標をまとめて再評価します。

3D CADは、試作品の製作前に姿勢、視線、動作範囲、干渉などを検討できる有効な手段です。一方で、操作感、摩擦、反力、照明などは実物確認が欠かせません。3D CADによる事前評価、簡易試作、実機確認を組み合わせ、発見した問題を設計モデルへ確実に反映する流れが必要です。

現場で使用する機器や作業支援ツールを検討する場合も、機能や精度だけでなく、携帯性、装着方法、画面確認、操作手順などを含めた人間工学上の操作性が重要です。現場での計測や記録をより扱いやすくする方法を検討する際は、LRTK Phoneの活用も次の選択肢として確認してみてください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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