3D CADの分解図が組立手順書で重要な理由
製品や装置の組立手順を正確に伝えるには、文章だけでなく、部品の位置関係や取り付け方向を視覚的に示す必要があります。そこで役立つのが、3D CADの組立モデルから作成する分解図です。
分解図とは、完成状態では重なって見えない部品を一定の方向へ移動し、それぞれの配置関係を分かりやすく示した図です。完成品の外観だけでは確認できない締結部品、内部部品、配線、パッキン、スペーサーなども、分解図にすることで構成を把握しやすくなります。
組立手順書では、作業者が図を見た瞬間に、どの部品を、どの向きで、どこへ取り付けるのかを判断できることが重要です。図が見づらいと、作業者は文章と部品表を何度も往復しなければならず、確認時間が増えます。さらに、部品の向き違い、締結順序の間違い、部品の入れ忘れ、左右部品の取り違えといった組立ミスにつながる可能性もあります。
3D CADで分解図を作成すると、組立モデルの形状や位置関係を利用できるため、手描きの図よりも正確な表現が可能です。モデルを回転させて最適な視点を探したり、必要な部品だけを表示したり、透明表示や断面表示を利用したりすることで、複雑な構造も段階的に説明できます。
一方で、3D CADから自動的に部品を離しただけでは、見やすい分解図になるとは限りません。部品の移動方向がばらばらであったり、前後関係が分かりにくかったりすると、図の情報量が増えるほど理解しにくくなります。見やすい分解図を作るには、図面としての正確さだけでなく、組立作業を伝えるための情報設計が必要です。
また、設計者にとって自然な見方と、現場の作業者にとって分かりやすい見方は一致しない場合があります。設計者は構造全体を理解しているため、少ない情報でも部品の位置を推測できます。しかし、初めて製品を組み立てる作業者は、図に示されていない情報を補完できません。分解図を作る際は、製品を知っている人の視点ではなく、初めて作業する人の視点で情報を配置することが重要です。
ここからは、3D CADを使って組立手順書向けの分解図を作成するときに押さえたい7つのポイントを解説します。
ポイント1:組立完成状態の基準姿勢を最初に決める
分解図を作成する前に、最初に決めるべきなのが製品の基準姿勢です。基準姿勢とは、組立完成状態をどの向きから見せるかを定めたものです。この基準が曖昧なまま作業を進めると、手順ごとに製品の向きが変わり、作業者が現在の位置関係を把握しにくくなります。
基本的には、実際の組立作業で製品を置く向きに合わせると理解しやすくなります。作業台の上に底面を置いて組み立てる製品であれば、その状態を基準にします。壁面や設備へ取り付ける部品であれば、設置後の上下方向だけでなく、作業者が取り付け時に見る方向も考慮します。
製品の正面が明確な場合でも、組立作業に適した視点が正面とは限りません。正面からでは背面の締結位置が見えない場合や、上面から部品を挿入する構造では、斜め上から見た視点のほうが適しています。分解図の目的は外観をきれいに見せることではなく、作業内容を理解しやすくすることです。
基準姿勢を決める際は、上下、前後、左右の方向が図から判断できるかを確認します。対称形状の製品では、正面と背面を取り違えやすいため、コネクター、開口部、ロゴ配置面、脚部など、方向を識別できる形状を画面内に含めると効果的です。
組立手順書全体で視点を統一することも重要です。手順1では右斜め上、手順2では左斜め下、手順3では背面というように視点が頻繁に変わると、作業者はそのたびに製品を頭の中で回転させなければなりません。特別な理由がない限り、基本視点を一つ決め、見えない箇所を説明するときだけ補助視点を使います。
どうしても視点を変更する必要がある場合は、変更前後で共通して見える部品を残します。外形の特徴や基準となるフレームを表示しておけば、作業者は視点が変わっても位置関係を追いやすくなります。反対に、表示部品を大きく入れ替えたうえで視点まで変更すると、同じ製品を説明していることが伝わりにくくなります。
3D CADモデルの座標方向と、組立現場で使う方向表現が一致しているかも確認します。設計時の座標では高さ方向が別の軸に設定されていることがありますが、手順書では作業者が使う上下方向を優先します。必要に応じて表示用の姿勢を別に設定し、設計座標をそのまま図へ持ち込まないことが大切です。
基準姿勢を最初に定めておくと、後工程の部品移動方向、引出線の配置、画像の切り出し範囲も決めやすくなります。分解図を作り始める前に、実際の作業姿勢と手順書の掲載サイズを想定し、完成状態の見せ方を固めておきましょう。
ポイント2:実際の組立順序に沿って部品を配置する
分解図では、部品の構成だけでなく、組立順序が読み取れることが重要です。部品を形状の大きさや見栄えだけで並べるのではなく、実際に作業する順序を基準に配置します。
例えば、筐体内部へ基板を固定し、その上から保護部品を取り付け、最後に外装カバーを閉じる構造であれば、分解図でも筐体、基板、保護部品、外装カバーの順序が読み取れるように並べます。実際には後から取り付ける部品が図の途中へ入り込んでいると、作業者が誤った順序で作業する原因になります。
組立順序を整理するときは、3D CAD上の部品構成だけで判断せず、現場での作業条件を確認します。形状だけを見れば先に取り付けられそうでも、工具を差し込む空間が必要なため、別の部品を後回しにする場合があります。配線を先に通さなければならない構造や、接着、圧入、仮締め、本締めの順番が決まっている構造もあります。
そのため、分解図を作成する設計担当者は、組立担当者や製造担当者と手順を確認することが重要です。実際の試作組立を観察し、部品を手に取る順序、製品を回転させるタイミング、使用工具、作業中に見える面を把握すると、現実に即した分解図を作れます。
一枚の分解図で全ての組立順序を表現しようとすると、部品数が多い製品では理解しにくくなります。その場合は、組立工程を複数のまとまりに分けます。例えば、内部ユニットの組立、筐体への固定、配線接続、外装部品の取り付けというように、作業単位ごとに分解図を作ります。
作業単位を分けるときは、各図の開始状態と終了状態を明確にします。前の手順で完成した状態を、次の手順の基準状態として表示すると、図同士のつながりが分かりやすくなります。反対に、前の図で表示していた部品が次の図で突然消えると、どこまで組み立てた状態なのか判断しにくくなります。
左右対称の部品や同一形状の締結部品が複数ある場合は、同時に取り付けるのか、一つずつ順番に取り付けるのかを図で区別します。同時作業を示す場合は同じ移動量で並べ、同じ工程で取り付けることが分かるようにします。取り付け順序に意味がある場合は、同じ種類の部品であっても図を分けたほうが安全です。
部品の仮組み状態を示す必要がある場合もあります。最初から完全な取り付け位置まで移動した図だけでは、部品をどの角度から差し込むのか、どこを先に引っ掛けるのかが分からない構造があります。その場合は、挿入前、途中、取り付け完了の状態を分けて示します。
3D CADの移動機能や姿勢保存機能を利用すると、組立順序ごとの表示状態を管理できます。ただし、表示状態の名称は作成者だけが理解できる記号ではなく、工程内容が分かる名称にします。後から修正する担当者が変わっても、どの表示状態がどの工程に対応するのか判断できるようにしておくことが大切です。
ポイント3:部品間隔と移動方向を統一する
分解図の見やすさを大きく左右するのが、部品を離す方向と間隔です。部品ごとに異なる方向へ自由に移動させると、図が広がりすぎるだけでなく、元の取り付け位置との関係が分かりにくくなります。
基本的には、実際の取り付け方向に沿って部品を移動します。上から挿入する部品は上方向へ、正面から差し込む部品は手前方向へ、側面から固定する部品は横方向へ離します。取り付け方向と分解方向を一致させることで、作業者は部品をどちらへ動かせばよいか直感的に理解できます。
ただし、実際の移動方向をそのまま使うと部品同士が重なる場合があります。その場合は、基本方向を保ちながら、必要最小限のずらしを加えます。説明の都合だけで大きく斜め方向へ移動すると、取り付け軸が分からなくなるため注意が必要です。
同じ軸上に並ぶ部品は、中心線をそろえると位置関係が伝わりやすくなります。ボルト、座金、スペーサー、固定対象部品、ねじ穴が一直線に並ぶように配置すれば、どの締結部品がどの穴へ入るのか判断しやすくなります。中心線がずれていると、近くに複数の穴がある場合に対応関係を誤認する可能性があります。
部品間隔は、部品の大きさではなく、識別に必要な余白を基準に決めます。小さな締結部品を大きく離しすぎると、どの位置へ取り付けるのか分からなくなります。一方、大きなカバーをわずかにしか離さないと、内部部品が隠れてしまいます。部品同士が重ならず、元の位置関係を追える範囲で間隔を調整します。
複数の部品を同じ工程で取り付ける場合は、移動量をそろえるとまとまりが伝わります。例えば、同じ面に取り付ける四つの締結部品は、同じ方向へ同じ距離だけ移動させます。一つだけ移動量が異なると、別の工程や別の種類の部品に見えることがあります。
分解距離を一定の規則で管理する方法も有効です。主要部品、小部品、締結部品などの種類ごとに、おおよその移動距離を決めておくと、複数の図で見た目を統一できます。製品ごとに完全に同じ数値を使う必要はありませんが、図ごとのばらつきを抑える基準になります。
配線や柔軟な部品は、単純な平行移動だけでは取り付け方法を表現できない場合があります。配線の経路を示すときは、端子の接続位置だけでなく、途中でどこを通るのか、どの部品の内側または外側を通るのかが分かるようにします。曲げ形状を過度に誇張すると実際の長さや取り回しを誤認しやすいため、実際の経路を基準に表示します。
分解図を作った後は、各部品を元の位置へ戻す動きを頭の中で確認します。図から完成状態へ戻す際に、移動方向が迷わず想像できれば、配置はおおむね適切です。途中で他の部品と干渉するように見えたり、どの穴へ入るか判断できなかったりする場合は、間隔や中心位置を見直します。
ポイント4:視点と投影方法を目的に合わせて選ぶ
同じ分解状態でも、視点によって情報の伝わり方は大きく変わります。3D CADでは自由にモデルを回転できますが、自由度が高いからこそ、目的に合った視点を選ぶ必要があります。
多くの組立手順書では、三つの面が同時に見える斜め方向の視点が使いやすくなります。正面、側面、上面の関係を一枚で確認できるため、立体形状や部品の前後関係を把握しやすいからです。ただし、常に斜め視点が最適とは限りません。
穴位置や締結位置を正確に示したい場合は、対象面に近い正面視点が適しています。斜めから見ると穴同士の間隔が縮んで見え、近接する穴を区別しにくくなることがあります。部品を上下方向へ積み重ねる工程では、側面視点を追加すると順序が分かりやすくなります。
投影方法についても、用途に合わせて選びます。遠近感を強くした表示は立体的に見えますが、手前の部品が大きく、奥の部品が小さく表示されます。そのため、部品寸法の比較や位置関係の確認には適さないことがあります。組立手順書では、奥行きによる大きさの変化を抑えた表示のほうが、部品の対応関係を追いやすい場合が多くあります。
一方で、奥行き方向へ部品が並ぶ構造では、遠近感があるほうが前後関係を理解しやすいこともあります。重要なのは、見栄えだけで選ばず、作業者が部品の位置と移動方向を判断できるかで選ぶことです。
小さな部品を説明する図では、製品全体を画面内に収めることにこだわらず、必要な範囲を拡大します。全体像を示す図と詳細図を分けることで、作業位置と細かな取り付け方法の両方を伝えられます。詳細図だけでは製品のどの部分を示しているか分かりにくいため、全体図で対象位置を示したうえで拡大図へつなげる構成が有効です。
視点を調整するときは、部品の輪郭が重なっていないかも確認します。形状の異なる二つの部品でも、特定の角度から見ると同じ輪郭に見えることがあります。特に薄い板部品、座金、パッキンなどは、正面から見ると厚みが見えず、存在を認識しにくくなります。少し視点を変え、部品の厚みや形状の違いが分かるようにします。
締結部品の頭部や工具を掛ける部分も、視点によって見え方が変わります。作業方向を伝えたい場合は、工具を当てる面が見える角度にします。締結部品が奥側にあり、手前の部品で隠れる場合は、手前の部品を透明化するか、別の視点を追加します。
手順書全体では、視点の一貫性も重要です。最初に定めた基準視点を基本とし、変更する場合は理由を明確にします。単に図面内へ収まりやすいという理由だけで視点を変えると、手順間のつながりが弱くなります。画像の掲載範囲を調整する前に、部品配置や分解距離を見直し、できるだけ共通視点を維持します。
ポイント5:部品番号と引出線を読みやすく配置する
分解図では、形状だけで全ての部品を識別できるとは限りません。似た形状の部品、寸法違いの部品、左右専用部品などを区別するためには、部品番号や名称を適切に表示する必要があります。
部品番号は、部品表と対応する識別情報です。図中の番号と部品表の番号が一致していれば、作業者は必要な部品の名称、数量、仕様を確認できます。番号の付け方が手順ごとに変わったり、設計モデル内の管理番号と手順書の番号が異なったりすると、確認作業が複雑になります。
番号を配置するときは、部品の輪郭や重要形状に重ならない位置を選びます。番号が部品の上に直接重なると、形状を見づらくするだけでなく、どの部品を指しているのか分かりにくくなります。図の周囲に余白を設け、その余白へ番号を配置して引出線で結ぶ方法が基本です。
引出線は、交差をできるだけ避けます。線が交差すると、番号と部品の対応を目で追いにくくなります。番号の並び順を調整し、上側の部品は図の上側、右側の部品は図の右側へ配置するなど、部品の位置に近い余白を使います。
引出線の先端は、部品の輪郭線ではなく、できるだけ部品の面へ向けます。輪郭線上に複数の部品が重なっている場合、どの部品を示しているのか判断しにくいためです。小さな部品では線の先端が部品を隠すことがあるので、拡大図を使うか、部品を少し離して識別できる空間を確保します。
同一部品を複数使用する場合は、一つの番号で数量を示す方法と、それぞれの位置へ番号を付ける方法があります。全て同じ工程で同じ方法により取り付ける場合は、一つの番号でまとめても理解できます。しかし、取り付け位置によって向きや長さが異なる場合は、個別に示したほうが安全です。
部品番号だけでは作業者が判断しにくい場合は、短い部品名称を併記します。ただし、長い名称を図中へ大量に配置すると、分解図より文字情報が目立ってしまいます。名称は部品表へまとめ、図中では番号を中心にする方法が一般的です。特に注意が必要な部品だけ、補足的に名称や向きを示します。
左右部品を区別する場合は、図中の見た目だけに頼らず、識別できる情報を付けます。左右対称に近い部品は、視点によって同じ形状に見えることがあります。部品番号を分けるほか、取付面、穴位置、突起形状など、識別点が見える方向から表示します。
文字の大きさは、3D CADの画面上ではなく、最終的な手順書の掲載サイズで確認します。大きな画面では読めても、文書へ貼り付けたときに小さくなり、番号が判別できないことがあります。手順書を実際に閲覧する端末や印刷寸法を想定し、縮小後でも読める文字サイズにします。
番号の向きも統一します。部品の角度に合わせて番号を回転させると、読むたびに視線を傾ける必要があります。原則として、全ての番号を同じ向きにし、手順書を正しい向きで見たときに水平に読めるようにします。
ポイント6:内部構造や隠れた接続部分を見せる
組立作業では、完成状態から見えない部分に重要な情報が集中していることがあります。内部の締結位置、溝への差し込み、爪のかみ合わせ、配線端子、シール部品などです。これらを見せるには、3D CADの表示機能を目的に応じて使い分けます。
手前の部品で内部が隠れる場合は、その部品を一時的に非表示にする方法があります。単純で見やすい方法ですが、周囲との位置関係が失われる可能性があります。非表示にした部品が組立の基準となる場合は、どこへ取り付けるのか判断しにくくなるため注意が必要です。
位置関係を残したまま内部を見せたい場合は、手前の部品を透明表示にします。透明表示を使うと、外形と内部部品を同時に確認できます。ただし、複数の部品を透明にすると輪郭線が重なり、かえって見づらくなることがあります。透明化する部品は必要最小限にし、内部で説明したい部品が明確に見える濃度に調整します。
断面表示も有効です。部品の一部を切断した状態で表示すれば、内部の重なり、はめ合い、挿入深さを確認できます。特に、穴の奥へ部品を挿入する構造、内部の段差に部品を当てる構造、シール部品を溝へ入れる構造では、断面表示によって作業位置を明確にできます。
ただし、断面表示だけでは、どの位置を切断しているのか分かりにくい場合があります。全体図と断面図を分け、全体図で対象箇所を示した後に断面図を掲載すると理解しやすくなります。断面の向きが変わる場合は、製品の前後左右が分かる形状を残します。
部品の差し込み方向が複雑な場合は、中間姿勢を追加します。例えば、部品を斜めに差し込み、爪を掛けた後で回転させる構造では、完成位置から直線的に離した分解図だけでは動きを表現できません。差し込み開始、回転途中、固定完了という複数の状態を示すことで、作業者が動きを理解できます。
配線接続では、端子の位置だけでなく、差し込み方向や固定状態も示します。接続口が複数並んでいる場合は、どの配線をどこへ接続するかを番号や識別情報で明確にします。配線が部品の裏側を通る場合は、透明表示や補助図を利用し、経路が途中で途切れないようにします。
小さなパッキンや座金などは、実際の大きさのままでは見落とされやすい部品です。しかし、分かりやすさのために部品自体を不自然に拡大すると、実際の寸法関係を誤解させる可能性があります。部品の大きさを変えるのではなく、対象部分を拡大した詳細図を追加する方法が適切です。
内部構造を見せる目的は、モデルの全てを見せることではありません。その工程で必要な情報だけを選び、不要な内部部品は表示しない判断も必要です。情報が多いほど正確に見えるとは限らず、作業対象以外の部品が増えるほど、重要な箇所が埋もれてしまいます。
ポイント7:一枚に情報を詰め込みすぎない
組立手順書を短くまとめようとして、一枚の分解図に多くの部品や作業を詰め込むと、かえって理解に時間がかかります。見やすい分解図を作るには、一枚の図で伝える内容を明確に絞ることが重要です。
一枚の図には、原則として一つの作業目的を持たせます。例えば、内部ユニットを筐体へ固定する工程と、外装カバーを締結する工程は、別の図に分けます。作業内容が異なるだけでなく、必要な視点、表示部品、注意点も異なるためです。
部品数が少なくても、作業方向が異なる場合は図を分けたほうが分かりやすくなります。上から挿入する部品と、側面から締結する部品を同じ図へ入れると、移動方向が交差しやすくなります。工程ごとに図を分ければ、それぞれの作業方向を明確に表現できます。
図を分ける判断では、部品数だけでなく、作業者が一度に保持できる情報量を考えます。番号、引出線、移動方向、注意書きが増え、どこから見ればよいか迷う状態になったら、図を分割する必要があります。
分割した図の間では、状態の連続性を保ちます。前の図で取り付けた部品は、次の図では完成位置に残して表示します。新しく取り付ける部品だけを分解状態にすることで、作業者は現在の工程を把握しやすくなります。
背景となる完成部品は、説明対象よりも目立たない表示にする方法もあります。輪郭を残しながら表示を薄くすることで、製品全体の位置関係を示しつつ、今回取り付ける部品へ視線を誘導できます。ただし、手順書全体で表示ルールを統一し、薄い部品が非表示部品や参考部品を意味するのかを明確にします。
注意事項を図中へ入れる場合も、文章を詰め込みすぎないようにします。締結条件、向き、禁止事項などは短い指示にし、詳しい説明は図の近くの本文へ記載します。長い文章を図中へ配置すると、図の縮小時に読めなくなり、翻訳や改訂も難しくなります。
一枚の図を分割すると手順書のページ数は増える場合がありますが、ページ数の少なさと作業効率は同じではありません。現場での確認時間や組立ミスの低減を考えると、必要な工程を適切に分けたほうが、結果的に使いやすい手順書になります。
分解図作成から組立手順書化までの実務フロー
見やすい分解図を安定して作るには、担当者の感覚だけに頼らず、一定の作業手順を整えることが有効です。最初に、組立手順書の対象となる3D CADモデルが最新状態であることを確認します。
設計変更前のモデルを使って分解図を作成すると、穴位置、部品形状、締結部品の種類などが実物と一致しない可能性があります。モデルの改訂情報と手順書の改訂情報を対応させ、どの設計状態を基準にした図なのか追跡できるようにします。
次に、組立モデルの部品構成を確認します。手順書へ不要な設計用部品、基準形状、解析用形状などが含まれている場合は、表示対象から除外します。一方、実際の組立で使用する小部品がモデル内で省略されている場合は、手順書用に追加する必要があります。
その後、製造担当者と組立順序を確認します。設計上の部品構成だけでなく、工具の使用順序、仮締め、本締め、配線、接着、確認作業などを整理します。可能であれば、試作品を実際に組み立てながら工程を記録します。
工程を整理したら、一つの図で扱う作業範囲を決めます。工程名、開始状態、追加する部品、終了状態を明確にし、必要な分解図の枚数を見積もります。この段階で図の構成を決めておくと、後から一枚へ情報を詰め込みすぎることを防げます。
3D CAD上では、まず完成状態の基準姿勢を保存します。次に、工程ごとに必要な部品を移動し、表示状態を作成します。部品の移動方向は実際の組立方向に合わせ、同じ軸上の部品は中心をそろえます。
分解状態を作成したら、部品の重なり、内部構造の見え方、番号を配置する余白を確認します。必要に応じて視点、部品間隔、透明表示、断面表示を調整します。最初から細かな番号配置を始めるのではなく、図の構造を固めてから注記を追加するほうが効率的です。
図を出力するときは、手順書へ掲載した状態で十分な解像度が得られるようにします。線が細すぎると縮小時に消え、細かな部品が背景へ埋もれます。反対に輪郭線が太すぎると、小さな穴や段差がつぶれて見えることがあります。
組立手順書へ配置した後は、図だけでなく、工程番号、作業説明、使用部品、使用工具、注意事項との対応を確認します。図中では締結部品が四つ表示されているのに、本文の数量が三つになっているといった不一致を防ぎます。
最後に、設計者以外の人へ確認を依頼します。特に、対象製品を詳しく知らない人が図を見て、部品の向きや取り付け位置を理解できるかを確認すると効果的です。作成者はモデル構造を知っているため、情報不足に気づきにくいからです。
実際の組立現場で手順書を試用し、迷った箇所や見落とした部品を記録します。分解図は一度作って終わりではなく、現場での使用結果を反映して改善します。設計変更があった場合も、対象となる図を特定し、速やかに更新できる管理方法を整えておきます。
公開前に確認したい分解図の品質チェック
完成した分解図は、見た目だけでなく、作業情報として正しいかを確認する必要があります。まず確認したいのは、使用している3D CADモデルの改訂状態です。対象となる製品、部品表、手順書が同じ改訂状態になっていることを確認します。
次に、図中に表示されている部品の種類と数量を確認します。締結部品、座金、スペーサー、パッキンなどの小部品は見落としやすいため、部品表と一つずつ照合します。同一形状に見えても寸法や材質が異なる部品がある場合は、番号で明確に区別します。
組立順序については、図の並びだけで正しい順番を読み取れるか確認します。前の工程で必要な部品が後の図に配置されていないか、後から工具を入れられない順序になっていないか、配線や接着の工程が抜けていないかを確認します。
部品の移動方向も重要です。分解図から部品を元の位置へ戻したとき、実際の組立動作と一致するかを確認します。斜めに移動している部品については、本当に斜め挿入が必要なのか、図面内の重なりを避けるためだけの移動なのかを区別します。
視点については、製品の上下、前後、左右が判断できるかを確認します。左右対称の構造では、基準となる形状が画面内に含まれているかを確認します。視点を変更している図では、前後の工程との位置関係が追えるかも確認します。
部品番号と引出線は、縮小後の状態で確認します。番号が重なっていないか、線が交差していないか、どの部品を指しているか明確かを確認します。部品表との番号対応や数量表記も見直します。
内部構造を説明する図では、透明表示や断面表示によって必要な部分が見えているかを確認します。輪郭線が重なりすぎていないか、切断位置が分かるか、内部部品と外側部品の関係を誤解しないかを確認します。
図中の情報量については、最初に見るべき部品が明確かを確認します。番号や線が多く、視線の順序が分からない場合は、工程を分割します。一枚に収めることより、作業者が迷わず理解できることを優先します。
手順書を印刷して使用する場合は、実際の印刷寸法で確認します。画面上では鮮明でも、印刷すると細線や薄い表示が見えなくなる場合があります。現場で白黒印刷される可能性がある場合は、色だけに依存した区別を避けます。
画面で閲覧する場合は、使用する端末の大きさや表示環境も考慮します。大きな設計用画面を基準にすると、現場の携帯端末では細部が確認しにくくなる可能性があります。必要に応じて全体図と詳細図を分け、拡大操作をしなくても主要情報を確認できる構成にします。
最終確認では、実際に組み立てる担当者に図を見てもらいます。図だけを見て、使用部品、取り付け位置、向き、順序を説明してもらうと、伝わっていない部分を発見できます。作成者から口頭説明を加えずに確認することがポイントです。
まとめ:3D CADの分解図で組立作業の迷いを減らす
3D CADを使った分解図は、部品構成を示すだけの図ではありません。作業者が、どの部品を、どの向きで、どの順序により取り付けるのかを判断するための作業情報です。
見やすい分解図を作るには、完成状態の基準姿勢を定め、実際の組立順序に沿って部品を配置することが基本です。さらに、部品の移動方向と間隔を統一し、目的に合った視点を選び、部品番号と引出線を整理する必要があります。
内部構造や隠れた接続部分については、透明表示、断面表示、詳細図、中間姿勢などを使い分けます。ただし、情報を増やしすぎると重要な箇所が埋もれるため、一枚の図で伝える作業内容を絞ることも欠かせません。
分解図の作成後は、設計モデル、部品表、組立順序、図中の数量が一致しているかを確認します。作成者以外の人や実際の組立担当者による確認を取り入れることで、設計者には気づきにくい説明不足を発見できます。
3D CADモデルを組立手順書へ活用すれば、設計情報を製造や保守の現場へ正確に伝えやすくなります。さらに、現場で製品や部品の位置情報を確認し、三次元データを実際の対象物と結び付けて活用したい場合は、LRTK Phoneを使った現場確認へつなげる方法も検討できます。